1 00:00:12,345 --> 00:00:15,890 (ナレーション) 虚刀流(きょとうりゅう)七代目当主 鑢七花(やすりしちか) 2 00:00:16,725 --> 00:00:24,107 尾張(おわり)幕府 家鳴(やなり)将軍直轄 預奉所(あずかりたてまつるところ) 軍所(いくさどころ)総監督 奇策士(きさくし)とがめ 3 00:00:24,774 --> 00:00:30,655 四季崎(しきざき)記紀(きき)の完成形変体刀を追う 2人の旅が始まりました 4 00:00:33,575 --> 00:00:38,747 天下を統(す)べるほどの力を 持つと言われる その十二本の刀 5 00:00:39,414 --> 00:00:43,793 真庭(まにわ)蝙蝠(こうもり)が所持していた 絶刀・鉋(かんな)を手に入れた2人は― 6 00:00:44,335 --> 00:00:49,758 旅支度のために まず 京の町を訪れたのでございます 7 00:00:49,883 --> 00:00:51,342 (鐘の音) (七花)はあ… 8 00:00:51,426 --> 00:00:53,845 見慣れない光景に驚いたか? 9 00:00:53,928 --> 00:00:58,933 ああ 人間だらけだな こんなに多いと区別できない 10 00:00:59,059 --> 00:01:01,644 (とがめ)区別などせんでもよい (七花)そうなのか? 11 00:01:01,895 --> 00:01:02,854 そうだ 12 00:01:02,937 --> 00:01:05,815 いちいち目につく人間を すべて気にしていたら― 13 00:01:05,940 --> 00:01:07,484 頭が変になるぞ 14 00:01:07,776 --> 00:01:10,487 俺は すでにおかしくなりそうだよ とがめ 15 00:01:10,612 --> 00:01:12,947 (娘)ふーん? (とがめ)こら 私はこっちだ 16 00:01:13,073 --> 00:01:16,242 おお 同じような背丈だと いよいよ分からん 17 00:01:16,367 --> 00:01:18,244 ひどいにも ほどがあるなあ 18 00:01:18,328 --> 00:01:19,329 (娘)あのー (七花)何? 19 00:01:19,454 --> 00:01:20,955 あなた 寒くないんですか? 20 00:01:21,081 --> 00:01:23,917 (風の音) (男のくしゃみ) 21 00:01:24,918 --> 00:01:25,460 いや 22 00:01:25,543 --> 00:01:28,254 ああ こいつのことは 気にするな 23 00:01:28,338 --> 00:01:30,757 熊か何かの仲間だと思ってくれ 24 00:01:30,840 --> 00:01:32,300 (娘)はぁ はあ… 25 00:01:33,968 --> 00:01:35,178 なんか変なのか? 26 00:01:35,678 --> 00:01:37,305 何が変といえば― 27 00:01:37,430 --> 00:01:40,391 そなたの何もかもがと 言わなければならないが 28 00:01:40,642 --> 00:01:41,434 うん? 29 00:01:41,851 --> 00:01:43,978 確かに そんな格好ではなあ 30 00:01:45,438 --> 00:01:46,773 (七花)どれもイヤだ 31 00:01:46,898 --> 00:01:49,192 (とがめ)人の好意を 無にするやつだなあ 32 00:01:49,317 --> 00:01:53,363 そもそも こんな物は俺に必要ない 動きにくくなる 33 00:01:53,488 --> 00:01:57,492 それ以前に裸だと さっきのような 奇異な目で見られるのだ 34 00:01:57,617 --> 00:01:58,993 俺は別に構わん 35 00:01:59,119 --> 00:02:00,495 私が困る 36 00:02:00,662 --> 00:02:04,624 冬の寒空のもとに 裸の若い男を連れ歩く 37 00:02:04,707 --> 00:02:07,210 そんな女を 人は どう思うだろうか 38 00:02:07,335 --> 00:02:08,461 (七花)どう思うんだ? 39 00:02:08,544 --> 00:02:10,672 (とがめ)異常な 性癖の持ち主として― 40 00:02:10,797 --> 00:02:15,385 私は行く先々で迫害を受け 石つぶてをぶつけられるだろうな 41 00:02:15,510 --> 00:02:16,970 (七花)それは困るな 42 00:02:17,470 --> 00:02:19,681 そう思うなら着物を着ろ 43 00:02:19,764 --> 00:02:22,308 本土ってのは いろいろ 面倒なんだな 44 00:02:22,392 --> 00:02:25,061 そういう しがらみの中で みんな生きておる 45 00:02:25,228 --> 00:02:27,063 (店主)お決まりに なられましたか? 46 00:02:27,188 --> 00:02:30,108 うむ これとこれと それと あれとあれをくれ 47 00:02:30,191 --> 00:02:31,651 うわー そんなに! 48 00:02:31,734 --> 00:02:33,194 俺はそんなにいらないぞ 49 00:02:34,070 --> 00:02:35,196 私のだ 50 00:02:36,156 --> 00:02:38,658 (七花)あんた服だったら もう たくさん着ているだろう 51 00:02:38,867 --> 00:02:41,119 (とがめ) 女子のおしゃれ心を分かれ 52 00:02:41,202 --> 00:02:42,370 (七花)分かんねーなー 53 00:02:42,495 --> 00:02:46,374 分からんのは そなただ 何だ その着こなしは? 54 00:02:46,499 --> 00:02:48,126 裸じゃないからいいだろう? 55 00:02:48,209 --> 00:02:50,211 斬新といえば斬新で― 56 00:02:50,336 --> 00:02:54,007 この冬一番の挑戦的なおしゃれと 言えるかもしれんが― 57 00:02:54,215 --> 00:02:56,217 私は好きではないなあ 58 00:02:56,551 --> 00:02:59,721 好きとか嫌いとか それこそよく分からねえ 59 00:03:00,096 --> 00:03:00,638 (2人)おっ… 60 00:03:02,557 --> 00:03:03,892 フッ フッフ 61 00:03:04,183 --> 00:03:04,767 何? 62 00:03:04,893 --> 00:03:08,104 ああ こういう輩(やから)がたまにいるのだ 63 00:03:08,438 --> 00:03:09,439 どうすればいい? 64 00:03:09,731 --> 00:03:11,065 私を守れ 65 00:03:11,482 --> 00:03:13,902 了解 俺はあんたを守ろう 66 00:03:14,360 --> 00:03:17,238 きれいなおべべを 着ちゃってまあ 67 00:03:17,405 --> 00:03:20,909 死にたくなければ どうすればいいか分かるよな 68 00:03:21,117 --> 00:03:23,202 私は何も渡す気はないぞ 69 00:03:24,203 --> 00:03:24,787 はあ? 70 00:03:25,204 --> 00:03:29,125 それに お前たち 死にたくなかったら刀は抜くな 71 00:03:29,250 --> 00:03:31,544 はあ? 何 言ってや… 72 00:03:34,005 --> 00:03:36,007 だから 刀を抜くなと 73 00:03:36,090 --> 00:03:37,050 (浪人)いやー (浪人)野郎! 74 00:03:40,929 --> 00:03:42,430 うっ あ? 75 00:03:42,680 --> 00:03:46,517 剣筋がもう少しマシだったら お前たち 死んでいたぞ 76 00:03:46,601 --> 00:03:47,143 ええ! 77 00:03:49,062 --> 00:03:50,146 虚刀流 奥義! 78 00:03:50,271 --> 00:03:51,105 ひええええ 79 00:03:51,439 --> 00:03:54,609 待て待て 何 トドメを 刺そうとしておるのだ 80 00:03:54,734 --> 00:03:55,610 してはダメなのか? 81 00:03:55,735 --> 00:03:56,694 してはダメだ 82 00:03:58,613 --> 00:04:03,201 よかったな 私が止めなければ 本当に殺されていたぞ 83 00:04:03,785 --> 00:04:04,994 面倒だ 84 00:04:05,578 --> 00:04:09,290 (ナレーション) 人を知らぬ男と 心をなくした女 85 00:04:09,749 --> 00:04:12,794 前途多難な旅の幕開けでした 86 00:04:13,920 --> 00:04:19,926 ♪~ 87 00:05:36,961 --> 00:05:42,967 ~♪ 88 00:05:54,729 --> 00:05:59,734 (ナレーション)四季崎記紀の 変体刀を求める旅もあれから1か月 89 00:06:00,026 --> 00:06:05,406 二本目の刀を求め とがめと 七花は因幡(いなば)を目指しておりました 90 00:06:07,075 --> 00:06:09,035 (とがめ)あまり強くするな 91 00:06:09,911 --> 00:06:11,412 (七花)加減が分からん 92 00:06:17,752 --> 00:06:20,922 なあ これ まだ続けなきゃ ならないのか? 93 00:06:21,047 --> 00:06:24,425 そなたが私をしっかと 認識できるようになるまでだ 94 00:06:24,550 --> 00:06:25,093 (七花)うーん 95 00:06:25,551 --> 00:06:27,595 いつまでも 他人の判別がつかない― 96 00:06:27,720 --> 00:06:29,764 びっくり人間のままでは困る 97 00:06:30,014 --> 00:06:31,057 確かに 98 00:06:31,474 --> 00:06:33,643 うっ ちゃめっ気で 声をかけた際に― 99 00:06:33,768 --> 00:06:36,771 刺客と間違われて 殺されては かなわんからな 100 00:06:37,146 --> 00:06:38,523 (七花)それはそうだ 101 00:06:38,606 --> 00:06:39,774 だから こうして俺は― 102 00:06:39,941 --> 00:06:43,069 しっかとお前の色や においを 覚えようとしている 103 00:06:43,236 --> 00:06:45,446 (とがめ) バカ かむのは なしだぞ 104 00:06:45,571 --> 00:06:47,073 かんだら痛むからな 105 00:06:47,156 --> 00:06:49,283 (七花)なめるのは? (とがめ)なめるのはいい 106 00:06:49,534 --> 00:06:51,661 むしろなめて 味も覚えておけ 107 00:06:51,786 --> 00:06:55,998 けれど あんまり身をよじるな 頭皮が引っ張られるのは痛い 108 00:06:56,124 --> 00:06:57,208 (七花)そりゃあそうだ 109 00:06:59,127 --> 00:07:01,462 (とがめ)教育とは滑稽なものだ 110 00:07:02,088 --> 00:07:04,924 それはともかく 明日は因幡だ 111 00:07:05,091 --> 00:07:09,428 (七花)おう 因幡の えっと 何だっけ? 112 00:07:10,054 --> 00:07:11,514 (とがめ)下酷(げこく)城 113 00:07:11,681 --> 00:07:14,392 収集対象は斬刀・鈍(ざんとうなまくら)だ 114 00:07:14,475 --> 00:07:16,269 (七花)弱そうな名前だなあ 115 00:07:16,352 --> 00:07:18,563 (とがめ)それは 四季崎なりの皮肉だ 116 00:07:18,646 --> 00:07:22,066 この斬刀は 比類なき切れ味が特性だ 117 00:07:22,275 --> 00:07:25,862 どんなものでも抵抗なく 一刀両断してしまう― 118 00:07:25,987 --> 00:07:26,863 らしいぞ 119 00:07:26,988 --> 00:07:31,033 ふーん ん? そうすると その斬刀で― 120 00:07:31,242 --> 00:07:34,620 頑丈な絶刀を斬ろうとした場合 どうなるんだ? 121 00:07:34,704 --> 00:07:36,664 (とがめ) 試してみんと分からんが― 122 00:07:36,831 --> 00:07:41,627 恐らくは完成度の低いほうが 矛盾なく負けることになるのだろう 123 00:07:41,878 --> 00:07:44,964 作られたのは斬刀のほうが あとになるはずだから― 124 00:07:45,089 --> 00:07:47,383 絶刀が斬られるのかもしれん 125 00:07:48,551 --> 00:07:51,429 二本目に鈍を選んだのには 理由がある 126 00:07:51,512 --> 00:07:52,054 (七花)ん? 127 00:07:52,305 --> 00:07:54,265 今回の相手は剣士だ 128 00:07:54,474 --> 00:07:56,642 剣士ならば 忍者よりもやりやすい 129 00:07:57,143 --> 00:08:00,688 (とがめ)宇練(うねり)銀閣(ぎんかく)という 浪人ということになるのかなあ 130 00:08:00,855 --> 00:08:03,107 それとも あるいは城主なのか 131 00:08:03,357 --> 00:08:04,233 (七花)はあ? 132 00:08:04,358 --> 00:08:05,276 (とがめ)かつて― 133 00:08:05,359 --> 00:08:09,238 旧将軍が刀狩令(かたながりれい)を出した 段階での所有者は― 134 00:08:09,363 --> 00:08:13,075 鳥取藩主に仕えた武士 宇練金閣(きんかく) 135 00:08:13,201 --> 00:08:17,914 武士として あるまじきことだが 金閣は斬刀の提出を拒んだ 136 00:08:18,080 --> 00:08:20,708 あくまでも我の物なりと 137 00:08:20,958 --> 00:08:22,502 (七花)はあーん 138 00:08:22,710 --> 00:08:26,506 (とどめ)その際 斬刀で撃退した 旧将軍の兵団は― 139 00:08:26,589 --> 00:08:28,716 合わせて1万を超えたという 140 00:08:28,841 --> 00:08:29,884 (七花)1万! 141 00:08:29,967 --> 00:08:35,264 (とがめ)現所有者 宇練銀閣は 十代目の子孫に当たると聞いている 142 00:08:35,389 --> 00:08:36,724 (真庭白鷺(しらさぎ))フッ フッ フッ フ 143 00:08:36,933 --> 00:08:38,643 よどけだしなはいしかずは 144 00:08:38,768 --> 00:08:41,895 ものてっるいはらかますふと うどうどがやじんに 145 00:08:42,230 --> 00:08:44,649 かえねたかしはいあばのこ あま 146 00:08:44,982 --> 00:08:48,402 ぜうらもてせらのな だぎさらしわにま 147 00:08:48,653 --> 00:08:52,198 りとひがうょりうと にうゅじんぐんにわにまはれお 148 00:08:52,281 --> 00:08:56,661 などけだんーつっぎさらしの りべゃしさかさうょしうつ 149 00:08:58,037 --> 00:08:59,580 フッ フッ フッ フ 150 00:08:59,747 --> 00:09:02,667 らくまなうとんざ なたかいしろそおのみこれふ 151 00:09:02,750 --> 00:09:05,795 ういといなはのもいなきで んだうよりうとっい 152 00:09:05,962 --> 00:09:09,757 よれくれそ かえねやじうまちっなくしびさ 153 00:09:09,924 --> 00:09:12,176 よえねやじんすとかしいよいよ 154 00:09:12,426 --> 00:09:15,721 かのいたみをうぽんにのれおに なんそたんあもとれそ 155 00:09:15,805 --> 00:09:17,682 ぜだんえねやじんもるれみになんそ 156 00:09:17,807 --> 00:09:21,561 はしがさんりきげうぽんに ぎさらしわにま 157 00:09:21,644 --> 00:09:23,938 えねたっいま 158 00:09:24,021 --> 00:09:24,730 ん? 159 00:09:25,106 --> 00:09:26,440 (男)ひょっとして… 160 00:09:27,024 --> 00:09:29,527 あんたの忍法逆鱗(げきりん)探しとは― 161 00:09:30,027 --> 00:09:31,988 一刀両断されてもなお― 162 00:09:32,113 --> 00:09:34,907 しゃべり続けることができる という技なのか? 163 00:09:35,032 --> 00:09:36,117 ひぃーっ 164 00:09:36,826 --> 00:09:38,869 わあっ い… いつの間にー! 165 00:09:38,995 --> 00:09:40,496 ぎ… 銀閣ー! 166 00:09:42,873 --> 00:09:44,542 秘剣 零閃(ぜろせん) 167 00:09:45,293 --> 00:09:48,879 はあー 畳が汚れちまったな 168 00:09:49,630 --> 00:09:51,591 (あくび) 169 00:09:54,594 --> 00:09:57,179 (七花)実は俺 親父(おやじ)に聞いていてさ 170 00:09:57,722 --> 00:09:59,682 ひそかに楽しみにしていたんだが 171 00:09:59,849 --> 00:10:03,019 (とがめ)ああ そなたが 聞いていた因幡の風景は― 172 00:10:03,144 --> 00:10:04,895 以前のものだ (七花)はっ? 173 00:10:05,021 --> 00:10:07,356 (とがめ)因幡砂漠は 5年ほど前から― 174 00:10:07,481 --> 00:10:09,525 拡大の一途をたどってな 175 00:10:09,734 --> 00:10:14,405 鳥取藩全土をのみ込んだ 今や因幡は人の住めぬ地だ 176 00:10:14,989 --> 00:10:18,701 その宇練銀閣ってのは こんな所で何をやってるんだ? 177 00:10:18,868 --> 00:10:21,203 言ったであろう 城主であると 178 00:10:21,329 --> 00:10:23,039 そいつが分からねえ 179 00:10:23,247 --> 00:10:25,916 こんな人の住めない所で 殿様をやっていても― 180 00:10:26,042 --> 00:10:27,251 しかたがないだろうに 181 00:10:27,501 --> 00:10:31,547 そう思って幕府からの使いの者が 何度も訪ねたのだがな 182 00:10:32,214 --> 00:10:34,175 誰一人として戻らなかった 183 00:10:34,634 --> 00:10:36,010 “斬り捨て御免”ね 184 00:10:36,344 --> 00:10:41,223 ああ そうだ それはそれとして そろそろ口癖を考えなければな 185 00:10:41,390 --> 00:10:42,808 はっ? 口癖? 186 00:10:42,892 --> 00:10:44,226 (とがめ)そうだ (七花)誰の? 187 00:10:44,352 --> 00:10:46,437 (とがめ)そなたのだ (七花)はあ… 188 00:10:47,396 --> 00:10:48,648 (とがめ)先月のな 189 00:10:48,731 --> 00:10:52,068 そなたの活躍ぶりを とりあえず文字にしてみたのだ 190 00:10:52,276 --> 00:10:54,737 (七花)ああ 報告書ってやつな 191 00:10:55,029 --> 00:10:57,031 そうそう あんたの言うとおり― 192 00:10:57,156 --> 00:11:00,326 俺は あの忍者野郎を 派手にやっつけたんだ 193 00:11:00,868 --> 00:11:05,373 それなのだが そなたがどれほど 派手に真庭をやっつけたのかは― 194 00:11:05,498 --> 00:11:08,042 じかに見たわけではないから 書けなかった 195 00:11:08,167 --> 00:11:11,087 はっ? せっかく あんたの 言うとおりにしたってのに? 196 00:11:11,587 --> 00:11:15,299 しかたなかろうが 見ていないものは書きようがない 197 00:11:15,633 --> 00:11:18,427 しかし まあ それはあまり 大した問題ではない 198 00:11:18,552 --> 00:11:20,930 また機会もあるだろうしな 199 00:11:21,472 --> 00:11:22,807 それよりも七花 200 00:11:22,932 --> 00:11:27,937 鉋収集の模様を書いているうちに 私は1つ大事なことに気づいたのだ 201 00:11:28,187 --> 00:11:30,314 へえー 大事なことって? 202 00:11:30,481 --> 00:11:31,816 そなたは個性が弱い 203 00:11:33,317 --> 00:11:37,738 と 流れのまま 一応驚いてみたが それが何の問題だ? 204 00:11:37,947 --> 00:11:40,116 甘いぞ 素人か? 205 00:11:40,241 --> 00:11:42,076 剣法以外は素人だよ 206 00:11:42,284 --> 00:11:45,287 そういう自分本位では なおのこといかんなあ 207 00:11:45,413 --> 00:11:46,205 はあ? 208 00:11:46,330 --> 00:11:49,834 どうも報告書を書いていると そなたよりも あの忍者― 209 00:11:49,959 --> 00:11:52,628 真庭蝙蝠のほうが 目立ってしまうのだ 210 00:11:52,753 --> 00:11:55,381 推敲しても推敲しても結果は同じだ 211 00:11:55,464 --> 00:11:59,009 ついぞ蝙蝠よりも そなたを 目立たせることはできなかったのだ 212 00:11:59,093 --> 00:12:00,386 いや ちょっと待て 213 00:12:00,469 --> 00:12:04,056 最終的に清書を終えて 自分で読み返してみても― 214 00:12:04,306 --> 00:12:08,477 そなたのことは 上半身裸の バカという印象しか残らなかった 215 00:12:08,602 --> 00:12:10,896 だから待てよ とがめさん 216 00:12:10,980 --> 00:12:14,483 あんなよー 口から刀を取り出す ようなやつを相手に― 217 00:12:14,608 --> 00:12:17,361 個性で勝てるわけがないだろうが 218 00:12:17,445 --> 00:12:20,281 戦闘では俺の勝ちだったんだから 構わないだろう? 219 00:12:20,364 --> 00:12:23,200 それは もちろん戦闘で 負けてもらっては困るが― 220 00:12:23,325 --> 00:12:25,786 個性でも負けてもらっては困る 221 00:12:25,870 --> 00:12:26,412 はあ? 222 00:12:26,495 --> 00:12:29,290 (とがめ)そなたの人間性には いまいち華がないのだ 223 00:12:29,373 --> 00:12:31,250 あんたに気遣いはねえのか 224 00:12:31,333 --> 00:12:34,211 気遣いで読者をとりこにするような 報告書が書けるか! 225 00:12:34,503 --> 00:12:37,339 (七花)こいつは いったい 何と戦っているのだろう 226 00:12:37,715 --> 00:12:38,632 そういうわけで― 227 00:12:38,716 --> 00:12:41,760 さしあたって そなたの口癖を 考えようと言うのだ 228 00:12:41,844 --> 00:12:44,305 考えて 決めるようなことなのか? それ 229 00:12:44,430 --> 00:12:46,891 ああ こいつは普通じゃ ないんだなあと― 230 00:12:47,016 --> 00:12:48,934 読者への印象が強くなる 231 00:12:49,101 --> 00:12:51,645 俺は別に普通と思われても いいんだけど 232 00:12:51,854 --> 00:12:53,272 私がそうはいかん― 233 00:12:53,397 --> 00:12:57,318 退屈で途中で読むのをやめられて しまったらどうするのだ 234 00:12:57,401 --> 00:13:00,654 (七花)報告書って 面白く 書かなくちゃならないのか? 235 00:13:01,030 --> 00:13:02,239 おお そうだ 236 00:13:02,323 --> 00:13:07,161 例の天才剣士 錆(さび)白兵(はくへい)の口癖も まあまあカッコよかったぞ 237 00:13:07,244 --> 00:13:10,831 私を裏切ったやつのことを 褒めるのも しゃくに障るが― 238 00:13:11,081 --> 00:13:14,084 それでも認めるべきところは 認めねばなるまい 239 00:13:14,335 --> 00:13:16,337 参考までに聞こうか 240 00:13:19,006 --> 00:13:21,008 “拙者にときめいて もらうでござる” 241 00:13:22,510 --> 00:13:25,387 (七花)そんな口癖を つけられたら悲惨だ 242 00:13:25,638 --> 00:13:29,225 あっ そうだ ほら 俺が よく口にする言葉があったぜ 243 00:13:29,642 --> 00:13:30,267 (とがめ)ほお 244 00:13:30,351 --> 00:13:32,353 あのな“面倒だー”ってやつ 245 00:13:32,436 --> 00:13:33,479 ちぇりおー! 246 00:13:35,272 --> 00:13:40,152 愚か者 そんなダルそうな言葉を 個性として確立してどうする! 247 00:13:40,236 --> 00:13:44,114 そんな動きのない登場人物を書く 私の身にもなってみろ 248 00:13:44,198 --> 00:13:47,701 途中で書くのをやめたくなって しまったら どうするのだ 249 00:13:48,035 --> 00:13:48,577 そうか 250 00:13:48,702 --> 00:13:50,746 そもそも 刀を集めながら― 251 00:13:50,871 --> 00:13:54,333 “面倒だ 面倒だ”と言っている 姿を描写したりしたら― 252 00:13:54,416 --> 00:13:57,211 まるで そなたが いやいや 働いているようではないか 253 00:13:57,336 --> 00:13:58,671 ノリノリで働けってか? 254 00:13:58,837 --> 00:13:59,797 そのとおりだ 255 00:14:00,047 --> 00:14:03,717 とにかく 私がそなたを無理やり 働かしているかのような― 256 00:14:03,884 --> 00:14:05,553 形になることだけは避けたい 257 00:14:05,678 --> 00:14:07,805 (七花)あんたこそ 自分本位だろう 258 00:14:08,389 --> 00:14:11,725 とは言ってもな そんな簡単に 思いつかねえよ 259 00:14:12,017 --> 00:14:16,814 安心しろ そう言うと思って 私があらかじめ考えておいてやった 260 00:14:17,356 --> 00:14:20,401 まっ そなたにも 好みがあるだろうからな 261 00:14:20,568 --> 00:14:24,238 候補の中から最終的に選ぶのは そなたの権利だ 262 00:14:24,363 --> 00:14:26,240 好きなものを選んでくれて構わぬ 263 00:14:26,699 --> 00:14:28,951 (七花) 押しつけがましい権利だなあ 264 00:14:29,702 --> 00:14:31,579 まあ 好きなのがあったらな 265 00:14:31,745 --> 00:14:33,539 うむ 案ずるな 266 00:14:33,622 --> 00:14:36,458 カッコいい中でも お勧めの口癖を用意した 267 00:14:40,796 --> 00:14:43,340 ほっ ほら いやー 268 00:14:43,591 --> 00:14:46,594 確か あんたは戦闘能力を 持たない代わりに― 269 00:14:46,719 --> 00:14:49,346 その分 頭がいいって 設定じゃなかったっけ? 270 00:14:49,430 --> 00:14:53,934 何を言う! こんな口癖 頭が よくなければ ひらめかんぞ 271 00:14:54,143 --> 00:14:57,021 確かに 悪魔的な ひらめきではあるが… 272 00:14:57,229 --> 00:15:01,358 基本的に敵に対して 挑発の用途で使う言葉だな 273 00:15:01,609 --> 00:15:06,822 格の違いを示すというか 自らの絶対的自信を示すというか 274 00:15:07,114 --> 00:15:08,782 こういうセリフを言うことで― 275 00:15:08,908 --> 00:15:11,493 そなたの全能性が 表れると同時に― 276 00:15:11,619 --> 00:15:14,455 勝利を収めた時に かなりの楽勝感が出る 277 00:15:14,830 --> 00:15:18,375 うーん ただのイヤなやつに なってる気がするぞ 278 00:15:18,626 --> 00:15:19,501 (とがめ)ふーん 279 00:15:20,127 --> 00:15:22,630 ぶっちゃけ そなたが 多少 イヤなやつのほうが― 280 00:15:22,796 --> 00:15:24,173 私としては助かるのだ 281 00:15:24,882 --> 00:15:27,885 手に負えないような やんちゃで 生意気な荒くれ者を― 282 00:15:27,968 --> 00:15:32,306 手綱を取って うまく操ってこそ 私の評価も上がるだろうからな 283 00:15:32,806 --> 00:15:35,726 その意味では そなたは 少し善良すぎる 284 00:15:35,893 --> 00:15:37,102 (七花)勝手だ 285 00:15:41,440 --> 00:15:45,986 なぜ20年もの間 島流しの目に遭っていた自分が― 286 00:15:46,070 --> 00:15:47,988 他の誰かに向けて そんなセリフを― 287 00:15:48,155 --> 00:15:50,240 得意げに言わなければ ならないのだろう 288 00:15:50,324 --> 00:15:53,410 バカ者! だからこそ 説得力があってよいのだろう 289 00:15:53,702 --> 00:15:55,829 (七花)いらねえよ そんな説得力 290 00:15:56,330 --> 00:15:59,249 (とがめ)もうー 好みのうるさい男だ 291 00:15:59,667 --> 00:16:03,629 (七花)この不毛な会話 道中ずっと続くのだろうか? 292 00:16:04,421 --> 00:16:07,216 あとは あまり ひねりがないのだが― 293 00:16:07,633 --> 00:16:10,094 “ただし そのころには あんたは八つ裂きに―” 294 00:16:10,219 --> 00:16:13,639 “なっているだろうけどな”っと これくらいか? 295 00:16:13,722 --> 00:16:16,183 ああ もうそれでいい それでいこう 296 00:16:16,350 --> 00:16:16,976 は? 297 00:16:17,184 --> 00:16:18,769 それがいいと言ったんだ 298 00:16:18,852 --> 00:16:20,688 “だだし そのころには あんたは―” 299 00:16:20,854 --> 00:16:22,648 “八つ裂きになっている だろうけどな” 300 00:16:22,856 --> 00:16:24,692 うん とてもいい感じだ 301 00:16:25,025 --> 00:16:28,779 ほおー これでいいのか 少し意外だなあ 302 00:16:29,071 --> 00:16:33,826 これは考えた中では それほど強く 推すつもりのない一品だったのだが 303 00:16:33,951 --> 00:16:37,413 まあ そうは言っても自信作で あったことには違いがない 304 00:16:37,830 --> 00:16:41,041 ああ びっくりしたぜ 俺に似合いすぎる 305 00:16:41,125 --> 00:16:45,170 そうかそうか これはそなたの 超必殺技であるところの― 306 00:16:45,254 --> 00:16:47,881 七花八裂から 着想を得たものなのだ 307 00:16:48,048 --> 00:16:49,258 そっ そうか 308 00:16:49,550 --> 00:16:51,051 うむ 礼を言っていいぞ 309 00:16:51,468 --> 00:16:53,429 感謝感激 雨あられ 310 00:16:53,554 --> 00:16:58,267 うむうむ そうかそうか そなたが 気に入ったのならば是非はない 311 00:16:58,392 --> 00:17:01,770 あー しかしそなたの好みが うるさいせいで― 312 00:17:01,895 --> 00:17:04,231 思いのほか 長話になってしまったな 313 00:17:04,857 --> 00:17:08,193 とはいえ まだ急がなければ ならぬほどではない 314 00:17:08,277 --> 00:17:11,571 この調子なら夕方ごろには 目的地に着くであろう 315 00:17:11,655 --> 00:17:12,321 ああ 316 00:17:12,406 --> 00:17:15,784 ただし そのころには あんたは 八つ裂きになっているだろうけどな 317 00:17:15,909 --> 00:17:16,993 ちぇりおー 318 00:17:17,828 --> 00:17:21,330 ううー そなた 何も考えておらんな? 319 00:17:21,415 --> 00:17:22,583 ややこしいな 320 00:17:22,708 --> 00:17:26,462 ああ ちなみに さっきから 多用している“ちぇりお”だが― 321 00:17:26,627 --> 00:17:28,255 これは私の口癖だ 322 00:17:28,338 --> 00:17:30,799 そっ そうか 気にもしていなかった 323 00:17:31,383 --> 00:17:33,260 “ちぇりお”とは九州のな 324 00:17:33,343 --> 00:17:37,431 薩摩藩辺りで流行している 気合を入れるための掛け声だ 325 00:17:37,598 --> 00:17:40,559 これは方言というより むしろ文化かな 326 00:17:40,726 --> 00:17:44,271 別に私は九州とゆかりがある というわけではないのだが― 327 00:17:44,396 --> 00:17:47,649 “ちぇりお”なんて気合を入れる 掛け声の割に何だか― 328 00:17:47,775 --> 00:17:49,151 発音がかわいいであろう? 329 00:17:49,610 --> 00:17:52,279 これは私の外見との 相乗効果もあって― 330 00:17:52,404 --> 00:17:55,616 かなり期待できる思いつきだと 自負しておる 331 00:17:55,741 --> 00:17:57,117 報告書を提出したあとには… 332 00:17:57,284 --> 00:17:59,119 (ナレーション) もちろん ご存じのとおり― 333 00:17:59,244 --> 00:18:03,457 薩摩藩が発祥の気合を入れるための 掛け声は“チェスト” 334 00:18:03,707 --> 00:18:05,501 とがめの言う“チェリオ”では― 335 00:18:05,626 --> 00:18:08,504 別れを意味する外来語と なってしまいます 336 00:18:09,213 --> 00:18:11,131 彼女がその間違いに気づき― 337 00:18:11,256 --> 00:18:12,925 恥ずかしさのあまり まれな― 338 00:18:13,050 --> 00:18:15,594 混乱ぷりを見せてしまうことに なるのは― 339 00:18:15,969 --> 00:18:19,473 これより数か月後の 物語でございます 340 00:18:26,688 --> 00:18:31,485 うう… はあー 待て待て 歩くのが速いぞ 341 00:18:31,568 --> 00:18:35,405 ああ 悪い 人と歩くのは慣れてないからな 342 00:18:36,240 --> 00:18:38,826 あんた 着込んでるから 足が重いんだよ 343 00:18:38,909 --> 00:18:42,162 たわけ 女子に軽々しく 重いとか言うな 344 00:18:42,830 --> 00:18:45,374 いや あんたは十分軽いって 345 00:18:45,541 --> 00:18:47,918 けど そんな格好じゃ 動きづらいだろう? 346 00:18:48,001 --> 00:18:51,588 重ねて たわけ! 女子のおしゃれは別筋肉だ 347 00:18:51,839 --> 00:18:53,841 女子にはそんな器官があるのか? 348 00:18:53,924 --> 00:18:56,552 粗野な男には分からぬ 繊細な器官よ 349 00:18:57,052 --> 00:18:59,513 服なんて着るだけ 邪魔だと思うけどな 350 00:18:59,721 --> 00:19:00,347 フン 351 00:19:00,472 --> 00:19:05,018 そなたの上半身に服を着せることを 私は すでに諦めているが― 352 00:19:05,102 --> 00:19:07,396 下半身までは脱いでくれるなよ 353 00:19:07,521 --> 00:19:09,231 変態と旅はしたくない 354 00:19:09,648 --> 00:19:10,858 (七花)安心しろ 355 00:19:10,983 --> 00:19:14,403 あんたが買ってくれた この袴(はかま)は そこそこ気に入っている 356 00:19:14,695 --> 00:19:17,030 動きやすいし戦いやすい 357 00:19:17,239 --> 00:19:20,117 (とがめ)動きやすいと 戦いやすいは違うのか? 358 00:19:20,200 --> 00:19:22,369 (七花)まあ 違うね (とがめ)はあー 359 00:19:22,452 --> 00:19:25,414 (七花)で その下酷城は まだなのか? 360 00:19:25,539 --> 00:19:29,042 夜になっちまうぞ そしたら 困るのは とがめだろう 361 00:19:29,168 --> 00:19:30,127 (とがめ)そうだな 362 00:19:30,210 --> 00:19:33,922 女子が砂漠で野宿とあっては せっかくのおしゃれが台なしだ 363 00:19:34,047 --> 00:19:35,674 (七花)そういう問題か? (とがめ)なっ 364 00:19:35,757 --> 00:19:38,218 誰だ! こんな所に 物を置いたやつは! 365 00:19:40,429 --> 00:19:41,680 ふぁーああ 366 00:19:41,847 --> 00:19:44,933 こいつは まにわにの真庭白鷺 367 00:19:45,058 --> 00:19:49,771 (砂嵐の音) 368 00:19:51,023 --> 00:19:53,609 えっ 城? なんで? 369 00:19:54,109 --> 00:19:59,072 蜃気楼(しんきろう)による大気の迷彩 ここまで近寄らねば認識できない 370 00:19:59,907 --> 00:20:05,037 それが因幡砂漠の下酷城だ 攻めるに固く 守るに易(やす)い 371 00:20:05,370 --> 00:20:10,042 知らない人間は知らないことだが 一部では有名な話ではある 372 00:20:10,667 --> 00:20:12,920 びっくりしちまったじゃねーか 373 00:20:13,045 --> 00:20:15,964 すまぬ そなたを びっくりさせようと思って 374 00:20:16,089 --> 00:20:17,132 はあ… 375 00:20:18,759 --> 00:20:22,012 そいつ 城のそばに 捨てられていたってことは 376 00:20:22,137 --> 00:20:27,100 (とがめ)真庭忍軍は十二頭領内で 競争しておると言っておったな 377 00:20:27,226 --> 00:20:31,980 四季崎記紀の完成形変体刀 十二本 収集競争― 378 00:20:32,439 --> 00:20:38,320 恐らくは因幡下酷城の宇練銀閣が 斬刀・鈍を所有していると知り― 379 00:20:38,654 --> 00:20:41,198 白鷺は ここを訪れたのであろう 380 00:20:42,115 --> 00:20:44,117 そして返り討ちにあった 381 00:20:44,826 --> 00:20:47,704 真庭忍軍の頭領がこのザマとは… 382 00:20:47,913 --> 00:20:50,499 まにわにの頭領なら俺も倒したぜ 383 00:20:50,624 --> 00:20:53,460 そなたの場合は 運にも恵まれていただろうが 384 00:20:53,961 --> 00:20:56,630 まあ 前向きに考えるとしよう 385 00:20:57,130 --> 00:21:01,635 (とがめ)先にたどり着いた まにわにが斬刀の収集に失敗した 386 00:21:01,843 --> 00:21:04,888 これは とらえようによっては 悪いことではあるまい 387 00:21:05,264 --> 00:21:08,642 もしも 白鷺が変体刀収集に 成功していれば― 388 00:21:08,809 --> 00:21:11,311 無駄足になってしまって おったのだからな 389 00:21:11,395 --> 00:21:13,480 (七花)なるほど 前向きだ 390 00:21:14,231 --> 00:21:17,150 だけど こいつが襲撃に 失敗したことで― 391 00:21:17,317 --> 00:21:19,820 ここの城主は 警戒しちまっただろう 392 00:21:19,987 --> 00:21:22,322 最悪の場合 姿を消して いるかもしれないぜ 393 00:21:23,115 --> 00:21:24,157 それはない 394 00:21:24,366 --> 00:21:27,494 宇練銀閣は因幡全土が 砂漠化しても― 395 00:21:27,661 --> 00:21:31,081 それでも この土地から 退かなかった男だ 396 00:21:31,790 --> 00:21:35,085 それに この白鷺の ありさまを見るかぎり― 397 00:21:35,168 --> 00:21:38,505 宇練は自分の腕に 絶対の自信を持っておる 398 00:21:38,839 --> 00:21:42,009 士道不覚悟の敵前逃亡など 考えもすまい 399 00:21:42,509 --> 00:21:45,345 どうやら 思っていた以上に 強敵のようだな 400 00:21:47,973 --> 00:21:50,726 あるいは 出直すってのも ありかもしれないぜ 401 00:21:50,892 --> 00:21:52,269 ありえん話だ 402 00:21:52,519 --> 00:21:55,856 真庭忍軍がこれほどの速度で 動いている今― 403 00:21:55,981 --> 00:21:58,775 私がたたらを踏んでいる 暇などあるものか 404 00:21:59,526 --> 00:22:03,613 七花 私は今 むしろ 安心しているところなのだ 405 00:22:03,697 --> 00:22:04,281 (七花)ふん? 406 00:22:04,823 --> 00:22:08,285 真庭白鷺が引き立て役に なってくれたおかげで― 407 00:22:08,368 --> 00:22:11,913 上に提出する報告書に 盛り上がりができたのだからな 408 00:22:12,456 --> 00:22:14,624 裏切り者の真庭忍軍― 409 00:22:14,708 --> 00:22:18,462 それを撃退したという剣士から 変体刀を収集したなどと― 410 00:22:18,587 --> 00:22:20,839 何とも痛快ではないか 411 00:22:20,964 --> 00:22:24,676 何より逆さしゃべりなどという 描写のうっとうしい忍者を― 412 00:22:24,801 --> 00:22:26,928 これで私は書かずに済む 413 00:22:27,262 --> 00:22:28,638 おっ おう 414 00:22:29,139 --> 00:22:30,515 大体 七花 415 00:22:30,599 --> 00:22:32,934 ここまでお膳立てが 整っていながら― 416 00:22:33,060 --> 00:22:36,104 すごすご 引き下がるなどという カッコ悪いありさまを― 417 00:22:36,229 --> 00:22:38,273 そなたは私に書けと言うのか? 418 00:22:38,565 --> 00:22:40,358 なるほど 前向きだ 419 00:22:40,650 --> 00:22:41,401 うん 420 00:22:42,527 --> 00:22:45,113 だから 俺は あんたに 惚(ほ)れたんだ 421 00:22:51,286 --> 00:22:55,665 (風の音) 422 00:22:56,083 --> 00:22:58,418 (七花)前に出ると 危ないじゃないか 423 00:22:59,211 --> 00:23:01,296 戦うのは俺なんだろう? 424 00:23:01,588 --> 00:23:05,926 それとも あんたがまず最初に 宇練銀閣と戦おうってのか? 425 00:23:06,051 --> 00:23:10,597 バカ者 私の戦闘力は そなたもよく知るところだろう 426 00:23:10,680 --> 00:23:14,601 私を倒すことなど障子紙を 破くよりも たやすいぞ 427 00:23:14,726 --> 00:23:16,937 そんなこと威張って言われても 428 00:23:17,687 --> 00:23:18,730 あのなあ 429 00:23:18,814 --> 00:23:21,775 どうもそなたは そのあたりを 誤解しているようだから― 430 00:23:21,900 --> 00:23:23,318 一応 言っておくが― 431 00:23:23,693 --> 00:23:26,655 私たちは別に強盗という わけではないのだ 432 00:23:26,988 --> 00:23:27,531 ん? 433 00:23:27,864 --> 00:23:30,784 いきなり丁丁発止(ちょうちょうはっし)の チャンバラを行い― 434 00:23:30,909 --> 00:23:33,578 強奪すればよいと いうものではない 435 00:23:33,829 --> 00:23:36,623 手順を踏み交渉が必要なのだよ 436 00:23:36,748 --> 00:23:40,585 (七花)えっと お役所的な手続きってことか? 437 00:23:40,669 --> 00:23:43,130 (とがめ)今回のところは その理解でもいい 438 00:23:43,255 --> 00:23:46,675 (七花)それで済むんだったら 別に俺 いらないんじゃないのか? 439 00:23:47,425 --> 00:23:51,930 (とがめ)四季崎の刀の毒を 好んで摂取するような人間は― 440 00:23:52,013 --> 00:23:54,891 およそ 狂人と 相場は決まっておるでな 441 00:23:55,058 --> 00:23:58,645 (七花)つまり はなから交渉で 済むと思ってないってことだろう? 442 00:23:58,770 --> 00:24:01,314 しかしな そうは言ってもだ (七花)ん? 443 00:24:01,648 --> 00:24:05,068 (とがめ)例えば 刀の所有者が 善人だった時― 444 00:24:05,152 --> 00:24:07,487 そなたは どうするつもりなのだ? (七花)うーん 445 00:24:07,779 --> 00:24:09,990 (とがめ)幕府の 後ろ盾がある以上― 446 00:24:10,073 --> 00:24:12,617 人を斬っても とがめられることはないが― 447 00:24:12,701 --> 00:24:14,744 だからと言って むやみやたらに― 448 00:24:14,870 --> 00:24:17,164 斬り刻んでよいと いうことではないのだ 449 00:24:18,331 --> 00:24:19,624 分かったら行くぞ 450 00:24:23,128 --> 00:24:25,630 (七花)あからさまに怪しい ふすまだが― 451 00:24:26,173 --> 00:24:28,300 ここに何かあるってことだろう? 452 00:24:30,218 --> 00:24:32,846 (とがめ)ああ 待て 不用心に開けるな 453 00:24:33,013 --> 00:24:33,805 こらー! 454 00:24:45,817 --> 00:24:47,611 (とがめ)宇練銀閣だな 455 00:24:48,612 --> 00:24:56,745 私は尾張幕府 家鳴将軍家直轄 預奉所軍所総監督 奇策士とがめだ 456 00:24:58,455 --> 00:25:02,918 その刀 斬刀・鈍と見受けるが いかがかな? 457 00:25:03,752 --> 00:25:05,378 うるせえなー 458 00:25:05,795 --> 00:25:10,884 確かに俺は宇練銀閣だが そう大きな声で どなるなよ 459 00:25:11,551 --> 00:25:14,221 (とがめ)それは 失礼した (宇練銀閣)で? 460 00:25:14,888 --> 00:25:18,225 (宇練銀閣)幕府のお偉いさんが こんな砂漠に何の用だよ? 461 00:25:18,642 --> 00:25:21,728 (とがめ)その斬刀 譲ってもらえんかな 462 00:25:23,563 --> 00:25:25,065 もちろんタダとは言わん 463 00:25:25,190 --> 00:25:28,443 幕府として できるかぎりのことは させてもらおう 464 00:25:29,903 --> 00:25:32,072 無論 刀一本とはいえ― 465 00:25:32,197 --> 00:25:36,618 そなたの差す その刀の価値は よく認識しておるつもりだ 466 00:25:37,577 --> 00:25:41,539 間違っても 他の何かに 替えられるものではあるまい 467 00:25:41,957 --> 00:25:43,333 しかし 宇練よ 468 00:25:43,458 --> 00:25:45,585 そこを曲げて幕府のために― 469 00:25:45,710 --> 00:25:48,922 ひいては天下国家のために 貢献してはくれぬか 470 00:25:49,130 --> 00:25:53,927 “天下国家のために”なんてやつに ロクなやつはいねえよ 471 00:25:54,928 --> 00:25:56,554 (あくび) 472 00:25:58,265 --> 00:26:02,394 ああ おぬしとて いつまでも この城の中で のうのうと― 473 00:26:02,519 --> 00:26:04,437 暮らしておるつもりはないであろう 474 00:26:04,854 --> 00:26:08,817 野心があるのならば 私は協力できると思うぞ 475 00:26:08,942 --> 00:26:10,777 表にも裏にもだ 476 00:26:11,569 --> 00:26:14,781 浪人の俺を 取り立ててくれるってのかい? 477 00:26:14,864 --> 00:26:17,033 ありがたい話だがね 478 00:26:17,242 --> 00:26:20,578 しかし俺の首には 賞金がかかってるとも聞くぜ 479 00:26:20,704 --> 00:26:25,417 無論 そのかせも外してやれる どんな望みも思うがままだ 480 00:26:25,542 --> 00:26:27,043 (あくび) 481 00:26:27,168 --> 00:26:28,753 (とがめ)おい 宇練! 482 00:26:29,212 --> 00:26:32,674 今度は声が小さすぎて よく聞こえねえなあ 483 00:26:32,966 --> 00:26:35,135 もうちょっと 近づいてきてくれねえか? 484 00:26:35,468 --> 00:26:36,052 あ… 485 00:26:37,137 --> 00:26:40,515 大体 敷居越しに 話をするなんて― 486 00:26:40,974 --> 00:26:43,268 剣士に対して失礼だろうがよ 487 00:26:43,351 --> 00:26:44,060 あっ 488 00:26:45,353 --> 00:26:48,023 (宇練銀閣)あんたが どれだけ 偉いか知らねえけど― 489 00:26:48,815 --> 00:26:53,278 少なくとも それは頼み事を しようって態度じゃねえよな 490 00:26:54,362 --> 00:26:57,240 確かにそのとおりだ 失礼した 491 00:27:01,661 --> 00:27:02,245 ああ! 492 00:27:04,414 --> 00:27:05,290 (刀の音) 493 00:27:05,707 --> 00:27:07,167 虚刀流 百合! 494 00:27:11,504 --> 00:27:13,131 だっ とぅ たっ! 495 00:27:15,175 --> 00:27:17,677 (とがめ)何すんじゃー (七花)落ち着けよ 496 00:27:17,802 --> 00:27:20,847 いきなり蹴られて 落ち着けるか このバカ者ー! 497 00:27:20,972 --> 00:27:23,058 後ろから見えない力に 吸い寄せられるから― 498 00:27:23,183 --> 00:27:25,769 宇宙人に 誘拐されたかと思ったわー 499 00:27:25,852 --> 00:27:28,104 その発想は ものすごいが… 500 00:27:28,188 --> 00:27:29,856 (裂ける音) 501 00:27:30,607 --> 00:27:31,608 あっ… 502 00:27:31,733 --> 00:27:32,317 (刀の音) 503 00:27:32,776 --> 00:27:34,152 (とがめ)なっ な… 504 00:27:34,652 --> 00:27:35,695 居合抜きか? 505 00:27:37,238 --> 00:27:41,451 も もしも厚着をしていなければ 今頃 私の体は… 506 00:27:41,618 --> 00:27:46,164 いや その分だけの着物が 無事で済んだだけだと思うけど 507 00:27:46,956 --> 00:27:48,249 びっくりした 508 00:27:48,708 --> 00:27:53,922 この斬刀を手にして以来 俺の 零閃(ぜろせん)がかわされたのは初めてだぜ 509 00:27:54,506 --> 00:27:56,633 びっくりしたのは こっちのほうだ 510 00:27:57,300 --> 00:28:00,720 居合抜きが剣術の究極型というのは 聞いていたが― 511 00:28:00,887 --> 00:28:02,722 そこまで速いものだとは 512 00:28:03,473 --> 00:28:07,102 ん じゃ まっ お前のびっくりと 俺のびっくりで― 513 00:28:07,227 --> 00:28:09,062 おあいこってことで 514 00:28:09,979 --> 00:28:14,150 宇練 貴様 今 自分が 何をしたのか分かっておるのか! 515 00:28:14,401 --> 00:28:15,402 (宇練銀閣)あんたもさ― 516 00:28:15,527 --> 00:28:18,947 そんな腕の立つ お兄ちゃん 連れてきているくらいなんだ 517 00:28:19,489 --> 00:28:23,118 最終的には腕っぷしに訴えてくる つもりが あったんだろう? 518 00:28:23,368 --> 00:28:24,786 “お兄ちゃん”だとー! 519 00:28:24,911 --> 00:28:27,914 貴様 私がこいつの妹に 見えるのか! 520 00:28:27,997 --> 00:28:30,041 私のどこが妹だ! 521 00:28:30,333 --> 00:28:32,585 俺のご先祖様はよー 522 00:28:32,877 --> 00:28:37,507 主君を どころか当時の将軍すら 敵に回しても― 523 00:28:37,632 --> 00:28:40,343 この刀を譲らなかったんだってよ 524 00:28:40,593 --> 00:28:44,556 なのに俺が“はい そうですか”と あんたに これを渡したんじゃ― 525 00:28:44,681 --> 00:28:46,599 草葉の陰で笑い者だぜ 526 00:28:47,183 --> 00:28:49,310 その刀をなくすのが怖いのか? 527 00:28:50,854 --> 00:28:53,648 その“零閃”って技 そいつじゃなけりゃ― 528 00:28:53,690 --> 00:28:56,234 そこまでの速度は 出ないんだろう? 529 00:28:56,484 --> 00:28:58,486 だから それを失うのが 怖いのか? 530 00:28:58,737 --> 00:28:59,946 怖かったら何だ? 531 00:29:00,196 --> 00:29:05,827 別に それが 刀を使う剣士の 限界なんだろうなと思ってさ 532 00:29:10,582 --> 00:29:14,711 はっ そういうお前は 剣士じゃねえのか? 533 00:29:14,794 --> 00:29:17,297 剣士だよ まごうことなくな 534 00:29:18,006 --> 00:29:22,886 へえー だったら剣士に 言葉は不要なんだよ 535 00:29:23,303 --> 00:29:26,973 この刀が欲しいってんなら 黙って奪い取ればいい 536 00:29:27,474 --> 00:29:30,977 俺は それに黙って抵抗するだけだ 537 00:29:31,478 --> 00:29:34,314 はーん 意地か? 538 00:29:35,231 --> 00:29:36,107 気位だよ 539 00:29:37,817 --> 00:29:41,696 お前はその女をかばえて いい気に なってるのかもしれねえが― 540 00:29:41,946 --> 00:29:44,407 今のが全力だと思うなよ 541 00:29:45,867 --> 00:29:50,163 零閃の最高速度は光を超える 542 00:29:51,206 --> 00:29:52,040 やるか? 543 00:29:52,791 --> 00:29:57,128 とがめ 確認したいことが できたんだけど いいか? 544 00:29:57,212 --> 00:29:58,880 (とがめ)はあ? (宇練銀閣)おい! 545 00:29:59,172 --> 00:30:00,757 ちょっと作戦会議だ 546 00:30:01,007 --> 00:30:04,135 すぐに戻ってくるから うたた寝でもして待ってろ 547 00:30:05,804 --> 00:30:10,308 その時は披露してもらうぜ “最高速度の零閃”とやらをよ 548 00:30:12,727 --> 00:30:15,355 ふすま 閉めていけよ 549 00:30:17,065 --> 00:30:18,691 あー そうだ 550 00:30:19,651 --> 00:30:24,447 まだお兄ちゃんの名前は 聞いてなかったな 教えとけよ 551 00:30:26,074 --> 00:30:27,242 (とがめ)うん 552 00:30:29,828 --> 00:30:33,498 虚刀流 七代目当主 やしゅり七花だ 553 00:30:35,500 --> 00:30:36,334 うううう 554 00:30:37,252 --> 00:30:38,336 かんじゃった 555 00:30:47,387 --> 00:30:49,806 (七花)そう不機嫌そうな 顔すんなよ 556 00:30:49,889 --> 00:30:52,016 ああしなきゃ あんた 真っ二つだったんだぜ 557 00:30:52,308 --> 00:30:54,477 不機嫌そうな顔など しておらんもん 558 00:30:54,561 --> 00:30:56,896 (七花)“もん”? (とがめ)あっ いや… 559 00:30:56,980 --> 00:30:59,482 不機嫌そうな 顔などしておらんわ 560 00:30:59,941 --> 00:31:03,069 たまに あんた すげえ 子供っぽいこと言うけどさ 561 00:31:03,236 --> 00:31:05,405 正確にはあんた 何歳なんだ? 562 00:31:05,488 --> 00:31:07,240 俺より年上なんだよな? 563 00:31:07,448 --> 00:31:09,617 そんなことは どうでもよかろう 564 00:31:09,909 --> 00:31:13,246 それより七花 確認したいことは何だ? 565 00:31:13,413 --> 00:31:18,251 あそこで戦闘を中断する理由が あったとは 私には思えないのだが 566 00:31:18,793 --> 00:31:22,088 あいつが それに応じるかどうかを 確認したかったんだ 567 00:31:22,922 --> 00:31:24,257 “応じるかどうか”? 568 00:31:24,716 --> 00:31:27,552 つまり あの場から立ち去る俺と とがめを― 569 00:31:27,677 --> 00:31:29,846 あいつが追ってくるかどうか 570 00:31:30,763 --> 00:31:32,599 けれど あいつはそうしなかった 571 00:31:33,016 --> 00:31:34,517 まあ そうだが… 572 00:31:35,268 --> 00:31:38,438 とがめが 敷居をまたいで あの部屋に入った瞬間に― 573 00:31:38,605 --> 00:31:40,648 あいつは斬りつけてきた 574 00:31:41,274 --> 00:31:43,943 逆に言えば あの部屋に入らないかぎり― 575 00:31:44,110 --> 00:31:47,155 あいつは俺たちを 攻撃してこないということだ 576 00:31:47,280 --> 00:31:47,780 あっ 577 00:31:48,573 --> 00:31:52,994 (七花)あの奥まった部屋こそが 敵を迎撃する上で都合がいいんだ 578 00:31:53,453 --> 00:31:54,621 (とがめ)なるほど 579 00:31:54,704 --> 00:31:59,042 真庭白鷺も正面から 勝負せざるを得なかったわけか 580 00:31:59,417 --> 00:32:02,462 (七花)あの部屋は完全に 宇練銀閣の領域だ 581 00:32:02,670 --> 00:32:06,841 (とがめ)では あいつを部屋から 引きずり出せばよいのだろうが― 582 00:32:07,759 --> 00:32:09,594 そなた 考えがあるのか? 583 00:32:10,720 --> 00:32:13,181 (七花)まず とがめが あの部屋に入る 584 00:32:13,306 --> 00:32:15,642 (とがめ)ふむふむ 私が入ると 585 00:32:15,767 --> 00:32:18,811 (七花)そして零閃の餌食となって 真っ二つになる 586 00:32:18,937 --> 00:32:20,271 (とがめ)ほうほう 587 00:32:20,355 --> 00:32:23,191 (七花)死体をそばに 放置しておくわけにもいくまい? 588 00:32:24,901 --> 00:32:28,738 真庭白鷺の例と同じく 城外へと捨てるはずなんだ 589 00:32:28,821 --> 00:32:29,989 (とがめ)そしてそして? 590 00:32:30,114 --> 00:32:31,699 (七花)そこを俺が討つんだよ 591 00:32:31,866 --> 00:32:32,700 (とがめ)ちぇりおー 592 00:32:33,242 --> 00:32:36,079 私が真っ二つになって しまっておるだろうが 593 00:32:36,245 --> 00:32:39,999 うーん だからこの案は 使えないかなと思っている 594 00:32:40,124 --> 00:32:41,501 当然だ 595 00:32:41,668 --> 00:32:44,337 だから おびき出すのは 諦めるとして― 596 00:32:44,504 --> 00:32:47,590 それでもなお 対策はあるんだよ とがめ 597 00:32:47,674 --> 00:32:51,469 その対策とやらでは 私は 真っ二つには ならんのだろうな 598 00:32:53,304 --> 00:32:55,848 まともに勝負せざるを 得ない相手なら― 599 00:32:55,974 --> 00:32:57,850 まともに勝負を すればいい 600 00:32:58,267 --> 00:33:02,230 七花 それが結論だったら 私は怒るぞ 601 00:33:02,355 --> 00:33:04,649 いや あんた最初から ずっと怒ってるよ 602 00:33:04,774 --> 00:33:05,608 ちゃかすな! 603 00:33:05,733 --> 00:33:09,696 なあ 今日だけじゃなく 明日も勝つためには― 604 00:33:09,862 --> 00:33:11,364 ただ勝つんじゃダメだと思う 605 00:33:11,739 --> 00:33:12,281 おっ 606 00:33:13,866 --> 00:33:18,371 蝙蝠の時みたいに幸運に恵まれて 勝つんじゃダメなんだ 607 00:33:19,122 --> 00:33:22,709 (とがめ)うっ 思いのほか 真面目なことを言う 608 00:33:23,292 --> 00:33:25,795 (七花)“刀を守れ” そして― 609 00:33:26,629 --> 00:33:28,381 “あんたを守れ”だろ? 610 00:33:28,965 --> 00:33:32,719 ああ… そっ それが 分かっているのなら― 611 00:33:32,844 --> 00:33:36,931 私が真っ二つになるような案を そもそも 思いつきすらするでない 612 00:33:37,306 --> 00:33:40,268 そこでだ あんたは俺の 後ろにいてくれ 613 00:33:40,518 --> 00:33:41,394 はあー? 614 00:33:41,894 --> 00:33:43,604 いざって時の保険だよ 615 00:33:44,063 --> 00:33:46,232 分かっているとは思うけれど― 616 00:33:46,399 --> 00:33:50,153 私にそなたの背中を守れるような 才覚はないぞ 617 00:33:50,278 --> 00:33:51,863 そんなんじゃねえよ 618 00:33:52,030 --> 00:33:53,072 七花 619 00:33:53,448 --> 00:33:57,827 何ていうか この場でうまく 言うことはできないんだけどな 620 00:33:58,077 --> 00:34:00,371 あんたには そうしてほしいんだよ 621 00:34:03,041 --> 00:34:07,587 要するに 守るものがあるやつは 強いってことだ 622 00:34:09,297 --> 00:34:13,842 (砂嵐の音) 623 00:34:14,092 --> 00:34:17,513 (宇練銀閣)誰もがこぞって この砂漠から逃げ出した 624 00:34:18,347 --> 00:34:20,391 皆 故郷を捨てた 625 00:34:21,350 --> 00:34:27,273 あるいは 最後の1人でなければ 俺も因幡を去れたかもしれない 626 00:34:28,274 --> 00:34:32,445 いや 俺には はなから その選択はなかった 627 00:34:33,279 --> 00:34:37,283 迷うことは許されない この地への 628 00:34:37,699 --> 00:34:39,786 この刀への偏執(へんしゅう)か 629 00:34:40,786 --> 00:34:43,915 そしてそれは妄執(もうしゅう)だ 630 00:34:44,623 --> 00:34:47,460 剣士には守るものが必要だ 631 00:34:47,960 --> 00:34:51,505 そうでなければ戦えなくなる 632 00:34:55,635 --> 00:34:57,637 (ふすまを開ける音) 633 00:34:59,597 --> 00:35:00,306 よぉー! 634 00:35:02,308 --> 00:35:03,226 待たせたな 635 00:35:03,309 --> 00:35:06,479 ああ それで お兄ちゃん 636 00:35:06,938 --> 00:35:09,649 俺の零閃対策でも 考えてきたのか? 637 00:35:10,108 --> 00:35:12,985 うーん 微妙なところだな 638 00:35:13,152 --> 00:35:17,657 なんだ 虚刀流には 居合抜き対策でもあるってのかい? 639 00:35:17,990 --> 00:35:23,538 うーん まあ 相手があんたほどの 手合いなら 多分成功すると思う 640 00:35:23,704 --> 00:35:24,622 (宇練銀閣)へえ 641 00:35:24,747 --> 00:35:27,333 この技は相手の剣が 速ければ速いほど― 642 00:35:27,500 --> 00:35:29,502 成功率が跳ね上がるからよ 643 00:35:32,505 --> 00:35:35,883 虚刀流 七の構え 杜若(かきつばた) 644 00:35:36,092 --> 00:35:39,053 (とがめ)何だ その明らかな 突撃の構えは? 645 00:35:39,178 --> 00:35:41,848 対策があるみたいな 口ぶりで それか 646 00:35:42,723 --> 00:35:46,185 甘く見られたもんだ 虚刀流 647 00:35:46,686 --> 00:35:49,063 相手にとって満足なしか 648 00:35:49,188 --> 00:35:49,772 ふっ 649 00:35:49,939 --> 00:35:52,150 アホ! バカにされているんだ! 650 00:35:52,233 --> 00:35:52,942 へっ? 651 00:35:54,402 --> 00:35:58,531 まあいいや それじゃまあ 位置について 652 00:35:58,823 --> 00:35:59,532 よーい 653 00:35:59,949 --> 00:36:00,658 ドン! 654 00:36:01,534 --> 00:36:02,618 間合いは3歩 655 00:36:03,035 --> 00:36:03,786 1… 656 00:36:05,037 --> 00:36:05,955 2… 657 00:36:06,998 --> 00:36:08,291 3! 零閃! 658 00:36:10,459 --> 00:36:12,003 虚刀流 薔薇(ばら)! 659 00:36:12,086 --> 00:36:12,962 (宇練銀閣)ううっ 660 00:36:13,713 --> 00:36:15,214 おお やったか 661 00:36:15,631 --> 00:36:16,883 ダメだ 浅い 662 00:36:17,008 --> 00:36:17,550 うっ… 663 00:36:17,842 --> 00:36:22,138 くっ えーい 足さばきの 陽動は認めてやる 664 00:36:22,221 --> 00:36:24,765 ありもしねえ 幻覚を斬っちまた 665 00:36:25,224 --> 00:36:28,519 だがな 何だ その詰めの甘さはよ 666 00:36:28,603 --> 00:36:29,687 どういうことだ? 667 00:36:29,896 --> 00:36:33,482 薔薇は決まっていたんだよ 俺が加減しなければな 668 00:36:33,691 --> 00:36:34,400 ああ? 669 00:36:35,234 --> 00:36:37,403 やつの剣圧にビビっちゃった 670 00:36:37,486 --> 00:36:38,613 (とがめ)しくじった 671 00:36:38,738 --> 00:36:41,908 こんなところで 実戦経験の少なさが出たか 672 00:36:42,450 --> 00:36:43,576 (とがめ)七花… (七花)動くな! 673 00:36:44,577 --> 00:36:46,078 俺の背中から出るんじゃない 674 00:36:46,370 --> 00:36:50,291 バカ者 策の通じなかった今 そんな言葉が聞けるか! 675 00:36:51,209 --> 00:36:53,169 (宇練銀閣)びっくりした 676 00:36:53,294 --> 00:36:56,505 2回続けば もう まぐれじゃねえやな 677 00:36:56,881 --> 00:37:00,134 すっかり目が覚めちまったよ 虚刀流 678 00:37:00,259 --> 00:37:03,971 こんなに気分がいいのは オギャーと生まれた時以来だ 679 00:37:04,096 --> 00:37:06,307 そいつは どうも おはようございます 680 00:37:06,432 --> 00:37:07,099 はあ? 681 00:37:07,308 --> 00:37:10,436 そして おやすみなさい かな? 682 00:37:12,271 --> 00:37:16,150 さっきのが とんでもねえ 境地だってことくらいは分かるぜ 683 00:37:16,776 --> 00:37:20,613 しかし 同じ手が通じると思うなよ 684 00:37:20,738 --> 00:37:23,282 (とがめ)敵を手負いにさせたのは マズかったぞ 685 00:37:23,616 --> 00:37:25,534 零閃編隊 5機 686 00:37:25,618 --> 00:37:26,911 (刀の音) 687 00:37:28,246 --> 00:37:29,330 あっ… 688 00:37:30,456 --> 00:37:31,499 5連撃… 689 00:37:32,124 --> 00:37:37,755 これなら お前が多少加速しようが 減速しようが関係あるまいよ 690 00:37:38,256 --> 00:37:41,300 その程度の誤差など 軽く のみ込んでしまう 691 00:37:42,802 --> 00:37:45,012 それが あんたの 隠し玉ってわけか? 692 00:37:45,429 --> 00:37:49,016 これが? いやいや違うねー 693 00:37:49,308 --> 00:37:50,309 (刀の音) 694 00:37:50,434 --> 00:37:52,478 (血の飛び散る音) 695 00:37:52,687 --> 00:37:54,730 な 何が起きた? 696 00:37:54,981 --> 00:37:57,024 自分で自分を斬りやがった 697 00:37:57,316 --> 00:37:58,150 何のために? 698 00:37:58,526 --> 00:38:00,319 フフフフフ 699 00:38:00,403 --> 00:38:05,283 これこそ宇練金閣の 1万人斬りの秘密だよ 虚刀流 700 00:38:05,866 --> 00:38:10,705 身が鞘内(さやうち)を血で濡らし 血をため― 701 00:38:10,913 --> 00:38:15,668 じっとりと湿らせることによって 鞘走りの速度を上げる 702 00:38:16,335 --> 00:38:20,256 刀と鞘との摩擦係数を 格段に落として― 703 00:38:20,631 --> 00:38:24,051 零閃は高速へと達する 704 00:38:24,343 --> 00:38:29,307 それが斬刀・鈍 限定奥義 斬刀狩り 705 00:38:29,557 --> 00:38:32,893 斬れば斬るほど 速くなるってわけだ 706 00:38:33,311 --> 00:38:35,146 あっ ひらめいた! 707 00:38:35,563 --> 00:38:38,524 七花 今こそ戦術的撤退だ 708 00:38:38,691 --> 00:38:41,319 あやつ 放っておくと 出血多量で死ぬぞ 709 00:38:41,444 --> 00:38:42,153 却下だ 710 00:38:42,236 --> 00:38:43,404 勝機ではないか! 711 00:38:43,529 --> 00:38:45,156 そんなの勝利とは言わん 712 00:38:45,406 --> 00:38:47,491 言っただろ 偶然じゃダメだ 713 00:38:47,575 --> 00:38:48,200 うっ 714 00:38:49,744 --> 00:38:51,412 カッコいいな あんた 715 00:38:51,829 --> 00:38:52,538 はあ? 716 00:38:52,788 --> 00:38:57,376 あんたを見ていると奥の手を 隠していた自分が恥ずかしいぜ 717 00:38:57,835 --> 00:39:01,797 出し惜しみは やめだ 虚刀流のすべてを見せてやる 718 00:39:03,049 --> 00:39:03,591 やろう 719 00:39:04,091 --> 00:39:06,886 フッ ああ そうだ 720 00:39:07,219 --> 00:39:09,930 ちょっと気になったんで 聞いときてえんだけどよ 721 00:39:10,056 --> 00:39:11,223 お姉ちゃん 722 00:39:11,432 --> 00:39:15,394 あんた もしも この斬刀を あんたに引き渡したら― 723 00:39:15,519 --> 00:39:18,564 俺の望みを叶えてくれるって 言ったよな 724 00:39:18,689 --> 00:39:20,232 あっ ああ 725 00:39:20,608 --> 00:39:24,195 だったら 斬刀を 引き渡す代わりに― 726 00:39:24,528 --> 00:39:28,240 この因幡を元どおりに してもらうってのはありかい? 727 00:39:28,574 --> 00:39:29,784 それは無理だ 728 00:39:30,242 --> 00:39:34,747 すでに鳥取藩は幕府にとっては 存在しない藩になっておる 729 00:39:35,081 --> 00:39:39,126 そうでなくとも 砂漠化した地帯を 元どおりにする方法など― 730 00:39:39,251 --> 00:39:40,628 仮説さえもない 731 00:39:40,753 --> 00:39:41,670 そうか… 732 00:39:42,004 --> 00:39:46,050 じゃ まあ あんたを斬りつけた 俺の判断に― 733 00:39:46,175 --> 00:39:48,844 間違いはなかったってことか 734 00:39:49,011 --> 00:39:50,262 安心したぜ 735 00:39:50,846 --> 00:39:53,432 あんた なんで こんなことやってんだ? 736 00:39:54,433 --> 00:39:55,226 さあねぇー 737 00:39:56,018 --> 00:39:57,895 さっきも言ってた 気位ってやつか? 738 00:39:58,604 --> 00:40:01,065 (宇練銀閣)それも さあねぇー 739 00:40:01,941 --> 00:40:05,945 あれは適当に言った言葉だよ 本気にすんな 740 00:40:07,363 --> 00:40:11,283 ただ俺も何かを 守りたかっただけだよ 741 00:40:12,410 --> 00:40:15,204 何かを守りたかっただけなのに― 742 00:40:15,579 --> 00:40:19,625 守るべきもんが俺には これくらいしかなかったんだ 743 00:40:21,627 --> 00:40:22,294 そうか 744 00:40:22,628 --> 00:40:23,379 (とがめ)あ… 745 00:40:24,338 --> 00:40:25,965 じゃあ いくぜ 746 00:40:26,132 --> 00:40:30,511 (宇練銀閣)ああ 零閃は いついつでも出撃可能だ 747 00:40:31,262 --> 00:40:34,140 高速を超えた零閃を見るがいい 748 00:40:34,890 --> 00:40:38,936 そして もしも本当に そんなものがあるのなら― 749 00:40:39,478 --> 00:40:41,856 お前も奥の手とやらを見せてみろ 750 00:40:42,356 --> 00:40:44,150 ああ 見せてやる 751 00:40:44,817 --> 00:40:49,613 ただし そのころには あんたは 八つ裂きになっているだろうけどな 752 00:40:49,947 --> 00:40:50,489 あっ… 753 00:40:51,115 --> 00:40:52,074 (七花)位置について 754 00:40:52,616 --> 00:40:54,160 よーい ドン! 755 00:40:54,285 --> 00:40:56,120 零閃編隊 十機! 756 00:40:57,830 --> 00:40:58,831 あっ! 757 00:41:00,916 --> 00:41:01,667 ギャフン! 758 00:41:02,918 --> 00:41:04,837 すべてが零閃の射程範囲内? 759 00:41:05,337 --> 00:41:08,924 違うな 真上の敵には 居合抜きもねえだろー 760 00:41:09,133 --> 00:41:11,886 うー くっ 虚刀流! 761 00:41:13,596 --> 00:41:14,263 うっ 762 00:41:14,346 --> 00:41:17,850 (七花) 虚刀流七の奥義 落下狼藉 763 00:41:29,612 --> 00:41:31,489 (鐘の音) 764 00:41:32,698 --> 00:41:35,868 (七花) なあ 次はどこへ行くんだ? 765 00:41:37,495 --> 00:41:38,287 なあ 766 00:41:40,706 --> 00:41:45,711 おーい とがめ 無視すんなよ 昨日から ずっとじゃないか 767 00:41:46,295 --> 00:41:49,548 ひょっとして 俺が蹴った時に どっかケガでもしたのか? 768 00:41:49,673 --> 00:41:50,799 やかましいわ 769 00:41:50,925 --> 00:41:54,386 人が怒っているというのに 気安く話しかけ続けるな 770 00:41:54,470 --> 00:41:57,223 まったく まさか壁として 蹴飛ばすために― 771 00:41:57,389 --> 00:41:59,558 後ろに立たされていたとは 思わんかったわ 772 00:42:00,017 --> 00:42:01,977 ああ それを怒ってたんだ 773 00:42:02,061 --> 00:42:03,354 怒ってなーい! 774 00:42:03,687 --> 00:42:06,857 本当に とがめは ただの保険のつもりだったんだ 775 00:42:07,024 --> 00:42:09,568 だったら最初から そう言わんか 776 00:42:09,693 --> 00:42:12,363 守るものがあるやつは強いとか なんとか― 777 00:42:12,488 --> 00:42:14,782 変に思わせぶりなことを 言いおって 778 00:42:14,907 --> 00:42:17,201 すまん あれは口から出任せだ 779 00:42:17,284 --> 00:42:18,577 出任せとな! 780 00:42:20,037 --> 00:42:22,331 (ナレーション) 守るものがある者は強い 781 00:42:22,915 --> 00:42:25,084 それが方便ではないことを― 782 00:42:26,043 --> 00:42:29,922 生きるために守るものを 必要とする者がいることを― 783 00:42:31,090 --> 00:42:34,552 七花は今回の戦いを通じて 知ったのでした 784 00:42:35,761 --> 00:42:41,559 「刀語」 今宵(こよい)のお楽しみは ここまでにございます 785 00:42:41,934 --> 00:42:46,689 そういえば そなたは まだ斬刀の 刀身を見ておらんのではないか? 786 00:42:46,939 --> 00:42:48,774 (七花)ふーん (とがめ)ほれ 787 00:42:49,233 --> 00:42:50,651 いや いいわ 788 00:42:51,527 --> 00:42:56,115 結局 俺は銀閣の零閃を 目でとらえることができなかった 789 00:42:57,199 --> 00:43:00,828 それならば それがすべてだと思うから 790 00:43:01,954 --> 00:43:02,705 そうか 791 00:43:03,330 --> 00:43:07,501 なあ これから因幡はどうなる? 下酷城は? 792 00:43:08,294 --> 00:43:09,962 (とがめ)どうにもならぬな 793 00:43:10,546 --> 00:43:14,008 もはやあそこは 幕府の管轄とも言えぬ 794 00:43:14,508 --> 00:43:16,468 ゆえに朽ち果てるだけだ 795 00:43:16,927 --> 00:43:20,806 それでも 私やそなたよりは ずっと長く― 796 00:43:21,307 --> 00:43:25,394 ひょっとしたら千年先まで あそこにあり続けるであろうが 797 00:43:25,769 --> 00:43:28,647 しかし それはもう城ではない 798 00:43:29,356 --> 00:43:30,441 そうか 799 00:43:30,566 --> 00:43:34,987 剣客も刀も自然には 勝てないということなのかな 800 00:43:35,321 --> 00:43:37,698 結局そういうことになるのか 801 00:43:37,823 --> 00:43:39,116 なりそうだな 802 00:43:39,325 --> 00:43:40,451 ふーん 803 00:43:41,660 --> 00:43:46,498 しかし とがめ 宇練の 最後のセリフは カッコよかったな 804 00:43:47,666 --> 00:43:52,379 ただカッコいいんじゃなくて 個性がよく出てたっていうかさ 805 00:43:52,880 --> 00:43:55,174 ああいうのも口癖っていうのかい 806 00:43:55,507 --> 00:43:57,176 (とがめ)少し違うな 807 00:43:57,509 --> 00:43:59,970 あれは散り際の一言だ 808 00:44:00,054 --> 00:44:06,393 死に際の言葉 末期の言葉だ 遺言といってもよいかもしれぬ 809 00:44:06,852 --> 00:44:09,855 口癖とは異なり 一生に一度― 810 00:44:09,980 --> 00:44:14,693 黄泉路(よみじ)に旅立たんとする時にしか 口にすることを許されぬセリフだ 811 00:44:17,696 --> 00:44:18,572 そうか 812 00:44:18,989 --> 00:44:20,199 気になるのか? 813 00:44:20,574 --> 00:44:25,996 確かに散り際の一言は 口癖よりも さらに効果的なセリフとなろう 814 00:44:26,205 --> 00:44:29,375 一生に たった一度の 言葉であるがゆえにな 815 00:44:29,958 --> 00:44:31,502 だがしかし 七花 816 00:44:31,585 --> 00:44:35,964 そなたは その一度の機会が そもそも許されておらぬのだからな 817 00:44:36,799 --> 00:44:40,552 散り際の一言については 一切 考えずともよい 818 00:44:41,053 --> 00:44:41,762 ヒヒ… 819 00:44:45,224 --> 00:44:48,894 (砂嵐の音) 820 00:44:49,603 --> 00:44:53,607 (宇練銀閣)これでやっと ぐっすり眠れる 821 00:44:56,402 --> 00:45:02,408 ♪~ 822 00:46:18,859 --> 00:46:24,865 ~♪