1 00:00:15,682 --> 00:00:17,225 (町民)おはよう 善二(ぜんじ)さん 2 00:00:17,308 --> 00:00:18,518 (善二)おはようございます 3 00:00:18,601 --> 00:00:22,522 おっ 昨日よりも美人ですね 何かいいことでも? 4 00:00:22,605 --> 00:00:24,566 (町民)嫌だ ハハッ 5 00:00:24,649 --> 00:00:27,485 (春画の店主)おう 善二 朝から精が出るな 6 00:00:27,569 --> 00:00:29,195 いやいや 旦那こそ 7 00:00:29,279 --> 00:00:31,781 よかったら仕事帰りに 寄っていってくださいね 8 00:00:31,865 --> 00:00:34,659 (春画の店主) 考えとくよ ハハハハ… 9 00:00:35,201 --> 00:00:36,411 フッ 10 00:00:37,078 --> 00:00:38,621 さてと… 11 00:00:50,592 --> 00:00:53,511 (足音) 12 00:00:53,595 --> 00:00:54,846 (ふすまが開く音) 13 00:00:54,929 --> 00:00:57,515 (善二)すみません 旦那様 遅れました 14 00:01:00,935 --> 00:01:03,188 あっ もしかして 例の? 15 00:01:03,897 --> 00:01:05,523 (重蔵(じゅうぞう))うん 16 00:01:05,607 --> 00:01:07,525 あとは任せる 17 00:01:07,609 --> 00:01:10,695 詳しい話は お前からしておけ 18 00:01:18,661 --> 00:01:20,914 アハハハ… 19 00:01:22,999 --> 00:01:28,129 ♪~ 20 00:02:46,291 --> 00:02:51,296 ~♪ 21 00:02:56,759 --> 00:03:00,096 (善二)俺は 善二 須賀(すが)屋の手代を任せられてる 22 00:03:00,180 --> 00:03:01,139 エヘヘッ 23 00:03:01,806 --> 00:03:03,683 (甚夜(じんや))甚夜と申します 24 00:03:04,851 --> 00:03:06,811 (善二)おう… よろしくな 25 00:03:06,895 --> 00:03:10,815 早速だけど 旦那様から どんだけ 話を聞いてる? 26 00:03:11,482 --> 00:03:13,067 重蔵殿には 27 00:03:13,151 --> 00:03:16,237 血こそ つながっていないが 大切な娘がいる 28 00:03:16,863 --> 00:03:19,115 その娘が 鬼に襲われようとしているので 29 00:03:19,199 --> 00:03:22,202 それを討ち払え… くらいでしょうか 30 00:03:22,285 --> 00:03:25,955 依頼の詳しい内容は 聞いてねえのか 31 00:03:26,581 --> 00:03:27,999 んん… 32 00:03:28,666 --> 00:03:30,043 あんたに頼みたいのは 33 00:03:30,126 --> 00:03:33,379 今年で13になる 奈津(なつ)お嬢様の護衛だ 34 00:03:33,463 --> 00:03:35,965 旦那様は 目に入れても痛くないくらいに 35 00:03:36,049 --> 00:03:37,926 溺愛しているんだが… 36 00:03:38,009 --> 00:03:42,722 3日ほど前からだな お嬢さんの部屋に面した庭先で 37 00:03:42,805 --> 00:03:46,893 “娘を返せ”と繰り返す鬼が 出るんだと 38 00:03:46,976 --> 00:03:48,561 娘を返せ… 39 00:03:48,645 --> 00:03:50,146 ああ つまり 40 00:03:50,229 --> 00:03:54,275 鬼は 奈津お嬢さんを娘だと思って さらおうとしているらしい 41 00:03:54,359 --> 00:03:55,902 -(奈津)善二! -(善二)ん? 42 00:03:55,985 --> 00:03:58,154 (奈津) どこでサボってるの もう! 43 00:03:58,238 --> 00:04:01,032 お父様に言いつけるわよ 44 00:04:02,575 --> 00:04:04,369 (善二)奈津お嬢さん! 45 00:04:04,452 --> 00:04:07,080 (奈津)あんたが お父様が 呼んだっていう護衛? 46 00:04:07,163 --> 00:04:08,957 随分 若いわね 47 00:04:09,040 --> 00:04:11,417 -(甚夜)甚夜と申します -(奈津)挨拶なんていらないわ 48 00:04:11,501 --> 00:04:12,669 帰ってもらって 49 00:04:12,752 --> 00:04:15,546 (善二)…って お嬢さん いきなりそれは 50 00:04:15,630 --> 00:04:16,965 どうせ 金目当てで 51 00:04:17,048 --> 00:04:19,926 うさんくさい話に飛びついた ゴロツキでしょう? 52 00:04:20,009 --> 00:04:22,095 いや 旦那様が選んだんだから 53 00:04:22,178 --> 00:04:24,097 ゴロツキってほどじゃ ないと思いますよ 54 00:04:24,180 --> 00:04:26,432 -(奈津)うるさいわね! -(善二)ひいっ! 55 00:04:26,516 --> 00:04:28,977 浪人が護衛なんて嫌なの 56 00:04:29,060 --> 00:04:31,938 あんたに払うお金なんて 一銭もないわ 57 00:04:32,021 --> 00:04:34,065 そいつを早く追い出しなさいよ 58 00:04:34,148 --> 00:04:35,608 (善二)えっ! ええ~ 59 00:04:35,608 --> 00:04:38,236 (善二)えっ! ええ~ 60 00:04:35,608 --> 00:04:38,236 {\an8}(ふすまが閉まる音) 61 00:04:39,821 --> 00:04:42,365 いやあ 親子そろって不器用っつうか 62 00:04:42,448 --> 00:04:45,618 無愛想っつうか ハハハハ… 63 00:04:46,202 --> 00:04:47,537 すまん 64 00:04:54,002 --> 00:04:55,712 (足音) 65 00:04:55,795 --> 00:04:57,338 (善二)お嬢さん 66 00:04:57,422 --> 00:04:58,631 善二? 67 00:04:58,715 --> 00:05:01,884 あんた 何してるのよ こんな夜更けに 68 00:05:01,968 --> 00:05:03,761 (善二)いや まあ お嬢さんが 69 00:05:03,845 --> 00:05:06,472 せっかくの護衛を 帰しちまったもんですから 70 00:05:06,556 --> 00:05:08,558 こんな俺でも いれば案外 71 00:05:08,641 --> 00:05:11,936 鳥よけならぬ 鬼よけになるんじゃないかと 72 00:05:12,645 --> 00:05:14,063 善二… 73 00:05:15,189 --> 00:05:17,400 そんなこと言って どうせ あんたも 74 00:05:17,483 --> 00:05:20,403 私が嘘(うそ)をついていると 思ってるんでしょ 75 00:05:20,486 --> 00:05:23,573 (善二)いやあ ハハハハ… 76 00:05:25,241 --> 00:05:26,868 やっぱりね 77 00:05:26,951 --> 00:05:31,789 お父様も嘘だと思ってるから あんな浪人をあてがったのよ 78 00:05:31,873 --> 00:05:33,666 そうに決まってるわ 79 00:05:34,292 --> 00:05:36,627 そいつは違うと思いますよ 80 00:05:36,711 --> 00:05:39,505 旦那様は お嬢さんのことを いつも心配して 81 00:05:39,589 --> 00:05:41,632 いつも気にかけています 82 00:05:41,716 --> 00:05:44,302 それだけは 間違いありません 83 00:05:44,385 --> 00:05:48,389 (奈津)でも 私は お父様の本当の娘じゃ… 84 00:05:48,473 --> 00:05:50,350 (鬼)返せ… 85 00:05:50,433 --> 00:05:52,101 ああっ ああ… 86 00:05:52,769 --> 00:05:54,062 お嬢さん どうしたんで? 87 00:05:54,145 --> 00:05:56,272 来た 来たの! 88 00:05:56,355 --> 00:05:57,565 来たって 何が? 89 00:05:57,648 --> 00:06:00,234 (鬼)娘を返せ… 90 00:06:01,944 --> 00:06:04,822 (善二)おいおい まさかだろ 91 00:06:04,906 --> 00:06:05,907 善二! 92 00:06:05,990 --> 00:06:08,826 (善二)お嬢さん 部屋から出ないでくだせえ 93 00:06:11,537 --> 00:06:14,165 (鬼)娘を… 94 00:06:14,248 --> 00:06:15,375 -(鬼)返せ! -(奈津)キャア! 95 00:06:17,085 --> 00:06:20,004 (鬼)娘を返せ 96 00:06:20,088 --> 00:06:23,716 娘を返せ 97 00:06:23,800 --> 00:06:27,512 (善二)お… お嬢さん 大丈夫… ですからね 98 00:06:28,763 --> 00:06:30,098 (斬る音) 99 00:06:39,023 --> 00:06:40,566 名は何という 100 00:06:40,650 --> 00:06:42,944 (鬼)ああ… 101 00:06:43,027 --> 00:06:46,072 娘を返せ 102 00:06:46,155 --> 00:06:51,202 娘を返せー! 103 00:06:58,835 --> 00:07:00,294 (鬼の悲鳴) 104 00:07:02,755 --> 00:07:04,882 つ… 強(つえ)え 105 00:07:06,968 --> 00:07:08,386 消えた 106 00:07:08,928 --> 00:07:10,972 お嬢さん 大丈夫で? 107 00:07:11,055 --> 00:07:13,599 (奈津)あんた さっきの浪人? 108 00:07:14,600 --> 00:07:18,187 さて 私の腕は いくらで買ってもらえる? 109 00:07:20,106 --> 00:07:21,732 死んだの? 110 00:07:24,277 --> 00:07:27,697 鬼は死ぬと 白い蒸気になって姿を消す 111 00:07:27,780 --> 00:07:31,993 今まで それ以外の死に方をする 鬼なぞ見たことがない 112 00:07:32,076 --> 00:07:34,454 (善二)ってこたあ あの鬼は… 113 00:07:34,537 --> 00:07:36,456 (甚夜)また来るだろう 114 00:07:36,539 --> 00:07:39,375 あの鬼 もしかしたら… 115 00:07:50,636 --> 00:07:52,430 (善二)昨日は助かった 116 00:07:52,513 --> 00:07:54,974 鬼は また来ると言っていたな 117 00:07:55,057 --> 00:07:57,268 すまんが今夜も頼む 118 00:07:57,351 --> 00:07:59,187 (甚夜)もちろんだ 119 00:07:59,270 --> 00:08:00,897 善二殿 120 00:08:00,980 --> 00:08:04,442 少し 奈津殿の話を 聞かせてもらいたいのだが 121 00:08:04,525 --> 00:08:05,526 (善二)お嬢さんの? 122 00:08:05,610 --> 00:08:10,198 “娘を返せ” あの鬼の言葉が少しな 123 00:08:10,281 --> 00:08:11,949 ああ そうか 124 00:08:12,033 --> 00:08:16,495 お嬢さんの本当の両親は 旦那様の親戚筋でな 125 00:08:16,579 --> 00:08:18,372 もう死んでる 126 00:08:18,456 --> 00:08:22,793 お前の懸念も分かるが 安心しろ それはない 127 00:08:22,877 --> 00:08:26,631 そもそも もしそうなら 旦那様が引き取るわけないしな 128 00:08:26,714 --> 00:08:27,924 (甚夜)ん? 129 00:08:28,007 --> 00:08:28,925 (善二)あっ… 130 00:08:29,800 --> 00:08:32,386 鬼に奥方を殺されたんだ 131 00:08:32,470 --> 00:08:35,056 息子も出ていって それっきりらしい 132 00:08:35,139 --> 00:08:38,351 旦那様は それも鬼のせいだと言ってる 133 00:08:39,852 --> 00:08:44,649 旦那様にとっちゃ 鬼は 家族を奪った仇(かたき)だ 134 00:08:44,732 --> 00:08:47,360 もしも お嬢さんが鬼の娘なら 135 00:08:47,443 --> 00:08:51,822 その可能性が少しでもあるなら 引き取るはずがない 136 00:08:52,323 --> 00:08:53,741 そうか 137 00:09:09,257 --> 00:09:11,300 -(重蔵)奈津 -(奈津)え? 138 00:09:11,384 --> 00:09:14,762 護衛についた男 問題ないか? 139 00:09:14,845 --> 00:09:16,889 (奈津) うん 浪人って言ってたけど 140 00:09:16,973 --> 00:09:19,517 そんなに悪いやつじゃ なかったみたい 141 00:09:19,600 --> 00:09:22,228 それに お父様が選んだ人だし 142 00:09:22,311 --> 00:09:25,147 ありがとう 心配してくれて 143 00:09:25,231 --> 00:09:29,485 当然だろう 娘を心配せん親などおらん 144 00:09:29,568 --> 00:09:30,987 あ… 145 00:09:34,573 --> 00:09:36,409 ねえ お父様 146 00:09:37,076 --> 00:09:39,120 何で あの男を雇ったの? 147 00:09:41,789 --> 00:09:42,999 ハァー 148 00:09:43,791 --> 00:09:49,338 近頃 江戸には 鬼が出るという噂(うわさ)が流れている 149 00:09:49,422 --> 00:09:54,427 しかし 同時に 刀1本で鬼を討つ男もいるらしい 150 00:09:54,510 --> 00:09:56,554 それが あの浪人… 151 00:09:56,637 --> 00:10:01,058 ああ 金さえ払えば いかなる鬼でも討つ 152 00:10:01,142 --> 00:10:05,896 腕も確かなようだし 何より あれは信頼できる 153 00:10:05,980 --> 00:10:08,816 お前の護衛には ふさわしかろう 154 00:10:09,650 --> 00:10:13,237 お父様は信じてくれるんだね 155 00:10:18,075 --> 00:10:20,703 (セミの鳴き声) 156 00:10:20,786 --> 00:10:25,458 (奈津)怖い話なら 逸話 講談 いろいろある 157 00:10:26,125 --> 00:10:29,545 魑魅魍魎(ちみもうりょう) 柳の下の幽霊 158 00:10:29,629 --> 00:10:34,008 皿屋敷 鬼 牛の首 159 00:10:34,091 --> 00:10:37,887 でも 作りものの怪談なんて 怖くない 160 00:10:41,265 --> 00:10:44,060 (店の者)旦那様 本当は つらいんだろうなあ 161 00:10:44,143 --> 00:10:46,771 (店の者)奥方様は 鬼に殺され 162 00:10:46,854 --> 00:10:49,106 息子は 鬼女に かどわかされてさあ 163 00:10:49,190 --> 00:10:52,276 (店の者)けど 息子さんが 帰ってくると思ってるさ 164 00:10:52,360 --> 00:10:55,613 だから 男じゃなくて 女を養子に… 165 00:10:55,696 --> 00:11:00,701 (奈津)怖いのは いつだって 掛け値のない本当のことだもの 166 00:11:03,996 --> 00:11:05,915 (善二) あっ お嬢さん 出てきちゃ… 167 00:11:05,998 --> 00:11:07,625 (奈津)何で善二がいるの? 168 00:11:07,708 --> 00:11:11,045 (善二)いやあ 昨日の失態を 挽回しておこうかな~ 169 00:11:11,128 --> 00:11:13,506 …なんて アハハハハ 170 00:11:13,589 --> 00:11:16,717 ふーん 別にどうでもいいけど 171 00:11:16,801 --> 00:11:20,513 冷てえ 許してくださいな お嬢さん 172 00:11:20,596 --> 00:11:24,683 なら 今度 どこか連れてってよ それで勘弁してあげる 173 00:11:24,767 --> 00:11:25,851 もちろん! 174 00:11:25,935 --> 00:11:27,812 そんなことでいいんでしたら いくらでも 175 00:11:27,895 --> 00:11:29,271 (善二と奈津の笑い声) 176 00:11:29,897 --> 00:11:32,483 ねえ あんた名前は? 177 00:11:32,566 --> 00:11:33,776 甚夜だ 178 00:11:33,859 --> 00:11:37,822 ふーん 甚夜ね なら そう呼ばせてもらうわ 179 00:11:37,905 --> 00:11:41,117 お父様は 随分 あんたを買ってるみたい 180 00:11:41,617 --> 00:11:44,995 だから 私も とりあえずは信用するわ 181 00:11:45,079 --> 00:11:48,541 奈津殿は 随分と あの人を慕っているのだな 182 00:11:48,624 --> 00:11:52,002 当たり前でしょ ここまで育ててくれたんだから 183 00:11:52,086 --> 00:11:53,921 感謝しないわけないじゃない 184 00:11:55,089 --> 00:11:58,092 なるほど 仲のいい親子だ 185 00:11:58,175 --> 00:12:01,470 重蔵殿も 気にかけているようだしな 186 00:12:01,554 --> 00:12:03,681 ん… そうかしら 187 00:12:04,807 --> 00:12:07,852 ああ そういえば 小耳に挟んだのだが 188 00:12:07,935 --> 00:12:09,395 重蔵殿には息子が… 189 00:12:09,478 --> 00:12:10,312 知らない! 190 00:12:11,063 --> 00:12:14,275 出ていった息子のことなんか 知らないわよ 191 00:12:14,358 --> 00:12:15,985 そうか 192 00:12:16,819 --> 00:12:18,946 それは すまなかった 193 00:12:20,865 --> 00:12:22,074 (奈津)ねえ… 194 00:12:22,158 --> 00:12:25,494 鬼と人の間に 子供って生まれるの? 195 00:12:25,578 --> 00:12:26,787 (甚夜)生まれる 196 00:12:27,371 --> 00:12:30,541 じゃあ あの鬼が 返せって言ってるのは 197 00:12:30,624 --> 00:12:32,126 もしかしたら… 198 00:12:32,209 --> 00:12:34,879 あの鬼は お前の親などではない 199 00:12:34,962 --> 00:12:36,797 何で あんたにそんなことが! 200 00:12:36,881 --> 00:12:38,841 私は あの鬼を知っているからだ 201 00:12:38,924 --> 00:12:40,050 (2人)えっ? 202 00:12:40,134 --> 00:12:42,928 (甚夜)少なからず因縁があってな 203 00:12:43,012 --> 00:12:45,389 あの鬼は お前の親ではない 204 00:12:45,473 --> 00:12:47,767 間違いなく… な 205 00:12:47,850 --> 00:12:49,685 本当に? 206 00:12:49,769 --> 00:12:51,270 (甚夜)嘘はつかん 207 00:12:54,732 --> 00:12:57,193 鬼は どうやって 生まれてくると思う? 208 00:12:57,276 --> 00:13:00,821 んっ どうって… そりゃあな 209 00:13:00,905 --> 00:13:04,700 普通は親からだと思うが 実際 どうなんだ? 210 00:13:04,783 --> 00:13:07,828 (甚夜) 鬼の生まれ方は さまざまだ 211 00:13:07,912 --> 00:13:11,415 鬼同士が つがいとなり 子をなす場合もあれば 212 00:13:11,499 --> 00:13:15,878 戯れに人を犯し その結果として 生まれてくることもある 213 00:13:16,587 --> 00:13:19,131 中には 無から生ずる鬼もいてな 214 00:13:19,215 --> 00:13:20,216 無から? 215 00:13:20,299 --> 00:13:22,760 思いには力がある 216 00:13:22,843 --> 00:13:24,637 それが暗ければ なおさらだ 217 00:13:25,679 --> 00:13:32,186 憤怒 憎悪 嫉妬 執着 悲哀 飢餓 218 00:13:32,269 --> 00:13:36,398 深く沈み込む思いは よどみ 凝り固まり 219 00:13:36,482 --> 00:13:38,567 いずれ 1つの形となる 220 00:13:39,318 --> 00:13:44,281 無から生ずる鬼とは すなわち 肉を持った想念だ 221 00:13:44,365 --> 00:13:46,242 ああ ああ… 222 00:13:48,285 --> 00:13:50,454 名を聞かせてもらう 223 00:13:50,538 --> 00:13:52,414 娘を返せ 224 00:13:54,750 --> 00:13:56,377 ぐああ! 225 00:13:56,460 --> 00:13:58,837 (鬼の悲鳴) 226 00:13:58,921 --> 00:14:00,047 ああっ… 227 00:14:00,130 --> 00:14:01,674 名乗るほどの知能はないか 228 00:14:01,674 --> 00:14:03,092 名乗るほどの知能はないか 229 00:14:01,674 --> 00:14:03,092 {\an8}(鬼)娘を返せ… 230 00:14:03,092 --> 00:14:04,009 {\an8}(鬼)娘を返せ… 231 00:14:04,093 --> 00:14:06,470 何やってんだ そんな悠長なことしないで… 232 00:14:06,554 --> 00:14:07,555 (甚夜)斬っていいのか? 233 00:14:07,638 --> 00:14:09,223 当たり前だろうが! さっさと… 234 00:14:09,306 --> 00:14:11,433 私は 奈津殿に聞いている 235 00:14:12,601 --> 00:14:14,019 えっ… 236 00:14:14,103 --> 00:14:16,981 もう一度 聞こう 斬っていいのか? 237 00:14:18,816 --> 00:14:22,695 たとえ ここで斬り捨てたとしても 鬼は また現れる 238 00:14:24,405 --> 00:14:25,406 何で… 239 00:14:25,489 --> 00:14:29,827 当然だ この鬼は 奈津殿の思いなのだから 240 00:14:29,910 --> 00:14:30,744 あ… 241 00:14:30,828 --> 00:14:33,289 (甚夜)奈津殿の願いに応え 現れ 242 00:14:33,372 --> 00:14:37,626 適度に騒ぎを起こし 大好きな父の関心を引く 243 00:14:37,710 --> 00:14:38,836 (奈津)そうか… 244 00:14:38,919 --> 00:14:41,297 (甚夜)本当の家族のように 心配してもらう 245 00:14:42,089 --> 00:14:45,759 聞きたくない言葉を 垂れ流すやからに襲いかかる 246 00:14:45,843 --> 00:14:48,470 なんとも都合のいい話だ 247 00:14:48,554 --> 00:14:51,974 (奈津)そうか ようやく分かった気がする 248 00:14:52,057 --> 00:14:55,519 (甚夜)だが 奈津殿は それを願っていたんだろ? 249 00:14:55,603 --> 00:14:56,812 やめて! 250 00:14:58,188 --> 00:15:03,360 なぜ あの鬼が あれほどまで醜い姿をしているのか 251 00:15:03,444 --> 00:15:07,197 斬ったところで すぐによみがえる 何度でも 252 00:15:07,281 --> 00:15:10,701 奈津殿が満足するまで この鬼が消えることはない 253 00:15:10,784 --> 00:15:13,621 何よ それ じゃあ どうすれば! 254 00:15:13,704 --> 00:15:17,333 ただ ひと言 こいつを“斬れ”と言えばいい 255 00:15:18,500 --> 00:15:21,045 (奈津)見たくないものを 見ないようにして 256 00:15:21,128 --> 00:15:23,672 弱い自分を隠して 257 00:15:23,756 --> 00:15:25,841 でも 誰かに愛されたくて 258 00:15:26,467 --> 00:15:29,303 なのに 信じられなかった 259 00:15:30,095 --> 00:15:33,307 だから 本当の家族のように 鬼に襲われたら 260 00:15:33,390 --> 00:15:37,227 父は 私を 大切に思ってくれたかもなんて… 261 00:15:37,311 --> 00:15:42,024 私の中の醜い思い それが形になった 262 00:15:42,775 --> 00:15:45,819 あの鬼は… 私 263 00:15:45,903 --> 00:15:47,279 (鬼の悲鳴) 264 00:15:48,072 --> 00:15:51,492 本当に斬られないといけないのは 私… 265 00:15:51,575 --> 00:15:53,786 あいつが斬れって言ってるのは 鬼だ! 266 00:15:53,869 --> 00:15:55,162 あなたじゃありません 267 00:15:55,245 --> 00:15:57,539 たとえ あの鬼が お嬢さんの思いでも 268 00:15:57,623 --> 00:15:59,333 それが全てじゃない 269 00:15:59,416 --> 00:16:00,793 俺は知ってます 270 00:16:00,876 --> 00:16:04,171 旦那様が大好きなお嬢さんのこと 271 00:16:04,254 --> 00:16:07,091 そんでもって 旦那様は絶対に 272 00:16:07,174 --> 00:16:10,094 お嬢さんを 大切な家族だと思っています! 273 00:16:10,177 --> 00:16:13,138 (奈津)うっ うう… 274 00:16:13,222 --> 00:16:16,558 親子そろって 言葉が足りないんですよ 275 00:16:16,642 --> 00:16:19,979 そろそろ まっすぐ向き合って 腹割って話して 276 00:16:20,062 --> 00:16:22,815 ちゃんと家族をやりましょうや 277 00:16:22,898 --> 00:16:24,441 善二… 278 00:16:24,525 --> 00:16:25,442 エヘヘッ 279 00:16:30,864 --> 00:16:31,907 斬って! 280 00:16:31,990 --> 00:16:33,200 フッ… 281 00:16:37,496 --> 00:16:39,707 (奈津)そいつは私の思い 282 00:16:39,790 --> 00:16:42,209 本当のことが怖くて 283 00:16:42,292 --> 00:16:45,921 いろんなものに蓋をしてきた 今までの私 284 00:16:46,004 --> 00:16:47,881 これからは違う 285 00:16:47,965 --> 00:16:49,425 そうなれるように頑張る 286 00:16:49,425 --> 00:16:50,968 そうなれるように頑張る 287 00:16:49,425 --> 00:16:50,968 {\an8}(鬼の雄たけび) 288 00:16:51,051 --> 00:16:52,469 だから… 289 00:17:03,105 --> 00:17:05,733 (善二)終わった… のか? 290 00:17:09,486 --> 00:17:10,863 (奈津)フッ… 291 00:17:17,077 --> 00:17:20,456 (奈津の寝息) 292 00:17:27,463 --> 00:17:28,213 {\an8}(鬼のうなり声) 293 00:17:28,213 --> 00:17:29,840 {\an8}(鬼のうなり声) 294 00:17:28,213 --> 00:17:29,840 やはりな 295 00:17:29,840 --> 00:17:29,923 {\an8}(鬼のうなり声) 296 00:17:29,923 --> 00:17:31,467 {\an8}(鬼のうなり声) 297 00:17:29,923 --> 00:17:31,467 お前が 奈津殿の思いから 生まれたのなら 298 00:17:31,467 --> 00:17:33,552 お前が 奈津殿の思いから 生まれたのなら 299 00:17:33,635 --> 00:17:37,765 奈津殿が否定した時点で その存在意義を失う 300 00:17:37,848 --> 00:17:40,017 にもかかわらず… 301 00:17:40,100 --> 00:17:44,480 須賀屋には もう1人 鬼になり得る女がいた 302 00:17:44,563 --> 00:17:47,441 鬼に奥方を殺されたんだ 303 00:17:47,524 --> 00:17:49,234 (甚夜)あの鬼が何度も 304 00:17:49,318 --> 00:17:52,196 “娘を返せ”と 繰り返していたのは 305 00:17:52,279 --> 00:17:57,367 奈津殿以外に もうひとつ 別の思いが混じっていたから 306 00:18:00,204 --> 00:18:02,539 (鬼)ああ… 307 00:18:03,165 --> 00:18:07,002 娘を返せ… 308 00:18:07,086 --> 00:18:10,756 娘を返せ 309 00:18:10,839 --> 00:18:16,345 (甚夜)つまり 鬼の娘とは 重蔵の妻が産んだ子供 310 00:18:18,889 --> 00:18:23,727 こんな形で会うことになるとは 思ってもいませんでした 311 00:18:23,811 --> 00:18:28,106 正直なところ 私は あなたを覚えていない 312 00:18:28,190 --> 00:18:32,569 最後に あなたの名を聞かせてほしい 313 00:18:32,653 --> 00:18:36,990 (鬼)娘を返せ 314 00:18:39,952 --> 00:18:43,622 皆 今を生きている 315 00:18:43,705 --> 00:18:46,375 過去に足を止めては いられないのです 316 00:18:46,458 --> 00:18:48,085 だから— 317 00:18:49,169 --> 00:18:51,338 もう眠ってください 318 00:18:51,421 --> 00:18:54,299 (鬼)娘を返せ… 319 00:18:54,383 --> 00:18:55,801 (斬る音) 320 00:19:00,848 --> 00:19:02,432 (甚夜)母上… 321 00:19:07,896 --> 00:19:11,358 甚夜 今回は 本当に世話になったな 322 00:19:11,441 --> 00:19:13,026 ほら お嬢さんも 323 00:19:13,110 --> 00:19:14,153 う… うん 324 00:19:14,945 --> 00:19:17,114 (善二)そんなんじゃ また鬼が出ますよ 325 00:19:17,197 --> 00:19:20,117 あっ… 分かってるわよ! 326 00:19:20,826 --> 00:19:22,119 その… 327 00:19:22,202 --> 00:19:24,746 いろいろと直してみるわ 328 00:19:24,830 --> 00:19:27,624 すぐには うまくいかないと思うけど 329 00:19:29,376 --> 00:19:31,253 ありがとう 330 00:19:31,336 --> 00:19:34,590 礼はいらない 報酬は受け取った 331 00:19:34,673 --> 00:19:37,134 私は仕事をしただけ… 332 00:19:37,217 --> 00:19:38,218 いや… 333 00:19:38,302 --> 00:19:40,762 私は 借りを返しに来た 334 00:19:40,846 --> 00:19:41,680 借り? 335 00:19:41,763 --> 00:19:45,726 長く生きれば大人になれる というものでもないが 336 00:19:45,809 --> 00:19:49,813 それでも 歳月を重ねた分 気付くこともある 337 00:19:49,897 --> 00:19:53,942 子供の頃は 目に見えるものだけが全てだった 338 00:19:54,026 --> 00:19:55,819 傷つけるのはいけないと 339 00:19:56,528 --> 00:20:00,032 そこに 隠れたものがあるのだと 想像するには 340 00:20:00,115 --> 00:20:02,117 私は幼すぎた 341 00:20:02,910 --> 00:20:04,745 あの時 見捨てるしかできなかった— 342 00:20:04,828 --> 00:20:08,123 己の未熟の借りを返したかった 343 00:20:09,041 --> 00:20:12,169 全然 意味が分からないんだけど 344 00:20:12,252 --> 00:20:15,964 親孝行はしておいたほうがいい という話だ 345 00:20:16,048 --> 00:20:19,218 (奈津)あんたに言われなくたって あっ… 346 00:20:19,843 --> 00:20:21,011 ではな 347 00:20:28,769 --> 00:20:30,938 -(重蔵)行ったか -(奈津・善二)あっ 348 00:20:31,021 --> 00:20:32,147 はい 349 00:20:32,230 --> 00:20:35,067 つうか 旦那様も 見送りゃあよかったでしょうに 350 00:20:35,150 --> 00:20:37,236 その必要はなかろう 351 00:20:37,319 --> 00:20:41,531 ひと目 見た時から 必ず成してくれると思っていた 352 00:20:41,615 --> 00:20:43,617 お嬢さんも言ってましたが 353 00:20:43,700 --> 00:20:46,495 旦那様は えらい甚夜を買ってますよね 354 00:20:46,578 --> 00:20:49,039 {\an8}何か理由でも あるんですか? 355 00:20:49,122 --> 00:20:51,083 {\an8}バカを聞くな 356 00:20:51,166 --> 00:20:53,752 {\an8}子を見間違える親が いるものか 357 00:20:53,835 --> 00:20:54,670 (善二)はい? 358 00:20:54,753 --> 00:20:56,797 (重蔵) お前は さっさと仕事に戻れ 359 00:20:56,880 --> 00:20:59,258 そうでなくば 番頭が遠のくぞ 360 00:20:59,341 --> 00:21:00,717 (善二)いや そいつは勘弁! 361 00:21:00,801 --> 00:21:03,178 では お嬢さん 俺はこれで 362 00:21:04,763 --> 00:21:06,807 -(奈津)あ… あの! -(重蔵)ん? 363 00:21:06,890 --> 00:21:11,269 お… お父様 私にも何か手伝えますか? 364 00:21:11,353 --> 00:21:13,689 (重蔵)ん… どうした 急に 365 00:21:13,772 --> 00:21:18,777 だって お… 親孝行は しておいたほうがいいって 366 00:21:23,615 --> 00:21:28,078 (重蔵)お前は そんなことを 気にする必要はない 367 00:21:28,161 --> 00:21:28,996 あっ… 368 00:21:29,079 --> 00:21:30,789 (重蔵)子供はな 369 00:21:30,872 --> 00:21:34,501 親より長生きするのが 一番の孝行だろう 370 00:21:35,043 --> 00:21:36,503 お父様… 371 00:21:36,586 --> 00:21:40,424 私は それだけで満足なのだ 372 00:21:44,636 --> 00:21:48,890 (奈津)あっ… お父様! それでも 何か手伝えることは… 373 00:22:03,530 --> 00:22:04,531 (甚夜)フッ… 374 00:22:11,079 --> 00:22:16,084 ♪~ 375 00:23:35,997 --> 00:23:41,002 {\an8}~♪