1 00:00:01,001 --> 00:00:06,799 (半鐘の音) 2 00:00:06,799 --> 00:00:09,176 (いななき) 3 00:00:09,176 --> 00:00:12,805 (歓声) 4 00:00:12,805 --> 00:00:15,015 待ってました 加賀鳶! 5 00:00:15,015 --> 00:00:17,810 よっ 江戸一の火消! 6 00:00:25,818 --> 00:01:16,577 ♪♪~ 7 00:01:59,912 --> 00:02:04,458 (彦弥)紙… (新之助)火元は四谷宗福寺の北 愛染院の南 8 00:02:04,458 --> 00:02:07,628 寺に品を卸している紙問屋ですからね 9 00:02:07,628 --> 00:02:09,922 (源吾) この辺りは有名な寺社だらけだ 10 00:02:09,922 --> 00:02:14,301 しかも 燃えてるのが紙屋ってんなら 大火にしてくれって言ってるようなもんだ 11 00:02:14,301 --> 00:02:19,139 しかし どうも寺社奉行が 境内に立ち入ることを禁じているようで 12 00:02:19,139 --> 00:02:22,768 そんなもの いざとなったら構っちゃいられねえ 13 00:02:22,768 --> 00:02:26,772 (寅次郎)この火事 火付けの疑いが濃厚とのことでしたな 14 00:02:26,772 --> 00:02:29,149 狐火かもしれねえな 15 00:02:31,318 --> 00:02:33,779 (星十郎) 今も南東に向かって微風が 16 00:02:33,779 --> 00:02:35,948 あと二刻は変わりません 17 00:02:35,948 --> 00:02:40,494 東には御城がありますが 見附の大名家が防ぐでしょう 18 00:02:40,494 --> 00:02:44,331 我らは南より上がり 四谷の火元を叩くべきかと 19 00:02:44,331 --> 00:02:47,334 火消兵法も既に完璧だな 20 00:02:47,334 --> 00:02:50,504 急ぐぞ! (一同)おう! 21 00:02:55,801 --> 00:03:00,681 (大音)ひるむな 水をかけろ! (鳶達)せいやー! 22 00:03:00,681 --> 00:03:02,975 せいやー! 23 00:03:02,975 --> 00:03:05,352 せいやー! 24 00:03:06,520 --> 00:03:08,522 あっ 25 00:03:09,815 --> 00:03:12,985 先着の火消は 加賀鳶! 26 00:03:15,988 --> 00:03:18,991 せいやー! せーの! 27 00:03:18,991 --> 00:03:21,994 せいやー! せーの! 28 00:03:21,994 --> 00:03:24,204 せいやー! おい 大丈夫か! 29 00:03:24,204 --> 00:03:26,373 御頭 どうかしましたか? 30 00:03:26,373 --> 00:03:30,711 いや 大丈夫だ 俺達も行くぞ へい! 31 00:03:30,711 --> 00:03:32,713 加勢する 32 00:03:32,713 --> 00:03:34,715 噂のぼろ鳶か 33 00:03:34,715 --> 00:03:38,218 復帰したと聞いたが 火喰鳥も落ちたものだ 34 00:03:38,218 --> 00:03:40,721 力を合わせれば すぐに… 35 00:03:40,721 --> 00:03:44,224 おぬしの目は節穴か? 我らの手並みを見よ 36 00:03:44,224 --> 00:03:46,727 ヘタにかき回されたら かなわん 37 00:03:46,727 --> 00:03:50,022 見た目で判断するな おぬしらに何ができる 38 00:03:50,022 --> 00:03:52,858 寺社を 焼失させてしまうのがオチではないか? 39 00:03:52,858 --> 00:03:55,569 今 何て言った? 40 00:03:55,569 --> 00:03:57,863 《よいしょ!》 《えいっ!》 41 00:03:57,863 --> 00:04:01,408 《せいやー!》 《えいっ!》 42 00:04:01,408 --> 00:04:05,746 てめえ 寺社を優先しやがったな! 被害は! 43 00:04:05,746 --> 00:04:08,248 今のところ 妙行寺の塀が 44 00:04:08,248 --> 00:04:10,876 そうじゃねえ! ケガ人はいないのか!? 45 00:04:10,876 --> 00:04:16,256 出火元の紙問屋の近隣の住民に ケガ人が出ている 数も多い 46 00:04:16,256 --> 00:04:21,261 寺社を守って何が火消だ! 命を守るのが俺達の仕事だろうが! 47 00:04:21,261 --> 00:04:23,263 我々は武士だ 48 00:04:23,263 --> 00:04:26,600 藩の威信と誇りを懸けて 火消に当たっているのだ 49 00:04:26,600 --> 00:04:30,062 大義のために優先するものが お前とは違う 50 00:04:30,062 --> 00:04:33,065 人命以上に優先するものなどねえ! 51 00:04:33,065 --> 00:04:36,443 命を軽視して寺社を守ることが 誇りと言えんのか? 52 00:04:36,443 --> 00:04:39,905 寺社を守り 人命も可能な限り救う 53 00:04:39,905 --> 00:04:42,783 決して軽んじてなどおらぬ 54 00:04:42,783 --> 00:04:47,287 人命を最優先しろ 寺社奉行が何と言おうと気にするな 55 00:04:47,287 --> 00:04:49,456 壊すべきものは壊せ! (鳶達)おう! 56 00:04:49,456 --> 00:04:53,627 加賀鳶が寺社を守るならば 我らは人命 民家を守る! 57 00:04:53,627 --> 00:04:55,629 邪魔立てさせるな 58 00:04:55,629 --> 00:04:57,631 星十郎! 59 00:04:59,299 --> 00:05:02,469 師走十日 時は四つ半 60 00:05:06,473 --> 00:05:09,643 (星十郎)出火元は紙商和久屋 61 00:05:09,643 --> 00:05:13,814 風は緩やかに南東へ 火は方々に散ったもよう 62 00:05:13,814 --> 00:05:17,317 西方の手薄も 柳沢家が抑えてます 63 00:05:17,317 --> 00:05:21,321 我らは出火の本陣中央より 南側を消し止めます 64 00:05:21,321 --> 00:05:23,323 いくぞ 彦弥! 65 00:05:23,323 --> 00:05:25,951 少しだけ待ってくださいよ 66 00:05:29,955 --> 00:05:32,124 フッ 67 00:05:32,124 --> 00:05:34,501 フッ! 68 00:05:34,501 --> 00:05:36,503 あ… 69 00:05:36,503 --> 00:05:38,505 たっ! 70 00:05:39,506 --> 00:05:43,510 寅! おお~! えいっ! 71 00:05:45,345 --> 00:05:47,514 彦弥 立てろ! 72 00:05:47,514 --> 00:05:49,516 いくぜー! 73 00:05:50,851 --> 00:05:53,520 おお~! 74 00:05:53,520 --> 00:05:55,856 えいっ! えいやっ! 75 00:05:55,856 --> 00:05:57,858 えいやっ! 76 00:06:02,362 --> 00:06:05,491 ぼろ鳶なんぞに負けては 加賀鳶の名が廃る 77 00:06:05,491 --> 00:06:07,868 格の違いを見せつけよ! 78 00:06:07,868 --> 00:06:09,870 おお~! 79 00:06:09,870 --> 00:06:12,664 とりゃあっ! せーの! 80 00:06:12,664 --> 00:06:14,666 これはいける 81 00:06:14,666 --> 00:06:19,379 このような状況では 指揮系統が乱れるやもと思いましたが 82 00:06:19,379 --> 00:06:23,217 この場にいるのは 江戸一きらびやかな加賀鳶と 83 00:06:23,217 --> 00:06:25,677 江戸一みすぼらしいぼろ鳶だ 84 00:06:25,677 --> 00:06:28,680 だが 働きぶりは負けちゃいねえ 85 00:06:28,680 --> 00:06:32,518 このまま加賀鳶と連携すれば 寺社も守れます 86 00:06:32,518 --> 00:06:38,899 しかし あの寺の一角だけは壊さねば 炎は さらに広がります 87 00:06:40,692 --> 00:06:43,070 縄を持って ついてこい 88 00:06:49,409 --> 00:06:51,411 よし 引け! 89 00:06:51,411 --> 00:06:54,540 よいしょ~! よいしょ~! 90 00:06:54,540 --> 00:06:57,084 えいっ! 91 00:07:00,921 --> 00:07:03,924 えいっ! 92 00:07:03,924 --> 00:07:07,261 この調子でいくぞ! おう! 93 00:07:09,429 --> 00:07:12,558 御頭 また火元から紙が… 94 00:07:15,102 --> 00:07:19,106 紙問屋を叩かねえと らちが明かねえか 95 00:07:19,106 --> 00:07:21,441 でも 叩くったって 96 00:07:21,441 --> 00:07:25,279 あれだけ燃えてたら 消火は無理ですよ 97 00:07:25,279 --> 00:07:27,447 一つ 提案があります 98 00:07:27,447 --> 00:07:31,451 策と呼ぶには少々荒いですが 何だ? 99 00:07:32,953 --> 00:07:34,955 (耳打ちをする) 100 00:07:34,955 --> 00:07:38,125 フッ 面白え 101 00:07:38,125 --> 00:07:41,753 (寅次郎)フン! フン! 102 00:07:41,753 --> 00:07:43,964 こちらは いつでもいけますぞ! 103 00:07:43,964 --> 00:07:46,967 よいしょっと よいしょ 104 00:07:46,967 --> 00:07:48,969 おうっ! おっと! 105 00:07:48,969 --> 00:07:53,140 よし そこでいい こっちも準備できた 106 00:07:54,766 --> 00:07:57,144 先生 どの向きへ? 107 00:07:57,144 --> 00:07:59,313 もう少々お待ちを 108 00:08:05,611 --> 00:08:07,779 この向きへ 全力で! 109 00:08:07,779 --> 00:08:09,781 承知! フン! 110 00:08:09,781 --> 00:08:12,492 フッ うおっ! 111 00:08:12,492 --> 00:08:15,787 はあ… 助けてください お侍様! 112 00:08:16,997 --> 00:08:21,793 子供が… 娘のお七が まだ中にいるんです! 113 00:08:21,793 --> 00:08:25,339 何ですって!? もう鐘は転がり始めてるのに! 114 00:08:25,339 --> 00:08:29,635 どうか 娘を助けてください お願いします! 115 00:08:29,635 --> 00:08:31,637 分かった 116 00:08:31,637 --> 00:08:34,181 新之助 ここは お前に任せる 117 00:08:34,181 --> 00:08:37,351 俺は中に入って子供を助ける あ… 118 00:08:39,353 --> 00:08:43,190 無茶ですよ! こんな中に飛び込むなんて 119 00:08:43,190 --> 00:08:45,359 自殺行為です! 120 00:08:58,664 --> 00:09:00,666 喰ってやる! 121 00:09:04,670 --> 00:09:08,048 御頭! クソッ! 122 00:09:12,052 --> 00:09:14,054 お七! 123 00:09:19,393 --> 00:09:21,687 お前に喰われてたまるか 124 00:09:21,687 --> 00:09:25,399 俺は火喰鳥 喰うのは俺の方だ! 125 00:09:35,575 --> 00:09:39,579 お七 助けに来たぞ お七! 126 00:09:39,579 --> 00:09:42,082 たす… けて 127 00:09:43,250 --> 00:09:46,420 来るぞ 構えて! (鳶達)おう! 128 00:09:51,425 --> 00:09:53,593 もう大丈夫だ 129 00:09:57,097 --> 00:10:00,600 絶対に押し潰されるな! 130 00:10:02,894 --> 00:10:04,896 はっ! 131 00:10:08,900 --> 00:10:12,904 店が… 御頭~! 132 00:10:16,450 --> 00:10:19,286 まさか 中に入っていくなんて 133 00:10:19,286 --> 00:10:21,621 これじゃあ 御頭は… 134 00:10:24,291 --> 00:10:26,626 あっ あそこに! 135 00:10:30,130 --> 00:10:33,759 もう少し 鐘が大きいと快適だったんだがな 136 00:10:33,759 --> 00:10:36,136 贅沢は言えねえか 137 00:10:38,138 --> 00:10:40,474 おお… 138 00:10:40,474 --> 00:10:42,934 御頭 ご無事でしたか! 139 00:10:42,934 --> 00:10:45,937 ああ この子を早く医者に… 140 00:10:50,942 --> 00:10:53,320 おお… 大丈夫ですか? 141 00:10:53,320 --> 00:10:55,655 ああ すまねえ 142 00:11:00,494 --> 00:11:05,165 みんな もう少しだ 残った火を喰らい尽くしてやれ! 143 00:11:05,165 --> 00:11:07,167 おう! 144 00:11:20,806 --> 00:11:24,518 御頭 何で あんな無茶したんですか! 145 00:11:24,518 --> 00:11:28,688 無駄死にする気ですか!? 新之助… 146 00:11:28,688 --> 00:11:32,526 生きてこそ 命を助けられるんじゃないんですか? 147 00:11:32,526 --> 00:11:37,823 誰かを助けるために御頭が死んだら 火消をやる意味なんてないでしょう! 148 00:11:38,824 --> 00:11:41,201 火消に無駄死になんてねえよ 149 00:11:41,201 --> 00:11:43,203 どんな死に方だって 150 00:11:43,203 --> 00:11:46,206 誰かの命を守ろうとしたことに 変わりはないんだからな 151 00:11:46,206 --> 00:11:49,000 でも… いいか 新之助 152 00:11:49,000 --> 00:11:52,712 火消の本分は命を守ること それ以外にねえ 153 00:11:52,712 --> 00:11:56,716 それが どんな命でもですか? ああ 154 00:11:56,716 --> 00:12:00,720 たとえ 自分が死ぬと分かっていても? 155 00:12:00,720 --> 00:12:02,722 そうだ 156 00:12:04,724 --> 00:12:08,395 一つ 昔話をしてもいいか? 157 00:12:08,395 --> 00:12:10,856 昔話? 158 00:12:10,856 --> 00:12:14,734 俺の 死んじまった親父の話だ 159 00:12:18,238 --> 00:12:20,866 もう十五年も前の火事だが 160 00:12:20,866 --> 00:12:23,743 その下手人が火消だったんだ 161 00:12:23,743 --> 00:12:27,414 伊神甚兵衛っていう 当時 江戸一の火消で 162 00:12:27,414 --> 00:12:29,583 俺の憧れだった 163 00:12:29,583 --> 00:12:33,253 だが どんな理由があろうと 火付けは火付け 164 00:12:33,253 --> 00:12:37,424 許されるようなもんじゃない はい 165 00:12:37,424 --> 00:12:42,596 俺の親父はな そんな火付けを助けるために死んだんだ 166 00:12:42,596 --> 00:12:44,598 えっ!? 167 00:12:44,598 --> 00:12:48,768 その最後の姿を 俺は目の前で見ていた 168 00:12:48,768 --> 00:12:52,063 《(松永)えいっ ん…》 169 00:12:52,063 --> 00:12:55,275 《源吾 ケガ人を連れて逃げよ》 170 00:12:55,275 --> 00:12:57,777 《わしは この方を救う》 171 00:12:59,446 --> 00:13:03,074 《(伊神)松永殿 もはや 貴殿に恨みはない》 172 00:13:03,074 --> 00:13:05,785 《早く源吾を連れて逃げてください》 173 00:13:05,785 --> 00:13:07,787 《いいや まだです》 174 00:13:07,787 --> 00:13:10,916 《今の私は もう仲間ではない》 175 00:13:10,916 --> 00:13:14,920 《悪人を 命を懸けて守る必要などない》 176 00:13:14,920 --> 00:13:18,298 《火消は どんな命でも救うものです》 177 00:13:18,298 --> 00:13:20,634 《たとえ それが悪人であろうとも》 178 00:13:20,634 --> 00:13:24,304 《たとえ 己が死ぬことになろうとも》 179 00:13:26,306 --> 00:13:29,476 《もはや時がない 急ぐのだ》 180 00:13:29,476 --> 00:13:33,104 《寂しい思いをさせて すまなかった》 181 00:13:34,981 --> 00:13:39,986 《源吾 おぬしは わしとは違う 多くの人を救え》 182 00:13:39,986 --> 00:13:42,322 《似ているって言ってくれよ》 183 00:13:42,322 --> 00:13:44,449 《俺は弱くて…》 184 00:13:45,825 --> 00:13:49,454 《人の強さは 人の弱さを知ることだ》 185 00:13:49,454 --> 00:13:52,457 《それを喰らって 人は強くなる》 186 00:13:53,625 --> 00:13:56,169 《くっ…》 187 00:13:57,629 --> 00:14:00,006 《フッ》 188 00:14:10,350 --> 00:14:12,852 《親父…》 189 00:14:12,852 --> 00:14:15,188 《源吾 諦めるな》 190 00:14:22,654 --> 00:14:24,656 《喰ってやれ》 191 00:14:41,881 --> 00:14:46,511 親父は火消として とても粋とは言えない男だった 192 00:14:46,511 --> 00:14:51,057 やじ馬になじられる姿を 目の当たりにしたこともある 193 00:14:51,057 --> 00:14:55,061 あの頃 俺は それが恥ずかしくてたまらなかった 194 00:14:57,897 --> 00:15:00,900 だが それは間違いだった 195 00:15:00,900 --> 00:15:06,406 最後まで火消の本分を守っていたのは 親父の方だったんだ 196 00:15:07,407 --> 00:15:12,537 親父が死んで以来 火の前に立つと真っ先に思い出すのは 197 00:15:12,537 --> 00:15:15,540 火消として救えなかった命だ 198 00:15:15,540 --> 00:15:18,918 その度に 自分の弱さを思い知らされる 199 00:15:20,420 --> 00:15:23,256 でもな 親父の言ったように 200 00:15:23,256 --> 00:15:26,926 人の強さは 人の弱さを知ることなんだ 201 00:15:26,926 --> 00:15:30,722 ずっと立ち止まっているほど 人は弱くもない 202 00:15:30,722 --> 00:15:35,268 たとえ もし俺が 誰かのために命を落とすことがあったとしても 203 00:15:35,268 --> 00:15:39,939 別の誰かが 俺の志を引き継いでくれるはずだ 204 00:15:39,939 --> 00:15:44,110 だから それは決して無駄死になんかじゃねえんだ 205 00:15:44,110 --> 00:15:48,948 色々と差し出がましいことを言って 申し訳ありませんでした 206 00:15:48,948 --> 00:15:51,117 以後 精進いたします 207 00:15:51,117 --> 00:15:54,746 よし じゃあ 作業の続きだ 208 00:15:54,746 --> 00:15:56,748 はい! 209 00:15:56,748 --> 00:15:58,958 おい そっち気をつけろよ 210 00:15:58,958 --> 00:16:03,129 俺は認めぬぞ 火喰鳥 211 00:16:06,966 --> 00:16:11,763 何て格好だ 汚えな 粋のかけらもない どこの家中だ あれは 212 00:16:11,763 --> 00:16:15,141 戸沢家らしいぜ 田舎者はこれだから… 213 00:16:15,141 --> 00:16:18,478 ぼろ鳶とは聞いていたが ここまでとはな 214 00:16:18,478 --> 00:16:22,607 あれなら 俺のふんどしの方がキレイなくらいだぜ 215 00:16:22,607 --> 00:16:24,609 アハハハハハハ! 216 00:16:24,609 --> 00:16:27,612 ぼっろぼろのぼろ鳶だ! あ… 217 00:16:27,612 --> 00:16:30,156 あ… 218 00:16:30,156 --> 00:16:32,992 てめえら 顔を上げやがれ! 219 00:16:35,328 --> 00:16:38,331 気にするなって言っても 無理だろうけどよ 220 00:16:38,331 --> 00:16:41,501 火消は ただ一人でも命を救う 221 00:16:41,501 --> 00:16:44,337 その腕で魅せるもんなんだろ? 222 00:16:44,337 --> 00:16:47,632 昨今 火消を まるで役者のようにもてはやし 223 00:16:47,632 --> 00:16:50,343 火事で喜々とする輩もいる 224 00:16:50,343 --> 00:16:55,640 火消も まんざらでもなく 粋だ 鯔背だと妙なことにこだわる 225 00:16:57,517 --> 00:16:59,644 そんなことは どうでもいいんだ 226 00:16:59,644 --> 00:17:03,189 命が守れるなら ぼろを着てたってな 227 00:17:11,364 --> 00:17:13,366 何でしょう? 228 00:17:13,366 --> 00:17:17,370 御家老は人気者になれと仰せだ 派手にやれるか? 229 00:17:17,370 --> 00:17:20,665 それはやれますよ 本職だもの 230 00:17:20,665 --> 00:17:24,043 しかし どうなっても あとで文句はなしですよ 231 00:17:24,043 --> 00:17:26,546 フッ 好きにやれ 232 00:17:28,548 --> 00:17:30,550 おおっ? 233 00:17:30,550 --> 00:17:34,846 さあさ 皆様 ただ今 紙問屋の火を消してまいりましたは 234 00:17:34,846 --> 00:17:38,558 戸沢孝次郎様家中の火消でございます 235 00:17:38,558 --> 00:17:41,686 身なりが汚いって? そりゃそうだ 236 00:17:41,686 --> 00:17:44,564 何たって 今さっき 火を消してきたばかり 237 00:17:44,564 --> 00:17:46,858 煤にまみれもしましょうよ 238 00:17:46,858 --> 00:17:49,569 えっ? そういう話ではないと? 239 00:17:49,569 --> 00:17:51,696 (一同 笑う) 240 00:17:51,696 --> 00:17:56,242 我ら新庄藩の鳶は そんじょそこらの鳶とは違う 241 00:17:56,242 --> 00:17:59,078 まずは この彦弥をご覧あれ! 242 00:18:00,580 --> 00:18:03,249 はっ! たっ! 243 00:18:03,249 --> 00:18:05,251 はっ! 244 00:18:05,251 --> 00:18:07,587 (歓声) 245 00:18:07,587 --> 00:18:11,883 愛称は山彦 現役の軽業師でございます 246 00:18:11,883 --> 00:18:15,720 この水も滴るいい男を 覚えてくださいな 247 00:18:15,720 --> 00:18:17,722 (一同 笑う) 248 00:18:17,722 --> 00:18:20,099 そこの大きい奴が見えますか? 249 00:18:20,099 --> 00:18:23,269 おい 寅 手を挙げやがれ! 250 00:18:23,269 --> 00:18:25,438 はい… 251 00:18:25,438 --> 00:18:27,440 そいつの名は寅次郎 252 00:18:27,440 --> 00:18:29,442 ケガで引退しちまったが 253 00:18:29,442 --> 00:18:34,113 今をときめく あの達ヶ関と大一番を取ったほどの幕内力士だ 254 00:18:34,113 --> 00:18:37,283 寅 いつまで ぼさっと手を挙げてやがる! 255 00:18:37,283 --> 00:18:39,619 あ… (一同 笑う) 256 00:18:39,619 --> 00:18:42,622 侍にも変わった男がおりますぜ 257 00:18:42,622 --> 00:18:46,626 我らが 加持星十郎大先生でございます 258 00:18:47,919 --> 00:18:50,129 髪色が赤いでしょう? 259 00:18:50,129 --> 00:18:54,133 幼い頃に 天神様に お力を授かった証拠です 260 00:18:54,133 --> 00:18:58,304 天の動きの見通しは 外れることはございません 261 00:18:58,304 --> 00:19:02,642 我が戸沢家の 完全無欠の天文方でい! 262 00:19:02,642 --> 00:19:06,145 お次は 火消方副頭取… 263 00:19:07,647 --> 00:19:12,151 まあ この男は置いておきますか あ… 264 00:19:12,151 --> 00:19:14,320 (一同 笑う) 265 00:19:14,320 --> 00:19:17,949 年も若く まだまだ修行中じゃあございますが 266 00:19:17,949 --> 00:19:20,785 何とも気の優しいよい御方だ 267 00:19:20,785 --> 00:19:23,788 青田買いのつもりで 目をつけておいて損はねえ 268 00:19:23,788 --> 00:19:28,167 (犬が吠える) あ… おお? 269 00:19:28,167 --> 00:19:31,337 どうやら 既に犬には人気があるようで 270 00:19:31,337 --> 00:19:33,673 (一同 笑う) 271 00:19:33,673 --> 00:19:37,677 この調子で 人にも人気が出ることを願うばかり 272 00:19:37,677 --> 00:19:42,348 将来の大火消 鳥越新之助でございます 273 00:19:42,348 --> 00:19:46,352 頑張れ! 頑張って! 274 00:19:46,352 --> 00:19:51,816 そこの大根持ったおっ母さん 見ていってくだせえよ 次は二枚目だ 275 00:19:51,816 --> 00:19:53,818 フフフフ… 276 00:19:53,818 --> 00:19:58,990 江戸の町を幾度となく救った 火喰鳥という大火消がおりました 277 00:19:58,990 --> 00:20:03,703 しかし 六年前 男は こつ然と姿を消した 278 00:20:04,704 --> 00:20:10,543 しかし 男は再び江戸の衆を守るため 立ち上がったのでございます 279 00:20:10,543 --> 00:20:14,839 火消方頭取 松永源吾でございます! 280 00:20:14,839 --> 00:20:17,842 (歓声) 281 00:20:17,842 --> 00:20:19,844 フッ 282 00:20:19,844 --> 00:20:23,389 はっ! (一同)おお? 283 00:20:23,389 --> 00:20:28,019 皆様との楽しいときも いよいよ終わりに近づきました 284 00:20:28,019 --> 00:20:32,023 まことならば 全員の名を覚えていただきたいところですが 285 00:20:32,023 --> 00:20:35,026 それは またの機会に 286 00:20:35,026 --> 00:20:37,403 もっとやってくれよ 287 00:20:37,403 --> 00:20:41,574 この広い江戸で 年に数えきれねえほどの火事が起こる 288 00:20:41,574 --> 00:20:46,245 この中には 家族親類を失った御方がおられるでしょう 289 00:20:46,245 --> 00:20:48,748 火を憎んでる御方もいるでしょう 290 00:20:48,748 --> 00:20:50,875 (泣く) 291 00:20:50,875 --> 00:20:54,754 しかし 暮らしの中に火は欠かせねえ 292 00:20:54,754 --> 00:20:57,590 母ちゃんは あったかいおまんまも作れないし 293 00:20:57,590 --> 00:21:01,260 旦那は ちょうちんなしで夜道を歩かなきゃならない 294 00:21:01,260 --> 00:21:03,596 赤子の産湯も沸かせねえ 295 00:21:05,056 --> 00:21:11,062 我らは江戸を守っているのではなく 江戸に生きる方々をお守りいたします 296 00:21:11,062 --> 00:21:14,273 そのために 格好なんて構ってられねえ 297 00:21:14,273 --> 00:21:17,068 みすぼらしくとも 汚らしくとも 298 00:21:17,068 --> 00:21:19,612 人を守ってこそ 火消 299 00:21:19,612 --> 00:21:25,284 皆々様 覚えやすいならば いっそ 何と呼んでくだすっても構いやせん 300 00:21:25,284 --> 00:21:28,287 襤褸を纏えど心は錦 301 00:21:28,287 --> 00:21:31,290 心意気なら誰にも負けやせん! 302 00:21:31,290 --> 00:21:35,628 御頭 大音声でお願いいたしやす! 303 00:21:35,628 --> 00:21:37,797 フッ 304 00:21:37,797 --> 00:21:41,092 我ら 羽州ぼろ鳶組! 305 00:21:41,092 --> 00:21:44,470 (歓声) 306 00:21:44,470 --> 00:21:48,933 (秀助)松永源吾殿 おう 何だい? 307 00:21:48,933 --> 00:21:53,646 火事場での あなた様の勇姿 いたく心に染み入りました 308 00:21:53,646 --> 00:21:56,315 私にも小さな娘がおりまして 309 00:21:56,315 --> 00:21:59,652 今後のご活躍を お祈りしております 310 00:21:59,652 --> 00:22:02,113 そうかい ありがとう 311 00:22:10,955 --> 00:22:25,845 ♪♪~