1 00:00:02,169 --> 00:00:04,171 (玄関チャイム) 2 00:00:04,171 --> 00:00:07,174 《畦目:両親を失った私は➡ 3 00:00:07,174 --> 00:00:11,011 田舎で暮らす祖母に引き取られた。 4 00:00:11,011 --> 00:00:15,515 この荷物が 私の持ち物のすべてだった》 5 00:00:15,515 --> 00:00:18,018 (たえ)ふ… うう…。 6 00:00:18,018 --> 00:00:20,020 (畦目)あ…。 7 00:00:20,020 --> 00:00:22,689 《祖母のたえは抱き締めてくれた。 8 00:00:22,689 --> 00:00:27,361 以来ずっと 私は おばあちゃん子だ。 9 00:00:27,361 --> 00:00:32,366 祖母との生活は 裕福ではなかったけど➡ 10 00:00:32,366 --> 00:00:36,370 穏やかで優しい日々だった。 11 00:00:36,370 --> 00:00:38,372 でも…。 12 00:00:38,372 --> 00:00:43,877 服は祖母の手作りや 格安セール品ばかりだったので➡ 13 00:00:43,877 --> 00:00:47,547 同級生からバカにされ からかわれた》 14 00:00:47,547 --> 00:00:50,550 いっつも同じ服だね アンタ。 う…。 15 00:00:50,550 --> 00:00:53,220 洗濯したことあんの~? 16 00:00:53,220 --> 00:00:55,422 ひ… うう…。 17 00:00:57,391 --> 00:01:01,595 みんな 大掃除の日は 雑巾を持ってきてね~。 18 00:01:06,500 --> 00:01:08,669 んっ? いっぱい縫ったから➡ 19 00:01:08,669 --> 00:01:13,507 他の子たちにもあげてな。 わぁ~! 20 00:01:13,507 --> 00:01:15,676 (チャイム) 21 00:01:15,676 --> 00:01:17,678 あっ 忘れた! 22 00:01:17,678 --> 00:01:21,682 誰か雑巾貸して~。 23 00:01:21,682 --> 00:01:24,518 (畦目)あっ あの…。 んっ? えっ? 24 00:01:24,518 --> 00:01:28,355 あの 雑巾あるから使って? 25 00:01:28,355 --> 00:01:31,024 えっ? ああ…。 26 00:01:31,024 --> 00:01:33,193 フフッ… 何これ。 27 00:01:33,193 --> 00:01:35,195 今アンタが着てるのと➡ 28 00:01:35,195 --> 00:01:37,197 同じ生地じゃん。 あ…。 29 00:01:37,197 --> 00:01:40,701 アンタって 雑巾着てたんだ。 フフフ。 30 00:01:40,701 --> 00:01:45,205 んっ… ていうか これ なんか臭い! 31 00:01:45,205 --> 00:01:48,208 ヒヒッ パス パ~ス! 32 00:01:50,377 --> 00:01:52,379 おいっ! 33 00:01:52,379 --> 00:01:54,381 やめて! あ…。 34 00:01:54,381 --> 00:01:57,384 ホントだ 年寄りのにおいだ! 35 00:01:57,384 --> 00:01:59,553 ヘヘヘッ。 返して! 36 00:01:59,553 --> 00:02:03,056 やめなよ かわいそ~。 ヒヒヒヒッ…。 37 00:02:06,159 --> 00:02:10,497 く… くく… く…。 38 00:02:10,497 --> 00:02:12,499 返して! 39 00:02:12,499 --> 00:02:16,003 暴力? 真奈美がですか? 40 00:02:16,003 --> 00:02:19,673 先方の親御さんが とても怒ってらっしゃいます。 41 00:02:19,673 --> 00:02:24,678 すぐに畦目さんから謝罪して 収めてくださいませんか? 42 00:02:24,678 --> 00:02:29,349 ですが 真奈美は 訳もなく乱暴なんてしません。 43 00:02:29,349 --> 00:02:32,019 何か誤解が…。 私のクラス運営に➡ 44 00:02:32,019 --> 00:02:34,521 問題があるとでも言うんですか? 45 00:02:34,521 --> 00:02:37,357 あ… く…。 46 00:02:37,357 --> 00:02:40,027 ですが…。 47 00:02:40,027 --> 00:02:42,863 真奈美さんが こんなトラブルを起こすのは➡ 48 00:02:42,863 --> 00:02:46,066 ご家庭に 問題があるんじゃないですか? 49 00:04:37,511 --> 00:04:40,680 (化野)潜入初日で 当たりを引くとは➡ 50 00:04:40,680 --> 00:04:42,849 さすがです 菫子さん。 51 00:04:42,849 --> 00:04:46,853 (菫子)やかましいわ。 私の服はどうした? 52 00:04:46,853 --> 00:04:49,022 (化野)よだれまみれの 制服と一緒に➡ 53 00:04:49,022 --> 00:04:51,358 クリーニングに出しました。 54 00:04:51,358 --> 00:04:53,360 それよりどうです? 55 00:04:53,360 --> 00:04:56,863 ヨダレカケをじかに見て 何かわかりましたか? 56 00:04:56,863 --> 00:05:01,635 あれを病気と診断するヤツの目は 節穴だってことぐらいさ。 57 00:05:01,635 --> 00:05:04,304 あれはもっと 別の何かだよ。 58 00:05:04,304 --> 00:05:07,307 倒れた3人は 無事だったんですよね? 59 00:05:07,307 --> 00:05:11,978 (菫子)先生が外に連れ出したら 3人とも意識を取り戻した。 60 00:05:11,978 --> 00:05:16,316 いいですね。 実にいい。 不自然だ。 61 00:05:16,316 --> 00:05:19,319 う~ん… ずいぶん機嫌がいいな。 62 00:05:19,319 --> 00:05:21,321 そりゃそうですよ。 63 00:05:21,321 --> 00:05:24,991 ようやく怪異を見つけたんだ。 64 00:05:24,991 --> 00:05:28,328 逃がさねえ。 ん…。 65 00:05:28,328 --> 00:05:32,332 倒れたとき 標識も立ったんだね? 66 00:05:32,332 --> 00:05:36,336 (乙)うん。 でも私 何もできなくて…。 67 00:05:36,336 --> 00:05:41,174 いいんだよ 乙。 友達が目の前で倒れたんだからね。 68 00:05:41,174 --> 00:05:44,010 僕は乙が無事だったら それでいいんだ。 69 00:05:44,010 --> 00:05:46,179 レン兄…。 70 00:05:46,179 --> 00:05:50,183 ふ~ 私の心配もしてくれて かまわないんだが? 71 00:05:50,183 --> 00:05:52,686 ふぃ! もちろんしてますよ➡ 72 00:05:52,686 --> 00:05:56,089 乙の次に。 フッ… そりゃ光栄だ。 73 00:05:58,525 --> 00:06:02,128 怪異があることは 確定したと考えていいでしょう。 74 00:06:02,128 --> 00:06:05,131 次は怪異を捕らえます。 75 00:06:05,131 --> 00:06:07,801 捕らえる? 76 00:06:07,801 --> 00:06:10,971 明治の哲学者 井上圓了は➡ 77 00:06:10,971 --> 00:06:13,473 著書の 『妖怪學講義』で➡ 78 00:06:13,473 --> 00:06:16,810 妖怪を 実怪と虚怪に分類しました。 79 00:06:16,810 --> 00:06:21,982 虚怪は恐怖心や誤解が生んだ虚構。 80 00:06:21,982 --> 00:06:26,653 対して実怪は 実際に起きた超常現象を指します。 81 00:06:26,653 --> 00:06:31,324 実怪は更に 真怪と仮怪に分けられ➡ 82 00:06:31,324 --> 00:06:36,329 なんらかの証明が可能な 超常現象を仮怪と呼びます。 83 00:06:36,329 --> 00:06:42,168 そして科学でも解明できない 真の超常現象を真怪という。 84 00:06:42,168 --> 00:06:46,840 だが 圓了の定義する真怪は 自然の法則すべてだ。 85 00:06:46,840 --> 00:06:50,343 ある意味 怪異の対局みたいなもんだろう? 86 00:06:50,343 --> 00:06:53,847 哲学者らしい ロマンチックな解釈ですよね。 87 00:06:53,847 --> 00:06:57,017 だけど 僕はあいにく圓了じゃない。 88 00:06:57,017 --> 00:06:59,686 僕の真怪の定義は文字どおり➡ 89 00:06:59,686 --> 00:07:02,122 真の怪異です。 90 00:07:02,122 --> 00:07:05,792 なるほど。 真怪はめったにありませんから➡ 91 00:07:05,792 --> 00:07:07,794 だいたい見当はついてます。 92 00:07:07,794 --> 00:07:12,999 フッ そうか。 なら 私の女子校潜入ミッションも終了だな。 93 00:07:14,968 --> 00:07:18,305 何言ってんです? えっ? 94 00:07:18,305 --> 00:07:21,975 菫子さんには 明日も学校に行ってもらいます。 95 00:07:21,975 --> 00:07:23,977 ええ? 乙。 96 00:07:23,977 --> 00:07:27,647 友達を助けたいだろ? うん…。 97 00:07:27,647 --> 00:07:31,051 なら 僕に任せてくれ。 98 00:07:34,154 --> 00:07:36,990 んっ 先生ごきげんよう! 99 00:07:36,990 --> 00:07:40,160 ごきげんよう まっすぐ帰るのよ~。 100 00:07:40,160 --> 00:07:42,162 はっ? (ドアを叩く音) 101 00:07:42,162 --> 00:07:44,164 (ドアを叩く音) 102 00:07:44,164 --> 00:07:48,335 あんまりだ! もう 便所飯は嫌だ~! 103 00:07:48,335 --> 00:07:51,838 なんでまたトイレなんだ? クソ~! 104 00:07:51,838 --> 00:07:56,509 あ… 待って 今開けるから! 105 00:07:56,509 --> 00:08:00,780 はっ! 剣山まで…。 なんてひどい。 106 00:08:00,780 --> 00:08:03,983 く… 大丈夫 今 出してあげる! 107 00:08:05,952 --> 00:08:08,955 く… 若作さんじゃない! 108 00:08:08,955 --> 00:08:11,958 畦目先生…。 109 00:08:11,958 --> 00:08:14,461 ん… うう…。 110 00:08:14,461 --> 00:08:17,964 もう大丈夫よ。 ありがとうございます。 111 00:08:17,964 --> 00:08:21,468 若作さん あなた やっぱり…。 112 00:08:21,468 --> 00:08:23,970 違うと思いたかったんです。 113 00:08:23,970 --> 00:08:26,639 いじめられてなんかないって。 114 00:08:26,639 --> 00:08:28,641 自分が認めなければ➡ 115 00:08:28,641 --> 00:08:31,311 いじめじゃなくなると 思ったんです。 116 00:08:31,311 --> 00:08:33,813 それに 先生に言ったとしても➡ 117 00:08:33,813 --> 00:08:39,152 どうせ何も変わらないのは わかってましたから。 118 00:08:39,152 --> 00:08:41,154 やっぱりだめね。 119 00:08:41,154 --> 00:08:43,323 加害者を狙っても終わらない。 120 00:08:43,323 --> 00:08:45,825 発想の転換が必要だわ。 121 00:08:45,825 --> 00:08:48,995 被害者を休ませてあげなきゃ。 122 00:08:48,995 --> 00:08:51,998 口実は私が作ってあげる。 123 00:08:51,998 --> 00:08:54,167 はぁ…。 124 00:08:54,167 --> 00:08:59,005 あ… 影が縮んだ? 125 00:08:59,005 --> 00:09:01,274 は… んっ!? 126 00:09:01,274 --> 00:09:03,777 ああ!? はっ! 127 00:09:03,777 --> 00:09:06,579 はじめまして ごきげんよう。 128 00:09:09,616 --> 00:09:13,453 今後 床なめは禁止ですよ。 あ はい。 129 00:09:13,453 --> 00:09:15,455 えっ? なんで男子が? 130 00:09:15,455 --> 00:09:17,457 そこの子どもは? 131 00:09:17,457 --> 00:09:21,127 えっ? 何? あなたたちは? 132 00:09:21,127 --> 00:09:24,798 僕は ここの生徒の ただの保護者であって➡ 133 00:09:24,798 --> 00:09:29,469 あっちは 短太眉 ふかふか恵体女です。 134 00:09:29,469 --> 00:09:32,305 ん… 誰が ふかふか恵体眉毛だ。 135 00:09:32,305 --> 00:09:35,475 ん…。 いや 向こう向いとけよ。 136 00:09:35,475 --> 00:09:37,644 何 がっつり見てんだ 君は! 137 00:09:37,644 --> 00:09:39,813 若作さん? やっぱり➡ 138 00:09:39,813 --> 00:09:42,482 さっきの子どもは あなただったの? 139 00:09:42,482 --> 00:09:48,488 そんなことより 畦目先生が ヨダレカケの犯人…。 140 00:09:48,488 --> 00:09:50,990 牛鬼。 はっ。 141 00:09:50,990 --> 00:09:55,495 伝承の大半は 非常に残忍な性格で➡ 142 00:09:55,495 --> 00:10:00,333 人を食い殺すのを好む化け物 として伝えられています。 143 00:10:00,333 --> 00:10:05,171 『百怪図巻』の牛の頭をした 蜘蛛の姿が有名ですが➡ 144 00:10:05,171 --> 00:10:11,010 伝承ごとに姿や性質が 大きく異なるのが特徴…。 145 00:10:11,010 --> 00:10:15,348 牛鬼に影をなめられた者は 突如 唾液を垂れ流し➡ 146 00:10:15,348 --> 00:10:18,852 火がついたように 体が熱くなり死に至る➡ 147 00:10:18,852 --> 00:10:20,854 という伝承があります。 148 00:10:20,854 --> 00:10:23,690 ヨダレカケと似ていると思いませんか? 149 00:10:23,690 --> 00:10:27,193 そして ゴシップ少女のたまちゃんに 聞いてみたら。 150 00:10:27,193 --> 00:10:31,364 ⦅珠緒:はぁ ヨダレカケの被害者っすか~? 151 00:10:31,364 --> 00:10:35,201 うん… 周りと もめ事がある子が 多かったっすかね~⦆ 152 00:10:35,201 --> 00:10:40,373 以上の点から 乱暴ですが仮説を立てました。 153 00:10:40,373 --> 00:10:43,209 すなわち 牛鬼の力で➡ 154 00:10:43,209 --> 00:10:45,879 いじめの芽を 刈り取っている者がいる。 155 00:10:45,879 --> 00:10:50,884 なので いじめられっ子で わなを張ったわけです。 え…。 156 00:10:53,219 --> 00:10:55,221 えっ? 何!? あ…。 157 00:10:55,221 --> 00:10:58,224 あ… 嫌…。 (匂いを嗅ぐ音) 158 00:10:58,224 --> 00:11:01,661 嫌…。 (匂いを嗅ぐ音) 159 00:11:01,661 --> 00:11:04,664 く… やめて…。 (匂いを嗅ぐ音) 160 00:11:04,664 --> 00:11:07,667 やめて 嗅がないで! 161 00:11:07,667 --> 00:11:12,839 なるほど これが原因か。 162 00:11:12,839 --> 00:11:17,010 その髪飾り それさえ手放せば➡ 163 00:11:17,010 --> 00:11:19,012 すべて丸く収ま…。 164 00:11:19,012 --> 00:11:22,515 えい! ぐっ! うう…。 165 00:11:22,515 --> 00:11:24,517 存外弱い! 166 00:11:24,517 --> 00:11:27,353 どうして先生の邪魔をするの? 167 00:11:27,353 --> 00:11:29,522 落ち着いてください。 168 00:11:29,522 --> 00:11:33,359 先生の願望は いじめをなくしたい ですよね? 169 00:11:33,359 --> 00:11:38,531 けど 生徒を傷つけたら 元も子もないじゃないですか。 170 00:11:38,531 --> 00:11:40,533 ん…。 171 00:11:40,533 --> 00:11:44,037 お願いです 先生 それを手放してください! 172 00:11:44,037 --> 00:11:48,641 時間をかけて 少しずつ いじめをなくしていきませんか? 173 00:11:51,377 --> 00:11:53,379 若作さん…。 174 00:11:53,379 --> 00:11:55,715 はむ。 ん…。 175 00:11:55,715 --> 00:12:00,987 わかった。 あっ。 髪留めを渡せばいいの? 176 00:12:00,987 --> 00:12:04,824 あなたの言うとおりね。 177 00:12:04,824 --> 00:12:07,827 でも どうして いじめは簡単になくならない➡ 178 00:12:07,827 --> 00:12:09,829 なんて言うのかしらね。 179 00:12:09,829 --> 00:12:15,668 今 いじめられてる子に そんな悠長な時間はないのに。 180 00:12:15,668 --> 00:12:18,071 だめだ 菫子さん! 181 00:12:23,843 --> 00:12:29,182 く… くく… ががが…。 182 00:12:29,182 --> 00:12:31,184 あぁ~っ! 183 00:12:31,184 --> 00:12:34,087 く… 菫子さん! 184 00:12:36,022 --> 00:12:38,625 あ…。 185 00:12:40,860 --> 00:12:44,030 (化野)石は流れ 木の葉は沈み➡ 186 00:12:44,030 --> 00:12:47,700 馬は吼え 牛は嘶く。 187 00:12:47,700 --> 00:12:51,871 石は流れ 木の葉は沈み➡ 188 00:12:51,871 --> 00:12:54,707 馬は吼え 牛は嘶く。 189 00:12:54,707 --> 00:12:57,377 化野くん… か。 190 00:12:57,377 --> 00:13:00,647 菫子さん 気が付きましたか? 191 00:13:00,647 --> 00:13:04,651 すみません 完全に僕の判断ミスだ。 192 00:13:04,651 --> 00:13:07,153 化野くんのケガは…。 193 00:13:07,153 --> 00:13:09,822 逃げてください。 おい…。 194 00:13:09,822 --> 00:13:11,991 また書店で会いましょう。 195 00:13:11,991 --> 00:13:14,794 明日は新刊が多いんですよ。 196 00:13:17,330 --> 00:13:21,334 頼みがあります。 もし僕が戻らなかったら➡ 197 00:13:21,334 --> 00:13:24,003 乙を気にかけてやってください。 198 00:13:24,003 --> 00:13:26,306 え… 待て。 199 00:13:35,682 --> 00:13:39,018 ⦅真奈美ちゃん。 ん…。 200 00:13:39,018 --> 00:13:45,191 家族が ばあちゃんだけで ごめんなぁ。 201 00:13:45,191 --> 00:13:48,361 う… うう…。 202 00:13:48,361 --> 00:13:53,866 (泣き声) 203 00:13:53,866 --> 00:13:57,670 真奈美ちゃん 手ぇ出してごらん。 204 00:13:59,972 --> 00:14:04,644 これは先祖代々伝わる 大事なお守りだよ。 205 00:14:04,644 --> 00:14:09,148 ああ…。 お前を必ず守ってくれる。 206 00:14:09,148 --> 00:14:11,551 さあ 帰ろう⦆ 207 00:14:13,486 --> 00:14:15,488 《畦目:私が受けたいじめが➡ 208 00:14:15,488 --> 00:14:18,324 おばあちゃんへのいじめを生んだ。 209 00:14:18,324 --> 00:14:20,993 大人も大人をいじめるんだ。 210 00:14:20,993 --> 00:14:25,164 いじめのない世界をつくるんだ》 211 00:14:25,164 --> 00:14:29,168 ハァ… ハァ… いてて…。 212 00:14:29,168 --> 00:14:32,171 火は鎮めておきましたよ。 213 00:14:32,171 --> 00:14:34,340 牛転の逆言葉。 214 00:14:34,340 --> 00:14:37,677 石は流れ 木の葉は沈む。 215 00:14:37,677 --> 00:14:40,179 逆の言葉を唱えれば➡ 216 00:14:40,179 --> 00:14:43,683 牛鬼を退けられるという 伝承の手法です。 217 00:14:43,683 --> 00:14:46,018 お守りを取り上げようとするから。 218 00:14:46,018 --> 00:14:48,020 おばあちゃんの形見なのに! 219 00:14:48,020 --> 00:14:50,857 お守り? 何を言ってるんです? 220 00:14:50,857 --> 00:14:53,526 呪いですよ それ。 221 00:14:53,526 --> 00:14:58,698 それは 牛玉と呼ばれる遺物で 牛鬼のかけらです。 222 00:14:58,698 --> 00:15:03,469 あなたの血筋は 牛鬼を族霊とする 家系だったんですね。 223 00:15:03,469 --> 00:15:07,473 ところが代を重ねるうちに その教えも薄れ➡ 224 00:15:07,473 --> 00:15:11,644 今では ただのお守り ということになったのでしょう。 225 00:15:11,644 --> 00:15:16,816 おそらく先生の 畦目という名前は 後の世の当て字➡ 226 00:15:16,816 --> 00:15:18,818 本当の名前は➡ 227 00:15:18,818 --> 00:15:21,821 牝の牛と書いて牝牛ですね。 228 00:15:21,821 --> 00:15:24,323 呪い…。 ええ。 229 00:15:24,323 --> 00:15:26,993 そして呪いは返ってくるものです。 230 00:15:26,993 --> 00:15:30,329 本能をつかさどる大脳辺縁系は➡ 231 00:15:30,329 --> 00:15:32,498 主語を理解できません。 232 00:15:32,498 --> 00:15:35,501 だから 他者への悪感情を抱くとき➡ 233 00:15:35,501 --> 00:15:39,839 脳は相手と自分とを区別できない。 234 00:15:39,839 --> 00:15:45,178 他人を呪う行為は同時に 自分を呪う行為でもある。 235 00:15:45,178 --> 00:15:51,684 「人を呪わば穴二つ」ってやつは あながち ウソじゃないんですよ。 236 00:15:51,684 --> 00:15:53,853 お願いです。 ヒッ。 237 00:15:53,853 --> 00:15:56,022 それを渡してください。 238 00:15:56,022 --> 00:15:59,025 妹を帰すために それが必要なんです。 239 00:15:59,025 --> 00:16:02,462 これがあれば いじめのない世界がつくれる。 240 00:16:02,462 --> 00:16:06,132 そのためなら 私は どうなってもいいの。 241 00:16:06,132 --> 00:16:08,968 友達とふざけることすら 許されない。 242 00:16:08,968 --> 00:16:13,306 本当にそれが あなたの望む世界なんですか? 243 00:16:13,306 --> 00:16:18,144 くぅ… 「ふざけてただけ」 「そんなつもりじゃなかった」。 244 00:16:18,144 --> 00:16:21,481 いじめる側は いつもそう言うわ。 245 00:16:21,481 --> 00:16:25,651 交渉は決裂ですか。 残念だ。 246 00:16:25,651 --> 00:16:28,654 本当に。 は…。 247 00:16:28,654 --> 00:16:33,059 これは やりたくないんだが…。 放っておくわけにはいかない。 248 00:16:39,665 --> 00:16:45,004 ごぼ…! あ… うぐ… うう…。 249 00:16:45,004 --> 00:16:49,509 本音では 僕はあなたの主張に 賛同してるんですよ。 250 00:16:49,509 --> 00:16:52,178 あなたは優しい人です。 251 00:16:52,178 --> 00:16:59,519 あのころ 先生のような人が そばにいてくれたら…。 252 00:16:59,519 --> 00:17:05,791 僕や妹は こうなって いなかったかもしれない。 253 00:17:05,791 --> 00:17:07,960 でも僕は どうしても➡ 254 00:17:07,960 --> 00:17:12,765 世界から排除される側の気持ち ばかり考えてしまうんだ。 255 00:17:18,804 --> 00:17:24,477 ⦅フッ ゾウキンかわいそ~。 だめだって 笑っちゃ⦆ 256 00:17:24,477 --> 00:17:26,579 (笑い声) 257 00:17:29,315 --> 00:17:32,318 ⦅あっ ごめん。 (落ちる音) 258 00:17:32,318 --> 00:17:35,488 アンタの給食 落としちゃった~。 259 00:17:35,488 --> 00:17:39,592 悪いけどそれ 食べてくれる? あ…。 260 00:17:42,161 --> 00:17:46,666 アハハッ 本当に食べた。 さっすが ゾウキン⦆ 261 00:17:50,503 --> 00:17:54,840 ⦅真奈美ちゃんが優しい子なのは よぅく知ってるよ。 262 00:17:54,840 --> 00:17:59,145 ばあちゃんの自慢の孫だよ⦆ 263 00:18:03,282 --> 00:18:07,787 《畦目:おばあちゃん ごめんなさい》 264 00:18:07,787 --> 00:18:12,291 ハァッ! ハァ… ハァ… ハァ…。 265 00:18:12,291 --> 00:18:14,794 ハァ… くっ…。 266 00:18:16,963 --> 00:18:19,131 大丈夫か 化野くん! 267 00:18:19,131 --> 00:18:22,301 菫子… さん…。 268 00:18:22,301 --> 00:18:25,137 これは 君がやったのか? 269 00:18:25,137 --> 00:18:28,307 (化野)僕は背中を押しただけです。 270 00:18:28,307 --> 00:18:30,476 先生は無事なのか? 271 00:18:30,476 --> 00:18:32,812 因果応報ってやつです。 272 00:18:32,812 --> 00:18:34,814 怪異で人をあやめていれば➡ 273 00:18:34,814 --> 00:18:37,984 先生も生きては いなかったでしょうけど。 274 00:18:37,984 --> 00:18:40,653 ふぅ なら大丈夫だな。 275 00:18:40,653 --> 00:18:43,823 畦目先生は 人を殺すような人じゃない。 276 00:18:43,823 --> 00:18:47,493 マジかよ この眉毛 物忘れ激しくない? 277 00:18:47,493 --> 00:18:51,497 ところで私 ケガが残っていないみたいだけど➡ 278 00:18:51,497 --> 00:18:53,499 どういうことなんだ これ? 279 00:18:53,499 --> 00:18:56,502 変若の呪いは形状記憶に近い。 280 00:18:56,502 --> 00:18:59,672 多少の損傷は リカバーできます。 281 00:18:59,672 --> 00:19:03,275 いよいよ私も化け物じみてきたな。 282 00:19:03,275 --> 00:19:05,277 引くわ。 283 00:19:05,277 --> 00:19:08,280 菫子さん なんで逃げなかったんです? 284 00:19:08,280 --> 00:19:12,284 せっかく格好つけて 出ていったのに…。 バカ言え。 285 00:19:12,284 --> 00:19:15,287 見くびるなよ。 これでも作家だぜ? 286 00:19:15,287 --> 00:19:18,958 結末を見届けずに 帰るわけないだろう。 287 00:19:18,958 --> 00:19:23,462 ソシャゲのダメージ差分みたいな格好で 何言ってんですか。 288 00:19:23,462 --> 00:19:26,298 レン兄! 乙ちゃん! 289 00:19:26,298 --> 00:19:28,300 お兄さんは無事だよ おおぅ…! 290 00:19:28,300 --> 00:19:30,803 《レン兄 その目 大丈夫?》 291 00:19:30,803 --> 00:19:34,140 《ごめんよ。 「視る」しかなかった。 292 00:19:34,140 --> 00:19:37,977 これで呪物は抜け殻だ》 293 00:19:37,977 --> 00:19:43,315 《切符より レン兄のほうが大事。 お願い 無理はしないで》 294 00:19:43,315 --> 00:19:46,318 あ…。 あっ! (チャイム) 295 00:19:46,318 --> 00:19:48,320 (チャイム) 296 00:19:48,320 --> 00:19:50,656 帰ろうか 化野くん。 (チャイム) 297 00:19:50,656 --> 00:19:53,359 下校の時間だ。 (チャイム) 298 00:20:01,167 --> 00:20:03,335 (ノック) 299 00:20:03,335 --> 00:20:06,839 (化野)ヨダレカケも収束したし 一件落着。 300 00:20:06,839 --> 00:20:10,342 ご協力ありがとうございました 菫子さん。 301 00:20:10,342 --> 00:20:13,012 (菫子)結局 牛鬼は消えたのか? 302 00:20:13,012 --> 00:20:15,848 (化野)あ そうだ 言ってませんでしたね。 303 00:20:15,848 --> 00:20:21,020 さ~せん。 あれ 牛鬼… じゃありませんでした。 304 00:20:21,020 --> 00:20:24,190 もっと ヤベーヤツです。 (菫子)はぁ? 305 00:20:24,190 --> 00:20:28,027 (化野)ただの牛鬼にしては 凶悪すぎると思ったんですよ➡ 306 00:20:28,027 --> 00:20:31,130 ハハハ。 「ハハハ」って 君! 307 00:20:33,365 --> 00:20:35,868 じゃあ あれはいったい なんだったんだい? 308 00:20:37,870 --> 00:20:42,374 (化野)色は赤く 翼を持ち 頭が8つある鬼神です。 309 00:20:42,374 --> 00:20:46,378 大和朝廷によって討伐された 塵輪鬼の破片が➡ 310 00:20:46,378 --> 00:20:48,714 牛鬼になったといいます。 311 00:20:48,714 --> 00:20:50,716 本来の呪いの力を➡ 312 00:20:50,716 --> 00:20:55,888 先生が自分で逆言葉を唱えて 弱めていたんでしょう。 313 00:20:55,888 --> 00:20:58,891 そのせいで 正体を読み間違えました。 314 00:20:58,891 --> 00:21:01,660 まぁ すべては臆測です。 315 00:21:01,660 --> 00:21:05,164 先生の力も 肝心の怪異も➡ 316 00:21:05,164 --> 00:21:08,167 失われてしまいましたからね。 317 00:21:14,340 --> 00:21:17,843 (畦目)は~い。 (ノック) 318 00:22:49,034 --> 00:22:52,204 (化野)「前を行く少年の 足跡を追いながら➡ 319 00:22:52,204 --> 00:22:56,542 キツネは深い森の冷たい空気を ヒゲの先に感じながら➡ 320 00:22:56,542 --> 00:22:58,711 漂い続けていた。 321 00:22:58,711 --> 00:23:03,315 あの人間の少年は 目的も知らずに歩き続け➡ 322 00:23:03,315 --> 00:23:06,485 同じこの場所に戻ってくるだろう。 323 00:23:06,485 --> 00:23:09,989 それをいつまでも繰り返すだろう。 324 00:23:09,989 --> 00:23:13,826 “森の精” とキツネは呼んでみた。 325 00:23:13,826 --> 00:23:17,329 “私は もう何百年も生きてきた。 326 00:23:17,329 --> 00:23:19,498 そろそろ休みたいのだ。 327 00:23:19,498 --> 00:23:23,669 この命をあの少年に くれてやってもいいだろうか?” 328 00:23:23,669 --> 00:23:27,172 周囲の木々が一斉にざわめいた」。 329 00:23:27,172 --> 00:23:29,174 レン兄。 んっ? 330 00:23:29,174 --> 00:23:32,678 この本を書いたの 団地妻なの? 331 00:23:32,678 --> 00:23:35,881 そうだよ。 むぅ…。 332 00:23:38,851 --> 00:23:41,353 (寝息) 333 00:23:41,353 --> 00:23:44,857 おやすみ 乙。