1 00:00:02,002 --> 00:00:04,171 (イネ)「ばあさま」? どこの誰か 存じ上げませんが➡ 2 00:00:04,171 --> 00:00:09,176 それは もしかして 私のことでしょうか? 3 00:00:09,176 --> 00:00:11,178 佐々木イネ。 (正蔵)ハッ…。 4 00:00:11,178 --> 00:00:14,181 それが 私の名です。 5 00:00:16,350 --> 00:00:18,685 演技や冗談ではなぐ➡ 6 00:00:18,685 --> 00:00:22,523 本当に わしのことが わからんのか? 7 00:00:22,523 --> 00:00:24,524 はい。 8 00:00:24,524 --> 00:00:26,526 《なんということだ! 9 00:00:26,526 --> 00:00:29,696 ばあさまの記憶そのものが 若返ってまった! 10 00:00:29,696 --> 00:00:31,698 佐々木と名乗っている ということは➡ 11 00:00:31,698 --> 00:00:34,701 つまり わしと出会う前の ばあさま》 12 00:00:34,701 --> 00:00:39,706 目覚めたら そこは 100年後の世界。 13 00:00:39,706 --> 00:00:43,710 状況によっては 取り乱しかねないのですが➡ 14 00:00:43,710 --> 00:00:45,879 結婚指輪から察するに➡ 15 00:00:45,879 --> 00:00:49,550 あなたの言ってることは 本当のようですね。 16 00:00:49,550 --> 00:00:51,885 恐らく おかしいのは 私のほう。 17 00:00:51,885 --> 00:00:54,554 斎藤さん。 18 00:00:54,554 --> 00:00:59,059 昔 あなたに プロポーズしたのは…。 19 00:00:59,059 --> 00:01:03,330 私からだったんですよね? んっ… あっ… ああ。 20 00:01:03,330 --> 00:01:05,999 私は とても興味があります。 21 00:01:05,999 --> 00:01:09,002 なぜ この世界の私が あなたに ほれ➡ 22 00:01:09,002 --> 00:01:14,007 半世紀以上も 共に人生を歩もうと思ったのか。 23 00:01:14,007 --> 00:01:17,010 んっ? 1つ 提案があります。 24 00:01:17,010 --> 00:01:21,615 もう一度 私を ほれさせてみてくれませんか。 25 00:03:07,988 --> 00:03:12,325 とりあえず 記憶を失ったり いろいろ大変だが➡ 26 00:03:12,325 --> 00:03:14,494 まずは 飯だ 飯。 27 00:03:14,494 --> 00:03:18,331 変わった はんごうですね。 これは 炊飯ジャーという➡ 28 00:03:18,331 --> 00:03:22,502 電気で米を炊く機械だべ。 食べてみい。 29 00:03:22,502 --> 00:03:25,005 あむ… んっ! 30 00:03:29,342 --> 00:03:31,678 《なんですか? これ。 31 00:03:31,678 --> 00:03:34,681 私の知ってる お米じゃない!》 32 00:03:34,681 --> 00:03:39,519 まっ… まあまあ 美味ですね。 だべ~? 33 00:03:39,519 --> 00:03:43,690 さあ 余り物だばって 食うべ 食うべ! 34 00:03:43,690 --> 00:03:47,861 安心しました。 んっ? 35 00:03:47,861 --> 00:03:51,698 未来の日本でも 変わってないこともあるんですね。 36 00:03:51,698 --> 00:03:54,534 あっ… ああ…。 37 00:03:54,534 --> 00:03:56,703 (2人)いただきます。 38 00:03:56,703 --> 00:03:59,973 謎の素材の容器に入った 納豆。 39 00:03:59,973 --> 00:04:03,643 この しょうゆ瓶のデザインも すばらしい。 40 00:04:03,643 --> 00:04:07,647 どうした? そんな 不思議そうな顔で見つめて。 41 00:04:07,647 --> 00:04:10,484 いえ 少し驚きまして。 42 00:04:10,484 --> 00:04:12,819 一家のあるじが 家事をこなしてる姿に➡ 43 00:04:12,819 --> 00:04:15,655 見慣れず つい。 あ~。 44 00:04:15,655 --> 00:04:21,828 わしのおやじが亭主関白でな それが反面教師になったんだ。 45 00:04:21,828 --> 00:04:24,164 料理は苦手だったはんで➡ 46 00:04:24,164 --> 00:04:27,000 ばあさまに任せることが 多かったが➡ 47 00:04:27,000 --> 00:04:30,003 それ以外は わしも やってるべ。 48 00:04:30,003 --> 00:04:34,508 偉いですね。 「偉い」? 何も偉ぐないべ。 49 00:04:34,508 --> 00:04:39,012 ばあさまは 畑仕事も わしと一緒に こなしてくれとる。 50 00:04:39,012 --> 00:04:43,016 あっ…。 ならば わしだけ 家に帰ったあと➡ 51 00:04:43,016 --> 00:04:46,520 1人 酒をあおるわけにも いがんべさ。 52 00:04:46,520 --> 00:04:50,190 そういう時代になったんですね 今は。 53 00:04:50,190 --> 00:04:54,694 わしらは 最初から ずっと そうしてきた。 54 00:04:54,694 --> 00:04:58,031 釣り合いが取れないのが 嫌なだけだべ。 55 00:04:58,031 --> 00:05:02,803 《数十年 続けてきた 日常 というわけですか。 56 00:05:02,803 --> 00:05:04,971 家事をしてあげたとしても➡ 57 00:05:04,971 --> 00:05:08,141 ひけらかし 感謝をねだる様子もなし》 58 00:05:08,141 --> 00:05:10,977 ふ~ん。 59 00:05:10,977 --> 00:05:13,813 この ラップとかいう物 すごいですね。 60 00:05:13,813 --> 00:05:18,151 どんどん出てくる。 もったいないから やめれ。 61 00:05:18,151 --> 00:05:23,156 砂時計? 若返る? どういうことですか? それは。 62 00:05:23,156 --> 00:05:25,992 どう伝えれば…。 63 00:05:25,992 --> 00:05:30,597 まあ とりあえず 一晩 寝れば わかるべ。 64 00:05:33,834 --> 00:05:36,670 ハッ! と まあ➡ 65 00:05:36,670 --> 00:05:39,339 こういうことなんだばって。 66 00:05:39,339 --> 00:05:43,343 ばあさまは 砂時計の夢 見たか? いっ… いいえ! 67 00:05:43,343 --> 00:05:46,012 というか あなた 本当に 斎藤さん? 68 00:05:46,012 --> 00:05:48,014 まさか 本当に 若返るなんて! 69 00:05:48,014 --> 00:05:51,017 その… 今の わしに 見覚えはないか? 70 00:05:51,017 --> 00:05:53,520 えっ… えっと… その…。 71 00:05:53,520 --> 00:05:56,856 ごめんなさい。 存じ上げないです。 72 00:05:56,856 --> 00:05:59,359 がっ… ああ…。 73 00:05:59,359 --> 00:06:02,128 すまんな 驚かせてしまって。 74 00:06:02,128 --> 00:06:04,464 いえ こちらこそ。 んっ…。 75 00:06:04,464 --> 00:06:07,968 《不思議です。 今の あなたの声や姿に➡ 76 00:06:07,968 --> 00:06:12,138 覚えはないはずなのに なぜでしょう? 77 00:06:12,138 --> 00:06:15,642 あなたの その 寂しげな背中を見ていると➡ 78 00:06:15,642 --> 00:06:19,646 私にも その痛みを分けてほしいと➡ 79 00:06:19,646 --> 00:06:23,350 強く願ってしまうのは…》 80 00:06:25,485 --> 00:06:30,490 これが息子夫婦と孫ですか? そうだ! 81 00:06:30,490 --> 00:06:33,326 できた 子どもたちだぞ。 82 00:06:33,326 --> 00:06:36,162 けんかもせんし 親孝行。 83 00:06:36,162 --> 00:06:39,666 孫も優しくて めんこい子ばかりだべ。 84 00:06:39,666 --> 00:06:42,669 そうですか。 85 00:06:42,669 --> 00:06:45,505 《もし 私が 記憶を失ったことを知れば➡ 86 00:06:45,505 --> 00:06:47,674 ショックでしょうね》 (扉の開く音) 87 00:06:47,674 --> 00:06:50,677 (未乃) おじいちゃ~ん 遊びに来たよ! 88 00:06:50,677 --> 00:06:53,513 (2人)がっ! 89 00:06:53,513 --> 00:06:56,683 そうだ! 今日は 義明たちが来る日! 90 00:06:56,683 --> 00:07:00,120 すっかり忘れでた! どうするべ!? 91 00:07:00,120 --> 00:07:04,124 んっ…。 斎藤さ… いえ じいさま。 92 00:07:04,124 --> 00:07:06,960 今日のところは ばあさまを演じます。 93 00:07:06,960 --> 00:07:09,129 記憶や なまりは どうする? 94 00:07:09,129 --> 00:07:11,965 そこは うまく フォローしてください。 95 00:07:11,965 --> 00:07:14,467 私は 息子さんや お孫さんのことは➡ 96 00:07:14,467 --> 00:07:16,469 何も知りません。 97 00:07:16,469 --> 00:07:18,805 ですが 時代は違えども➡ 98 00:07:18,805 --> 00:07:21,808 母親としての役目は 変わらないはず。 99 00:07:23,810 --> 00:07:29,649 母親の務めは 子どもたちを 悲しませないことでしょ? 100 00:07:29,649 --> 00:07:33,486 あれ? おばあちゃん 髪 黒い! 101 00:07:33,486 --> 00:07:35,989 おかえりだべ 未乃。 102 00:07:38,325 --> 00:07:40,327 (義明)体の調子は どうだ? 103 00:07:40,327 --> 00:07:43,496 今のところは このとおり 元気だべ。 104 00:07:43,496 --> 00:07:46,499 わしも 元気ですだべ! 105 00:07:46,499 --> 00:07:48,501 ひっ! 「ですだべ」? 106 00:07:48,501 --> 00:07:52,339 あ~… いや これは その…。 107 00:07:52,339 --> 00:07:55,675 文化祭の影響だべ。 あっ…。 108 00:07:55,675 --> 00:07:59,846 こないだ 未乃の学校で ばあさま 制服 着てたべ? 109 00:07:59,846 --> 00:08:02,782 あれ以来 ばあさま 女学校時代の口調に➡ 110 00:08:02,782 --> 00:08:07,787 ハマってしまっての。 えっ… ええ そうなんです。 111 00:08:07,787 --> 00:08:10,957 《未来の私は 一体 何を…》 112 00:08:10,957 --> 00:08:13,460 そうか。 なら いいんだが。 113 00:08:13,460 --> 00:08:17,297 ですます調の おばあちゃん なんだろ? すごい新鮮! 114 00:08:17,297 --> 00:08:21,301 ちょっと かっこいいかも! フフフ… そうでしょう? 115 00:08:21,301 --> 00:08:23,803 《この子が 私の孫。 116 00:08:23,803 --> 00:08:26,806 祖父母を気にかけてくれる 優しい子。 117 00:08:26,806 --> 00:08:29,309 そして 少なからず 私の血を引いている。 118 00:08:29,309 --> 00:08:32,312 なんでしょう? この気持ち》 119 00:08:32,312 --> 00:08:35,315 んっ…。 おっ… おばあちゃん? 120 00:08:35,315 --> 00:08:39,319 フッ…。 あっ… おっ… おばあちゃん。 121 00:08:39,319 --> 00:08:41,988 《かわいい…》 122 00:08:41,988 --> 00:08:45,325 母さん そろそろ 未乃を離して。 嫌です。 123 00:08:45,325 --> 00:08:47,627 おばあちゃん あったか~い! 124 00:08:49,662 --> 00:08:54,000 具材を切って これを入れれば ライスカレーが出来る。 125 00:08:54,000 --> 00:08:58,004 本当ですか? ああ 本当だべ。 126 00:08:58,004 --> 00:09:02,108 んっ…。 フッ! んっ! ひぃ~! 127 00:09:02,108 --> 00:09:04,944 大きな音したけど 大丈夫か? 128 00:09:04,944 --> 00:09:07,614 あっ… ああ。 なんでもないべ! 129 00:09:07,614 --> 00:09:11,951 もっ… もしかして ばあさま 料理のしかたも 忘れたのが? 130 00:09:11,951 --> 00:09:15,121 いつもは 使用人が やってくれましたからね。 131 00:09:15,121 --> 00:09:18,291 切るだけなら 私でも できます。 フフッ…。 132 00:09:18,291 --> 00:09:21,795 どうせ 料理音痴とか 心の中で 笑ってるでしょう? 133 00:09:21,795 --> 00:09:25,632 いやいや 今の ばあさまを 笑えるものか。 134 00:09:25,632 --> 00:09:29,969 息子たちを心配させまいと してくれてるんだべ? あっ…。 135 00:09:29,969 --> 00:09:33,139 斎藤さんは 料理できるんですか? 136 00:09:33,139 --> 00:09:36,810 まあ カレーくらいなら。 んっ…。 あっ…。 137 00:09:36,810 --> 00:09:41,481 切り方 教えてください。 喜んで! 138 00:09:41,481 --> 00:09:44,818 指は 広げないで…。 139 00:09:44,818 --> 00:09:47,987 そう。 包丁は 引ぐように。 140 00:09:47,987 --> 00:09:52,992 《この ちゅう房に立つと どこか懐かしい気持ちになる。 141 00:09:52,992 --> 00:09:57,831 昨日 食べた ばあさまが 作り残した料理は 美味だった。 142 00:09:57,831 --> 00:10:01,835 料理下手な私を 何が そこまで動かしたのか➡ 143 00:10:01,835 --> 00:10:04,170 ずっと考えていましたが➡ 144 00:10:04,170 --> 00:10:07,841 なんとなく わかったような気がします。 145 00:10:07,841 --> 00:10:11,044 たぶん あなたのせいなんですね》 146 00:10:16,349 --> 00:10:18,852 なんか 今日の じゃがいも でかくない? 147 00:10:18,852 --> 00:10:23,022 あっ… 気のせいだべ。 148 00:10:23,022 --> 00:10:28,027 んっ… フッ! ハァハァ ハァハァ。 149 00:10:28,027 --> 00:10:32,031 ⦅この前のテスト 満点だったよ お母さん! 150 00:10:32,031 --> 00:10:35,034 偉いべ 義明。 頑張ったな。 151 00:10:35,034 --> 00:10:38,872 頑張ってるだけじゃ 通らないこともあるんだ。 152 00:10:38,872 --> 00:10:43,710 斎藤君 ちゃんと 結果 出してもらわなきゃ。 はい。 153 00:10:43,710 --> 00:10:48,114 頑張るじゃ だめなんだよ。 もっと頑張るんだよ⦆ 154 00:10:53,052 --> 00:10:56,055 会社が潰れる!? (寝息) 155 00:10:56,055 --> 00:10:59,392 このままいけばの話だよ。 156 00:10:59,392 --> 00:11:04,664 過疎化で 支店も潰れて そう長くはないだろう。 157 00:11:04,664 --> 00:11:07,333 どうするんだ? これがら。 158 00:11:07,333 --> 00:11:10,670 最悪 わしの畑で働ぐ手もあるが。 159 00:11:10,670 --> 00:11:13,506 いや 今更 おやじたちに➡ 160 00:11:13,506 --> 00:11:16,676 面倒をかけるわけにはいかないよ。 161 00:11:16,676 --> 00:11:21,848 大丈夫だ なんとかなる。 いや なんとかする。 162 00:11:21,848 --> 00:11:25,685 純粋に 俺の頑張りが 足りないだけの話だ。 んっ…。 163 00:11:25,685 --> 00:11:28,521 もっと頑張って だめなら➡ 164 00:11:28,521 --> 00:11:32,525 もっと もっと 頑張ればいいだけの話だから。 165 00:11:32,525 --> 00:11:35,194 んっ…。 166 00:11:35,194 --> 00:11:38,197 んっ…。 167 00:11:38,197 --> 00:11:40,867 義明。 168 00:11:40,867 --> 00:11:43,870 それ以上 頑張っては だめ。 あっ…。 169 00:11:43,870 --> 00:11:45,872 上の人たちが➡ 170 00:11:45,872 --> 00:11:49,208 あなたの頑張りや優しさに つけ込んでいるかぎり➡ 171 00:11:49,208 --> 00:11:55,215 あなたが どんなに努力しても 決して 状況は変わりませんよ。 172 00:11:55,215 --> 00:11:58,551 人間だから くじけていいんです。 あっ…。 173 00:11:58,551 --> 00:12:01,487 頑張らないことも大切なこと。 174 00:12:01,487 --> 00:12:04,157 また 立ち上げればいいだけの話。 175 00:12:04,157 --> 00:12:07,860 だから いつでも ここに逃げておいで。 176 00:12:09,996 --> 00:12:13,833 ハッ…。 あなたは いくつになっても➡ 177 00:12:13,833 --> 00:12:16,336 私たちの息子なんですから。 178 00:12:19,672 --> 00:12:23,009 それでさ 母さん その くそ上司がさ…。 179 00:12:23,009 --> 00:12:26,012 しっかし あんまり似てない息子ですよね。 180 00:12:26,012 --> 00:12:29,682 わしのおやじ そっくりなんだよな。 181 00:12:29,682 --> 00:12:32,685 (義明)なあ 母さん。 なんだい? 182 00:12:32,685 --> 00:12:38,524 あんた 母さんじゃないだろ? あっ! 183 00:12:38,524 --> 00:12:44,030 (義明) とは 言い切れないんだよな。 184 00:12:44,030 --> 00:12:46,532 母さんだけど 母さんじゃないような…。 185 00:12:46,532 --> 00:12:49,535 あっ すいかが 空 飛んでる! 186 00:12:49,535 --> 00:12:53,373 《酔っているのか 正気なのか わからないですね》 187 00:12:53,373 --> 00:12:56,542 たたずまいや 目つきも違ったけど➡ 188 00:12:56,542 --> 00:13:00,480 見た目は 子どものときの母さん そのもので…。 あっ…。 189 00:13:00,480 --> 00:13:03,149 (義明)何より さっきのは…。 190 00:13:03,149 --> 00:13:07,487 ⦅いつでも ここに逃げておいで⦆ 191 00:13:07,487 --> 00:13:12,492 いづもの母さん そのものだった。 192 00:13:12,492 --> 00:13:14,494 ハハッ…。 193 00:13:16,663 --> 00:13:22,502 んっ…。 あっ… やっぱり 母さんだ。 194 00:13:22,502 --> 00:13:29,008 自分の子どもには かないませんね。 195 00:13:29,008 --> 00:13:32,512 ここで 私が あなたに告白したのですか? 196 00:13:32,512 --> 00:13:35,515 そうだ。 何か 思い出さないか? 197 00:13:35,515 --> 00:13:38,017 今のところは 何も。 198 00:13:38,017 --> 00:13:41,521 1つ 提案 いいですか? んっ? 199 00:13:41,521 --> 00:13:47,026 当時の状況を再現すれば 何か 思い出すかもしれません。 200 00:13:49,028 --> 00:13:51,531 私から 手に触れたんですか? 201 00:13:51,531 --> 00:13:53,533 あっ… ああ。 202 00:13:53,533 --> 00:13:55,702 うそだったら 承知しませんからね。 203 00:13:55,702 --> 00:13:58,037 わがっとる わがっとる。 204 00:13:58,037 --> 00:14:00,540 では 言われたとおりに。 205 00:14:02,642 --> 00:14:06,145 んっ… こんな感じですか? 206 00:14:06,145 --> 00:14:08,548 あっ… ああ。 207 00:14:10,983 --> 00:14:15,488 どうだ? 何か 思い出したかのう? 208 00:14:15,488 --> 00:14:19,659 こんなことしてたんですか。 209 00:14:19,659 --> 00:14:22,161 あっ… ああ そうだとも。 210 00:14:22,161 --> 00:14:25,498 1つ 言わせてもらって いいですか? おっ なんだ? 211 00:14:25,498 --> 00:14:27,667 ばっかみたい! えっ? 212 00:14:27,667 --> 00:14:31,504 あんなの 絶対 うそ! 信じられない。 213 00:14:31,504 --> 00:14:33,840 体が かゆくなる。 214 00:14:33,840 --> 00:14:37,343 その… なんだ。 すまん。 215 00:14:37,343 --> 00:14:40,646 かっ… かゆ~…。 216 00:14:49,355 --> 00:14:53,025 ⦅お姉ちゃん 雷 怖いから 一緒に寝て。 217 00:14:53,025 --> 00:14:56,028 (ツル)もう… イネは 甘えんぼさんなんだから⦆ 218 00:14:56,028 --> 00:14:59,031 姉さん? んっ…。 219 00:15:05,304 --> 00:15:09,809 《時代の流れというのは 残酷なものですね。 220 00:15:09,809 --> 00:15:13,479 姉さんが生きていると聞いて 駆けつけてみれば➡ 221 00:15:13,479 --> 00:15:18,651 まさか 覚えていたのは 母さんのことだけだったとは。 222 00:15:18,651 --> 00:15:21,487 今の私が甘えていい人は➡ 223 00:15:21,487 --> 00:15:23,790 もう この世には いないんですね》 224 00:15:25,825 --> 00:15:29,328 《甘えていい人。 225 00:15:29,328 --> 00:15:32,498 さっきから 何も言葉をかけず➡ 226 00:15:32,498 --> 00:15:35,501 ただ 黙って そばに座っているだけ。 227 00:15:35,501 --> 00:15:39,505 「お前は 1人じゃないんだぞ」 とでも 言いたいんですか? 228 00:15:39,505 --> 00:15:42,842 そんなに 気を使わなくてもいいのに。 229 00:15:42,842 --> 00:15:46,679 1人になったって 別に平気です》 230 00:15:46,679 --> 00:15:50,016 んっ…。 んっ? 231 00:15:50,016 --> 00:15:52,318 《1人になったって…》 232 00:15:55,855 --> 00:16:00,626 《便所 行ぎたいのに 立てないべ》 んっ…。 233 00:16:00,626 --> 00:16:05,298 姉さんは ピアノが すっごい上手だったんですよ。 234 00:16:05,298 --> 00:16:08,467 へぇ~ そうだったんですね。 235 00:16:08,467 --> 00:16:12,638 ツルさん たまに ああやって ピアノの前に座るんです。 236 00:16:12,638 --> 00:16:16,309 鍵盤には触れず じっと座ってるだけですが。 237 00:16:16,309 --> 00:16:18,811 んっ…。 ばあさま? 238 00:16:21,314 --> 00:16:23,316 んっ…。 239 00:16:23,316 --> 00:16:30,490 ♬『ふるさと』 240 00:16:30,490 --> 00:16:34,494 ⦅イネ 私が イネの曲に合わせて 弾いてあげるから➡ 241 00:16:34,494 --> 00:16:36,662 あなたは 好きなの弾いて。 242 00:16:36,662 --> 00:16:39,832 じゃあ 『ふるさと』 弾くね。 お姉ちゃん!⦆ 243 00:16:39,832 --> 00:16:53,846 ♬~ 244 00:16:53,846 --> 00:16:55,848 《今の姉さんは もう➡ 245 00:16:55,848 --> 00:16:59,185 私のことも ふるさとのことも 覚えていない。 246 00:16:59,185 --> 00:17:04,957 自分が何者なのかも たぶん よく わかっていない》 247 00:17:04,957 --> 00:17:08,794 あっ…。 248 00:17:08,794 --> 00:17:10,796 ハッ! 249 00:17:10,796 --> 00:17:20,806 ♬「夢は今もめぐりて」 250 00:17:20,806 --> 00:17:23,809 うそ! あっ…。 251 00:17:23,809 --> 00:17:26,646 ⦅あしたも お姉ちゃん ここに座って 待ってるから。 252 00:17:26,646 --> 00:17:30,650 一緒に練習しようね。 うん! 約束だよ! 253 00:17:30,650 --> 00:17:33,986 イネは ピアノ 上手だね⦆ 254 00:17:33,986 --> 00:17:40,159 どこの誰だか知らないけど あんた ピアノ 上手だね。 255 00:17:40,159 --> 00:17:58,010 ♬~ 256 00:17:58,010 --> 00:18:01,280 ぐっ…。 もう 1時間以上 弾いてますね。 257 00:18:01,280 --> 00:18:05,117 こんなの 止められるわけないべさ。 258 00:18:05,117 --> 00:18:07,119 すまん ばあさま。 259 00:18:07,119 --> 00:18:13,292 今日は 組合の集まりがあるはんで 先に 晩飯 食べててけろ。 260 00:18:13,292 --> 00:18:17,463 《結局 記憶は戻らないまま 数週間。 261 00:18:17,463 --> 00:18:20,132 初めての1人ですね。 262 00:18:20,132 --> 00:18:24,804 今のところ 私が あの人に ほれる要素は なし。 263 00:18:24,804 --> 00:18:29,809 それ以前に あの人自身が 積極的に アプローチしてきませんし。 264 00:18:29,809 --> 00:18:32,478 今回 記憶を失った私を➡ 265 00:18:32,478 --> 00:18:35,581 1人 家に置いていくのは 減点ですね》 266 00:18:38,150 --> 00:18:41,654 《作り置きしてくれた カレーも 今日は おいしくない。 267 00:18:41,654 --> 00:18:43,823 これも 減点。 268 00:18:43,823 --> 00:18:46,325 わかってるんですかね。 269 00:18:46,325 --> 00:18:52,498 今の私は あなたがいないと いろいろ 不安なんですよ。 270 00:18:52,498 --> 00:18:54,500 不安? 271 00:18:54,500 --> 00:18:59,338 この数週間で 生活様式は学んだから➡ 272 00:18:59,338 --> 00:19:01,440 別に あの人がいなくても➡ 273 00:19:01,440 --> 00:19:05,111 不安になる要素は ほぼ ないはず。 274 00:19:05,111 --> 00:19:10,516 それなのに なぜ 私は 不安になって…》 275 00:19:13,786 --> 00:19:16,789 《早く帰ってくる必要は ないのに➡ 276 00:19:16,789 --> 00:19:19,792 早く帰ってきてほしいと願ってる。 277 00:19:19,792 --> 00:19:25,798 あの人が そばにいること自体に 価値を見いだそうとしている?》 278 00:19:25,798 --> 00:19:28,968 ⦅わしが ばあさまだけを 置いていくことは➡ 279 00:19:28,968 --> 00:19:32,972 絶対にないがら 安心せい⦆ 280 00:19:42,314 --> 00:19:44,483 じいさま? 281 00:19:44,483 --> 00:19:49,488 <16歳のとき 私は 彼に告白した。 282 00:19:49,488 --> 00:19:51,991 遊び半分のつもりだったが➡ 283 00:19:51,991 --> 00:19:55,161 あの人は 神社に 毎日のように来てくれた> 284 00:19:55,161 --> 00:19:58,831 ⦅あの神社には 近寄るな。 あっ…⦆ 285 00:19:58,831 --> 00:20:03,002 <親戚の家は あの人の親と 仲が悪かったため➡ 286 00:20:03,002 --> 00:20:05,004 会うのを禁止にされた。 287 00:20:05,004 --> 00:20:09,008 彼は 正式な おつきあいをするため➡ 288 00:20:09,008 --> 00:20:11,510 頭を下げてくれて…。 289 00:20:11,510 --> 00:20:14,513 久しぶりに 面会を許されたとき➡ 290 00:20:14,513 --> 00:20:18,017 彼の顔には 大きな あざがあった> 291 00:20:18,017 --> 00:20:21,020 ⦅おやじと けんかしただけだべ⦆ 292 00:20:21,020 --> 00:20:25,191 < そして そのあと 私は 大病を患い 倒れる。 293 00:20:25,191 --> 00:20:30,029 その 治療費や入院代を あの人は 面倒 見てくれた> 294 00:20:30,029 --> 00:20:33,199 ⦅正蔵さん 無理です。 295 00:20:33,199 --> 00:20:36,035 私といても 不幸になるだけ。 296 00:20:36,035 --> 00:20:40,039 どんな不条理を突きつけられても 関係ないべ。 297 00:20:40,039 --> 00:20:42,875 わしは お前のことが好きだ。 298 00:20:42,875 --> 00:20:45,544 幾万の不幸が降りかかろうとも➡ 299 00:20:45,544 --> 00:20:51,050 それ以上の幸せを わしが お前に与えればいいだけのこと。 300 00:20:51,050 --> 00:20:56,722 この人生の すべてを ささげてもだ⦆ 301 00:20:56,722 --> 00:21:01,127 < そして 彼は その約束を果たした> 302 00:21:04,497 --> 00:21:07,500 ただいまだべ ばあさま。 303 00:21:07,500 --> 00:21:10,336 《「ほれさせてみせろ」? 304 00:21:10,336 --> 00:21:12,538 私は 何を言ってるんですか!》 305 00:21:14,507 --> 00:21:18,177 《あんな人 何回 記憶を失ったって➡ 306 00:21:18,177 --> 00:21:21,347 結局 同じことじゃないですか!》 307 00:21:21,347 --> 00:21:25,851 じいさま! じいさま! 308 00:21:25,851 --> 00:21:30,189 (泣き声) 309 00:21:30,189 --> 00:21:34,593 おかえり ばあさま。 310 00:23:07,486 --> 00:23:11,991 じいさまは なんで あんなに 落ち着いていられたんだ? 311 00:23:11,991 --> 00:23:18,664 わしにとっちゃ 昔の ばあさまも 今の ばあさまも 大切な存在。 312 00:23:18,664 --> 00:23:21,500 記憶の あるなしで どっちがいいとか➡ 313 00:23:21,500 --> 00:23:25,170 決めたくなかったはんでの。 314 00:23:25,170 --> 00:23:28,674 ところで ばあさま。 なんだ? 315 00:23:32,177 --> 00:23:35,014 指 当たっとるんだが…。 316 00:23:35,014 --> 00:23:39,318 当ててるんですよ。 んっ…。