1 00:00:00,710 --> 00:00:03,796 (琵琶の音) 2 00:00:03,879 --> 00:00:07,967 (笑い声) 3 00:00:13,305 --> 00:00:17,309 (客商)いやあ それにしても見事な腕前ですな 4 00:00:17,393 --> 00:00:20,438 (主人)分かるかね? 赤雀(せきじゃく)の琵琶弾きだ 5 00:00:20,521 --> 00:00:25,067 ほう あの評判の さすが お目が高い 6 00:00:25,151 --> 00:00:26,569 ハハハ… 7 00:00:26,652 --> 00:00:27,945 そうだ 8 00:00:28,028 --> 00:00:31,615 きょうは そんな旦那に おもしろいものを持ってきたんです 9 00:00:33,284 --> 00:00:33,993 これは? 10 00:00:35,202 --> 00:00:36,871 (客商)布作面(ふさくめん)です 11 00:00:37,329 --> 00:00:40,583 この面には幽鬼(ゆうき)が 取り憑(つ)いてるんですよ 12 00:00:40,666 --> 00:00:41,625 えっ… 13 00:00:42,001 --> 00:00:44,003 まずは 着けてみてください 14 00:00:44,086 --> 00:00:45,129 (主人)ん… 15 00:00:49,383 --> 00:00:51,469 (主人)うわっ だ… 誰かいるぞ! 16 00:00:51,552 --> 00:00:54,430 これは大変 貴重な品でしてね 17 00:00:54,513 --> 00:00:58,642 ですが 旦那になら 特別にお安くお譲りいたしますよ 18 00:00:59,018 --> 00:01:04,190 (琵琶の音) 19 00:01:04,273 --> 00:01:05,274 (主人)えっ… 20 00:01:08,277 --> 00:01:10,446 (主人)ええっ… 来るな! (客商)ん? 21 00:01:10,529 --> 00:01:12,406 (主人)ああ… あっ よせ! 22 00:01:12,490 --> 00:01:13,491 来るな! 23 00:01:13,741 --> 00:01:17,328 ひっ ひっ… ハア ハア… 24 00:01:17,411 --> 00:01:18,996 (悲鳴) 25 00:01:25,336 --> 00:01:28,172 (夏(か) 高峻(こうしゅん))それで その者は どうなったのだ? 26 00:01:28,255 --> 00:01:30,883 (何(か) 明允(めいいん))熱を出して 寝込んでしまったとか 27 00:01:31,175 --> 00:01:34,178 幸い2~3日で回復したそうですが 28 00:01:34,261 --> 00:01:36,764 結局 その面は買ったそうです 29 00:01:37,264 --> 00:01:41,227 古物集めが趣味とはいえ 怖いもの知らずというか 30 00:01:42,478 --> 00:01:45,773 (高峻)明允 その面 借り受けることはできるか? 31 00:01:45,856 --> 00:01:47,983 (明允)えっ? それは もちろん 32 00:01:48,818 --> 00:01:50,194 見せてやりたい者がいるのだ 33 00:01:50,277 --> 00:01:51,445 (足音) 34 00:01:51,529 --> 00:01:54,657 (衛青(えいせい))大家(たーちゃ) 雲中書令(うんちゅうしょれい)がおいでです 35 00:01:54,907 --> 00:01:57,368 (雲(うん) 永徳(えいとく))ちょうど蓮(はす)が見頃ですな 36 00:01:57,785 --> 00:01:58,744 (高峻)永徳 37 00:01:58,828 --> 00:02:00,079 (永徳)陛下も ようやく 38 00:02:00,162 --> 00:02:03,332 花をめでる お気持ちが 出てきましたかな 39 00:02:03,415 --> 00:02:07,419 鴛鴦宮(えんおうきゅう)にも 美しい花があると 聞いております 40 00:02:07,670 --> 00:02:10,005 花の盛りは過ぎておりましょうが 41 00:02:10,089 --> 00:02:12,633 妃(きさき)と ご覧になっては いかがですかな 42 00:02:13,634 --> 00:02:17,096 花娘(かじょう)は 花より書物のほうが喜ぶ 43 00:02:17,179 --> 00:02:18,806 これはしたり 44 00:02:18,889 --> 00:02:22,935 妃のことは 陛下のほうが よくご存じでございますな 45 00:02:23,936 --> 00:02:29,733 時に飛燕宮(ひえんきゅう)の宦官(かんがん)が呪われたという うわさは ご存じですか? 46 00:02:29,817 --> 00:02:30,609 ああ 47 00:02:30,693 --> 00:02:35,030 その者は 烏妃(うひ)に呪われたと 申しているのだとか 48 00:02:35,531 --> 00:02:37,324 ざれ言でございましょう 49 00:02:37,408 --> 00:02:39,034 そうかもしれぬが 50 00:02:39,118 --> 00:02:41,745 ここのところ 烏妃の名をよく耳にする 51 00:02:42,162 --> 00:02:44,540 そうは思いませぬか 陛下 52 00:02:45,374 --> 00:02:46,542 (高峻)さあ 53 00:02:47,167 --> 00:02:48,669 凝光殿(ぎょうこうでん)へ戻る 54 00:02:48,752 --> 00:02:53,132 (永徳)陛下 烏妃は関われば 災厄があると申しますぞ 55 00:02:54,091 --> 00:02:56,802 今いる妃が気に入らぬのでしたら 56 00:02:56,886 --> 00:02:59,513 私の末の孫など いかかでしょう 57 00:02:59,597 --> 00:03:00,764 ちょうど 年頃になり… 58 00:03:00,848 --> 00:03:01,974 (高峻)間に合っている 59 00:03:06,103 --> 00:03:07,104 ん… 60 00:03:07,855 --> 00:03:08,981 ハア~ 61 00:03:10,024 --> 00:03:17,031 ♪~ 62 00:04:30,896 --> 00:04:37,903 ~♪ 63 00:04:41,949 --> 00:04:47,037 (ナレーター)後宮の奥深く 烏妃と呼ばれる妃が住んでいる 64 00:04:49,164 --> 00:04:54,128 その妃は 妃でありながら 夜伽(よとぎ)をすることのない— 65 00:04:54,211 --> 00:04:56,213 特別な妃だった 66 00:04:57,047 --> 00:04:58,841 後宮で生きながら 67 00:04:58,924 --> 00:05:03,053 決して帝(みかど)の前で ひざまずくことのない妃 68 00:05:03,971 --> 00:05:05,723 それが烏妃だった 69 00:05:07,224 --> 00:05:08,392 (柳(りゅう) 寿雪(じゅせつ))薛(せつ)魚泳(ぎょえい)か? 70 00:05:09,977 --> 00:05:11,186 (薛 魚泳)ふむ… 71 00:05:14,023 --> 00:05:18,110 あなた様は言いつけを 守ってらっしゃらないのですな 72 00:05:18,235 --> 00:05:19,236 あっ… 73 00:05:19,737 --> 00:05:20,571 ああ… 74 00:05:20,654 --> 00:05:24,116 侍女も宦官も おそばに置いてらっしゃる 75 00:05:24,616 --> 00:05:26,368 破るつもりはなかった 76 00:05:26,785 --> 00:05:28,746 ただ 成り行きで… 77 00:05:29,371 --> 00:05:33,208 麗娘(れいじょう)様が生きてらしたら なんとおっしゃるか 78 00:05:33,584 --> 00:05:34,585 (寿雪)あ… 79 00:05:36,086 --> 00:05:39,256 わたくしも 言えた義理ではございません 80 00:05:39,339 --> 00:05:42,217 冬官(とうかん)は烏妃と会うべきではない 81 00:05:42,634 --> 00:05:46,263 陛下に ほだされ その戒めを破りました 82 00:05:48,640 --> 00:05:51,351 たたずまいが よく似ていらっしゃる 83 00:05:51,852 --> 00:05:54,104 門を入ってこられたとき 84 00:05:54,188 --> 00:05:57,733 麗娘様がいらっしゃったのかと 驚きました 85 00:05:57,816 --> 00:06:01,028 麗娘は もし 立ち行かぬことがあれば 86 00:06:01,111 --> 00:06:02,362 おぬしを頼れと 87 00:06:03,197 --> 00:06:04,490 (魚泳)ん… 88 00:06:05,157 --> 00:06:07,659 麗娘には 大事にしている 香があった 89 00:06:08,494 --> 00:06:09,620 想夫香(そうふこう)だ 90 00:06:10,454 --> 00:06:12,539 弔うときも焚(た)いてやった 91 00:06:13,499 --> 00:06:14,875 贈ったのは おぬしか? 92 00:06:16,085 --> 00:06:18,337 麗娘様が亡くなって 93 00:06:18,420 --> 00:06:21,090 わたくしのもとに 来てくださったとき 94 00:06:21,173 --> 00:06:23,884 想夫香の香りがいたしました 95 00:06:24,802 --> 00:06:29,056 わたくしは それだけで もう十分でございました 96 00:06:29,932 --> 00:06:34,561 あの香を差し上げたのは 若気の至りとはいえ 97 00:06:34,645 --> 00:06:36,855 分を わきまえぬことでしたが 98 00:06:36,939 --> 00:06:40,150 (寿雪)だが 麗娘は ずっと大事にしておったぞ 99 00:06:41,652 --> 00:06:44,154 (魚泳)ありがたいことでございます 100 00:06:45,531 --> 00:06:49,576 (放下郎(ほうかろう))薛冬官 烏妃様 陛下がいらっしゃいました 101 00:06:49,660 --> 00:06:52,913 (魚泳)なんと あの方は突然いらっしゃる 102 00:06:53,288 --> 00:06:55,249 (寿雪)よく来るのか? 高峻は 103 00:06:55,666 --> 00:06:56,667 ええ 104 00:06:56,917 --> 00:06:58,252 (寿雪)懐いておるのだな 105 00:06:58,627 --> 00:06:59,670 はっ? 106 00:07:00,671 --> 00:07:01,505 おぬしに 107 00:07:01,588 --> 00:07:03,549 (魚泳)あ はあ… 108 00:07:04,174 --> 00:07:06,969 きょうは なんの ご用でございますか? 109 00:07:07,052 --> 00:07:09,471 (高峻)寿雪が 来ているころかと思い立って 110 00:07:09,555 --> 00:07:10,639 こちらに来た 111 00:07:10,722 --> 00:07:14,476 おぬしは 邪けんにされると 通い詰める癖(へき)でもあるのか? 112 00:07:14,893 --> 00:07:16,103 なんだ それは? 113 00:07:16,520 --> 00:07:19,356 来たいから 来ている そなたのところへも 114 00:07:19,439 --> 00:07:22,568 来なくてよい ほかに行くところがないのか? 115 00:07:24,862 --> 00:07:25,696 そうだな 116 00:07:25,779 --> 00:07:26,780 あっ… 117 00:07:28,365 --> 00:07:30,826 花娘のところにでも 行けばよかろう 118 00:07:30,909 --> 00:07:33,787 (高峻)花娘は雲永徳の孫だ 119 00:07:33,871 --> 00:07:34,872 (寿雪)あっ… 120 00:07:35,497 --> 00:07:38,375 (高峻)いや なんでもない 忘れてくれ 121 00:07:42,337 --> 00:07:43,672 (寿雪)私は帰る 122 00:07:43,755 --> 00:07:46,800 また 麗娘の話を 聞かせてくれるか? 123 00:07:47,092 --> 00:07:50,804 どうぞ 烏妃様のお心のままに 124 00:07:53,515 --> 00:07:55,434 (寿雪)後宮に戻る (温螢(おんけい)・九九(じうじう))はい 125 00:07:56,643 --> 00:07:58,729 衛青 高峻は… 126 00:07:58,812 --> 00:07:59,813 (衛青)ん? 127 00:08:01,023 --> 00:08:02,107 元気がないな 128 00:08:02,524 --> 00:08:03,525 (衛青)あっ… 129 00:08:04,776 --> 00:08:07,571 (徐成(じょせい))宵月(しょうげつ)… 宵月! 130 00:08:08,530 --> 00:08:10,574 鵲妃(じゃくひ)様がお呼びよ 131 00:08:10,824 --> 00:08:13,410 おそばにいてちょうだいって 言われてるでしょ 132 00:08:13,493 --> 00:08:14,494 困るわ 133 00:08:15,579 --> 00:08:16,538 (封(ほう) 宵月)すまない 134 00:08:16,622 --> 00:08:17,831 (徐成)ああっ… 135 00:08:18,498 --> 00:08:20,834 まあ いいけど… あっ 136 00:08:21,460 --> 00:08:25,214 運ぶの手伝ってあげる さあ 早くいきましょ 137 00:08:26,173 --> 00:08:27,382 お… 重た 138 00:08:27,758 --> 00:08:29,218 何 入ってるの これ? 139 00:08:30,135 --> 00:08:32,846 (宵月)言えない (徐成)何それ 変なの 140 00:08:35,682 --> 00:08:37,434 (寿雪)うわ~ 141 00:08:37,517 --> 00:08:38,727 (高峻)見せたいものがある 142 00:08:38,810 --> 00:08:40,979 (寿雪)ん… なんだ? 143 00:08:41,396 --> 00:08:44,066 (高峻)布作面だ 楽人(がくじん)が使う 144 00:08:44,149 --> 00:08:46,860 (寿雪)これが… 初めて見た 145 00:08:46,944 --> 00:08:48,987 (高峻)だが ただの面ではない 146 00:08:49,529 --> 00:08:50,864 目の穴があるだろう 147 00:08:51,156 --> 00:08:53,325 そこから のぞくと男が見える 148 00:08:53,408 --> 00:08:56,036 あっ… 見たのか? 149 00:08:57,287 --> 00:08:58,080 見た 150 00:08:59,998 --> 00:09:03,085 (寿雪)ハア~ かび臭いな 151 00:09:04,419 --> 00:09:06,338 ん ん… 152 00:09:06,421 --> 00:09:07,714 (くしゃみ) 153 00:09:08,298 --> 00:09:10,592 んん 宮仕えの男か 154 00:09:10,676 --> 00:09:12,970 (高峻)ああ 鴇耳坊(ほうじぼう)の者だろう 155 00:09:13,262 --> 00:09:16,890 鴇耳坊… 宮妓(きゅうぎ)や楽人がいるところか 156 00:09:17,849 --> 00:09:20,519 おぬし 何故 これを持ってきた? 157 00:09:21,186 --> 00:09:22,896 興味があるかと思ったのだ 158 00:09:23,313 --> 00:09:25,274 あるものか バカ者め 159 00:09:26,650 --> 00:09:27,651 (高峻)そうか 160 00:09:28,443 --> 00:09:31,947 (寿雪)幽鬼なぞ 後宮にいるものだけで十分だ 161 00:09:32,698 --> 00:09:36,910 関わりとうはない 苦しい思いを抱えた者になど 162 00:09:37,202 --> 00:09:38,203 あっ… 163 00:09:39,371 --> 00:09:41,623 それは… そうだな 164 00:09:43,041 --> 00:09:43,959 (高峻)悪かった (寿雪)待て 165 00:09:44,042 --> 00:09:45,043 (高峻)あっ… 166 00:09:45,502 --> 00:09:47,421 (寿雪)見せておいて 引っ込められては 167 00:09:47,504 --> 00:09:49,047 寝覚めが悪いではないか 168 00:09:49,589 --> 00:09:50,424 (高峻)そうか 169 00:09:50,507 --> 00:09:51,508 (寿雪)あっ 170 00:09:51,967 --> 00:09:54,970 この面のことで 分かっておることはあるのか? 171 00:09:55,345 --> 00:09:56,972 あの男が誰だとか 172 00:09:57,055 --> 00:09:58,598 誰かは分からない 173 00:09:59,308 --> 00:10:02,894 ただ うたげの席で 男は振り返ったらしい 174 00:10:03,186 --> 00:10:04,396 (寿雪)振り返った? 175 00:10:04,479 --> 00:10:05,480 (高峻)ああ 176 00:10:05,772 --> 00:10:08,066 楽の音(ね)に ひかれたのかと思って 試してみたが 177 00:10:08,900 --> 00:10:10,485 男は振り返らなかった 178 00:10:12,070 --> 00:10:16,199 うたげの席では 赤雀と名乗る 旅芸人を使ったらしい 179 00:10:16,658 --> 00:10:18,577 それが関係しているのかも しれないな 180 00:10:20,412 --> 00:10:21,580 赤雀… 181 00:10:22,664 --> 00:10:25,167 衛青 温螢を呼んできてくれぬか 182 00:10:25,250 --> 00:10:26,335 (衛青)ん… 183 00:10:26,418 --> 00:10:27,461 (高峻)なぜだ? 184 00:10:27,544 --> 00:10:28,962 (寿雪)あれは赤雀にいた 185 00:10:29,880 --> 00:10:32,299 よくご存じですね 娘娘(にゃんにゃん) 186 00:10:32,382 --> 00:10:35,302 温螢から聞いた まずかったか? 187 00:10:35,385 --> 00:10:38,263 いえ すぐに呼んでまいります 188 00:10:38,680 --> 00:10:42,351 宦官は 己の身の上を 語りたがらないものだ 189 00:10:42,893 --> 00:10:44,603 よほど信用されたのだな 190 00:10:45,562 --> 00:10:47,689 (寿雪)信用かどうかは 知らぬが… 191 00:10:49,649 --> 00:10:52,778 (温螢)そうですか 赤雀が… 192 00:10:53,570 --> 00:10:57,616 おぬしなら 何か気づくことが あるのではないかと思ってな 193 00:10:58,075 --> 00:11:00,077 (温螢)私の知っている琵琶弾きは 194 00:11:00,160 --> 00:11:02,204 五弦の琵琶を用いておりました 195 00:11:02,537 --> 00:11:04,247 (寿雪)五弦? (温螢)はい 196 00:11:04,831 --> 00:11:07,459 普通の琵琶は弦が4本です 197 00:11:07,542 --> 00:11:10,712 その琵琶は 西の小島で使われている— 198 00:11:10,796 --> 00:11:13,131 異国渡りのものだと聞きました 199 00:11:13,507 --> 00:11:14,508 なるほど 200 00:11:15,300 --> 00:11:18,303 高峻 その琵琶弾きを呼べぬのか? 201 00:11:18,387 --> 00:11:20,806 (高峻)彼らは もう 京師(みやこ)を離れている 202 00:11:20,889 --> 00:11:21,890 (寿雪)ああ… 203 00:11:22,224 --> 00:11:25,185 (高峻)だが 異国渡りの琵琶であれば 204 00:11:25,268 --> 00:11:26,853 心当たりがないでもない 205 00:11:27,396 --> 00:11:28,230 どこにある? 206 00:11:28,647 --> 00:11:32,818 凝光殿の宝物庫だ 支度ができたら連絡する 207 00:11:32,901 --> 00:11:35,362 (寿雪)帰るのか? (高峻)そうだが 208 00:11:37,114 --> 00:11:38,115 (寿雪)ああ… 209 00:11:38,532 --> 00:11:41,034 (高峻)用があるなら いましばらくいるが 210 00:11:41,118 --> 00:11:43,286 あっ… 用などない 211 00:11:43,703 --> 00:11:46,706 おぬしは 用がなくとも 勝手に押しかけてくるくせに 212 00:11:46,790 --> 00:11:49,000 私には用を求めるのか 213 00:11:50,669 --> 00:11:52,003 そうだな 214 00:11:52,671 --> 00:11:55,507 では 友らしく茶でも飲むか 215 00:12:00,303 --> 00:12:03,515 赤雀のことだが どうしているか気になるか? 216 00:12:04,558 --> 00:12:05,559 (温螢)いえ 217 00:12:05,767 --> 00:12:07,477 (寿雪)聞けば もっと分かると思うが 218 00:12:08,270 --> 00:12:09,271 いいのです 219 00:12:09,604 --> 00:12:12,315 息災に過ごしているようなら それで 220 00:12:12,566 --> 00:12:13,817 (扉が開く音) 221 00:12:13,900 --> 00:12:15,152 (衣斯哈(いしは))娘娘 (寿雪)あっ 222 00:12:15,527 --> 00:12:17,070 (衣斯哈)ただいま戻りました 223 00:12:17,154 --> 00:12:19,030 (温螢)では 失礼します (衣斯哈)あっ… 224 00:12:19,739 --> 00:12:21,616 あ… あの 温螢さん! 225 00:12:21,908 --> 00:12:22,742 (温螢)ん? 226 00:12:22,826 --> 00:12:25,620 (衣斯哈)僕が 烏妃様のもとで働けるよう 227 00:12:25,704 --> 00:12:28,748 口添えしてくださったのは 温螢さんだと聞きました 228 00:12:29,207 --> 00:12:31,168 どうも ありがとうございました 229 00:12:31,710 --> 00:12:35,881 それは 娘娘のためであって お前のためではない 230 00:12:35,964 --> 00:12:40,719 僕は とても助かりました だからお礼を言います 231 00:12:42,262 --> 00:12:45,223 そうか よかったな 232 00:12:45,640 --> 00:12:46,641 (寿雪)ん… 233 00:12:47,017 --> 00:12:50,312 (九九)娘娘 陛下からいただいた すももです 234 00:12:50,395 --> 00:12:51,396 うむ 235 00:12:51,855 --> 00:12:54,274 温螢 おぬしも食べていけ 236 00:12:55,150 --> 00:12:56,860 (星星(しんしん))クア~ (九九)そういえば 237 00:12:57,402 --> 00:13:00,822 衣斯哈の指導役だった宦官が 寝込んでるんだって? 238 00:13:00,906 --> 00:13:04,451 (衣斯哈)はい でも 病ではないと思います 239 00:13:04,534 --> 00:13:07,662 あの方は ただ 怖がっておいでなのです 240 00:13:07,746 --> 00:13:08,622 (九九)何を 241 00:13:09,831 --> 00:13:10,749 娘娘を 242 00:13:11,333 --> 00:13:12,209 私を? 243 00:13:12,918 --> 00:13:16,046 娘娘の瞳に 化け物がいたと言って… 244 00:13:16,129 --> 00:13:16,880 (寿雪)あっ… 245 00:13:16,963 --> 00:13:18,048 (温螢)衣斯哈! 246 00:13:18,131 --> 00:13:20,967 (衣斯哈)あっ も… 申し訳ございません 247 00:13:21,051 --> 00:13:23,678 そのくらい怖がっていた ということです 248 00:13:24,012 --> 00:13:28,099 その娘から 出ていけというのが 分からぬか! 249 00:13:32,229 --> 00:13:35,690 (淡海(たんかい))おっ すももですか うまそうですね 250 00:13:35,774 --> 00:13:37,692 (九九)淡海さん いらっしゃい 251 00:13:37,776 --> 00:13:40,070 (淡海)娘娘 大家がお呼びです 252 00:13:40,362 --> 00:13:42,489 鰲枝殿(ごうしでん)まで おいで願えますか? 253 00:13:43,740 --> 00:13:46,159 (左丘(さきゅう) 曜(よう))左丘曜と申します 254 00:13:46,243 --> 00:13:48,828 こちらが その琵琶にございます 255 00:13:49,496 --> 00:13:51,581 ほう 見事だな 256 00:13:51,998 --> 00:13:55,961 紫檀(したん) 鼈甲(べっこう) 夜光貝の螺鈿(らでん)が使われている 257 00:13:56,419 --> 00:13:58,296 この世に 二つとない佳品だ 258 00:13:59,548 --> 00:14:00,340 見てみろ 259 00:14:02,133 --> 00:14:04,886 (琵琶の音) 260 00:14:04,970 --> 00:14:05,971 (寿雪)あっ… 261 00:14:15,021 --> 00:14:16,022 うっ… 262 00:14:16,898 --> 00:14:17,732 ああ… 263 00:14:18,191 --> 00:14:19,901 こちらを のぞき込んでいるだろう 264 00:14:20,360 --> 00:14:23,196 よほど琵琶に執着があるのだな 265 00:14:23,697 --> 00:14:25,073 それなんだがな… 266 00:14:25,156 --> 00:14:28,410 その面に取り憑いた幽鬼というのは 267 00:14:28,493 --> 00:14:32,122 わたくしの知っている 男なのではないかと思ったのです 268 00:14:32,205 --> 00:14:34,207 (寿雪)ほう その者の名は? 269 00:14:34,291 --> 00:14:36,710 乞伏(きっぷく)士畢(しひつ)といいます 270 00:14:37,586 --> 00:14:41,881 彼は 琵琶を弾くためだけに 生きているような男でした 271 00:14:43,341 --> 00:14:47,345 士畢は 五弦の琵琶を 自在に弾きこなし 272 00:14:47,429 --> 00:14:49,389 ほかの者では 決して出せない— 273 00:14:49,472 --> 00:14:52,058 美しい音色を 出すことができました 274 00:14:52,517 --> 00:14:55,228 ですが 周りとなじむことがなく 275 00:14:55,312 --> 00:14:58,231 少しずつ うたげの席に 召し出されることは 276 00:14:58,315 --> 00:14:59,482 減っていきました 277 00:15:00,483 --> 00:15:04,279 それでも 士畢は ひたすら芸を磨き続けました 278 00:15:04,362 --> 00:15:08,617 日夜 彼の琵琶の音が 鴇耳坊に響き渡るのです 279 00:15:08,700 --> 00:15:11,328 ほんの少しの休む間もなく ずっと 280 00:15:11,953 --> 00:15:15,290 気になった わたくしは 様子を見に行くことにしました 281 00:15:15,957 --> 00:15:17,459 驚きました 282 00:15:17,542 --> 00:15:21,212 体は ひどく痩せ衰え 指は血にまみれているのに 283 00:15:21,296 --> 00:15:24,132 止まることなく 弦を つま弾いているのです 284 00:15:24,215 --> 00:15:26,843 わたくしは 彼から琵琶を取り上げて 285 00:15:26,926 --> 00:15:29,179 部屋に閉じ込めることにしました 286 00:15:30,055 --> 00:15:35,352 彼は琵琶を返せと叫び 戸を たたき続けていましたが… 287 00:15:36,519 --> 00:15:39,939 翌朝 静かになった部屋に 行ってみると 288 00:15:40,023 --> 00:15:42,442 首をくくって果てておりました 289 00:15:43,360 --> 00:15:47,614 琵琶が鳴りだしたのは 弔いが終わった夜のことです 290 00:15:47,947 --> 00:15:50,992 彼は海を渡れず さまよっているのだ 291 00:15:51,076 --> 00:15:52,619 そう思いました 292 00:15:53,161 --> 00:15:56,998 ですから わたくしは 士畢の琵琶を火にくべました 293 00:15:57,082 --> 00:16:00,543 琵琶がなくなれば 諦めて海を渡るであろう 294 00:16:00,627 --> 00:16:02,420 そう考えたのです 295 00:16:03,463 --> 00:16:06,966 琵琶が燃え尽きると 音(おと)は やみました 296 00:16:07,258 --> 00:16:09,761 その後 遺品も整理して 297 00:16:09,844 --> 00:16:12,597 すべてが終わったと 思っていたのですが 298 00:16:13,014 --> 00:16:17,227 彼の魂は 面に宿り 残っていたのですね 299 00:16:18,144 --> 00:16:21,189 士畢は琵琶が欲しいのでしょう 300 00:16:21,272 --> 00:16:24,693 あのとき 取り上げるべきでは ありませんでした 301 00:16:24,776 --> 00:16:26,111 (寿雪)そうとも言えぬ 302 00:16:26,611 --> 00:16:28,321 死してなお この執着 303 00:16:29,030 --> 00:16:30,573 取り上げずにいたなら 304 00:16:30,657 --> 00:16:33,618 生きながらにして 鬼へと変じていたであろう 305 00:16:34,911 --> 00:16:36,496 おぬしは 士畢を 306 00:16:36,579 --> 00:16:38,707 人のまま 死なせてやった とも言える 307 00:16:38,790 --> 00:16:40,792 あっ… いいえ 308 00:16:41,334 --> 00:16:44,254 わたくしは 彼の才を妬んでいました 309 00:16:44,587 --> 00:16:49,509 琵琶を取り上げたとき わたくしは 愉悦すら覚えたのです 310 00:16:50,176 --> 00:16:52,262 烏妃様 どうすれば 311 00:16:52,345 --> 00:16:55,598 士畢を楽土(らくど)へ 送ってやれるのでしょうか 312 00:16:56,474 --> 00:16:58,768 さて どうしたものか… 313 00:17:03,273 --> 00:17:04,274 よし 314 00:17:06,151 --> 00:17:07,444 琵琶を弾いてくれ 315 00:17:07,694 --> 00:17:11,281 私が よいと言うまで 決して手を止めるな 316 00:17:11,364 --> 00:17:12,824 (唾を飲み込む音) 317 00:17:12,907 --> 00:17:13,825 はい 318 00:17:18,538 --> 00:17:23,001 (琵琶の音) 319 00:17:32,302 --> 00:17:33,636 (寿雪)乞伏士畢 320 00:17:35,388 --> 00:17:39,642 (乞伏士畢)ああ… 321 00:17:40,310 --> 00:17:41,770 (曜)うわっ あっ… 322 00:17:41,853 --> 00:17:42,771 (寿雪)止めるな! 323 00:17:42,854 --> 00:17:45,607 (琵琶の音) 324 00:17:45,690 --> 00:17:52,530 (うめき声) 325 00:17:52,614 --> 00:17:54,741 (曜)あっ あっ ああ… 326 00:17:55,950 --> 00:17:59,788 (士畢)ああ うああ… 327 00:18:01,790 --> 00:18:03,041 (曜)んん… 328 00:18:07,337 --> 00:18:09,088 (士畢)ああ… 329 00:18:10,799 --> 00:18:17,806 (琵琶の音) 330 00:18:21,810 --> 00:18:23,603 (寿雪)もうよい (曜)あっ… 331 00:18:24,813 --> 00:18:26,189 ハア~ 332 00:18:29,359 --> 00:18:31,027 (寿雪)高峻 (高峻)あっ… 333 00:18:31,444 --> 00:18:32,570 これは燃やすぞ 334 00:18:32,654 --> 00:18:33,571 燃やす… 335 00:18:43,581 --> 00:18:45,416 (衛青)国宝の琵琶が… 336 00:18:45,500 --> 00:18:48,628 これで士畢は海を渡ったであろう 337 00:18:48,711 --> 00:18:52,173 くっ ううっ… 338 00:18:52,257 --> 00:18:54,926 うああ… 339 00:18:55,009 --> 00:19:02,016 (泣き声) 340 00:19:04,435 --> 00:19:08,439 (高峻)そなたは いつでも 幽鬼のことを真剣に考えるのだな 341 00:19:08,523 --> 00:19:12,443 私ができることは 幽鬼を救ってやることくらいだ 342 00:19:12,819 --> 00:19:15,321 それすら できぬこともあるが… 343 00:19:16,656 --> 00:19:19,909 それでも解放してやりたいと思う 344 00:19:20,952 --> 00:19:22,662 そなたは最初のころより 345 00:19:23,121 --> 00:19:25,748 ずいぶん自分の気持ちを しゃべるようになったな 346 00:19:26,291 --> 00:19:29,669 幽鬼を救うことで 救われる生者もいる 347 00:19:30,628 --> 00:19:34,591 そなたが思うより そなたは 誰かを救っているだろう 348 00:19:34,674 --> 00:19:35,884 (寿雪)あっ… 349 00:19:36,801 --> 00:19:38,011 ああ… 350 00:19:39,596 --> 00:19:43,141 (高峻)暗くなってしまったな 衛青に送らせよう 351 00:19:45,685 --> 00:19:48,605 (寿雪)衛青 高峻は疲れておるのか? 352 00:19:48,688 --> 00:19:50,732 (衛青)大家は ご多忙ですので 353 00:19:50,815 --> 00:19:53,109 疲れてらっしゃらないときは ございません 354 00:19:53,192 --> 00:19:54,402 (寿雪)んん… 355 00:19:55,820 --> 00:19:57,739 星烏廟(せいうびょう)で元気がなかった 356 00:19:58,531 --> 00:20:00,533 そんな顔を見せるのは珍しい 357 00:20:02,827 --> 00:20:06,664 (衛青)いままでは 皇太后という 共通の病巣がございました 358 00:20:07,332 --> 00:20:09,626 その間は 鳴りを潜めていたものが 359 00:20:09,876 --> 00:20:12,545 大家の足かせと なりつつあるのです 360 00:20:13,254 --> 00:20:15,548 (寿雪)帝を 悩ませるものといえば 361 00:20:15,632 --> 00:20:18,551 おおよそ決まっておるな 外戚だ 362 00:20:20,970 --> 00:20:24,891 雲永徳は 高峻が 皇太子時代からの側近だったか 363 00:20:27,310 --> 00:20:30,313 その孫娘の花娘を あえて めとったのは 364 00:20:30,396 --> 00:20:32,190 外戚の禍をいとうてか 365 00:20:32,565 --> 00:20:33,775 (衛青)…と おっしゃいますと? 366 00:20:34,734 --> 00:20:36,069 子をなさぬため 367 00:20:37,570 --> 00:20:41,240 雲家に 皇太子を作らぬことで 専横を抑えている 368 00:20:41,783 --> 00:20:44,410 さしずめ 高峻はそれらのことで 369 00:20:44,494 --> 00:20:46,621 神経を すり減らしておるのだろう 370 00:20:47,455 --> 00:20:49,958 私に構っている暇など ないだろうに 371 00:20:50,750 --> 00:20:52,460 (衛青)そのとおりでございます 372 00:20:53,378 --> 00:20:54,212 ハア~ 373 00:20:54,671 --> 00:20:56,631 相変わらず嫌なヤツだ 374 00:20:58,299 --> 00:20:59,509 ご苦労であった 375 00:21:01,719 --> 00:21:03,846 (衛青)温螢 淡海 (2人)はっ 376 00:21:04,305 --> 00:21:06,307 話がある ついてこい 377 00:21:08,810 --> 00:21:10,979 何をしている 早く来い 378 00:21:12,271 --> 00:21:13,272 はい 379 00:21:15,692 --> 00:21:17,360 (温螢)話とは なんでしょうか 380 00:21:18,152 --> 00:21:20,738 私は夜明宮(やめいきゅう)の護衛があるのですが 381 00:21:20,822 --> 00:21:21,823 間違えるな 382 00:21:22,490 --> 00:21:25,201 お前の役目は 烏妃の動きを見張ることだ 383 00:21:25,284 --> 00:21:26,285 はい 384 00:21:26,661 --> 00:21:29,789 ですが それほど警戒せずとも よろしいのでは? 385 00:21:29,872 --> 00:21:30,873 (衛青)ん… 386 00:21:31,374 --> 00:21:34,627 (温螢)寿雪様は 大家に仇(あだ)なすどころか 387 00:21:34,711 --> 00:21:36,004 助けになっていらっしゃる 388 00:21:36,671 --> 00:21:38,464 だから 恐れるんじゃないか 389 00:21:38,548 --> 00:21:39,590 (温螢)えっ? 390 00:21:39,674 --> 00:21:43,011 温螢 お前は 夜明宮の宦官ではない 391 00:21:43,720 --> 00:21:45,263 大家の宦官だ 392 00:21:45,680 --> 00:21:47,473 (衛青)いいか 烏妃となれ合いを… (淡海)あっ! 393 00:21:47,557 --> 00:21:48,599 衛(えい)内常侍(ないじょうじ)! 394 00:21:48,683 --> 00:21:49,684 (2人)あっ! 395 00:21:51,019 --> 00:21:52,145 (温螢)血のにおい? 396 00:21:53,396 --> 00:21:54,397 (衛青)こっちだ! 397 00:21:56,816 --> 00:21:57,650 (3人)ああ… 398 00:22:02,655 --> 00:22:03,990 これは… 399 00:22:05,324 --> 00:22:12,331 ♪~ 400 00:23:27,532 --> 00:23:34,539 ~♪