1 00:00:01,001 --> 00:00:05,005 出たよ 出たよ~ 今年の火消番付でい! 2 00:00:05,005 --> 00:00:09,510 何と何と あの火喰鳥こと新庄藩の松永源吾が 3 00:00:09,510 --> 00:00:12,179 早くも西の小結に返り咲いた~ 4 00:00:12,179 --> 00:00:15,641 さあさあ 買った 買った~! 5 00:00:15,641 --> 00:00:20,187 火喰鳥って言やあ まだ復活して四月くらいしかたってねえだろ 6 00:00:20,187 --> 00:00:23,816 ああ 何でも 火事場には とことん出張っていくらしいぜ 7 00:00:23,816 --> 00:00:28,028 この前も四谷の火事で 加賀鳶と並ぶ活躍を見せたんだとよ 8 00:00:28,028 --> 00:00:30,656 へえ~ そりゃすごいねえ 9 00:00:34,827 --> 00:01:25,586 ♪♪~ 10 00:02:08,921 --> 00:02:12,758 すいませんねえ こんなことまでしていただいて 11 00:02:12,758 --> 00:02:16,470 (源吾)なあに 俺らは早く うまい蕎麦を食べたいだけだよ 12 00:02:16,470 --> 00:02:19,765 (金五郎)ああ 小諸屋がねえと寂しくてなあ 13 00:02:19,765 --> 00:02:22,476 (漣次)違えねえ 頼むぜ 女将 14 00:02:22,476 --> 00:02:26,480 はい 必ず 小諸屋を再開させてみせます 15 00:02:27,481 --> 00:02:30,317 (深雪)皆さん お疲れさまです (三人)うん? 16 00:02:30,317 --> 00:02:33,153 (深雪)これでも食べて 休憩なさってください 17 00:02:34,947 --> 00:02:37,324 うめえ 18 00:02:38,784 --> 00:02:41,954 (左門)いや~ しかし 復帰したばかりの源吾が 19 00:02:41,954 --> 00:02:45,332 いきなり 西の小結になるとはなあ 20 00:02:45,332 --> 00:02:49,336 (寅次郎)御頭には 昔の功績もありますからね 21 00:02:51,171 --> 00:02:55,509 (新之助)でも 私が入幕すらしてないのは心外だなあ 22 00:02:55,509 --> 00:02:57,511 (彦弥)いや おめえは無理だろ 23 00:02:57,511 --> 00:03:00,347 俺が入ってねえのは 明らかにおかしいけどよ 24 00:03:00,347 --> 00:03:05,811 バカ言え! ハナタレどもが入幕できるほど 火消番付は甘くねえよ! 25 00:03:05,811 --> 00:03:07,813 しまった! 26 00:03:07,813 --> 00:03:11,191 おっさんの前で 番付の話をするのは御法度だったぜ 27 00:03:11,191 --> 00:03:13,819 漣次さんに 番付 抜かれたんだもんな 28 00:03:13,819 --> 00:03:15,821 お… おう 29 00:03:15,821 --> 00:03:17,990 まあ おめえみてえな向こう見ずは 30 00:03:17,990 --> 00:03:21,827 番付に入る前に おっちんじまうのがオチだろうけどな 31 00:03:21,827 --> 00:03:24,997 悪いけど おっさんよりは長生きするぜ 32 00:03:24,997 --> 00:03:28,208 俺は 漣次さんを超える纏持ちになるからよ 33 00:03:28,208 --> 00:03:33,005 フッ おめえ ほら吹き番付なら大関になれるぜ ヘヘヘ 34 00:03:33,005 --> 00:03:35,215 ほら吹きって… 35 00:03:35,215 --> 00:03:37,551 (一同 笑う) 36 00:03:37,551 --> 00:03:41,221 (杉野)何が そんなに おもろいんでっか? 37 00:03:42,556 --> 00:03:44,558 あんたか 38 00:03:44,558 --> 00:03:48,729 (杉野)人の店 ぶち壊しといて よう そんな笑えまんなあ? 39 00:03:48,729 --> 00:03:50,731 何だ? こいつ 40 00:03:50,731 --> 00:03:53,734 この辺に 店を構えていた商人だ 41 00:03:53,734 --> 00:03:58,030 あんた 火消番付いうんの 小結になったそうやないか 42 00:03:58,030 --> 00:04:02,868 ワイは 店なくしたのに あんただけ得するって納得いきまへんで 43 00:04:05,746 --> 00:04:08,415 今 得するとおっしゃいましたが 44 00:04:08,415 --> 00:04:12,753 火事が起こって 最も得する商いは何かご存じですか? 45 00:04:12,753 --> 00:04:15,255 何や やぶから棒に… 46 00:04:15,255 --> 00:04:18,050 それは 材木屋と畳屋です 47 00:04:18,050 --> 00:04:21,762 確か 杉野様は その両方をされているとか 48 00:04:21,762 --> 00:04:24,431 よもや 江戸の火事の多さにつけ込んで 49 00:04:24,431 --> 00:04:28,769 上方から 進出されたわけではございませんよね? 50 00:04:28,769 --> 00:04:30,771 そんなわけあるかいな 51 00:04:30,771 --> 00:04:34,608 とはいえ 悪い噂というものは すぐに広まるもの 52 00:04:34,608 --> 00:04:37,778 私 噂話が大好きでして 53 00:04:37,778 --> 00:04:43,283 杉野様の態度次第では お口が勝手に動いてしまうかも… 54 00:04:43,283 --> 00:04:45,285 ワイを脅す気か? 55 00:04:45,285 --> 00:04:50,082 いいえ 穏便に済ませましょうと御提案してるんです 56 00:04:50,082 --> 00:04:52,084 ああ もうええ! 57 00:04:52,084 --> 00:04:55,796 店の一つや二つ くれてやるわ! フン! 58 00:04:56,797 --> 00:05:02,302 (深雪)杉野様 あなたの商いがなければ 生活に困る方もたくさんおられます 59 00:05:02,302 --> 00:05:05,806 どうか 今後も 我々をお助けくださいませ 60 00:05:06,932 --> 00:05:08,934 くっ… 61 00:05:11,103 --> 00:05:13,814 深雪様 カッコいい~! 62 00:05:13,814 --> 00:05:16,108 見事な弁論術でした 63 00:05:16,108 --> 00:05:20,487 深雪様のお知恵と料理の腕も ぼろ鳶には欠かせません 64 00:05:20,487 --> 00:05:24,116 ありがとよ 深雪 助かったぜ 65 00:05:24,116 --> 00:05:26,118 いえいえ 66 00:05:26,118 --> 00:05:28,954 (彦弥)よっ! さすがでさあ 67 00:05:28,954 --> 00:05:31,957 じゃあ みんな そろそろ再開するか! 68 00:05:31,957 --> 00:05:33,959 おう! 69 00:05:34,460 --> 00:05:36,837 (鐘の音) 70 00:05:40,632 --> 00:05:44,470 もう俺には 仲間などできないと思っていた 71 00:05:44,470 --> 00:05:49,183 私も 旦那様が再び 火消組を率いる日が来るとは 72 00:05:49,183 --> 00:05:51,351 夢にも思いませんでした 73 00:05:52,644 --> 00:05:54,855 苦労かけたな 74 00:05:54,855 --> 00:05:56,857 いいえ 75 00:05:56,857 --> 00:06:01,195 七年間の貧乏暮らしも 今となっては いい思い出です 76 00:06:03,197 --> 00:06:07,201 そうか あれからもう七年か 77 00:06:15,667 --> 00:06:20,214 ヘイホ ヘイホ ヘイホ ヘイホ ヘイホ 78 00:06:20,214 --> 00:06:22,382 もっと気合い入れろ! 79 00:06:28,514 --> 00:06:30,682 (庄助)あっ! 80 00:06:32,226 --> 00:06:34,228 遅い! 庄助 81 00:06:34,228 --> 00:06:36,688 そんなんじゃ 俺一人でやった方が早えぞ 82 00:06:36,688 --> 00:06:38,690 すいません 83 00:06:41,527 --> 00:06:44,530 なあ 最近の御頭 変じゃねえか? 84 00:06:44,530 --> 00:06:49,076 ああ 孫一さんがやめてから 何か必死っつうか 85 00:06:49,076 --> 00:06:51,537 おい そこの二人 86 00:06:51,537 --> 00:06:54,540 お前らも必死になれねえんなら やめてもいいぞ 87 00:06:54,540 --> 00:06:57,709 二人欠けようが 俺一人で穴を埋めてやる 88 00:06:57,709 --> 00:06:59,920 す… すいません! 89 00:07:01,088 --> 00:07:03,257 (足音) 90 00:07:11,098 --> 00:07:14,101 すまんな 突然訪ねてしまって 91 00:07:14,101 --> 00:07:18,939 娘の深雪だ こいつが おぬしを一目見たいと言いだしてな 92 00:07:18,939 --> 00:07:21,441 あ… ちょっとお父様! 93 00:07:21,441 --> 00:07:24,111 うん? どこかでお会いしましたか? 94 00:07:24,111 --> 00:07:26,947 あっ いいえ 95 00:07:26,947 --> 00:07:30,284 昔から おぬしに興味があるそうだ 96 00:07:30,284 --> 00:07:33,579 もう! ハハハハハハ! 97 00:07:33,579 --> 00:07:35,581 ま… 松永様 98 00:07:35,581 --> 00:07:38,959 火消屋敷を見学させていただいても よろしいでしょうか? 99 00:07:38,959 --> 00:07:42,963 もちろん 私が案内いたしましょうか? 100 00:07:42,963 --> 00:07:46,967 いえ 一人で探索するのが好きなので 101 00:07:54,141 --> 00:07:56,143 照れておるのだ 102 00:07:56,143 --> 00:07:58,312 深雪も もう十七 103 00:07:58,312 --> 00:08:01,315 そろそろ よき縁があってもいい年頃だ 104 00:08:01,315 --> 00:08:03,984 深雪様なら 引く手あまたでしょう 105 00:08:03,984 --> 00:08:08,614 うむ 実際 縁談もあったが 深雪は全て断った 106 00:08:08,614 --> 00:08:10,782 おぬしを好いておるゆえ 107 00:08:12,492 --> 00:08:15,621 どうだ? 深雪と一緒にならぬか? 108 00:08:18,999 --> 00:08:23,170 いいお話ですが 火消組は今が正念場 109 00:08:23,170 --> 00:08:25,797 妻をめとる余裕など… 110 00:08:25,797 --> 00:08:28,508 孫一殿のことか? 111 00:08:28,508 --> 00:08:33,013 おやっさんは野暮用とだけ言って 出て行ってしまった 112 00:08:33,013 --> 00:08:36,808 孫一殿にも 何か事情があったのだろう 113 00:08:36,808 --> 00:08:39,645 私が見限られたのかも… 114 00:08:39,645 --> 00:08:42,814 おぬしは 立派に火消頭を務めておる 115 00:08:42,814 --> 00:08:47,527 もし 御父上が生きておられたら さぞ喜んでいただろう 116 00:08:47,527 --> 00:08:49,529 もう遅いのです 117 00:08:49,529 --> 00:08:52,532 私が 父のことを理解したのは死ぬ間際 118 00:08:52,532 --> 00:08:56,036 それまでは 愚鈍な火消として恥じておりました 119 00:08:56,036 --> 00:09:00,832 ゆえに 父の分まで火を消して 償っていきたいのです 120 00:09:00,832 --> 00:09:04,670 もっと 肩の力を抜いてもいいのだぞ 121 00:09:04,670 --> 00:09:09,549 力を抜けば 背負ってるもの全てが落ちていきそうで 122 00:09:09,549 --> 00:09:13,053 どこまでも不器用な火消よのう 123 00:09:14,054 --> 00:09:16,556 はあ はあ… 124 00:09:16,556 --> 00:09:19,059 くっ… はあ はあ 125 00:09:19,059 --> 00:09:21,228 (走る足音) 126 00:09:22,396 --> 00:09:26,066 はあ はあ… 127 00:09:26,066 --> 00:09:28,860 病に倒れられたとお聞きして… 128 00:09:28,860 --> 00:09:30,862 わざわざすまぬ 129 00:09:30,862 --> 00:09:32,864 (せきこむ) 130 00:09:32,864 --> 00:09:34,866 大丈夫ですか? 131 00:09:34,866 --> 00:09:39,579 肺を病んでおってな あと一年持てば御の字よ 132 00:09:39,579 --> 00:09:41,581 また ご冗談を… 133 00:09:44,710 --> 00:09:46,712 そんな… 134 00:09:48,255 --> 00:09:52,092 人間 五十年 ちょうどいい引き際よ 135 00:09:52,092 --> 00:09:56,722 ただ 唯一の心残りは おぬしと深雪のことだ 136 00:09:56,722 --> 00:09:59,099 その件は まだ… 137 00:09:59,099 --> 00:10:02,602 よいよい だが これだけは言わせてくれ 138 00:10:02,602 --> 00:10:06,106 わしは 重内様には誠に世話になった 139 00:10:06,106 --> 00:10:11,611 金勘定しかできない堅物を 人間らしく変えてくれたのも御父上だ 140 00:10:11,611 --> 00:10:14,906 おかげで こうして娘にも恵まれた 141 00:10:14,906 --> 00:10:19,286 だから 源吾 おぬしにも幸せになってほしいのだ 142 00:10:19,286 --> 00:10:21,288 重内様亡きあと 143 00:10:21,288 --> 00:10:25,917 わしは おぬしを 本当の息子だと思って接してきたのだから 144 00:10:26,918 --> 00:10:28,920 右膳殿… 145 00:10:34,301 --> 00:10:38,638 わしを 父上と呼んでくれる日が来ればいいのだが 146 00:10:42,476 --> 00:10:47,647 (犬が吠える) 147 00:10:47,647 --> 00:10:51,777 (走る足音) 148 00:10:51,777 --> 00:10:54,654 松永様 火事でございます 149 00:10:54,654 --> 00:10:58,158 松平御家中の月元右膳様方にて 150 00:10:58,158 --> 00:11:00,160 おい 今 何て言った!? 151 00:11:00,160 --> 00:11:03,955 月元右膳様方にて 出火でございます 152 00:11:09,669 --> 00:11:11,671 お父様~! 153 00:11:12,964 --> 00:11:16,802 深雪様! 松永様! 154 00:11:16,802 --> 00:11:19,346 父が まだ中に! どうして!? 155 00:11:19,346 --> 00:11:21,348 自分は最後まで残ると言って 156 00:11:21,348 --> 00:11:25,352 家中の者を 送り出していたのですが それきり… 157 00:11:25,352 --> 00:11:27,521 煙を吸い込んだか 158 00:11:27,521 --> 00:11:31,191 父は肺病 一体どうすれば… 159 00:11:31,191 --> 00:11:34,986 庄助 月元邸に入るぞ 160 00:11:34,986 --> 00:11:36,988 それは危険すぎます! 161 00:11:36,988 --> 00:11:40,992 まだ 家の中まで火は回っていない 今なら間に合う! 162 00:11:40,992 --> 00:11:45,705 無理です! それに 早く隣家を壊さねえと火が広がっちまう! 163 00:11:45,705 --> 00:11:49,209 今は風も吹いてねえ それに あの雲だ 164 00:11:49,209 --> 00:11:51,211 一雨 来るかもしれん 165 00:11:53,713 --> 00:11:55,715 冷静になってください 166 00:11:55,715 --> 00:11:58,844 普段の御頭なら そんなこと言わねえはずだ 167 00:11:58,844 --> 00:12:02,222 身内だからですか? ああ? 168 00:12:02,222 --> 00:12:05,559 御頭 月元家に婿入りするんでしょ? 169 00:12:05,559 --> 00:12:08,854 だから 何が何でも助けたいんだ 170 00:12:08,854 --> 00:12:12,732 そんなんじゃねえ 人の命を守るためだ! 171 00:12:12,732 --> 00:12:16,027 なら 火を広げないのが先決でしょう 172 00:12:16,027 --> 00:12:20,407 それに 火消が身内を優先するのは御法度ですぜ? 173 00:12:20,407 --> 00:12:22,868 くっ… 174 00:12:22,868 --> 00:12:26,413 月元邸に行きたいなら 御頭だけ行けばいい 175 00:12:26,413 --> 00:12:29,249 一人で何でもできるんだから 176 00:12:29,249 --> 00:12:32,252 お前ら 俺の指示が聞けねえのか 177 00:12:32,252 --> 00:12:36,256 もう あんたにはついていけねえ 俺らは延焼を防ぐぞ! 178 00:12:36,256 --> 00:12:38,258 おう! 179 00:12:39,759 --> 00:12:41,761 おい 待て! 180 00:12:47,434 --> 00:12:49,436 クソッ… 181 00:12:49,436 --> 00:12:51,897 右膳殿は必ず助けます 182 00:13:04,618 --> 00:13:06,620 向こうか 183 00:13:12,083 --> 00:13:14,085 右膳殿! 184 00:13:17,631 --> 00:13:19,925 おお 源吾か 185 00:13:19,925 --> 00:13:22,469 さあ ここから出ますぞ 186 00:13:22,469 --> 00:13:27,474 もうよい わしは捨て置け おぬしの身が危ない 187 00:13:27,474 --> 00:13:32,479 何をおっしゃいます あなたを助けると深雪様に約束しました 188 00:13:36,483 --> 00:13:40,487 もう少しの辛抱です じきに庭に出られます 189 00:13:40,487 --> 00:13:43,657 (風の音) クソッ 風が… 急ぎますよ! 190 00:13:43,657 --> 00:13:45,659 (風の音) ぬぐっ… 191 00:13:48,995 --> 00:13:51,998 おぬし一人なら まだ出られる 行け! 192 00:13:51,998 --> 00:13:55,460 ダメです! あなたと一緒でなければ 193 00:13:55,460 --> 00:13:58,838 頑固なところは 御父上そっくりだな 194 00:13:58,838 --> 00:14:00,840 血は争えませんな 195 00:14:00,840 --> 00:14:03,343 (せきこむ) 196 00:14:04,844 --> 00:14:08,014 居間の方へ行くぞ 居間? 197 00:14:14,479 --> 00:14:16,481 これは… 198 00:14:16,481 --> 00:14:20,193 昔 家財を守るために作った穴蔵だ 199 00:14:20,193 --> 00:14:23,488 先におぬしが入って わしを受け止めてくれ 200 00:14:23,488 --> 00:14:25,490 分かりました 201 00:14:28,660 --> 00:14:30,870 これを頼む 202 00:14:32,205 --> 00:14:34,374 はい 203 00:14:35,875 --> 00:14:37,877 (引き戸が閉まる) 何を!? 204 00:14:44,509 --> 00:14:47,387 右膳殿 開けてください! 205 00:14:47,387 --> 00:14:50,056 (右膳)二人入れば空気が持たぬ 206 00:14:50,056 --> 00:14:53,518 おぬしだけでも生き延びよ! そんな… 207 00:14:53,518 --> 00:14:55,687 どうせ長くはない命 208 00:14:55,687 --> 00:14:57,897 武士として 209 00:14:57,897 --> 00:15:00,525 潔く逝かせてくれ 210 00:15:00,525 --> 00:15:04,404 (せきこむ) 211 00:15:04,404 --> 00:15:06,406 おやめください! 212 00:15:06,406 --> 00:15:09,075 深雪様とのご縁談も ありがたくお受けいたします! 213 00:15:09,075 --> 00:15:11,077 ゆえに 何とぞ! 214 00:15:11,077 --> 00:15:14,539 そうか ならば その刀は譲ろう 215 00:15:14,539 --> 00:15:17,709 婿殿には もったいないほどの名刀ぞ 216 00:15:17,709 --> 00:15:19,919 (せきこむ) 217 00:15:19,919 --> 00:15:24,424 (荒い息づかい) 218 00:15:24,424 --> 00:15:26,926 父上~! 219 00:15:26,926 --> 00:15:29,262 よい響きだ 220 00:15:35,435 --> 00:15:39,564 火消は このような魔物と闘っておるのか 221 00:15:39,564 --> 00:15:43,109 (引き戸を叩きながら)開けてください 父上! 222 00:15:43,109 --> 00:15:47,739 源吾 おぬしは生きて 多くの人を救え 223 00:15:47,739 --> 00:15:50,575 深雪のことも頼んだぞ 224 00:15:53,745 --> 00:15:58,124 父上~! 225 00:16:03,588 --> 00:16:05,590 くっ… 226 00:16:22,482 --> 00:16:25,318 定火消を おやめになるそうですね 227 00:16:25,318 --> 00:16:28,988 ええ あの火事で 配下達からも見捨てられ 228 00:16:28,988 --> 00:16:30,990 お役御免となりました 229 00:16:30,990 --> 00:16:34,494 でも あれは 松永様に非はございません 230 00:16:34,494 --> 00:16:39,165 いえ もとを正せば 私の独りよがりが原因なのです 231 00:16:39,165 --> 00:16:43,002 必死になりすぎて 仲間に頼ることを忘れていた 232 00:16:43,002 --> 00:16:47,799 だから 信頼も得られず 大事なときに失態を… 233 00:16:47,799 --> 00:16:50,510 私との縁談は? 234 00:16:50,510 --> 00:16:55,348 職を失った私に あなたを養うことはできません 235 00:16:55,348 --> 00:17:00,186 松永様ほどの実績があれば 他の組から お声が… 236 00:17:00,186 --> 00:17:02,647 火消は もうやりません 237 00:17:02,647 --> 00:17:06,359 父と呼べる存在を 二人も火事で失った 238 00:17:06,359 --> 00:17:10,363 私は火が怖い 怖くて仕方がない 239 00:17:14,534 --> 00:17:18,371 少し 私と歩きましょう えっ… 240 00:17:18,371 --> 00:17:20,832 いいから ついてきてください 241 00:17:24,836 --> 00:17:29,674 一体どこまで行くのです? もう日も暮れたし 帰りましょう 242 00:17:39,392 --> 00:17:41,853 今日は隅田川の川開き 243 00:17:41,853 --> 00:17:45,231 これを見ていただきたく お連れしました 244 00:17:45,231 --> 00:17:49,068 花火か そんなことも忘れていた 245 00:17:55,575 --> 00:17:57,577 キレイ… 246 00:17:57,577 --> 00:18:01,414 花火師は あのような美しい火を生み出せるのか 247 00:18:01,414 --> 00:18:04,083 火消とは大違いだ 248 00:18:04,083 --> 00:18:07,086 火消も立派ではございませんか 249 00:18:07,086 --> 00:18:10,089 花火師の業の先には笑顔があるが 250 00:18:10,089 --> 00:18:14,594 火消の業の先にあるのは 大なり小なり泣き顔です 251 00:18:14,594 --> 00:18:16,721 そんなことはありません 252 00:18:16,721 --> 00:18:20,433 火消は人を救い その者を笑顔にします 253 00:18:20,433 --> 00:18:25,271 松永様に救われた方も この花火を笑顔で見ているはずです 254 00:18:25,271 --> 00:18:28,608 でも 私はもう 火消には戻れない 255 00:18:28,608 --> 00:18:34,447 いいのです 火消をやめても 生きてゆくすべは他にもあります 256 00:18:34,447 --> 00:18:36,616 深雪様… 257 00:18:36,616 --> 00:18:41,913 松永様を象徴する鳳凰は 再生を繰り返す不死身の鳥 258 00:18:41,913 --> 00:18:46,459 あなた様も 再び夢を見られる日が来るはずです 259 00:18:48,294 --> 00:18:50,296 ありがとう 260 00:19:04,936 --> 00:19:09,649 過去は過去 今がよければ それでいいではありませんか 261 00:19:09,649 --> 00:19:11,651 ああ 262 00:19:17,490 --> 00:19:20,952 (深雪)旦那様 お客様が来ておられます 263 00:19:20,952 --> 00:19:23,162 うん? 客人? 264 00:19:25,790 --> 00:19:30,670 わしは火付盗賊改方頭 長谷川平蔵と申す 265 00:19:30,670 --> 00:19:32,672 単刀直入に問う 266 00:19:32,672 --> 00:19:36,175 松永源吾 おぬし 狐火か? 267 00:19:36,175 --> 00:19:38,511 なぜ 私が狐火だと? 268 00:19:38,511 --> 00:19:40,513 小諸屋の一件 269 00:19:40,513 --> 00:19:45,518 おぬしが訪れた直後に被害を受け 消し止めたのも おぬし 270 00:19:45,518 --> 00:19:47,812 それで 私に何の得があると? 271 00:19:47,812 --> 00:19:50,690 名声と加持星十郎を得た 272 00:19:50,690 --> 00:19:53,359 そもそも 火消に戻ったのも 273 00:19:53,359 --> 00:19:55,987 鳥越蔵之介殿の殉職がきっかけ 274 00:19:55,987 --> 00:19:58,698 その火事を起こしたのは狐火だ 275 00:19:58,698 --> 00:20:00,992 全ては自作自演だと? 276 00:20:00,992 --> 00:20:04,370 可能性としては大いにある 277 00:20:04,370 --> 00:20:07,832 一つお聞きしてもよいか? 何だ 278 00:20:07,832 --> 00:20:13,004 蔵之介殿のような火消が なぜ 朱土竜を見破れなかったのでしょう? 279 00:20:13,004 --> 00:20:18,009 それが演技なら 大したものだ いいだろう 教えてやる 280 00:20:18,009 --> 00:20:22,221 狐火は 人の善意につけ込む罠を仕掛けたのだ 281 00:20:22,221 --> 00:20:26,225 奴は あらかじめ 土蔵に火種を仕込むと同時に 282 00:20:26,225 --> 00:20:28,561 複数の犬を押し込めた 283 00:20:30,855 --> 00:20:35,234 (長谷川)空気を食いつくし 火が静まり 煙と熱さで 284 00:20:35,234 --> 00:20:38,404 犬が吠え始める 《(犬が吠える)》 285 00:20:38,404 --> 00:20:43,409 (長谷川)つまり 犬を助けようと思えば 286 00:20:43,409 --> 00:20:46,412 一巻の終わりよ 287 00:20:46,412 --> 00:20:48,414 何て野郎だ 288 00:20:48,414 --> 00:20:51,876 おぬし なかなか尻尾を出さぬ狐だな 289 00:20:51,876 --> 00:20:56,255 長谷川様 うちの主人は バカがつくほどの正直者です 290 00:20:56,255 --> 00:21:00,426 そんなお人が 演技などできるはずがございません 291 00:21:00,426 --> 00:21:02,428 あ… 292 00:21:02,428 --> 00:21:07,058 長谷川様は 御老中・田沼意次様と昵懇の仲とか 293 00:21:07,058 --> 00:21:09,435 まだ主人をお疑いなさるなら 294 00:21:09,435 --> 00:21:15,441 私 命を賭してでも 田沼様に直訴する覚悟でございます 295 00:21:15,441 --> 00:21:19,904 フッ ハハハハハ これは一本取られた 296 00:21:19,904 --> 00:21:24,283 まあいい 今日は奥方に免じて一旦引き下がる 297 00:21:24,283 --> 00:21:28,913 だが 松永 おぬしの嫌疑が晴れたわけではないからな 298 00:21:30,456 --> 00:21:32,458 おっと 299 00:21:32,458 --> 00:21:34,919 一つ聞くのを忘れておった 300 00:21:34,919 --> 00:21:37,797 この男を見たことはないか? 301 00:21:39,799 --> 00:21:42,468 いえ 見覚えはありません 302 00:21:42,468 --> 00:21:44,470 そうか 303 00:21:50,810 --> 00:21:54,480 (藤五郎)お前 あの火消に執着しているようだな 304 00:21:54,480 --> 00:21:56,649 (秀助)あんたには関係ない 305 00:21:56,649 --> 00:22:01,821 御屋形様の計画が最優先だ それを忘れるな 306 00:22:01,821 --> 00:22:03,948 分かっている 307 00:22:11,122 --> 00:22:59,003 ♪♪~