1 00:01:45,000 --> 00:01:48,912 神原 お前 さては僕が片付けに来るにあたって 2 00:01:48,913 --> 00:01:54,368 どうせだからって嫌がらせみたいに 他の部屋の散らかりも ここに詰めたんじゃないだろうな? 3 00:01:54,464 --> 00:01:57,850 何を言う これはあらぬ疑いをかけられたものだ 4 00:01:58,114 --> 00:02:01,100 まあ阿良々木先輩からかけられるのであれば 5 00:02:01,270 --> 00:02:03,980 褒め言葉でも疑いでも 嬉しいものだがな! 6 00:02:04,423 --> 00:02:06,480 褒め甲斐ねえだろ そんな奴... 7 00:02:12,440 --> 00:02:17,150 じゃ 僕はこれで帰るよ もうとっぷり 夜も更けちまったことだしな 8 00:02:17,320 --> 00:02:20,740 おいおい 待ちたまえよ 阿良々木先輩 9 00:02:21,070 --> 00:02:25,950 私が尊敬すべき先輩に それも選りすぐりの阿良々木先輩に 10 00:02:25,950 --> 00:02:27,370 部屋を片付けさせただけで 11 00:02:27,370 --> 00:02:29,620 何もせずに帰すと思うのか? 12 00:02:29,620 --> 00:02:31,000 何もせずにって... 13 00:02:31,000 --> 00:02:33,500 お前 僕に何をするつもりだ!? 14 00:02:34,500 --> 00:02:36,210 お茶くらい出そうと思う 15 00:02:36,210 --> 00:02:38,130 いや お茶では足らんな 16 00:02:38,130 --> 00:02:42,390 私は阿良々木先輩に ちょっとした晩餐(ばんさん)くらいは用意すべきだろう 17 00:02:44,140 --> 00:02:46,020 じゃあ ご馳走(ちそう)になるよ 18 00:02:46,890 --> 00:02:50,350 では 阿良々木先輩 晩餐の席に向かう前に 19 00:02:50,350 --> 00:02:51,980 風呂に入ってきてくれ 20 00:02:51,980 --> 00:02:55,150 そんな汚れた姿でダイニングに来られては 21 00:02:55,150 --> 00:02:56,214 迷惑だ 22 00:03:06,740 --> 00:03:08,710 ...しかし 落ち着かない 23 00:03:09,040 --> 00:03:11,330 む!なんだ!扉が開かないぞ! 24 00:03:11,330 --> 00:03:12,710 鍵がかかっている! 25 00:03:12,920 --> 00:03:15,482 大丈夫か阿良々木先輩 何があった! 26 00:03:15,510 --> 00:03:16,665 すぐに助けるぞ! 27 00:03:16,920 --> 00:03:18,010 ここを開けろ! 28 00:03:18,010 --> 00:03:19,720 両手をあげて出て来い! 29 00:03:19,720 --> 00:03:20,970 これは警告だ! 30 00:03:20,970 --> 00:03:23,050 私は神原駿河! 31 00:03:23,050 --> 00:03:25,100 阿良々木先輩のエロ奴隷(どれい) 32 00:03:25,260 --> 00:03:27,140 得意技は三角飛びだ! 33 00:03:28,430 --> 00:03:30,640 ええい なぜ開かないのだ... 34 00:03:30,770 --> 00:03:34,610 仕方あるまい すぐに機動隊が突入のときに使う棒を持ってくる! 35 00:03:34,610 --> 00:03:38,400 やめろ!あと名称を知らねえもんを持ってこようとするな! 36 00:03:38,400 --> 00:03:41,900 あ なんだ 阿良々木先輩 無事なのか... 37 00:03:41,900 --> 00:03:43,610 びっくりした... 38 00:03:43,610 --> 00:03:46,160 阿良々木先輩が監禁されているのかと思って 39 00:03:46,160 --> 00:03:47,740 とても心配した 40 00:03:47,740 --> 00:03:52,040 僕を監禁するような奴は この世にお前くらいしかいねえよ 41 00:03:52,040 --> 00:03:53,460 そうでもあるまい 42 00:03:53,460 --> 00:03:55,920 戦場ヶ原先輩ならしかねんぞ 43 00:03:56,016 --> 00:04:01,010 はっはっは まさか いくら戦場ヶ原でも そこまでするわけがあるまい 44 00:04:01,010 --> 00:04:05,760 いや 誤解しているようであればただしておきたいのだが 阿良々木先輩 45 00:04:05,760 --> 00:04:11,270 私は 阿良々木先輩の服を 洗濯してさしあげようと思っただけなのだ 46 00:04:11,270 --> 00:04:14,100 決して疚(やま)しい気持ちがあったわけではない 47 00:04:15,190 --> 00:04:17,690 なんだったら服のみならず 48 00:04:17,690 --> 00:04:20,860 阿良々木先輩の身体も洗ってあげてもいいくらいだぞ? 49 00:04:20,860 --> 00:04:22,490 前から後ろから! 50 00:04:23,860 --> 00:04:26,280 部屋を奇麗にしてくれたお礼に 51 00:04:26,280 --> 00:04:29,910 阿良々木先輩の身体を奇麗にしてさしあげようと言っているのだ! 52 00:04:29,910 --> 00:04:32,500 お前はまずはお前の心を奇麗にしろ 53 00:04:33,120 --> 00:04:37,210 こんないい風呂に毎日入っている癖に どうしてそんな汚れていられるんだ 54 00:04:37,560 --> 00:04:43,170 ふふっ まあいい風呂と言われると その通りだと答えざるを得んな 55 00:04:43,170 --> 00:04:47,680 変に謙遜(けんそん)をすると 嫌味になるかもしれん 56 00:04:47,680 --> 00:04:50,970 いい風呂なだけではなく いい湯でもあるだろう 57 00:04:50,970 --> 00:04:54,100 うちの庭から引いている井戸水を沸かしているのだ 58 00:04:54,844 --> 00:04:57,230 ああ そう言えば阿良々木先輩 59 00:04:57,360 --> 00:04:59,230 なんだ 神原後輩 60 00:04:59,230 --> 00:05:02,740 その井戸水には 実はいわくがついていたりするのだぞ? 61 00:05:02,740 --> 00:05:04,740 いわくって どんないわくだ? 62 00:05:05,360 --> 00:05:07,700 私のお父さんの話なんだが 63 00:05:07,740 --> 00:05:13,000 お父さんも当然のことながら ここの井戸水を使っていたのだ 日常的に 64 00:05:13,476 --> 00:05:16,500 ふうん... 日常的にな 65 00:05:16,500 --> 00:05:19,792 ただ 子供の頃から――入浴に際して 66 00:05:19,793 --> 00:05:22,183 ごくまれに気になることがあったのだそうだ 67 00:05:22,380 --> 00:05:23,670 気になること? 68 00:05:24,010 --> 00:05:25,800 気になる現象 69 00:05:25,800 --> 00:05:27,510 と言うべきかもしれんが 70 00:05:27,510 --> 00:05:30,510 怪異がらみというほどではないのだが 71 00:05:30,510 --> 00:05:32,520 不思議な現象があったそうだ 72 00:05:32,520 --> 00:05:34,520 やけにと言うか 73 00:05:34,520 --> 00:05:36,770 随分と細(こま)かい注釈をつけるなあ 74 00:05:36,770 --> 00:05:41,020 阿良々木先輩 そのつかっている湯船の水面を見てくれ 75 00:05:44,240 --> 00:05:48,360 見たぞ 今更だけれど... この水がどうかしたのか? 76 00:05:48,700 --> 00:05:50,070 いや 水ではない 77 00:05:50,070 --> 00:05:54,450 ちゃんと言っただろう 私が見て欲しいといったのは 水ではなく 78 00:05:55,120 --> 00:05:56,870 水面だ 79 00:06:02,210 --> 00:06:02,630 死ね 80 00:06:03,210 --> 00:06:05,365 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 死ね 81 00:06:05,590 --> 00:06:08,180 ま まだ死ねないな 82 00:06:08,180 --> 00:06:11,720 まだ僕は お前と恋人同士になったばかりなんだから 83 00:06:12,470 --> 00:06:14,390 付き合い始めたばかりなんだから 84 00:06:15,020 --> 00:06:17,350 デートをもっともっとしたいのだから 85 00:06:17,350 --> 00:06:20,730 今死ぬには あまりにも人生が惜し過ぎる 86 00:06:20,860 --> 00:06:22,060 あらそう 87 00:06:22,060 --> 00:06:23,980 嬉しいことを言ってくれるじゃない 88 00:06:23,980 --> 00:06:25,860 じゃあ死ななくていいわ 89 00:06:29,110 --> 00:06:33,620 まあそんな感じで 今日は神原の家に掃除に行って来たんだよ 90 00:06:33,910 --> 00:06:36,200 後輩の部屋に掃除に行くなんて 91 00:06:36,200 --> 00:06:38,370 阿良々木くんは面倒見がいいわね 92 00:06:38,580 --> 00:06:42,590 お風呂を浴びてくるのは図々しいけれど 死ねって思うけれど 93 00:06:42,590 --> 00:06:43,710 思うなよ 94 00:06:43,710 --> 00:06:46,260 殺すって思わないだけマシでしょう? 95 00:06:47,510 --> 00:06:52,760 で 阿良々木くん あなた 神原のその話について どう思ったの? 96 00:06:52,760 --> 00:06:56,560 いや まあ 確かに不思議な話だったよ 97 00:06:56,560 --> 00:06:59,190 いや 不思議じゃあないのかな? 98 00:06:59,190 --> 00:07:02,020 ロマンチックな話と言うべきなのかもしれない 99 00:07:02,020 --> 00:07:04,320 神原のお父さんがその水面に 100 00:07:04,320 --> 00:07:07,650 将来結ばれることになる女性の像を見ていたというのは 101 00:07:08,440 --> 00:07:09,780 そういう話だった 102 00:07:10,700 --> 00:07:13,160 いつもではなく たまに だったそうだが 103 00:07:14,080 --> 00:07:18,910 とにかく将来 自分が駆け落ちする相手の像を 水面に見ていたとか 104 00:07:19,410 --> 00:07:22,710 そして しているうちに見えなくなったそうだが 105 00:07:22,710 --> 00:07:28,300 神原のお父さんは 神原のお母さん つまり臥煙遠江さんに出会ったとき 106 00:07:28,300 --> 00:07:30,170 とても衝撃を受けたという 107 00:07:30,680 --> 00:07:34,510 ちなみに 阿良々木くんが神原に 言われてその水面を見たとき 108 00:07:34,510 --> 00:07:37,180 その水面には誰の姿が映ったのかしら? 109 00:07:37,680 --> 00:07:39,680 私?私? 110 00:07:39,680 --> 00:07:41,190 それとも私? 111 00:07:41,190 --> 00:07:41,940 うざっ! 112 00:07:42,020 --> 00:07:43,150 羽川さん? 113 00:07:43,150 --> 00:07:44,020 神原? 114 00:07:44,020 --> 00:07:45,190 八九寺ちゃん? 115 00:07:45,190 --> 00:07:45,900 こわっ! 116 00:07:46,980 --> 00:07:49,610 いや 別に誰も映ってないよ... 117 00:07:49,610 --> 00:07:52,990 普通に反射して 僕の顔が映ってただけだよ 118 00:07:54,370 --> 00:07:58,870 まあ その話自体は 私 以前に神原に聞いてはいたのよ 119 00:07:59,620 --> 00:08:02,870 まあ 聞くまで忘れていたのは事実だけれどね 120 00:08:02,870 --> 00:08:08,300 もっともそのときには 私はいい子だったから 野暮(やぼ)なことは言わなかったけれど 121 00:08:11,470 --> 00:08:14,550 だから 当時の私は性格がよかったから 122 00:08:14,550 --> 00:08:16,600 つまり今みたいに根性がひねくれた 123 00:08:16,600 --> 00:08:19,810 性悪の最低女じゃなかったから 124 00:08:22,060 --> 00:08:26,310 無粋(ぶすい)にもそのロマンチックな 怪異譚ならぬ恋愛譚に 125 00:08:26,310 --> 00:08:29,570 解釈を付け加えたりはしなかったという意味よ 126 00:08:30,820 --> 00:08:33,820 後日談というか 今回のオチ 127 00:08:33,820 --> 00:08:35,030 え?何? 128 00:08:35,200 --> 00:08:39,830 じゃあ 神原のお父さんは 水面に 鏡のように映った自分の顔を 129 00:08:39,830 --> 00:08:43,660 「運命の相手」だと思ったとか そう言ってるのか? 130 00:08:44,080 --> 00:08:48,170 いやあ それはさすがに... ないだろ 131 00:08:48,500 --> 00:08:51,840 水面って 揺れてきらめいて ブレるものね 132 00:08:51,840 --> 00:08:53,670 鏡のようにはいかないわ 133 00:08:53,920 --> 00:08:59,510 そしてたまになら そのブレて映った自分が 女の子に見えることもあるんじゃないの? 134 00:08:59,560 --> 00:09:02,730 まあ... 確かに男女差の少ない 135 00:09:02,730 --> 00:09:05,900 幼い子供だったら そういうこともありうるかもしれないけれど 136 00:09:05,900 --> 00:09:08,020 でも大人になったら 137 00:09:08,020 --> 00:09:12,780 というか ある程度分別がつくようになれば そんなの普通に気付くだろ 138 00:09:12,780 --> 00:09:17,660 普通に気付いたんでしょ だからしているうちに見えなくなったのよ 139 00:09:18,660 --> 00:09:24,160 だけれど 水面に映る人らしき映像を見た という記憶は お父さんに残った 140 00:09:24,160 --> 00:09:27,580 だからってそれを「運命の相手」だとか思うか? 141 00:09:27,580 --> 00:09:29,420 思い込みが強いだろ 142 00:09:29,420 --> 00:09:31,380 それは順序が逆でしょ 143 00:09:31,380 --> 00:09:34,880 これは「運命の相手」と思える相手と出会ったら 144 00:09:34,880 --> 00:09:39,680 それがかつて水面で見た 己の像と似ていたって話だもの 145 00:09:40,930 --> 00:09:44,560 ああ 本人の感覚からすると そうなるのか 146 00:09:44,560 --> 00:09:46,390 恋愛というのはとかく 147 00:09:46,390 --> 00:09:48,940 自分に似た相手を求めがちだから 148 00:09:49,360 --> 00:09:52,150 まあ こんなのただの解釈だけどね 149 00:09:53,940 --> 00:09:57,070 神原に余計なことを言ったら殺すわよ 150 00:09:57,070 --> 00:09:58,570 もしも言ったら許さない 151 00:09:58,570 --> 00:10:02,790 仮に失言してしまったなら 明日までに自殺しておきなさい 152 00:10:07,870 --> 00:10:12,460 なあ 神原 訊きそびれていたけれど お前はどうなんだ? 153 00:10:12,460 --> 00:10:17,420 お前はあの風呂で あの水面を覗(のぞ)き込んだとき そこに何を見るんだ? 154 00:10:18,260 --> 00:10:26,560 もしも神原のお父さんの解釈が正しいのだとすれば そこには神原が将来結ばれる相手が映し出されるのだろうし 155 00:10:27,140 --> 00:10:31,230 しかし もしも戦場ヶ原の解釈が正しいのだとすれば 156 00:10:31,230 --> 00:10:37,070 そこに映し出されるのは ひょっとすると 神原の母親なのかもしれなかったからだ 157 00:10:37,190 --> 00:10:41,070 あるいは 父さんの姿を見てもおかしくはない 158 00:10:41,070 --> 00:10:44,240 だとすれば それはそれでロマンチックだ 159 00:10:45,290 --> 00:10:48,870 ん?ああ そりゃあ自分のおっぱいが見えるな 160 00:10:48,870 --> 00:10:53,670 これがまた我ながらすっごくエロくて 入浴中はずっとそれを眺めているな 161 00:10:53,670 --> 00:10:56,630 その下の腹筋とのコントラストがすっごく鮮やかで 162 00:10:56,630 --> 00:10:59,880 見蕩(みと)れているうちに のぼせてしまうというのが毎夜のことだ 163 00:10:59,880 --> 00:11:02,430 正直他には何も目に入らない 164 00:11:02,430 --> 00:11:04,640 で それがどうした阿良々木先輩