1 00:00:01,626 --> 00:00:03,420 (琴子(ことこ))アア… 2 00:00:10,635 --> 00:00:11,678 ンッ… 3 00:00:12,804 --> 00:00:15,265 なんで九郎(くろう)先輩が ここに? 4 00:00:20,186 --> 00:00:21,187 (九郎)ンッ… 5 00:00:23,064 --> 00:00:25,358 (琴子)なんと心もとない足さばき 6 00:00:26,192 --> 00:00:28,903 スポーツも格闘技経験も ロクにないくせに— 7 00:00:29,029 --> 00:00:32,365 あんな怪物相手に 平然とした顔をしているなんて… 8 00:00:32,531 --> 00:00:35,869 やはり 九郎先輩以外の何ものでもない 9 00:00:36,828 --> 00:00:39,372 こういう展開は あると思っていたけど 10 00:00:39,497 --> 00:00:41,708 よりによって このタイミングで? 11 00:00:41,833 --> 00:00:43,126 (ブレーキ音) 12 00:00:43,460 --> 00:00:45,336 (紗季(さき))ちょっと! (琴子)ウッ… 13 00:00:45,879 --> 00:00:47,797 (紗季) 一体 どういうつもりなの!? 14 00:00:47,964 --> 00:00:51,217 化け物に呼び出しさせといて 席を外してるわ— 15 00:00:51,384 --> 00:00:53,344 幽霊に伝言を残していくわ! 16 00:00:53,470 --> 00:00:56,723 (琴子)アア… ファミレスで 待っていればいいものを… 17 00:00:56,848 --> 00:00:58,975 何とか言ったら… (衝撃音) 18 00:01:01,436 --> 00:01:03,063 ちょっと あれ 助けないと… 19 00:01:03,188 --> 00:01:04,855 放っておいても大丈夫です 20 00:01:04,980 --> 00:01:06,649 (紗季)えっ? (琴子)どうせ 当人も— 21 00:01:06,775 --> 00:01:09,944 1回くらいは 頭を 潰される覚悟はしているでしょう 22 00:01:10,070 --> 00:01:12,072 えっ? アア… 23 00:01:14,616 --> 00:01:15,700 ンッ… 24 00:01:17,368 --> 00:01:18,203 (紗季)く… 25 00:01:19,204 --> 00:01:20,622 九郎君? 26 00:01:23,458 --> 00:01:29,464 ♪〜 27 00:02:46,916 --> 00:02:50,795 〜♪ 28 00:02:53,965 --> 00:02:56,467 なんで九郎君が… 29 00:02:57,010 --> 00:02:59,596 近づくと 巻き添えを食うかもしれません 30 00:02:59,721 --> 00:03:01,764 しばらく様子を見ましょう 31 00:03:02,390 --> 00:03:03,391 ンッ… 32 00:03:04,767 --> 00:03:05,768 ンッ… 33 00:03:05,894 --> 00:03:08,396 (紗季)でも 九郎君 今にもやられそうじゃない 34 00:03:08,521 --> 00:03:10,565 アッ… 足が もつれてるし 35 00:03:10,690 --> 00:03:14,652 (琴子)そうは言っても 大きな 力の差があるわけでもないようです 36 00:03:14,777 --> 00:03:16,237 なら 簡単でしょう 37 00:03:16,529 --> 00:03:19,657 鉄骨を食らう覚悟があるなら なおさらです 38 00:03:22,035 --> 00:03:24,370 (琴子)そうして臨死に至っても 九郎先輩は— 39 00:03:24,537 --> 00:03:26,122 人魚の肉を食べて得た— 40 00:03:26,289 --> 00:03:29,292 不死身の能力で すぐに立ち上がるでしょう 41 00:03:32,503 --> 00:03:34,047 アッ… アアッ… 42 00:03:34,923 --> 00:03:36,216 グッ… 43 00:03:38,176 --> 00:03:39,135 ハッ… 44 00:03:40,428 --> 00:03:41,596 あっ! 45 00:03:42,138 --> 00:03:43,348 ハッ… 46 00:03:48,186 --> 00:03:49,020 (殴る音) 47 00:03:50,396 --> 00:03:51,731 アア… 48 00:03:59,405 --> 00:04:00,240 うん? 49 00:04:00,406 --> 00:04:02,492 (紗季)アア… (琴子)初めてですか? 50 00:04:03,034 --> 00:04:05,245 九郎先輩が死ぬところを見るのは 51 00:04:05,745 --> 00:04:08,998 (紗季)当たり前じゃない… (琴子)なら なぜ別れたんです? 52 00:04:09,832 --> 00:04:13,002 手の切り傷が あっという間に消えるのを見た… 53 00:04:13,419 --> 00:04:16,089 ちぎれた指が くっつくのを見た… 54 00:04:16,214 --> 00:04:17,673 なのに 九郎君 55 00:04:17,798 --> 00:04:20,593 いつもと変わらない顔で 平然としてるのよ 56 00:04:20,760 --> 00:04:23,471 そりゃ不死身ですから それくらい 57 00:04:24,347 --> 00:04:26,099 “丈夫な恋人” 58 00:04:26,266 --> 00:04:30,061 “傷病保険の心配をしなくていい ステキな旦那さま”と— 59 00:04:30,186 --> 00:04:31,980 受け入れられないものか… 60 00:04:32,272 --> 00:04:35,358 まあ この様子では ムリだったらしい 61 00:04:35,984 --> 00:04:38,903 (紗季)そんな人と 家族になれるのかって考えたら— 62 00:04:39,028 --> 00:04:41,114 急に怖くなるのは おかしい? 63 00:04:41,531 --> 00:04:44,075 結婚を考え直すのはダメなわけ? 64 00:04:45,159 --> 00:04:50,290 九郎君の親類縁者 何十人もの ほとんどが 変死や病死しているの 65 00:04:51,249 --> 00:04:54,669 まともに生きてるのは 九郎君くらいなのよ… 66 00:05:00,258 --> 00:05:02,302 (九郎)ハァ〜ッ… (琴子)あっ… 67 00:05:02,802 --> 00:05:04,595 九郎先輩が復活しましたね 68 00:05:04,721 --> 00:05:05,555 えっ… 69 00:05:06,889 --> 00:05:08,182 フゥ… 70 00:05:11,394 --> 00:05:12,854 (息を吸う音) 71 00:05:21,195 --> 00:05:23,114 あ… あんなに近づいたら— 72 00:05:23,281 --> 00:05:24,991 また殺される… 73 00:05:31,122 --> 00:05:32,415 (地面を殴る音) 74 00:05:37,253 --> 00:05:38,379 (九郎)ンッ… 75 00:05:40,590 --> 00:05:43,426 鉄骨が当たる1歩手前で止まった? 76 00:05:44,343 --> 00:05:49,015 九郎君も鋼人七瀬(こうじんななせ)も まるで 台本でもあるかのような動きだった 77 00:05:49,140 --> 00:05:51,392 そうなるのは当然のような… 78 00:05:51,851 --> 00:05:54,020 あんな簡単に捕らえられるなんて… 79 00:05:54,145 --> 00:05:55,146 鋼人七瀬は— 80 00:05:55,271 --> 00:05:58,441 ほとんど考えなしに 鉄骨を振り回すだけですから 81 00:05:58,858 --> 00:06:02,445 こういうことが起こる確率は 極めて高いでしょう 82 00:06:02,779 --> 00:06:05,198 そして 十分に起こりうることならば— 83 00:06:05,490 --> 00:06:09,994 九郎先輩が その未来をあらかじめ 決定することは難しくない 84 00:06:10,495 --> 00:06:13,664 それも また 九郎先輩の能力 85 00:06:13,790 --> 00:06:15,333 人魚と一緒に食べた— 86 00:06:15,500 --> 00:06:20,213 予言獣(よげんじゅう)“くだん”の力 “未来決定能力”です 87 00:06:21,672 --> 00:06:24,967 紗季さんには 全てを話していないと言っていた 88 00:06:26,511 --> 00:06:29,013 桜川(さくらがわ)家の秘密のこと… 89 00:06:31,390 --> 00:06:33,017 そもそもの始まりは— 90 00:06:33,142 --> 00:06:37,647 九郎先輩の十何代か前に当たる 桜川家の当主だった 91 00:06:38,189 --> 00:06:43,319 (当主)肝臓が悪ければ 肝臓が 丈夫な生き物の肝を食べればいい 92 00:06:43,444 --> 00:06:47,365 目が悪ければ 目のよい生き物の目を食べればいい 93 00:06:47,532 --> 00:06:50,368 (当主) ならば もし くだんの肉を食べれば 94 00:06:50,493 --> 00:06:53,371 その予言の力を 得られるのではないか? 95 00:06:53,788 --> 00:06:58,751 未来を自由に見られれば どれほどの富と力を得られるだろう 96 00:07:00,294 --> 00:07:01,379 (琴子)〝件(くだん) 〞 97 00:07:04,006 --> 00:07:07,468 頭は人間 体は牛の妖怪である 98 00:07:07,593 --> 00:07:11,264 人の言葉を話し 未来を予言すると死んでしまう 99 00:07:11,931 --> 00:07:16,519 豊作や家の繁栄といった よい未来を予言する場合もあるが 100 00:07:16,686 --> 00:07:20,523 多くは 凶事の予言を行い 必ず的中させる 101 00:07:21,399 --> 00:07:25,278 彼は くだんの肉を手に入れ 家の者たちに食べさせた 102 00:07:25,945 --> 00:07:28,781 ある者は 体に合わず 食べると すぐ死に 103 00:07:28,948 --> 00:07:31,284 ある者は ひと月 寝込んで死に 104 00:07:31,451 --> 00:07:34,537 ある者は 未来を予言して死んだ 105 00:07:35,705 --> 00:07:38,833 その予言は 見事に当たったという 106 00:07:40,251 --> 00:07:42,628 当主は それを繰り返し試した 107 00:07:42,753 --> 00:07:47,550 だが 肉を食べ 未来の力を得ても 皆 すぐに死んだ 108 00:07:48,384 --> 00:07:50,261 くだんと同じように… 109 00:07:53,514 --> 00:07:57,727 (当主)あと少し… あと少しだというのに… 110 00:07:58,060 --> 00:07:58,811 グッ… 111 00:07:58,978 --> 00:08:00,521 ええい くそ! 112 00:08:04,609 --> 00:08:05,776 うん? 113 00:08:08,154 --> 00:08:09,113 (当主)あっ… 114 00:08:09,197 --> 00:08:10,406 (琴子)彼は思いついた 115 00:08:10,948 --> 00:08:15,161 予言の力を持つ者が不死身の肉体を 持っていればよいのだと 116 00:08:15,703 --> 00:08:18,206 そうして くだんの肉と一緒に— 117 00:08:18,331 --> 00:08:21,167 人魚の肉を 食べさせるという試みを始めた 118 00:08:22,043 --> 00:08:25,296 けれども 食べて死ぬ犠牲者は格段に増え— 119 00:08:25,421 --> 00:08:29,592 いつまでたっても 実験が成功することはなかった 120 00:08:31,969 --> 00:08:33,471 やがて 時が過ぎ— 121 00:08:33,596 --> 00:08:37,225 そんな悪夢めいた行いのことも 忘れられていった 122 00:08:37,933 --> 00:08:39,018 だが… 123 00:08:39,143 --> 00:08:41,312 (九郎の祖母)九郎 (少年時代の九郎)ンッ… 124 00:08:42,605 --> 00:08:43,898 おばあさま 125 00:08:44,065 --> 00:08:46,651 (祖母)夕餉(ゆうげ)ができましたよ (九郎)はい 126 00:08:47,443 --> 00:08:48,903 (少年たち)いただきます 127 00:08:59,539 --> 00:09:00,831 (少年)グハッ… 128 00:09:00,998 --> 00:09:02,750 ハッ… 兄さん!? 129 00:09:03,376 --> 00:09:04,210 えっ… 130 00:09:04,377 --> 00:09:05,962 (少年)グハッ… 131 00:09:06,128 --> 00:09:09,465 (少年たちの うめき声) (九郎)アア… 132 00:09:11,175 --> 00:09:14,095 ハッ… おばあさま! 兄さんたちが! 133 00:09:14,637 --> 00:09:15,471 あっ… 134 00:09:19,141 --> 00:09:22,103 み… みんなが苦しそうです 135 00:09:22,228 --> 00:09:23,980 おお 九郎や… 136 00:09:24,897 --> 00:09:26,983 お前は何ともないのかい? 137 00:09:27,483 --> 00:09:29,485 熱は? 吐き気は? 138 00:09:29,610 --> 00:09:30,945 いえ 何も… 139 00:09:31,404 --> 00:09:34,407 かなった… かなった! 140 00:09:35,116 --> 00:09:37,702 (琴子) この祖母が まだ夢を見ていた 141 00:09:38,286 --> 00:09:41,539 くだんと人魚の肉を ひそかに集めて… 142 00:09:42,373 --> 00:09:43,207 おばあさま 143 00:09:43,958 --> 00:09:46,752 皆が苦しんでます 助けを… 144 00:09:46,877 --> 00:09:48,462 そうさねえ… 145 00:09:49,130 --> 00:09:51,841 明日の天気が知りたいねえ 146 00:09:51,966 --> 00:09:52,675 えっ? 147 00:09:53,175 --> 00:09:55,428 お前なら見えるはずだよ 九郎 148 00:09:55,595 --> 00:09:59,807 一度 死んで見てきておくれ 未来を… 149 00:10:01,100 --> 00:10:02,143 (刺す音) 150 00:10:03,769 --> 00:10:07,440 (琴子)その後 狂喜した祖母に あれこれ試された 151 00:10:07,857 --> 00:10:10,985 不死身かどうか 予言できるかどうか 152 00:10:11,110 --> 00:10:14,947 体を切り刻まれ 繰り返し 致命傷を負わされ 153 00:10:15,072 --> 00:10:17,908 ほとんどの痛みを 感じなくなってしまった 154 00:10:18,492 --> 00:10:20,161 (少女)九郎 (九郎)あっ… 155 00:10:24,165 --> 00:10:27,126 (少女)裏の川に ホタルが たくさん出ているわ 156 00:10:27,501 --> 00:10:28,878 一緒に見に行かない? 157 00:10:29,378 --> 00:10:30,463 (九郎)うん 158 00:10:32,298 --> 00:10:34,175 さあ 行きましょう 159 00:10:38,512 --> 00:10:41,265 (少女)どうかしたの? (九郎)ううん 160 00:10:41,766 --> 00:10:44,018 何でもないよ 姉さん 161 00:10:44,477 --> 00:10:47,188 (琴子)桜川家の宿願は かなった 162 00:10:47,313 --> 00:10:51,734 ただし その能力は 願ったものとは 少し違ったが… 163 00:10:54,236 --> 00:10:56,030 彼は 人でありながら— 164 00:10:56,197 --> 00:10:58,783 人あらざるものになったのだ 165 00:11:00,242 --> 00:11:00,951 アッ… 166 00:11:01,077 --> 00:11:01,827 ウッ! 167 00:11:03,913 --> 00:11:04,955 ウッ… 168 00:11:05,956 --> 00:11:08,125 アッ! クッ… 169 00:11:08,834 --> 00:11:09,669 ンッ… 170 00:11:11,921 --> 00:11:13,005 ンンッ! 171 00:11:14,882 --> 00:11:17,176 (九郎の力み声) 172 00:11:22,807 --> 00:11:23,849 (骨の折れる音) 173 00:11:36,404 --> 00:11:37,405 (琴子)九郎先輩 174 00:11:37,863 --> 00:11:41,409 ああいう 意外に きっぱりした所も魅力ですよね 175 00:11:41,534 --> 00:11:44,870 (紗季)亡霊の首を 折れる彼氏なんか要らないわよ… 176 00:11:45,329 --> 00:11:47,540 さて… 問題は これからだ 177 00:11:47,998 --> 00:11:51,460 果たして これで鋼人七瀬は終わるのか? 178 00:11:51,961 --> 00:11:53,129 ハッ… 179 00:11:53,921 --> 00:11:54,755 あっ… 180 00:12:02,805 --> 00:12:04,640 (琴子)やはりムリか (紗季)ハッ… 181 00:12:04,974 --> 00:12:08,561 これで 今後の対策は ひとつに絞られる… 182 00:12:14,483 --> 00:12:15,317 (杖(つえ)を突く音) 183 00:12:15,484 --> 00:12:18,529 (九郎)ハッ… (琴子)九郎先輩 それくらいで 184 00:12:18,654 --> 00:12:19,572 アッ… 185 00:12:19,989 --> 00:12:23,909 (琴子)鋼人七瀬を倒すには 別の方法が必要です 186 00:12:43,387 --> 00:12:44,263 ンッ… 187 00:12:46,849 --> 00:12:49,643 紗季さん どうして こんな所にいるんです? 188 00:12:49,768 --> 00:12:50,895 (琴子)ンン… 189 00:12:51,020 --> 00:12:53,564 この市の警察に勤めているの 190 00:12:53,689 --> 00:12:55,524 九郎君こそ どうして ここに? 191 00:12:55,983 --> 00:12:57,526 (九郎)それは… 192 00:12:57,693 --> 00:12:58,527 (琴子)フン! 193 00:12:58,694 --> 00:12:59,528 うん? 194 00:12:59,653 --> 00:13:02,406 それは いとしい彼女に呼び出されれば— 195 00:13:02,573 --> 00:13:04,158 怪人と戦うことになっても— 196 00:13:04,325 --> 00:13:05,951 駆けつけますよね? 197 00:13:06,076 --> 00:13:07,661 ンンッ… 198 00:13:08,287 --> 00:13:09,955 そんなところです… 199 00:13:10,080 --> 00:13:12,583 紗季さんが一緒とは 聞いてませんでしたが 200 00:13:12,708 --> 00:13:15,294 私も 九郎君が来るとは聞いてなかった 201 00:13:15,461 --> 00:13:18,297 そりゃ 2人を 会わせるつもりもなかったので 202 00:13:19,340 --> 00:13:22,009 本当に この子が今の彼女なのね? 203 00:13:22,176 --> 00:13:25,387 ええ… 本当に今の彼女なんです 204 00:13:25,513 --> 00:13:28,265 九郎先輩! なぜ心底 イヤそうに言う!? 205 00:13:28,390 --> 00:13:30,142 心底 イヤだからだよ 206 00:13:30,309 --> 00:13:32,353 (琴子)ウッ… (九郎)すみません 紗季さん 207 00:13:32,478 --> 00:13:34,813 岩永(いわなが)が迷惑をかけたと思います 208 00:13:34,980 --> 00:13:36,732 ンッ… 九郎先輩! 209 00:13:36,857 --> 00:13:39,443 むしろ 私は 紗季さんを助けたくらいです! 210 00:13:39,610 --> 00:13:41,153 こんな仕打ちをされる覚えは… 211 00:13:41,278 --> 00:13:42,905 いいから謝れ 212 00:13:43,030 --> 00:13:45,449 お前が 迷惑をかけないわけがないんだ 213 00:13:45,574 --> 00:13:46,534 ンンッ… 214 00:13:47,076 --> 00:13:50,496 いいわよ 迷惑なのは多分 お互いさまだから 215 00:13:50,913 --> 00:13:53,749 今 気にすべきは 鋼人七瀬についてでしょう 216 00:13:55,251 --> 00:13:56,710 改めて… 217 00:13:57,086 --> 00:13:58,629 久しぶり 九郎君 218 00:13:59,755 --> 00:14:03,926 はい ご無沙汰してました 紗季さん 219 00:14:06,178 --> 00:14:07,388 ンン〜ッ… 220 00:14:07,513 --> 00:14:10,057 フン! 場所を変えましょう! 221 00:14:10,224 --> 00:14:11,183 蛾(が)でもないのに— 222 00:14:11,308 --> 00:14:14,812 いつまでも 自販機の明かりの前に 群がっているのは冴(さ)えません! 223 00:14:14,979 --> 00:14:16,188 ンン〜ッ… 224 00:14:16,313 --> 00:14:19,817 やはり この2人を会わせるのではなかった 225 00:14:22,444 --> 00:14:24,822 どうして こんなことになったんだろう… 226 00:14:26,031 --> 00:14:28,534 ファミレスなんかで とても あんな話はできないし— 227 00:14:28,826 --> 00:14:32,121 1人で帰るのが 怖かったというのもあるけど… 228 00:14:33,956 --> 00:14:35,291 (琴子)九郎先輩 229 00:14:35,457 --> 00:14:37,501 どうして 今の彼女がいるそばで— 230 00:14:37,626 --> 00:14:40,379 昔の彼女の 後ろ姿を見ているんですか? 231 00:14:40,504 --> 00:14:42,923 (九郎)気のせいだ (琴子)いいえ 見てました! 232 00:14:43,173 --> 00:14:46,635 “ああ 前より痩せたな ちゃんと食事してるのかな” 233 00:14:46,760 --> 00:14:49,680 “僕のせいで あんな骨っぽくなったのかな” 234 00:14:50,014 --> 00:14:52,558 “おお… でも 腰のラインが きれいだなぁ” 235 00:14:52,683 --> 00:14:54,476 …て考えている目をしてました 236 00:14:54,643 --> 00:14:57,271 よく分かるな そのとおりのことを考えてたよ 237 00:14:57,396 --> 00:14:59,440 (琴子)えっ… (九郎)紗季さんは きれいだ 238 00:14:59,565 --> 00:15:02,067 認めんな! あっさり認めんな! 239 00:15:02,234 --> 00:15:07,072 大体 1週間も恋人を放っておいて その態度は どういう了見です!? 240 00:15:07,197 --> 00:15:09,783 メールくらい 返したら どうなんですか! 241 00:15:09,909 --> 00:15:13,787 お前だったのか 迷惑メールかと思ったよ 242 00:15:14,455 --> 00:15:17,708 (琴子)せめて こっちを見ろ! (紗季)仲がいいのね 243 00:15:18,000 --> 00:15:21,837 もちろんです! いつもは もっとラブラブですけどね 244 00:15:22,963 --> 00:15:24,506 紗季さん ひょっとして— 245 00:15:24,924 --> 00:15:27,718 まだ牛肉と魚が食べられないとか? 246 00:15:27,843 --> 00:15:32,306 最近は食べられるようになってる 痩せたのは仕事のせい 247 00:15:33,515 --> 00:15:34,808 すみません 248 00:15:35,643 --> 00:15:37,561 だから 九郎君のせいじゃない 249 00:15:38,020 --> 00:15:40,189 整理がつかないまま別れたから— 250 00:15:40,314 --> 00:15:42,775 会えば もっと 気持ちが揺れるかと思ったけど 251 00:15:42,900 --> 00:15:45,819 意外に穏やかでいられるのは この子のおかげなのかも… 252 00:15:49,907 --> 00:15:52,326 それは さておき 本題に入りましょう 253 00:15:52,743 --> 00:15:55,454 許容し難いのは変わらずだけど… 254 00:15:55,829 --> 00:15:56,830 ええ そうね 255 00:15:57,206 --> 00:16:00,542 九郎君 さっき 鋼人七瀬と戦っていたのは 256 00:16:00,668 --> 00:16:02,378 岩永さんに指示されて? 257 00:16:02,503 --> 00:16:03,337 え〜っと… 258 00:16:04,713 --> 00:16:05,965 あっ… 259 00:16:06,674 --> 00:16:10,302 真倉坂(まくらざか)市に来たのは 岩永の電話でですけど 260 00:16:10,427 --> 00:16:12,805 鋼人七瀬に遭遇したのは たまたまです 261 00:16:13,305 --> 00:16:17,476 駅に着いたら 鋼人七瀬に 追われた化け猫に すがられて… 262 00:16:17,893 --> 00:16:19,353 (化け猫の鳴き声) 263 00:16:19,478 --> 00:16:24,316 そのたぐいのものからは 僕の 気配だけで避けられてたんですが 264 00:16:24,441 --> 00:16:26,443 岩永に連れ回されているうちに— 265 00:16:26,568 --> 00:16:30,739 “一つ目一本足のおひいさまの 代わりに 頼み事を聞いてくれる” 266 00:16:31,323 --> 00:16:36,036 …などという評判が伝わりだして 助けを求められるようになって 267 00:16:36,412 --> 00:16:39,707 それで 岩永に 連絡する間もなかったので 268 00:16:39,832 --> 00:16:43,585 1人で 鋼人七瀬の 現れた場所へ行きました 269 00:16:44,962 --> 00:16:46,839 そう… 良かったわね 270 00:16:46,964 --> 00:16:50,217 その評判が広まれば 今度は河童(かっぱ)も逃げないんじゃない? 271 00:16:50,342 --> 00:16:52,928 親しく頼られても困りますよ 272 00:16:53,053 --> 00:16:54,221 それにしても— 273 00:16:54,596 --> 00:16:57,307 鋼人七瀬は僕を見ても恐れなかった 274 00:16:57,433 --> 00:17:01,603 そうですね 九郎先輩は 人以外のものの目には— 275 00:17:01,729 --> 00:17:04,231 人間と人魚と くだんが交ざり合った— 276 00:17:04,356 --> 00:17:06,900 それはそれは 醜くて まがまがしい— 277 00:17:07,026 --> 00:17:08,986 ウニャウニャしたものに 映るそうですから 278 00:17:09,653 --> 00:17:12,321 化け物の規格からしても 化け物だそうです 279 00:17:12,448 --> 00:17:14,324 えっ? アア… 280 00:17:14,450 --> 00:17:15,617 じゃ 岩永さん 281 00:17:15,742 --> 00:17:19,913 そんな九郎君に反応しない 鋼人七瀬って 一体 何なの? 282 00:17:20,622 --> 00:17:21,915 怪物ですね 283 00:17:22,082 --> 00:17:23,500 それは分かってる 284 00:17:23,625 --> 00:17:26,587 言いかえましょう あれは退治できるものなの? 285 00:17:26,712 --> 00:17:27,880 (琴子)できます 286 00:17:28,047 --> 00:17:31,341 そのご相談があって 今夜 お呼びしたのです 287 00:17:31,508 --> 00:17:34,344 鋼人七瀬は普通の怪異とは違います 288 00:17:34,720 --> 00:17:38,348 現代に生きる人間の 妄想と願望が作り上げた— 289 00:17:38,766 --> 00:17:40,976 “想像力の怪物”です 290 00:17:41,602 --> 00:17:44,104 ここまで 話すつもりはなかったけれど 291 00:17:44,271 --> 00:17:48,358 こうなれば できるだけ真実を伝え 紗季さんと私たちが— 292 00:17:48,484 --> 00:17:51,111 いかに違う世界にいるかを 理解してもらおう 293 00:17:51,737 --> 00:17:54,907 我々には隔たりがあることを いま一度 知らしめる 294 00:17:55,032 --> 00:17:56,617 それが上策だ 295 00:17:57,451 --> 00:18:03,332 私たちの知る妖怪 化け物 幽霊 もののけ 都市伝説の怪人にも— 296 00:18:03,457 --> 00:18:07,169 少なからず“想像力の怪物”は 入り込んでいます 297 00:18:07,294 --> 00:18:09,379 最初は ささいなことで かまいません 298 00:18:09,922 --> 00:18:11,423 例えば 誰かが… 299 00:18:11,548 --> 00:18:14,593 マスクをした顔色の悪い女性に 声をかけられ— 300 00:18:14,718 --> 00:18:16,470 なんだか怖くて逃げた 301 00:18:16,595 --> 00:18:18,305 (琴子)…という話をします 302 00:18:18,430 --> 00:18:19,932 ふ〜ん …で? 303 00:18:20,057 --> 00:18:23,685 (琴子)しかし それだけでは 話として面白くないので… 304 00:18:23,811 --> 00:18:27,689 …で よく見たら マスクの下の口が裂けていて— 305 00:18:27,815 --> 00:18:29,108 怖くなって逃げたら— 306 00:18:29,233 --> 00:18:31,819 ものすごい勢いで 追いかけられたんです 307 00:18:31,944 --> 00:18:33,654 えっ!? それは怖い 308 00:18:34,071 --> 00:18:36,615 …といったウソを 付け足したとします 309 00:18:36,740 --> 00:18:39,159 やがて 話は 人づてに広まりだします 310 00:18:46,291 --> 00:18:48,502 (話し声) 311 00:18:48,627 --> 00:18:51,171 (琴子)それでも これは お話にとどまります 312 00:18:51,588 --> 00:18:55,175 問題なのは それに 名が与えられることなんです 313 00:18:57,052 --> 00:18:58,762 “口裂け女” 314 00:18:59,429 --> 00:19:05,561 そのお話をひと言で表し 姿と形を おおまかにでも決定する名前 315 00:19:05,727 --> 00:19:09,606 それが 漠然として取り留めのない ウワサ話を集約させ— 316 00:19:09,731 --> 00:19:11,942 ひとつのイメージに 固めてしまうんです 317 00:19:12,067 --> 00:19:13,443 ンッ… 318 00:19:13,777 --> 00:19:16,071 (琴子) 最初は ただの作り話でした 319 00:19:16,238 --> 00:19:18,949 けれど 名前と形を得た虚構は— 320 00:19:19,074 --> 00:19:24,621 何千 何万 何十万という人間の 頭の中に根づくことによって— 321 00:19:24,746 --> 00:19:29,084 少しずつ血肉が与えられ 実体を得てしまうこともあるんです 322 00:19:29,251 --> 00:19:32,254 人の想像力が怪物を生みだすんです 323 00:19:32,546 --> 00:19:34,089 ンッ… そんなことが— 324 00:19:34,214 --> 00:19:36,842 日常に起こってるなんて 信じられると思う? 325 00:19:37,134 --> 00:19:39,178 河童も幽霊も見た人が 今更? 326 00:19:39,303 --> 00:19:40,596 ウッ… 327 00:19:40,721 --> 00:19:44,850 本来は“想像力の怪物”なんて 恐れるものではありません 328 00:19:45,350 --> 00:19:48,353 一時的に はやり 実体化できても かよわく— 329 00:19:48,645 --> 00:19:51,356 かすかで じきに消え去る程度のものです 330 00:19:51,732 --> 00:19:55,777 口裂け女も人面犬も 結局は消えてしまいました 331 00:19:55,903 --> 00:19:57,613 (紗季)だったら 鋼人七瀬は— 332 00:19:58,071 --> 00:20:01,074 その“想像力の怪物”と 違い過ぎるんじゃない? 333 00:20:01,825 --> 00:20:05,245 あれには“鋼人七瀬”という名前が 与えられては いるけど 334 00:20:05,370 --> 00:20:07,581 あんなに力を持っているなんて… 335 00:20:07,873 --> 00:20:09,833 (琴子)ええ それです (紗季)えっ? 336 00:20:10,000 --> 00:20:14,004 なぜ 七瀬かりんが死んで 1年とたたず実体化し— 337 00:20:14,129 --> 00:20:16,548 あれほどの力を持っているのか 338 00:20:16,673 --> 00:20:18,842 それを可能にする方法があります 339 00:20:19,468 --> 00:20:22,471 普通なら 広がるのに 時間のかかるウワサ話を 340 00:20:22,596 --> 00:20:26,350 一気に広めてしまえて 多くの人の目に触れるものとは? 341 00:20:26,934 --> 00:20:30,229 事故のことは メディアに 取り上げられたのは ごく一部で 342 00:20:30,354 --> 00:20:33,315 話題になっているのなんて ネットくらいしか… 343 00:20:33,857 --> 00:20:34,691 ハッ… 344 00:20:34,858 --> 00:20:36,193 フフッ… 345 00:20:36,610 --> 00:20:38,946 はい 正に そのネットです 346 00:20:39,613 --> 00:20:42,824 ネットは 情報を 一瞬で世界の裏側まで伝え— 347 00:20:42,950 --> 00:20:45,702 多くの人間に アクセスさせることができます 348 00:20:45,994 --> 00:20:48,789 そして 取り留めもなく 拡散する話題を— 349 00:20:48,914 --> 00:20:51,208 1か所に集約することも可能です 350 00:20:51,375 --> 00:20:52,918 1か所に… 351 00:20:53,043 --> 00:20:56,213 ああ あの 鋼人七瀬まとめサイトのように? 352 00:20:56,380 --> 00:20:59,800 ご存じですか なら 話は早いです 353 00:20:59,925 --> 00:21:00,926 あれによって— 354 00:21:01,051 --> 00:21:04,972 “鋼人七瀬”の名と設定が 急速に固められ 広まりました 355 00:21:05,097 --> 00:21:05,931 ンッ… 356 00:21:06,306 --> 00:21:09,184 更に そのトップページに 掲げられたイラスト 357 00:21:09,351 --> 00:21:10,143 ハッ… 358 00:21:10,269 --> 00:21:14,189 あれが ウワサだけでは なかなか伝わらない姿形を— 359 00:21:14,356 --> 00:21:16,733 あっという間に固定させた 360 00:21:16,858 --> 00:21:18,902 覚えていますか? あのイラスト 361 00:21:19,236 --> 00:21:20,404 んっ… 362 00:21:20,570 --> 00:21:22,447 (琴子)さっき見た鋼人七瀬と— 363 00:21:22,572 --> 00:21:25,367 細部まで 同じ姿をしていたと思いませんか? 364 00:21:26,076 --> 00:21:28,870 そう言われれば そうね それが? 365 00:21:29,371 --> 00:21:33,375 (琴子)まともな目撃証言もなく ウワサだけで語られる亡霊を— 366 00:21:33,750 --> 00:21:36,628 そっくり同じに イラスト化できると思いますか? 367 00:21:37,087 --> 00:21:38,672 できるわけありません 368 00:21:38,797 --> 00:21:40,132 これは逆なんです 369 00:21:40,674 --> 00:21:41,633 逆? 370 00:21:42,092 --> 00:21:45,137 (琴子)亡霊を基に イラストが描(えが)かれたのではなく— 371 00:21:45,470 --> 00:21:49,891 多くの者が あのイラストを基に 鋼人七瀬をイメージするから— 372 00:21:50,517 --> 00:21:53,270 その姿で実体化しているんです 373 00:21:55,647 --> 00:21:56,523 えっ… 374 00:21:56,690 --> 00:21:58,442 全て逆です 375 00:21:58,567 --> 00:22:01,778 亡霊がいたから まとめサイトが生まれたのではなく 376 00:22:02,279 --> 00:22:06,033 まとめサイトができたから 亡霊が生まれたのです 377 00:22:07,367 --> 00:22:09,036 このサイトこそが— 378 00:22:09,703 --> 00:22:13,040 鋼人七瀬の 正体と言っても かまいません 379 00:22:16,626 --> 00:22:22,632 ♪〜 380 00:23:42,462 --> 00:23:45,549 〜♪ 381 00:23:46,842 --> 00:23:50,720 (琴子)人々の想像力によって 不死身の存在を保つ鋼人七瀬 382 00:23:50,846 --> 00:23:55,350 攻略するには 本物の怪異を 超える物語を構築するしかない 383 00:23:55,517 --> 00:23:57,853 立ち向かうために必要なのは… 384 00:23:58,019 --> 00:24:00,188 次回“合理的な虚構”