1 00:01:35,950 --> 00:01:36,610 こんばんは 2 00:01:45,950 --> 00:01:48,190 久しぶりね 黒桐くん 3 00:02:14,280 --> 00:02:15,320 やっぱり君か 4 00:02:19,350 --> 00:02:21,150 ああ なんとなく会えると思ってた 5 00:02:25,510 --> 00:02:27,790 それで 式は眠ってるの? 6 00:02:28,980 --> 00:02:32,400 そうね 今はわたしとあなただけ 7 00:02:38,260 --> 00:02:44,170 そうか 女性の式とも 男性の織とも違う 8 00:02:45,920 --> 00:02:47,430 君は 誰なんだい 9 00:02:48,460 --> 00:02:49,700 わたしはわたしよ 10 00:02:50,850 --> 00:02:56,350 どちらのシキでもない ただガランドウの心の中にいるわたし 11 00:02:57,900 --> 00:03:01,840 それとも ガランドウのココロがわたしなのかな 12 00:03:04,980 --> 00:03:08,190 この体に生まれた二つの人格とは別のものよ 13 00:03:09,420 --> 00:03:12,210 傷つかないためにすべてを肯定する式と 14 00:03:13,090 --> 00:03:15,460 傷つくためにすべてを否定する織 15 00:03:16,770 --> 00:03:17,820 どちらが彼で 16 00:03:18,380 --> 00:03:21,050 どちらが彼女だったかは わたしは知らない 17 00:03:22,020 --> 00:03:22,830 どうでもいいもの 18 00:03:24,530 --> 00:03:27,470 ただ シキはきれいに分かれすぎよね 19 00:03:28,720 --> 00:03:30,600 肯定と否定しかない心は 20 00:03:31,220 --> 00:03:33,720 完全である代わりに孤立してしまう 21 00:03:36,470 --> 00:03:37,690 それが彼女たち 22 00:03:39,270 --> 00:03:44,560 シキっていう人格は 一つの土台の両端にある極点みたいなものかしらね 23 00:03:46,730 --> 00:03:48,220 その間には何もない 24 00:03:49,530 --> 00:03:52,100 だから そのなかにわたしがいるの 25 00:03:55,240 --> 00:03:58,910 そっか まんなかにいるのが君なんだ 26 00:04:00,420 --> 00:04:02,690 じゃあ なんて呼べばいいのかな 27 00:04:03,640 --> 00:04:06,940 その やっぱりシキでいいの 28 00:04:07,530 --> 00:04:10,930 いえ 両儀式がわたしの名前よ 29 00:04:12,170 --> 00:04:15,700 けれど シキと呼んでもらえるなら嬉しいな 30 00:04:16,390 --> 00:04:19,290 それだけで 待っていた意味がでてくるもの 31 00:04:21,610 --> 00:04:26,150 ねえ 四年前 こうして君と会ったことを 32 00:04:27,300 --> 00:04:28,410 式は覚えてないの 33 00:04:29,220 --> 00:04:29,490 ええ 34 00:04:30,970 --> 00:04:32,840 わたしと彼女たちは違うから 35 00:04:34,380 --> 00:04:36,800 織と式は隣りあっている者だから 36 00:04:37,310 --> 00:04:39,080 お互いの事をよく覚えている 37 00:04:40,300 --> 00:04:44,580 けれどわたしは 彼女たちには知覚できない自分だから 38 00:04:45,560 --> 00:04:48,910 今日のことも 式は覚えていないでしょうね 39 00:04:51,960 --> 00:04:52,740 そうか 40 00:04:55,460 --> 00:04:56,250 黒桐くん 41 00:05:08,120 --> 00:05:11,680 わたしもね あなたに尋ねたい事があるの 42 00:05:13,580 --> 00:05:17,730 少し残念だけど お話はそれでおしまいにしましょう 43 00:05:18,610 --> 00:05:20,820 わたしはそのために出てきたんだから 44 00:05:25,550 --> 00:05:27,240 あなたのほしいものはなに 45 00:05:29,440 --> 00:05:30,940 願いを言って 黒桐くん 46 00:05:32,570 --> 00:05:36,720 わたしは人の望むものなら 大抵のことを叶えてあげられるわ 47 00:05:37,920 --> 00:05:40,080 式はあなたが好きみたいだから 48 00:05:42,020 --> 00:05:44,620 わたしの権利はあなたのものだもの 49 00:05:46,370 --> 00:05:49,730 さあ あなたは何を望むの 50 00:05:56,240 --> 00:05:57,020 そうだね 51 00:06:03,710 --> 00:06:04,360 いらないよ 52 00:06:09,070 --> 00:06:09,470 そう 53 00:06:11,900 --> 00:06:12,510 そうね 54 00:06:13,540 --> 00:06:14,950 分かりきったことだった 55 00:06:17,600 --> 00:06:20,440 君は シキじゃないんだね 56 00:06:21,500 --> 00:06:21,810 ええ 57 00:06:29,170 --> 00:06:33,360 ねえ黒桐くん 人格ってどこにあるのかな 58 00:06:35,650 --> 00:06:36,520 どうだろう 59 00:06:37,680 --> 00:06:40,350 人格っていうのは知性のことだから 60 00:06:41,400 --> 00:06:44,270 やっぱりあたまのなかにあるんじゃないのかな 61 00:06:45,320 --> 00:06:46,400 頭の中 62 00:06:47,400 --> 00:06:49,140 そう 頭の中 63 00:06:50,550 --> 00:06:52,030 ありきたりの答えだけど 64 00:06:52,820 --> 00:06:56,380 知性と呼ばれるものは 脳の働きによるものなんだから 65 00:06:57,090 --> 00:06:59,860 いいえ 魂は脳に宿る 66 00:07:00,590 --> 00:07:03,470 脳髄だけ生かしきれるコトが可能なら 67 00:07:04,110 --> 00:07:05,950 人は肉体なんかいらない 68 00:07:08,540 --> 00:07:10,790 ただ外部から電気を流してやれば 69 00:07:11,150 --> 00:07:13,840 ずっと脳だけで夢を見て生きていける 70 00:07:15,520 --> 00:07:18,250 そんな世界を作り上げていた魔術師もいたわ 71 00:07:19,400 --> 00:07:20,530 あなたと同じね 72 00:07:21,390 --> 00:07:23,940 人格は頭の中にあるって答え 73 00:07:25,240 --> 00:07:27,870 でも それは無垢の知性であって 74 00:07:28,280 --> 00:07:29,780 人間の心ではないわ 75 00:07:32,950 --> 00:07:34,360 例えばね黒桐くん 76 00:07:35,520 --> 00:07:36,830 あなたという人間 77 00:07:37,740 --> 00:07:39,030 あなたという人格 78 00:07:39,850 --> 00:07:42,170 あなたという魂をカタチにしているのは 79 00:07:43,120 --> 00:07:45,170 遍歴をつみかさねた知性と 80 00:07:45,570 --> 00:07:47,020 カラである肉体なの 81 00:07:48,540 --> 00:07:50,050 知性を生む脳だけじゃ 82 00:07:50,380 --> 00:07:52,650 人となりを表す人格は現れない 83 00:07:54,850 --> 00:07:59,900 そう わたし達は肉体があって 初めて自己を認識できる 84 00:08:01,870 --> 00:08:03,420 脳だけで生きていけるなら 85 00:08:03,910 --> 00:08:05,420 他のものは必要ない 86 00:08:05,940 --> 00:08:07,520 それは死者の考えよ 87 00:08:09,010 --> 00:08:12,700 大体人格なんて それ自体が矛盾の塊でしょう 88 00:08:13,680 --> 00:08:17,890 そんな余分なものは 余分な体がなくちゃ作られないわ 89 00:08:25,170 --> 00:08:29,910 まず体があって そのカタチと一緒に人格は作られていく 90 00:08:31,390 --> 00:08:35,750 自分の肉体が好きなひとは 社交的な人格を持つだろうし 91 00:08:36,520 --> 00:08:39,930 嫌いなひとは 内向的な翳りを持ってしまう 92 00:08:42,170 --> 00:08:44,520 人間は知性だけで生きていけるけれど 93 00:08:45,530 --> 00:08:47,400 知性だけで育った人格は 94 00:08:47,940 --> 00:08:49,150 自己を省みない 95 00:08:50,060 --> 00:08:53,270 およそ人間の心とは別の物に成長してしまうわ 96 00:08:55,620 --> 00:08:57,220 それじゃあ人格じゃなくて 97 00:08:58,090 --> 00:09:00,300 計算機と変わらなくなってしまうでしょう 98 00:09:02,450 --> 00:09:05,460 知性があって肉体がある  ではないの 99 00:09:06,550 --> 00:09:10,110 肉体があって そのあとに知性は生まれるの 100 00:09:14,970 --> 00:09:17,650 肉体は ただあるだけのもの 101 00:09:19,380 --> 00:09:22,550 けれど あるだけのものにも息は生まれるわ 102 00:09:24,000 --> 00:09:29,370 だって 一緒に人として育って 知性を生んだわたしなんだから 103 00:09:31,970 --> 00:09:34,470 あぁ 聞いたことがある 104 00:09:35,640 --> 00:09:39,710 人間は 三つの事柄で出来た生物だって 105 00:09:41,420 --> 00:09:44,610 精神と魂 それに肉体 106 00:09:46,900 --> 00:09:51,770 精神は脳から 魂は肉体から生まれるものだとしたら 107 00:09:53,460 --> 00:09:55,530 君はシキの本質 108 00:09:56,870 --> 00:10:01,310 ええ わたしは脳が幻想している人格じゃなくて 109 00:10:01,810 --> 00:10:03,850 肉体そのものの人格なの 110 00:10:06,400 --> 00:10:13,400 式と織は 結局 『両儀式』という大元の性格の中で行なわれる人格交換 111 00:10:14,260 --> 00:10:17,870 それらを全て司っているのは 『両儀式』よ 112 00:10:19,800 --> 00:10:21,890 ふたりが異なる人格であろうと 113 00:10:22,430 --> 00:10:24,340 思考回路が同一だったのは 114 00:10:25,080 --> 00:10:29,550 彼女たちが結局 『両儀式の中の善と悪』だったから 115 00:10:31,910 --> 00:10:33,370 発端はわたしであり 116 00:10:33,960 --> 00:10:36,450 また その結論もわたしにある 117 00:10:39,150 --> 00:10:42,570 そうしなければ 異なる方向性の彼女たちが 118 00:10:42,910 --> 00:10:44,620 両立できるはずないものね 119 00:10:51,270 --> 00:10:52,650 よく分からないけど 120 00:10:54,120 --> 00:10:57,460 つまり 君はふたりのシキの原型なんだ 121 00:11:11,300 --> 00:11:14,390 そう 両儀式の本質よ 122 00:11:15,460 --> 00:11:17,970 そして決して表に出ない本質 123 00:11:19,820 --> 00:11:23,550 肉体にすぎないわたしは 考えるコトができないから 124 00:11:24,100 --> 00:11:25,840 そのままで朽ちるはずだった 125 00:11:27,140 --> 00:11:31,850 けれど両儀の家の人たちは そういった空っぽのわたしに知性を与えた 126 00:11:33,590 --> 00:11:37,260 彼らは両儀式を万能の人間にするために 127 00:11:37,730 --> 00:11:39,990 色々な人格を組み込もうとしたの 128 00:11:41,870 --> 00:11:44,370 そうして原型であるわたしが起こされて 129 00:11:45,010 --> 00:11:47,550 その後に全ての地盤になるものとして 130 00:11:48,280 --> 00:11:51,060 式と織を わたしは作った 131 00:11:52,380 --> 00:11:55,900 あぁ いつか橙子さんが言ってたっけ 132 00:11:57,350 --> 00:11:59,630 式と織 陰と陽 133 00:12:00,540 --> 00:12:01,380 善と悪 134 00:12:02,920 --> 00:12:06,110 それは 相反するから分かれたものじゃない 135 00:12:07,250 --> 00:12:13,070 そう分かれたのは それらがもっとも多くの属性を内包するからだと 136 00:12:14,850 --> 00:12:15,770 おかしいでしょ 137 00:12:17,050 --> 00:12:20,120 本当は未熟児として消えてしまう筈のわたしは 138 00:12:21,100 --> 00:12:23,730 そうして自分というものを得てしまった 139 00:12:28,640 --> 00:12:30,240 生まれたての動物は 140 00:12:30,530 --> 00:12:34,300 赤子の体と それに見合った知性の芽をもっている 141 00:12:35,220 --> 00:12:38,930 けどわたしのように 何も持たずに生まれたものはね 142 00:12:39,960 --> 00:12:42,300 そのまま死んでしまうのが決まりなの 143 00:12:46,060 --> 00:12:47,820 あの魔術師風に言うのなら 144 00:12:48,490 --> 00:12:50,630 わたしの起源は何もないこと 145 00:12:52,030 --> 00:12:54,570 初めから空っぽなの  わたしは 146 00:12:56,440 --> 00:12:57,810 橙子さんに聞いたでしょう 147 00:12:58,340 --> 00:12:59,610 人間の無意識は 148 00:13:00,030 --> 00:13:03,650 自分たちの社会を無くしてしまうような仕様を許さないって 149 00:13:05,020 --> 00:13:07,250 この体は その類 150 00:13:11,490 --> 00:13:14,300 普通ならわたしは 生まれることも 151 00:13:14,570 --> 00:13:16,320 目覚めることさえなかった 152 00:13:17,510 --> 00:13:20,640 わたしのように『』から直接流れ出た生き物は 153 00:13:21,250 --> 00:13:23,550 母親の胎盤の中で死ぬだけ 154 00:13:24,650 --> 00:13:27,070 だって 生まれても意味がないわ 155 00:13:27,960 --> 00:13:29,160 『』は無だから 156 00:13:29,830 --> 00:13:31,190 知性だって無なんだもの 157 00:13:35,580 --> 00:13:40,180 わたしはそのまま 外界を認識することなく生きていくはずだった 158 00:13:41,400 --> 00:13:45,330 けれど 両儀の人はそれを生かす技術を持っていたのね 159 00:13:46,480 --> 00:13:48,250 彼らはわたしを起こした 160 00:13:49,590 --> 00:13:52,360 出来合いの人格をわたしに植え付けたのではなく 161 00:13:53,510 --> 00:13:56,640 『』という わたしの起源を起こしてしまった 162 00:14:00,590 --> 00:14:03,800 無理遣りに外の世界を見せつけられたわたしは 163 00:14:04,410 --> 00:14:10,050 面倒くさくなって その後のことはシキに押しつけることにしたのよ 164 00:14:13,680 --> 00:14:14,570 当然でしょう 165 00:14:15,590 --> 00:14:17,470 だって外の世界のことなんて 166 00:14:18,080 --> 00:14:19,800 判りきったことばかりで 167 00:14:20,300 --> 00:14:21,300 つまらないんだもの 168 00:14:23,200 --> 00:14:26,200 でも 君には意志がある 169 00:14:28,100 --> 00:14:28,740 そうね 170 00:14:29,760 --> 00:14:33,650 どんな人にだって 肉体そのものに人格はあるけれど 171 00:14:34,180 --> 00:14:36,750 それ自体が自己を認識する事はないわ 172 00:14:37,750 --> 00:14:40,640 その前に より確かな己として 173 00:14:41,020 --> 00:14:42,870 脳が知性を作り上げるから 174 00:14:46,800 --> 00:14:50,100 脳の働きによって生まれた知性は人格になって 175 00:14:50,770 --> 00:14:52,230 肉体を統括する 176 00:14:53,330 --> 00:14:58,140 その時点で 肉体に宿っていた 人格なんて無意味になってしまう 177 00:15:02,120 --> 00:15:04,630 脳だって体の一部にすぎないのに 178 00:15:05,570 --> 00:15:10,070 知性は自身を生み出す脳だけを 特別なものとして扱うでしょう 179 00:15:11,800 --> 00:15:13,680 どちらも同じものなのにね 180 00:15:15,770 --> 00:15:20,640 人格という知性は 自らを作りあげた肉体のことなんか知らず 181 00:15:21,610 --> 00:15:24,260 知性が自分を作ったって思うのよ 182 00:15:25,570 --> 00:15:29,250 わたしは その順序が人とは違っただけ 183 00:15:32,780 --> 00:15:33,860 それでもね 184 00:15:34,560 --> 00:15:36,940 いまこうしてお話をしているわたしだって 185 00:15:37,690 --> 00:15:40,320 シキという人格があるから話していられるの 186 00:15:41,370 --> 00:15:45,160 シキがいなければ わたしは言葉さえ理解できない 187 00:15:46,120 --> 00:15:49,040 だって ただの肉体にすぎないんだもの 188 00:15:52,320 --> 00:15:56,310 そうか 式っていう人格がいないと 189 00:15:57,600 --> 00:16:00,260 君は外の世界を識る事ができないんだ 190 00:16:04,340 --> 00:16:08,690 そう わたしは 電源のはいっていない機械で 191 00:16:09,440 --> 00:16:12,180 シキというソフトウェアがなければただのハコよ 192 00:16:13,840 --> 00:16:15,480 内側だけ見つめるしかない 193 00:16:16,210 --> 00:16:18,100 死に通じているだけの器 194 00:16:19,640 --> 00:16:22,950 魔術師たちは 根源に通じているといっていたけど 195 00:16:23,630 --> 00:16:27,290 そんなコト わたしにとっては何の価値もないことだった 196 00:16:54,840 --> 00:16:59,350 でも 今はすこしだけ価値があるって思ってた 197 00:17:00,600 --> 00:17:03,820 わたしだったらこんな傷ぐらい治してあげられるからって 198 00:17:05,910 --> 00:17:10,170 誰かの力になって 外の世界と関われるんだって 199 00:17:12,040 --> 00:17:16,350 なのに あなたは何も望まないのね 200 00:17:19,200 --> 00:17:22,990 うん 式は壊すのが専門だからね 201 00:17:24,750 --> 00:17:28,590 無理をして よけい酷いめにあったら こわいよ 202 00:17:31,430 --> 00:17:36,140 そうね 式は壊すことしかできないもの 203 00:17:37,710 --> 00:17:41,510 あなたにとっては やっぱりわたしは式なんだわ 204 00:17:46,610 --> 00:17:48,590 わたしの起源は『』だから 205 00:17:49,240 --> 00:17:51,570 その肉体を持つ式は死が視える 206 00:17:53,320 --> 00:17:57,650 二年間 昏睡状態で外界を見ることもできず 207 00:17:58,410 --> 00:18:01,450 両儀式という虚無を見つめ続けてきた式は 208 00:18:02,390 --> 00:18:04,290 死の手触りを知ってしまった 209 00:18:07,040 --> 00:18:07,820 式はね 210 00:18:08,880 --> 00:18:12,080 ずっと根源の渦と呼ばれる場所に浮いていたのよ 211 00:18:13,720 --> 00:18:17,270 ただひとり 式というカタチをもって 212 00:18:19,600 --> 00:18:25,910 根源の渦 それは 何もない場所なのかな 213 00:18:27,520 --> 00:18:30,440 明かりのない 夜の海のような 214 00:18:33,770 --> 00:18:35,680 旨い譬えね 黒桐くん 215 00:18:38,920 --> 00:18:40,990 うん 夜の海というのは懐かしいわ 216 00:18:43,340 --> 00:18:45,260 それが夜明け前のものであるなら 217 00:18:45,830 --> 00:18:47,460 少しだけ微笑ましい 218 00:18:48,910 --> 00:18:53,210 何一つ形のない 人のいない海だとしても 219 00:18:56,080 --> 00:19:00,290 それが君の 心のあり方なんだね 220 00:19:02,170 --> 00:19:05,200 何もないことが 君のカタチだった 221 00:19:07,440 --> 00:19:10,880 だから式は例外なく すべてのモノを殺せた 222 00:19:12,560 --> 00:19:14,460 式という人格が否定しようと 223 00:19:15,470 --> 00:19:19,270 それが 両儀式という魂の原型だから 224 00:19:21,870 --> 00:19:26,870 虚無であるが故に あらゆるものの死を望む方向性 225 00:19:28,430 --> 00:19:31,100 そう それが式のあり方よ 226 00:19:32,560 --> 00:19:34,060 浅上藤乃と同じ 227 00:19:34,740 --> 00:19:37,380 人とは違ったモノを見る特殊なチャンネル 228 00:19:38,960 --> 00:19:41,800 根源の渦という世界の縮図を垣間見る 229 00:19:42,120 --> 00:19:42,970 特別な眼 230 00:19:44,320 --> 00:19:48,170 けど わたしはもっと深いところまで潜っていける 231 00:19:51,280 --> 00:19:57,030 いえ わたし自身が その渦なのかもしれないわ 232 00:20:00,440 --> 00:20:02,920 すべての原因が渦巻いている場所 233 00:20:03,910 --> 00:20:08,930 すべてが用意されていて だから 何もない場所 234 00:20:10,660 --> 00:20:12,140 それがわたしの正体 235 00:20:14,260 --> 00:20:17,640 繋がっているだけだけど わたしはソレの一部だもの 236 00:20:18,670 --> 00:20:21,480 それって 同じ存在ってコトでしょう 237 00:20:23,140 --> 00:20:25,790 だから わたしはなんだってできる 238 00:20:29,480 --> 00:20:35,510 そうね 目に見えないほど小さな物質の法則を組み替えたり 239 00:20:36,570 --> 00:20:38,260 星の始まりを紐解いて 240 00:20:38,540 --> 00:20:40,520 系統樹を変えることだって可能だわ 241 00:20:41,820 --> 00:20:44,010 今の世界を作り直すんじゃない 242 00:20:46,170 --> 00:20:50,410 新しい世界で 古い世界を握り潰すの 243 00:20:56,040 --> 00:20:58,810 けど そんなのに意味はないわ 244 00:20:59,300 --> 00:21:00,250 疲れるだけ 245 00:21:01,450 --> 00:21:04,360 そんなこと 夢をみるのと変わらないもの 246 00:21:06,350 --> 00:21:08,060 だからわたしはなにも見ず 247 00:21:09,140 --> 00:21:10,120 なにも考えず 248 00:21:11,540 --> 00:21:13,660 夢さえみないという夢をみる 249 00:21:15,900 --> 00:21:19,850 なのに わたしとシキのみる夢は違ったみたい 250 00:21:20,920 --> 00:21:23,650 シキは ひとりはイヤなんですって 251 00:21:25,090 --> 00:21:26,870 つまらない夢だと思わない? 252 00:21:28,080 --> 00:21:31,000 そう なんてつまらないシキ 253 00:21:32,400 --> 00:21:34,030 なんてつまらない現実 254 00:21:36,150 --> 00:21:39,050 なんてつまらない――わたし 255 00:21:43,340 --> 00:21:46,440 でも それは仕方のないことよね 256 00:21:46,740 --> 00:21:48,580 わたしは体にすぎないんだから 257 00:21:50,240 --> 00:21:53,930 意味がなくても 彼女の夢につきあわなくっちゃ 258 00:21:55,700 --> 00:21:57,100 今までと同じように 259 00:21:57,520 --> 00:22:01,010 シキは外を わたしは内を見つめるだけ 260 00:22:05,520 --> 00:22:08,660 両儀式の体は 根源に通じている 261 00:22:09,730 --> 00:22:11,520 内側しか見られないわたしは 262 00:22:11,970 --> 00:22:14,170 全ての出来事を知ってしまっているの 263 00:22:15,320 --> 00:22:18,490 それが苦痛で 退屈で 無意味で 264 00:22:19,640 --> 00:22:21,580 わたしは瞼を閉じていた 265 00:22:25,000 --> 00:22:27,120 それがまた続くだけだから 266 00:22:27,800 --> 00:22:30,600 結局は以前となにも変わらない 267 00:22:32,230 --> 00:22:34,800 ずっと 眠っていればいい 268 00:22:36,280 --> 00:22:41,840 夢もみないで 何も考えずに ずっと 269 00:22:42,660 --> 00:22:45,480 いつかこの体が朽ちて消えてしまうときも 270 00:22:46,760 --> 00:22:49,060 夢の終わりに気がつかないように 271 00:22:58,560 --> 00:23:01,600 ばかね こんなコトを気にしないでよ 272 00:23:03,460 --> 00:23:06,740 でも うん 嬉しいから 273 00:23:07,640 --> 00:23:10,070 もう一つだけご褒美をあげようかな 274 00:23:12,170 --> 00:23:15,890 式はね 死に焦がれているわけではないの 275 00:23:16,960 --> 00:23:18,820 彼女は勘違いしているだけ 276 00:23:20,420 --> 00:23:24,490 だって彼女の殺人衝動は わたしから生じるものなんだから 277 00:23:25,350 --> 00:23:28,340 それは 彼女本人の嗜好じゃないでしょう 278 00:23:30,610 --> 00:23:32,960 だから安心なさいな 黒桐くん 279 00:23:36,570 --> 00:23:38,170 殺人鬼がいるとしたら 280 00:23:38,940 --> 00:23:40,970 それは わたしのことなんだから 281 00:23:42,920 --> 00:23:44,640 あなたを殺したがっていたのは 282 00:23:45,750 --> 00:23:47,710 他でもない わたしだったのよ 283 00:24:18,530 --> 00:24:20,010 式には内緒にしてね 284 00:24:33,350 --> 00:24:34,510 そろそろ行くわ 285 00:24:38,790 --> 00:24:39,900 ねえ黒桐くん 286 00:24:43,880 --> 00:24:46,250 あなたはほんとうに何も望まなかった 287 00:24:47,960 --> 00:24:49,810 白純里緒と対峙した時も 288 00:24:50,680 --> 00:24:53,530 死と隣り合わせだったのに 中立を選んだ 289 00:24:55,040 --> 00:24:58,160 わたしには それが不思議で仕方がなかったの 290 00:24:59,600 --> 00:25:02,710 あなたは今日よりもっと楽しい明日がほしくないの 291 00:25:05,500 --> 00:25:09,160 ああ 今だって楽しいからね 292 00:25:10,800 --> 00:25:13,380 それで十分だって 思えるんだ 293 00:25:16,390 --> 00:25:19,440 そう 何の特徴もなく 294 00:25:20,640 --> 00:25:24,460 自分が特別であろうと希望する事なく 生きていく 295 00:25:26,710 --> 00:25:28,600 誰も傷つけないかわりに 296 00:25:28,850 --> 00:25:30,030 自分も傷つかない 297 00:25:31,270 --> 00:25:33,160 何も奪わないかわりに 298 00:25:33,570 --> 00:25:34,800 何も得られない 299 00:25:36,600 --> 00:25:41,400 波風をたてず 時間に融けこむように平均を暮らしていって 300 00:25:42,020 --> 00:25:43,880 静かに息をひきとっていく 301 00:25:45,840 --> 00:25:50,310 それがあなたたちの平凡な当たり障りのない人生 302 00:25:51,380 --> 00:25:54,870 けれど それはあくまで結果にすぎないわ 303 00:25:55,640 --> 00:25:59,410 多くの人々は 望んでそんな暮らしをしているわけじゃない 304 00:25:59,830 --> 00:26:03,050 特別になろうとして 成り得なかった結果が 305 00:26:03,550 --> 00:26:05,750 平凡な人生という人のカタチ 306 00:26:07,670 --> 00:26:08,400 だから 307 00:26:09,850 --> 00:26:12,410 初めからそうであろうとして生きるコトは 308 00:26:13,520 --> 00:26:14,830 何よりも難しい 309 00:26:17,120 --> 00:26:21,600 わたしにとっては そのほうが誰よりも特別な心のカタチ 310 00:26:24,140 --> 00:26:27,040 触れることさえ 出来ないくらい 311 00:26:45,500 --> 00:26:46,130 そうだね 312 00:26:47,880 --> 00:26:53,050 結局 特別ではない人間なんていないのかもしれない 313 00:26:55,060 --> 00:26:59,500 人間は ひとりひとりがまったく違った意味の生き物だ 314 00:27:01,780 --> 00:27:04,460 同じ生き物であるコトを頼りに寄りそって 315 00:27:05,860 --> 00:27:07,490 解り合えない隔たりを 316 00:27:08,550 --> 00:27:11,060 空っぽの境界にするために生きている 317 00:27:14,080 --> 00:27:16,220 そんな日が来ない事を知っていながら 318 00:27:17,760 --> 00:27:20,450 それを夢みて生きていく 319 00:27:22,520 --> 00:27:25,650 きっとそれが 誰の例外もない 320 00:27:26,840 --> 00:27:30,080 ただひとつの 当たり前なんじゃないかな 321 00:27:42,060 --> 00:27:44,730 誰にも理解してもらえない特別性と 322 00:27:45,840 --> 00:27:48,310 誰も理解しようとしない普遍性 323 00:27:49,590 --> 00:27:51,640 誰から見ても普通な存在は 324 00:27:52,880 --> 00:27:56,970 だから 誰も深く彼を理解しようとしない 325 00:28:00,710 --> 00:28:02,650 誰にも嫌われないかわりに 326 00:28:03,930 --> 00:28:06,120 誰も惹きつけることのない誰か 327 00:28:08,840 --> 00:28:12,420 幸せな日々の 結晶みたいな彼 328 00:28:14,600 --> 00:28:15,090 なら 329 00:28:16,060 --> 00:28:19,780 本当に独りきりなのは彼女じゃなくて 330 00:28:30,800 --> 00:28:32,420 あたりまえのように生きて 331 00:28:34,370 --> 00:28:36,160 あたりまえのように死ぬのね 332 00:28:43,880 --> 00:28:44,610 なんて 333 00:28:46,110 --> 00:28:46,880 孤独 334 00:29:19,590 --> 00:29:21,130 さようなら 黒桐くん 335 00:29:25,250 --> 00:29:28,950 ばかね また 明日会えるのに