1 00:00:02,086 --> 00:00:05,214 (ナレーター)月がなくなり 闇が濃くなると 2 00:00:05,715 --> 00:00:07,091 烏妃(うひ)は その身に 3 00:00:07,174 --> 00:00:10,469 烏漣娘娘(うれんにゃんにゃん)を とどめておけなくなるという 4 00:00:12,221 --> 00:00:12,972 (柳(りゅう) 寿雪(じゅせつ))ううっ 5 00:00:14,598 --> 00:00:15,975 うっ うう… 6 00:00:24,233 --> 00:00:25,443 (咆哮) (寿雪)うああっ! 7 00:00:25,526 --> 00:00:28,946 (ナレーター)化鳥(けちょう)が 夜の間をはいかいするとき 8 00:00:29,029 --> 00:00:33,200 烏妃は身を引きちぎられるような 痛みを味わう 9 00:00:33,284 --> 00:00:35,286 (寿雪)うっ うう… 10 00:00:37,997 --> 00:00:39,999 (寿雪)ああっ うっ… 11 00:00:41,000 --> 00:00:42,001 (九九(じうじう))娘娘(にゃんにゃん)! 12 00:00:43,753 --> 00:00:44,420 うっ 13 00:00:44,503 --> 00:00:46,422 (桂子(けいし))近づいてはならない 14 00:00:46,505 --> 00:00:47,506 どうして? 15 00:00:47,757 --> 00:00:49,175 烏妃の定めだから 16 00:00:49,717 --> 00:00:51,719 ずっと前から そうだった 17 00:00:52,636 --> 00:00:54,472 麗娘(れいじょう)様も そうだった 18 00:00:54,889 --> 00:00:55,890 (九九)そんな… 19 00:01:00,603 --> 00:01:01,812 (咆哮) 20 00:01:03,397 --> 00:01:04,315 (寿雪)うう… 21 00:01:06,108 --> 00:01:06,901 ううっ 22 00:01:08,319 --> 00:01:09,278 うっ 23 00:01:12,573 --> 00:01:13,574 梟(ふくろう)! 24 00:01:13,949 --> 00:01:14,992 あっ 25 00:01:15,075 --> 00:01:17,411 (衝撃音) (九九)あっ 娘娘! 26 00:01:17,495 --> 00:01:18,579 娘娘! 27 00:01:18,996 --> 00:01:19,997 (寿雪)うっ… 28 00:01:20,623 --> 00:01:21,707 (九九)大丈夫ですか? 29 00:01:21,832 --> 00:01:22,708 (寿雪)ああ… 30 00:01:22,792 --> 00:01:25,419 そうだ お水… すぐ お持ちします 31 00:01:27,963 --> 00:01:28,964 (寿雪)うっ 32 00:01:30,800 --> 00:01:33,219 あれは… 誰だ? 33 00:01:41,393 --> 00:01:43,395 (封(ほう) 一行(いちぎょう))う~ん 34 00:01:44,188 --> 00:01:45,189 (封 宵月(しょうげつ))老師(せんせい) 35 00:01:45,397 --> 00:01:46,315 なんだ? 36 00:01:46,398 --> 00:01:47,983 (宵月)後宮に行きたい 37 00:01:48,067 --> 00:01:49,318 どうすればいい? 38 00:01:49,401 --> 00:01:50,945 行ってどうする? 39 00:01:51,028 --> 00:01:53,489 やらねばならぬことがある 40 00:01:53,948 --> 00:01:55,157 (一行)う~ん 41 00:01:57,201 --> 00:01:58,953 つては なくもない 42 00:01:59,036 --> 00:02:02,665 宮城勤めの者に 古いなじみがいる 43 00:02:02,957 --> 00:02:04,083 頼んでやろう 44 00:02:04,542 --> 00:02:05,584 (宵月)ありがとう 45 00:02:10,548 --> 00:02:14,093 俺は烏妃を殺さなければならぬ 46 00:02:15,427 --> 00:02:22,434 ♪~ 47 00:03:35,883 --> 00:03:42,890 ~♪ 48 00:03:46,518 --> 00:03:51,398 (ナレーター)後宮の奥深く 烏妃と呼ばれる妃(きさき)が住んでいる 49 00:03:54,526 --> 00:03:59,365 その妃は 妃でありながら 夜伽(よとぎ)をすることのない— 50 00:03:59,573 --> 00:04:01,575 特別な妃だった 51 00:04:02,284 --> 00:04:04,119 後宮で生きながら 52 00:04:04,244 --> 00:04:08,207 決して帝(みかど)の前で ひざまづくことのない妃 53 00:04:09,041 --> 00:04:10,668 それが烏妃だった 54 00:04:11,251 --> 00:04:13,087 娘娘 薬湯です 55 00:04:13,504 --> 00:04:14,505 (寿雪)うむ 56 00:04:17,633 --> 00:04:18,634 う~ん 57 00:04:19,635 --> 00:04:21,095 お体のためです 58 00:04:21,178 --> 00:04:23,055 さあ ぐ~っと 59 00:04:23,138 --> 00:04:24,390 分かっておる 60 00:04:26,016 --> 00:04:27,017 うっ 61 00:04:28,811 --> 00:04:30,312 あっ うう… 62 00:04:30,396 --> 00:04:32,064 (九九)こちらもどうぞ 63 00:04:32,147 --> 00:04:34,149 蜜を溶かした さ湯です 64 00:04:34,525 --> 00:04:38,195 薬湯と一緒に用意するといいって 桂子さんが 65 00:04:38,862 --> 00:04:40,114 そうか 66 00:04:43,450 --> 00:04:45,327 (衣斯哈(いしは))娘娘 できました 67 00:04:45,703 --> 00:04:46,495 どれ 68 00:04:48,163 --> 00:04:50,082 おぬしは飲み込みが早い 69 00:04:50,165 --> 00:04:51,291 (衣斯哈)ハハッ (おなかが鳴る音) 70 00:04:51,375 --> 00:04:52,584 あっ… 71 00:04:52,668 --> 00:04:53,627 (寿雪)フッ 72 00:04:54,169 --> 00:04:55,295 ひと休みしよう 73 00:04:56,171 --> 00:04:58,173 (星星(しんしん))クウ~ 74 00:04:58,257 --> 00:04:59,842 (衣斯哈)あの 娘娘 75 00:04:59,925 --> 00:05:00,884 (寿雪)ん? 76 00:05:00,968 --> 00:05:04,555 僕をおそばに置いてくださって ありがとうございます 77 00:05:04,805 --> 00:05:06,682 なんだ 改まって 78 00:05:06,765 --> 00:05:10,185 こんなによくしてもらって うれしくて 79 00:05:10,269 --> 00:05:12,938 礼ならば 温螢(おんけい)に言うがよい 80 00:05:13,522 --> 00:05:16,358 おぬしを宦官(かんがん)に推したのは あやつだ 81 00:05:16,442 --> 00:05:19,236 温螢さんにも お礼が言いたいです 82 00:05:19,570 --> 00:05:20,988 (寿雪)いずれ機会もあろう 83 00:05:21,321 --> 00:05:22,322 はい 84 00:05:24,491 --> 00:05:25,868 (寿雪)もう一つ食べるか? 85 00:05:25,951 --> 00:05:27,453 いいんですか? 86 00:05:27,953 --> 00:05:31,123 ウフフッ 衣斯哈は食いしん坊ね 87 00:05:31,206 --> 00:05:36,045 こんなおいしい果物 僕の生まれた村にはなかったので 88 00:05:36,837 --> 00:05:39,590 おぬしは漁村の生まれだったな 89 00:05:39,673 --> 00:05:40,382 (衣斯哈)はい 90 00:05:40,466 --> 00:05:42,593 ねえ どんなところだったの? 91 00:05:42,676 --> 00:05:44,970 ヒラメやサバが取れます 92 00:05:45,137 --> 00:05:46,805 時々 不思議なものも 93 00:05:47,222 --> 00:05:49,141 不思議なもの? 94 00:05:49,224 --> 00:05:52,728 海辺には たくさんの いろんなものが流れ着きます 95 00:05:53,228 --> 00:05:56,023 僕の村には 海に落ちた人は 96 00:05:56,106 --> 00:05:59,234 必ず流れ着くという 入江がありました 97 00:06:00,569 --> 00:06:01,195 (幼い衣斯哈)あっ 98 00:06:01,737 --> 00:06:05,199 (衣斯哈)それは 海で亡くなった者の魂だと 99 00:06:05,365 --> 00:06:07,159 村の年寄りは言ってました 100 00:06:07,242 --> 00:06:08,243 (寿雪)ほう 101 00:06:08,494 --> 00:06:09,995 確かに不思議ね 102 00:06:10,746 --> 00:06:12,664 とってもきれいなんです 103 00:06:12,748 --> 00:06:15,876 九九さんも見たら きっとびっくりしますよ 104 00:06:18,712 --> 00:06:19,713 (夏(か) 高峻(こうしゅん))新月の夜— 105 00:06:20,464 --> 00:06:21,882 烏妃には何かあるのか? 106 00:06:22,758 --> 00:06:25,385 (薛(せつ) 魚泳(ぎょえい))はて どういうことでしょう? 107 00:06:25,761 --> 00:06:29,223 (高峻)寿雪が 何か隠しているようなのだ 108 00:06:30,140 --> 00:06:31,350 明日は訪ねてくるな 109 00:06:32,684 --> 00:06:33,352 なぜだ? 110 00:06:33,769 --> 00:06:34,978 明日は疲れている 111 00:06:35,938 --> 00:06:38,148 (魚泳)感心いたしませんな 112 00:06:38,565 --> 00:06:41,360 烏妃が なんたるかを お知りになったうえで 113 00:06:41,735 --> 00:06:44,613 なぜ まだ 関わろうとなさるのです? 114 00:06:45,155 --> 00:06:46,990 帝の地位にあるかぎり 115 00:06:47,533 --> 00:06:49,868 烏妃のことを知るのは 私の責務だ 116 00:06:50,953 --> 00:06:51,954 (魚泳)う~ん 117 00:06:52,663 --> 00:06:54,957 陛下は真面目にすぎますな 118 00:06:55,165 --> 00:06:56,208 いやはや… 119 00:06:56,625 --> 00:06:59,545 麗娘から 代替わりのあいさつがあったと 120 00:06:59,753 --> 00:07:00,921 前に申していたな 121 00:07:01,463 --> 00:07:02,464 (魚泳)はあ… 122 00:07:02,589 --> 00:07:04,258 直接 会ったということか? 123 00:07:05,092 --> 00:07:07,553 いえ 死んだ烏妃様が 124 00:07:07,678 --> 00:07:11,014 わたくしのもとへ 現れたのでございます 125 00:07:11,473 --> 00:07:12,391 幽鬼(ゆうき)か? 126 00:07:13,142 --> 00:07:14,268 さようで 127 00:07:14,852 --> 00:07:17,020 “寿雪を頼む”と… 128 00:07:17,646 --> 00:07:20,649 それほどまでに 信頼されていたのは なぜだ? 129 00:07:21,024 --> 00:07:25,654 (魚泳)あの方の生家は わたくしの主人の家にあたります 130 00:07:26,405 --> 00:07:30,367 わたくしは麗娘様と同じ師に 学んだのです 131 00:07:30,450 --> 00:07:32,119 昔なじみだったのか 132 00:07:32,995 --> 00:07:35,664 (魚泳)麗娘様が 烏妃に選ばれたあと 133 00:07:36,039 --> 00:07:39,042 わたくしは この冬官府(とうかんふ)に入りました 134 00:07:39,334 --> 00:07:41,461 (高峻)それは麗娘のためか? 135 00:07:41,545 --> 00:07:44,256 冬官が あの方のためになど… 136 00:07:45,549 --> 00:07:47,259 なるものですか 137 00:07:49,052 --> 00:07:54,057 当時は 名家の出でなければ 官吏にはなれませんでした 138 00:07:54,516 --> 00:07:58,270 冬宮府だけは庶人に 門戸を開いておりましたので 139 00:07:58,562 --> 00:08:00,731 それだけのことでございます 140 00:08:00,939 --> 00:08:01,815 (高峻)そうか 141 00:08:01,899 --> 00:08:05,903 ですが 今では ここで経験を積んだあと 142 00:08:06,028 --> 00:08:09,740 官吏として登用される者も 少なくありません 143 00:08:09,823 --> 00:08:12,576 そなたがつけた道筋と 聞いている 144 00:08:12,951 --> 00:08:16,079 フッ 育てて手放すばかりだな 145 00:08:16,455 --> 00:08:17,873 (魚泳)ホホホ… 146 00:08:18,373 --> 00:08:21,084 残っている変わり者も おりますが 147 00:08:21,293 --> 00:08:24,880 あとは その者に託そうと 考えております 148 00:08:24,963 --> 00:08:26,423 隠居したいのか? 149 00:08:27,216 --> 00:08:30,177 お許しを頂けるのであれば 150 00:08:30,594 --> 00:08:33,805 (高峻)その前に 寿雪に会ってやってくれないか 151 00:08:34,306 --> 00:08:35,390 (魚泳)烏妃様に? 152 00:08:35,807 --> 00:08:37,643 (高峻)麗娘の話を してやってくれ 153 00:08:38,310 --> 00:08:39,561 寿雪が喜ぶだろう 154 00:08:40,729 --> 00:08:42,147 (魚泳)う~ん 155 00:08:44,066 --> 00:08:45,943 承知いたしました 156 00:08:48,904 --> 00:08:50,239 (安(あん) 蕙蘭(けいらん))もし 157 00:08:50,322 --> 00:08:50,948 もし 158 00:08:51,823 --> 00:08:52,741 烏妃様 159 00:08:52,824 --> 00:08:53,450 (寿雪)あ… 160 00:08:54,076 --> 00:08:55,077 (寿雪)何者だ? (星星)クウッ 161 00:08:55,160 --> 00:08:58,413 (蕙蘭)わたくしは 安蕙蘭と申します 162 00:08:58,705 --> 00:09:01,959 烏妃様に お願いしたき 儀がございます 163 00:09:05,003 --> 00:09:09,466 (蕙蘭)このような夜更けに 誠に申し訳ございません 164 00:09:10,259 --> 00:09:11,260 かまわぬ 165 00:09:11,510 --> 00:09:13,804 おぬしのような来訪者は たまにいる 166 00:09:14,513 --> 00:09:15,514 入れ 167 00:09:19,851 --> 00:09:21,270 頼み事とは なんだ? 168 00:09:21,645 --> 00:09:24,606 (蕙蘭)水の中から 声が聞こえるのです 169 00:09:26,608 --> 00:09:29,945 わたくしが かつて お仕えしていたお妃様— 170 00:09:30,028 --> 00:09:32,447 西(さい)婉琳(えんりん)様の声です 171 00:09:33,448 --> 00:09:36,576 あの方の真実を 知っていただきたいのです 172 00:09:37,035 --> 00:09:42,249 そして どうか婉琳様の魂を 救ってあげてほしいのです 173 00:09:43,625 --> 00:09:47,838 婉琳様は とても愛くるしい お嬢様でございました 174 00:09:48,130 --> 00:09:49,339 (西 婉琳)蕙蘭 聴いて 175 00:09:49,423 --> 00:09:51,717 (蕙蘭)琴(きん)の腕前は一級品 176 00:09:51,883 --> 00:09:54,136 笑う お顔は芍薬(しゃくやく)のよう 177 00:09:54,303 --> 00:09:57,014 その お声は清らかな水のよう 178 00:09:57,222 --> 00:09:58,724 (婉琳)蕙蘭 大好き! 179 00:09:58,932 --> 00:10:00,600 (蕙蘭)わたくしは この方を 180 00:10:00,684 --> 00:10:04,062 国いちばんの妃にしてみせようと 誓いました 181 00:10:04,730 --> 00:10:09,192 成長した婉琳様は 炎帝(えんてい)に鵲巣宮(じゃくそうきゅう)を与えられ 182 00:10:09,401 --> 00:10:12,112 鵲妃として 後宮に迎えられました 183 00:10:12,696 --> 00:10:14,698 ですが それからというもの— 184 00:10:14,823 --> 00:10:18,577 手にした小さな袋を眺めては ため息ばかり 185 00:10:19,119 --> 00:10:21,455 わたくしは懸命に諭しました 186 00:10:21,955 --> 00:10:25,625 今夜にも 帝を お迎えするかもしれぬという妃が 187 00:10:25,751 --> 00:10:28,545 そのように ふぬけていて どうするのかと 188 00:10:29,004 --> 00:10:31,340 婉琳様は こう言い返しました 189 00:10:31,757 --> 00:10:34,468 “妃になど 望んでなったわけじゃない” 190 00:10:35,344 --> 00:10:38,805 婉琳様は ひどく 神経質になっているようでした 191 00:10:39,348 --> 00:10:41,350 その すぐあとのことでした 192 00:10:41,767 --> 00:10:46,188 宦官が 今夜 帝がお渡りになると 告げてゆきました 193 00:10:46,813 --> 00:10:49,691 ああ これで きっとすべてうまくゆく 194 00:10:50,233 --> 00:10:53,487 そのことを婉琳様に 伝えようとしましたが 195 00:10:53,820 --> 00:10:55,822 屋敷は もぬけの殻でした 196 00:10:56,573 --> 00:11:00,202 どこにいらっしゃるのか この大事なときに 197 00:11:00,369 --> 00:11:04,414 湯あみをして 美しい装いを しなければならないのに 198 00:11:05,207 --> 00:11:07,459 ですが 見つけたのは 199 00:11:07,542 --> 00:11:11,880 池の前にそろえられた 婉琳様の靴でございました 200 00:11:12,881 --> 00:11:15,133 婉琳様は入水されて 201 00:11:15,634 --> 00:11:18,345 わたくしは 洗穢寮(せんえりょう)に送られました 202 00:11:19,137 --> 00:11:23,225 以来 汚れた布を 洗い続けております 203 00:11:24,518 --> 00:11:26,895 それが聞こえるようになったのは 204 00:11:27,270 --> 00:11:30,899 洗穢寮へ送られて すぐのことでございました 205 00:11:32,651 --> 00:11:33,443 (婉琳)蕙蘭 206 00:11:33,527 --> 00:11:34,194 あっ 207 00:11:34,903 --> 00:11:36,029 (婉琳)蕙蘭 208 00:11:36,113 --> 00:11:39,825 (蕙蘭)水から 婉琳様の声がするのです 209 00:11:40,534 --> 00:11:45,163 水が滴り落ちるたび 婉琳様が わたくしを呼ぶのです 210 00:11:45,539 --> 00:11:48,708 その お声が美しく澄んで 響くのです 211 00:11:49,835 --> 00:11:50,836 (婉琳)蕙蘭 212 00:11:51,962 --> 00:11:54,297 (蕙蘭)きっと婉琳様の魂は 213 00:11:54,506 --> 00:11:57,300 あの池で さまよっておいでなのです 214 00:11:57,384 --> 00:12:01,847 水を通じて あの池から 助けを求めていらっしゃるのです 215 00:12:02,305 --> 00:12:04,141 おいたわしい婉琳様 216 00:12:04,641 --> 00:12:08,520 烏妃様 婉琳様を お救いいただけませんか 217 00:12:09,020 --> 00:12:11,356 どうか お願いいたします 218 00:12:13,817 --> 00:12:16,027 (寿雪)安氏という宮女を 知っておるか? 219 00:12:17,863 --> 00:12:20,949 炎帝の代に 鵲妃の侍女であった老女だ 220 00:12:28,081 --> 00:12:30,333 ほう うまいものだな 221 00:12:30,667 --> 00:12:31,877 この者は 水から 222 00:12:31,960 --> 00:12:34,588 死んだ鵲妃の声が聞こえると 言っておったか? 223 00:12:35,380 --> 00:12:36,798 どういう女であった? 224 00:12:39,801 --> 00:12:41,428 人となりは知らぬか 225 00:12:44,723 --> 00:12:48,143 “皆 気味が悪いと 遠巻きにしておりました” 226 00:12:48,768 --> 00:12:50,437 (九九) 何してらっしゃるんですか? 227 00:12:51,563 --> 00:12:53,607 わあっ 上手ですね! 228 00:12:54,065 --> 00:12:55,400 紅翹(こうぎょう)が描いたのだ 229 00:12:55,525 --> 00:12:56,568 へえ~! 230 00:12:57,235 --> 00:12:58,987 (寿雪)あっ 九九だ 231 00:12:59,070 --> 00:13:00,989 これ 私ですか? 232 00:13:01,239 --> 00:13:03,658 紅翹さん お上手なんですね! 233 00:13:04,576 --> 00:13:06,578 (温螢)娘娘 戻りました 234 00:13:07,078 --> 00:13:08,288 (寿雪)どうであった? 235 00:13:08,580 --> 00:13:10,415 (温螢)娘娘のおっしゃる とおりでした 236 00:13:10,790 --> 00:13:11,791 (寿雪)そうか 237 00:13:14,336 --> 00:13:16,213 鵲巣宮の池に行きたい 238 00:13:16,922 --> 00:13:18,131 (温螢)案内いたします 239 00:13:18,673 --> 00:13:19,382 九九 240 00:13:19,799 --> 00:13:20,550 はい 241 00:13:20,634 --> 00:13:22,093 (寿雪)衣斯哈を頼みたい 242 00:13:22,177 --> 00:13:24,012 そろそろ ここに来るころだ 243 00:13:24,471 --> 00:13:27,516 紅翹と二人で 字の書き取りを見てやってくれ 244 00:13:28,058 --> 00:13:29,226 かしこまりました 245 00:13:29,643 --> 00:13:31,853 うんと上達させてみせます 246 00:13:32,229 --> 00:13:33,230 (寿雪)頼んだぞ 247 00:13:38,818 --> 00:13:40,487 (蕙蘭)婉琳様 248 00:13:41,071 --> 00:13:42,405 婉琳様 249 00:13:43,240 --> 00:13:44,658 婉琳様 250 00:13:45,033 --> 00:13:47,202 (寿雪)婉琳の声が聞こえるか? (蕙蘭)あっ 251 00:13:47,285 --> 00:13:50,539 烏妃様 来てくださったのですね 252 00:13:50,789 --> 00:13:51,790 ここです 253 00:13:51,957 --> 00:13:54,251 ここに婉琳様が いらっしゃるのです 254 00:13:54,876 --> 00:13:56,670 おぬしは恨んでおらぬのか? 255 00:13:56,753 --> 00:13:57,712 (蕙蘭)あ… 256 00:13:57,796 --> 00:14:01,341 婉琳が死んで おぬしは洗穢寮へと送られた 257 00:14:01,633 --> 00:14:04,511 そこでの暮らしは さぞ つらかったであろう 258 00:14:04,970 --> 00:14:08,932 そんな恨み言を申しても せんないことでございます 259 00:14:09,558 --> 00:14:12,352 今は婉琳様をお救いしたい 260 00:14:12,644 --> 00:14:14,771 ただ それだけでございます 261 00:14:15,230 --> 00:14:17,023 幽鬼を楽土へ送るため 262 00:14:17,440 --> 00:14:19,901 おぬしに いくつか 聞かねばならぬことがある 263 00:14:20,485 --> 00:14:22,320 (蕙蘭)なんでございましょう? 264 00:14:22,404 --> 00:14:24,698 婉琳は 妃になるのを 265 00:14:24,781 --> 00:14:27,826 望んでいなかったと 申したそうだな 266 00:14:27,909 --> 00:14:31,121 では 婉琳の望みとは なんだったのだろう? 267 00:14:31,663 --> 00:14:33,873 いつも そばにいた おぬしなら 268 00:14:34,249 --> 00:14:36,376 何か気づいておったのではないか? 269 00:14:37,502 --> 00:14:39,713 心当たりはございます 270 00:14:40,255 --> 00:14:45,302 婉琳様が後宮に上がる直前 屋敷に賊が押し入ったのです 271 00:14:46,595 --> 00:14:48,013 (書肆(しょし)の男) 私と一緒に来てくれ 272 00:14:48,221 --> 00:14:49,139 (婉琳)ダメよ 273 00:14:49,222 --> 00:14:49,889 (書肆の男)婉琳! 274 00:14:52,058 --> 00:14:53,351 (蕙蘭)ろうぜき者! 275 00:14:53,435 --> 00:14:55,145 (蕙蘭)誰か… 誰か! (書肆の男)えい! 276 00:15:00,442 --> 00:15:01,276 あっ 277 00:15:01,943 --> 00:15:05,113 (蕙蘭)その者は 昔から屋敷に出入りしている— 278 00:15:05,196 --> 00:15:06,865 書肆の青年でした 279 00:15:07,574 --> 00:15:10,535 婉琳様も よくご存じの者でした 280 00:15:10,910 --> 00:15:13,538 いい青年だと 思っておりましたのに 281 00:15:13,913 --> 00:15:15,665 (寿雪)その者は どうなった? 282 00:15:16,124 --> 00:15:18,752 (蕙蘭)庭先で 首をはねられました 283 00:15:19,836 --> 00:15:23,423 幸い この件が 帝に漏れることもなく 284 00:15:23,673 --> 00:15:26,676 婉琳様は 後宮に お入りになりました 285 00:15:27,135 --> 00:15:31,514 わたくしが気づかなければ 大変なことになるところでした 286 00:15:31,598 --> 00:15:34,184 婉琳は その男を 好いておったのか? 287 00:15:34,726 --> 00:15:37,062 そうだったのかもしれません 288 00:15:37,395 --> 00:15:40,982 ですが どちらであろうと さまつなことでございます 289 00:15:41,358 --> 00:15:44,986 婉琳様は 帝の いちばんの妃となり 290 00:15:45,320 --> 00:15:47,322 後宮を掌中に収め 291 00:15:47,489 --> 00:15:50,909 お父上の力となるべき お方だったのですから 292 00:15:51,326 --> 00:15:52,035 (婉琳)蕙蘭 293 00:15:52,118 --> 00:15:53,119 (蕙蘭)あっ 294 00:15:54,788 --> 00:15:56,331 また 声が聞こえたか? 295 00:15:56,498 --> 00:15:57,499 はい 296 00:15:57,582 --> 00:16:01,294 声のすることの 何がそれほど恐ろしいのだ? 297 00:16:01,711 --> 00:16:02,629 えっ? 298 00:16:02,712 --> 00:16:05,382 (寿雪)婉琳が入水した日 何があった? 299 00:16:05,840 --> 00:16:06,508 (蕙蘭)あ… 300 00:16:06,591 --> 00:16:11,429 婉琳は 心は違っても 一度は決心したのであろう 301 00:16:11,763 --> 00:16:14,265 それなのに なぜ入水した? 302 00:16:14,349 --> 00:16:17,143 何か きっかけがあったとしか 思えぬ 303 00:16:17,227 --> 00:16:18,520 それは… 304 00:16:18,603 --> 00:16:21,356 真実を知ってほしいと言ったのは おぬしだ 305 00:16:22,357 --> 00:16:25,694 話すがよい おぬしが知っている真実を 306 00:16:27,904 --> 00:16:31,908 (蕙蘭)婉琳様は 大事そうに袋を持っていました 307 00:16:32,283 --> 00:16:35,203 その袋には 土が入っていたのです 308 00:16:35,328 --> 00:16:36,079 (寿雪)土? 309 00:16:36,496 --> 00:16:39,666 その土からは 血のにおいがしました 310 00:16:39,749 --> 00:16:40,959 (寿雪)あっ 311 00:16:41,584 --> 00:16:43,920 (蕙蘭)わたくしは それを… 312 00:16:45,046 --> 00:16:46,047 こんなもの! 313 00:16:46,506 --> 00:16:47,215 (婉琳)やめて! 314 00:16:47,298 --> 00:16:49,008 (蕙蘭)離しなさい! (婉琳)嫌! 315 00:16:49,092 --> 00:16:50,009 (蕙蘭)離せ! 316 00:16:50,093 --> 00:16:51,261 (泣き声) 317 00:16:51,344 --> 00:16:54,347 (蕙蘭)あんな男のことなど 今すぐ忘れなさい! 318 00:16:54,723 --> 00:16:55,724 (泣き声) 319 00:16:56,224 --> 00:16:59,561 婉琳様は 青年の血がしみこんだ土を 320 00:16:59,644 --> 00:17:02,105 大事に持っていたのでございます 321 00:17:02,605 --> 00:17:05,066 わたくしは それを 地面に ばらまいて 322 00:17:05,233 --> 00:17:07,402 靴の裏で すりつぶしました 323 00:17:08,153 --> 00:17:10,864 婉琳様のためだったのです 324 00:17:11,197 --> 00:17:14,868 わたくしは 心を鬼にしたのでございます 325 00:17:15,618 --> 00:17:17,036 もう欺まんはいらぬ 326 00:17:17,454 --> 00:17:19,956 おぬしは婉琳を いとおしいとは思っていまい 327 00:17:20,039 --> 00:17:21,249 (蕙蘭)ああ… 328 00:17:21,750 --> 00:17:23,501 あんまりでございます 329 00:17:24,043 --> 00:17:27,630 わたくしは この身を 婉琳様にささげてきたのですよ 330 00:17:28,339 --> 00:17:31,718 後宮に入れても恥ずかしくない 夫人に教育したのは 331 00:17:31,801 --> 00:17:33,470 この わたくしです 332 00:17:33,762 --> 00:17:35,930 わたくしは よくやったでしょう? 333 00:17:36,431 --> 00:17:38,850 それなのに婉琳様は 334 00:17:39,684 --> 00:17:42,145 あんな恩知らずなまねを… 335 00:17:42,562 --> 00:17:44,773 (泣き声) 336 00:17:45,482 --> 00:17:49,486 おぬしは おぬしなりに 婉琳を思っていたのかもしれぬ 337 00:17:50,445 --> 00:17:51,279 だが… 338 00:17:51,780 --> 00:17:53,281 婉琳は死んだ 339 00:17:55,116 --> 00:17:56,534 (蕙蘭)フフッ… 340 00:17:57,660 --> 00:18:01,206 ええ 婉琳様は死にました 341 00:18:02,165 --> 00:18:05,210 さぞ わたくしを 恨んでいるでしょうね 342 00:18:05,627 --> 00:18:07,337 分かっておりますよ 343 00:18:08,087 --> 00:18:13,343 ですから恐れているのです 婉琳様の恨みを 344 00:18:13,760 --> 00:18:17,305 婉琳様は 池の底に引きずり込もうと 345 00:18:17,388 --> 00:18:19,307 わたくしを呼ぶのです 346 00:18:19,390 --> 00:18:22,060 そうなる前に 婉琳様を… 347 00:18:22,143 --> 00:18:26,147 いえ わたくしを 救っていただきたいのです 348 00:18:26,815 --> 00:18:29,192 おぬしを救えるのは私ではない 349 00:18:29,734 --> 00:18:32,612 そんなこと おっしゃらずに どうか! 350 00:18:32,695 --> 00:18:33,613 あっ 351 00:18:34,280 --> 00:18:36,115 あっ… 352 00:18:36,699 --> 00:18:39,118 (寿雪)婉琳は すでに 楽土へと渡っている 353 00:18:39,202 --> 00:18:40,119 (蕙蘭)ああ… 354 00:18:40,995 --> 00:18:42,247 幽鬼は おぬしだ 355 00:18:43,456 --> 00:18:46,167 わたくしが… 幽鬼? 356 00:18:46,543 --> 00:18:50,380 (寿雪)おぬしは昨晩 肺ふを病んで亡くなったそうだ 357 00:18:54,717 --> 00:18:55,718 (蕙蘭)ああ… 358 00:18:56,678 --> 00:18:57,762 (婉琳)蕙蘭 359 00:18:58,596 --> 00:19:01,307 では この声は どこから… 360 00:19:01,766 --> 00:19:03,017 耳を澄ませ 361 00:19:03,935 --> 00:19:04,936 (婉琳)蕙蘭 362 00:19:06,020 --> 00:19:07,021 (蕙蘭)ああ… 363 00:19:07,939 --> 00:19:09,774 それは おぬしの声だ 364 00:19:09,858 --> 00:19:11,109 いいえ 365 00:19:11,484 --> 00:19:13,152 おぬしが恐れているのは 366 00:19:13,486 --> 00:19:15,905 婉琳を死に追いやった おぬし自身だ 367 00:19:16,322 --> 00:19:17,782 いいえ… いいえ! 368 00:19:19,325 --> 00:19:20,410 ああ… 369 00:19:20,869 --> 00:19:21,870 (蕙蘭)蕙蘭 370 00:19:21,953 --> 00:19:23,705 ああ… あっ! 371 00:19:27,667 --> 00:19:32,046 ああ… 水の中なら 声は聞こえない 372 00:19:33,590 --> 00:19:35,508 (温螢)娘娘 これは… 373 00:19:41,764 --> 00:19:43,766 (寿雪)巫術師(ふじゅつし)が得意とする術だ 374 00:19:44,100 --> 00:19:46,436 これで安氏は池から出られぬ 375 00:19:47,186 --> 00:19:50,356 あの幽鬼 はらうことは できないものですか? 376 00:19:51,065 --> 00:19:52,650 滅するのは簡単だ 377 00:19:53,860 --> 00:19:55,194 だが 好ましくない 378 00:19:55,612 --> 00:19:56,988 これは いる魂 379 00:19:57,071 --> 00:19:58,740 あれは いらぬ魂と 380 00:19:59,115 --> 00:20:01,284 私が選別していいものではない 381 00:20:02,577 --> 00:20:04,704 あの幽鬼には時間が必要だ 382 00:20:05,330 --> 00:20:08,333 水が あの者の魂を 救ってくれるやもしれぬ 383 00:20:09,584 --> 00:20:11,377 私ができるのは ここまでだ 384 00:20:13,630 --> 00:20:17,050 だが 麗娘なら もっとうまくやっていただろう 385 00:20:19,594 --> 00:20:22,388 (衣斯哈)大家(たーちゃ)より 文(ふみ)をお預かりしております 386 00:20:22,472 --> 00:20:23,431 (寿雪)捨てておけ 387 00:20:23,514 --> 00:20:25,183 (衣斯哈)えっ? でも… 388 00:20:25,850 --> 00:20:28,019 (寿雪)あっ… 出せ 389 00:20:28,102 --> 00:20:29,312 はい 390 00:20:31,856 --> 00:20:34,317 (寿雪)あやつ 何を考えている? 391 00:20:34,692 --> 00:20:36,402 (九九)どうかなさいました? 392 00:20:36,486 --> 00:20:40,114 高峻が 私と冬官を 引き合わせたいらしい 393 00:20:40,406 --> 00:20:42,617 (衣斯哈)お返事は いかがなさいますか? 394 00:20:42,700 --> 00:20:43,910 (寿雪)返事など… 395 00:20:45,745 --> 00:20:46,829 少し待て 396 00:20:48,247 --> 00:20:50,416 (衣斯哈)大家 烏妃様からです 397 00:20:50,833 --> 00:20:53,127 (高峻)寿雪から? 珍しいな 398 00:20:55,505 --> 00:20:57,548 フッ 衣斯哈 399 00:20:57,632 --> 00:20:58,633 (衣斯哈)はい 400 00:20:58,716 --> 00:21:00,802 (高峻)烏妃に 届けてほしいものがある 401 00:21:00,885 --> 00:21:02,178 頼まれてくれるか? 402 00:21:02,929 --> 00:21:03,846 はい! 403 00:21:04,931 --> 00:21:08,017 (九九)わあ~ すてきですね 娘娘! 404 00:21:09,811 --> 00:21:10,812 (寿雪)あ… 405 00:21:11,688 --> 00:21:14,148 もっと文を書いてよこせ ということか 406 00:21:14,857 --> 00:21:16,109 楽しみですね 407 00:21:16,275 --> 00:21:17,568 面倒なだけだ 408 00:21:17,652 --> 00:21:18,611 (衝撃) (柳 寿雪)うっ 409 00:21:19,237 --> 00:21:20,154 (九九)どうしました? 410 00:21:20,238 --> 00:21:22,073 (寿雪)ううっ これは… 411 00:21:29,038 --> 00:21:31,874 (九九)娘娘! どちらへ? (星星の鳴き声) 412 00:21:31,958 --> 00:21:33,418 (寿雪)ハア ハア… 413 00:21:36,462 --> 00:21:39,090 安氏が結界(けっかい)を破って 逃げたのか? 414 00:21:41,884 --> 00:21:43,219 いや 違う 415 00:21:43,636 --> 00:21:44,679 この気配は… 416 00:21:46,597 --> 00:21:47,598 梟! 417 00:21:48,599 --> 00:21:55,606 ♪~ 418 00:23:10,640 --> 00:23:17,647 ~♪ 419 00:23:18,397 --> 00:23:20,191 (泣き声) 420 00:23:20,274 --> 00:23:23,486 (宵月)お前は大切な人を 亡くしたのだな 421 00:23:23,569 --> 00:23:24,403 (琴(きん) 恵瑤(けいよう))誰? 422 00:23:24,487 --> 00:23:26,614 (宵月)その者に 会わせてやろうか? 423 00:23:26,989 --> 00:23:27,698 (恵瑤)あっ 424 00:23:28,074 --> 00:23:32,995 死者を生き返らせることは そう難しいことではない