1 00:00:01,835 --> 00:00:06,631 ♪~ 2 00:01:35,929 --> 00:01:40,934 ~♪ 3 00:01:43,269 --> 00:01:44,687 (祭り太鼓の音) 4 00:01:44,854 --> 00:01:50,068 (一(はじめ))“雷祭(いかずちまつり)”の夜 雷雨の中で起きた 奇怪な殺人事件 5 00:01:50,819 --> 00:01:53,071 昆虫学者の武藤恭一(むとう きょういち)は― 6 00:01:53,613 --> 00:01:57,325 何千という空蟬(うつせみ)に 覆われて 息絶えていた 7 00:02:07,544 --> 00:02:11,339 (はじめ)あの雷祭の日 武藤さんを殺した犯人は… 8 00:02:14,759 --> 00:02:16,219 この中にいる 9 00:02:16,511 --> 00:02:19,305 (春子(はるこ))なんですって? (秋絵(あきえ))一体 どういうこと? 10 00:02:19,639 --> 00:02:21,641 犯人は 葉月(はづき)さんなんでしょう? 11 00:02:21,766 --> 00:02:23,726 警察の人が そう言ったのに なんで… 12 00:02:24,144 --> 00:02:26,146 (時雨(しぐれ)) やましいところがないなら― 13 00:02:26,271 --> 00:02:28,398 金田一(きんだいち)さんの話を 聞いたら どうですか 14 00:02:28,648 --> 00:02:30,567 時雨… あんた 何の権利があって… 15 00:02:30,692 --> 00:02:31,401 やめて! 16 00:02:31,818 --> 00:02:34,571 (はじめ)朝木(あさぎ)葉月さん あなたは 犯人じゃない 17 00:02:36,531 --> 00:02:38,658 そんな… 刑事さん! 18 00:02:38,783 --> 00:02:41,286 (長島(ながしま))ああ 離れ周辺には― 19 00:02:41,411 --> 00:02:44,122 朝木葉月の足跡以外 残っていなかったんだ 20 00:02:44,831 --> 00:02:46,916 もし ほかに犯人がいたとしたら― 21 00:02:47,041 --> 00:02:50,461 どうやって足跡をつけずに あの離れから逃げたというんだ? 22 00:02:50,587 --> 00:02:52,589 ロープを張って 渡ったとでもいうのか? 23 00:02:53,172 --> 00:02:55,300 そんな物 仕掛ける場所はないんだぞ 24 00:02:55,842 --> 00:02:58,219 犯人は 仕掛けなんか作っちゃいないさ 25 00:02:58,344 --> 00:03:02,181 現場にある物で もっと 簡単なトリックを実行したのさ 26 00:03:02,515 --> 00:03:04,058 (一同)えっ? 27 00:03:08,271 --> 00:03:11,524 (はじめ)見てのとおり 今は もう 土がカチカチに乾いて― 28 00:03:11,649 --> 00:03:14,110 ちょっと踏んだぐらいじゃ 足跡は ほとんど残らない 29 00:03:14,402 --> 00:03:16,195 (長島)分かっとる そんなことは 30 00:03:16,321 --> 00:03:20,366 (はじめ) 実は 犯人は こんなふうに 土の乾いた状態のとき… 31 00:03:20,491 --> 00:03:22,076 つまり 事件の日 32 00:03:22,201 --> 00:03:24,829 雨が降りだす5時以前に 犯行を終えていたんだよ 33 00:03:25,079 --> 00:03:25,914 (長島)なっ… 34 00:03:26,039 --> 00:03:29,125 それじゃ 死んだ武藤恭一の 足跡は どうなるの? 35 00:03:29,250 --> 00:03:32,211 そうだ 雨が降る前に死んでいたんなら― 36 00:03:32,337 --> 00:03:35,089 一体 なぜ被害者の足跡が 残っていたんだ? 37 00:03:35,215 --> 00:03:37,842 今から 俺が 同じことをしてみせるよ 38 00:03:37,967 --> 00:03:39,302 (はじめ)時雨ちゃん (時雨)あっ はい 39 00:03:39,761 --> 00:03:41,804 ちょっと 持ってきてほしい物があるんだ 40 00:03:42,055 --> 00:03:42,764 えっ? 41 00:03:43,139 --> 00:03:45,225 (はじめ)ゴムホース 持ってきてくれないか? 42 00:03:45,642 --> 00:03:46,768 ゴムホース? 43 00:03:46,893 --> 00:03:49,312 (はじめ) この家のどこかにあるはずだよね? 44 00:03:49,437 --> 00:03:50,480 ええ… 45 00:03:54,943 --> 00:03:56,736 ゴムホースが一体 何なのよ? 46 00:03:57,237 --> 00:03:59,822 (はじめ)ゴムホースのある場所を 知っているかどうか 47 00:03:59,948 --> 00:04:02,200 それが 真犯人を示すカギになるんだよ 48 00:04:02,533 --> 00:04:03,660 (葉月)どういうことですか? 49 00:04:05,370 --> 00:04:06,079 (時雨)はい 50 00:04:06,788 --> 00:04:10,625 やっぱり知ってたんだね これが どこにあるかを 51 00:04:23,513 --> 00:04:24,806 (はじめ)ンッ… これでOK 52 00:04:31,646 --> 00:04:33,356 (美雪(みゆき))ハッ… ああ! 53 00:04:33,481 --> 00:04:35,024 (はじめ)ようやく気づいたな 54 00:04:35,149 --> 00:04:37,360 (美雪)なんで こんなことに 気づかなかったんだろう 55 00:04:37,777 --> 00:04:40,822 美雪 離れまで 足跡をつけながら行って― 56 00:04:40,947 --> 00:04:43,366 それから 足跡をつけないで戻ってみてくれ 57 00:04:43,491 --> 00:04:44,492 (美雪)ええ 58 00:04:52,500 --> 00:04:53,376 (長島たち)あっ… 59 00:04:54,002 --> 00:04:57,297 事件の日 犯人も 正に これと同じことをしたんだよ 60 00:04:58,089 --> 00:05:01,050 乾いた地面に残った自分の足跡は かすかだ 61 00:05:01,175 --> 00:05:04,262 あとで降るはずの雨で 跡形もなく消えてしまうだろう 62 00:05:04,762 --> 00:05:06,306 300年間 一度も― 63 00:05:06,431 --> 00:05:10,560 村人の期待を裏切らなかった あの雷祭の雷雨は― 64 00:05:10,685 --> 00:05:13,062 犯人の期待をも裏切らずに― 65 00:05:13,187 --> 00:05:16,399 見事に 足跡なき殺人を 演出してくれたってわけさ 66 00:05:16,733 --> 00:05:19,736 なんてこった こんな簡単なことを 67 00:05:19,861 --> 00:05:25,074 普通 現場から逃げ出す犯人は 足跡を残さないようにするもんだ 68 00:05:25,199 --> 00:05:27,910 ところが この犯人は 逆を突いて― 69 00:05:28,036 --> 00:05:31,080 わざわざ ぬかるみを作り 足跡を残した 70 00:05:31,205 --> 00:05:33,291 その思惑どおり みんな― 71 00:05:33,416 --> 00:05:34,876 “どうやって 足跡を残さないで―” 72 00:05:35,001 --> 00:05:37,295 “現場から脱出するか”を 考えてしまい― 73 00:05:37,628 --> 00:05:40,882 “どうやって現場に足跡を残すか” なんてことには― 74 00:05:41,382 --> 00:05:42,884 考えが及ばなかったんだ 75 00:05:43,718 --> 00:05:46,471 そこに 巧みな心理トリックが 隠されていたのさ 76 00:05:46,763 --> 00:05:47,764 (長島)う~ん… 77 00:05:47,889 --> 00:05:50,641 (秋絵)金田一君 確かに これで武藤さんが― 78 00:05:50,767 --> 00:05:53,978 雨が降る前に 離れに行った可能性は出てきたわ 79 00:05:54,103 --> 00:05:57,690 でも これだけでは 実際に 彼が 雨が降る前に行ったと― 80 00:05:57,815 --> 00:05:59,692 証明することは できないんじゃない? 81 00:05:59,942 --> 00:06:01,402 (はじめ)いや できるのさ 82 00:06:05,948 --> 00:06:07,700 この傘は 武藤さんの物だ 83 00:06:08,409 --> 00:06:12,789 昨日 俺が この家に来たとき この傘は 玄関に挿してあった 84 00:06:13,206 --> 00:06:16,375 そして そのあと離れに来たとき この傘はなかった 85 00:06:16,918 --> 00:06:20,004 つまり この傘は あの雷雨があった5時ごろ― 86 00:06:20,129 --> 00:06:21,839 武藤さんが 母屋から ここに来るときに― 87 00:06:21,964 --> 00:06:24,801 差してきたんだと 誰もが思ったんだ 88 00:06:24,926 --> 00:06:26,677 ところが 見てくれ 89 00:06:26,803 --> 00:06:29,680 この傘を雷雨の中で 武藤さんが差すことは― 90 00:06:29,806 --> 00:06:31,516 100パーセントありえないんだよ 91 00:06:31,641 --> 00:06:33,142 どうして そんな… 92 00:06:33,267 --> 00:06:35,019 (はじめ)大の雷嫌いだったからさ 93 00:06:36,062 --> 00:06:38,064 武藤さんは 雷を恐れて― 94 00:06:38,189 --> 00:06:40,650 わざわざ 自分のベルトの バックルまで外したんだ 95 00:06:41,317 --> 00:06:43,903 それほど雷を恐れている人間が― 96 00:06:44,028 --> 00:06:46,197 あれほどの すさまじい雷雨の中― 97 00:06:46,322 --> 00:06:49,200 こんな とがった金属のついた傘を 差すなんて ありえない 98 00:06:49,367 --> 00:06:50,243 (春子・秋絵)あっ… 99 00:06:50,660 --> 00:06:53,412 犯人は 武藤さんが雷雨の中― 100 00:06:53,538 --> 00:06:55,873 離れに向かったことを 強調するために― 101 00:06:55,998 --> 00:06:59,961 玄関から傘を持ってきて 離れの傘立てに放り込んだのさ 102 00:07:00,086 --> 00:07:01,295 つまり 犯人は― 103 00:07:01,420 --> 00:07:04,882 雷が怖いなんて思ったことも ない人物だったから― 104 00:07:05,049 --> 00:07:07,510 それが 武藤さんの取った行動として― 105 00:07:07,635 --> 00:07:10,263 明らかに不自然だということに 気づかなかったんだ 106 00:07:10,638 --> 00:07:12,598 (美雪)ということは… (はじめ)ああ 107 00:07:12,723 --> 00:07:16,227 武藤さん同様 俺たちも この村の雷が怖かった 108 00:07:17,019 --> 00:07:20,231 ところが 雷祭に出ていた村の人たちは― 109 00:07:20,398 --> 00:07:22,942 誰ひとり 雷を恐れていなかった 110 00:07:23,109 --> 00:07:28,030 雷を“神”と敬う300年の歴史が 体にしみ込んでいるからさ 111 00:07:28,281 --> 00:07:30,867 つまり このトリックを仕組んだ犯人は― 112 00:07:30,992 --> 00:07:35,204 この村で生まれ育ち 雷祭をごく自然に経験してきた人物 113 00:07:35,830 --> 00:07:39,500 あの雷雨の中を 平気で傘を差して歩いていた人間 114 00:07:39,667 --> 00:07:42,295 そう 春子さん あんただよ! 115 00:07:42,628 --> 00:07:44,213 (長島たち)えっ? (春子)あっ… 116 00:07:46,340 --> 00:07:50,595 (春子)違う 私じゃない ふざけないでよ そんなことで 117 00:07:50,720 --> 00:07:51,971 時雨は どうなの? 118 00:07:52,096 --> 00:07:55,558 この村の出じゃないのに 雷を怖がらないじゃないの! 119 00:07:55,683 --> 00:07:57,560 なのに なんで私が犯人だって… 120 00:07:58,144 --> 00:07:59,937 その根拠は どこにあるのよ? 121 00:08:00,354 --> 00:08:02,231 (はじめ)空蟬だよ (春子)ハッ… 122 00:08:02,440 --> 00:08:06,152 武藤さんの体を覆っていた セミの抜け殻 それが根拠だ 123 00:08:06,694 --> 00:08:09,155 (春子)ハッ… アッ… 124 00:08:09,572 --> 00:08:13,367 俺も初めは考えた 体をセミの抜け殻で覆ったのは― 125 00:08:13,493 --> 00:08:16,454 何か 怨恨(えんこん)や 呪いのしるしじゃないかってね 126 00:08:16,579 --> 00:08:18,915 だが そうじゃない 犯人は考えたんだ 127 00:08:19,916 --> 00:08:22,835 意味ありげに 武藤さんの体を 空蟬で覆っておけば― 128 00:08:23,336 --> 00:08:25,421 本当に必要だった物から― 129 00:08:25,546 --> 00:08:28,132 捜査の目をそらすことが できるかもしれないって 130 00:08:28,549 --> 00:08:30,343 本当に必要だった物? 131 00:08:30,801 --> 00:08:32,220 (はじめ)これだよ 132 00:08:32,720 --> 00:08:37,225 これは 事件前に セミの抜け殻が いっぱいに詰まっていた物だな 133 00:08:37,350 --> 00:08:40,520 犯人は 中身を 武藤の体の上に ぶちまけたんだ 134 00:08:40,645 --> 00:08:43,063 ああ ところが 妙なんだよ 135 00:08:43,188 --> 00:08:46,734 この中には セミの抜け殻の カスひとつ残っていない 136 00:08:46,859 --> 00:08:48,444 まるで 水でも入れたように きれいなんだ 137 00:08:49,195 --> 00:08:51,113 (美雪)それじゃ… (はじめ)そう 138 00:08:51,239 --> 00:08:54,450 (はじめ)犯人は ここに水を入れ バケツ代わりに使ったんだよ 139 00:08:56,410 --> 00:08:59,914 地面に水をまいて 足跡のトリックを作り出すためにね 140 00:09:00,373 --> 00:09:05,253 そのとき 中の空蟬がジャマなんで 武藤さんの体の上に ぶちまけた 141 00:09:05,378 --> 00:09:08,506 それが 体を覆っていた空蟬の 理由だったんだ 142 00:09:08,965 --> 00:09:11,717 しかし ホースを使ったほうが早いし― 143 00:09:11,842 --> 00:09:14,095 母屋から バケツを持ってくればいいものを 144 00:09:14,220 --> 00:09:16,639 春子さんには それができなかったのさ 145 00:09:16,764 --> 00:09:18,015 できなかった? 146 00:09:18,140 --> 00:09:19,809 彼女は バケツとホースがある場所を― 147 00:09:19,934 --> 00:09:21,519 知らなかったのさ 148 00:09:21,644 --> 00:09:24,355 久しぶりに この屋敷に 帰ってきた人間だったからね 149 00:09:24,647 --> 00:09:25,314 (春子)クッ… 150 00:09:26,023 --> 00:09:28,442 (はじめ)俺たちが この屋敷に到着したとき― 151 00:09:28,568 --> 00:09:31,320 春子さん あんたは 車を洗おうとしてたよな 152 00:09:32,321 --> 00:09:35,575 確か あのとき バケツと ゴムホースを持ってくるように― 153 00:09:35,700 --> 00:09:37,118 時雨ちゃんに頼んでいた 154 00:09:37,743 --> 00:09:39,870 時雨ちゃんがホースの場所を 知っていたことは― 155 00:09:40,246 --> 00:09:42,039 さっきも証明済みだ 156 00:09:42,540 --> 00:09:45,626 秋絵も あのとき すぐにホースを取りに行こうとした 157 00:09:46,544 --> 00:09:50,631 葉月さんも 俺たちが来たとき 玄関でバケツを使っていたはずだ 158 00:09:51,173 --> 00:09:53,718 ホースもバケツも使わないで 水をまくために― 159 00:09:54,176 --> 00:09:57,221 この容器を 使わなくちゃならなかった人間は… 160 00:09:57,638 --> 00:09:59,724 春子さん あんただけなんだよ 161 00:10:00,182 --> 00:10:00,850 (春子)ウッ… 162 00:10:02,560 --> 00:10:03,853 まさか… 163 00:10:04,312 --> 00:10:06,939 実は ゆうべ 武藤について調べるうちに― 164 00:10:07,481 --> 00:10:11,777 春子さん あんたと武藤が昔 恋仲だったという証言が出てきた 165 00:10:12,445 --> 00:10:14,697 武藤が 葉月さんに乗り換えたのを見て― 166 00:10:14,822 --> 00:10:18,117 あんたは 心穏やかじゃなかった そういうところか… 167 00:10:19,118 --> 00:10:20,578 (春子)ンンッ… 168 00:10:20,703 --> 00:10:23,080 ろくでもない男だった 169 00:10:23,205 --> 00:10:28,294 女を夢中にさせて金を貢がせるのが 男の甲斐性(かいしょう)だって言ってた 170 00:10:28,419 --> 00:10:32,506 あいつが目の前で死んだって 私は 涙ひとつ流れなかったわ 171 00:10:34,800 --> 00:10:37,470 でも 殺すつもりじゃなかった 172 00:10:38,763 --> 00:10:42,183 (長島)詳しい話を 聞かせていただけますか? 173 00:10:58,491 --> 00:10:59,617 う~ん… 174 00:11:15,257 --> 00:11:16,217 (ドアの開く音) 175 00:11:17,259 --> 00:11:18,803 (美雪)はじめちゃん 176 00:11:19,053 --> 00:11:21,764 (はじめ)美雪か (二三(フミ))ねえ? 何か変でしょう? 177 00:11:21,889 --> 00:11:25,476 雲場村(くもばむら)から帰ってから ず~っと こんな感じなんだよね 178 00:11:25,601 --> 00:11:27,561 妙に調子狂っちゃう 179 00:11:28,187 --> 00:11:29,605 はじめちゃん… 180 00:11:30,898 --> 00:11:32,733 あのとき 確か はじめちゃん 181 00:11:32,858 --> 00:11:35,277 “この事件の犯人は2人いる”って 言ってたよね 182 00:11:35,861 --> 00:11:39,156 はじめちゃんの中では 謎は まだ全て解けていない 183 00:11:39,281 --> 00:11:40,282 そうなんでしょう? 184 00:11:41,367 --> 00:11:44,203 (フミ) はじめにいちゃん お客さんだよ! 185 00:11:44,745 --> 00:11:48,165 この暑い中 雲場村から わざわざ来たんだってさ 186 00:11:49,333 --> 00:11:51,836 (はじめ) なに~! おっと あっ… 187 00:11:52,002 --> 00:11:54,547 (はじめ)あ~っ! (長島)よ… よう 188 00:11:57,216 --> 00:11:59,009 あれから1週間たつが― 189 00:11:59,135 --> 00:12:00,970 どうも腑(ふ)に落ちないことが 出てきてな 190 00:12:01,637 --> 00:12:02,513 どういうこと? 191 00:12:02,930 --> 00:12:06,475 そもそも 武藤が あの離れに 住み着くようになったのも― 192 00:12:06,600 --> 00:12:08,644 当時 ヤツにベタボレだった春子が― 193 00:12:08,769 --> 00:12:11,730 兄の冬生(とうせい)に ヤツを会わせたことが きっかけだったんだ 194 00:12:12,565 --> 00:12:14,567 ところが 冬生が亡くなってすぐ― 195 00:12:14,692 --> 00:12:17,403 武藤は 葉月夫人と懇ろになっちまった 196 00:12:17,528 --> 00:12:19,530 …で 捨てられた春子は― 197 00:12:19,655 --> 00:12:23,200 事件の日 武藤と口論になり とっさに灰皿で殴ってしまった 198 00:12:23,492 --> 00:12:26,162 …と そこまでは 春子も認めたんだが 199 00:12:26,662 --> 00:12:28,038 (はじめ)…で? 200 00:12:28,581 --> 00:12:29,707 ハァ~ッ… 201 00:12:29,832 --> 00:12:33,169 春子の自白と 検視の報告が一致しないんだ 202 00:12:33,294 --> 00:12:35,880 武藤の頭には2か所の傷があり― 203 00:12:36,005 --> 00:12:39,925 そのうち致命傷になっているのは 左側頭部のものだった 204 00:12:40,134 --> 00:12:43,554 ところが 春子が殴ったのは後頭部 205 00:12:43,679 --> 00:12:45,598 それも 一度だけだと言って聞かないんだ 206 00:12:45,723 --> 00:12:47,308 (はじめ)えっ? (長島)それで― 207 00:12:47,433 --> 00:12:49,643 彼女も そのとき 武藤に突き飛ばされて― 208 00:12:49,768 --> 00:12:51,604 机に頭をぶつけて倒れ― 209 00:12:51,729 --> 00:12:54,023 5~6分間 気を失っていたというんだ 210 00:12:54,148 --> 00:12:54,982 どう思う? 211 00:12:56,525 --> 00:12:58,777 (はじめ) やっぱり そういうことだったのか 212 00:12:59,153 --> 00:13:00,070 (長島)“やっぱり”? 213 00:13:00,196 --> 00:13:02,615 (はじめ)…で その 春子さんが認めたっていう― 214 00:13:02,740 --> 00:13:05,242 後頭部の傷だけでも 武藤さんは死んでいたのか? 215 00:13:05,701 --> 00:13:08,996 いや 到底 死に至る傷では なかったというのが― 216 00:13:09,121 --> 00:13:10,831 鑑識医の見解だ 217 00:13:10,956 --> 00:13:14,710 (はじめ) そうか 最後の疑問の答えも これで ようやく見えたよ 218 00:13:15,044 --> 00:13:18,255 (美雪)じゃ はじめちゃん… (はじめ)ああ 219 00:13:18,714 --> 00:13:19,924 謎は すべて解けた 220 00:13:24,887 --> 00:13:26,388 (長島)どういうことだ? 金田一 221 00:13:26,514 --> 00:13:29,850 (はじめ)武藤さんは 別の人間に とどめを刺されたんだよ 222 00:13:30,351 --> 00:13:32,311 春子さんが失神している間にね 223 00:13:32,561 --> 00:13:37,024 とどめを? 一体 誰が そんな… お前には分かっているのか? 224 00:13:38,567 --> 00:13:42,154 ああ… だが これは 俺の直感みたいなものだ 225 00:13:42,279 --> 00:13:43,239 根拠はない 226 00:13:43,364 --> 00:13:46,283 誰なんだ? 武藤を殺した真犯人は 227 00:13:46,909 --> 00:13:47,743 (はじめ)それは… 228 00:13:47,868 --> 00:13:49,245 (携帯電話の着信音) うん? 229 00:13:49,537 --> 00:13:51,455 ちょっと待ってくれ 230 00:13:51,872 --> 00:13:54,041 (ボタンを押す音) 長島だ 231 00:13:54,166 --> 00:13:56,252 ああ… えっ? なんだと? 232 00:13:57,294 --> 00:13:58,879 そうか 分かった… 233 00:13:59,004 --> 00:14:01,674 (電話を切る音) どうしたんだ? 何かあったのか? 234 00:14:02,508 --> 00:14:04,552 朝木時雨が死んだそうだ 235 00:14:04,802 --> 00:14:06,136 (はじめ)アッ… 236 00:14:07,596 --> 00:14:11,058 ア… アア… 237 00:14:35,165 --> 00:14:36,834 (葉月)早いものですね 238 00:14:36,959 --> 00:14:39,879 時雨が亡くなって もう ふた月たちました 239 00:14:40,880 --> 00:14:45,175 何もかも 全てが夢だったような気がします 240 00:14:46,302 --> 00:14:48,012 秋絵ちゃんは元気ですか? 241 00:14:48,345 --> 00:14:52,641 ええ 時雨が亡くなったときは 声をからして泣いて… 242 00:14:53,017 --> 00:14:56,353 それでも 一生懸命 私を励ましてくれました 243 00:14:56,687 --> 00:14:58,981 秋絵さんは ホントにいい子です 244 00:14:59,106 --> 00:15:01,567 秋絵さんが 朝木家にいてくれるから― 245 00:15:01,692 --> 00:15:04,486 私は 安心して村を離れることができます 246 00:15:04,695 --> 00:15:05,988 村を離れる? 247 00:15:08,824 --> 00:15:11,493 私 警察に自首するつもりなんです 248 00:15:11,660 --> 00:15:12,494 えっ? 249 00:15:12,620 --> 00:15:15,915 どうしてですか? 犯人は 春子さんだったのに 250 00:15:16,040 --> 00:15:18,626 葉月さん もしかして あなたは… 251 00:15:18,751 --> 00:15:19,418 えっ? 252 00:15:20,002 --> 00:15:22,379 全て お見通しなんでしょうね 253 00:15:22,880 --> 00:15:26,717 あの雷祭の日 ホントは何が起こったのか 254 00:15:27,051 --> 00:15:28,552 (はじめ)ええ… 255 00:15:29,011 --> 00:15:32,139 武藤さんを殺したのは 時雨ちゃんですね 256 00:15:33,182 --> 00:15:33,849 えっ? 257 00:15:34,266 --> 00:15:37,061 あの日 時雨ちゃんは 全てを見ていたんだ 258 00:15:41,857 --> 00:15:45,361 (はじめ)カッとなった春子さんは 武藤さんを殴ったが― 259 00:15:45,819 --> 00:15:48,322 殺すほどの打撃にはならなかった 260 00:15:49,198 --> 00:15:52,743 逆に 自分が頭を打って 気を失ってしまったんだ 261 00:15:53,327 --> 00:15:55,704 そのとき 時雨ちゃんは考えたんだ 262 00:15:56,497 --> 00:15:58,248 今ここで武藤さんを殺せば― 263 00:15:58,374 --> 00:16:01,377 全ては春子さんの やったことになるだろうって 264 00:16:01,585 --> 00:16:04,546 (武藤)ウッ… ウウ… 時雨ちゃん 265 00:16:05,631 --> 00:16:06,715 (殴る音) (武藤)アッ! 266 00:16:09,385 --> 00:16:10,552 (明かりを消す音) 267 00:16:10,886 --> 00:16:14,056 (はじめ)そして 恐らく 離れから立ち去る時雨ちゃんを― 268 00:16:14,306 --> 00:16:15,724 あなたは目撃した 269 00:16:16,934 --> 00:16:18,394 不思議な方だわ 270 00:16:19,061 --> 00:16:21,397 何もかも見てきたように 知っていらっしゃるのね 271 00:16:21,772 --> 00:16:23,691 そのことに気づいたのは― 272 00:16:23,816 --> 00:16:27,277 葉月さんが警察で 黙秘を使ったと聞いたときでした 273 00:16:27,403 --> 00:16:28,404 何もしていない あなたが― 274 00:16:28,529 --> 00:16:31,240 黙秘をしてまで かばおうとする人間といえば― 275 00:16:31,365 --> 00:16:34,618 やはり 娘の時雨ちゃんだろうって 思ったんです 276 00:16:35,411 --> 00:16:38,288 ところが そのあとトリックを使ったのが― 277 00:16:38,414 --> 00:16:40,874 春子さんしかいないと 分かってしまった 278 00:16:41,000 --> 00:16:45,504 となると この事件は 時雨ちゃんが 春子さんに押しつけた罪を― 279 00:16:45,629 --> 00:16:47,631 春子さんが 葉月さんに転嫁したという― 280 00:16:47,756 --> 00:16:50,592 二重構造になっていると 考えるほかないんです 281 00:16:51,093 --> 00:16:52,720 おっしゃるとおりですわ 282 00:16:52,845 --> 00:16:56,015 でも ひとつだけ 分からないことがあります 283 00:16:56,140 --> 00:16:59,226 なぜ 時雨ちゃんが武藤さんを殺したのか 284 00:17:01,478 --> 00:17:02,896 教えてください 285 00:17:03,022 --> 00:17:06,858 朝木冬生が死んだ日 一体 何があったのか 286 00:17:08,193 --> 00:17:10,112 (泣き声) (美雪・はじめ)あっ… 287 00:17:11,195 --> 00:17:15,451 お話ししましょう 主人は 自殺などしなかった 288 00:17:15,742 --> 00:17:17,036 (美雪・はじめ)えっ? 289 00:17:18,829 --> 00:17:20,329 (葉月)私が殺したんです 290 00:17:20,539 --> 00:17:22,082 (2人)えっ? 291 00:17:23,834 --> 00:17:27,628 私が主人のもとに嫁いだのは 3年前でした 292 00:17:30,549 --> 00:17:35,971 主人は 大変な資産家で 人間国宝にまでなった陶芸家でした 293 00:17:38,015 --> 00:17:39,892 世間さまにも 〝玉の輿(こし)〞と― 294 00:17:40,017 --> 00:17:42,311 羨まれるような 縁だったのです 295 00:17:42,811 --> 00:17:45,397 ところが この家に入ってみると― 296 00:17:45,522 --> 00:17:48,525 主人は 言葉に尽くせぬほど 気難しい人でした 297 00:17:49,485 --> 00:17:52,488 名作といわれた“空蟬”以上の器が 作れない 298 00:17:54,073 --> 00:17:55,574 行き詰まって いらだち― 299 00:17:55,699 --> 00:17:58,702 私と時雨は ビクビクおびえる日々でした 300 00:17:59,369 --> 00:18:02,831 そんなとき 時雨の絵が 主人の目に留まったのです 301 00:18:04,041 --> 00:18:06,919 奇妙な光が 主人の目に ともりました 302 00:18:07,044 --> 00:18:10,380 常軌を逸した世界に 入り込んでしまったような顔でした 303 00:18:10,923 --> 00:18:14,676 “焼き物を焼いてみろ” 時雨に そう命令したのです 304 00:18:20,933 --> 00:18:22,351 (冬生)うん? 305 00:18:23,352 --> 00:18:26,105 アッ… アア… 306 00:18:27,314 --> 00:18:28,524 (冬生)時雨! (時雨)ハッ… 307 00:18:28,941 --> 00:18:30,901 お前は いつか わしを超える 308 00:18:31,026 --> 00:18:34,029 わしの空蟬以上の物を 必ず生みだす! 309 00:18:34,196 --> 00:18:35,364 (冬生)ンッ! (時雨)あっ… 310 00:18:35,489 --> 00:18:38,200 (冬生)ンン… (時雨)アッアッ… 311 00:18:39,326 --> 00:18:42,246 (冬生)し… 死ね! (時雨)アッ… アアッ… 312 00:18:42,579 --> 00:18:43,872 (葉月)ハッ… (冬生)うん? 313 00:18:44,873 --> 00:18:45,541 (冬生)葉月! 314 00:18:45,791 --> 00:18:47,084 (突き飛ばす音) (時雨)アッ… 315 00:18:47,209 --> 00:18:48,627 (葉月)ンッ! 316 00:18:49,253 --> 00:18:50,671 (突き刺す音) (冬生)アッ! 317 00:18:54,341 --> 00:18:55,342 アアッ… 318 00:18:55,801 --> 00:18:59,346 (葉月)私は 冬生の喉を 火かき棒で突いてしまったのです 319 00:18:59,638 --> 00:19:00,889 (2人)えっ? 320 00:19:01,056 --> 00:19:03,934 (葉月)工房の壁の血痕は そのとき 苦し紛れに― 321 00:19:04,059 --> 00:19:08,856 火かき棒を引き抜いた冬生の 喉元から噴き出した血の跡なんです 322 00:19:09,606 --> 00:19:11,108 (武藤)ふ~ん… (時雨・葉月)ハッ… 323 00:19:11,692 --> 00:19:14,903 (武藤)いかにも 朝木冬生らしい最期ですね 324 00:19:15,529 --> 00:19:17,573 け… 警察を呼んでください 325 00:19:17,739 --> 00:19:20,284 まさか 自首するつもりですか? 326 00:19:20,409 --> 00:19:23,662 時雨ちゃんを 1人きりにするんですか 327 00:19:24,288 --> 00:19:26,748 これは 言いかえれば“自殺”なんですよ 328 00:19:27,249 --> 00:19:31,461 (葉月) “作品に行き詰まった朝木冬生は 錯乱状態に陥っていた” 329 00:19:31,837 --> 00:19:34,256 “自殺したとしても 怪しむ者はいない” 330 00:19:34,840 --> 00:19:36,633 武藤は そう言いだしたんです 331 00:19:36,967 --> 00:19:38,010 フフッ… 332 00:19:39,636 --> 00:19:40,846 ンッ! (割れる音) 333 00:19:41,471 --> 00:19:42,848 (葉月)空蟬をたたき割り― 334 00:19:42,973 --> 00:19:46,810 いかにも 風変わりな 芸術家らしい最期を演出したんです 335 00:19:46,977 --> 00:19:50,814 私は 悪魔の声に耳を傾けてしまった 336 00:19:52,107 --> 00:19:53,066 (葉月)あっ… 337 00:19:53,192 --> 00:19:55,110 イヤとは言えないはずですよね 338 00:19:55,736 --> 00:19:56,778 (葉月)あの子は― 339 00:19:56,904 --> 00:20:00,324 私を泥沼から救い出すために 武藤を殺したんです 340 00:20:00,824 --> 00:20:03,827 主人の死後 日記を見つけた秋絵さんは― 341 00:20:03,952 --> 00:20:07,039 主人が時雨を殺す決意を していたことを知りました 342 00:20:07,831 --> 00:20:11,877 そして その上で 父親がしたことを嘆き― 343 00:20:12,002 --> 00:20:15,464 時雨の病気を 心から心配してくれたんです 344 00:20:15,672 --> 00:20:18,550 (はじめ)病気? (葉月)時雨は 幼いころから― 345 00:20:18,675 --> 00:20:22,137 何十万人に1人といわれる難病に かかっていました 346 00:20:23,180 --> 00:20:25,140 ほとんど外出も許されず― 347 00:20:25,265 --> 00:20:28,393 小さな部屋だけが あの子の世界だったんです 348 00:20:28,894 --> 00:20:30,979 “あと半年は生きられない” 349 00:20:31,104 --> 00:20:34,775 医者に そう言われたのは 夏になる前でした 350 00:20:35,025 --> 00:20:37,069 1日3回 薬をのまなければ― 351 00:20:37,194 --> 00:20:40,197 夏の終わりまで もたないだろうと言われていました 352 00:20:40,322 --> 00:20:41,698 なのに あの子は… 353 00:20:44,409 --> 00:20:47,120 時雨が亡くなった日に知りました 354 00:20:47,246 --> 00:20:51,375 人を殺(あや)めた あの日から 薬をのむのをやめていたことを… 355 00:20:51,750 --> 00:20:52,584 アッ… 356 00:20:53,001 --> 00:20:55,337 (泣き声) 357 00:21:02,719 --> 00:21:03,637 フフッ… 358 00:21:05,097 --> 00:21:08,934 (葉月)この夏の初め あの子は 私に言いました 359 00:21:09,685 --> 00:21:13,689 “これが最後の夏だから 自由に外を歩いてみたい” 360 00:21:13,814 --> 00:21:16,316 “気の向くまま 日ざしを浴びて―” 361 00:21:16,608 --> 00:21:20,279 “たった一度だけ 雨に ぬれてみたい”と… 362 00:21:23,156 --> 00:21:27,619 私は好きよ このお祭り 雨も 363 00:21:28,495 --> 00:21:32,165 命が燃えるような気がするから 364 00:21:38,380 --> 00:21:42,259 (時雨)金田一さんと私だけの 秘密の思い出ね 365 00:21:53,478 --> 00:21:55,939 (美雪) たった15年の人生の中で― 366 00:21:56,356 --> 00:21:59,318 時雨ちゃんは 何を思っていたのかしら? 367 00:21:59,443 --> 00:22:00,402 さあな… 368 00:22:03,697 --> 00:22:06,700 (はじめ) 時雨ちゃん 聞こえるかい? 369 00:22:07,117 --> 00:22:10,537 あんな夏は もう二度と来ないだろうけど― 370 00:22:11,079 --> 00:22:12,914 君に会えて良かった 371 00:22:13,540 --> 00:22:18,545 ♪~ 372 00:23:42,963 --> 00:23:47,968 ~♪ 373 00:23:49,928 --> 00:23:52,722 (はじめ) う~ん… あれは 昼下がりのこと 374 00:23:52,889 --> 00:23:56,017 私と剣持(けんもち)警部は 小さなレストランに立ち寄りました 375 00:23:56,518 --> 00:23:59,855 私たちを迎えたマスターは 何事もなく料理を運んできました 376 00:24:00,480 --> 00:24:04,526 でも あのときの あの姿を見て 私は確信しました 377 00:24:04,693 --> 00:24:07,237 マスター あなたは 人を殺しましたね? 378 00:24:07,404 --> 00:24:09,406 うまく ごまかしたつもりでしょうが― 379 00:24:09,573 --> 00:24:12,200 ある決定的な証拠を残してます 380 00:24:12,325 --> 00:24:13,618 ほら そこに… 381 00:24:13,785 --> 00:24:14,744 「金田一少年の事件簿」