1 00:00:02,377 --> 00:00:04,045 (又六(またろく)の妻)そういや あんた 2 00:00:04,129 --> 00:00:06,631 昨日 泰秀(やすひで)様に呼ばれたんだろ? 3 00:00:06,715 --> 00:00:08,800 何の話だったんだい? 4 00:00:08,883 --> 00:00:11,011 (又六)ヘヘッ 泰秀様がな 5 00:00:11,094 --> 00:00:14,180 俺のために 刀を用意してくださったんだ 6 00:00:14,264 --> 00:00:15,515 (又六の妻)刀を? 7 00:00:15,598 --> 00:00:18,685 俺の仕事ぶりが 目に留まったらしくてな 8 00:00:19,269 --> 00:00:21,521 “毎日 尽くしてもらっている お前には” 9 00:00:21,604 --> 00:00:25,734 “報いるものがなければ” なーんて言われちまってよお 10 00:00:25,817 --> 00:00:27,736 (又六の妻)へえ それが! 11 00:00:31,031 --> 00:00:32,115 どうだ? 12 00:00:32,198 --> 00:00:33,658 へえ~ 13 00:00:33,742 --> 00:00:36,828 (又六)玉川(たまがわ)って刀剣商に寄って もらってきた 14 00:00:36,911 --> 00:00:38,830 立派な刀だねえ 15 00:00:38,913 --> 00:00:41,958 だろう? ヘヘヘヘッ 16 00:00:42,042 --> 00:00:47,213 ♪~ 17 00:02:06,918 --> 00:02:11,923 ~♪ 18 00:02:12,006 --> 00:02:15,426 (甚夜(じんや)) 鬼を妻にした男が打った妖刀か 19 00:02:15,510 --> 00:02:16,719 (直次(なおつぐ))はい 20 00:02:16,803 --> 00:02:19,931 甚(じん)殿の仕事の範ちゅうからは 若干 それますが 21 00:02:20,014 --> 00:02:22,684 一応 お伝えしておこうかと 22 00:02:22,767 --> 00:02:23,977 (甚夜)面白い 23 00:02:25,979 --> 00:02:26,813 (おふう)フフッ 24 00:02:26,896 --> 00:02:30,316 そうしていると まるで 仲のよい夫婦ですね 25 00:02:30,400 --> 00:02:33,695 (おふう) フフフッ 嫌ですね 三浦(みうら)様 26 00:02:33,778 --> 00:02:35,947 からかわないでくださいな 27 00:02:36,030 --> 00:02:38,950 夫婦といえば 細君は壮健か? 28 00:02:39,033 --> 00:02:40,994 きぬですか? ええ 29 00:02:41,077 --> 00:02:43,204 よろしければ 遊びに来てください 30 00:02:43,288 --> 00:02:44,747 妻も喜びます 31 00:02:44,831 --> 00:02:49,002 あれが 私の顔を見て喜ぶとは 到底 思えんが 32 00:02:49,085 --> 00:02:51,713 いえ そのようなことは 33 00:02:51,796 --> 00:02:55,383 あっ それで 甚殿は 所帯を持つ気はないのですか? 34 00:02:55,466 --> 00:02:56,676 特には 35 00:02:56,759 --> 00:02:59,929 (喜兵衛(きへえ)の店主) いや 直次様は いいことおっしゃる 36 00:03:00,013 --> 00:03:01,055 なあ? おふう 37 00:03:01,139 --> 00:03:03,683 もう お父さんは… 38 00:03:03,766 --> 00:03:06,352 ほら 丼がたまっていますよ 39 00:03:06,436 --> 00:03:09,606 それで その妖刀の話だが 40 00:03:09,689 --> 00:03:11,232 あっ はい 41 00:03:11,316 --> 00:03:15,278 3日前 江戸城下にある 会津(あいづ)畠山(はたけやま)家 中屋敷で 42 00:03:15,361 --> 00:03:18,239 御坊主をしている 杉野(すぎの)又六という男が 43 00:03:18,323 --> 00:03:20,158 買ったとのことです 44 00:03:20,241 --> 00:03:22,285 妙な話だ 45 00:03:22,368 --> 00:03:23,578 (直次)何がです? 46 00:03:23,661 --> 00:03:26,831 御坊主というのは 屋敷の雑用係だろう 47 00:03:26,915 --> 00:03:29,042 それが 葛野(かどの)の刀 48 00:03:29,125 --> 00:03:32,545 しかも 妖刀を求めるのは どうにもな… 49 00:03:33,129 --> 00:03:35,673 そう不思議な話でもありませんよ 50 00:03:35,757 --> 00:03:38,217 土佐(とさ)勤王党のことは ご存じでしょうか? 51 00:03:40,803 --> 00:03:44,474 昨年 土佐出身の武市(たけち)瑞山(ずいざん)が 52 00:03:44,557 --> 00:03:45,725 同郷の武士を集め 53 00:03:45,808 --> 00:03:48,603 土佐勤王党という組織を 結成しました 54 00:03:49,229 --> 00:03:52,357 嘉永(かえい)の黒船来航以来の 公儀の外交は 55 00:03:52,440 --> 00:03:55,235 私から見ても 頼りないものでした 56 00:03:55,318 --> 00:03:58,196 尊王攘夷(そんのうじょうい)思想を掲げた彼らは 57 00:03:58,279 --> 00:04:01,574 挙藩(きょはん)勤王… つまり 個人ではなく 58 00:04:01,658 --> 00:04:04,994 土佐藩を挙げて 勤王を行おうという者たちです 59 00:04:05,078 --> 00:04:09,374 きっと これからも そんな武士が 増えてゆくのでしょう 60 00:04:09,457 --> 00:04:11,084 詳しいな 61 00:04:11,167 --> 00:04:13,628 (直次)江戸住みの 土佐藩士もいますから 62 00:04:13,711 --> 00:04:17,382 今の時代 刀は主(あるじ)のために振るうのではなく 63 00:04:17,465 --> 00:04:21,511 思想を通すための武器だと 考える者のほうが多い 64 00:04:21,594 --> 00:04:26,516 だから 誰が刀を求めたとしても 驚きはしません 65 00:04:28,101 --> 00:04:31,604 その在り方は 武士として間違っている 66 00:04:31,688 --> 00:04:33,982 けれど 彼らを見ると思うのです 67 00:04:34,065 --> 00:04:36,234 私は このままでいいのか 68 00:04:36,317 --> 00:04:39,404 武士の誇りを捨て去ろうとしている 公儀に仕えるのが 69 00:04:39,487 --> 00:04:42,615 本当に正しいのか 私は… 70 00:04:42,699 --> 00:04:44,242 あっ すみません 71 00:04:44,325 --> 00:04:46,160 忘れてください 72 00:04:46,244 --> 00:04:48,496 私も似たようなものだ 73 00:04:49,080 --> 00:04:51,374 甚殿も… ですか? 74 00:04:51,457 --> 00:04:52,667 ああ 75 00:04:52,750 --> 00:04:56,546 時折 自分が何をしているのか 分からなくなる 76 00:04:56,629 --> 00:04:58,506 ままならぬものだな 77 00:04:58,589 --> 00:05:01,175 ええ 本当に 78 00:05:01,759 --> 00:05:04,804 しかし その妖刀 ひと目 見てみたいな 79 00:05:04,887 --> 00:05:07,140 (直次)では 見に参りましょう 80 00:05:07,223 --> 00:05:08,599 (甚夜)いいのか? 81 00:05:09,183 --> 00:05:12,478 もともと この話を持ち込んだのは 私ですし 82 00:05:14,188 --> 00:05:15,189 フッ… 83 00:05:18,317 --> 00:05:21,362 (直次) 突然の来訪 申し訳ございません 84 00:05:21,446 --> 00:05:24,782 ここに 杉野又六殿は おられますか? 85 00:05:24,866 --> 00:05:28,077 (御坊主1) えっ 又六… ですか? 86 00:05:28,161 --> 00:05:29,245 (直次)ん? 87 00:05:29,329 --> 00:05:31,039 -(土浦(つちうら))どうした? -(御坊主1)あっ… 88 00:05:31,122 --> 00:05:34,334 この方々が 又六に会いたいと… 89 00:05:34,417 --> 00:05:37,545 (土浦) すまぬが 又六ならばいない 90 00:05:37,628 --> 00:05:39,130 はあ… 91 00:05:39,213 --> 00:05:40,048 あっ 92 00:05:40,131 --> 00:05:42,967 いつ頃 戻られるか分かりますか? 93 00:05:43,051 --> 00:05:46,554 (土浦)いや 恐らくは もう戻ってはこんだろう 94 00:05:46,637 --> 00:05:49,307 それは どういう… 95 00:05:49,390 --> 00:05:51,893 今朝方 杉野又六は 96 00:05:51,976 --> 00:05:55,063 妻を斬り殺し 屋敷から姿を消した 97 00:05:55,146 --> 00:05:56,898 甚殿… 98 00:05:56,981 --> 00:05:58,399 一歩 遅かったか 99 00:05:58,483 --> 00:05:59,859 捜しましょう 100 00:05:59,942 --> 00:06:01,152 (甚夜)ああ 101 00:06:01,944 --> 00:06:03,362 (御坊主2)土浦様 102 00:06:04,655 --> 00:06:05,990 (土浦)待て 103 00:06:06,074 --> 00:06:09,952 泰秀様が お前たちに 会いたいとおっしゃっている 104 00:06:14,499 --> 00:06:17,001 (泰秀)お初にお目にかかります 105 00:06:17,085 --> 00:06:21,547 この屋敷の主 畠山泰秀と申します 106 00:06:21,631 --> 00:06:24,759 (直次)はっ わたくしは三浦直次 107 00:06:24,842 --> 00:06:28,054 公儀より 右筆の役を 承っております 108 00:06:28,137 --> 00:06:31,808 -(甚夜)私は… -(泰秀)甚夜殿 ですね 109 00:06:34,060 --> 00:06:35,686 かまわん 110 00:06:37,313 --> 00:06:38,981 甚殿 111 00:06:39,065 --> 00:06:42,068 畠山殿 ご無礼をお許しください 112 00:06:42,151 --> 00:06:44,487 (泰秀) いえいえ お気になさらず 113 00:06:45,071 --> 00:06:49,951 江戸には 鬼を斬る夜叉(やしゃ)が出るとの 噂(うわさ)は聞き及んでおります 114 00:06:50,034 --> 00:06:53,162 甚夜殿をここに呼んだのも 他意はなく 115 00:06:53,246 --> 00:06:58,292 刀1本で鬼を討つ 人の枠に収まらぬ力の持ち主を 116 00:06:58,376 --> 00:07:01,796 ひと目 見てみたいと 思っただけなのです 117 00:07:01,879 --> 00:07:05,591 怪異にとらわれ身を滅ぼす者は多い 118 00:07:05,675 --> 00:07:09,053 人心惑わす 魑魅魍魎(ちみもうりょう)を討つあなたは 119 00:07:09,137 --> 00:07:12,598 まさしく 民草の守り手ですな 120 00:07:12,682 --> 00:07:14,392 世辞は結構だ 121 00:07:14,475 --> 00:07:17,270 まさか 雑談をするために 呼んだわけではあるまい 122 00:07:23,901 --> 00:07:27,238 確かに 呼びたてたのには 理由があります 123 00:07:27,321 --> 00:07:29,824 どうでしょう 甚夜殿 124 00:07:29,907 --> 00:07:32,702 よろしければ 当家に身を置いてみては 125 00:07:32,785 --> 00:07:35,705 (甚夜)私は 帯刀こそ許されているが 126 00:07:35,788 --> 00:07:38,040 身分でいえば 町人と変わらない 127 00:07:38,124 --> 00:07:41,919 武家に仕えるには ふさわしくない男だと思うが 128 00:07:42,003 --> 00:07:45,423 (泰秀) 何 あくまで 私個人が雇うだけ 129 00:07:45,506 --> 00:07:47,383 問題はありません 130 00:07:47,466 --> 00:07:52,138 事実 土浦も あなたと似たような身の上ですし 131 00:07:54,015 --> 00:07:57,268 なるほど “似たような”か 132 00:07:58,769 --> 00:08:02,023 今 この国は 岐路に立たされております 133 00:08:02,607 --> 00:08:04,692 諸外国との外交 134 00:08:04,775 --> 00:08:08,988 開国などと 耳障りのいい言葉を 使ってはいますが 135 00:08:09,071 --> 00:08:12,575 このまま進めば 日の本は植民地となる 136 00:08:12,658 --> 00:08:14,827 幕藩体制は崩壊し 137 00:08:14,911 --> 00:08:18,664 徳川(とくがわ)が長らく保ってきた 治世は失われ 138 00:08:18,748 --> 00:08:21,542 新しい時代に武士は必要とされず 139 00:08:21,626 --> 00:08:25,296 いずれ その存在は 消えてなくなるでしょう 140 00:08:25,379 --> 00:08:26,923 いえ 畠山殿 それは… 141 00:08:27,006 --> 00:08:30,301 (泰秀)それを 開国派の連中は理解していない 142 00:08:32,595 --> 00:08:36,098 私は 既に隠居の身 ですが… 143 00:08:36,182 --> 00:08:41,062 この国を 今まで続いてきた徳川の治世を 144 00:08:41,145 --> 00:08:43,523 武士の誇りを守りたい 145 00:08:43,606 --> 00:08:47,276 そのためには 夷狄(いてき)を打ち払うほかにないのです 146 00:08:48,069 --> 00:08:51,781 {\an8}たとえ どんな手段を 用いたとしても 147 00:08:51,864 --> 00:08:56,369 何人(なんぴと)をも打倒し得る あなたの その力 148 00:08:56,452 --> 00:09:00,706 この治世を守るために 使っていただきたいのです 149 00:09:01,791 --> 00:09:05,336 せっかくのご高説だが あいにくと浅学でな 150 00:09:05,419 --> 00:09:08,965 開国だ 攘夷だと言われても さほど興味がない 151 00:09:09,048 --> 00:09:13,970 ほう… では この国がどうなってもよいと? 152 00:09:15,012 --> 00:09:18,849 (甚夜) 昔 似たようなことを言う鬼がいた 153 00:09:19,433 --> 00:09:20,810 この国は いずれ 154 00:09:20,893 --> 00:09:24,105 外からの文明を受け入れ 発達していく 155 00:09:24,772 --> 00:09:28,442 だが 早すぎる時代の流れに 鬼は淘汰(とうた)され 156 00:09:28,526 --> 00:09:30,111 我らは いつか 157 00:09:30,194 --> 00:09:34,407 昔話の中だけで語られる 存在になるのだと 158 00:09:34,490 --> 00:09:37,285 面白い鬼もいるものですね 159 00:09:37,368 --> 00:09:39,787 それは 我らにも言えたこと 160 00:09:39,870 --> 00:09:43,499 武士も同じく 時代に淘汰されようとしている 161 00:09:43,582 --> 00:09:46,127 ならばこそ 162 00:09:47,003 --> 00:09:49,130 悪いが できそうもない 163 00:09:51,048 --> 00:09:54,176 畠山殿が いかなる手を使おうが 164 00:09:54,260 --> 00:09:56,429 悪辣(あくらつ)とも ひきょうとも思わん 165 00:09:56,512 --> 00:09:58,848 だが 貴殿に 目指すものがあるように 166 00:09:58,931 --> 00:10:01,225 私にも また目的がある 167 00:10:02,727 --> 00:10:07,106 貴殿の志に比べれば 薄汚い私怨でしかないが 168 00:10:07,189 --> 00:10:09,525 私には それが全てだ 169 00:10:09,609 --> 00:10:13,863 いくら望まれようとも 今更 生き方は曲げられん 170 00:10:13,946 --> 00:10:17,325 そもそも 目的を別にしても 下にはつけない 171 00:10:17,408 --> 00:10:19,201 (泰秀)それは 何故(なにゆえ) 172 00:10:19,285 --> 00:10:21,245 (甚夜) 時流にあらがい 剣を取ることが 173 00:10:21,329 --> 00:10:23,623 尊いというのも理解できる 174 00:10:23,706 --> 00:10:24,915 ならばこそ 175 00:10:24,999 --> 00:10:27,251 隆盛も衰退も すべからく 176 00:10:27,335 --> 00:10:30,046 あなたたちの手で 行われるべきだろう 177 00:10:30,629 --> 00:10:32,214 何より 私は 178 00:10:32,298 --> 00:10:35,885 何のために刀を振るうかさえ 見つけられていない 179 00:10:35,968 --> 00:10:37,553 そのような男が 180 00:10:37,636 --> 00:10:41,307 未来を切り開く戦に 携わっていいはずがあるまい 181 00:10:41,390 --> 00:10:45,603 倫理にもとるからでも 思想が相いれぬからでもなく 182 00:10:45,686 --> 00:10:49,440 おのが美学に反するから 刀は振るえないと? 183 00:10:50,107 --> 00:10:53,444 自らの行いを美しいとは思わない 184 00:10:53,527 --> 00:10:56,906 だが 意思を曲げて 何かを斬ることは 185 00:10:56,989 --> 00:10:58,574 耐えがたい堕落だ 186 00:11:02,953 --> 00:11:04,663 (泰秀)フフフッ 187 00:11:04,747 --> 00:11:07,958 これ以上 何を言っても無駄のようですな 188 00:11:08,042 --> 00:11:12,588 貴殿を否定するつもりはないが 私も頑迷でな 189 00:11:13,214 --> 00:11:16,175 そう卑下されずともよいでしょう 190 00:11:16,258 --> 00:11:19,303 一度 決めたならば そこから揺らぐなぞ 191 00:11:19,387 --> 00:11:21,347 できるものではありません 192 00:11:26,018 --> 00:11:28,646 直次 そろそろ行くとしよう 193 00:11:28,729 --> 00:11:30,106 妖刀を追わねば 194 00:11:30,189 --> 00:11:31,816 あっ は… はい 195 00:11:31,899 --> 00:11:35,361 では 畠山殿 これにて失礼いたします 196 00:11:35,444 --> 00:11:37,113 そうですか 197 00:11:37,196 --> 00:11:38,823 では 土浦 198 00:11:42,868 --> 00:11:46,247 ああ そうだ 杉野ですが 199 00:11:46,330 --> 00:11:50,626 どうやら 富善(とみぜん)という料理屋に 興味があったようですね 200 00:11:50,710 --> 00:11:54,755 そこで土佐者がどうとか 武市が何だと… 201 00:11:54,839 --> 00:11:59,093 物騒なことに ならねばよいのですが… 202 00:12:08,561 --> 00:12:10,229 土浦殿といったか 203 00:12:10,312 --> 00:12:12,731 かしこまる必要はない 204 00:12:12,815 --> 00:12:15,234 (甚夜)そうか ならば土浦 205 00:12:16,193 --> 00:12:18,195 なぜ 畠山殿に仕える? 206 00:12:19,447 --> 00:12:22,032 俺は かつて人に裏切られた 207 00:12:22,116 --> 00:12:25,327 いや 信じることが できなかったのか… 208 00:12:25,411 --> 00:12:27,079 失意に暮れた俺を 209 00:12:27,163 --> 00:12:30,082 泰秀様が拾ってくださり おっしゃった 210 00:12:30,708 --> 00:12:34,420 “鬼と武士は 同じく時代に 打ち捨てられようとしている—” 211 00:12:34,503 --> 00:12:38,340 “旧世代の遺物 いわば同胞” 212 00:12:38,424 --> 00:12:41,844 “ならば 共に手を取り合うことが できるはずだ”と 213 00:12:42,636 --> 00:12:45,598 故に 俺は泰秀様に仕えている 214 00:12:46,182 --> 00:12:49,226 俺は あのお方を信じているのだ 215 00:12:50,019 --> 00:12:53,939 人の中で生きるのならば お前も分かるだろう 216 00:12:54,023 --> 00:12:55,983 鬼は 人と相いれぬ 217 00:12:57,318 --> 00:13:00,029 だが 泰秀様は 受け入れてくださる 218 00:13:00,112 --> 00:13:02,740 その意味 忘れぬことだ 219 00:13:02,823 --> 00:13:04,825 配慮は痛み入る 220 00:13:04,909 --> 00:13:07,161 だが お前たちが鬼を使い 221 00:13:07,244 --> 00:13:09,997 無意味に 人へ危害を加えるというのなら 222 00:13:10,623 --> 00:13:14,168 私は 恐らく やいばを向けるだろう 223 00:13:15,211 --> 00:13:19,048 {\an8}主の意向だ 今は手を出さん 224 00:13:19,131 --> 00:13:21,717 {\an8}だが もし貴様が 泰秀様の邪魔を 225 00:13:21,801 --> 00:13:23,886 {\an8}するというのなら… 226 00:13:24,887 --> 00:13:27,348 それは こちらも同じ 227 00:13:38,651 --> 00:13:41,237 ごくごく普通の店ですね 228 00:13:41,320 --> 00:13:42,780 これから どうしましょう? 229 00:13:43,948 --> 00:13:45,449 次が起こる前に 230 00:13:45,533 --> 00:13:48,452 杉野殿から 夜刀守兼臣(やとのもりかねおみ)を奪いたい 231 00:13:49,036 --> 00:13:51,747 だが 肝心の行方が分からない 232 00:13:51,831 --> 00:13:53,999 店の者にでも聞いてみますか 233 00:13:55,251 --> 00:13:56,460 そうだな 234 00:13:58,963 --> 00:14:01,632 (龍馬(りょうま))先生は まっこと遅いのお 235 00:14:01,715 --> 00:14:03,592 今日は もう来んがか… 236 00:14:03,676 --> 00:14:06,595 おっ! おっとっと… 237 00:14:06,679 --> 00:14:07,930 失礼した 238 00:14:08,013 --> 00:14:11,684 謝るがあ こっちじゃき ハッハッハッ… 239 00:14:11,767 --> 00:14:15,354 そうじゃ おまんら 詫(わ)び代わりに おごっちゃるき 240 00:14:15,437 --> 00:14:16,397 (直次)えっ? 241 00:14:16,480 --> 00:14:19,400 ここで知り合(お)うたのも 何かの縁じゃか 242 00:14:19,483 --> 00:14:23,404 あ… いや せっかくのご厚意ですが 243 00:14:23,487 --> 00:14:25,739 少しまだ 用がありますので 244 00:14:25,823 --> 00:14:27,241 ほうか? 245 00:14:27,324 --> 00:14:30,286 ついでといっては何だが 1つ聞きたい 246 00:14:30,369 --> 00:14:31,287 おう? 247 00:14:31,370 --> 00:14:34,582 杉野又六という男を知っているか? 248 00:14:34,665 --> 00:14:36,792 う~ん… 249 00:14:36,875 --> 00:14:38,377 いんにゃ 知らん 250 00:14:38,460 --> 00:14:42,464 そうか 妙なことを聞いた 感謝する 251 00:14:42,548 --> 00:14:45,384 (龍馬) こんくらい 何ちゃやないちゃ 252 00:14:45,467 --> 00:14:46,885 ほいたら 253 00:14:49,263 --> 00:14:52,933 わしの酒は まだ残っちゅうかのう? 254 00:14:53,017 --> 00:14:55,185 土佐の生まれ… 255 00:14:55,269 --> 00:14:58,647 あの方も攘夷を志す 一人なのでしょうか? 256 00:14:59,982 --> 00:15:01,942 -(甚夜)すまない -(女中)はい 257 00:15:02,026 --> 00:15:04,111 あの奥座敷にいる連中は? 258 00:15:04,194 --> 00:15:06,905 (女中)ああ うちのお得意様です 259 00:15:06,989 --> 00:15:08,490 なんでも お国のために 260 00:15:08,574 --> 00:15:11,035 我らが立ち上がらねばとか 何とか 261 00:15:11,619 --> 00:15:15,414 いつも 難しいお話をしながら お酒を召していらっしゃいます 262 00:15:15,497 --> 00:15:17,124 ほう… 263 00:15:17,207 --> 00:15:19,710 では “先生”とやらを 知っているか? 264 00:15:19,793 --> 00:15:23,714 ええ 武市様… でしたか 265 00:15:23,797 --> 00:15:27,217 皆様から よく慕われているようでした 266 00:15:30,054 --> 00:15:32,973 (直次)甚殿 先ほどの質問は… 267 00:15:33,057 --> 00:15:36,310 杉野なにがしが 富善に通っているのは 268 00:15:36,393 --> 00:15:40,230 彼らと接触を図っているからでは とも思ったのだが… 269 00:15:40,314 --> 00:15:42,608 どうやら違ったらしい 270 00:15:42,691 --> 00:15:45,444 攘夷派と接触… ですか 271 00:15:45,527 --> 00:15:47,988 畠山殿に仕えていた杉野殿は 272 00:15:48,072 --> 00:15:51,241 今も考えが変わっていないのなら 佐幕派… 273 00:15:51,325 --> 00:15:54,370 宴会をしていた 尊王の士と敵対しても 274 00:15:54,453 --> 00:15:56,622 おかしくない立ち位置だ 275 00:15:56,705 --> 00:15:57,539 甚殿 276 00:15:57,623 --> 00:16:01,877 あの土佐なまりの男は 先生が遅いと言っていました 277 00:16:02,503 --> 00:16:05,756 恐らく 彼らの中でも重要な人物が 278 00:16:05,839 --> 00:16:09,259 近日中に 富善へと 訪れる手はずになっていた 279 00:16:09,343 --> 00:16:14,264 それを知った 佐幕派の杉野殿が 行動を起こすとすれば… 280 00:16:14,348 --> 00:16:16,892 邪魔立てをするだろうな 281 00:16:16,976 --> 00:16:18,519 そして もしも 282 00:16:18,602 --> 00:16:21,563 畠山殿が漏らした言葉が 正しいなら 283 00:16:21,647 --> 00:16:24,066 先生というのは… 284 00:16:24,149 --> 00:16:25,859 (唾を飲み込む音) 285 00:16:25,943 --> 00:16:30,823 土佐勤王党の中心人物 武市瑞山 286 00:16:31,699 --> 00:16:36,495 杉野又六の目的は 武市瑞山の暗殺か 287 00:16:36,578 --> 00:16:38,831 (直次) 畠山殿は 気付かせるために 288 00:16:38,914 --> 00:16:42,334 わざと 我々に 杉野殿の情報を漏らした 289 00:16:42,418 --> 00:16:43,794 そして 以前より 290 00:16:43,877 --> 00:16:46,839 甚殿を迎え入れたいと 思っていたのでしょう 291 00:16:47,423 --> 00:16:49,717 だからこそ あなたを呼びつけた 292 00:16:50,300 --> 00:16:52,469 妖刀は 単なる餌か 293 00:16:53,762 --> 00:16:57,474 (直次)もし 武市瑞山の 暗殺が成功すれば もうけもの 294 00:16:57,558 --> 00:17:02,479 失敗しても 甚殿と直接会うという 目的自体は果たしている 295 00:17:03,063 --> 00:17:06,692 (甚夜)暗殺を企てるところまで 想定していたならば 296 00:17:06,775 --> 00:17:09,069 確かに たちの悪い男だ 297 00:17:09,153 --> 00:17:12,197 ああいった男が のさばっているのは 298 00:17:12,281 --> 00:17:15,534 佐幕派が 相当 追い詰められている証拠 299 00:17:15,617 --> 00:17:19,288 公儀は もうダメなのかもしれない… 300 00:17:22,791 --> 00:17:26,086 すみません 感情的になってしまいました 301 00:17:26,754 --> 00:17:27,963 (甚夜)いや 302 00:17:28,505 --> 00:17:30,215 それで どうしますか? 303 00:17:30,299 --> 00:17:34,887 もし本当に妖刀の力で 凶行に及んでいるのならば 304 00:17:34,970 --> 00:17:37,473 杉野殿を放置できない 305 00:17:38,307 --> 00:17:40,642 いや おためごかしだな 306 00:17:40,726 --> 00:17:42,978 やり方が気に食わないし 307 00:17:43,061 --> 00:17:46,106 妖刀が本物なら 私にも利がある 308 00:17:46,815 --> 00:17:49,109 理由は それで十分だ 309 00:17:52,738 --> 00:17:54,865 (又六)この刀をもってすれば 310 00:17:54,948 --> 00:17:58,702 勤王を掲げる阿呆(あほう)どもを 皆殺しにできる 311 00:17:58,786 --> 00:17:59,620 ヘヘッ… 312 00:18:01,747 --> 00:18:04,875 武市瑞山も斬らねばならない 313 00:18:04,958 --> 00:18:08,128 いや 俺は斬ってもいいのだ 314 00:18:08,212 --> 00:18:09,254 ハァ ハァ… 315 00:18:09,338 --> 00:18:10,506 (甚夜)断っておくが… 316 00:18:10,589 --> 00:18:11,632 ん? 317 00:18:11,715 --> 00:18:15,511 (甚夜)私は 暗殺という手段を ひきょうとは思わない 318 00:18:15,594 --> 00:18:18,806 刀にできるのは 所詮 斬るのみ 319 00:18:18,889 --> 00:18:21,809 ならば いかなる手段を用いたとて 320 00:18:21,892 --> 00:18:24,269 斬ってこその刀だろう 321 00:18:24,353 --> 00:18:26,188 故に否定はせん 322 00:18:26,271 --> 00:18:27,689 だが… 323 00:18:28,482 --> 00:18:31,902 悪いな 邪魔はさせてもらう 324 00:18:31,985 --> 00:18:34,404 何だ てめえ! 325 00:18:41,078 --> 00:18:43,872 斬撃を飛ばしたのか 326 00:18:43,956 --> 00:18:46,500 なるほど 面白い大道芸だ 327 00:18:46,583 --> 00:18:48,585 何で生きている 328 00:18:48,669 --> 00:18:50,921 (甚夜) あいにくと人よりは丈夫でな 329 00:18:51,004 --> 00:18:52,297 なら斬る! 330 00:18:52,381 --> 00:18:54,758 何度でも斬る! 斬らないと… 331 00:18:54,842 --> 00:18:56,885 斬らないと俺は… 332 00:18:56,969 --> 00:18:59,388 きいっ! ひゃあっ! 333 00:18:59,471 --> 00:19:02,391 そんななまくらで よく防ぐ 334 00:19:11,525 --> 00:19:12,901 (頭(かしら)で突く音) (又六)がっ! 335 00:19:15,612 --> 00:19:16,822 (倒れる音) 336 00:19:18,031 --> 00:19:19,658 ああ… 337 00:19:31,170 --> 00:19:34,631 鬼の力を宿す刀か… 338 00:19:41,013 --> 00:19:42,431 同化 339 00:19:52,316 --> 00:19:54,318 (夜刀(やと))兼臣 それが… 340 00:19:54,401 --> 00:19:58,113 (兼臣)ああ お前の血を練り込んで打った太刀だ 341 00:19:58,196 --> 00:20:02,117 そうだな あと3口ほど打ってみるか 342 00:20:02,201 --> 00:20:06,830 4口の刀に刻む銘は 全て大銘を“夜刀守” 343 00:20:06,914 --> 00:20:08,916 小銘を“兼臣”としよう 344 00:20:08,999 --> 00:20:12,502 (夜刀)本当に鬼の力を 持った刀になるのか? 345 00:20:12,586 --> 00:20:13,420 (兼臣)さあ 346 00:20:14,129 --> 00:20:16,256 夜刀守兼臣 347 00:20:16,340 --> 00:20:20,469 俺とお前の名を持つ刀が 100年後 どうなるのか 348 00:20:20,552 --> 00:20:23,430 残念ながら 俺にゃ見ることはかなわん 349 00:20:24,306 --> 00:20:25,724 だから 夜刀 350 00:20:25,807 --> 00:20:28,185 代わりにお前が 見てきてくれねえか? 351 00:20:29,436 --> 00:20:32,314 そして もしもこいつが 力を得られたなら 352 00:20:32,397 --> 00:20:34,066 疑わないでほしい 353 00:20:34,149 --> 00:20:37,569 人はバカで 時々 間違いを犯すが 354 00:20:37,653 --> 00:20:41,323 鬼は 自分を曲げられず ぶつかり合うこともあるが 355 00:20:41,406 --> 00:20:43,617 それでも 俺たちは… 356 00:20:43,700 --> 00:20:46,828 鬼と人は 共に生きられるのだと 357 00:20:47,788 --> 00:20:49,331 分かった 358 00:20:49,957 --> 00:20:53,001 すまんな 面倒を押しつけるようで 359 00:20:53,085 --> 00:20:55,921 何… 夫の思いをかなえる 360 00:20:56,004 --> 00:20:59,591 これも妻の務めだよ フフッ 361 00:21:00,676 --> 00:21:05,681 (又六の荒い息) 362 00:21:07,099 --> 00:21:12,104 (又六のおびえる声) 363 00:21:14,189 --> 00:21:15,399 ハッ! 364 00:21:19,820 --> 00:21:23,448 鬼と人は 共に生きられる… 365 00:21:34,793 --> 00:21:39,006 (直次)やはり 杉野殿は 富善に向かおうとしていたのですね 366 00:21:39,089 --> 00:21:41,133 しかし 恐ろしい話だ 367 00:21:41,216 --> 00:21:45,762 妖刀に心を惑わされ 妻を斬り殺してしまうなど… 368 00:21:45,846 --> 00:21:47,931 いや それは少し違う 369 00:21:48,015 --> 00:21:48,849 えっ? 370 00:21:48,932 --> 00:21:52,811 夜刀守兼臣は真実 妖刀だった 371 00:21:52,894 --> 00:21:56,315 だが あの刀が有していた 異能は“飛刃(ひじん)” 372 00:21:56,398 --> 00:22:00,110 斬撃を飛ばす ただそれだけの力だ 373 00:22:00,193 --> 00:22:03,613 で… ですが 実際 杉野殿は妻を… 374 00:22:03,697 --> 00:22:05,324 うーん… 375 00:22:07,492 --> 00:22:10,037 あんた 何で… 376 00:22:10,120 --> 00:22:12,205 ち… ちがっ 違う! 377 00:22:12,289 --> 00:22:14,458 俺は 違う! 378 00:22:14,541 --> 00:22:18,545 そ… そうだ 斬ったのは これが妖刀だったからだ 379 00:22:18,628 --> 00:22:19,963 俺じゃない! 380 00:22:20,047 --> 00:22:21,840 そうだ 俺は悪くない 381 00:22:21,923 --> 00:22:24,593 この刀を持つと 誰でも斬りたくなる 382 00:22:24,676 --> 00:22:26,470 そういうものなんだ! 383 00:22:26,553 --> 00:22:28,722 お前を斬ったのは この妖刀 384 00:22:28,805 --> 00:22:32,893 俺は妖刀に心を奪われたのだ! 385 00:22:32,976 --> 00:22:36,146 あっ あああ… 386 00:22:37,272 --> 00:22:39,399 (又六の泣き声) 387 00:22:41,485 --> 00:22:45,280 あの男は 手近に妻がいたから斬った 388 00:22:45,364 --> 00:22:47,199 それだけだ 389 00:22:47,282 --> 00:22:48,408 そんな… 390 00:22:48,492 --> 00:22:50,702 (甚夜)だが それに耐えきれず 391 00:22:50,786 --> 00:22:54,289 刀に操られて殺したのだと 思い込んだ 392 00:22:54,373 --> 00:22:56,917 畠山は そこに漬け込んだのかもしれん 393 00:22:57,584 --> 00:22:59,795 (直次) 杉野殿は 国のためを思って 394 00:22:59,878 --> 00:23:02,172 暗殺を企てたのではなく 395 00:23:02,255 --> 00:23:06,927 斬る理由を欲して畠山殿にくみした ということですか? 396 00:23:07,511 --> 00:23:09,930 本当のところは分からん 397 00:23:15,811 --> 00:23:17,104 甚殿は よく— 398 00:23:17,187 --> 00:23:19,940 生き方を曲げられないと おっしゃっていましたね 399 00:23:27,239 --> 00:23:28,824 私も また— 400 00:23:28,907 --> 00:23:31,952 生き方を決めなければ ならないのかもしれません 401 00:23:41,002 --> 00:23:46,007 {\an8}♪~ 402 00:25:05,837 --> 00:25:10,842 {\an8}~♪