1 00:00:01,235 --> 00:00:03,237 (幼い長束の声)「ある皇子が言った。➡ 2 00:00:03,237 --> 00:00:06,373 金烏が生まれると 日照りが起こる。➡ 3 00:00:06,373 --> 00:00:09,710 金烏が生まれると 大洪水が起こる。➡ 4 00:00:09,710 --> 00:00:12,946 金烏が生まれると 大きな乱があって➡ 5 00:00:12,946 --> 00:00:15,349 たくさんの八咫烏が死ぬ」。 6 00:00:16,884 --> 00:00:19,720 痛ましいことだ。 7 00:00:19,720 --> 00:00:22,656 ねえ おじいさま どうして金烏が生まれると➡ 8 00:00:22,656 --> 00:00:25,425 山内に禍が起きるのですか? 9 00:00:25,425 --> 00:00:29,096 金烏は我ら八咫烏を 守るものではないのですか? 10 00:00:29,096 --> 00:00:31,732 なぜ金烏が生まれるのですか? 11 00:00:31,732 --> 00:00:35,936 その金烏が… 何故 私の弟なのですか? 12 00:00:51,084 --> 00:01:04,965 ♬~ 13 00:01:04,965 --> 00:01:08,802 ♬「羽を伸ばしてふらふら」 14 00:01:08,802 --> 00:01:13,473 ♬「うつけてみたいや 何も考えたくない」 15 00:01:13,473 --> 00:01:15,409 ♬「疲れてしまったよ」 16 00:01:15,409 --> 00:01:19,079 ♬「羽目をはずして ぐだぐた」 17 00:01:19,079 --> 00:01:24,785 ♬「流石に昨日はちょっと 遊びすぎたかもな」 18 00:01:24,785 --> 00:01:29,389 ♬「カァカァ烏合の衆 文句ばっかりじゃない?」 19 00:01:29,389 --> 00:01:34,828 ♬「で何?やっかみ?優雅に壊してくる」 20 00:01:34,828 --> 00:01:42,135 ♬「平気な顔で躊躇いなく嘘をつく」 21 00:01:42,135 --> 00:01:46,006 ♬「騙し合い 悲しくなった」 22 00:01:46,006 --> 00:01:49,543 ♬「まだ青く不確かな」 23 00:01:49,543 --> 00:01:55,816 ♬「飾らない僕にも 変わらない愛を」 24 00:01:55,816 --> 00:01:59,820 ♬「目的地が分からない」 25 00:01:59,820 --> 00:02:04,992 ♬「運命的な出会いがしたい」 26 00:02:04,992 --> 00:02:10,864 ♬「どうせなら遠回りもしたい」 27 00:02:10,864 --> 00:02:19,673 ♬~ 28 00:02:22,409 --> 00:02:25,278 早速だが 今から用事を頼みたい。 29 00:02:25,278 --> 00:02:27,280 あ… はい。 30 00:02:32,886 --> 00:02:37,624 <皇太子だし どんだけ贅沢してるのかと 思ってたけど…➡ 31 00:02:37,624 --> 00:02:40,494 思ってたのと違うな…> 32 00:02:40,494 --> 00:02:44,297 お前の一番の仕事はこれだ。 33 00:02:44,297 --> 00:02:46,833 あそこの井戸から水やりをしてほしい。 34 00:02:46,833 --> 00:02:49,302 ただし やるのは白い鉢だけだ。 35 00:02:49,302 --> 00:02:51,238 白だけでいいんですか? 36 00:02:51,238 --> 00:02:54,641 そうだ そして青には滝の水を。 滝? 37 00:02:59,346 --> 00:03:02,783 白と青には 同じ草花が一株ずつ植わっている。 38 00:03:02,783 --> 00:03:06,253 やる水を間違えるなよ。 それと。 ん? 39 00:03:06,253 --> 00:03:10,123 この井戸は飲み水ではないから 喉が渇いたら➡ 40 00:03:10,123 --> 00:03:12,959 離れにある水甕の水を飲みなさい。 41 00:03:12,959 --> 00:03:16,063 分かりました。 では早速… ん? 42 00:03:20,367 --> 00:03:22,602 私と澄尾は外出する。 43 00:03:22,602 --> 00:03:26,573 昼過ぎには一度戻るから それまでに部屋を片づけておいてくれ。 44 00:03:26,573 --> 00:03:28,708 はあ…。 45 00:03:28,708 --> 00:03:31,478 書物は分類して書棚に戻しておくように。 46 00:03:31,478 --> 00:03:34,481 それと 私宛の文を取ってきてほしい。 47 00:03:34,481 --> 00:03:38,018 昼前には民政寮に届くはずだ。 民政寮? 48 00:03:38,018 --> 00:03:41,888 書物の中には図書寮で借りてきたものも あるから返却してくれ。 49 00:03:41,888 --> 00:03:47,094 その際 次に借りたい目録を官吏に渡して それを用意してもらう間に➡ 50 00:03:47,094 --> 00:03:49,029 式部省に これを届けろ。 おぉ…。 51 00:03:49,029 --> 00:03:52,532 そのころには午後の文も届くから それも受け取ってーー➡ 52 00:03:52,532 --> 00:03:55,435 ああ ついでに紙の補充も頼む。 えぇっ…。 53 00:03:55,435 --> 00:03:58,638  招陽宮に戻ったら 文は中身を確認して➡ 54 00:03:58,638 --> 00:04:00,640 緊急性の高い順に並べておけ。 55 00:04:00,640 --> 00:04:03,477 うっ…。 厩を掃除し 水も取り替えること。 56 00:04:03,477 --> 00:04:06,513 ちなみに 馬の水も水甕の水もなくなったら➡ 57 00:04:06,513 --> 00:04:08,682 随時滝から汲んでくるように。 58 00:04:08,682 --> 00:04:10,650 何か質問は? 59 00:04:10,650 --> 00:04:13,653 あの… 僕一人で ですか? 60 00:04:13,653 --> 00:04:16,022 他に誰かいるように見えるか? 61 00:04:16,022 --> 00:04:17,958 っ…。 62 00:04:17,958 --> 00:04:21,361 殿下 雪哉殿はまだ来たばかりですし…。 63 00:04:21,361 --> 00:04:24,131 できぬなら今すぐ ここを去るがいい。 64 00:04:24,131 --> 00:04:27,100 そのほうが互いのためだ。 遠慮はいらん。 65 00:04:27,100 --> 00:04:31,571 遠慮って… もちろん全力は尽くさせて いただきますが。 66 00:04:31,571 --> 00:04:36,109 お前が全力か全力でないか そんなことに 興味はない。 っ…! 67 00:04:36,109 --> 00:04:38,812 要は私の役に立つかどうかだ。 68 00:04:38,812 --> 00:04:40,747 できるのか できないのか? 69 00:04:40,747 --> 00:04:43,650 っ… その答えは➡ 70 00:04:43,650 --> 00:04:47,254 殿下がご自分の目で 確かめられてはいかがですか? 71 00:04:51,491 --> 00:04:53,627 澄尾。 はっ。 72 00:04:53,627 --> 00:04:56,897 若宮の側仕えであることを示す懸帯だ。 73 00:04:56,897 --> 00:05:00,734 これをつければ 朝廷の大抵の場所には出入りできる。 74 00:05:00,734 --> 00:05:03,003 腹が減ったら御厨子所に行くといい。 75 00:05:03,003 --> 00:05:04,971 それとーー。大丈夫です。 ぁ…。 76 00:05:04,971 --> 00:05:09,276 どうぞお二人は お出かけください。 時間がもったいないので。 77 00:05:11,578 --> 00:05:16,049 よかろう。 お前がぼんくらでないことを祈る。 78 00:05:16,049 --> 00:05:18,652 どうぞ行ってらっしゃいませー。 79 00:05:20,353 --> 00:05:23,356 これは本棚 これは図書寮…。 80 00:05:23,356 --> 00:05:27,861 くっそー あいつに ぼんくらって言われると なんか腹立つ…。 81 00:05:31,598 --> 00:05:34,467 いててて! ん…。 82 00:05:34,467 --> 00:05:36,570 汚したくないし…。 83 00:05:41,241 --> 00:05:43,243 羽衣で十分だ。 84 00:05:46,379 --> 00:05:50,016 白。 白 白 白! 85 00:05:50,016 --> 00:05:54,221 ったく どうせなら 白でまとめとけっつうの。 ん? 86 00:05:57,290 --> 00:06:01,628 不用意に羽衣でうろついたり 転身したりしないように! 87 00:06:01,628 --> 00:06:05,332 とはいえ 背に腹はかえられぬ…。 88 00:06:13,206 --> 00:06:15,308 よっ。 とっ。 89 00:06:20,947 --> 00:06:24,551 青。 青 青 青! 90 00:06:27,454 --> 00:06:31,324 おかえりなさいませ。 ご苦労 私への文はどこだ。 91 00:06:31,324 --> 00:06:33,793 まだ取りに行っておりませんが。 92 00:06:33,793 --> 00:06:38,498 まだ? 昼過ぎには取りに行くよう 言ったはずだが。 93 00:06:38,498 --> 00:06:40,700 お言葉ですがーー。 もういい。 94 00:06:40,700 --> 00:06:43,637 澄尾に取りに行かせる。 95 00:06:43,637 --> 00:06:46,506 少しは頭を使え。 96 00:06:46,506 --> 00:06:49,709 自分のやるべき 仕事の順を考えて行動しろ。 97 00:06:49,709 --> 00:06:53,647 殿下! 詩文の先生より課題を預かっております! 98 00:06:53,647 --> 00:06:57,450 ご遊学の遅れを 一日も早く取り戻すようにとのこと。 99 00:06:57,450 --> 00:07:00,220 期限は明日です。 僭越ながら➡ 100 00:07:00,220 --> 00:07:03,957 殿下も早めに取りかかられたほうが よろしいのでは⁉ 101 00:07:03,957 --> 00:07:07,527 ふっ… それは私がやるべきことなのか? 102 00:07:07,527 --> 00:07:09,529 えっ⁉ 103 00:07:12,666 --> 00:07:15,869 あんの野郎おおお!! 104 00:07:15,869 --> 00:07:18,872 こちとら朝から何も食わずに 飛び回ってんだぞ! 105 00:07:25,545 --> 00:07:28,949 子ども その格好で朝廷に入るつもりか⁉ 106 00:07:28,949 --> 00:07:32,252 はい 左様で。 サヨウデ ではない!➡ 107 00:07:32,252 --> 00:07:35,055 きちんと着るべきものを着て 出直してきなさい! 108 00:07:35,055 --> 00:07:38,892 羽衣で朝廷に入ってはいけないという 決まりがあるのですか? 109 00:07:38,892 --> 00:07:42,395 決まりはないが お前のような 礼節をわきまえぬ下男を➡ 110 00:07:42,395 --> 00:07:46,099 通すわけにはいかんのだ。 さ 帰った帰った。 111 00:07:46,099 --> 00:07:49,703 僕 若宮殿下の側仕えなんですがね。 112 00:07:49,703 --> 00:07:51,638 (門番たち)うっ! 113 00:07:51,638 --> 00:07:53,640 これは失礼を! 114 00:07:56,209 --> 00:07:58,812 あー やだやだ…。 115 00:07:58,812 --> 00:08:17,197 ♬~ 116 00:08:17,197 --> 00:08:19,132 大事な書簡か? 117 00:08:19,132 --> 00:08:21,134 う゛! なんっじゃこりゃ! 118 00:08:22,869 --> 00:08:24,904 これ全部 花街から⁉ 119 00:08:24,904 --> 00:08:27,040 はっ…。 120 00:08:27,040 --> 00:08:32,746 (烏の鳴き声) 121 00:08:38,585 --> 00:08:41,488 終わったー! 122 00:08:41,488 --> 00:08:43,790 はぁ…。 123 00:08:43,790 --> 00:08:46,393 必ず若宮にやらせるように! 124 00:09:03,143 --> 00:09:06,012 (門が開く音) お帰りなさいませ。 125 00:09:06,012 --> 00:09:08,081 あれ 澄尾さまは? 126 00:09:08,081 --> 00:09:10,984 着物はどうされたんです? ああ。 127 00:09:17,424 --> 00:09:19,359 仕事はどこまで終わった? 128 00:09:19,359 --> 00:09:21,628 一応 全部終わりましたよ。 129 00:09:21,628 --> 00:09:23,563 …全部? 130 00:09:23,563 --> 00:09:28,268 ただし 課題には手をつけておりません。 何か不都合でも? 131 00:09:30,003 --> 00:09:31,938 それでいい。 132 00:09:31,938 --> 00:09:33,873 <へえ いいんだ…> 133 00:09:33,873 --> 00:09:36,476 (腹が鳴る音) っ! あっ こら…。 134 00:09:40,580 --> 00:09:42,582 ん? 135 00:09:44,250 --> 00:09:46,186 んわっ。 136 00:09:46,186 --> 00:09:48,888 金柑だ。 少しは足しになるだろう。 137 00:09:55,495 --> 00:09:58,465 一つでは足りないか? 遠慮は無用だぞ。 138 00:09:58,465 --> 00:10:01,801 あ… い いえ ありがとうございます。 139 00:10:01,801 --> 00:10:03,736 そうか。 140 00:10:03,736 --> 00:10:06,239 今日はもういい ご苦労だった。 141 00:10:08,241 --> 00:10:10,243 おやすみなさいませ。 142 00:10:16,816 --> 00:10:19,752 甘ずっぱ! 143 00:10:19,752 --> 00:10:22,021 にが…。 144 00:10:22,021 --> 00:10:33,066 ♬~ 145 00:10:33,066 --> 00:10:35,735 (喜栄)はっははははは…。 146 00:10:35,735 --> 00:10:38,538 そうか 雪哉も苦労しているなあ。 147 00:10:38,538 --> 00:10:40,473 笑い事じゃないですよ! 148 00:10:40,473 --> 00:10:44,177 毎日筋肉痛だし 汗なんて雑巾で絞れるくらい…。 149 00:10:44,177 --> 00:10:46,112 鬼ですよ鬼! 150 00:10:46,112 --> 00:10:50,984 しかし 半月もった側仕えは 今までいないはずだぞ。 記録更新だな。 151 00:10:50,984 --> 00:10:53,019 語るに落ちましたね。 152 00:10:53,019 --> 00:10:55,655 やっぱり 最初から知っていたんだ 喜栄さま。 153 00:10:55,655 --> 00:10:58,658 あはははっ いや すまんすまん。 154 00:11:00,793 --> 00:11:04,264 ところで 殿下のことなのだが。 ん? 155 00:11:04,264 --> 00:11:06,799 まだ桜花宮に お見えにならないのだ。 156 00:11:06,799 --> 00:11:09,702 耳に入るのは花街通いの噂ばかり…。 157 00:11:09,702 --> 00:11:11,738 あ~。 何か聞いてないか? 158 00:11:11,738 --> 00:11:16,042 何でもいい その… 女人の好みとか。 159 00:11:16,042 --> 00:11:18,912 あの人の生態は謎だらけですよ。 160 00:11:18,912 --> 00:11:22,282 ふらっと出たと思えば 三日も戻ってこなかったり。 161 00:11:22,282 --> 00:11:25,618 あ… 金柑が好きみたいですよ。 162 00:11:25,618 --> 00:11:31,457 ん… やはり我々とは違うのかなあ “真の金烏”ともなると…。 163 00:11:31,457 --> 00:11:34,627 真の…? ああ 話していなかったか。 164 00:11:34,627 --> 00:11:37,597 実は若宮殿下は ただの金烏ではない。 165 00:11:37,597 --> 00:11:42,335 金烏の中の金烏 “真の金烏”と言われているのだ。 166 00:11:42,335 --> 00:11:45,171 金烏という呼び名には二種類あってな。 167 00:11:45,171 --> 00:11:48,641 一つは 単に統治者の役目を意味する金烏。 168 00:11:48,641 --> 00:11:55,181 そしてもう一つは 宗家の祖である金の烏 および その再来を意味する金烏。 169 00:11:55,181 --> 00:11:59,185 この後者のほうを 我々は “真の金烏”と呼んでいるのだ。 170 00:11:59,185 --> 00:12:03,590 つまり同じ金烏でも 本物と偽物があるってことですか? 171 00:12:03,590 --> 00:12:07,226 不謹慎だが 有体に言えばそういうことだ。 172 00:12:07,226 --> 00:12:10,697 今の金烏陛下は我々と同じ八咫烏だ。 173 00:12:10,697 --> 00:12:13,199 名君と言われた先代もしかり。 174 00:12:13,199 --> 00:12:17,136 しかし 真の金烏は 我々と見かけこそ変わらないが➡ 175 00:12:17,136 --> 00:12:20,673 その実 全く違う生き物なのだと言う。 176 00:12:20,673 --> 00:12:25,411 ある文献によれば 真の金烏は暗闇を暴く力を持ち➡ 177 00:12:25,411 --> 00:12:28,114 いかなる夜にも転身を可能にする。 178 00:12:28,114 --> 00:12:31,584 その姿は大きく美しく 慈愛に満ち➡ 179 00:12:31,584 --> 00:12:35,588 八咫烏を統べる全ての条件を備えて 生まれてくる。 180 00:12:35,588 --> 00:12:37,824 誰か見た人いるんですか? 181 00:12:37,824 --> 00:12:42,295 あ… なにせ数十年に一度のことだし…。 182 00:12:42,295 --> 00:12:45,198 そもそも宗家には長男がいますよね。 183 00:12:45,198 --> 00:12:48,167 確か明鏡院ーー。 長束さまだ。 184 00:12:48,167 --> 00:12:51,638 本来は あの方が皇太子になるはずだったのだ。 185 00:12:51,638 --> 00:12:55,408 しかし若宮が生まれ 真の金烏と認められると➡ 186 00:12:55,408 --> 00:12:57,744 長束さまの立場は一変した。 187 00:12:57,744 --> 00:13:02,582 それでも聡明な長束さまを惜しんだ宮烏が ひそかに「長束派」を形成。 188 00:13:02,582 --> 00:13:05,985 その存在は種火のように 燻り続けてきたのだが➡ 189 00:13:05,985 --> 00:13:10,823 ここへきて若宮の悪評にあおられる形で 一気に再燃し始めたのだ。 190 00:13:10,823 --> 00:13:12,825 お 茶柱! 191 00:13:12,825 --> 00:13:15,495 …話 聞いてたか。 192 00:13:15,495 --> 00:13:18,798 要するに貴族の権力闘争ってやつでしょ。 193 00:13:18,798 --> 00:13:21,701 真の金烏だの誰が聡明だの➡ 194 00:13:21,701 --> 00:13:25,038 そんなの建て前っつーか こじつけっつーか。 195 00:13:25,038 --> 00:13:28,708 でも ま それ以前の話だと思いますねえ。 196 00:13:28,708 --> 00:13:32,578 だって若宮殿下は どう見ても僕らと同じ➡ 197 00:13:32,578 --> 00:13:35,081 ただの我儘な八咫烏ですよ。 198 00:13:35,081 --> 00:13:37,150 しっ 声が大きい。 199 00:13:37,150 --> 00:13:42,288 長束さまの母上である皇后が 何か企んでいるという噂があるのだ。 200 00:13:42,288 --> 00:13:45,825 真の金烏の世は荒れるという 言い伝えもある。 201 00:13:45,825 --> 00:13:48,628 何も起きなければいいのだが…。 202 00:13:51,497 --> 00:13:54,801 なかなか しぶとい小僧ですな。 203 00:13:54,801 --> 00:13:57,704 長束さまの見込んだだけのことはある。 204 00:13:57,704 --> 00:14:00,006 どう使うおつもりで? 205 00:14:03,543 --> 00:14:07,080 (大紫の御前) 遊学から戻らねばよかったものを…。➡ 206 00:14:07,080 --> 00:14:09,582 松韻 分かっておるな。 207 00:14:09,582 --> 00:14:12,485 はい 御前会議の準備を。 208 00:14:17,957 --> 00:14:21,761 昨日の雨で菖蒲がますます 美しくなったようだ。 209 00:14:21,761 --> 00:14:24,664 見事ですわ。 まるで一枚の絵のよう。 210 00:14:24,664 --> 00:14:31,003 本当に… でも もうひと月たったなんて あまりに あっという間で…。 211 00:14:31,003 --> 00:14:33,573 そういえば 浜木綿さまは。 212 00:14:33,573 --> 00:14:37,877 (藤波)頭痛がするとの知らせがあった。 どうせ二日酔いであろう。 213 00:14:37,877 --> 00:14:40,613 あの方は放っておけばよいのですわ。 214 00:14:40,613 --> 00:14:44,817 残念なのは若宮さまです。 今日もお誘いしましたのに…。 215 00:14:44,817 --> 00:14:48,755 あの 真赭の薄さまは若宮さまと…? 216 00:14:48,755 --> 00:14:50,757 いとこですの。 217 00:14:50,757 --> 00:14:55,561 少しだけど 西家の屋敷に 身を寄せられていたこともありますのよ。 218 00:14:55,561 --> 00:15:00,233 あのころから若宮さまは とても優雅で お優しくて…。 219 00:15:00,233 --> 00:15:04,137 だ そうですよ 殿下。 うん 聞こえている。 220 00:15:04,137 --> 00:15:09,575 とても優雅で お優しくって すごい人気なんですねえ! なのに! 221 00:15:09,575 --> 00:15:13,346 なんで我々は こんなとこで コソコソ覗き見なんてしてるんです⁉ 222 00:15:13,346 --> 00:15:15,281 声が大きいぞ 雪哉。 223 00:15:15,281 --> 00:15:18,885 あー かゆいかゆい! やぶ蚊が黒い羽衣にたかって…。 224 00:15:18,885 --> 00:15:21,687 よく平気ですね? 私は金烏だから。 225 00:15:21,687 --> 00:15:24,590 とか言って しっかり刺されてませんか? 226 00:15:24,590 --> 00:15:28,461 桜花宮に 私を狙う刺客が潜んでるようなのだ。 227 00:15:28,461 --> 00:15:31,364 登殿の始まる直前に警告文が届いて。 228 00:15:31,364 --> 00:15:33,332 誰からです? さあ? 229 00:15:33,332 --> 00:15:36,903 さあ? だが あながち悪戯とも思えない。 230 00:15:36,903 --> 00:15:39,806 それに私は后を選ばねばならぬだろう。 231 00:15:39,806 --> 00:15:42,074 だから桜花宮の覗き見を? 232 00:15:42,074 --> 00:15:47,046 ああ 本性は油断してる時にこそ 現れるものだ。 233 00:15:47,046 --> 00:15:49,882 左から東家 西家 北家の姫だ。 234 00:15:49,882 --> 00:15:51,884 昔から四家の気質として➡ 235 00:15:51,884 --> 00:15:54,987 東家は腹黒 西家はお調子者➡ 236 00:15:54,987 --> 00:15:57,290 北家は石頭と言われているが➡ 237 00:15:57,290 --> 00:15:59,358 なかなか的を射ているようだ。 238 00:15:59,358 --> 00:16:01,828 僕には全然分かりませんけど。 239 00:16:01,828 --> 00:16:04,564 南家がいないが まあいい。 240 00:16:04,564 --> 00:16:07,767 着物の下に 羽衣をまとっている女たちが見えるか? 241 00:16:07,767 --> 00:16:09,702 ああ はい。 242 00:16:09,702 --> 00:16:12,371 あれは桜花宮を守る女武者集団だ。 243 00:16:12,371 --> 00:16:16,242 腕の立つ者は 馬の首をも 一刀両断すると言われている。 244 00:16:16,242 --> 00:16:18,211 その名もーー。 (枝が折れる音)あ…。 245 00:16:18,211 --> 00:16:21,147 誰ぞいるのか⁉ 殿下 逃げましょう。 246 00:16:21,147 --> 00:16:23,983 もう遅い 藤宮連が動きだした。 247 00:16:23,983 --> 00:16:26,085 ふじみやれん? 許せ。 248 00:16:27,787 --> 00:16:29,789 っ…。 249 00:16:34,360 --> 00:16:37,697 <今分かりました! 殿下 僕は最初から➡ 250 00:16:37,697 --> 00:16:40,600 こういう時のための 身代わりだったのですね!!> 251 00:16:40,600 --> 00:16:42,668 (女たちの悲鳴) 必ず捕らえろ! 252 00:16:42,668 --> 00:16:45,271 (滝本)姫君は奥へ! (藤波)皆の者 落ち着かれよ! 253 00:16:50,176 --> 00:16:53,713 姫さま こちらへ! (鳴き声) 254 00:16:53,713 --> 00:16:56,115 姫さま! 255 00:16:56,115 --> 00:16:58,117 (鳴き声) 256 00:17:01,320 --> 00:17:03,990 <ぐっ ぐるじい… いぎが…!> 257 00:17:03,990 --> 00:17:06,058 そのくらいにしておやりよ。 258 00:17:06,058 --> 00:17:08,561 っ! 浜木綿殿。 259 00:17:08,561 --> 00:17:11,864 何の騒ぎかと来てみりゃ まだ小烏じゃないか。 260 00:17:11,864 --> 00:17:13,799 小烏とはいえ侵入者です。 261 00:17:13,799 --> 00:17:16,435 けど そのまんまじゃ死んじまうぞ。 262 00:17:16,435 --> 00:17:19,171 后選びにミソをつけたくないだろう。 263 00:17:19,171 --> 00:17:21,274 …離せ。 264 00:17:23,876 --> 00:17:25,811 ぁ…! 265 00:17:25,811 --> 00:17:28,681 あぁ 死ぬかと思った… ん? (足音) 266 00:17:28,681 --> 00:17:30,917 うっ! 恥知らずが! 267 00:17:30,917 --> 00:17:33,786 高貴な方々の前で 転身のさまを見せるとは! 268 00:17:33,786 --> 00:17:36,289 も… 申し訳ありません。 269 00:17:36,289 --> 00:17:39,191 お前は誰だ! どこから来た! 申せ! 270 00:17:39,191 --> 00:17:41,260 やめて…。 271 00:17:41,260 --> 00:17:45,398 もうやめて… 暴力は もう…。 272 00:17:45,398 --> 00:17:47,466 姫さま! 273 00:17:47,466 --> 00:17:52,238 動揺したのね。 今日のことは わたくしもさすがに…。 274 00:17:52,238 --> 00:17:55,107 やれやれ お上品なこって。 275 00:17:55,107 --> 00:17:58,711 あなたのような野蛮人に 言われたくありませんわ。 276 00:17:58,711 --> 00:18:01,213 アタシは あせびのことを言ったんだ。 277 00:18:01,213 --> 00:18:03,149 何でも自分に持ってくな。 278 00:18:03,149 --> 00:18:06,719 何ですって…! 何さまのつもりですの? 279 00:18:06,719 --> 00:18:09,355 そうやって いつも涼しい顔して。➡ 280 00:18:09,355 --> 00:18:13,893 若宮さまを待ちわびる わたくしたちの 姿を眺めるのは面白くて? 281 00:18:13,893 --> 00:18:15,828 は? 何言ってんだ。 282 00:18:15,828 --> 00:18:18,230 迷惑だと言っているのです。 283 00:18:18,230 --> 00:18:23,069 桜花宮は 后にふさわしい女性となるべく 切磋琢磨する場所。 284 00:18:23,069 --> 00:18:26,872 あなたのような志の低い者が 来る所ではありませんわ! 285 00:18:26,872 --> 00:18:29,075 二人とも そこまでだ! 286 00:18:36,549 --> 00:18:38,951 お兄さまがおいでになれば…。 287 00:18:42,922 --> 00:18:44,857 ⚟滝本さま あれを! 288 00:18:44,857 --> 00:18:48,194 (羽音) 289 00:18:48,194 --> 00:18:50,596 あの懸帯は…! 290 00:18:55,001 --> 00:18:57,236 今日は災難だったな。 291 00:18:57,236 --> 00:19:01,173 万が一の時には 俺が駆けつける手はずになっていたんだ。 292 00:19:01,173 --> 00:19:03,609 殿下のことは勘弁してやってくれ。 293 00:19:03,609 --> 00:19:05,544 かわいそうですね。 294 00:19:05,544 --> 00:19:08,080 ん? お姫さまたちですよ。 295 00:19:08,080 --> 00:19:13,552 あんな狭い世界で 殿下だけを待ちわびて… 何だか…。 296 00:19:13,552 --> 00:19:18,391 殿下が桜花宮に行かないのは 単に危険だからじゃない。 297 00:19:18,391 --> 00:19:21,961 姫たちを無用な争いに 巻き込まないようにしているんだ。 298 00:19:21,961 --> 00:19:26,265 無用な争い? そういう所なんだ 桜花宮は。 299 00:19:32,238 --> 00:19:34,173 (うこぎ)姫さま。➡ 300 00:19:34,173 --> 00:19:36,642 藤波さまのお使いの方が。➡ 301 00:19:36,642 --> 00:19:39,045 お通ししてよろしいでしょうか。 302 00:19:42,448 --> 00:19:45,151 藤波さまより お慰めのお品です。 303 00:19:48,587 --> 00:19:50,956 …冷たい。 304 00:19:50,956 --> 00:19:54,694 召し上がる前に 目を冷やされるといいですよ。 305 00:19:54,694 --> 00:19:57,163 私も時々やるんです。 306 00:19:57,163 --> 00:19:59,131 顔のむくみには てきめんです。 307 00:19:59,131 --> 00:20:01,233 果物も ちょうど温んで。 308 00:20:04,570 --> 00:20:06,505 うこぎさまに聞きました。 309 00:20:06,505 --> 00:20:10,376 あせびさまは転身をご覧になるのが 初めてだったのですね。 310 00:20:10,376 --> 00:20:13,145 ええ…。 驚かれたでしょう。 311 00:20:13,145 --> 00:20:16,716 一生のほとんどを人の形で過ごされる 貴族の方には➡ 312 00:20:16,716 --> 00:20:19,618 目にする機会などないでしょうから。 313 00:20:19,618 --> 00:20:23,322 私… 少し混乱してるみたい。 314 00:20:23,322 --> 00:20:27,193 鳥の形をした八咫烏を “馬”と呼ぶことがあるわよね? 315 00:20:27,193 --> 00:20:30,930 ええ あれも私たちと同じ八咫烏ですよ。 316 00:20:30,930 --> 00:20:37,136 ただ違うのは 馬は 好きな時に人の形に 戻れるわけではない ということです。 317 00:20:37,136 --> 00:20:39,438 …そうなの? 318 00:20:39,438 --> 00:20:43,709 あせびさまは 足に紐を結んでいる馬を 見たことがありますか? 319 00:20:43,709 --> 00:20:48,447 確か… 登殿の時に乗った飛車が そうだったわ。 320 00:20:48,447 --> 00:20:53,152 豪華な紐が幾重にも結ばれて とても美しかった。 321 00:20:53,152 --> 00:20:57,957 そうですね… でもその紐は装飾のためではありません。 322 00:20:57,957 --> 00:21:00,693 労働契約のしるしなんです。 323 00:21:00,693 --> 00:21:05,397 現在 馬として働いている者は 貧しさや さまざまな事情から➡ 324 00:21:05,397 --> 00:21:09,101 人の形で生きることが できなくなった者たちなんです。 325 00:21:09,101 --> 00:21:14,006 契約の期間 雇い主は 彼らの三本目の足を縛ります。 326 00:21:14,006 --> 00:21:18,777 特殊な縛り方で 馬が自分では 外せないようになっているんです。 327 00:21:18,777 --> 00:21:20,813 足を… なぜ? 328 00:21:20,813 --> 00:21:24,183 転身の力は三本目の足にあります。 329 00:21:24,183 --> 00:21:26,485 その足の自由を奪ってしまえば➡ 330 00:21:26,485 --> 00:21:29,822 人に戻ることは できないんです。そんな…。 331 00:21:29,822 --> 00:21:35,961 荷車を引いたり 畑を耕したり 馬の仕事は力仕事ばかり…。 332 00:21:35,961 --> 00:21:41,634 いつしか“馬”は そんな者たちを蔑む言葉 として使われるようになりました。 333 00:21:41,634 --> 00:21:45,404 恥ずかしい… 何も知らなくて。 334 00:21:45,404 --> 00:21:48,641 なぜ うこぎは 教えてくれなかったのかしら…。 335 00:21:48,641 --> 00:21:53,078 私には うこぎさまのお気持ちが 分かる気がします。 336 00:21:53,078 --> 00:21:55,748 お優しいあせびさまには美しいことしか➡ 337 00:21:55,748 --> 00:21:59,051 お伝えしたくなかったのでしょう。 ぁ…。 338 00:21:59,051 --> 00:22:03,789 私も子どもの頃は よく転身しました。 だから嬉しかったのです。 339 00:22:03,789 --> 00:22:08,027 あせびさまが あの少年をかばってくださって。 340 00:22:08,027 --> 00:22:11,363 あなたは 藤波さまの…。 341 00:22:11,363 --> 00:22:13,299 早桃と申します。 342 00:22:13,299 --> 00:22:18,037 っ… 早桃 よかったらまた遊びに来てくれる? 343 00:22:18,037 --> 00:22:21,440 ぁ… はい 喜んで! 344 00:22:23,475 --> 00:22:25,778 ただいま帰りました…。 345 00:22:25,778 --> 00:22:27,713 うわっ⁉ な 何を…。 346 00:22:27,713 --> 00:22:30,616 私の不在を狙い 御前会議が開かれた。 347 00:22:30,616 --> 00:22:32,585 ごぜんかいぎ? 348 00:22:32,585 --> 00:22:37,156 皇太子の座から私を引きずり下ろしたい 勢力の仕業だ。っ! 349 00:22:37,156 --> 00:22:40,059 今すぐ紫宸殿へ行く。 350 00:22:40,059 --> 00:22:54,106 ♬~ 351 00:22:54,106 --> 00:22:56,308 (鈴の音) 352 00:23:00,045 --> 00:23:14,226 ♬~ 353 00:23:14,226 --> 00:23:18,697 ♬「それは うたかたと」 354 00:23:18,697 --> 00:23:23,235 ♬「告げる風は ただ哀しく」 355 00:23:23,235 --> 00:23:27,239 ♬「心 決めた日に」 356 00:23:27,239 --> 00:23:31,977 ♬「にじむ景色を 駆けぬけた」 357 00:23:31,977 --> 00:23:36,415 ♬「咲く花の影に」 358 00:23:36,415 --> 00:23:40,386 ♬「まなざしは 何を問う」 359 00:23:40,386 --> 00:23:49,395 ♬「語らずの 真実 背負う 烏」 360 00:23:49,395 --> 00:23:54,099 ♬「舞い上がれ 舞い躍れ」 361 00:23:54,099 --> 00:23:58,404 ♬「名もなき 一途な信念(ねがい)よ」 362 00:23:58,404 --> 00:24:02,741 ♬「迫りくる 奈落さえ」 363 00:24:02,741 --> 00:24:07,146 ♬「越えて行ける 強さ 信じ 羽ばたけ」 364 00:24:07,146 --> 00:24:11,350 ♬「行きては帰らぬ」 365 00:24:11,350 --> 00:24:15,854 ♬「運命(さだめ)を 選びゆくのなら」 366 00:24:15,854 --> 00:24:20,259 ♬「まほろばよ とこしえに」 367 00:24:20,259 --> 00:24:28,167 ♬「薄明の空に 誓う」 368 00:24:31,236 --> 00:24:35,140 <優秀な兄と うつけの弟。➡ 369 00:24:35,140 --> 00:24:38,477 金烏の座をめぐる兄弟の確執が➡ 370 00:24:38,477 --> 00:24:42,147 宮中を大きく軋ませる。➡ 371 00:24:42,147 --> 00:24:46,151 いまだ姫君に会おうとしない若宮。➡ 372 00:24:46,151 --> 00:24:48,754 その真意とは…> 373 00:24:50,522 --> 00:24:52,524 <次回…>