1 00:00:05,320 --> 00:00:06,960 《畦目:両親を失った私は➡ 2 00:00:06,970 --> 00:00:10,810 田舎で暮らす祖母に引き取られた。 3 00:00:10,810 --> 00:00:15,310 この荷物が 私の持ち物のすべてだった》 4 00:00:15,310 --> 00:00:17,810 (たえ)ふ… うう…。 5 00:00:17,810 --> 00:00:19,820 (畦目)あ…。 6 00:00:19,820 --> 00:00:22,480 《祖母のたえは抱き締めてくれた。 7 00:00:22,480 --> 00:00:27,160 以来ずっと 私は おばあちゃん子だ。 8 00:00:27,160 --> 00:00:32,160 祖母との生活は 裕福ではなかったけど➡ 9 00:00:32,160 --> 00:00:36,170 穏やかで優しい日々だった。 10 00:00:36,170 --> 00:00:38,170 でも…。 11 00:00:38,170 --> 00:00:43,670 服は祖母の手作りや 格安セール品ばかりだったので➡ 12 00:00:43,670 --> 00:00:47,340 同級生からバカにされ からかわれた》 13 00:00:47,340 --> 00:00:50,350 いっつも同じ服だね アンタ。 う…。 14 00:00:50,350 --> 00:00:53,020 洗濯したことあんの~? 15 00:00:53,020 --> 00:00:55,220 ひ… うう…。 16 00:00:57,190 --> 00:01:01,390 みんな 大掃除の日は 雑巾を持ってきてね~。 17 00:01:06,300 --> 00:01:08,460 んっ? いっぱい縫ったから➡ 18 00:01:08,460 --> 00:01:13,300 他の子たちにもあげてな。 わぁ~! 19 00:01:13,300 --> 00:01:15,470 (チャイム) 20 00:01:15,470 --> 00:01:17,470 あっ 忘れた! 21 00:01:17,470 --> 00:01:21,480 誰か雑巾貸して~。 22 00:01:21,480 --> 00:01:24,310 (畦目)あっ あの…。 んっ? えっ? 23 00:01:24,310 --> 00:01:28,150 あの 雑巾あるから使って? 24 00:01:28,150 --> 00:01:30,820 えっ? ああ…。 25 00:01:30,820 --> 00:01:32,990 フフッ… 何これ。 26 00:01:32,990 --> 00:01:34,990 今アンタが着てるのと➡ 27 00:01:34,990 --> 00:01:36,990 同じ生地じゃん。 あ…。 28 00:01:36,990 --> 00:01:40,500 アンタって 雑巾着てたんだ。 フフフ。 29 00:01:40,500 --> 00:01:45,000 んっ… ていうか これ なんか臭い! 30 00:01:45,000 --> 00:01:48,000 ヒヒッ パス パ~ス! 31 00:01:50,170 --> 00:01:52,170 おいっ! 32 00:01:52,170 --> 00:01:54,180 やめて! あ…。 33 00:01:54,180 --> 00:01:57,180 ホントだ 年寄りのにおいだ! 34 00:01:57,180 --> 00:01:59,350 ヘヘヘッ。 返して! 35 00:01:59,350 --> 00:02:02,850 やめなよ かわいそ~。 ヒヒヒヒッ…。 36 00:02:05,950 --> 00:02:10,290 く… くく… く…。 37 00:02:10,290 --> 00:02:12,290 返して! 38 00:02:12,290 --> 00:02:15,800 暴力? 真奈美がですか? 39 00:02:15,800 --> 00:02:19,470 先方の親御さんが とても怒ってらっしゃいます。 40 00:02:19,470 --> 00:02:24,470 すぐに畦目さんから謝罪して 収めてくださいませんか? 41 00:02:24,470 --> 00:02:29,140 ですが 真奈美は 訳もなく乱暴なんてしません。 42 00:02:29,140 --> 00:02:31,810 何か誤解が…。 私のクラス運営に➡ 43 00:02:31,810 --> 00:02:34,320 問題があるとでも言うんですか? 44 00:02:34,320 --> 00:02:37,150 あ… く…。 45 00:02:37,150 --> 00:02:39,820 ですが…。 46 00:02:39,820 --> 00:02:42,660 真奈美さんが こんなトラブルを起こすのは➡ 47 00:02:42,660 --> 00:02:45,860 ご家庭に 問題があるんじゃないですか? 48 00:04:28,310 --> 00:04:31,480 (化野)潜入初日で 当たりを引くとは➡ 49 00:04:31,480 --> 00:04:33,640 さすがです 菫子さん。 50 00:04:33,640 --> 00:04:37,650 (菫子)やかましいわ。 私の服はどうした? 51 00:04:37,650 --> 00:04:39,820 (化野)よだれまみれの 制服と一緒に➡ 52 00:04:39,820 --> 00:04:42,150 クリーニングに出しました。 53 00:04:42,150 --> 00:04:44,160 それよりどうです? 54 00:04:44,160 --> 00:04:47,660 ヨダレカケをじかに見て 何かわかりましたか? 55 00:04:47,660 --> 00:04:52,430 あれを病気と診断するヤツの目は 節穴だってことぐらいさ。 56 00:04:52,430 --> 00:04:55,100 あれはもっと 別の何かだよ。 57 00:04:55,100 --> 00:04:58,100 倒れた3人は 無事だったんですよね? 58 00:04:58,100 --> 00:05:02,770 (菫子)先生が外に連れ出したら 3人とも意識を取り戻した。 59 00:05:02,770 --> 00:05:07,110 いいですね。 実にいい。 不自然だ。 60 00:05:07,110 --> 00:05:10,110 う~ん… ずいぶん機嫌がいいな。 61 00:05:10,110 --> 00:05:12,120 そりゃそうですよ。 62 00:05:12,120 --> 00:05:15,790 ようやく怪異を見つけたんだ。 63 00:05:15,790 --> 00:05:19,120 逃がさねえ。 ん…。 64 00:05:19,120 --> 00:05:23,130 倒れたとき 標識も立ったんだね? 65 00:05:23,130 --> 00:05:27,130 (乙)うん。 でも私 何もできなくて…。 66 00:05:27,130 --> 00:05:31,970 いいんだよ 乙。 友達が目の前で倒れたんだからね。 67 00:05:31,970 --> 00:05:34,810 僕は乙が無事だったら それでいいんだ。 68 00:05:34,810 --> 00:05:36,970 レン兄…。 69 00:05:36,970 --> 00:05:40,980 ふ~ 私の心配もしてくれて かまわないんだが? 70 00:05:40,980 --> 00:05:43,480 ふぃ! もちろんしてますよ➡ 71 00:05:43,480 --> 00:05:46,880 乙の次に。 フッ… そりゃ光栄だ。 72 00:05:49,320 --> 00:05:52,920 怪異があることは 確定したと考えていいでしょう。 73 00:05:52,920 --> 00:05:55,930 次は怪異を捕らえます。 74 00:05:55,930 --> 00:05:58,600 捕らえる? 75 00:05:58,600 --> 00:06:01,770 明治の哲学者 井上圓了は➡ 76 00:06:01,770 --> 00:06:04,270 著書の 『妖怪學講義』で➡ 77 00:06:04,270 --> 00:06:07,610 妖怪を 実怪と虚怪に分類しました。 78 00:06:07,610 --> 00:06:12,780 虚怪は恐怖心や誤解が生んだ虚構。 79 00:06:12,780 --> 00:06:17,450 対して実怪は 実際に起きた超常現象を指します。 80 00:06:17,450 --> 00:06:22,120 実怪は更に 真怪と仮怪に分けられ➡ 81 00:06:22,120 --> 00:06:27,120 なんらかの証明が可能な 超常現象を仮怪と呼びます。 82 00:06:27,120 --> 00:06:32,960 そして科学でも解明できない 真の超常現象を真怪という。 83 00:06:32,960 --> 00:06:37,640 だが 圓了の定義する真怪は 自然の法則すべてだ。 84 00:06:37,640 --> 00:06:41,140 ある意味 怪異の対局みたいなもんだろう? 85 00:06:41,140 --> 00:06:44,640 哲学者らしい ロマンチックな解釈ですよね。 86 00:06:44,640 --> 00:06:47,810 だけど 僕はあいにく圓了じゃない。 87 00:06:47,810 --> 00:06:50,480 僕の真怪の定義は文字どおり➡ 88 00:06:50,480 --> 00:06:52,920 真の怪異です。 89 00:06:52,920 --> 00:06:56,590 なるほど。 真怪はめったにありませんから➡ 90 00:06:56,590 --> 00:06:58,590 だいたい見当はついてます。 91 00:06:58,590 --> 00:07:03,790 フッ そうか。 なら 私の女子校潜入ミッションも終了だな。 92 00:07:05,760 --> 00:07:09,100 何言ってんです? えっ? 93 00:07:09,100 --> 00:07:12,770 菫子さんには 明日も学校に行ってもらいます。 94 00:07:12,770 --> 00:07:14,770 ええ? 乙。 95 00:07:14,770 --> 00:07:18,440 友達を助けたいだろ? うん…。 96 00:07:18,440 --> 00:07:21,850 なら 僕に任せてくれ。 97 00:07:24,950 --> 00:07:27,790 んっ 先生ごきげんよう! 98 00:07:27,790 --> 00:07:30,960 ごきげんよう まっすぐ帰るのよ~。 99 00:07:30,960 --> 00:07:32,960 はっ? (ドアを叩く音) 100 00:07:32,960 --> 00:07:34,960 (ドアを叩く音) 101 00:07:34,960 --> 00:07:39,130 あんまりだ! もう 便所飯は嫌だ~! 102 00:07:39,130 --> 00:07:42,630 なんでまたトイレなんだ? クソ~! 103 00:07:42,630 --> 00:07:47,300 あ… 待って 今開けるから! 104 00:07:47,300 --> 00:07:51,580 はっ! 剣山まで…。 なんてひどい。 105 00:07:51,580 --> 00:07:54,780 く… 大丈夫 今 出してあげる! 106 00:07:56,750 --> 00:07:59,750 く… 若作さんじゃない! 107 00:07:59,750 --> 00:08:02,750 畦目先生…。 108 00:08:02,750 --> 00:08:05,260 ん… うう…。 109 00:08:05,260 --> 00:08:08,760 もう大丈夫よ。 ありがとうございます。 110 00:08:08,760 --> 00:08:12,260 若作さん あなた やっぱり…。 111 00:08:12,260 --> 00:08:14,770 違うと思いたかったんです。 112 00:08:14,770 --> 00:08:17,430 いじめられてなんかないって。 113 00:08:17,430 --> 00:08:19,440 自分が認めなければ➡ 114 00:08:19,440 --> 00:08:22,110 いじめじゃなくなると 思ったんです。 115 00:08:22,110 --> 00:08:24,610 それに 先生に言ったとしても➡ 116 00:08:24,610 --> 00:08:29,950 どうせ何も変わらないのは わかってましたから。 117 00:08:29,950 --> 00:08:31,950 やっぱりだめね。 118 00:08:31,950 --> 00:08:34,120 加害者を狙っても終わらない。 119 00:08:34,120 --> 00:08:36,620 発想の転換が必要だわ。 120 00:08:36,620 --> 00:08:39,790 被害者を休ませてあげなきゃ。 121 00:08:39,790 --> 00:08:42,790 口実は私が作ってあげる。 122 00:08:42,790 --> 00:08:44,960 はぁ…。 123 00:08:44,960 --> 00:08:49,800 あ… 影が縮んだ? 124 00:08:49,800 --> 00:08:52,070 は… んっ!? 125 00:08:52,070 --> 00:08:54,570 ああ!? はっ! 126 00:08:54,570 --> 00:08:57,370 はじめまして ごきげんよう。 127 00:09:00,410 --> 00:09:04,250 今後 床なめは禁止ですよ。 あ はい。 128 00:09:04,250 --> 00:09:06,250 えっ? なんで男子が? 129 00:09:06,250 --> 00:09:08,250 そこの子どもは? 130 00:09:08,250 --> 00:09:11,920 えっ? 何? あなたたちは? 131 00:09:11,920 --> 00:09:15,590 僕は ここの生徒の ただの保護者であって➡ 132 00:09:15,590 --> 00:09:20,260 あっちは 短太眉 ふかふか恵体女です。 133 00:09:20,260 --> 00:09:23,100 ん… 誰が ふかふか恵体眉毛だ。 134 00:09:23,100 --> 00:09:26,270 ん…。 いや 向こう向いとけよ。 135 00:09:26,270 --> 00:09:28,440 何 がっつり見てんだ 君は! 136 00:09:28,440 --> 00:09:30,610 若作さん? やっぱり➡ 137 00:09:30,610 --> 00:09:33,280 さっきの子どもは あなただったの? 138 00:09:33,280 --> 00:09:39,280 そんなことより 畦目先生が ヨダレカケの犯人…。 139 00:09:39,280 --> 00:09:41,790 牛鬼。 はっ。 140 00:09:41,790 --> 00:09:46,290 伝承の大半は 非常に残忍な性格で➡ 141 00:09:46,290 --> 00:09:51,130 人を食い殺すのを好む化け物 として伝えられています。 142 00:09:51,130 --> 00:09:55,970 『百怪図巻』の牛の頭をした 蜘蛛の姿が有名ですが➡ 143 00:09:55,970 --> 00:10:01,810 伝承ごとに姿や性質が 大きく異なるのが特徴…。 144 00:10:01,810 --> 00:10:06,140 牛鬼に影をなめられた者は 突如 唾液を垂れ流し➡ 145 00:10:06,140 --> 00:10:09,650 火がついたように 体が熱くなり死に至る➡ 146 00:10:09,650 --> 00:10:11,650 という伝承があります。 147 00:10:11,650 --> 00:10:14,490 ヨダレカケと似ていると思いませんか? 148 00:10:14,490 --> 00:10:17,990 そして ゴシップ少女のたまちゃんに 聞いてみたら。 149 00:10:17,990 --> 00:10:22,160 ⦅珠緒:はぁ ヨダレカケの被害者っすか~? 150 00:10:22,160 --> 00:10:26,000 うん… 周りと もめ事がある子が 多かったっすかね~⦆ 151 00:10:26,000 --> 00:10:31,170 以上の点から 乱暴ですが仮説を立てました。 152 00:10:31,170 --> 00:10:34,000 すなわち 牛鬼の力で➡ 153 00:10:34,000 --> 00:10:36,670 いじめの芽を 刈り取っている者がいる。 154 00:10:36,670 --> 00:10:41,680 なので いじめられっ子で わなを張ったわけです。 え…。 155 00:10:44,010 --> 00:10:46,020 えっ? 何!? あ…。 156 00:10:46,020 --> 00:10:49,020 あ… 嫌…。 (匂いを嗅ぐ音) 157 00:10:49,020 --> 00:10:52,460 嫌…。 (匂いを嗅ぐ音) 158 00:10:52,460 --> 00:10:55,460 く… やめて…。 (匂いを嗅ぐ音) 159 00:10:55,460 --> 00:10:58,460 やめて 嗅がないで! 160 00:10:58,460 --> 00:11:03,630 なるほど これが原因か。 161 00:11:03,630 --> 00:11:07,810 その髪飾り それさえ手放せば➡ 162 00:11:07,810 --> 00:11:09,810 すべて丸く収ま…。 163 00:11:09,810 --> 00:11:13,310 えい! ぐっ! うう…。 164 00:11:13,310 --> 00:11:15,310 存外弱い! 165 00:11:15,310 --> 00:11:18,150 どうして先生の邪魔をするの? 166 00:11:18,150 --> 00:11:20,320 落ち着いてください。 167 00:11:20,320 --> 00:11:24,150 先生の願望は いじめをなくしたい ですよね? 168 00:11:24,150 --> 00:11:29,330 けど 生徒を傷つけたら 元も子もないじゃないですか。 169 00:11:29,330 --> 00:11:31,330 ん…。 170 00:11:31,330 --> 00:11:34,830 お願いです 先生 それを手放してください! 171 00:11:34,830 --> 00:11:39,440 時間をかけて 少しずつ いじめをなくしていきませんか? 172 00:11:42,170 --> 00:11:44,170 若作さん…。 173 00:11:44,170 --> 00:11:46,510 はむ。 ん…。 174 00:11:46,510 --> 00:11:51,780 わかった。 あっ。 髪留めを渡せばいいの? 175 00:11:51,780 --> 00:11:55,620 あなたの言うとおりね。 176 00:11:55,620 --> 00:11:58,620 でも どうして いじめは簡単になくならない➡ 177 00:11:58,620 --> 00:12:00,620 なんて言うのかしらね。 178 00:12:00,620 --> 00:12:06,460 今 いじめられてる子に そんな悠長な時間はないのに。 179 00:12:06,460 --> 00:12:08,870 だめだ 菫子さん! 180 00:12:14,640 --> 00:12:19,980 く… くく… ががが…。 181 00:12:19,980 --> 00:12:21,980 あぁ~っ! 182 00:12:21,980 --> 00:12:24,880 く… 菫子さん! 183 00:12:26,820 --> 00:12:29,420 あ…。 184 00:12:31,660 --> 00:12:34,830 (化野)石は流れ 木の葉は沈み➡ 185 00:12:34,830 --> 00:12:38,500 馬は吼え 牛は嘶く。 186 00:12:38,500 --> 00:12:42,670 石は流れ 木の葉は沈み➡ 187 00:12:42,670 --> 00:12:45,500 馬は吼え 牛は嘶く。 188 00:12:45,500 --> 00:12:48,170 化野くん… か。 189 00:12:48,170 --> 00:12:51,440 菫子さん 気が付きましたか? 190 00:12:51,440 --> 00:12:55,450 すみません 完全に僕の判断ミスだ。 191 00:12:55,450 --> 00:12:57,950 化野くんのケガは…。 192 00:12:57,950 --> 00:13:00,620 逃げてください。 おい…。 193 00:13:00,620 --> 00:13:02,790 また書店で会いましょう。 194 00:13:02,790 --> 00:13:05,590 明日は新刊が多いんですよ。 195 00:13:08,130 --> 00:13:12,130 頼みがあります。 もし僕が戻らなかったら➡ 196 00:13:12,130 --> 00:13:14,800 乙を気にかけてやってください。 197 00:13:14,800 --> 00:13:17,100 え… 待て。 198 00:13:26,480 --> 00:13:29,810 ⦅真奈美ちゃん。 ん…。 199 00:13:29,810 --> 00:13:35,990 家族が ばあちゃんだけで ごめんなぁ。 200 00:13:35,990 --> 00:13:39,160 う… うう…。 201 00:13:39,160 --> 00:13:44,660 (泣き声) 202 00:13:44,660 --> 00:13:48,470 真奈美ちゃん 手ぇ出してごらん。 203 00:13:50,770 --> 00:13:55,440 これは先祖代々伝わる 大事なお守りだよ。 204 00:13:55,440 --> 00:13:59,940 ああ…。 お前を必ず守ってくれる。 205 00:13:59,940 --> 00:14:02,350 さあ 帰ろう⦆ 206 00:14:04,280 --> 00:14:06,280 《畦目:私が受けたいじめが➡ 207 00:14:06,280 --> 00:14:09,120 おばあちゃんへのいじめを生んだ。 208 00:14:09,120 --> 00:14:11,790 大人も大人をいじめるんだ。 209 00:14:11,790 --> 00:14:15,960 いじめのない世界をつくるんだ》 210 00:14:15,960 --> 00:14:19,960 ハァ… ハァ… いてて…。 211 00:14:19,960 --> 00:14:22,970 火は鎮めておきましたよ。 212 00:14:22,970 --> 00:14:25,140 牛転の逆言葉。 213 00:14:25,140 --> 00:14:28,470 石は流れ 木の葉は沈む。 214 00:14:28,470 --> 00:14:30,970 逆の言葉を唱えれば➡ 215 00:14:30,970 --> 00:14:34,480 牛鬼を退けられるという 伝承の手法です。 216 00:14:34,480 --> 00:14:36,810 お守りを取り上げようとするから。 217 00:14:36,810 --> 00:14:38,820 おばあちゃんの形見なのに! 218 00:14:38,820 --> 00:14:41,650 お守り? 何を言ってるんです? 219 00:14:41,650 --> 00:14:44,320 呪いですよ それ。 220 00:14:44,320 --> 00:14:49,490 それは 牛玉と呼ばれる遺物で 牛鬼のかけらです。 221 00:14:49,490 --> 00:14:54,260 あなたの血筋は 牛鬼を族霊とする 家系だったんですね。 222 00:14:54,260 --> 00:14:58,270 ところが代を重ねるうちに その教えも薄れ➡ 223 00:14:58,270 --> 00:15:02,440 今では ただのお守り ということになったのでしょう。 224 00:15:02,440 --> 00:15:07,610 おそらく先生の 畦目という名前は 後の世の当て字➡ 225 00:15:07,610 --> 00:15:09,610 本当の名前は➡ 226 00:15:09,610 --> 00:15:12,620 牝の牛と書いて牝牛ですね。 227 00:15:12,620 --> 00:15:15,120 呪い…。 ええ。 228 00:15:15,120 --> 00:15:17,790 そして呪いは返ってくるものです。 229 00:15:17,790 --> 00:15:21,120 本能をつかさどる大脳辺縁系は➡ 230 00:15:21,120 --> 00:15:23,290 主語を理解できません。 231 00:15:23,290 --> 00:15:26,300 だから 他者への悪感情を抱くとき➡ 232 00:15:26,300 --> 00:15:30,630 脳は相手と自分とを区別できない。 233 00:15:30,630 --> 00:15:35,970 他人を呪う行為は同時に 自分を呪う行為でもある。 234 00:15:35,970 --> 00:15:42,480 「人を呪わば穴二つ」ってやつは あながち ウソじゃないんですよ。 235 00:15:42,480 --> 00:15:44,650 お願いです。 ヒッ。 236 00:15:44,650 --> 00:15:46,820 それを渡してください。 237 00:15:46,820 --> 00:15:49,820 妹を帰すために それが必要なんです。 238 00:15:49,820 --> 00:15:53,260 これがあれば いじめのない世界がつくれる。 239 00:15:53,260 --> 00:15:56,930 そのためなら 私は どうなってもいいの。 240 00:15:56,930 --> 00:15:59,760 友達とふざけることすら 許されない。 241 00:15:59,760 --> 00:16:04,100 本当にそれが あなたの望む世界なんですか? 242 00:16:04,100 --> 00:16:08,940 くぅ… 「ふざけてただけ」 「そんなつもりじゃなかった」。 243 00:16:08,940 --> 00:16:12,280 いじめる側は いつもそう言うわ。 244 00:16:12,280 --> 00:16:16,450 交渉は決裂ですか。 残念だ。 245 00:16:16,450 --> 00:16:19,450 本当に。 は…。 246 00:16:19,450 --> 00:16:23,850 これは やりたくないんだが…。 放っておくわけにはいかない。 247 00:16:30,460 --> 00:16:35,800 ごぼ…! あ… うぐ… うう…。 248 00:16:35,800 --> 00:16:40,300 本音では 僕はあなたの主張に 賛同してるんですよ。 249 00:16:40,300 --> 00:16:42,970 あなたは優しい人です。 250 00:16:42,970 --> 00:16:50,310 あのころ 先生のような人が そばにいてくれたら…。 251 00:16:50,310 --> 00:16:56,590 僕や妹は こうなって いなかったかもしれない。 252 00:16:56,590 --> 00:16:58,760 でも僕は どうしても➡ 253 00:16:58,760 --> 00:17:03,560 世界から排除される側の気持ち ばかり考えてしまうんだ。 254 00:17:09,600 --> 00:17:15,270 ⦅フッ ゾウキンかわいそ~。 だめだって 笑っちゃ⦆ 255 00:17:15,270 --> 00:17:17,370 (笑い声) 256 00:17:20,110 --> 00:17:23,110 ⦅あっ ごめん。 (落ちる音) 257 00:17:23,110 --> 00:17:26,280 アンタの給食 落としちゃった~。 258 00:17:26,280 --> 00:17:30,390 悪いけどそれ 食べてくれる? あ…。 259 00:17:32,960 --> 00:17:37,460 アハハッ 本当に食べた。 さっすが ゾウキン⦆ 260 00:17:41,300 --> 00:17:45,640 ⦅真奈美ちゃんが優しい子なのは よぅく知ってるよ。 261 00:17:45,640 --> 00:17:49,940 ばあちゃんの自慢の孫だよ⦆ 262 00:17:54,080 --> 00:17:58,580 《畦目:おばあちゃん ごめんなさい》 263 00:17:58,580 --> 00:18:03,090 ハァッ! ハァ… ハァ… ハァ…。 264 00:18:03,090 --> 00:18:05,590 ハァ… くっ…。 265 00:18:07,760 --> 00:18:09,930 大丈夫か 化野くん! 266 00:18:09,930 --> 00:18:13,100 菫子… さん…。 267 00:18:13,100 --> 00:18:15,930 これは 君がやったのか? 268 00:18:15,930 --> 00:18:19,100 (化野)僕は背中を押しただけです。 269 00:18:19,100 --> 00:18:21,270 先生は無事なのか? 270 00:18:21,270 --> 00:18:23,610 因果応報ってやつです。 271 00:18:23,610 --> 00:18:25,610 怪異で人をあやめていれば➡ 272 00:18:25,610 --> 00:18:28,780 先生も生きては いなかったでしょうけど。 273 00:18:28,780 --> 00:18:31,450 ふぅ なら大丈夫だな。 274 00:18:31,450 --> 00:18:34,620 畦目先生は 人を殺すような人じゃない。 275 00:18:34,620 --> 00:18:38,290 マジかよ この眉毛 物忘れ激しくない? 276 00:18:38,290 --> 00:18:42,290 ところで私 ケガが残っていないみたいだけど➡ 277 00:18:42,290 --> 00:18:44,290 どういうことなんだ これ? 278 00:18:44,290 --> 00:18:47,300 変若の呪いは形状記憶に近い。 279 00:18:47,300 --> 00:18:50,470 多少の損傷は リカバーできます。 280 00:18:50,470 --> 00:18:54,070 いよいよ私も化け物じみてきたな。 281 00:18:54,070 --> 00:18:56,070 引くわ。 282 00:18:56,070 --> 00:18:59,080 菫子さん なんで逃げなかったんです? 283 00:18:59,080 --> 00:19:03,080 せっかく格好つけて 出ていったのに…。 バカ言え。 284 00:19:03,080 --> 00:19:06,080 見くびるなよ。 これでも作家だぜ? 285 00:19:06,080 --> 00:19:09,750 結末を見届けずに 帰るわけないだろう。 286 00:19:09,750 --> 00:19:14,260 ソシャゲのダメージ差分みたいな格好で 何言ってんですか。 287 00:19:14,260 --> 00:19:17,090 レン兄! 乙ちゃん! 288 00:19:17,090 --> 00:19:19,100 お兄さんは無事だよ おおぅ…! 289 00:19:19,100 --> 00:19:21,600 《レン兄 その目 大丈夫?》 290 00:19:21,600 --> 00:19:24,940 《ごめんよ。 「視る」しかなかった。 291 00:19:24,940 --> 00:19:28,770 これで呪物は抜け殻だ》 292 00:19:28,770 --> 00:19:34,110 《切符より レン兄のほうが大事。 お願い 無理はしないで》 293 00:19:34,110 --> 00:19:37,110 あ…。 あっ! (チャイム) 294 00:19:37,110 --> 00:19:39,120 (チャイム) 295 00:19:39,120 --> 00:19:41,450 帰ろうか 化野くん。 (チャイム) 296 00:19:41,450 --> 00:19:44,150 下校の時間だ。 (チャイム) 297 00:19:51,960 --> 00:19:54,130 (ノック) 298 00:19:54,130 --> 00:19:57,630 (化野)ヨダレカケも収束したし 一件落着。 299 00:19:57,630 --> 00:20:01,140 ご協力ありがとうございました 菫子さん。 300 00:20:01,140 --> 00:20:03,810 (菫子)結局 牛鬼は消えたのか? 301 00:20:03,810 --> 00:20:06,640 (化野)あ そうだ 言ってませんでしたね。 302 00:20:06,640 --> 00:20:11,820 さ~せん。 あれ 牛鬼… じゃありませんでした。 303 00:20:11,820 --> 00:20:14,990 もっと ヤベーヤツです。 (菫子)はぁ? 304 00:20:14,990 --> 00:20:18,820 (化野)ただの牛鬼にしては 凶悪すぎると思ったんですよ➡ 305 00:20:18,820 --> 00:20:21,930 ハハハ。 「ハハハ」って 君! 306 00:20:24,160 --> 00:20:26,660 じゃあ あれはいったい なんだったんだい? 307 00:20:28,670 --> 00:20:33,170 (化野)色は赤く 翼を持ち 頭が8つある鬼神です。 308 00:20:33,170 --> 00:20:37,170 大和朝廷によって討伐された 塵輪鬼の破片が➡ 309 00:20:37,170 --> 00:20:39,510 牛鬼になったといいます。 310 00:20:39,510 --> 00:20:41,510 本来の呪いの力を➡ 311 00:20:41,510 --> 00:20:46,680 先生が自分で逆言葉を唱えて 弱めていたんでしょう。 312 00:20:46,680 --> 00:20:49,690 そのせいで 正体を読み間違えました。 313 00:20:49,690 --> 00:20:52,460 まぁ すべては臆測です。 314 00:20:52,460 --> 00:20:55,960 先生の力も 肝心の怪異も➡ 315 00:20:55,960 --> 00:20:58,960 失われてしまいましたからね。 316 00:21:05,140 --> 00:21:08,640 (畦目)は~い。 (ノック) 317 00:22:39,830 --> 00:22:43,000 (化野)「前を行く少年の 足跡を追いながら➡ 318 00:22:43,000 --> 00:22:47,340 キツネは深い森の冷たい空気を ヒゲの先に感じながら➡ 319 00:22:47,340 --> 00:22:49,510 漂い続けていた。 320 00:22:49,510 --> 00:22:54,110 あの人間の少年は 目的も知らずに歩き続け➡ 321 00:22:54,110 --> 00:22:57,280 同じこの場所に戻ってくるだろう。 322 00:22:57,280 --> 00:23:00,780 それをいつまでも繰り返すだろう。 323 00:23:00,780 --> 00:23:04,620 “森の精” とキツネは呼んでみた。 324 00:23:04,620 --> 00:23:08,120 “私は もう何百年も生きてきた。 325 00:23:08,120 --> 00:23:10,290 そろそろ休みたいのだ。 326 00:23:10,290 --> 00:23:14,460 この命をあの少年に くれてやってもいいだろうか?” 327 00:23:14,460 --> 00:23:17,970 周囲の木々が一斉にざわめいた」。 328 00:23:17,970 --> 00:23:19,970 レン兄。 んっ? 329 00:23:19,970 --> 00:23:23,470 この本を書いたの 団地妻なの? 330 00:23:23,470 --> 00:23:26,680 そうだよ。 むぅ…。 331 00:23:29,650 --> 00:23:32,150 (寝息) 332 00:23:32,150 --> 00:23:35,650 おやすみ 乙。