1 00:00:01,459 --> 00:00:03,461 ♪~ 2 00:01:03,521 --> 00:01:05,522 ~♪ 3 00:01:10,779 --> 00:01:16,618 ‪(‪琴子(ことこ)‪)この世には‬‬‬ ‪妖怪 あやかし 怪異 魔…‬ 4 00:01:17,452 --> 00:01:19,871 ‪物(もの)‪の‪怪(け)‪ 幽霊‬‬‬‬ 5 00:01:20,789 --> 00:01:24,918 ‪そう呼ばれるものたちが‬ ‪当たり前にいる‬ 6 00:01:27,712 --> 00:01:31,132 ‪理外の理があり‬ ‪無理と道理も両立している‬ 7 00:01:34,719 --> 00:01:36,471 ‪(妖怪)そういえば この前‬ 8 00:01:36,554 --> 00:01:39,641 ‪おひいさまのお知恵の程を‬ ‪この目で見てきたぞ‬ 9 00:01:39,724 --> 00:01:42,227 ‪(化け物)‬ ‪なんと! あのおひいさまか‬ 10 00:01:42,310 --> 00:01:43,770 ‪それは羨ましい‬ 11 00:01:43,853 --> 00:01:47,565 ‪なんでも随分‬ ‪可憐(かれん)‪なお方であるとか… うっ‬‬ 12 00:01:47,649 --> 00:01:48,149 ‪(妖怪)うむ‬ 13 00:01:49,025 --> 00:01:52,737 ‪人間でありながら‬ ‪右目と左足をささげられ‬ 14 00:01:52,821 --> 00:01:54,572 ‪一眼一足(いちがんいっそく)‪となることで‬‬ 15 00:01:54,656 --> 00:01:58,493 ‪我らあやかしの‬ ‪知恵の神になられたお方だ‬ 16 00:01:59,410 --> 00:02:01,830 ‪そのお姿は まさに可憐‬ 17 00:02:01,913 --> 00:02:03,665 ‪御年(おんとし)‪は じき‪二十歳(はたち)‪になられ‬‬‬‬ 18 00:02:03,748 --> 00:02:06,126 ‪あやかしたちの間に起こった‬ ‪もめ事や‬ 19 00:02:06,209 --> 00:02:11,673 ‪人間との関係で生じたトラブルを‬ ‪そのお知恵で解決してくださる‬ 20 00:02:12,257 --> 00:02:14,926 ‪この前も‬ ‪なんともこじれそうな問題を‬ 21 00:02:15,009 --> 00:02:18,346 ‪後々 支障が出ぬよう‬ ‪平定されたぞ‬ 22 00:02:18,429 --> 00:02:20,306 ‪(幽霊)我が耳にしたウワサでは‬ 23 00:02:20,390 --> 00:02:24,185 ‪おひいさまは可憐どころか‬ ‪けだし苛烈な方と聞いたぞ‬ 24 00:02:24,269 --> 00:02:27,313 ‪(妖怪)ああ‬ ‪一方で苛烈でもあられるのよ‬ 25 00:02:27,897 --> 00:02:30,191 ‪おひいさまを‬ ‪欺こうとしたヤツは‬ 26 00:02:30,275 --> 00:02:33,778 ‪瞬時にその心根を見抜かれ‬ ‪痛い目に遭わされる‬ 27 00:02:33,862 --> 00:02:37,490 ‪その容赦ないお手際には‬ ‪感心するしかないぞ‬ 28 00:02:37,574 --> 00:02:39,909 ‪また 我らあやかしの存在が‬ 29 00:02:39,993 --> 00:02:43,246 ‪しかと人間にバレては‬ ‪都合の悪いときもある‬ 30 00:02:43,830 --> 00:02:46,958 ‪その際には 人間に‬ ‪我らなどいもしないと‬ 31 00:02:47,041 --> 00:02:49,419 ‪つじつまの合った‬ ‪ウソの説明をし‬ 32 00:02:49,502 --> 00:02:52,213 ‪きちんと隠してくださったりも‬ ‪するのだ‬ 33 00:02:52,797 --> 00:02:55,800 ‪尋常なお知恵で‬ ‪できることではないぞ‬ 34 00:02:55,884 --> 00:03:00,471 ‪だが そのなさりようを‬ ‪面白く思わず 従わぬ者もいよう‬ 35 00:03:01,723 --> 00:03:03,433 ‪暴力や妖力を振るい‬ 36 00:03:03,516 --> 00:03:06,853 ‪おひいさまを害そうとする者も‬ ‪いるのではないか?‬ 37 00:03:07,604 --> 00:03:10,565 ‪知恵の神であられても‬ ‪可憐な人の身となれば‬ 38 00:03:10,648 --> 00:03:13,109 ‪たやすく‬ ‪殺されかねんではないか‬ 39 00:03:13,193 --> 00:03:16,487 ‪(妖怪)なに‬ ‪おひいさまに味方する者も多い‬ 40 00:03:16,571 --> 00:03:20,742 ‪それに おひいさまのお知恵は‬ ‪そういうときにも力を発揮する‬ 41 00:03:20,825 --> 00:03:23,453 ‪不埒(ふらち)‪なやからが‬‬ ‪何かしようとしても‬ 42 00:03:23,536 --> 00:03:26,623 ‪やはり見抜かれ‬ ‪気付いたときには罠(わな)にかかって‬ 43 00:03:26,706 --> 00:03:29,334 ‪逆にやられるのが落ちよ‬ 44 00:03:29,959 --> 00:03:33,671 ‪だとしても 何かと危ういお立場に‬ ‪変わりはなかろう‬ 45 00:03:33,755 --> 00:03:34,923 ‪(妖怪)心配ない‬ 46 00:03:35,006 --> 00:03:38,343 ‪そのうえ近年‬ ‪おひいさまには恋人が出来てな‬ 47 00:03:38,927 --> 00:03:42,555 ‪この者が一層 強固に‬ ‪おひいさまをお守りするのだ‬ 48 00:03:42,639 --> 00:03:43,973 ‪恋人?‬ 49 00:03:44,057 --> 00:03:46,392 ‪だが そやつも所詮は‬ ‪人間であろう?‬ 50 00:03:46,476 --> 00:03:47,060 ‪(妖怪)ああ‬ 51 00:03:47,143 --> 00:03:49,187 ‪おひいさまや人間には‬ 52 00:03:49,270 --> 00:03:51,689 ‪そいつは‬ ‪ただの人に見えるらしいが‬ 53 00:03:51,773 --> 00:03:55,860 ‪我らには これ以上ないほど‬ ‪禍々(まがまが)‪しく見えてな‬‬ 54 00:03:55,944 --> 00:03:59,572 ‪この前も一緒に来ておったが‬ ‪いや 恐ろしいヤツだった‬ 55 00:03:59,656 --> 00:04:02,492 ‪確か そやつは‬ ‪桜川九郎(さくらがわくろう)‪とかいう名で‬‬ 56 00:04:02,575 --> 00:04:06,454 ‪かつて人魚の肉を食べたゆえに‬ ‪不死身となっているとか‬ 57 00:04:06,537 --> 00:04:09,791 ‪不死身か それは侮れんな‬ 58 00:04:09,874 --> 00:04:12,669 ‪だが それくらいなら‬ ‪化け物にも近いのがいよう‬ 59 00:04:12,752 --> 00:04:14,003 ‪(妖怪)だが そやつは‬ 60 00:04:14,087 --> 00:04:17,048 ‪もう一匹‬ ‪妖怪を食らっておるのだ‬ 61 00:04:17,130 --> 00:04:20,426 ‪そのせいで一層‬ ‪恐るべき力を得ていてな‬ 62 00:04:20,510 --> 00:04:23,346 ‪幸い おひいさまに‬ ‪従っておるからいいが‬ 63 00:04:23,429 --> 00:04:24,639 ‪あれが暴れれば‬ 64 00:04:24,722 --> 00:04:27,892 ‪我らが千の群れをなしても‬ ‪きっと かなわん‬ 65 00:04:27,976 --> 00:04:31,854 ‪ふむ… ウワサ以上に‬ ‪お力のある方なのだな‬ 66 00:04:31,938 --> 00:04:33,439 ‪どうした おぬし‬ 67 00:04:33,523 --> 00:04:36,901 ‪もしや おひいさまに‬ ‪相談したいことでもあるのか?‬ 68 00:04:36,985 --> 00:04:39,779 ‪(幽霊)ああ‬ ‪我が憑(つ)いてる このマンションに‬ 69 00:04:39,862 --> 00:04:43,366 ‪どうも ただならぬ怪物が‬ ‪紛れ込んだらしいのだ‬ 70 00:04:43,866 --> 00:04:48,079 ‪もしやすると いずれ我など‬ ‪くびり殺されるやもしれん‬ 71 00:04:48,579 --> 00:04:49,163 ‪ぐおっ!‬ 72 00:04:49,247 --> 00:04:50,665 ‪(化け物・妖怪)フフ~ン‬ 73 00:04:54,627 --> 00:04:57,714 ‪(琴子)というわけで九郎先輩‬ ‪引っ越しませんか?‬ 74 00:04:58,298 --> 00:05:00,717 ‪(九郎)だから‬ ‪どうして そんな話になる?‬ 75 00:05:00,800 --> 00:05:02,844 ‪(琴子)とあるマンションに‬ ‪憑いている幽霊から‬ 76 00:05:02,927 --> 00:05:05,305 ‪相談を受けたって‬ ‪言ったでしょ?‬ 77 00:05:05,388 --> 00:05:06,848 ‪それで 先輩‬ 78 00:05:06,931 --> 00:05:09,267 ‪ここは最近 住みづらくなったから‬ ‪引っ越したいと‬ 79 00:05:09,350 --> 00:05:12,020 ‪前に話していたじゃあないですか‬ 80 00:05:12,103 --> 00:05:15,023 ‪そうだな 近所の人に僕が‬ 81 00:05:15,106 --> 00:05:17,859 ‪“小さい子を連れ込んで‬ ‪いかがわしいことをしている”‬ 82 00:05:17,942 --> 00:05:20,528 ‪といったウワサを‬ ‪されるようになってな‬ 83 00:05:20,611 --> 00:05:21,487 ‪(琴子)うわっ‬ 84 00:05:21,571 --> 00:05:23,823 ‪一体 何をすれば‬ ‪そんなひどいウワサが…‬ 85 00:05:23,906 --> 00:05:25,116 ‪お前だ お前‬ 86 00:05:25,742 --> 00:05:29,787 ‪お前が度々 家(うち)に来て騒ぐから‬ ‪そんなウワサが立っているんだ‬ 87 00:05:29,871 --> 00:05:30,747 ‪(琴子)なら ちゃんと‬ 88 00:05:30,830 --> 00:05:34,584 ‪それは同じ大学の恋人だと‬ ‪説明すればいいでしょう‬ 89 00:05:34,667 --> 00:05:36,252 ‪そんなウソはつきたくない‬ 90 00:05:36,336 --> 00:05:38,546 ‪ウソではなく真実でしょうが‬ 91 00:05:38,629 --> 00:05:40,631 ‪いかがわしいことも‬ ‪してるでしょうが!‬ 92 00:05:40,715 --> 00:05:44,093 ‪むしろ もっと積極的にしろと‬ ‪私は言いたい!‬ 93 00:05:44,177 --> 00:05:47,972 ‪だから そういう発言が‬ ‪ウワサの原因でだな…‬ 94 00:05:48,056 --> 00:05:48,848 ‪ハア~‬ 95 00:05:50,058 --> 00:05:53,436 ‪で? 具体的に‬ ‪どういう相談を受けたんだ?‬ 96 00:05:53,519 --> 00:05:56,689 ‪相談してきた幽霊は‬ ‪その土地の地縛霊です‬ 97 00:05:57,273 --> 00:06:00,401 ‪主に5階の3号室に‬ ‪憑いているらしいのですが‬ 98 00:06:00,485 --> 00:06:05,239 ‪そこの住人が映画好きで‬ ‪それを一緒に見るのが楽しみだと‬ 99 00:06:05,323 --> 00:06:08,618 ‪(九郎)‬ ‪まあ 幽霊にも娯楽は必要だろう‬ 100 00:06:08,701 --> 00:06:11,287 ‪(琴子)それで‬ ‪夜中に その部屋にいると…‬ 101 00:06:11,370 --> 00:06:18,294 ‪(物音)‬ 102 00:06:19,629 --> 00:06:20,797 ‪(琴子)真上の部屋から‬ 103 00:06:20,880 --> 00:06:23,841 ‪ゆっくりと‬ ‪床を丸太で打つみたいな‬ 104 00:06:23,925 --> 00:06:28,179 ‪ドン ドン… という音が‬ ‪聞こえてくるようになったと‬ 105 00:06:31,516 --> 00:06:34,936 ‪(幽霊)その音は‬ ‪うるさいとまでは いかぬのですが‬ 106 00:06:35,019 --> 00:06:37,647 ‪妙に重量感と落ち着きがあり‬ 107 00:06:37,730 --> 00:06:40,733 ‪真上の部屋の住人が‬ ‪嫌がらせや文句があって‬ 108 00:06:40,817 --> 00:06:42,860 ‪鳴らしている‬ ‪といったふうでもありません‬ 109 00:06:42,944 --> 00:06:43,694 ‪(物音)‬ 110 00:06:44,904 --> 00:06:46,823 ‪(幽霊)‬ ‪音が鳴りだしてからやむまでは‬ 111 00:06:46,906 --> 00:06:48,491 ‪そう長くもないので‬ 112 00:06:48,574 --> 00:06:51,327 ‪部屋のあるじは‬ ‪おうように構えていたのですが‬ 113 00:06:51,828 --> 00:06:56,541 ‪我などは早々に その音に‬ ‪総身が冷えるようになりまして‬ 114 00:06:56,624 --> 00:06:58,668 ‪嫌な予感はしていたのです‬ 115 00:06:59,585 --> 00:07:02,922 ‪部屋のあるじも音のする日が‬ ‪さすがに多く感じられたので‬ 116 00:07:03,005 --> 00:07:04,465 ‪気味悪くもあり‬ 117 00:07:04,549 --> 00:07:07,301 ‪管理人に注意してくれるよう‬ ‪頼みました‬ 118 00:07:07,385 --> 00:07:08,678 ‪すると管理人は‬ 119 00:07:09,262 --> 00:07:11,722 ‪その真上の部屋は‬ ‪もう2か月以上‬ 120 00:07:11,806 --> 00:07:14,434 ‪誰も住んでいないと言って…‬ 121 00:07:14,517 --> 00:07:16,185 ‪ひゃあっ 怖い!‬ 122 00:07:16,269 --> 00:07:17,687 ‪(妖怪)早合点するな‬ 123 00:07:17,770 --> 00:07:19,981 ‪建築材が寒暖差で‬ ‪ひずんではじけ‬ 124 00:07:20,064 --> 00:07:23,151 ‪そんな音を出したにすぎん‬ ‪かもしれんだろう‬ 125 00:07:23,234 --> 00:07:25,611 ‪よくある話ではないか‬ 126 00:07:25,695 --> 00:07:28,030 ‪それなら“ピシッ”とか‬ ‪軽い音だろう‬ 127 00:07:28,114 --> 00:07:30,116 ‪重い音が ゆっくりとは続かんぞ‬ 128 00:07:30,199 --> 00:07:31,659 ‪(幽霊)それだけではない‬ 129 00:07:32,243 --> 00:07:33,411 ‪管理人が気になって‬ 130 00:07:33,494 --> 00:07:35,913 ‪あとで真上の部屋に‬ ‪入ったそうなのだが‬ 131 00:07:35,997 --> 00:07:40,042 ‪その がらんとして‬ ‪家具もカーテンもない部屋の床に‬ 132 00:07:40,543 --> 00:07:41,377 ‪(管理人)あっ‬ 133 00:07:42,003 --> 00:07:45,548 ‪(幽霊)以前 見たときは‬ ‪なかったはずの古びた人形が‬ 134 00:07:45,631 --> 00:07:47,800 ‪1つ落ちていたというのだ‬ 135 00:07:47,884 --> 00:07:50,720 ‪更に その人形は‬ ‪なんとも奇怪な形状で‬ 136 00:07:50,803 --> 00:07:55,475 ‪いかにも怪しい気を発し‬ ‪近づくのもためらわれたらしい‬ 137 00:07:55,558 --> 00:07:57,143 ‪(妖怪・化け物)なんと不気味な!‬ 138 00:07:57,226 --> 00:07:58,561 ‪(妖怪)人形は怖いのだ‬ 139 00:07:58,644 --> 00:08:01,856 ‪特に古いのは‬ ‪念や呪いが籠もりやすくて‬ 140 00:08:01,939 --> 00:08:04,525 (幽霊)管理人は結局 人形に触れられず 141 00:08:04,609 --> 00:08:06,736 ドアを閉じて 逃げたといいます 142 00:08:06,819 --> 00:08:09,739 ‪その人形‬ ‪尋常のものではないでしょう‬ 143 00:08:09,822 --> 00:08:13,534 ‪まともな霊や化け物が‬ ‪部屋にいるなら 姿を現し‬ 144 00:08:13,618 --> 00:08:16,162 ‪我らにも‬ ‪挨拶へ来ようというもの‬ 145 00:08:16,662 --> 00:08:21,209 ‪されど まるで脅かすように‬ ‪音だけ立てて姿を見せませぬ‬ 146 00:08:21,876 --> 00:08:24,128 ‪一体 何をたくらんでいるのか‬ 147 00:08:24,212 --> 00:08:27,924 ‪建物にじわじわと‬ ‪呪いを広げているごとしで‬ 148 00:08:28,007 --> 00:08:33,179 ‪一方的に決まったことを行う種類の‬ ‪呪いの品なら 話も通じない‬ 149 00:08:33,261 --> 00:08:34,889 ‪相手としては厄介(やっかい)だ‬ 150 00:08:35,472 --> 00:08:37,475 ‪(幽霊)‬ ‪管理人は オーナーと相談して‬ 151 00:08:37,558 --> 00:08:40,937 ‪調べるとか おはらいをするとか‬ ‪説明しておりますが‬ 152 00:08:41,020 --> 00:08:42,980 ‪いまだ音がする夜があり‬ 153 00:08:43,063 --> 00:08:45,858 ‪我が部屋のあるじも‬ ‪たやすく引っ越すことはできず‬ 154 00:08:45,942 --> 00:08:47,235 ‪不安がっております‬ 155 00:08:47,735 --> 00:08:51,072 ‪我は地縛霊ゆえ‬ ‪この土地から離れられず‬ 156 00:08:51,155 --> 00:08:53,616 ‪怖くて上の階に行くことも‬ ‪できません‬ 157 00:08:55,201 --> 00:08:56,619 ‪どうか おひいさま‬ 158 00:08:56,702 --> 00:08:59,997 ‪一体 何が上におりますや‬ ‪明らかにして‬ 159 00:09:00,081 --> 00:09:02,833 ‪穏便にまとめて‬ ‪いただけないでしょうか‬ 160 00:09:03,709 --> 00:09:07,088 ‪ふむ 問題は その人形か‬ 161 00:09:07,171 --> 00:09:09,840 ‪なら 前の住人なども‬ ‪調べないといけないな‬ 162 00:09:12,218 --> 00:09:13,094 ‪というわけで‬ 163 00:09:13,886 --> 00:09:16,138 ‪そのアパートの詳細を‬ ‪調査がてら‬ 164 00:09:16,222 --> 00:09:18,599 ‪そこへの引っ越しも‬ ‪決めてしまいましょう‬ 165 00:09:18,683 --> 00:09:22,687 ‪大学からも遠くありませんし‬ ‪九郎先輩には ちょうどいいかと‬ 166 00:09:22,770 --> 00:09:25,064 ‪幽霊や化け物が‬ ‪謎の音におびえるって‬ 167 00:09:25,147 --> 00:09:26,732 ‪おかしくないか?‬ 168 00:09:26,816 --> 00:09:30,736 ‪そういうのは怪奇現象として‬ ‪人間が怖がるものだろう‬ 169 00:09:30,820 --> 00:09:32,405 ‪化け物同士でも‬ 170 00:09:32,488 --> 00:09:35,283 ‪会話のできない‬ ‪何をしてくるか分からない相手は‬ 171 00:09:35,366 --> 00:09:36,492 ‪怖くなりますよ‬ 172 00:09:36,576 --> 00:09:39,996 ‪ほら 人間でも‬ ‪騒音によるご近所トラブルが‬ 173 00:09:40,079 --> 00:09:42,331 ‪殺人に発展したりとか…‬ 174 00:09:42,415 --> 00:09:46,794 ‪ご近所トラブルって‬ ‪いや そうなんだろうが…‬ 175 00:09:46,877 --> 00:09:49,213 ‪では 調査に行きましょうか‬ 176 00:09:51,299 --> 00:09:54,260 ‪調査をした結果‬ ‪このマンションの音に‬ 177 00:09:54,343 --> 00:09:56,470 ‪怪異は関わっていないのが‬ ‪分かった‬ 178 00:09:56,554 --> 00:09:57,471 ‪(一同)は?‬ 179 00:09:57,555 --> 00:10:01,267 ‪管理人が飼っていたペットが‬ ‪マンション内に逃げ出し‬ 180 00:10:01,350 --> 00:10:04,186 ‪その空き部屋に‬ ‪しばらく潜んでいたというだけだ‬ 181 00:10:04,770 --> 00:10:06,939 ‪このマンションには‬ ‪施工不良があって‬ 182 00:10:07,023 --> 00:10:08,941 ‪うまく潜り込める隙間があった‬ 183 00:10:09,525 --> 00:10:13,029 ‪そのペットが時折 立てる物音が‬ ‪下の部屋に響き‬ 184 00:10:13,112 --> 00:10:14,447 ‪不審がられたにすぎない‬ 185 00:10:14,530 --> 00:10:16,282 ‪ならば おひいさま‬ 186 00:10:16,365 --> 00:10:18,576 ‪部屋にあった‬ ‪奇怪な人形はいかに?‬ 187 00:10:18,659 --> 00:10:20,453 ‪(琴子)‬ ‪それは 管理人のでっちあげで‬ 188 00:10:20,536 --> 00:10:22,663 ‪実際は存在しない‬ 189 00:10:22,747 --> 00:10:25,666 ‪人形があったとか‬ ‪おはらいを考えているとか‬ 190 00:10:25,750 --> 00:10:28,711 ‪全て管理人の話で‬ ‪ほかに誰も見ていない‬ 191 00:10:28,794 --> 00:10:30,963 ‪いくらでも捏造(ねつぞう)できる‬ 192 00:10:31,547 --> 00:10:34,008 ‪管理人は怪しい音の訴えを聞き‬ 193 00:10:34,091 --> 00:10:36,677 ‪逃げたペットが‬ ‪その部屋にいると気付いて‬ 194 00:10:36,761 --> 00:10:38,679 ‪慌てて そこへ行って捕まえた‬ 195 00:10:39,180 --> 00:10:40,806 ‪それで音は収まったが‬ 196 00:10:40,890 --> 00:10:44,685 ‪空き部屋に何かがいて‬ ‪音を立てていた事実は消せない‬ 197 00:10:45,436 --> 00:10:49,398 ‪だから 管理人は‬ ‪その音が怪異によるものと思わせ‬ 198 00:10:49,482 --> 00:10:51,942 ‪ペットの存在と逃亡を‬ ‪隠そうとした‬ 199 00:10:52,526 --> 00:10:54,695 ‪ちなみに このマンションは‬ ‪ペット禁止だ‬ 200 00:10:55,279 --> 00:10:57,490 ‪管理人の立場で‬ ‪飼っているのがバレるのは‬ 201 00:10:57,573 --> 00:10:58,866 ‪なんともマズい‬ 202 00:10:58,949 --> 00:11:00,910 ‪逃がしていたなら なおさらだ‬ 203 00:11:00,993 --> 00:11:03,454 ‪どうしても‬ ‪ごまかさなければならなかった‬ 204 00:11:03,537 --> 00:11:06,123 ‪最初に そこが空き部屋ではなく‬ 205 00:11:06,207 --> 00:11:08,000 ‪住人がいて‬ ‪その音を鳴らしていたと‬ 206 00:11:08,084 --> 00:11:09,335 ‪ウソを言っておけば‬ 207 00:11:09,418 --> 00:11:12,296 ‪もっと簡単に‬ ‪ごまかせたのではありませんか?‬ 208 00:11:12,380 --> 00:11:15,132 ‪そこが空き部屋なのは‬ ‪少し調べれば分かる‬ 209 00:11:15,633 --> 00:11:16,884 ‪下手にウソをつけば‬ 210 00:11:16,967 --> 00:11:19,512 ‪バレたときに‬ ‪なぜ そんなウソをと疑われ‬ 211 00:11:19,595 --> 00:11:20,846 ‪一層マズくなる‬ 212 00:11:20,930 --> 00:11:22,473 ‪だから 管理人は‬ 213 00:11:22,556 --> 00:11:25,601 ‪そこは空き部屋と‬ ‪正直に答えるしかなかった‬ 214 00:11:25,684 --> 00:11:29,146 ‪にしても 怪異のせいにすれば‬ ‪このアパートから‬ 215 00:11:29,230 --> 00:11:31,816 ‪人が出ていってしまいかねない‬ ‪のではありませぬか?‬ 216 00:11:31,899 --> 00:11:34,360 ‪人形は 無事‬ ‪おはらいできたと言い‬ 217 00:11:34,443 --> 00:11:37,446 ‪その後 音がしなくなれば‬ ‪問題解決となる‬ 218 00:11:38,030 --> 00:11:40,574 ‪部屋ではなく人形に‬ ‪問題があったことになるので‬ 219 00:11:41,158 --> 00:11:44,078 ‪マンション全体のイメージまでは‬ ‪損なわれないで済む‬ 220 00:11:44,161 --> 00:11:47,206 ‪されど おとといも‬ ‪あの重い音はしました‬ 221 00:11:47,289 --> 00:11:48,666 ‪とうにペットを捕まえたなら‬ 222 00:11:48,749 --> 00:11:51,168 ‪既に聞こえなくなって‬ ‪おりましょう‬ 223 00:11:51,669 --> 00:11:54,714 ‪管理人が部屋を見に行って‬ ‪すぐ音が消えれば‬ 224 00:11:54,797 --> 00:11:57,091 ‪管理人が何かしたのは‬ ‪明白になる‬ 225 00:11:57,591 --> 00:12:00,344 ‪怪異のせいという印象も薄まる‬ 226 00:12:00,428 --> 00:12:04,014 ‪そこにいた何かを捕まえたと‬ ‪連想されやすくもなるだろう‬ 227 00:12:04,098 --> 00:12:07,309 ‪なら 原因を怪異によると‬ ‪見せかけるためにも‬ 228 00:12:07,393 --> 00:12:09,520 ‪しばらく音を‬ ‪聞かせたほうがいい‬ 229 00:12:09,603 --> 00:12:12,022 ‪だから管理人は ペット回収後も‬ 230 00:12:12,106 --> 00:12:14,567 ‪夜な夜な‬ ‪その空き部屋に忍び込み‬ 231 00:12:14,650 --> 00:12:17,987 ‪似た音を階下に聞かせるために‬ ‪床をたたいていた‬ 232 00:12:18,070 --> 00:12:21,198 ‪そこまでして‬ ‪ペットを隠したいものですか?‬ 233 00:12:21,282 --> 00:12:23,576 ‪管理人として‬ ‪体裁は悪いでしょうが‬ 234 00:12:23,659 --> 00:12:26,745 ‪そうも悪事を重ねるのも‬ ‪割に合わぬのでは?‬ 235 00:12:27,246 --> 00:12:29,206 ‪ペットといっても犬猫ではない‬ 236 00:12:30,499 --> 00:12:32,334 ‪大型の‪爬虫類(はちゅうるい)‪だ‬‬‬ 237 00:12:32,418 --> 00:12:36,589 ‪国内で個人が飼育していると‬ ‪問題になりかねない種類の‬ 238 00:12:37,506 --> 00:12:40,176 ‪そのうえマンションの‬ ‪施工不良まで絡んでいる‬ 239 00:12:40,759 --> 00:12:42,511 ‪怪奇現象が起こっているより‬ 240 00:12:42,595 --> 00:12:44,930 ‪マンションに‬ ‪建設上の問題があるほうが‬ 241 00:12:45,014 --> 00:12:47,767 ‪住人から‬ ‪責任を問われる恐れが高い‬ 242 00:12:48,267 --> 00:12:50,269 ‪経営にも直接影響がある‬ 243 00:12:50,769 --> 00:12:54,815 ‪管理人としては なんとしても‬ ‪真相を隠さねばならなかった‬ 244 00:12:55,316 --> 00:12:59,653 ‪は… 爬虫類ですか‬ ‪それは別の意味でぞっとしますな‬ 245 00:12:59,737 --> 00:13:01,405 ‪生きているときから苦手で…‬ 246 00:13:01,489 --> 00:13:03,073 ‪(妖怪)なんともはや‬ 247 00:13:03,157 --> 00:13:06,327 ‪これぞ“幽霊の正体見たり‬ ‪枯れ尾花”か!‬ 248 00:13:06,410 --> 00:13:07,870 ‪すっかり だまされた‬ 249 00:13:07,953 --> 00:13:10,623 ‪その管理人 少々 面白くないぞ‬ 250 00:13:10,706 --> 00:13:13,501 ‪我もそんな音に‬ ‪肝を冷やしていたとは‬ 251 00:13:13,584 --> 00:13:15,794 ‪幽霊として未熟であるな‬ 252 00:13:15,878 --> 00:13:19,882 ‪既に管理人を問い詰め‬ ‪事の次第は自白させた‬ 253 00:13:19,965 --> 00:13:21,300 ‪音は これでしなくなる‬ 254 00:13:21,926 --> 00:13:25,471 ‪私はこの件を人の社会で‬ ‪表沙汰にする気はない‬ 255 00:13:25,554 --> 00:13:28,474 ‪表沙汰にすれば‬ ‪ここは騒がしくなり‬ 256 00:13:28,557 --> 00:13:30,309 ‪お前たちも過ごしにくくなろう‬ 257 00:13:30,893 --> 00:13:33,437 ‪管理人には 全てを‬ ‪なかったことにする代わり‬ 258 00:13:33,521 --> 00:13:37,566 ‪格安でその部屋を 九郎先輩が‬ ‪借りられるようにさせた‬ 259 00:13:37,650 --> 00:13:39,777 ‪(妖怪)‬ ‪おお そのこざかしい管理人に‬ 260 00:13:39,860 --> 00:13:42,321 ‪ちゃんと罰を‬ ‪お与えになったのですな‬ 261 00:13:42,404 --> 00:13:43,906 ‪お見事です おひいさま!‬ 262 00:13:43,989 --> 00:13:45,199 ‪さすが苛烈‬ 263 00:13:45,282 --> 00:13:47,993 ‪いや ただの恐喝だからな‬ 264 00:13:48,077 --> 00:13:50,704 ‪人間の基準で考えては‬ ‪いけません‬ 265 00:13:51,205 --> 00:13:51,705 ‪では‬ 266 00:13:52,540 --> 00:13:54,458 ‪一件落着で!‬ 267 00:14:05,553 --> 00:14:08,430 ‪(一同)おひいさま‬ ‪ありがとうございました!‬ 268 00:14:12,393 --> 00:14:15,938 ‪(九郎)幽霊たちに‬ ‪真実を隠す必要があったのか?‬ 269 00:14:16,021 --> 00:14:17,690 ‪あの説明は ほとんどウソだろう‬ 270 00:14:17,773 --> 00:14:20,484 ‪奇怪な人形は本当にあった‬ 271 00:14:20,568 --> 00:14:23,320 ‪それが‬ ‪上の部屋の音の原因だった‬ 272 00:14:23,404 --> 00:14:25,155 ‪ひとつ間違えば その人形に‬ 273 00:14:25,239 --> 00:14:27,449 ‪くびり殺されていた‬ ‪かもしれないなんて‬ 274 00:14:27,533 --> 00:14:30,995 ‪あの者たちを 殊更‬ ‪おびえさせる必要もないでしょう‬ 275 00:14:31,495 --> 00:14:33,163 ‪管理人もオーナーも‬ 276 00:14:33,247 --> 00:14:35,541 ‪人形をこちらで引き取る‬ ‪ということで‬ 277 00:14:35,624 --> 00:14:37,293 ‪随分 感謝されました‬ 278 00:14:37,376 --> 00:14:38,711 ‪処理したいけど触れられず‬ 279 00:14:39,295 --> 00:14:42,214 ‪おはらいを頼んでも‬ ‪断られたり逃げられたり‬ 280 00:14:42,298 --> 00:14:43,132 ‪放っておけば‬ 281 00:14:43,215 --> 00:14:46,594 ‪マンション全体の評判にも関わる‬ ‪と言ってましたから‬ 282 00:14:46,677 --> 00:14:49,513 ‪入居の際の敷金礼金を‬ ‪ゼロにして‬ 283 00:14:49,597 --> 00:14:52,308 ‪家賃も割り引くくらい‬ ‪安いもので‬ 284 00:14:52,391 --> 00:14:53,309 ‪(九郎)ハア…‬ 285 00:14:53,392 --> 00:14:57,438 ‪あとは私たちで‬ ‪その人形の始末をつけるだけです‬ 286 00:14:57,521 --> 00:14:58,480 ‪ふあ…‬ 287 00:14:59,940 --> 00:15:02,276 ‪その人形 一体なんなんだ?‬ 288 00:15:02,359 --> 00:15:04,737 ‪あのピノッキオとは‬ ‪また違う感じだが‬ 289 00:15:05,321 --> 00:15:06,739 ‪あれは呪詛(じゅそ)人形‬ 290 00:15:06,822 --> 00:15:09,783 ‪こちらは‬ ‪何百年も前に作られた呪物‬ 291 00:15:09,867 --> 00:15:12,786 ‪それが置かれた場所に近づく‬ ‪悪魔や化け物を‬ 292 00:15:12,870 --> 00:15:15,372 ‪はらうために作られた‬ ‪土人形ですね‬ 293 00:15:15,456 --> 00:15:17,374 ‪強力な魔よけみたいなものです‬ 294 00:15:18,167 --> 00:15:21,295 ‪以前は どこかの由緒ある‬ ‪建物か土地に置かれて‬ 295 00:15:21,378 --> 00:15:23,422 ‪力を発揮していたのでしょうが‬ 296 00:15:23,505 --> 00:15:25,966 ‪時代の流れによって‬ ‪そこが失われ‬ 297 00:15:26,050 --> 00:15:27,676 ‪人形も機能を止めて‬ 298 00:15:27,760 --> 00:15:30,387 ‪どこかに打ち捨てられて‬ ‪しまったのでしょう‬ 299 00:15:30,471 --> 00:15:33,599 ‪それを あの部屋にいた住人が‬ ‪拾いでもして‬ 300 00:15:33,682 --> 00:15:34,892 ‪持ち込んでいたのだけれど‬ 301 00:15:35,601 --> 00:15:38,312 ‪引っ越しのときに‬ ‪部屋のどこか見えにくい所に‬ 302 00:15:38,395 --> 00:15:40,147 ‪放置していったと思われます‬ 303 00:15:40,230 --> 00:15:43,776 ‪部屋に住人がいたときは‬ ‪何も起こらなかったのか?‬ 304 00:15:43,859 --> 00:15:47,404 ‪呪物とはいえ 機能を止めていれば‬ ‪ただの人形です‬ 305 00:15:47,488 --> 00:15:50,074 ‪それを目覚めさせる‬ ‪呪い的な行為を‬ 306 00:15:50,157 --> 00:15:53,202 ‪偶然 部屋を退去するときに‬ ‪したのでしょう‬ 307 00:15:53,702 --> 00:15:57,247 ‪ああいうのは大抵 血や唾を‬ ‪決まった場所に付けたりすると‬ 308 00:15:57,331 --> 00:15:58,791 ‪起動するものなんです‬ 309 00:15:58,874 --> 00:16:01,669 ‪何かの拍子で‬ ‪付着しそうなものではあるな‬ 310 00:16:01,752 --> 00:16:03,128 ‪(琴子)そして以後‬ 311 00:16:03,212 --> 00:16:07,341 ‪夜な夜なあの人形に込められた‬ ‪念体が形を成して現れ‬ 312 00:16:07,424 --> 00:16:09,051 ‪住人のいない あの部屋を‬ 313 00:16:09,134 --> 00:16:10,928 ‪あやかしたちから‬ ‪守っていたんです‬ 314 00:16:11,011 --> 00:16:12,805 ‪なぜ 夜中限定なんだ?‬ 315 00:16:12,888 --> 00:16:16,517 ‪霊や化け物は‬ ‪主に夜に活動するものです‬ 316 00:16:16,600 --> 00:16:19,061 ‪人形も その間しか‬ ‪機能しないのでしょう‬ 317 00:16:19,144 --> 00:16:22,439 ‪そして それがある所を‬ ‪守るものですから‬ 318 00:16:22,523 --> 00:16:24,191 ‪あの部屋から外へも出ません‬ 319 00:16:24,858 --> 00:16:26,985 ‪もし‬ ‪マンションに憑いている幽霊が‬ 320 00:16:27,069 --> 00:16:29,363 ‪あの部屋の様子を‬ ‪見に行っていれば‬ 321 00:16:29,446 --> 00:16:31,699 ‪確実に退治されていましたね‬ 322 00:16:32,282 --> 00:16:34,451 ‪力に目覚めた人形自体も‬ 323 00:16:34,535 --> 00:16:36,203 ‪私みたいな者でないと‬ 324 00:16:36,286 --> 00:16:37,955 ‪容易には動かせないでしょうし‬ 325 00:16:38,706 --> 00:16:42,710 ‪昼間のうちに あの林の中に‬ ‪運んでおいて正解でした‬ 326 00:16:42,793 --> 00:16:46,505 ‪周囲のあやかしたちにも‬ ‪近づかないよう指示してあります‬ 327 00:16:53,387 --> 00:16:56,849 ‪霊や化け物を‬ ‪無差別に殺しかねないあの人形は‬ 328 00:16:56,932 --> 00:16:59,435 ‪今の時代 さすがに剣呑(けんのん)です‬ 329 00:16:59,518 --> 00:17:02,104 ‪私の立場としては‬ ‪壊すしかありません‬ 330 00:17:02,688 --> 00:17:05,190 ‪けれど 人形を直接 壊せば‬ 331 00:17:05,273 --> 00:17:07,984 ‪込められた呪いの念を‬ ‪不用意に解放し‬ 332 00:17:08,068 --> 00:17:10,069 ‪かえって始末が難しくなります‬ 333 00:17:10,570 --> 00:17:11,446 ‪だから 夜‬ 334 00:17:11,530 --> 00:17:14,907 ‪自発的に現れた その念を‬ ‪破壊しないといけません‬ 335 00:17:25,002 --> 00:17:27,546 ‪(九郎)‬ ‪あれがいわば 人形の正体か‬ 336 00:17:27,628 --> 00:17:28,714 ‪そうですね‬ 337 00:17:28,797 --> 00:17:30,174 ‪魔を打ち払う念が‬ 338 00:17:30,257 --> 00:17:32,760 ‪人形の姿と同じものとして‬ ‪現れるように‬ 339 00:17:32,843 --> 00:17:34,178 ‪作られているのでしょう‬ 340 00:17:35,054 --> 00:17:38,891 ‪(九郎)ところで あの人形‬ ‪どうして力士がモチーフなんだ?‬ 341 00:17:40,100 --> 00:17:42,770 ‪(琴子)力士は もともと‬ ‪力の強い者の意味で‬ 342 00:17:42,853 --> 00:17:45,272 ‪それをかたどった埴輪が‬ ‪出土してるくらい‬ 343 00:17:45,355 --> 00:17:46,940 ‪古くからの存在です‬ 344 00:17:47,024 --> 00:17:49,318 ‪金剛力士という神もいて‬ 345 00:17:49,401 --> 00:17:51,695 ‪魔をはらう者としては‬ ‪ふさわしいでしょう‬ 346 00:17:52,404 --> 00:17:54,865 ‪また 相撲は‬ ‪神事としても行われ‬ 347 00:17:54,948 --> 00:17:56,617 ‪その際に行う四股(しこ)は‬ 348 00:17:56,700 --> 00:17:59,953 ‪地の中にいる悪霊を鎮める儀式‬ ‪という説もあります‬ 349 00:18:01,205 --> 00:18:03,707 ‪そして あの部屋でした重い音は‬ 350 00:18:03,791 --> 00:18:07,002 ‪あれが時折‬ ‪四股を踏んでいた音だったんです‬ 351 00:18:07,586 --> 00:18:09,379 ‪悪霊を鎮める行為ですから‬ 352 00:18:09,463 --> 00:18:13,092 ‪下の階にいた幽霊も‬ ‪それはぞっとするでしょう‬ 353 00:18:13,592 --> 00:18:16,720 ‪地面ではないので‬ ‪力の伝わり方が弱く‬ 354 00:18:16,804 --> 00:18:19,097 ‪はらわれるまでは‬ ‪いかなかったと思われます‬ 355 00:18:20,849 --> 00:18:24,436 ‪怪しい音の正体が‬ ‪四股だったとは驚きだな‬ 356 00:18:24,520 --> 00:18:26,063 ‪意外な真相ですね‬ 357 00:18:26,146 --> 00:18:28,273 ‪いや 誰かに怒られないか?‬ 358 00:18:28,357 --> 00:18:30,776 ‪(琴子)‬ ‪ちなみに あの部屋の前の住人は‬ 359 00:18:30,859 --> 00:18:33,028 ‪学生相撲の実力者でした‬ 360 00:18:33,112 --> 00:18:37,032 ‪そのため 力士の形をした‬ ‪古い人形を見つけると‬ 361 00:18:37,115 --> 00:18:39,743 ‪験担ぎで‬ ‪つい持って帰ったのでしょう‬ 362 00:18:40,786 --> 00:18:43,622 ‪そのおかげか‬ ‪成績は良かったのですが‬ 363 00:18:43,705 --> 00:18:46,208 ‪少し前に大きなケガをして引退‬ 364 00:18:46,834 --> 00:18:50,295 ‪それと同時に あの人形を‬ ‪持っているのも嫌になり‬ 365 00:18:50,379 --> 00:18:52,506 ‪かといって‬ ‪捨てるのも気が引けて‬ 366 00:18:52,589 --> 00:18:55,342 ‪部屋に放置するのを‬ ‪選んだと思われます‬ 367 00:18:56,844 --> 00:18:58,470 ‪というわけで 九郎先輩‬ 368 00:18:59,054 --> 00:19:01,890 ‪打ち合わせどおり‬ ‪あれと戦ってください‬ 369 00:19:01,974 --> 00:19:03,225 ‪それで解決です!‬ 370 00:19:03,308 --> 00:19:06,395 ‪いや… ものすごく強そうだぞ‬ 371 00:19:06,478 --> 00:19:09,690 ‪それに力士に腕が4本あって‬ ‪角まで生えてるって‬ 372 00:19:09,773 --> 00:19:11,024 ‪どういう訳だ?‬ 373 00:19:11,108 --> 00:19:13,443 ‪人形を作った人の趣味でしょう‬ 374 00:19:13,527 --> 00:19:15,529 ‪ただの力士だと物足りないので‬ 375 00:19:15,612 --> 00:19:18,991 ‪更に強そうな‬ ‪カブトムシの形を取り入れたとか‬ 376 00:19:19,491 --> 00:19:22,411 ‪カブトムシって…‬ ‪逃げていいか?‬ 377 00:19:22,995 --> 00:19:26,248 ‪あれは化け物や怪異を‬ ‪自動的に排除するものですよ‬ 378 00:19:26,832 --> 00:19:30,711 ‪怪異以上の怪異とも恐れられる‬ ‪九郎先輩の接近に気付けば‬ 379 00:19:30,794 --> 00:19:32,087 ‪すぐに襲ってきます‬ 380 00:19:32,588 --> 00:19:34,673 ‪あっ こちらに気付きましたね‬ 381 00:19:34,756 --> 00:19:35,257 ‪えっ‬ 382 00:19:38,093 --> 00:19:41,722 ‪あと 私は神なので‬ ‪あれには襲われません‬ 383 00:19:41,805 --> 00:19:43,682 ‪お気遣いなく戦ってください‬ 384 00:19:44,182 --> 00:19:45,434 ‪(力士のあやかし)ふん!‬ 385 00:19:51,690 --> 00:19:52,191 ‪ふっ!‬ 386 00:19:52,774 --> 00:19:54,192 ‪ふん!‬ 387 00:19:54,776 --> 00:19:55,485 ‪(骨が砕ける音)‬ ‪(九郎)うあっ‬ 388 00:20:02,159 --> 00:20:03,785 ‪(化け物)そういえば あの九郎殿‬ 389 00:20:03,869 --> 00:20:07,706 ‪もう一匹 妖怪を食べて‬ ‪一層 恐るべき力を得たそうだが‬ 390 00:20:07,789 --> 00:20:09,499 ‪どんな力なのだ?‬ 391 00:20:09,583 --> 00:20:13,378 ‪(妖怪)うむ あの九郎殿は‬ ‪“くだん”を食べているのだ‬ 392 00:20:13,462 --> 00:20:17,591 ‪くだんとは あの未来を予言して‬ ‪死ぬという化け物か‬ 393 00:20:17,674 --> 00:20:21,303 ‪もしや その力を得て‬ ‪九郎殿は未来を見られるのか?‬ 394 00:20:21,386 --> 00:20:23,138 ‪(妖怪)未来を見られるどころか‬ 395 00:20:23,221 --> 00:20:26,141 ‪自分の望む未来を‬ ‪決定できるというぞ‬ 396 00:20:26,224 --> 00:20:28,268 ‪どんな未来もとは‬ ‪いかないらしいが‬ 397 00:20:28,352 --> 00:20:30,646 ‪起こる可能性が ある程度あれば‬ 398 00:20:30,729 --> 00:20:33,774 ‪必ず それが起こるように‬ ‪できるというのだ‬ 399 00:20:33,857 --> 00:20:35,776 ‪(化け物)‬ ‪つまり未来を操れるのか‬ 400 00:20:36,526 --> 00:20:38,195 ‪そいつは怖いな‬ 401 00:20:38,278 --> 00:20:41,156 ‪だが くだんは予言しても‬ ‪すぐ死ぬだろう‬ 402 00:20:41,240 --> 00:20:44,409 ‪いや 死ぬゆえに‬ ‪未来を予言できるとも聞く‬ 403 00:20:44,493 --> 00:20:47,621 ‪なら 九郎殿もその力を使っては‬ ‪無事でいられまい‬ 404 00:20:48,372 --> 00:20:50,207 ‪そう恐れずとも…‬ 405 00:20:50,290 --> 00:20:53,335 ‪(妖怪)‬ ‪いや 九郎殿は人魚を食べている‬ 406 00:20:53,418 --> 00:20:54,127 ‪不死身だ‬ 407 00:20:54,211 --> 00:20:56,880 ‪くだんの力を使っても‬ ‪生き返るぞ‬ 408 00:20:56,964 --> 00:20:58,507 ‪そもそも九郎殿は‬ 409 00:20:58,590 --> 00:21:01,718 ‪一度 死ぬことで‬ ‪くだんの能力を使えるらしい‬ 410 00:21:01,802 --> 00:21:05,180 ‪命を代償に未来を操れるわけだ‬ 411 00:21:06,098 --> 00:21:07,849 ‪(力士)ふんっ!‬ ‪(九郎)ぐおっ…‬ 412 00:21:26,285 --> 00:21:29,913 ‪(幽霊)だとすると‬ ‪九郎殿を殺したとしても…‬ 413 00:21:31,164 --> 00:21:35,085 ‪(妖怪)きっちり やり返す未来を‬ ‪決定して生き返ってくる‬ 414 00:21:35,168 --> 00:21:36,503 ‪何度 殺してもだ‬ 415 00:21:36,586 --> 00:21:39,673 ‪そんな者に勝てると思うか?‬ 416 00:21:52,310 --> 00:21:53,478 ‪(妖怪)まさに…‬ 417 00:21:53,562 --> 00:21:55,480 ‪(一同)なんという怪物か!‬ 418 00:21:58,608 --> 00:21:59,443 ‪(力士)ふんっ!‬ 419 00:22:13,457 --> 00:22:14,374 ‪うあっ!‬ 420 00:22:20,756 --> 00:22:22,340 ‪(琴子)先輩 完璧です!‬ 421 00:22:26,386 --> 00:22:29,806 ‪だあ~っ!‬ 422 00:22:30,390 --> 00:22:32,017 ‪(力士)うっ…‬ 423 00:22:36,730 --> 00:22:37,856 ‪(琴子)おっと…‬ 424 00:22:41,693 --> 00:22:42,611 ‪ハッ‬ 425 00:22:49,159 --> 00:22:49,993 ‪ううっ!‬ 426 00:23:09,596 --> 00:23:12,516 ‪(九郎)もうちょっと‬ ‪楽に倒せる方法はなかったのか?‬ 427 00:23:13,183 --> 00:23:15,310 ‪一度 死んで‬ ‪こうなる未来を決定できたが‬ 428 00:23:15,394 --> 00:23:17,604 ‪かなりの傷を負わされてだな…‬ 429 00:23:17,687 --> 00:23:20,273 ‪(琴子)先輩の体は‬ ‪すぐに修復されますし‬ 430 00:23:20,357 --> 00:23:22,526 ‪痛みも感じないじゃあ‬ ‪ないですか‬ 431 00:23:23,276 --> 00:23:26,279 ‪私だって お気に入りのステッキを‬ ‪心にもなく‬ 432 00:23:26,363 --> 00:23:29,533 ‪あやかしに突き刺さなければ‬ ‪ならなかったわけですし‬ 433 00:23:29,616 --> 00:23:33,161 ‪(九郎)お前が危険を冒さないで‬ ‪済む方法もあったろう‬ 434 00:23:33,245 --> 00:23:35,497 ‪(琴子)別にあれくらい‬ ‪危険じゃなかったでしょう‬ 435 00:23:36,081 --> 00:23:38,500 ‪九郎先輩が‬ ‪体を張ってくれたおかげです‬ 436 00:23:40,252 --> 00:23:41,503 ‪たあいないものです‬ 437 00:23:42,546 --> 00:23:46,133 ‪もめ事を起こしている‬ ‪妖怪たちの利害を調整したり‬ 438 00:23:46,216 --> 00:23:49,594 ‪更に人間が絡んできたとき‬ ‪あちこちに目配りして‬ 439 00:23:49,678 --> 00:23:52,556 ‪大事にならないよう‬ ‪収拾をつけたりする‬ 440 00:23:52,639 --> 00:23:55,809 ‪そんな厄介さに比べれば‬ ‪よほど楽でしたよ‬ 441 00:23:56,309 --> 00:23:57,394 ‪まあ…‬ 442 00:23:57,477 --> 00:23:59,020 ‪倒して終わりのほうが‬ 443 00:23:59,104 --> 00:24:01,064 ‪ややこしくないのは確かだがな‬ 444 00:24:01,565 --> 00:24:02,983 ‪では 帰りましょうか‬ 445 00:24:03,066 --> 00:24:06,570 ‪朝になれば‬ ‪大学 行かないといけませんから‬ 446 00:24:07,154 --> 00:24:08,572 ‪(九郎)‬ ‪また提出するレポートを‬ 447 00:24:08,655 --> 00:24:09,739 ‪ためてないか?‬ 448 00:24:10,449 --> 00:24:14,244 ‪妖怪たちの相談で忙しいとか‬ ‪言い訳にならないからな‬ 449 00:24:14,327 --> 00:24:16,997 ‪だったら 恋人として‬ ‪手伝ってください‬ 450 00:24:17,080 --> 00:24:19,833 ‪自分でやらないと‬ ‪ためにならないだろう‬ 451 00:24:25,922 --> 00:24:30,302 ‪(あやかしたちのざわめき)‬ 452 00:24:40,604 --> 00:24:42,856 (琴子) 私の名は岩永(いわなが)琴子 453 00:24:44,482 --> 00:24:48,195 妖怪 幽霊 怪異 魔… 454 00:24:49,279 --> 00:24:52,949 そう呼ばれるものたちと この世の秩序を守る⸺ 455 00:24:54,451 --> 00:24:55,744 知恵の神