1 00:00:02,002 --> 00:00:05,673 (雷獣)妖王様じきじきの命により 今日この日をもって 2 00:00:05,673 --> 00:00:08,300 天神屋の大旦那は 3 00:00:08,300 --> 00:00:11,011 この雷獣になる! 4 00:00:11,011 --> 00:00:13,013 (葵)えっ? 5 00:01:44,396 --> 00:01:46,774 (ざわめき) 6 00:01:46,774 --> 00:01:49,777 (銀次)あなたに何の権利があって そんなこと! 7 00:01:49,777 --> 00:01:51,779 だ~か~ら~。 8 00:01:51,779 --> 00:01:55,616 俺の言葉は 妖王様の言葉だって言っただろ。 9 00:01:55,616 --> 00:01:58,619 すぐに正式な伝達が来る。 10 00:01:58,619 --> 00:02:04,416 あの鬼神は 隠世を揺るがすような 重大な秘密を抱えていた。 11 00:02:04,416 --> 00:02:07,628 重大な 秘密? 12 00:02:07,628 --> 00:02:09,797 これ以上 八葉の座を 13 00:02:09,797 --> 00:02:13,425 あいつに預けておくわけには いかないんだよね。 14 00:02:13,425 --> 00:02:16,136 (ざわめき) 15 00:02:16,136 --> 00:02:21,809 気になるよね。 絶望しちゃうよね アッハハハ! 16 00:02:21,809 --> 00:02:24,436 (白夜)死ね 馬鹿者。 17 00:02:24,436 --> 00:02:26,438 ぐっ… ちぃ。 18 00:02:26,438 --> 00:02:30,150 やはり出てきたか 白い悪魔め。 19 00:02:30,150 --> 00:02:34,154 なぜ貴様が我が物顔で この天神屋に立っている。 20 00:02:34,154 --> 00:02:38,659 はっ お前はもはや この俺に使われる身だ。 21 00:02:38,659 --> 00:02:42,454 なんせ俺が 大旦那になるのだからな。 22 00:02:42,454 --> 00:02:44,456 愚か者め。 23 00:02:44,456 --> 00:02:48,168 いくら妖王の命令だとしても それは無理だと知れ。 24 00:02:50,170 --> 00:02:52,464 (銀次)あれは… 金印! 25 00:02:52,464 --> 00:02:54,842 金印? えぇ。 26 00:02:54,842 --> 00:02:58,012 天神屋を八葉と証明する印です。 27 00:02:58,012 --> 00:03:02,182 大きな物事を決めるときに 絶対必要になります。 28 00:03:02,182 --> 00:03:06,478 八葉の就任と退任には 妖王の命令の他に 29 00:03:06,478 --> 00:03:10,190 八葉すべての 金印をそろえる必要がある。 30 00:03:10,190 --> 00:03:13,485 それなしでは お前が何をどう動こうが 31 00:03:13,485 --> 00:03:16,488 大旦那様が天神屋の大旦那だ。 32 00:03:18,490 --> 00:03:20,701 時間の問題だ。 33 00:03:20,701 --> 00:03:25,706 年始には八葉夜行会があり 八葉たちが集まる。 34 00:03:25,706 --> 00:03:30,336 そこで俺は 正式に ここの大旦那になる。 35 00:03:30,336 --> 00:03:32,504 勝手なことを。 36 00:03:32,504 --> 00:03:36,050 フフッ 一つだけ確かなことがある。 37 00:03:36,050 --> 00:03:41,513 あの大旦那は もうここには戻ってこないよ。 38 00:03:41,513 --> 00:03:45,893 (ざわめき) 39 00:03:48,062 --> 00:03:50,898 葵さん 大丈夫ですか? 40 00:03:50,898 --> 00:03:53,734 銀次さん 私…。 41 00:03:55,736 --> 00:03:59,531 (白夜)グズグズしている時間はない。 事態は深刻。 42 00:03:59,531 --> 00:04:02,910 このままでは 雷獣に天神屋を乗っ取られるぞ。 43 00:04:02,910 --> 00:04:05,537 大旦那様に 何が起こっているのか 44 00:04:05,537 --> 00:04:09,249 それを調べるべく 私が妖都へ赴く。 45 00:04:09,249 --> 00:04:11,543 えっ 白夜さんが!? 46 00:04:11,543 --> 00:04:15,255 かつて妖都の宮中で 妖王の重臣でしたから。 47 00:04:15,255 --> 00:04:18,092 いろいろツテを お持ちなのでしょう。 48 00:04:18,092 --> 00:04:20,094 まずは大旦那様 49 00:04:20,094 --> 00:04:23,764 そして お庭番長のサイゾウ殿に関する 情報を集める。 50 00:04:23,764 --> 00:04:27,101 それには 宮中の動きも探らねば。 51 00:04:27,101 --> 00:04:29,561 お庭番のサスケくんの力を借りたい。 52 00:04:29,561 --> 00:04:32,272 (サスケ)了解でござる。 えっ? 53 00:04:32,272 --> 00:04:35,275 私がいない間の 天神屋をまとめるのは 54 00:04:35,275 --> 00:04:37,945 若旦那である銀次殿だ。 55 00:04:37,945 --> 00:04:41,407 わかりました。 留守は お任せください。 56 00:04:41,407 --> 00:04:43,409 他の皆も 57 00:04:43,409 --> 00:04:46,578 それぞれ自身のなすべきことを 果たしてほしい。 58 00:04:46,578 --> 00:04:48,580 承知のとおり もう間もなく 59 00:04:48,580 --> 00:04:52,584 星華丸による 宙船夜間飛行の企画が始まる。 60 00:04:52,584 --> 00:04:56,964 セイカマル? 天神屋の遊覧船です。 61 00:04:56,964 --> 00:04:59,133 天神屋から出港して 62 00:04:59,133 --> 00:05:02,803 景色や食事を楽しみながら 妖都へ向かうんです。 63 00:05:02,803 --> 00:05:05,806 空のナイトクルーズ なのね。 64 00:05:05,806 --> 00:05:07,808 その企画に乗じ 65 00:05:07,808 --> 00:05:11,812 我々は妖都と鬼門の地を 難なく行き来できる。 66 00:05:11,812 --> 00:05:14,440 葵くん。 あっ はい。 67 00:05:14,440 --> 00:05:17,317 君も星華丸に乗ってくれないか。 68 00:05:17,317 --> 00:05:19,987 料理を出してほしいのだ。 69 00:05:21,989 --> 00:05:23,991 ねぇ 銀次さん。 70 00:05:23,991 --> 00:05:27,828 私 本当に お料理をしているだけでいいの? 71 00:05:27,828 --> 00:05:32,624 もっと何か… 大旦那様のために できることはないのかしら。 72 00:05:32,624 --> 00:05:36,837 珍しいですね 葵さんが そのように弱気なのは。 73 00:05:36,837 --> 00:05:40,632 えっ? あなたは いつだって たくましく 74 00:05:40,632 --> 00:05:43,635 健気に 強気に 向かっていった。 75 00:05:43,635 --> 00:05:47,347 どんな逆境であっても 前向きに。 76 00:05:47,347 --> 00:05:49,641 そうよね。 77 00:05:49,641 --> 00:05:53,479 そのはずなのに 私 どうして…。 78 00:05:53,479 --> 00:05:57,649 それだけ大旦那様のことが 大事で心配なのでしょう。 79 00:05:57,649 --> 00:06:00,486 えっ そ そんなこと…。 80 00:06:00,486 --> 00:06:02,488 フフッ。 81 00:06:02,488 --> 00:06:07,367 あなたのやるべきことは まず何より お料理です。 82 00:06:07,367 --> 00:06:11,038 あなたのお料理は あやかしの心を暴く。 83 00:06:11,038 --> 00:06:14,374 白夜さんも そう考えているのだと思います。 84 00:06:14,374 --> 00:06:17,377 それが大旦那様を助け 天神屋を守る 85 00:06:17,377 --> 00:06:20,380 きっかけになるのではと。 ですから 86 00:06:20,380 --> 00:06:23,509 ひとまず大旦那様のことは 他の者たちに任せ 87 00:06:23,509 --> 00:06:26,512 星華丸で お客様に楽しんでいただける 88 00:06:26,512 --> 00:06:28,514 お料理を考えましょう。 89 00:06:28,514 --> 00:06:32,059 あなたのやるべきことは あなたのお料理が 90 00:06:32,059 --> 00:06:35,395 きっと教えてくれますよ。 91 00:06:35,395 --> 00:06:40,067 ありがとう 銀次さん。 私 星華丸のメニューを考えるわ! 92 00:06:40,067 --> 00:06:42,402 えぇ その意気です。 93 00:06:50,202 --> 00:06:53,747 ♪(祭りばやし) 94 00:06:53,747 --> 00:06:56,583 (お涼)な… なんなのよ これ。 95 00:06:56,583 --> 00:06:58,585 キッチンカーよ。 96 00:06:58,585 --> 00:07:02,589 中で調理ができるワゴン車で 現世で人気なのよね。 97 00:07:02,589 --> 00:07:05,926 ふ~ん。 こんなの どこにあったのよ? 98 00:07:05,926 --> 00:07:10,055 砂楽博士が 現世の研究用に持ってたのよ。 99 00:07:10,055 --> 00:07:14,059 銀次さんが 夜ダカ号って名前を つけてくれたの。 100 00:07:14,059 --> 00:07:17,437 (アイ)今夜のメニューはハンバーガーですよ~。 101 00:07:17,437 --> 00:07:20,232 ハンバーグをパンに挟んだものよ。 102 00:07:20,232 --> 00:07:24,069 ふ~ん 新しいもの好きの 妖都のあやかしに 103 00:07:24,069 --> 00:07:26,238 うけそうじゃない。 104 00:07:26,238 --> 00:07:28,615 しっかり働きなさいよ。 105 00:07:28,615 --> 00:07:32,244 はい… お涼もね。 106 00:07:32,244 --> 00:07:35,789 (子鬼たち)いらっしゃいませ~ いらっしゃいませ~。 107 00:07:35,789 --> 00:07:40,252 天神屋の食事処 夕がおの出張店ですよ~! 108 00:07:40,252 --> 00:07:43,630 おいしい 現世のハンバーガーがありますよ! 109 00:07:43,630 --> 00:07:46,967 (チビ) とっても おいしいでしゅよ~。 110 00:07:46,967 --> 00:08:05,277 ♪~ 111 00:08:07,654 --> 00:08:11,283 はあ~ 終わった終わった。 112 00:08:11,283 --> 00:08:13,493 お疲れさまです~。 おつかれさまでしゅ~。 113 00:08:13,493 --> 00:08:16,496 アイちゃんもチビも よく頑張ってくれたわね。 114 00:08:16,496 --> 00:08:20,000 ありがとう。 失礼。 115 00:08:20,000 --> 00:08:23,837 やはりもう 注文は受け付けられないだろうか。 116 00:08:23,837 --> 00:08:26,840 大丈夫ですよ。 こちらどうぞ。 117 00:08:29,676 --> 00:08:32,304 目新しい料理が 食べられると聞いて 118 00:08:32,304 --> 00:08:35,682 飛んできたのだが。 いかにも奇怪な料理だ。 119 00:08:35,682 --> 00:08:38,018 ハンバーガーというのですが 120 00:08:38,018 --> 00:08:41,146 お肉や野菜を挟んだ パンのお料理です。 121 00:08:41,146 --> 00:08:44,024 3種類 用意していますが…。 122 00:08:44,024 --> 00:08:46,693 どれが いちばんハイカラだろうか。 123 00:08:46,693 --> 00:08:50,322 それでしたら 夜ダカ号チーズバーガーでしょうか。 124 00:08:50,322 --> 00:08:52,699 極赤牛の平たい肉団子に 125 00:08:52,699 --> 00:08:56,536 南の地のアボカドと 北の地のチーズを挟んでいます。 126 00:08:56,536 --> 00:08:59,039 ならば それにしようか。 127 00:09:04,336 --> 00:09:08,048 お待たせしました。 おぉ…。 128 00:09:08,048 --> 00:09:12,344 こちらはサービスで りんごと生姜の温かい炭酸です。 129 00:09:12,344 --> 00:09:14,554 温かい炭酸? 130 00:09:14,554 --> 00:09:17,057 鬼門の地の名物なんです。 131 00:09:17,057 --> 00:09:20,352 お疲れの体を 癒やしてくれると思いますよ。 132 00:09:20,352 --> 00:09:22,354 ほう。 133 00:09:25,065 --> 00:09:29,361 ありがとう。 なんだか心の落ち着く味だな。 134 00:09:29,361 --> 00:09:32,572 で これは どう食せば…。 135 00:09:32,572 --> 00:09:35,742 しっかり手に持って かぶりついてください。 136 00:09:35,742 --> 00:09:37,744 えっ? 137 00:09:43,750 --> 00:09:45,919 うまい。 138 00:09:45,919 --> 00:09:49,923 これなら あの子も食べてくれるだろうか。 139 00:09:49,923 --> 00:09:51,925 《あの子?》 140 00:09:53,927 --> 00:09:56,388 ふぅ… うまかった。 141 00:09:56,388 --> 00:09:59,391 私は ふだん あまり自由のない 142 00:09:59,391 --> 00:10:02,769 さまざまなものに 縛られた生活をしている。 143 00:10:02,769 --> 00:10:06,940 このひとときは そういうものを 一時的に忘れることのできる 144 00:10:06,940 --> 00:10:10,235 貴重な時間だった。 145 00:10:10,235 --> 00:10:13,780 ごちそうさま 夜ダカの君。 146 00:10:21,121 --> 00:10:25,792 《お忍びだったのかな 高貴な身の上の方の…》 147 00:10:28,128 --> 00:10:30,422 《すごい景色。 148 00:10:30,422 --> 00:10:34,134 大旦那様 このどこかにいるのよね。 149 00:10:34,134 --> 00:10:36,636 ちゃんとご飯 食べてるかしら?》 150 00:10:36,636 --> 00:10:40,265 (サスケ)葵殿! サスケくん! 151 00:10:40,265 --> 00:10:43,643 このまま 妖都に 降り立っていただくでござる。 152 00:10:43,643 --> 00:10:46,980 えっ!? お帳場長からのお達しでござる。 153 00:10:46,980 --> 00:10:48,982 白夜さん? 154 00:10:48,982 --> 00:10:52,444 ええっ!? あっ… あぁ~! 155 00:10:55,655 --> 00:11:00,160 帰りの客に紛れ このまま 妖都の中心部までお連れする。 156 00:11:00,160 --> 00:11:02,996 待って アイちゃんとチビが…。 157 00:11:02,996 --> 00:11:07,459 大丈夫 2人には仲間のお庭番に 説明をしてもらうでござる。 158 00:11:07,459 --> 00:11:10,837 でも…。 アイ殿には 葵殿に化けて 159 00:11:10,837 --> 00:11:13,840 天神屋に戻ってもらう必要が あるでござる。 160 00:11:13,840 --> 00:11:17,010 えっ? それって影武者ってこと? 161 00:11:17,010 --> 00:11:21,473 葵殿の不在を敵方に知られるのは まずいでござるから。 162 00:11:21,473 --> 00:11:24,476 敵… わっ! 163 00:11:29,856 --> 00:11:31,858 わぁ~! 164 00:11:36,488 --> 00:11:40,700 ねぇ サスケくん 私たちは どこへ行くの? 165 00:11:40,700 --> 00:11:42,702 縫ノ陰邸まで。 166 00:11:42,702 --> 00:11:46,206 縫ノ陰邸!? って 律子様の! 167 00:11:46,206 --> 00:11:48,875 現在 妖都の宮中関係者で 168 00:11:48,875 --> 00:11:51,878 我々の味方と なってくださっているのは 169 00:11:51,878 --> 00:11:55,715 縫ノ陰殿と その奥方の律子殿だけ。 170 00:11:55,715 --> 00:11:58,885 その律子殿が 葵殿をお呼びだとか。 171 00:11:58,885 --> 00:12:01,221 えっ 私を? 172 00:12:09,896 --> 00:12:12,732 (サスケ)では 拙者はこれにて! 173 00:12:12,732 --> 00:12:14,734 あっ…。 174 00:12:19,239 --> 00:12:22,909 (律子)葵さん こんばんは。 175 00:12:22,909 --> 00:12:25,245 律子さん! 176 00:12:25,245 --> 00:12:28,248 お久しぶりです 律子さん。 177 00:12:28,248 --> 00:12:31,376 夏以来ですね 葵さん。 178 00:12:31,376 --> 00:12:34,087 お呼び立てして ごめんなさい。 179 00:12:34,087 --> 00:12:37,090 ぜひ お願いしたいことがあるのです。 180 00:12:37,090 --> 00:12:39,926 あっ はい。 それは…。 181 00:12:39,926 --> 00:12:41,928 あ… あの…。 182 00:12:41,928 --> 00:12:45,765 その前に ひとつ聞きたいことがあるんです。 183 00:12:45,765 --> 00:12:50,270 大旦那様が 妖都から戻ってこないんです! 184 00:12:50,270 --> 00:12:54,566 律子様 何かご存じないですか!? 185 00:12:54,566 --> 00:12:56,776 あの方は 186 00:12:56,776 --> 00:13:00,780 妖王様によって 牢に囚われております。 187 00:13:00,780 --> 00:13:02,782 えっ!? 188 00:13:05,785 --> 00:13:10,123 大旦那様が 牢屋に入れられているだなんて。 189 00:13:10,123 --> 00:13:13,960 伝え聞いた情報によると 妖王様の前で 190 00:13:13,960 --> 00:13:17,797 雷獣によって化けの皮を 剥がされたようなのです。 191 00:13:17,797 --> 00:13:20,967 化けの… 皮? えぇ。 192 00:13:20,967 --> 00:13:26,306 あやかしとしての真実の姿を 暴かれたということです。 193 00:13:26,306 --> 00:13:30,310 大旦那様の 真実の姿? 194 00:13:32,604 --> 00:13:35,815 でも だからって どうして牢屋なんかに! 195 00:13:35,815 --> 00:13:40,153 悪いことをしたわけでもないのに 化けの皮が剥がされただけで…。 196 00:13:40,153 --> 00:13:43,615 化けの皮を 強制的に剥がされるというのは 197 00:13:43,615 --> 00:13:46,326 ふだん化け姿で過ごしている あやかしにとって 198 00:13:46,326 --> 00:13:48,328 最も恐ろしいこと。 199 00:13:49,829 --> 00:13:53,667 そして 大旦那様の真実の姿 というものは 200 00:13:53,667 --> 00:13:56,836 隠世では 重大な禁忌だったというのです。 201 00:13:56,836 --> 00:13:58,838 禁忌!? 202 00:13:58,838 --> 00:14:02,509 雷獣が… 言ったんです。 203 00:14:02,509 --> 00:14:07,347 大旦那様はもう 天神屋には戻ってこないって。 204 00:14:07,347 --> 00:14:12,352 私… 何もできない気がして ずっと不安で。 205 00:14:12,352 --> 00:14:16,523 大旦那様の帰ってくる場所を 守らなきゃいけないのに。 206 00:14:18,525 --> 00:14:22,862 葵さんは あの鬼神の 大旦那様に対する感情に 207 00:14:22,862 --> 00:14:26,157 変化があったみたいですね。 えっ? 208 00:14:26,157 --> 00:14:29,160 初めて あなたにお会いした時は 209 00:14:29,160 --> 00:14:33,164 まだまだ恋を知らない お嬢さんだと思っていたのですが。 210 00:14:33,164 --> 00:14:37,544 そ その… 別に そういうわけでは。 211 00:14:37,544 --> 00:14:42,173 恋というものは なぜか一度 人を弱くします。 212 00:14:42,173 --> 00:14:45,719 しかし それを受け入れ 乗り越えると 213 00:14:45,719 --> 00:14:49,889 恋心ほど大きな力を生む気持ちは 他にないと 214 00:14:49,889 --> 00:14:51,891 わたくしは思うのです。 215 00:14:51,891 --> 00:14:55,186 律子さん…。 今回の件は 216 00:14:55,186 --> 00:14:58,898 天神屋の大旦那様のみの問題では ありません。 217 00:14:58,898 --> 00:15:04,571 今 宮中で八葉制度の廃止が 声高に叫ばれています。 218 00:15:04,571 --> 00:15:07,574 千年以上も前のこと。 219 00:15:07,574 --> 00:15:10,577 当時の妖王は力が弱く 220 00:15:10,577 --> 00:15:14,914 各地で賊が暴れて 隠世は混乱に陥っていました。 221 00:15:14,914 --> 00:15:18,918 その隠世の混乱を 抑えるために作られたのが 222 00:15:18,918 --> 00:15:21,212 八葉制度でした。 223 00:15:21,212 --> 00:15:25,216 中心に妖都を置き 八つに土地を分け 224 00:15:25,216 --> 00:15:29,220 八つの大妖怪に それぞれの 地の主として権力を与え 225 00:15:29,220 --> 00:15:33,058 平和に収めるよう命じたのです。 226 00:15:33,058 --> 00:15:36,227 それが今の八つの地。 227 00:15:36,227 --> 00:15:39,439 八つの地は それぞれに発展を遂げました。 228 00:15:39,439 --> 00:15:41,608 妖都の貴族たちもまた 229 00:15:41,608 --> 00:15:45,445 彼らが支払う多額の税によって 潤っています。 230 00:15:45,445 --> 00:15:47,947 潤っているのなら 231 00:15:47,947 --> 00:15:51,618 なぜ八葉制度を 潰そうとしているのでしょうか? 232 00:15:51,618 --> 00:15:55,246 貴族たちは 八葉が権力を増すことが 233 00:15:55,246 --> 00:15:57,624 苦々しくてならない。 234 00:15:57,624 --> 00:16:00,627 でも そのもたらす富は欲しい。 235 00:16:00,627 --> 00:16:03,254 それで 八葉制度を廃止し 236 00:16:03,254 --> 00:16:05,965 八つの地の財と富 商売を 237 00:16:05,965 --> 00:16:09,969 妖王の名のもとに 管理しようとしているのです。 238 00:16:09,969 --> 00:16:12,806 そんなの ひどい! 239 00:16:12,806 --> 00:16:15,642 天神屋だって あの折尾屋だって 240 00:16:15,642 --> 00:16:18,478 自分たちで知恵を働かせて 241 00:16:18,478 --> 00:16:22,273 失敗や成功を たくさん繰り返して やっと今があるのに! 242 00:16:22,273 --> 00:16:24,818 えぇ そのとおりです。 243 00:16:24,818 --> 00:16:27,821 貴族にも 廃止に反対の者もいますし 244 00:16:27,821 --> 00:16:30,115 何より妖王様ご自身が 245 00:16:30,115 --> 00:16:34,119 八葉との関係を壊したくないと お考えのようでした。 246 00:16:36,121 --> 00:16:39,290 妖王様が 大旦那様を呼び寄せたのも 247 00:16:39,290 --> 00:16:42,001 この件で 相談事があったからだとか。 248 00:16:42,001 --> 00:16:45,839 えっ? 妖王様は まだ200歳とお若く 249 00:16:45,839 --> 00:16:50,677 大旦那様を兄のように思っている とさえ聞いていました。 250 00:16:50,677 --> 00:16:55,306 だったら そんな妖王様が どうして大旦那様を…。 251 00:16:55,306 --> 00:16:57,684 それは わかりません。 252 00:16:57,684 --> 00:16:59,686 でも この一件から 253 00:16:59,686 --> 00:17:02,522 妖王様は 八葉制度を廃止する方向で 254 00:17:02,522 --> 00:17:05,024 考えるようになられたとのこと。 255 00:17:07,026 --> 00:17:09,696 《本当に どうして? 256 00:17:09,696 --> 00:17:13,324 大旦那様の真実の姿って 257 00:17:13,324 --> 00:17:17,036 禁忌って… なんなの?》 258 00:17:17,036 --> 00:17:20,331 ここは妖王家縫ノ陰邸。 259 00:17:20,331 --> 00:17:25,712 縫ノ陰の名のもとに あなたを客人として迎え入れます。 260 00:17:25,712 --> 00:17:30,175 しばらくあなたは ここから 星華丸や天神屋に通うのです。 261 00:17:30,175 --> 00:17:34,345 えっ? 白夜さんの許可は すでに得てあります。 262 00:17:34,345 --> 00:17:37,557 葵さんの力を お借りしたい案件があるのです。 263 00:17:37,557 --> 00:17:41,186 でも…。 それに ここは妖都。 264 00:17:41,186 --> 00:17:45,565 最も早く情報を 手に入れることができる場所。 265 00:17:45,565 --> 00:17:47,734 大旦那様の情報も。 266 00:17:49,736 --> 00:17:54,073 待つだけが女の仕事だ なんていうのは 古い時代のお話。 267 00:17:54,073 --> 00:17:57,076 雷獣が どのような混乱の物語を 268 00:17:57,076 --> 00:17:59,746 思い描いているのかは 知りませんが 269 00:17:59,746 --> 00:18:02,749 それならば こちらはこちらで 270 00:18:02,749 --> 00:18:06,586 ありったけの愛と奇跡の物語を 紡ぎましょう。 271 00:18:06,586 --> 00:18:08,588 律子さん…。 272 00:18:08,588 --> 00:18:11,090 お世話になります。 273 00:18:14,761 --> 00:18:17,931 わあっ とってもきれい! 274 00:18:17,931 --> 00:18:21,601 食べるのがもったいないような お料理ばかりですね。 275 00:18:21,601 --> 00:18:24,395 妖都の長い歴史の中で生まれた 276 00:18:24,395 --> 00:18:27,398 こだわりの妖都野菜のお総菜よ。 277 00:18:27,398 --> 00:18:30,401 北楽大根と油揚げの炒め煮 278 00:18:30,401 --> 00:18:34,113 西巻人参と東花海老芋の 炊き合わせ 279 00:18:34,113 --> 00:18:36,407 鰻のかぶら蒸し。 280 00:18:36,407 --> 00:18:39,118 ぜひ味わっていただきたいわ。 281 00:18:39,118 --> 00:18:41,120 はい。 282 00:18:43,414 --> 00:18:47,126 んっ! おだしが よく効いてる。 283 00:18:47,126 --> 00:18:49,128 とてもおいしいです。 284 00:18:49,128 --> 00:18:51,422 (竹千代)僕 それ嫌い。 285 00:18:56,803 --> 00:18:59,973 それも! これも! 嫌い! 286 00:18:59,973 --> 00:19:02,267 野菜 全部嫌い! 287 00:19:02,267 --> 00:19:05,436 えっ? まあ 竹千代様。 288 00:19:05,436 --> 00:19:08,648 お客様のお食事を 邪魔してはいけませんよ。 289 00:19:08,648 --> 00:19:11,818 うるさい うるさい! 僕に指図するな! 290 00:19:16,823 --> 00:19:19,450 あの… あの子は? 291 00:19:19,450 --> 00:19:23,830 訳あって我が家で預かっている 妖王家の御子様で 292 00:19:23,830 --> 00:19:26,165 竹千代様といいます。 293 00:19:26,165 --> 00:19:28,167 妖王家の…。 294 00:19:28,167 --> 00:19:31,838 少々 気難しく 好き嫌いも激しく 295 00:19:31,838 --> 00:19:34,465 食事にも あまり手をつけません。 296 00:19:34,465 --> 00:19:37,468 特に野菜は ほとんど口にしないのです。 297 00:19:37,468 --> 00:19:40,847 子供は野菜が嫌いですからねぇ。 298 00:19:40,847 --> 00:19:43,474 ただの子供の野菜嫌いではなく 299 00:19:43,474 --> 00:19:46,185 そもそも食べるということ自体 300 00:19:46,185 --> 00:19:49,188 あまり 好きではないみたいなのです。 301 00:19:52,483 --> 00:19:56,195 《どんな事情で ここに預けられてるのかな? 302 00:19:56,195 --> 00:20:00,867 食事が そんなに嫌だなんて どうして…》 303 00:20:00,867 --> 00:20:03,494 ほ~ら ハハハ。 304 00:20:03,494 --> 00:20:07,498 おいおい ハハハ こっち見ろ。 305 00:20:07,498 --> 00:20:09,500 ねぇ。 306 00:20:11,711 --> 00:20:13,880 えっと…。 307 00:20:13,880 --> 00:20:17,717 あっ その亀 とてもきれいね。 308 00:20:17,717 --> 00:20:19,719 何の用だ。 309 00:20:19,719 --> 00:20:22,221 ねぇ お腹すいてない? 310 00:20:22,221 --> 00:20:25,516 ふん! うるさい よそ者。 311 00:20:25,516 --> 00:20:27,518 何か食べてみない? 312 00:20:27,518 --> 00:20:30,521 いろんなものを食べるのって 楽しいわよ。 313 00:20:30,521 --> 00:20:32,899 ひとつも楽しくなんかないよ。 314 00:20:32,899 --> 00:20:35,902 私ね 人間なの。 315 00:20:35,902 --> 00:20:37,904 人間? 316 00:20:37,904 --> 00:20:41,240 人間たちの食べているものに 興味ない? 317 00:20:41,240 --> 00:20:44,077 そうねぇ… ハンバーガーはどう? 318 00:20:44,077 --> 00:20:47,080 両手で持って かぶりつくお料理よ。 319 00:20:47,080 --> 00:20:51,376 手で持って かぶりつく? 箸は使わないのか? 320 00:20:51,376 --> 00:20:54,253 えぇ! 隠世で言うと 321 00:20:54,253 --> 00:20:56,923 おにぎりみたいな感じよ。 322 00:20:56,923 --> 00:20:59,092 おにぎり? 323 00:20:59,092 --> 00:21:01,094 えっ? 324 00:21:01,094 --> 00:21:04,931 うるさい! もう話しかけるな! 325 00:21:04,931 --> 00:21:07,767 僕は いらない子なんだ! 326 00:21:10,103 --> 00:21:13,272 《いらない子?》 327 00:21:13,272 --> 00:21:18,277 竹千代様は 現妖王様の 第二王子のご長男なのですよ。 328 00:21:18,277 --> 00:21:23,282 それって 今の妖王様の お孫さんってことですか? 329 00:21:23,282 --> 00:21:26,577 えぇ。 それも最初のお孫様。 330 00:21:26,577 --> 00:21:29,580 いずれ妖王の跡を継ぐ 御子として 331 00:21:29,580 --> 00:21:34,127 母子ともども とても大事にされ いつも注目の的でした。 332 00:21:36,129 --> 00:21:40,299 でも しばらくして もう1人の御子が生まれたのです。 333 00:21:40,299 --> 00:21:45,805 その子は正室の子 そして竹千代様は側室の子。 334 00:21:45,805 --> 00:21:48,975 後で生まれた その御子が跡継ぎとなり 335 00:21:48,975 --> 00:21:52,812 竹千代様と母君のお立場は 一転してしまったのです。 336 00:21:52,812 --> 00:21:55,606 そういうことだったんですね。 337 00:21:55,606 --> 00:21:58,609 周囲が 簡単に変わってしまったことで 338 00:21:58,609 --> 00:22:00,611 母君は心を病んで 339 00:22:00,611 --> 00:22:04,991 物を食べることが できなくなってしまい…。 340 00:22:04,991 --> 00:22:08,828 今は 文門の地の病院で療養の身です。 341 00:22:08,828 --> 00:22:12,165 もしかしたら そのせいで竹千代様も…。 342 00:22:12,165 --> 00:22:14,333 えぇ。 343 00:22:14,333 --> 00:22:17,628 竹千代様のご様子を 見かねた妖王様が 344 00:22:17,628 --> 00:22:19,630 いとこである縫様に 345 00:22:19,630 --> 00:22:23,009 竹千代様を預けることを 決められたのです。 346 00:22:25,344 --> 00:22:27,847 あんなに小さい子が 347 00:22:27,847 --> 00:22:30,850 そんな つらい思いを…。 348 00:22:30,850 --> 00:22:34,479 ダメです そんなの絶対に。 349 00:22:34,479 --> 00:22:39,484 だから 私は白夜さんに頼み あなたをお呼びしたのですよ。 350 00:22:42,361 --> 00:22:45,364 《私は幼い頃 351 00:22:45,364 --> 00:22:49,035 食べ物がなくて 空腹に苦しんだ》 352 00:22:52,371 --> 00:22:56,209 《でも 目の前に食べ物があるのに 353 00:22:56,209 --> 00:22:58,669 それが食べられない子供も 354 00:22:58,669 --> 00:23:04,509 きっと 同じように苦しい》 355 00:23:04,509 --> 00:23:06,677 わかりました。 356 00:23:06,677 --> 00:23:11,390 律子さん あの子のこと 私が何とかしてみます! 357 00:23:12,892 --> 00:23:15,394 ありがとう 葵さん。