1 00:00:05,404 --> 00:00:07,773 (足音) (信(しん))うん? 2 00:00:08,607 --> 00:00:09,641 羌瘣(きょうかい)… 3 00:00:10,675 --> 00:00:12,811 (羌瘣)趙国(ちょうこく)のことが気がかりか? 4 00:00:14,112 --> 00:00:15,680 (信)松左(しょうさ)は これで俺たちが― 5 00:00:15,781 --> 00:00:20,285 しばらく趙国と やり合うことは ねえと言ったが… なんだかな 6 00:00:21,553 --> 00:00:22,687 俺は― 7 00:00:23,355 --> 00:00:26,124 1日でも早く 李牧(りぼく)と戦いてえ 8 00:00:26,792 --> 00:00:28,093 (羌瘣)敵(かたき)か? 9 00:00:28,193 --> 00:00:31,797 まあ お前の敵とは 感じが違うだろうけどよ 10 00:00:32,531 --> 00:00:35,300 無念を晴らすという意味では同じだ 11 00:00:35,600 --> 00:00:38,403 じゃ お互い 早くケリをつけようぜ 12 00:00:41,606 --> 00:00:42,574 どうした? 13 00:00:43,341 --> 00:00:45,343 早馬が来る (信)ンッ… 14 00:00:53,285 --> 00:00:56,822 (信)遅(おせ)えぞ 伝者のおっさん! (伝者)さ… 先に行け! 15 00:00:57,155 --> 00:00:59,624 (伝者)2人の名で 関を通れるようになってる 16 00:00:59,758 --> 00:01:00,826 (信)分かった! 17 00:01:01,760 --> 00:01:05,630 李牧が咸陽(かんよう)に現れるだと? 一体 何が起こってんだ? 18 00:01:09,234 --> 00:01:12,637 (昌文君(しょうぶんくん)) まったく なんということを しでかしおったのだ あの男は! 19 00:01:13,171 --> 00:01:17,442 大王さまの許可も得ずに こんな暴挙… 許されんぞ 呂不韋(りょふい)め 20 00:01:17,576 --> 00:01:19,244 (肆氏(しし))少し落ち着け 昌文君 21 00:01:19,344 --> 00:01:21,413 (昌文君) これが落ち着いていられるか! 22 00:01:21,513 --> 00:01:25,417 ともかく今は あの男が 何を考えているのかが重要だ 23 00:01:25,517 --> 00:01:27,486 (昌文君)何にも考えておらんわ! 24 00:01:27,786 --> 00:01:29,521 (蔡沢(さいたく))ウヒョヒョヒョ… 25 00:01:29,621 --> 00:01:34,359 久しぶりに戻ってみれば 大層な騒ぎを起こされましたなぁ 26 00:01:34,459 --> 00:01:38,263 少々 度を超えた悪ふざけですぞ 丞相(じょうしょう) 27 00:01:39,297 --> 00:01:43,168 (ナレーター)かつて 呂不韋は 各国を渡り歩く商人だった 28 00:01:43,635 --> 00:01:49,274 十数年前 趙国に住んでいた彼は 春平君(しゅんぺいくん)という少年と知り合う 29 00:01:51,877 --> 00:01:55,280 時は 今回の騒動より少し遡る 30 00:01:55,914 --> 00:02:01,152 何を思ったのか 呂不韋は 突然 春平君に書簡を送った 31 00:02:01,486 --> 00:02:04,356 “2人の力で 秦国(しんこく) 趙国の国交を―” 32 00:02:04,456 --> 00:02:07,359 “少しずつ 回復させよう”というものだった 33 00:02:08,426 --> 00:02:10,695 悼襄王(とうじょうおう)の寵愛(ちょうあい)を受ける春平君は― 34 00:02:10,795 --> 00:02:14,866 王に喜ばれたい一心で ひそかに秦国を訪れた 35 00:02:15,467 --> 00:02:20,305 しかし 事もあろうか 呂不韋は 春平君を拉致してしまったのである 36 00:02:21,406 --> 00:02:26,511 そして“人質を返してほしくば 宰相を迎えに来させろ”と― 37 00:02:26,645 --> 00:02:28,647 脅迫状を送ったのだ 38 00:02:29,247 --> 00:02:30,916 (悼襄王)李牧を呼べい! 39 00:02:33,652 --> 00:02:35,921 (カイネ) あ… ありえません 李牧さま! 40 00:02:36,221 --> 00:02:38,423 わざわざ 殺されに行くようなものです 41 00:02:38,557 --> 00:02:40,425 (部下1) カイネどのの言われるとおり 42 00:02:40,525 --> 00:02:43,195 王騎(おうき)の一件で 秦国は いきりたっております 43 00:02:43,295 --> 00:02:45,664 (部下2) 何を考えておられるのか 我が王は 44 00:02:45,764 --> 00:02:48,533 春平君ごとき小者のために 李牧さまを… 45 00:02:48,667 --> 00:02:50,368 (部下3) しばし お待ちを 李牧さま 46 00:02:50,468 --> 00:02:52,871 今 大臣の方々が 王を説得しております 47 00:02:52,971 --> 00:02:56,308 (公孫龍(こうそんりゅう))説得してもムダだ (どよめき) 48 00:02:56,408 --> 00:02:58,910 (部下1)公孫龍将軍… (公孫龍)ああなっては 49 00:02:59,211 --> 00:03:01,947 我らが王は 他の意見を聞き入れぬ 50 00:03:02,914 --> 00:03:06,918 しかし 秦国は 痛い所を突いてきましたな 51 00:03:07,219 --> 00:03:10,956 (李牧)さすがに 呂氏は 趙王の性格をよく知っています 52 00:03:11,923 --> 00:03:13,525 行くのですか? 53 00:03:15,894 --> 00:03:18,997 “断ったら 反逆罪で打ち首だ”と言われました 54 00:03:20,865 --> 00:03:22,567 命懸けですぞ 55 00:03:22,701 --> 00:03:25,770 行かぬのも命懸けです それに― 56 00:03:26,371 --> 00:03:30,575 これは 咸陽と呂不韋という人間を この目で見るいい機会です 57 00:03:34,679 --> 00:03:36,715 (李牧)3代前の君主 武霊王(ぶれいおう)も 58 00:03:36,815 --> 00:03:39,784 かつて 命懸けで咸陽に乗り込みました 59 00:03:40,652 --> 00:03:45,390 その話なら聞いたことがある 武霊王は秦国を討ち滅ぼすため― 60 00:03:45,490 --> 00:03:49,427 趙国の使者 趙呂(ちょうしょう)と偽り 昭王(しょうおう)に謁見した 61 00:03:49,828 --> 00:03:52,764 李牧さまは それに ならおうとしているのだ 62 00:03:52,864 --> 00:03:57,402 しかも今回は わざわざ 向こうが 強引に場を作ってくれた 63 00:03:57,936 --> 00:03:59,804 行かないわけには いきません 64 00:04:00,405 --> 00:04:01,373 (公孫龍)うむ… 65 00:04:01,940 --> 00:04:06,845 私も軍を率いて お供しましょう (李牧)それは心強い 66 00:04:07,746 --> 00:04:09,881 (迫氏(さこし))まもなく李牧は咸陽に入る 67 00:04:09,981 --> 00:04:13,818 (廷臣1)丞相は この事態を どう収拾されるつもりなのだ? 68 00:04:13,918 --> 00:04:15,420 (廷臣2)軍は どうしておる? 69 00:04:15,553 --> 00:04:19,324 (迫氏)南門に駐屯している それも丞相のご命令だ 70 00:04:19,424 --> 00:04:22,527 なんということだ これでは万が一のときに… 71 00:04:22,627 --> 00:04:25,563 ええい! 当の丞相は どこに行かれたのだ! 72 00:04:25,664 --> 00:04:26,831 (昌文君)静まれ 73 00:04:26,965 --> 00:04:30,969 ここに至っては 今更 ジタバタ騒いでも しかたがない 74 00:04:31,069 --> 00:04:35,440 李牧を迎え入れ 丞相の出方を待つ よいな? 75 00:04:36,374 --> 00:04:40,445 (政(せい))呂不韋 一体 何の考えがあって こんなことを… 76 00:04:43,448 --> 00:04:46,885 (李斯(りし))よろしいのですか? みな騒いでおりますが 77 00:04:47,419 --> 00:04:48,453 (呂不韋)李斯よ 78 00:04:48,920 --> 00:04:52,057 李牧という男 ぬしは どう見る? 79 00:04:52,590 --> 00:04:57,495 はっ… 先の戦での 耳を 疑うほどの情報操作術 80 00:04:57,595 --> 00:05:01,466 これまでの策士の枠を 突き抜けた危険人物かと 81 00:05:01,599 --> 00:05:05,070 ハハハッ! そういうことを 言っているのではない 82 00:05:05,570 --> 00:05:08,073 わしは 韓(かん)の国の陽翟(ようてき)に生まれ 83 00:05:08,373 --> 00:05:11,543 一介の商人から ここまで上ってきた 84 00:05:11,643 --> 00:05:14,679 故に 品を定める目は確かだ 85 00:05:14,979 --> 00:05:19,484 さてさて 李牧は どんな男かのぅ? 86 00:05:23,021 --> 00:05:26,825 やっぱ みんな バタついてやがる いつもの王宮の感じじゃねえ 87 00:05:26,925 --> 00:05:28,393 (廷臣)急げ こっちだ 88 00:05:37,969 --> 00:05:42,607 しょ… 昌平君(しょうへいくん) (昌平君)遠路 ご苦労であった 89 00:05:42,907 --> 00:05:47,412 飛信(ひしん)隊の信 前線での活躍は耳にしているぞ 90 00:05:47,545 --> 00:05:51,116 ンンッ… (廷臣)こ… こら 頭を下げんか 91 00:05:51,449 --> 00:05:53,051 (信)お前が俺を呼んだのか? 92 00:05:53,151 --> 00:05:56,721 (廷臣)バカか! この方は 軍の総司令さまだぞ 93 00:05:56,821 --> 00:06:00,458 (昌平君) よい 3人で話す お前は下がれ 94 00:06:02,660 --> 00:06:05,930 ン~ッ… (昌平君)言葉を慎め 信 95 00:06:06,064 --> 00:06:11,936 私は今 呂氏四柱(しちゅう)ではなく 秦国総司令として話をしている 96 00:06:13,004 --> 00:06:15,673 (江亜(こうあ))李牧が咸陽に入ったそうだ 97 00:06:15,774 --> 00:06:18,743 (蒙毅(もうき))いよいよですね (貂(てん))李牧か… 98 00:06:19,477 --> 00:06:22,747 (貂)カイネも来ているのかな? (蒙毅)多分ね 99 00:06:22,881 --> 00:06:27,185 (貂)敵地のド真ん中に 飛び込むなんて 怖くないのかな? 100 00:06:27,752 --> 00:06:29,621 (蒙毅)恐ろしいに決まってる 101 00:06:29,721 --> 00:06:32,857 ただ 僕は もっと ほかのことを考えている 102 00:06:33,658 --> 00:06:35,160 ほかのこと? 103 00:06:35,660 --> 00:06:39,164 先生の立場で 今回の会見を考えてみた 104 00:06:39,731 --> 00:06:41,766 李牧を呼んだのは丞相だ 105 00:06:41,900 --> 00:06:44,769 (昌平君) 丞相の本意は 私にも分からぬ 106 00:06:44,903 --> 00:06:48,773 だが 準備はしておけということだ (信)準備? 107 00:06:49,140 --> 00:06:53,178 2人は 衛兵に姿を変え 会見に紛れ込め 108 00:06:53,745 --> 00:06:56,981 (蒙毅)秦国の命運を 左右しかねない この状況で― 109 00:06:57,515 --> 00:07:00,552 もし 万が一の事態が起きた場合 110 00:07:01,019 --> 00:07:03,788 私の合図で 李牧を斬れ 111 00:07:06,758 --> 00:07:08,960 (蒙毅) 先生は そう命じられるだろう 112 00:07:09,227 --> 00:07:12,831 (江亜)あっ… そういえば 飛信隊の信と羌瘣という者を― 113 00:07:12,931 --> 00:07:15,500 前線から呼び寄せたそうだ (貂・蒙毅)えっ! 114 00:07:15,834 --> 00:07:19,504 河了貂(かりょうてん) 確か信というのは お前と… 115 00:07:19,737 --> 00:07:21,973 ま… まさか… 116 00:07:24,742 --> 00:07:27,512 俺に 刺客になれというのか? 117 00:07:28,246 --> 00:07:30,715 そうだ (信)断る! 118 00:07:33,651 --> 00:07:35,920 そんな卑怯(ひきょう)なマネ 誰がするか! 119 00:07:36,187 --> 00:07:40,992 そんなんでヤツを殺しちまったら 王騎将軍に合わせる顔がねえだろう 120 00:07:42,861 --> 00:07:45,763 (昌平君)だが お前が斬らずとも ほかが斬るぞ 121 00:07:49,067 --> 00:07:51,135 も… 蒙武(もうぶ) 122 00:07:55,707 --> 00:07:57,141 騰(とう)と軍長たち 123 00:07:58,576 --> 00:07:59,944 (昌平君)信… (信)ハッ… 124 00:08:00,078 --> 00:08:01,679 お前を呼んだのは― 125 00:08:01,779 --> 00:08:06,751 王騎より矛を受け取ったという お前への せめてもの私の温情だ 126 00:08:07,085 --> 00:08:11,956 なぜか分からぬが 丞相は 趙の一行に帯剣を許した 127 00:08:14,125 --> 00:08:18,162 (昌平君)奇妙な形ではあるが こうなっては もはや これは― 128 00:08:18,663 --> 00:08:19,731 戦だ! 129 00:08:32,265 --> 00:08:34,934 趙国宰相 李牧です 130 00:08:35,068 --> 00:08:38,038 秦国丞相 呂不韋である 131 00:08:49,149 --> 00:08:51,818 こ… こいつが李牧 132 00:08:52,285 --> 00:08:54,754 この気配… 見た目とは真逆で― 133 00:08:54,854 --> 00:08:57,424 ものすげえ武のにおいに 覆われてやがる 134 00:08:58,224 --> 00:09:00,794 (政) 間違いない 李牧は武人として― 135 00:09:00,894 --> 00:09:04,030 とんでもない数の 戦場をくぐり抜けてきた人間だ 136 00:09:04,164 --> 00:09:08,001 ヤツの策には 現場の経験 その裏付けがある 137 00:09:08,101 --> 00:09:10,036 だから 王騎を討てたのだ 138 00:09:15,709 --> 00:09:17,043 (蔡沢)ウヒョヒョ… 139 00:09:17,177 --> 00:09:19,879 どうやら 趙国側は趙国側で― 140 00:09:19,979 --> 00:09:23,850 丞相の大きさに 圧倒されておるようじゃのぅ 141 00:09:24,117 --> 00:09:27,253 ついに会えましたな 李牧宰相 142 00:09:27,854 --> 00:09:31,858 お目にかかれて うれしく思います 呂不韋丞相 143 00:09:39,399 --> 00:09:41,468 わ… 笑いやがった 144 00:09:41,901 --> 00:09:46,072 ハハッ… しかし 本当に よく来られましたな 宰相 145 00:09:46,172 --> 00:09:48,875 邯鄲(かんたん)は今 どんな様子ですか? 146 00:09:49,008 --> 00:09:51,911 わしがいたときより 栄えてましょうな 147 00:09:52,011 --> 00:09:53,179 そうですね 148 00:09:53,279 --> 00:09:57,083 私は ずっと辺境にいましたので 変化までは分かりませんが 149 00:09:57,217 --> 00:10:01,821 きっと そうなのだと思いますよ (呂不韋)邯鄲は懐かしい 150 00:10:01,921 --> 00:10:06,092 咸陽も都ですが 華やかさが違う あれは正に― 151 00:10:06,226 --> 00:10:08,528 “中華の都”といったところだ 152 00:10:08,828 --> 00:10:12,966 趙国を去られて 確か十数年余り そのあなたが― 153 00:10:13,066 --> 00:10:16,903 大国 秦の丞相なのですから 恐ろしい才覚です 154 00:10:17,036 --> 00:10:22,108 (呂不韋)趙国を第2の母国と しながらも 敵国 秦の丞相となり 155 00:10:22,208 --> 00:10:25,478 あまつさえ 元故郷の趙国と戦っているのだから 156 00:10:25,778 --> 00:10:29,349 国の人間は さぞかし わしを軽蔑しておろうのぅ 157 00:10:29,449 --> 00:10:32,418 (李牧)めっそうもない 自らの出世を求めて― 158 00:10:32,519 --> 00:10:35,488 仕える国を変えていくのは 戦国の習い 159 00:10:35,788 --> 00:10:40,026 逆に 趙国から傑物が出たと みな喜んでおりますよ 160 00:10:40,293 --> 00:10:42,795 ハハハハッ… それは うれしい 161 00:10:42,896 --> 00:10:46,432 して 李牧どのは 宰相になられて まだ1年ほどであろうが 162 00:10:46,533 --> 00:10:47,834 いかがかな? 163 00:10:48,201 --> 00:10:53,239 昨年の戦の功績で 国民の人気は大変なものだとか 164 00:10:53,506 --> 00:10:56,576 正直言って “息苦しい”の ひと言ですね 165 00:10:56,876 --> 00:10:58,344 (どよめき) 私は本来 166 00:10:58,478 --> 00:11:01,481 人の上に 立つような人間ではありませんので 167 00:11:01,581 --> 00:11:05,518 国家だの 民だのを任されるのは 大変な重荷 168 00:11:06,085 --> 00:11:10,557 雅(みやび)な町並みにも慣れませんし できれば 辺境の地に戻り 169 00:11:11,491 --> 00:11:13,927 そこで 仲間と共に土地を守り 170 00:11:14,027 --> 00:11:18,364 家族でも作って 羊を飼って ゆっくりと年を取っていく 171 00:11:18,932 --> 00:11:21,968 そんな平穏な生活を 送りたいものです 172 00:11:22,101 --> 00:11:24,404 ハハハッ! ご冗談を 173 00:11:24,504 --> 00:11:28,975 国の英雄となった貴殿が そんな しょぼくれた夢をお持ちだとは 174 00:11:29,108 --> 00:11:34,180 あの王騎をハメ殺した男は もっと 大きな人間だと思っておったが 175 00:11:34,447 --> 00:11:35,582 逆ですよ 176 00:11:35,915 --> 00:11:40,086 小さい男だから あれこれと こざかしい策を必死に練る 177 00:11:40,186 --> 00:11:41,521 卑怯でも何でもいい 178 00:11:41,621 --> 00:11:44,891 こちらが傷つかぬためなら 手段を選ばぬ 179 00:11:44,991 --> 00:11:46,392 宰相になってからは― 180 00:11:46,492 --> 00:11:50,430 あなたのような豪胆な 人間だったらと羨ましく思いますが 181 00:11:50,530 --> 00:11:51,397 まあ… 182 00:11:51,531 --> 00:11:55,201 そうしたら 私は 王騎将軍を討てなかったでしょうね 183 00:11:56,536 --> 00:12:00,873 ハハハハッ! なるほど 李牧どのは小心者か 184 00:12:03,443 --> 00:12:05,612 そうか ハハハッ… 185 00:12:06,980 --> 00:12:10,016 では そろそろ本題に入ろうか 186 00:12:10,883 --> 00:12:13,620 やはり 李牧どのには ここで死んでもらう 187 00:12:13,953 --> 00:12:16,022 なっ… (部下たち)なに! 188 00:12:16,256 --> 00:12:19,225 ただの策士なら 殺すに足らんと思っておったが 189 00:12:19,325 --> 00:12:21,628 もちろん貴殿は そうではない 190 00:12:22,095 --> 00:12:25,031 自分を 小心者と言うのは かまわぬが 191 00:12:25,164 --> 00:12:28,034 それは 人の大きさを表すものではない 192 00:12:28,401 --> 00:12:32,672 強欲でないことは確かだろう 欲の塊のような わしには― 193 00:12:32,972 --> 00:12:36,209 普通 そういう人間は ちっぽけに見えるのだが 194 00:12:36,309 --> 00:12:39,979 なぜか 貴殿は むしろ 恐ろしく強大に見える 195 00:12:40,079 --> 00:12:42,315 だから ここで殺す 196 00:12:44,584 --> 00:12:49,656 だが 貴殿に限って これが 不測の事態ということはなかろう 197 00:12:49,989 --> 00:12:55,261 さあ 天才 李牧は どうやって この死地を切り抜けるかのぅ 198 00:12:59,432 --> 00:13:02,135 (李牧) もちろん手土産を用意していますよ 199 00:13:02,235 --> 00:13:04,337 (呂不韋)うむ… その手土産 200 00:13:04,437 --> 00:13:08,975 当然 貴殿の首より 重いものでなくては意味がないぞ 201 00:13:09,342 --> 00:13:11,377 フッ… 承知しております 202 00:13:17,517 --> 00:13:19,185 (信)地図が手土産? 203 00:13:19,319 --> 00:13:21,187 (政)いや そんなわけはない 204 00:13:23,656 --> 00:13:27,994 公孫龍将軍 何か聞いていますか? (公孫龍)いいや 205 00:13:28,127 --> 00:13:30,296 (李牧)恐れながら 私は これより 206 00:13:30,396 --> 00:13:34,200 秦国の軍略家となって 話をさせていただきます 207 00:13:34,334 --> 00:13:36,402 ハハッ… 伺おう 208 00:13:36,703 --> 00:13:42,208 いま中華は 戦国七雄の時代と呼ばれています 209 00:13:42,342 --> 00:13:46,245 しかし 実際のところ その国力は それぞれに差があり 210 00:13:46,346 --> 00:13:49,716 昭王の時代に 一気に勢力を拡大した秦と― 211 00:13:50,016 --> 00:13:53,019 領土が 実に中華の半分に及ぶ楚(そ) 212 00:13:53,119 --> 00:13:58,091 この2か国を“上”とすれば 趙 魏(ぎ) 斉(せい) 燕(えん)は“中” 213 00:13:58,458 --> 00:14:03,329 そして 最も領土が小さく 軍も 弱い韓が“下”と言えるでしょう 214 00:14:03,429 --> 00:14:07,367 そして この7か国は なんとも絶妙な均衡を保ち 215 00:14:07,467 --> 00:14:10,536 実に 200年近くも争いを続けています 216 00:14:11,137 --> 00:14:15,475 しかし 我ら秦国が 本気で中華制覇を目指すとすれば 217 00:14:15,575 --> 00:14:19,345 ムリをしてでも 1か国ずつ つぶしていかねばならない 218 00:14:19,445 --> 00:14:21,547 ならば まず最初に目につくのが 219 00:14:21,647 --> 00:14:23,716 弱小国 韓です 220 00:14:24,017 --> 00:14:27,754 この韓という国 実は 秦国にとって重要な存在 221 00:14:28,221 --> 00:14:31,391 なぜならば 秦国が 中華に打って出る道を― 222 00:14:31,491 --> 00:14:33,559 韓が塞いでいるからです 223 00:14:34,160 --> 00:14:38,398 秦国は なんとしても この韓をつぶさねば夢は実現しない 224 00:14:38,498 --> 00:14:39,365 しかし― 225 00:14:39,499 --> 00:14:42,168 ここで 大きな問題が発生する 226 00:14:42,535 --> 00:14:45,772 この弱小国 韓は 絶対に滅びないのです 227 00:14:46,105 --> 00:14:49,575 なぜなら 秦国が韓を落とそうとすると― 228 00:14:49,709 --> 00:14:54,180 趙国と魏国が 大軍を起こして 韓に援軍を送るからです 229 00:14:54,313 --> 00:14:55,381 なに! 230 00:14:56,249 --> 00:15:01,254 (李牧)韓は 魏国と趙国にとって 秦国を防ぐ大切な盾なのです 231 00:15:01,354 --> 00:15:05,358 韓が抜かれては 秦国の刃(やいば)が 2国の喉元に迫りますから― 232 00:15:05,458 --> 00:15:08,594 絶対に それを阻止に出る ですから― 233 00:15:08,728 --> 00:15:12,832 まず秦国が攻めるのは 韓ではなく 魏国です 234 00:15:13,132 --> 00:15:15,401 韓を助ける力がなくなるまで― 235 00:15:15,535 --> 00:15:17,804 魏国を徹底的に たたくのです 236 00:15:18,137 --> 00:15:21,707 そうすれば あと 韓を助けるのは趙国のみ 237 00:15:22,508 --> 00:15:23,810 しかし このとき 238 00:15:24,410 --> 00:15:29,415 趙が 韓を助けぬことを 李牧宰相は約束します 239 00:15:32,518 --> 00:15:35,521 ただし これには条件があります 240 00:15:35,855 --> 00:15:40,226 ここからは 私は趙国の宰相 李牧に戻ります 241 00:15:40,560 --> 00:15:42,628 我が麗しき趙国を見れば― 242 00:15:42,762 --> 00:15:47,800 因縁深い秦と燕 この2国に見事に挟まれているため 243 00:15:48,101 --> 00:15:52,638 国力を左右に分けざるをえず 趙国にとって最大の難題 244 00:15:53,172 --> 00:15:57,243 よって 我らは これから 燕との戦いに集中します 245 00:15:57,343 --> 00:15:58,444 その間 246 00:15:58,744 --> 00:16:02,849 秦国は 絶対に我らに 手を 出さぬことを約束していただきたい 247 00:16:06,486 --> 00:16:08,754 ちょ… ちょっと それって… 248 00:16:09,755 --> 00:16:11,357 それは つまり… 249 00:16:11,691 --> 00:16:14,360 ええ “秦趙同盟”です 250 00:16:17,196 --> 00:16:19,365 ど… 同盟? 251 00:16:19,499 --> 00:16:22,802 秦国と趙国で同盟だって? 252 00:16:25,505 --> 00:16:26,772 (録嗚未(ろくおみ))ふざけるな! 253 00:16:26,906 --> 00:16:30,376 (録嗚未)なんで俺たちが 貴様らと同盟を結ばねばならんのだ 254 00:16:30,510 --> 00:16:32,211 (録嗚未) 茶番は もう十分だ 255 00:16:32,311 --> 00:16:34,480 さっさと号令を下されよ 丞相! 256 00:16:34,614 --> 00:16:37,350 亡き王騎将軍に代わり この録嗚未が― 257 00:16:37,450 --> 00:16:39,886 こやつら全員の首を たたき落としてくれる! 258 00:16:40,219 --> 00:16:43,489 場をわきまえぬか! これは茶番ではないぞ 259 00:16:44,157 --> 00:16:46,626 そなたたちの気持ちは 十分 分かるが 260 00:16:46,726 --> 00:16:49,795 今この場に 武人の出る幕はない 261 00:16:54,300 --> 00:16:57,803 うむ… しかし これは驚いた まさか― 262 00:16:57,937 --> 00:17:01,407 趙国側から 同盟を持ちかけてくるとは 263 00:17:01,541 --> 00:17:03,910 (昌文君) もともと李牧をここで殺しては― 264 00:17:04,210 --> 00:17:08,814 我が国は 6国の信を失い 孤立する不利益のほうが多い 265 00:17:08,948 --> 00:17:12,218 この話 決して悪い話ではない 266 00:17:12,351 --> 00:17:14,387 落としどころだぞ 呂不韋 267 00:17:14,954 --> 00:17:16,422 断る 268 00:17:19,192 --> 00:17:21,727 こ… 断った! 269 00:17:25,464 --> 00:17:29,535 同盟を持ってきた李牧どのは さすがとしか言いようがない 270 00:17:29,669 --> 00:17:34,740 今この時機に趙国と盟を結ぶことは 国に大きな利益を生む 271 00:17:34,840 --> 00:17:38,344 しかし これを持ってきた李牧という人間 272 00:17:38,477 --> 00:17:42,348 やはり 貴殿は 趙国唯一無二の宝だ 273 00:17:42,481 --> 00:17:46,953 その李牧どのの首と 今回の同盟を値踏みしてみたところ 274 00:17:47,253 --> 00:17:48,554 ほんの僅かだが 275 00:17:48,888 --> 00:17:52,959 貴殿の首の値が上と わしは見た だが― 276 00:17:53,292 --> 00:17:55,761 それゆえに交渉の余地がある 277 00:17:55,895 --> 00:17:57,964 (どよめき) 交渉だと? 278 00:17:58,431 --> 00:18:00,900 (呂不韋)う~ん… そうじゃのぅ 279 00:18:03,502 --> 00:18:06,005 う~ん… では 李牧どの 280 00:18:06,706 --> 00:18:09,375 城でも1つ おまけしてくれぬか? 281 00:18:09,508 --> 00:18:10,676 (部下)城だと? 282 00:18:12,478 --> 00:18:17,483 …と おっしゃいますと 城を1つ タダで明け渡せと? 283 00:18:17,783 --> 00:18:19,252 そうじゃのぅ 284 00:18:19,352 --> 00:18:24,490 昔 商いで よく足を運んだ地で 気に入った場所があったのぅ 285 00:18:24,857 --> 00:18:28,294 おお 確か“韓皋(かんこう)”だったかな? 286 00:18:28,861 --> 00:18:30,296 韓皋だと? 287 00:18:30,429 --> 00:18:31,697 李牧さま! 288 00:18:33,432 --> 00:18:37,470 韓皋とは 趙国南西部の韓皋のことか? 289 00:18:37,570 --> 00:18:39,305 ああ 間違いない 290 00:18:39,438 --> 00:18:41,040 近年 国境の変化から 291 00:18:41,340 --> 00:18:44,744 軍事的重要性が 急浮上した韓皋 292 00:18:45,278 --> 00:18:48,547 李牧は 宰相に就任して すぐ この地に目をつけ 293 00:18:48,648 --> 00:18:51,317 一帯防衛の強化に着手し 294 00:18:51,417 --> 00:18:57,423 その中心に 巨大な城の建造を始め 完成間近との報告が入っている 295 00:18:58,024 --> 00:19:00,760 仮に 我らが その城を取ろうとするなら 296 00:19:00,860 --> 00:19:05,464 どれほどの兵の命と 金と時間を必要とすることか 297 00:19:06,065 --> 00:19:12,004 その韓皋城をタダでよこせなどとは まともな発想ではないぞ 呂不韋は 298 00:19:12,872 --> 00:19:17,310 ウヒョヒョヒョ… さすがは丞相 299 00:19:17,410 --> 00:19:20,346 吹っかけ方が半端でありませんのぅ 300 00:19:20,479 --> 00:19:25,818 丞相の本心 秦趙同盟だけで 落としどころは十分のはず 301 00:19:25,918 --> 00:19:26,952 そこから先は― 302 00:19:27,086 --> 00:19:31,957 もう少し搾り取れぬものかという 商人気質による吹っかけ 303 00:19:34,093 --> 00:19:38,497 今度は李牧の番じゃ 果たして あの丞相から― 304 00:19:38,597 --> 00:19:42,068 この吹っかけを 値切ることができるかのぅ? 305 00:19:43,469 --> 00:19:46,872 (李牧)城1つなれど 私の一存では決められません 306 00:19:46,972 --> 00:19:50,476 一度 国に帰り 王の裁可を… (呂不韋)否! 307 00:19:50,576 --> 00:19:54,380 貴殿が渡すと言えば 趙王は必ず それを許す 308 00:19:54,513 --> 00:19:55,948 何しろ こちらには― 309 00:19:56,048 --> 00:20:01,620 貴殿に命を懸けさせてまで 取り戻したい春平君がいるからな 310 00:20:02,855 --> 00:20:05,591 では 韓皋以外の城で検討を 311 00:20:05,991 --> 00:20:08,060 その城は いまだ建設中のうえに 312 00:20:08,361 --> 00:20:12,798 秦国にとって 魏国との国境も近く 使い勝手は決して よくありません 313 00:20:12,932 --> 00:20:14,734 いや 韓皋がよい 314 00:20:14,834 --> 00:20:17,803 もし ほかの城というなら 10は必要じゃぞ 315 00:20:19,138 --> 00:20:20,873 言っておくが 李牧どの 316 00:20:20,973 --> 00:20:24,410 わしは これまで 商談で 一度 口にした値からは― 317 00:20:24,543 --> 00:20:27,012 ビタ一文 まけたことのない男だぞ 318 00:20:28,948 --> 00:20:30,816 (呂不韋)ハハハッ… もうよい 319 00:20:31,150 --> 00:20:35,020 化かし合いは ここまでじゃ ものは卓上に そろった 320 00:20:35,154 --> 00:20:37,623 もはや あるのは単純な2択 321 00:20:37,723 --> 00:20:40,826 韓皋城を明け渡して 秦趙同盟を成すか― 322 00:20:41,160 --> 00:20:45,664 この場で 李牧どのと そのお仲間全員を処刑するか 323 00:20:45,965 --> 00:20:47,666 2つに1つだ 324 00:20:48,067 --> 00:20:53,639 さあ 李牧宰相 返答は いかに? 325 00:21:05,584 --> 00:21:09,488 残念ながら 値切れる気が全くしません 326 00:21:09,588 --> 00:21:11,457 韓皋をお渡しします 327 00:21:11,891 --> 00:21:13,058 よし! 328 00:21:13,826 --> 00:21:16,595 秦趙同盟 成立じゃ 329 00:21:19,198 --> 00:21:21,567 わめき散らさなくてもいいのか? 330 00:21:22,168 --> 00:21:25,638 わめくっても 話してることが でかすぎる… 331 00:21:25,905 --> 00:21:29,842 呂不韋が言ったとおり これは 武人の出る幕じゃねえ 332 00:21:31,544 --> 00:21:33,979 お前は あんなバケモノと闘ってるのか 333 00:21:34,647 --> 00:21:35,748 政…