1 00:00:01,995 --> 00:00:07,001 ♪~ 2 00:01:30,000 --> 00:01:35,005 ~♪ 3 00:01:40,511 --> 00:01:45,098 (鈴(すず)の妹の泣き声) 4 00:01:45,224 --> 00:01:47,768 (鈴の妹)姉やは どこに行くの? 5 00:01:47,893 --> 00:01:49,228 やだよー 6 00:01:49,353 --> 00:01:50,979 (鈴の祖母)ああ 駄目だ 7 00:01:51,522 --> 00:01:54,858 ここにいるんだよ 出ては駄目だ 8 00:01:55,442 --> 00:01:59,238 (人買い)なあに 青柳(あおやぎ)様は お大尽だからね 9 00:01:59,363 --> 00:02:01,406 きれいな着物も着せてもらえるし 10 00:02:01,949 --> 00:02:04,743 行儀作法だって 教えてもらえる 11 00:02:05,077 --> 00:02:06,370 年季が明ける頃には― 12 00:02:06,495 --> 00:02:09,581 すっかりお嬢様に なってるかもしれないよ 13 00:02:10,499 --> 00:02:13,001 (鈴の母)元気でね 鈴 14 00:02:13,502 --> 00:02:15,671 (鈴の母の泣き声) 15 00:02:15,796 --> 00:02:17,256 (陽子(ようこ))大木(おおき) 鈴 16 00:02:17,506 --> 00:02:20,008 満で12歳にすぎない彼女が― 17 00:02:20,134 --> 00:02:24,263 凶作にあえぐ家族を救うため 奉公に出たのは― 18 00:02:24,388 --> 00:02:30,060 私 中嶋(なかじま)陽子が生まれる 80年以上も前のことだったという 19 00:02:33,647 --> 00:02:36,817 (人買い) 高崎(たかさき)まで出りゃ そこから汽車だ 20 00:02:36,942 --> 00:02:39,319 お前 汽車なんかで 驚いてちゃいけないぞ 21 00:02:39,444 --> 00:02:41,864 東京には ガス灯も鉄道馬車もある 22 00:02:42,531 --> 00:02:45,826 おかげで 人力車稼業は すっかり 上がったりになっちまって― 23 00:02:46,535 --> 00:02:49,121 俺も こんな仕事してるわけだがな 24 00:02:55,586 --> 00:02:57,296 おおっ! 25 00:03:00,507 --> 00:03:01,842 (人買い)ハァ… 26 00:03:02,426 --> 00:03:04,469 (鈴)うわっ ああ! 27 00:03:04,595 --> 00:03:06,638 おっ おい! 28 00:03:06,763 --> 00:03:11,810 (鈴の悲鳴) 29 00:03:11,977 --> 00:03:13,478 (水に落ちた音) 30 00:03:18,400 --> 00:03:19,526 うわっ 31 00:03:19,735 --> 00:03:21,987 (せきこみ) 32 00:03:22,946 --> 00:03:26,283 (陽子)気がつくと 鈴は虚海(きょかい)に浮かんでいた 33 00:03:28,619 --> 00:03:31,163 ねえ 何て言ってるの? 34 00:03:32,331 --> 00:03:36,126 (陽子)鈴には 彼らの話す言葉は分からなかった 35 00:03:36,793 --> 00:03:41,465 だが 鈴は まだ 日本の沖合まで 流されただけだと思っていた 36 00:03:43,884 --> 00:03:46,011 (鈴) ねえ おじさんたち どこの人? 37 00:03:46,678 --> 00:03:49,681 ここ どこ? 私 東京 行かなきゃ 38 00:03:50,224 --> 00:03:54,061 ねえ おじさんたち 青柳様のうち 知ってる? 39 00:03:55,020 --> 00:03:59,274 (陽子)鈴が流れ着いたのは 慶(けい)の国の東端だった 40 00:04:00,609 --> 00:04:04,029 海辺に住む人々は 扱いに困って― 41 00:04:04,154 --> 00:04:08,533 ちょうど通りがかった朱旌(しゅせい) 旅芸人たちに鈴を与えた 42 00:04:09,243 --> 00:04:14,248 (座長の歌声) 43 00:04:15,874 --> 00:04:18,543 (陽子) 鈴は3年余り一座と旅をし― 44 00:04:18,877 --> 00:04:22,381 少なくとも ここが 自分の知っている世界からは― 45 00:04:22,506 --> 00:04:25,676 遠く離れた場所であることだけは 理解した 46 00:04:27,469 --> 00:04:29,137 (鈴)うっ うう… 47 00:04:29,680 --> 00:04:30,555 うわあ! 48 00:04:30,681 --> 00:04:31,848 (一座の笑い声) 49 00:04:32,808 --> 00:04:36,728 (陽子)何ひとつ芸もできず 言葉も覚えられない鈴は― 50 00:04:36,853 --> 00:04:38,480 次に行く街こそ― 51 00:04:38,605 --> 00:04:41,650 鈴の理解できる言葉を しゃべる人がいて― 52 00:04:41,775 --> 00:04:46,196 故郷へ通じているのかもという 希望を捨てることはできなかった 53 00:04:54,121 --> 00:04:56,039 (座長)何かあるだろう 何か 54 00:04:56,581 --> 00:04:59,876 (座長の妻)珍しい出し物なんて 急に言われたって 55 00:05:00,127 --> 00:05:01,878 大体 何だい? あのお客は 56 00:05:02,379 --> 00:05:04,131 (座長)翠微君(すいびくん)とおっしゃる 57 00:05:04,464 --> 00:05:06,466 琶山(はざん)にお住まいの仙人とか 58 00:05:06,591 --> 00:05:09,928 けど ああ わがままばかり 言われては 59 00:05:10,679 --> 00:05:12,306 海客(かいきゃく)の芸は どうだろう? 60 00:05:12,431 --> 00:05:14,850 (座長の妻)えっ? この娘に? 61 00:05:15,267 --> 00:05:17,561 (座長)とにかく 時間を稼ごう 62 00:05:26,737 --> 00:05:29,906 (太鼓の音) 63 00:05:30,657 --> 00:05:32,534 歌えってこと? 64 00:05:33,285 --> 00:05:37,748 でも 歌なんて 父ちゃんが歌ってたやつくらいしか 65 00:05:39,708 --> 00:05:46,423 (歌声:「宮さん宮さん」) 66 00:05:46,548 --> 00:05:49,259 (梨耀(りよう)) フッ 海客の歌だって? 67 00:05:49,384 --> 00:05:50,343 はっ 68 00:05:50,469 --> 00:05:53,346 (梨耀) この梨耀を侮っておくれだねえ 69 00:05:53,805 --> 00:05:55,974 暇潰しにもなりゃしない 70 00:05:56,224 --> 00:05:58,351 (梨耀)帰るよ (座長)お… お待ちを! 71 00:05:58,477 --> 00:05:59,436 別の出し物を 72 00:05:59,561 --> 00:06:00,896 (鈴)お言葉が分かります! 73 00:06:01,897 --> 00:06:03,899 あの… どうして? 74 00:06:04,024 --> 00:06:07,319 仙たる私は言葉に不自由を持たぬ 75 00:06:07,444 --> 00:06:08,862 (鈴)ま… 待ってください! 76 00:06:09,404 --> 00:06:12,741 お願いです! どうか一緒に お連れください! 77 00:06:12,866 --> 00:06:14,451 (梨耀)ついてきてどうする? 78 00:06:14,576 --> 00:06:16,912 (鈴) 言葉が通じる所に行きたいのです! 79 00:06:17,329 --> 00:06:20,415 お願いです もう笑われて暮らすのは嫌です 80 00:06:20,540 --> 00:06:22,584 お連れくだされば何でもします 81 00:06:22,834 --> 00:06:24,544 どんな仕事も いといません! 82 00:06:26,630 --> 00:06:27,964 そう 83 00:06:28,090 --> 00:06:30,967 では ついておいで 笨媽(ほんま) 84 00:06:31,384 --> 00:06:32,469 えっ? 85 00:06:32,594 --> 00:06:34,137 それが私の名ですか? 86 00:06:34,262 --> 00:06:36,056 (女仙たちの笑い声) 87 00:06:36,181 --> 00:06:39,518 (鈴)ありがとうございます ありがとうございます 88 00:06:45,690 --> 00:06:47,150 はあ… 89 00:06:55,826 --> 00:06:57,744 (梨耀)王宮から知らせがあった 90 00:06:58,703 --> 00:07:00,413 お前を仙籍に入れたよ 91 00:07:01,123 --> 00:07:02,415 私が仙人に? 92 00:07:02,916 --> 00:07:05,210 (梨耀)老いることも病もない 93 00:07:05,544 --> 00:07:08,839 これで こちらの人間とも 言葉が通じるはずだ 94 00:07:08,964 --> 00:07:11,633 (鈴) 本当に ありがとうございます 梨耀様 95 00:07:12,968 --> 00:07:14,094 洞主とお呼び 96 00:07:14,469 --> 00:07:15,554 えっ 97 00:07:15,679 --> 00:07:19,599 (梨耀)私の下女ならば 洞主か翠微君とお呼び 98 00:07:20,475 --> 00:07:23,061 は… はい 洞主様 99 00:07:23,562 --> 00:07:26,481 じゃあ 裏庭を掃除してもらおうか 100 00:07:26,648 --> 00:07:28,900 落ち葉ひとつ残さずに頼むよ 101 00:07:29,025 --> 00:07:30,193 (鈴)はい! 102 00:07:35,198 --> 00:07:36,032 はっ 103 00:07:44,040 --> 00:07:48,378 私のために 何でもしてくれるのだろう? 笨媽 104 00:07:50,630 --> 00:07:51,923 はっ 105 00:07:54,301 --> 00:07:55,760 笨媽… 106 00:07:57,053 --> 00:07:58,513 (鈴)仙籍に入って― 107 00:07:58,638 --> 00:08:01,725 私は言葉を すぐに理解できるようになり― 108 00:08:01,975 --> 00:08:04,978 “笨媽”の意味が その瞬間 分かりました 109 00:08:05,729 --> 00:08:07,647 それは “粗末な女―” 110 00:08:07,772 --> 00:08:10,984 または “愚か者”という 意味だったのです 111 00:08:11,776 --> 00:08:15,238 もし逃げ出せば また言葉に不自由する 112 00:08:15,363 --> 00:08:16,948 それが怖かった私は― 113 00:08:17,157 --> 00:08:21,286 笨媽と呼ばれながら 100年余りをここで過ごしたのです 114 00:08:26,750 --> 00:08:28,793 (鈴)その頃 芳(ほう)の国に― 115 00:08:28,919 --> 00:08:32,380 私と同じような年頃で 仙籍に入りながら― 116 00:08:32,506 --> 00:08:36,092 まるで違う華やかな暮らしを送る 少女がいることなど― 117 00:08:36,218 --> 00:08:38,803 私は想像もできませんでした 118 00:08:41,932 --> 00:08:42,766 (男性)うん? 119 00:08:49,981 --> 00:08:53,318 (斬る音) 120 00:08:55,153 --> 00:08:56,905 (斬る音) 121 00:08:58,198 --> 00:08:59,533 (鈴)北の芳国 122 00:08:59,658 --> 00:09:01,159 その頃の王様は― 123 00:09:01,284 --> 00:09:05,121 お役人から王に選ばれた 仲韃(ちゅうたつ)というお方でした 124 00:09:05,288 --> 00:09:08,291 その王は 民が堕落していることを嘆き― 125 00:09:08,416 --> 00:09:12,712 さまざまな法を整備し 国の規律を高めようとしました 126 00:09:19,886 --> 00:09:26,768 (祥瓊(しょうけい)の歌声) 127 00:09:32,440 --> 00:09:35,777 (鈴)峯王(ほうおう)仲韃には 13になる娘があり― 128 00:09:35,902 --> 00:09:38,363 仲韃が王になると同時に昇仙― 129 00:09:38,488 --> 00:09:40,365 王宮で暮らしました 130 00:09:40,740 --> 00:09:42,409 その名は祥瓊 131 00:09:42,784 --> 00:09:44,703 本名を孫昭(そんしょう) 132 00:09:47,497 --> 00:09:50,750 (女官) さすが王宮の宝玉 祥瓊様 133 00:09:50,875 --> 00:09:53,295 今日は また一段とお美しいこと 134 00:09:53,420 --> 00:09:55,505 お着物のほうが かすんでしまいますわ 135 00:09:56,298 --> 00:09:57,799 (佳花(かか))あなたのお嬢さん― 136 00:09:57,924 --> 00:10:00,885 とても すてきなお着物を お召しになってるわね 137 00:10:01,011 --> 00:10:03,430 範国(はんこく)から渡ってきた織物師が― 138 00:10:03,555 --> 00:10:06,850 あれが似合うのは 娘だけなどと言いまして 139 00:10:07,100 --> 00:10:09,811 しかし 公主の美しさにはとても… 140 00:10:20,780 --> 00:10:21,990 (祥瓊)ウフッ 141 00:10:27,621 --> 00:10:29,122 (仲韃)そうか 142 00:10:29,623 --> 00:10:33,168 女官たちの中にも 賄賂を取る者があるのか 143 00:10:33,543 --> 00:10:36,254 (佳花)あなたが民のことを 憂いておられるのに― 144 00:10:36,379 --> 00:10:39,090 民は楽することばかり考えて 145 00:10:39,299 --> 00:10:40,800 よく知らせてくれた 146 00:10:40,925 --> 00:10:42,052 (月渓(げっけい))主上 (仲韃)うん? 147 00:10:46,264 --> 00:10:47,474 (佳花)恵州侯(けいしゅうこう) 148 00:10:47,974 --> 00:10:49,184 何事ですか? 149 00:10:49,351 --> 00:10:50,435 いや 150 00:10:51,102 --> 00:10:54,105 恵州侯 太宰(たいさい) 何か? 151 00:10:55,649 --> 00:10:58,443 (小庸(しょうよう)) 今月 出されます布告について― 152 00:10:58,568 --> 00:10:59,861 恵州侯におかれては… 153 00:10:59,986 --> 00:11:00,987 (月渓)主上 154 00:11:01,112 --> 00:11:04,949 朱旌の往来を冬に限るとの布告を お出しとのことですが― 155 00:11:05,075 --> 00:11:08,370 これを取り下げていただくわけには まいりませんか 156 00:11:09,746 --> 00:11:10,580 なぜだ? 157 00:11:11,289 --> 00:11:14,042 彼らは民の わずかな楽しみではありませぬか 158 00:11:14,834 --> 00:11:18,380 民の堕落は たやすく また 際限がない 159 00:11:18,505 --> 00:11:23,676 現に 朱旌見物を言い訳に 田畑をないがしろにする者もある 160 00:11:24,219 --> 00:11:28,640 私は 民に己の仕事にこそ 楽しみを見いだしてもらいたい 161 00:11:28,765 --> 00:11:31,059 私がそうであるように 162 00:11:32,519 --> 00:11:36,022 主上… では どうしても… 163 00:11:36,356 --> 00:11:39,651 もし この布告に 反する者があれば― 164 00:11:39,776 --> 00:11:42,362 必ず捕らえて常の罰を与えよ 165 00:11:42,737 --> 00:11:43,822 あっ… 166 00:11:45,031 --> 00:11:47,826 罰は… しかし 167 00:11:48,076 --> 00:11:49,327 (祥瓊)ねえ 月渓 168 00:11:49,994 --> 00:11:52,914 蓬山(ほうざん)に泰麒(たいき)が帰還したって本当? 169 00:11:53,039 --> 00:11:56,084 (月渓) はい そのように聞こえております 170 00:11:56,209 --> 00:11:58,711 だったら 泰麒が次の王様を選んで― 171 00:11:58,837 --> 00:12:00,797 戴(たい)も豊かな国になるわね 172 00:12:01,131 --> 00:12:04,717 同じ北の極国なのに 芳ばかりが豊かでは― 173 00:12:04,843 --> 00:12:07,303 戴の人たちが かわいそうだもの 174 00:12:08,096 --> 00:12:10,348 戴には妖魔も出るという 175 00:12:10,473 --> 00:12:13,601 この芳国も 天の正義に従い生きねば― 176 00:12:13,726 --> 00:12:16,271 いつ そのようにならぬとも限らぬ 177 00:12:16,688 --> 00:12:18,523 心せねばな 178 00:12:20,400 --> 00:12:22,277 (少女) ご存じありませんでしたか? 179 00:12:22,861 --> 00:12:26,239 お母上が 賄賂を受け取っていた罪に問われて 180 00:12:26,364 --> 00:12:29,284 (少女) もう 王宮にはおられませんわ 181 00:12:29,409 --> 00:12:30,243 そう… 182 00:12:30,743 --> 00:12:32,704 すてきな着物だったのに… 183 00:12:36,082 --> 00:12:37,292 (斬る音) 184 00:12:38,084 --> 00:12:39,169 (斬る音) 185 00:12:39,961 --> 00:12:41,171 (斬る音) 186 00:12:49,137 --> 00:12:52,557 (一同)お早くお戻りくださいませ 187 00:12:52,807 --> 00:12:55,268 送り出す時には威勢がいいのう 188 00:12:55,935 --> 00:12:57,937 やかましい あるじが いなくなって― 189 00:12:58,354 --> 00:13:01,733 さぞや 羽を伸ばすつもりで いるんだろうね 190 00:13:03,359 --> 00:13:05,069 (梨耀)笨媽 (鈴)はっ 191 00:13:05,195 --> 00:13:07,864 (梨耀)本当は戻らないほうが うれしいのだろう 192 00:13:08,031 --> 00:13:09,115 とんでもございません 193 00:13:09,407 --> 00:13:11,826 洞主様のお帰りを お待ちしております 194 00:13:13,953 --> 00:13:16,748 数少ない友人を訪ねるだけ 195 00:13:16,873 --> 00:13:18,791 半月もすれば帰るとも 196 00:13:19,125 --> 00:13:20,960 (鈴)1日も早いお帰りを 197 00:13:22,712 --> 00:13:24,297 そこまで言うなら― 198 00:13:24,422 --> 00:13:27,425 さぞや手厚く 迎えてもらえるのだろうねえ 199 00:13:27,717 --> 00:13:29,636 はい それはもちろん 200 00:13:30,178 --> 00:13:33,306 では 玉膏(ぎょっこう)を かもしておいてもらおうかねえ 201 00:13:33,723 --> 00:13:36,017 (鈴)ええっ (使用人たちのざわめき) 202 00:13:36,142 --> 00:13:38,269 (梨耀)それと 箴魚(しんぎょ)を焼いて― 203 00:13:38,394 --> 00:13:40,855 瑤草(ようそう)を煮てもらおうか 204 00:13:42,398 --> 00:13:45,818 ついでに壁と柱を 塗り替えておいておくれ 205 00:13:45,944 --> 00:13:50,323 塗りたての建物くらい 胸のすくものはないからね 206 00:13:53,326 --> 00:13:56,329 私は優しいから 務めさえ果たせば― 207 00:13:56,454 --> 00:13:59,457 多少 羽目を外したって 叱りはしない 208 00:13:59,624 --> 00:14:05,046 フハハハ… ハハハハ… 209 00:14:10,093 --> 00:14:14,097 (鈴のすすり泣き) 210 00:14:18,268 --> 00:14:20,186 (使用人) 洞主様は お前に当たって― 211 00:14:20,311 --> 00:14:23,815 憂さを晴らしているだけだよ 木鈴(もくりん) 212 00:14:24,816 --> 00:14:28,194 私… 私 木鈴じゃない! 笨媽でもない! 213 00:14:28,403 --> 00:14:30,655 私は鈴! 大木 鈴! 214 00:14:31,781 --> 00:14:33,032 ううっ 215 00:14:33,199 --> 00:14:35,743 洞主様は どうして… 216 00:14:36,286 --> 00:14:38,496 (使用人)気が強いお方だから 217 00:14:38,621 --> 00:14:42,166 何しろ 先々代の王様に かわいがられていたのに― 218 00:14:42,292 --> 00:14:45,628 うるさく意見して ここに追い出されたくらいだ 219 00:14:45,795 --> 00:14:47,964 (鈴)そんなの分かってる! 220 00:14:48,464 --> 00:14:49,591 でも… 221 00:14:49,966 --> 00:14:53,553 玉膏は わしが五山(ござん)に行って 分けていただいてくる 222 00:14:54,012 --> 00:14:57,348 今 蓬山には 蓬山公がおわすそうだから― 223 00:14:57,473 --> 00:15:00,184 粗相があっては ならんしな 224 00:15:01,185 --> 00:15:02,896 蓬山公って― 225 00:15:03,396 --> 00:15:06,232 日本から お帰りになったって うわさの泰麒のこと? 226 00:15:06,733 --> 00:15:07,859 ああ 227 00:15:08,151 --> 00:15:10,194 (鈴)私が行きます (使用人)えっ? 228 00:15:10,361 --> 00:15:12,196 あ… えっ だが… 229 00:15:12,447 --> 00:15:14,157 行かせてください! 230 00:15:17,744 --> 00:15:21,664 (鈴)私は泰麒にお会いしようと 蓬山へ行きました 231 00:15:21,831 --> 00:15:23,166 しかし… 232 00:15:24,250 --> 00:15:26,377 (女仙たちの笑い声) 233 00:15:28,463 --> 00:15:32,050 泰麒 私も泰麒と同じでございます 234 00:15:32,175 --> 00:15:34,260 あっ 泰麒! 235 00:15:35,178 --> 00:15:36,387 お話を! 236 00:15:36,721 --> 00:15:37,889 (汕子(さんし))うわっ! 237 00:15:38,181 --> 00:15:39,432 (鈴)ううっ! 238 00:15:42,018 --> 00:15:44,812 私は帰りたい 帰りたいんです! 239 00:15:44,938 --> 00:15:46,022 (殴る音) 240 00:15:48,691 --> 00:15:51,194 (鈴) 梨耀様は ひどくお怒りになり― 241 00:15:51,319 --> 00:15:54,989 私は 二度と 騎獣に触れることもできなくなった 242 00:15:55,865 --> 00:15:57,951 でも 私は悪くない 243 00:15:58,076 --> 00:16:01,871 私の言葉に耳を貸さなかった 泰麒が悪いのだ 244 00:16:02,413 --> 00:16:05,041 私は そう思っていたのです 245 00:16:08,002 --> 00:16:12,924 (鈴)それから しばらくして 芳の国で逆賊が立ったと聞きました 246 00:16:13,800 --> 00:16:15,426 王の苛烈(かれつ)な なされように― 247 00:16:15,551 --> 00:16:20,014 全ての州侯が兵を挙げて 鷹隼宮(ようしゅんきゅう)に なだれ込んだのです 248 00:16:21,057 --> 00:16:25,478 (佳花と祥瓊のおびえる声) 249 00:16:25,603 --> 00:16:27,021 (峯麟(ほうりん))ああっ! 250 00:16:28,439 --> 00:16:30,108 王気が… 251 00:16:30,483 --> 00:16:32,694 王気が絶えてしまわれた 252 00:16:33,236 --> 00:16:34,862 まさか お父様が!? 253 00:16:34,988 --> 00:16:36,114 (扉が開く音) 254 00:16:40,451 --> 00:16:41,327 (佳花)恵侯 255 00:16:41,661 --> 00:16:43,621 ここを どこだと 思っているのです! 256 00:16:43,746 --> 00:16:45,999 王后 台輔(たいほ)の許しもなく 257 00:16:48,042 --> 00:16:48,876 ああっ 258 00:16:49,377 --> 00:16:51,629 お… お父様? 259 00:16:52,130 --> 00:16:55,383 (月渓)神仙たる王を 弑(しい)したてまつるには― 260 00:16:55,508 --> 00:16:58,511 胴を断つか 首をいただくよりなかった 261 00:16:58,845 --> 00:17:01,055 王后も 公主に別れを告げられよ 262 00:17:01,180 --> 00:17:02,724 (佳花)何を… 263 00:17:03,016 --> 00:17:06,978 (月渓)過酷なる法をもって 民を長く虐げた王と― 264 00:17:07,228 --> 00:17:11,315 その王にざん言して 罪なき民を誅殺(ちゅうさつ)せしめた王后 265 00:17:11,941 --> 00:17:15,403 どちらも民の恨みを 思い知っていただきたい 266 00:17:15,611 --> 00:17:18,239 王は民のためにしたのだ! 267 00:17:20,158 --> 00:17:21,784 (月渓)峯麟 失道(しつどう)この方― 268 00:17:22,326 --> 00:17:25,246 王の裁きは苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)にすぎた 269 00:17:26,080 --> 00:17:27,373 30万… 270 00:17:28,958 --> 00:17:31,586 1年で30万の民が処刑されたのだぞ 271 00:17:33,087 --> 00:17:35,798 (月渓)貧困にあえぎ 1個の餅を盗んだ子供にまで― 272 00:17:35,923 --> 00:17:38,176 死を賜るのが民のためか? 273 00:17:38,301 --> 00:17:40,553 税穀が1合欠けても死罪― 274 00:17:40,678 --> 00:17:43,264 病のために夫役を休んでも死罪 275 00:17:44,265 --> 00:17:46,976 民の恐怖は 今のお前たちの比ではない! 276 00:17:47,101 --> 00:17:48,686 (祥瓊)ああー! お母様! 277 00:17:48,811 --> 00:17:50,021 (佳花)祥瓊! 278 00:17:50,438 --> 00:17:51,439 うっ 279 00:17:51,689 --> 00:17:54,108 (月渓) 他の婦女の美貌と才気をねたみ― 280 00:17:54,233 --> 00:17:57,028 あるいは 他の女子の 公主より利発なるをねたみ― 281 00:17:57,153 --> 00:17:59,238 罪をねつ造し ざん言し― 282 00:17:59,363 --> 00:18:03,159 国土には 挽歌が満ちた 283 00:18:04,619 --> 00:18:06,370 (佳花)おのれ 偽りを! 284 00:18:07,080 --> 00:18:08,873 公主にも よく見ていただきたい 285 00:18:09,665 --> 00:18:12,418 己の家族が目の前で 首を斬らるる苦痛が― 286 00:18:12,543 --> 00:18:13,878 どれだけのものか 287 00:18:14,003 --> 00:18:14,837 やめて! 288 00:18:15,421 --> 00:18:17,673 (月渓)むんっ! (斬る音) 289 00:18:22,386 --> 00:18:23,221 (月渓)台輔 290 00:18:23,763 --> 00:18:28,142 2代にわたって暗君を選んだ あなたに対する民の絶望を― 291 00:18:28,267 --> 00:18:30,144 理解していただきたい 292 00:18:32,730 --> 00:18:34,148 (斬る音) 293 00:18:35,358 --> 00:18:39,821 (鈴)こうして 仲韃 孫建(そんけん)の王朝は終わりました 294 00:18:40,363 --> 00:18:41,906 (白雉(はくち))崩御! 295 00:18:43,991 --> 00:18:46,077 (鈴)白雉は 即位と崩御― 296 00:18:46,202 --> 00:18:49,288 その生涯に 2度だけ人の声で鳴きます 297 00:18:49,664 --> 00:18:52,041 その足は 王が不在の間― 298 00:18:52,166 --> 00:18:55,419 玉璽(ぎょくじ)の代わりに用いられる 習わしでした 299 00:18:57,046 --> 00:18:58,506 峯王公主 孫昭 300 00:18:59,382 --> 00:19:01,551 なんじを仙籍より削除する 301 00:19:01,759 --> 00:19:04,262 そんな それだけはやめて 302 00:19:04,387 --> 00:19:06,889 私は 30年もここにいたのよ 303 00:19:07,014 --> 00:19:10,351 今さら 普通の人間に戻って どうしろと… 304 00:19:14,564 --> 00:19:17,108 殺してちょうだい! 私も! 305 00:19:18,609 --> 00:19:20,695 別に戸籍を用意させる 306 00:19:21,028 --> 00:19:23,489 公主の地位も 仙籍とともに捨て― 307 00:19:23,614 --> 00:19:27,535 名を変え 市井に紛れてしまうのが 御身のためだろう 308 00:19:27,660 --> 00:19:30,538 どうやって生きていけというの! ひどいわ 309 00:19:33,958 --> 00:19:35,418 ひどい… 310 00:19:38,296 --> 00:19:41,465 (鈴)祥瓊は 月渓が治めている恵州の里家(りけ)に― 311 00:19:41,591 --> 00:19:43,426 送り込まれたそうです 312 00:19:44,093 --> 00:19:46,596 里家とは こちらではどこにでもある― 313 00:19:46,721 --> 00:19:49,974 孤児や老人を みんなで養うための施設で… 314 00:19:50,641 --> 00:19:52,310 (祥瓊) 私は そこで“玉葉(ぎょくよう)”という― 315 00:19:52,435 --> 00:19:54,687 ありふれた名前を与えられた 316 00:19:55,396 --> 00:20:00,151 使用人もなく 自分の手で土を耕し 布を織る 317 00:20:01,194 --> 00:20:05,615 私にとって そこは 右も左も分からない世界だった 318 00:20:06,532 --> 00:20:09,744 そして 3年ほど経った冬のある日 319 00:20:10,494 --> 00:20:12,288 (少女たち)あっ (少女たちの笑い声) 320 00:20:18,586 --> 00:20:19,420 (祥瓊)はっ 321 00:20:21,088 --> 00:20:24,383 (祥瓊)鏡には 日に焼けて 頬はそげ― 322 00:20:24,508 --> 00:20:27,470 手も足も筋張った女が映っていた 323 00:20:28,679 --> 00:20:30,806 永遠に13歳だった― 324 00:20:31,182 --> 00:20:35,478 王宮の宝玉といわれた私は もう どこにもいなかった 325 00:20:47,573 --> 00:20:50,952 (陽子)浅野(あさの)君? 浅野君なの? 326 00:20:51,786 --> 00:20:55,414 (蒼猿(あおざる))ハッハッハッ… 327 00:20:55,539 --> 00:20:58,084 まだ 夢を見るのかい? 328 00:20:58,334 --> 00:21:00,878 自分が見捨てた男を 329 00:21:01,045 --> 00:21:02,421 (陽子)分かっている 330 00:21:02,546 --> 00:21:04,131 お前は 私の心 331 00:21:04,757 --> 00:21:07,260 だから これは私の声にすぎない 332 00:21:07,385 --> 00:21:11,430 (蒼猿) 捜しに行きたいんだろ? この男を 333 00:21:11,806 --> 00:21:14,600 (陽子)私は 王だ 勝手はできない 334 00:21:14,725 --> 00:21:17,603 (蒼猿)フッフッフッ… 335 00:21:17,770 --> 00:21:18,604 (銃声) 336 00:21:19,063 --> 00:21:20,606 (陽子)浅野君! 337 00:21:20,815 --> 00:21:24,568 ハァ ハァ ハァ… 338 00:21:27,321 --> 00:21:29,699 (冬官長)また 暴れましたか 339 00:21:30,157 --> 00:21:33,744 やはり 鞘(さや)を死なせてしまったのが 惜しまれます 340 00:21:34,161 --> 00:21:34,996 すまない 341 00:21:36,122 --> 00:21:38,082 この刀を鞘で封じたのは― 342 00:21:38,207 --> 00:21:42,003 達王(たつおう)の代に 王宮に仕えていた仙人で― 343 00:21:42,128 --> 00:21:42,962 確か… 344 00:21:43,296 --> 00:21:45,047 (景麒(けいき))松伯(しょうはく) (冬官長)そうそう 345 00:21:45,172 --> 00:21:47,258 そのような者だったそうで 346 00:21:47,383 --> 00:21:48,426 (靖共(せいきょう))主上 347 00:21:49,010 --> 00:21:50,219 (陽子)冢宰(ちょうさい) 348 00:21:50,344 --> 00:21:51,887 刻限にございます 349 00:21:52,305 --> 00:21:55,558 しかし 水禺刀(すいぐうとう)の幻が暴れるので 350 00:21:55,725 --> 00:21:58,644 (靖共)恐れながら 今日のところは仮の鞘で 351 00:21:58,769 --> 00:22:00,563 ええ? いいのか? 352 00:22:00,813 --> 00:22:03,274 (靖共)王が宝重を携えている 353 00:22:03,399 --> 00:22:06,027 民にとっては それが大事でございます 354 00:22:06,694 --> 00:22:09,697 達王が封じられた刀を 持つことで― 355 00:22:09,822 --> 00:22:12,575 慶の王としての威儀が整います 356 00:22:12,700 --> 00:22:14,160 (ため息) 357 00:22:14,910 --> 00:22:16,746 また 懐達(かいたつ)か… 358 00:22:35,848 --> 00:22:39,852 (人々のざわめき) 359 00:22:44,273 --> 00:22:48,277 (歓声) 360 00:22:54,366 --> 00:22:56,077 (祥瓊)赤子(せきし)陽子 361 00:22:56,368 --> 00:23:00,081 私や鈴と見かけの年こそ 違わぬ彼女が― 362 00:23:00,331 --> 00:23:02,708 慶東国の玉座に就いた 363 00:23:11,008 --> 00:23:16,013 ♪~ 364 00:24:39,930 --> 00:24:44,935 ~♪ 365 00:24:45,436 --> 00:24:47,479 (ナレーター) その黒衣を大裘(だいきゅう)という 366 00:24:47,605 --> 00:24:49,481 黒の衣に黒の冠 367 00:24:49,607 --> 00:24:52,318 それに合わせたかのような紅の髪