1 00:00:02,877 --> 00:00:04,879 ‪(ホテルマン)‬ ‪お待ち申し上げておりました‬ 2 00:00:04,963 --> 00:00:06,297 ‪岩永(いわなが)‪様‬‬ 3 00:00:08,633 --> 00:00:12,095 ‪(せきこみ)‬ 4 00:00:14,514 --> 00:00:16,391 ‪(剛一(ごういち))やあ はじめまして‬ 5 00:00:16,474 --> 00:00:19,352 ‪私が音無(おとなし)剛一だ‬ 6 00:00:19,978 --> 00:00:22,397 ‪すまなかったね 琴子(ことこ)さん‬ 7 00:00:22,981 --> 00:00:25,984 ‪面識もない老人から‬ ‪いきなり面会を求められて‬ 8 00:00:26,067 --> 00:00:27,652 ‪驚いたかと思う‬ 9 00:00:27,736 --> 00:00:29,320 ‪だが どうしても‬ 10 00:00:29,404 --> 00:00:33,992 ‪この頼みは 琴子さんでなければ‬ ‪できないと思ったものだから‬ 11 00:00:34,075 --> 00:00:35,660 ‪(琴子)音無剛一‬ 12 00:00:35,744 --> 00:00:38,496 ‪国内外で‬ ‪200以上のホテルを経営し‬ 13 00:00:38,580 --> 00:00:41,541 ‪そのほかの事業にも‬ ‪力を発揮している⸺‬ 14 00:00:42,042 --> 00:00:45,754 ‪有名な音無グループの会長‬ ‪なぜ そんな人物が?‬ 15 00:00:46,254 --> 00:00:50,175 ‪(琴子)驚いたといいますか‬ ‪迷惑このうえないといいますか‬ 16 00:00:50,884 --> 00:00:54,846 ‪ゴホン… 礼を尽くして‬ ‪お願いしただけなのだが‬ 17 00:00:54,929 --> 00:00:58,975 ‪変に地位を得ると‬ ‪威圧的に受け取られるものだね‬ 18 00:00:59,059 --> 00:01:02,645 ‪会長さんに比べれば‬ ‪私など まだ小娘です‬ 19 00:01:02,729 --> 00:01:06,274 ‪ご期待に応えられる器量は‬ ‪持ち合わせていませんよ‬ 20 00:01:06,357 --> 00:01:10,278 ‪私と ー対ーで向かい合って‬ ‪優雅にお茶を飲めるだけで‬ 21 00:01:10,361 --> 00:01:12,405 ‪大したものと思うが‬ 22 00:01:12,906 --> 00:01:17,660 ‪もっとも 私も音無グループの‬ ‪会長などといわれているが‬ 23 00:01:17,744 --> 00:01:19,621 ‪成り行きでそうなった身だ‬ 24 00:01:20,288 --> 00:01:22,874 ‪もともと私は‬ ‪音無家の者ではない‬ 25 00:01:22,957 --> 00:01:24,459 ‪グループのホテルに勤め‬ 26 00:01:24,542 --> 00:01:27,378 ‪管理の改善策など‬ ‪提言していたところ‬ 27 00:01:27,462 --> 00:01:30,423 ‪当時の社長‬ ‪音無‪伝次郎(でんじろう)‪氏に見込まれ‬‬‬ 28 00:01:30,507 --> 00:01:33,426 ‪お嬢さんの‪澄(すみ)‪さんと‬‬‬ ‪結婚させられた‬ 29 00:01:33,510 --> 00:01:36,805 ‪伝次郎氏は‬ ‪娘の澄さんの経営の才を認め‬ 30 00:01:36,888 --> 00:01:39,557 ‪彼女に後を‬ ‪継がせようとしていた‬ 31 00:01:39,641 --> 00:01:44,521 ‪事実 澄さんはその時代において‬ ‪優れた経営者であったよ‬ 32 00:01:44,604 --> 00:01:47,565 ‪私との結婚後‬ ‪伝次郎氏は亡くなったが‬ 33 00:01:47,649 --> 00:01:49,692 ‪澄さんは正式に社長となり‬ 34 00:01:49,776 --> 00:01:54,697 ‪グループの規模を拡大させ‬ ‪世界的なものにまで成長させた‬ 35 00:01:54,781 --> 00:01:57,867 ‪そのうえで3人の子供まで‬ ‪もうけたのだから‬ 36 00:01:57,951 --> 00:02:00,453 ‪烈女とでも‬ ‪いうしかない人だったよ‬ 37 00:02:00,537 --> 00:02:02,664 ‪(琴子)しかし 澄さん亡きあと‬ 38 00:02:02,747 --> 00:02:05,834 ‪グループを守られたのは‬ ‪会長だとも耳にしています‬ 39 00:02:05,917 --> 00:02:09,461 ‪剛一氏がいなければ‬ ‪グループは危うかった‬ 40 00:02:09,545 --> 00:02:12,215 ‪もし 澄さんが‬ ‪あと1年 長く生きていれば‬ 41 00:02:12,298 --> 00:02:14,717 ‪グループは崩壊していたろうと‬ 42 00:02:15,218 --> 00:02:17,428 ‪澄さんは23年前‬ 43 00:02:17,512 --> 00:02:21,266 ‪路上で強盗とおぼしき何者かに‬ ‪刺殺されたんでしたね‬ 44 00:02:21,349 --> 00:02:23,768 ‪犯人は いまだ捕まっていないと‬ 45 00:02:23,852 --> 00:02:24,894 ‪(剛一)うん‬ 46 00:02:24,978 --> 00:02:28,606 ‪実はその犯人は 私なのだよ‬ 47 00:02:29,649 --> 00:02:30,942 ‪ご冗談を‬ 48 00:02:31,025 --> 00:02:33,027 ♪~ 49 00:03:33,963 --> 00:03:35,965 ~♪ 50 00:03:36,549 --> 00:03:38,718 ‪(剛一)これが冗談ではなくてね‬ 51 00:03:38,801 --> 00:03:42,847 ‪いや 私が直接‬ ‪澄さんを殺したわけではないんだ‬ 52 00:03:43,431 --> 00:03:45,850 ‪なら 人を雇って殺させたと?‬ 53 00:03:45,934 --> 00:03:47,977 ‪(剛一)‬ ‪それなら まだ分かりやすい‬ 54 00:03:48,061 --> 00:03:50,688 ‪けれど‬ ‪人を殺してくれる人物なんて‬ 55 00:03:50,772 --> 00:03:53,399 ‪そうたやすく‬ ‪見つかるものじゃないよ‬ 56 00:03:53,483 --> 00:03:54,484 ‪(琴子)そうですね‬ 57 00:03:54,567 --> 00:03:57,487 ‪(剛一)‬ ‪澄さんを殺したのは‪狐(きつね)‪の化け物‬‬‬ 58 00:03:57,570 --> 00:03:59,656 ‪妖狐(ようこ)‪と呼ばれるものだ‬‬ 59 00:03:59,739 --> 00:04:02,951 ‪私は既知の‪理(ことわり)‪の外にあるものと‬‬‬ ‪取り引きをし‬ 60 00:04:03,034 --> 00:04:05,495 ‪澄さんを殺してもらったのだよ‬ 61 00:04:05,578 --> 00:04:08,456 ‪それこそ‬ ‪冗談が過ぎるというものです‬ 62 00:04:08,539 --> 00:04:11,334 ‪世界的な‬ ‪ホテルグループの会長が‬ 63 00:04:11,417 --> 00:04:15,421 ‪妖狐などといった‬ ‪非科学的な存在を口にされるなど‬ 64 00:04:15,505 --> 00:04:18,341 ‪ホテルグループの‬ ‪会長だからこそだ‬ 65 00:04:18,423 --> 00:04:21,219 ‪ホテルでは不特定多数が‬ ‪日々 出入りし‬ 66 00:04:21,302 --> 00:04:24,555 ‪さまざまな事件などで‬ ‪人の死の舞台にもなる‬ 67 00:04:24,639 --> 00:04:26,057 ‪そのせいか 客室に‬ 68 00:04:26,140 --> 00:04:30,645 ‪超常現象や幽霊が現れる‬ ‪といった話も多く聞かれるのだ‬ 69 00:04:30,728 --> 00:04:34,274 ‪表向き認めはしないが‬ ‪現実にあるものはある‬ 70 00:04:34,357 --> 00:04:38,653 ‪私は23年前‬ ‪確かに妖狐と取り引きしたのだ‬ 71 00:04:38,736 --> 00:04:41,531 ‪なぜ その話を‬ ‪私にされるのです?‬ 72 00:04:41,614 --> 00:04:44,075 ‪一部では有名じゃないか‬ 73 00:04:44,158 --> 00:04:46,411 ‪琴子さんは‬ ‪そういった怪異について‬ 74 00:04:46,494 --> 00:04:48,371 ‪一家言あると‬ 75 00:04:48,454 --> 00:04:51,499 ‪(琴子)確かに父母を通して‬ ‪そんな頼みがされて‬ 76 00:04:51,582 --> 00:04:53,584 ‪不承不承に応じはしますが‬ 77 00:04:53,668 --> 00:04:55,253 ‪それらは まず全て‬ 78 00:04:55,336 --> 00:04:59,799 ‪錯覚や心理的な思い込みといった‬ ‪合理的な説明ができるものです‬ 79 00:04:59,882 --> 00:05:01,884 ‪私は科学の子です‬ 80 00:05:01,968 --> 00:05:04,387 ‪この義眼と義足も‬ ‪その成果ですし‬ 81 00:05:04,470 --> 00:05:09,475 ‪その義眼と義足の原因は‬ ‪まさに神隠しといった現象であり‬ 82 00:05:09,559 --> 00:05:12,895 ‪君には怪異に祝福された‬ ‪気配を感じるよ‬ 83 00:05:12,979 --> 00:05:14,564 ‪ほかの者はさておき‬ 84 00:05:14,647 --> 00:05:17,483 ‪君だけは‬ ‪私の話を信じてくれると‬ 85 00:05:17,567 --> 00:05:20,445 ‪今回の頼み事を持ち込んだんだ‬ 86 00:05:21,362 --> 00:05:24,324 ‪(琴子)ご無礼をしました‬ ‪続けてください‬ 87 00:05:24,407 --> 00:05:29,078 ‪23年前 グループは‬ ‪ひたすら拡張を続けていた‬ 88 00:05:29,162 --> 00:05:31,497 ‪“グループを世界一のものにする”‬ 89 00:05:31,581 --> 00:05:35,251 ‪それが伝次郎氏の遺志であり‬ ‪澄さんの目標であった‬ 90 00:05:35,334 --> 00:05:39,464 ‪だが グループは限界を超えて‬ ‪崩壊しつつあった‬ 91 00:05:39,964 --> 00:05:42,759 ‪けれど 澄さんは‬ ‪止まろうとしなかった‬ 92 00:05:42,842 --> 00:05:44,135 ‪グループの幹部たちも‬ 93 00:05:44,218 --> 00:05:47,013 ‪そんな澄さんを‬ ‪止めることはできなかった‬ 94 00:05:47,096 --> 00:05:50,808 ‪澄さんは子供たちの人生も‬ ‪支配しようとしていた‬ 95 00:05:50,892 --> 00:05:53,978 ‪長男は料理人になりたいのに‬ ‪それを許さず‬ 96 00:05:54,062 --> 00:05:56,355 ‪グループの‬ ‪後継者にしようとした‬ 97 00:05:56,439 --> 00:05:59,400 ‪長女が連れてきた恋人を‬ ‪認めようとせず‬ 98 00:05:59,484 --> 00:06:01,110 ‪別れさせようとした‬ 99 00:06:01,194 --> 00:06:05,031 ‪次男が積極的にグループの仕事を‬ ‪継ごうとしていたのを‬ 100 00:06:05,114 --> 00:06:08,367 ‪長男が継ぐべきと‬ ‪望んだ仕事をさせなかった‬ 101 00:06:08,451 --> 00:06:10,370 ‪もう 限界だった‬ 102 00:06:10,453 --> 00:06:13,247 ‪放っておけば‬ ‪グループも子供たちも潰れる‬ 103 00:06:13,331 --> 00:06:17,502 ‪それが分かっていながら‬ ‪私には 何もできなかった‬ 104 00:06:17,585 --> 00:06:18,753 ‪そんな折‬ 105 00:06:18,836 --> 00:06:23,007 ‪私は山奥の別荘に一人 籠もり‬ ‪方策を考えていた‬ 106 00:06:26,594 --> 00:06:28,137 ‪(剛一)澄さんさえ…‬ 107 00:06:28,221 --> 00:06:31,724 ‪澄さんさえいなくなれば‬ ‪全てうまくいくのに‬ 108 00:06:32,225 --> 00:06:35,144 ‪澄さんさえいなくなれば…‬ 109 00:06:35,770 --> 00:06:38,648 ‪(吹雪(ふぶき))なら その願い‬ ‪かなえてやろうか?‬ 110 00:06:38,731 --> 00:06:39,649 ‪え?‬ 111 00:06:42,735 --> 00:06:44,654 ‪(吹雪)詳しく話せ‬ 112 00:06:44,737 --> 00:06:47,657 ‪われは妖狐‬ ‪年経たあやかしだ‬ 113 00:06:47,740 --> 00:06:51,536 ‪お前の住む世の法では‬ ‪できぬこともやれるぞ‬ 114 00:06:51,619 --> 00:06:54,122 ‪(剛一)‬ ‪私は驚き おびえはしたが‬ 115 00:06:54,205 --> 00:06:57,208 ‪化け物より グループと‬ ‪子供たちの未来といった‬ 116 00:06:57,291 --> 00:06:59,544 ‪現実のほうが怖かった‬ 117 00:07:01,254 --> 00:07:03,172 ‪わ… 私は…‬ 118 00:07:04,590 --> 00:07:05,633 ‪(吹雪)分かった‬ 119 00:07:05,716 --> 00:07:08,928 ‪なら お前の奥方を‬ ‪われが殺してやろう‬ 120 00:07:09,011 --> 00:07:10,012 ‪え?‬ 121 00:07:10,596 --> 00:07:13,766 ‪そのかわり われの願いも‬ ‪一つかなえよ‬ 122 00:07:13,850 --> 00:07:17,770 ‪(剛一)化け物と取り引きなんて‬ ‪何を持っていかれるか‬ 123 00:07:17,854 --> 00:07:19,439 ‪だが 私は…‬ 124 00:07:19,522 --> 00:07:21,774 ‪そ… その願いはなんだ?‬ 125 00:07:21,858 --> 00:07:27,029 ‪隣町の山手の土地を開発して‬ ‪人が使う場所にしてくれ‬ 126 00:07:27,113 --> 00:07:28,781 ‪敵対する同族が‬ 127 00:07:28,865 --> 00:07:31,659 ‪そこを住みかとし‬ ‪勢力を伸ばしている‬ 128 00:07:31,742 --> 00:07:34,036 ‪それを抑えつけてやりたいのだ‬ 129 00:07:34,120 --> 00:07:36,581 ‪その土地なら恐らく取得できる‬ 130 00:07:36,664 --> 00:07:40,585 ‪澄さんがいれば不可能だが‬ ‪いなくなれば可能だ‬ 131 00:07:40,668 --> 00:07:41,752 ‪やれる‬ 132 00:07:42,920 --> 00:07:46,841 ‪澄さんが亡くなれば‬ ‪お前の願いをかなえよう!‬ 133 00:07:46,924 --> 00:07:50,303 ‪ひとつきのうちに‬ ‪亡き者にしてやろう‬ 134 00:07:51,512 --> 00:07:53,347 ‪(剛一)10日ほどあとだろうか‬ 135 00:07:53,431 --> 00:07:57,894 ‪澄さんは路上で‬ ‪強盗とおぼしき相手に刺殺された‬ 136 00:07:57,977 --> 00:08:02,648 ‪そして 葬儀やグループの混乱が‬ ‪一段落したころ…‬ 137 00:08:04,483 --> 00:08:06,319 ‪(男)奥方は殺してやったぞ‬ 138 00:08:06,819 --> 00:08:08,738 ‪お前も約束を忘れるな‬ 139 00:08:09,322 --> 00:08:12,658 ‪果たさぬなら‬ ‪今度はお前を殺してやろう‬ 140 00:08:17,872 --> 00:08:18,623 ‪フッ…‬ 141 00:08:19,540 --> 00:08:23,169 ‪(琴子)同族の勢力争いに‬ ‪人間を利用しようとは‬ 142 00:08:23,252 --> 00:08:25,504 ‪なんとも世俗的な妖狐だ‬ 143 00:08:26,005 --> 00:08:28,633 ‪それで‬ ‪約束を果たされたんですね‬ 144 00:08:28,716 --> 00:08:29,634 ‪ああ‬ 145 00:08:29,717 --> 00:08:32,595 ‪山を拓(ひら)くには‬ ‪半年ほどかかったがね‬ 146 00:08:32,678 --> 00:08:35,014 ‪その後 私が社長となり‬ 147 00:08:35,097 --> 00:08:38,183 ‪音無グループは‬ ‪身の丈に合った経営を目指し‬ 148 00:08:38,267 --> 00:08:41,229 ‪部門によっては‬ ‪縮小や売却も行った‬ 149 00:08:41,312 --> 00:08:43,856 ‪もし あのまま‬ ‪澄さんに従っていれば‬ 150 00:08:43,940 --> 00:08:47,485 ‪グループは背骨が折れるほどの‬ ‪痛手を受けていただろう‬ 151 00:08:47,568 --> 00:08:51,322 ‪澄さんに支配されていた‬ ‪子供さんたちはどうされました?‬ 152 00:08:51,405 --> 00:08:54,700 ‪(剛一)長男はグループとは‬ ‪無関係に料理人になり‬ 153 00:08:54,784 --> 00:08:57,036 ‪今では自分の店を構えている‬ 154 00:08:57,119 --> 00:08:59,205 ‪長女は恋人と結婚し‬ 155 00:08:59,288 --> 00:09:01,832 ‪その彼が手がけている‬ ‪事業も成功し‬ 156 00:09:01,916 --> 00:09:03,793 ‪今も幸せにやっている‬ 157 00:09:03,876 --> 00:09:08,631 ‪次男はグループの経営に関わり‬ ‪常務取締役となっている‬ 158 00:09:08,714 --> 00:09:11,467 ‪つまり‬ ‪澄さんが亡くなられたことで‬ 159 00:09:11,551 --> 00:09:13,886 ‪本当に全てが‬ ‪うまくいったわけですか‬ 160 00:09:13,970 --> 00:09:15,221 ‪そうだ‬ 161 00:09:15,304 --> 00:09:17,974 ‪殺人という‬ ‪禁忌を犯して選んだ道が‬ 162 00:09:18,057 --> 00:09:19,850 ‪全てをうまくいかせた‬ 163 00:09:19,934 --> 00:09:22,019 ‪驚くほど うまくいったんだよ‬ 164 00:09:22,103 --> 00:09:23,813 ‪それは重畳(ちょうじょう)です‬ 165 00:09:23,896 --> 00:09:27,108 ‪お祝いにシフォンケーキを‬ ‪注文してもいいですか?‬ 166 00:09:27,191 --> 00:09:29,110 ‪(剛一)重畳ではないんだ‬ 167 00:09:29,610 --> 00:09:30,903 ‪何か 一つでも‬ 168 00:09:30,987 --> 00:09:34,073 ‪あのとき澄さんが亡くなって‬ ‪いなければよかったのにと‬ 169 00:09:34,156 --> 00:09:37,702 ‪多くが思う出来事があれば‬ ‪問題はなかった‬ 170 00:09:37,785 --> 00:09:41,372 ‪そうであれば 殺人とは‬ ‪選択すべき方法ではないという‬ 171 00:09:41,455 --> 00:09:43,082 ‪戒めも得られた‬ 172 00:09:43,165 --> 00:09:46,711 ‪選択すれば‬ ‪相応の報いがあると実感できた‬ 173 00:09:46,794 --> 00:09:48,796 ‪私が健康上の理由で‬ 174 00:09:48,879 --> 00:09:52,258 ‪グループの経営から‬ ‪退いているのは知っているね?‬ 175 00:09:52,341 --> 00:09:53,426 ‪ええ‬ 176 00:09:53,509 --> 00:09:55,803 ‪(剛一)‬ ‪悪性の腫瘍が全身に転移して‬ 177 00:09:55,886 --> 00:09:58,514 ‪余命は1年との診断が出ている‬ 178 00:09:58,597 --> 00:10:00,850 ‪半年もすれば‬ ‪激痛にさいなまれて‬ 179 00:10:00,933 --> 00:10:02,810 ‪ひどい末期になるだろう‬ 180 00:10:02,893 --> 00:10:05,479 ‪このことは‬ ‪まだ家族にも伏せている‬ 181 00:10:05,563 --> 00:10:07,857 ‪しばらくは内密にしてほしい‬ 182 00:10:07,940 --> 00:10:11,360 ‪それはさておき‬ ‪この体の状態を聞いたとき‬ 183 00:10:11,444 --> 00:10:13,195 ‪実は安堵(あんど)したんだ‬ 184 00:10:13,279 --> 00:10:16,615 ‪ようやく私に‬ ‪殺人の報いが訪れるのかと‬ 185 00:10:17,199 --> 00:10:20,119 ‪私のしたことは‬ ‪一片の曇りない殺人だ‬ 186 00:10:20,202 --> 00:10:22,163 ‪しかるべき罰があるべきだ‬ 187 00:10:22,246 --> 00:10:24,915 ‪でなければ秩序に反している‬ 188 00:10:24,999 --> 00:10:27,793 ‪(琴子)秩序に反しているのは‬ ‪認めましょう‬ 189 00:10:27,877 --> 00:10:31,005 ‪それで私に‬ ‪何を期待しています?‬ 190 00:10:31,088 --> 00:10:33,507 ‪(剛一)心配なのは子供たちだ‬ 191 00:10:33,591 --> 00:10:37,178 ‪子供たちは いわば‬ ‪母親の死でうまくいった‬ 192 00:10:37,261 --> 00:10:39,263 ‪この成功体験は危うい‬ 193 00:10:39,347 --> 00:10:40,973 ‪もし 将来 同じように‬ 194 00:10:41,057 --> 00:10:44,393 ‪誰かの死でうまくいきそうな‬ ‪状況が訪れたとき‬ 195 00:10:44,477 --> 00:10:47,897 ‪そこで殺人という選択肢が‬ ‪浮かぶかもしれない‬ 196 00:10:47,980 --> 00:10:51,233 ‪だから 子供たちに‬ ‪“私が澄さんを殺した”‬ 197 00:10:51,317 --> 00:10:54,403 ‪“その報いで私の死にざまは‬ ‪こうなるのだ”と‬ 198 00:10:54,487 --> 00:10:56,739 ‪はっきり見せなければ‬ ‪ならないんだよ‬ 199 00:10:56,822 --> 00:11:00,576 ‪私には強固なアリバイがある‬ ‪犯行は不可能だ‬ 200 00:11:00,659 --> 00:11:03,621 ‪妖狐の力を借りたと‬ ‪真実を語っても‬ 201 00:11:03,704 --> 00:11:05,956 ‪子供たちは信じないだろうし‬ 202 00:11:06,040 --> 00:11:09,001 ‪人を雇って殺させたと言っても‬ ‪同じだろう‬ 203 00:11:09,085 --> 00:11:14,256 ‪実行犯が妖狐であるがゆえに‬ ‪私は自身の犯罪を証明できない‬ 204 00:11:14,340 --> 00:11:17,259 ‪それは なかなか‬ ‪信じてもらえないでしょうね‬ 205 00:11:17,343 --> 00:11:19,678 ‪(剛一)‬ ‪よって 子供たちにどうにかして‬ 206 00:11:19,762 --> 00:11:23,099 ‪私が澄さんを殺したと‬ ‪信じさせなければならない‬ 207 00:11:23,182 --> 00:11:25,893 ‪それを君に協力してもらいたい‬ 208 00:11:27,061 --> 00:11:29,855 ‪(琴子)‬ ‪たとえ 私が話す殺害方法が‬ 209 00:11:29,939 --> 00:11:31,774 ‪ウソであったとしてもですか?‬ 210 00:11:31,857 --> 00:11:35,653 ‪子供たちは誰が母親を殺したか‬ ‪知る権利がある‬ 211 00:11:35,736 --> 00:11:37,321 ‪知らないままでいるのは‬ 212 00:11:37,405 --> 00:11:40,241 ‪心にとげが刺さったままに‬ ‪なるようなものだ‬ 213 00:11:40,324 --> 00:11:42,368 ‪それも解消したいのだよ‬ 214 00:11:42,451 --> 00:11:45,996 ‪子供たちに私の犯行を‬ ‪どう信じさせるか‬ 215 00:11:46,080 --> 00:11:51,127 ‪詳しい段取りは考えてあるし‬ ‪君の役割も決めてある‬ 216 00:11:51,210 --> 00:11:55,172 ‪ああ その話の前に‬ ‪追加の注文をしようか‬ 217 00:11:55,256 --> 00:11:57,091 ‪シフォンケーキでいいかな?‬ 218 00:11:57,174 --> 00:11:59,677 ‪チーズケーキと‬ ‪抹茶ロールも一緒に‬ 219 00:11:59,760 --> 00:12:00,970 ‪アハハッ‬ 220 00:12:01,053 --> 00:12:01,929 ‪(鈴の音)‬ 221 00:12:12,690 --> 00:12:16,360 ‪(琴子)といった話が‬ ‪2週間ばかり前にあったんですが‬ 222 00:12:16,444 --> 00:12:18,738 ‪(九郎(くろう))‬ ‪また ややこしい案件だな‬ 223 00:12:19,488 --> 00:12:20,239 ‪頑張れ‬ 224 00:12:20,322 --> 00:12:22,408 ‪なぜ ひと事のように言う‬ 225 00:12:22,491 --> 00:12:24,827 ‪九郎先輩にも手伝ってもらうに‬ ‪決まっているでしょう!‬ 226 00:12:25,703 --> 00:12:28,789 ‪(九郎)‬ ‪話があったのは2週間前だろう‬ 227 00:12:28,873 --> 00:12:31,709 ‪僕が必要ないから‬ ‪黙ってたんじゃないのか?‬ 228 00:12:31,792 --> 00:12:33,753 ‪補足的な調査やらで‬ 229 00:12:33,836 --> 00:12:36,797 ‪対応を決めるまでは‬ ‪話しづらかったんですよ‬ 230 00:12:36,881 --> 00:12:38,841 ‪(九郎)‬ ‪会長さんと取り引きした妖狐に‬ 231 00:12:38,924 --> 00:12:40,759 ‪確認はしたのか?‬ 232 00:12:40,843 --> 00:12:41,469 ‪(琴子)ええ‬ 233 00:12:41,552 --> 00:12:44,722 ‪条件に当てはまるのが‬ ‪一匹しかいなかったので‬ 234 00:12:44,805 --> 00:12:46,682 ‪割合 早く見つかりました‬ 235 00:12:46,765 --> 00:12:50,019 ‪(狐)おひいさま‬ ‪お探しのヤツめを捕らえました‬ 236 00:12:50,603 --> 00:12:51,645 ‪(吹雪)うっ…‬ 237 00:12:53,063 --> 00:12:54,523 ‪我が名は吹雪!‬ 238 00:12:54,607 --> 00:12:56,484 ‪高潔なる妖狐のわれが‬ 239 00:12:56,567 --> 00:13:01,363 ‪下等な人間に手を貸したなどと‬ ‪疑いをかけるとは無礼千万!‬ 240 00:13:01,447 --> 00:13:03,991 ‪われを解放せよ さもなくば‬ 241 00:13:04,074 --> 00:13:06,744 ‪我が妖力で‬ ‪この地にわざ… ギャッ!‬ 242 00:13:06,827 --> 00:13:08,287 ‪(狐)お前がやったんだろ!‬ 243 00:13:08,370 --> 00:13:10,831 ‪人間を利用して‬ ‪山を破壊させるなぞ‬ 244 00:13:10,915 --> 00:13:12,166 ‪目に余る暴挙!‬ 245 00:13:12,249 --> 00:13:15,586 ‪(狐)無関係な物(もの)の怪(け)たちも‬ ‪山を追われたんだぞ!‬ 246 00:13:15,669 --> 00:13:16,670 ‪(吹雪)なぜです!‬ 247 00:13:16,754 --> 00:13:19,965 ‪どうしてわたくしめが‬ ‪罪人と断定できるのです?‬ 248 00:13:20,049 --> 00:13:21,175 ‪証拠は?‬ 249 00:13:21,258 --> 00:13:24,220 ‪音無会長が‬ ‪私に自白したんですよ‬ 250 00:13:24,303 --> 00:13:27,014 ‪そんなバッ… なんですって~!‬ 251 00:13:27,097 --> 00:13:30,392 ‪(琴子)これからあなたは‬ ‪同族内での裁きを受けるでしょう‬ 252 00:13:31,310 --> 00:13:33,771 ‪私は介入する立場に‬ ‪ありませんが‬ 253 00:13:33,854 --> 00:13:37,608 ‪音無 澄の殺人について‬ ‪聴取に応じれば‬ 254 00:13:37,691 --> 00:13:40,402 ‪私から彼らに‬ ‪罪一等 減じるように‬ 255 00:13:40,486 --> 00:13:42,321 ‪ひと言 口添えしますよ‬ 256 00:13:42,404 --> 00:13:45,241 ‪偽りなく 全て話しなさい‬ 257 00:13:46,200 --> 00:13:48,244 ‪吹雪は狡猾(こうかつ)でしたが‬ 258 00:13:48,327 --> 00:13:52,915 ‪結果的には 音無会長の善良さに‬ ‪足を取られたわけです‬ 259 00:13:52,998 --> 00:13:55,292 ‪社交界にある‬ ‪お前の悪いウワサのほうが‬ 260 00:13:55,376 --> 00:13:57,002 ‪致命傷だったんじゃないか?‬ 261 00:13:57,086 --> 00:14:01,006 ‪それがなければ会長さんも‬ ‪話を持ちかけなかったろうし‬ 262 00:14:01,090 --> 00:14:04,134 ‪きっと‬ ‪私の可憐(かれん)さを妬んだ連中が‬ 263 00:14:04,218 --> 00:14:06,762 ‪根も葉もない風聞を‬ ‪流しているのでしょう‬ 264 00:14:06,846 --> 00:14:08,597 ‪根も葉もあるだろう‬ 265 00:14:08,681 --> 00:14:11,559 ‪ともかく‬ ‪いくつか想定外はありましたが‬ 266 00:14:11,642 --> 00:14:13,018 ‪話の裏は取れました‬ 267 00:14:13,936 --> 00:14:17,022 ‪(九郎)それで‬ ‪怪異の力によって利益を得た⸺‬ 268 00:14:17,106 --> 00:14:20,276 ‪音無会長に対して‬ ‪お前は どう応じるんだ?‬ 269 00:14:21,193 --> 00:14:24,488 ‪そこにお前が正すべき‬ ‪秩序のゆがみはあるのか?‬ 270 00:14:25,865 --> 00:14:28,242 ‪(琴子)‬ ‪例えば ホテルに出た霊が‬ 271 00:14:28,325 --> 00:14:30,536 ‪宿泊客を困らせるのにしても‬ 272 00:14:30,619 --> 00:14:33,038 ‪すぐさま秩序に反するわけでは‬ ‪ありません‬ 273 00:14:33,622 --> 00:14:34,832 ‪ただ 放置すると‬ 274 00:14:34,915 --> 00:14:38,168 ‪人間側があやかしに対して‬ ‪強硬な対応に出て‬ 275 00:14:38,252 --> 00:14:41,171 ‪あやかし側が‬ ‪苦しい立場に追い込まれます‬ 276 00:14:41,255 --> 00:14:44,133 ‪そういうトラブルが‬ ‪大きくならないうちに‬ 277 00:14:44,216 --> 00:14:49,346 ‪双方に損がない処置をする‬ ‪というのが私の立ち位置ですから‬ 278 00:14:50,764 --> 00:14:54,059 ‪あの景品を先輩の能力で‬ ‪獲得するくらいなら‬ 279 00:14:54,143 --> 00:14:55,978 ‪ほほえましい話なんですが‬ 280 00:14:56,478 --> 00:14:58,188 ‪それはズルじゃないのか?‬ 281 00:14:58,272 --> 00:15:02,234 ‪では 先輩の能力に頼らず‬ ‪実力で取りにいきましょう‬ 282 00:15:02,318 --> 00:15:05,571 ‪ボールペンなんて‬ ‪コンビニで買えるだろう‬ 283 00:15:05,654 --> 00:15:07,615 ‪先輩 よく見てください‬ 284 00:15:07,698 --> 00:15:10,200 ‪これは逆さにすると‬ ‪水着が消える⸺‬ 285 00:15:10,284 --> 00:15:12,286 ‪不思議なボールペンですよ!‬ 286 00:15:12,786 --> 00:15:14,538 ‪欲しい! 欲しい!‬ 287 00:15:15,831 --> 00:15:16,624 ‪それで?‬ 288 00:15:16,707 --> 00:15:20,127 ‪殺人を… それも社会的に‬ ‪影響力のある人物が‬ 289 00:15:20,210 --> 00:15:21,879 ‪意図的に行った場合‬ 290 00:15:21,962 --> 00:15:25,758 ‪それを大したことないと‬ ‪看過するのはよくないだろう‬ 291 00:15:25,841 --> 00:15:28,302 ‪(琴子)はい‬ ‪今のところ音無会長は‬ 292 00:15:28,385 --> 00:15:30,804 ‪私以外にこれを話していません‬ 293 00:15:30,888 --> 00:15:33,265 ‪自身の行いを罪と認め‬ 294 00:15:33,349 --> 00:15:36,185 ‪子供さんたちにも‬ ‪戒めを与えようとされています‬ 295 00:15:36,268 --> 00:15:38,604 ‪けれど 後々 気が変わって‬ 296 00:15:38,687 --> 00:15:41,440 ‪“困ったときは‬ ‪怪異に頼るのもかまわない”‬ 297 00:15:41,523 --> 00:15:45,444 ‪“そうすれば うまくいく”‬ ‪という教訓を伝えるかもしれません‬ 298 00:15:50,366 --> 00:15:53,285 ‪それを受けて‬ ‪子供さんたちが今後‬ 299 00:15:53,369 --> 00:15:55,704 ‪怪異の力を借りようとする‬ ‪事態が起こるのは‬ 300 00:15:55,788 --> 00:15:57,122 ‪防がねばなりません‬ 301 00:15:57,206 --> 00:15:58,874 ‪また 同様なことで‬ 302 00:15:58,957 --> 00:16:02,002 ‪怪異側が人間に近づくのも‬ ‪正しくありません‬ 303 00:16:02,086 --> 00:16:05,631 ‪妖狐の吹雪も‬ ‪それで仲間に裁かれるわけですし‬ 304 00:16:05,714 --> 00:16:09,259 ‪人の側も同じくらいの代償が‬ ‪必要でしょう‬ 305 00:16:09,843 --> 00:16:11,762 ‪それが秩序というのものです‬ 306 00:16:11,845 --> 00:16:16,767 ‪音無会長は 病気で余命が短い‬ ‪という代償を払ってないか?‬ 307 00:16:16,850 --> 00:16:20,020 ‪(琴子)若くして‬ ‪病に倒れたなら代償ですが‬ 308 00:16:20,104 --> 00:16:24,441 ‪81歳ですから ほかの要因で‬ ‪亡くなることもあります‬ 309 00:16:24,525 --> 00:16:25,985 ‪それを周りが見れば‬ 310 00:16:26,068 --> 00:16:29,029 ‪会長さんの選択は‬ ‪正しかったとなりますし‬ 311 00:16:29,113 --> 00:16:30,239 ‪会長さんも‬ 312 00:16:30,322 --> 00:16:33,325 ‪自分が正しかったのかもと‬ ‪思いながら逝かれるでしょう‬ 313 00:16:33,409 --> 00:16:37,413 ‪私がいくらか手を入れないと‬ ‪つじつまが合いません‬ 314 00:16:37,913 --> 00:16:39,665 ‪お前は厳しいな‬ 315 00:16:40,165 --> 00:16:42,876 ‪これでも甘めの対応ですよ‬ 316 00:16:43,377 --> 00:16:46,088 ‪それに‬ ‪会長さんの行いを正すのに‬ 317 00:16:46,171 --> 00:16:48,799 ‪私に頼るという選択を取るのが‬ 318 00:16:48,882 --> 00:16:51,343 ‪また 秩序の意味では‬ ‪危ういんですが‬ 319 00:16:51,427 --> 00:16:52,219 ‪危うい?‬ 320 00:16:52,302 --> 00:16:54,722 ‪(琴子)いい大人が‬ ‪私をこうまで信用するのは‬ 321 00:16:54,805 --> 00:16:56,932 ‪普通 ありえないでしょう‬ 322 00:16:57,015 --> 00:16:59,560 ‪音無会長の中で 困ったときは‬ 323 00:16:59,643 --> 00:17:03,439 ‪通常の理から外れたものに‬ ‪頼るのを是としている証拠です‬ 324 00:17:03,939 --> 00:17:07,026 ‪過去の成功体験に‬ ‪しっかり縛られているわけです‬ 325 00:17:07,108 --> 00:17:11,405 ‪よって 私が役目を果たさないと‬ ‪いけない案件なわけですよ‬ 326 00:17:11,488 --> 00:17:14,867 ‪(九郎)それで 具体的な段取りは‬ ‪どうなってるんだ?‬ 327 00:17:14,950 --> 00:17:17,411 ‪音無会長に‬ ‪計画があるみたいだが‬ 328 00:17:17,493 --> 00:17:19,621 ‪私が会長さんを犯人とする⸺‬ 329 00:17:19,704 --> 00:17:22,540 ‪偽の解決をでっちあげて披露する‬ 330 00:17:22,624 --> 00:17:25,127 ‪という形になるかと‬ ‪思ったんですが‬ 331 00:17:25,210 --> 00:17:27,087 ‪そう単純ではなく…‬ 332 00:17:27,588 --> 00:17:31,091 ‪(剛一)人から私を犯人とする‬ ‪説明を押しつけられても‬ 333 00:17:31,175 --> 00:17:33,177 ‪心からは納得しづらい‬ 334 00:17:33,260 --> 00:17:35,387 ‪だから 自分たちで考えさせ‬ 335 00:17:35,471 --> 00:17:38,974 ‪その過程で‬ ‪私に対する疑いを生ませる‬ 336 00:17:39,057 --> 00:17:41,894 ‪そのうえで‬ ‪筋の通った説明が出れば‬ 337 00:17:41,977 --> 00:17:44,646 ‪私が犯人と確信するだろう‬ 338 00:17:44,730 --> 00:17:47,024 ‪(琴子)という意図のもと‬ ‪子供さんたちに‬ 339 00:17:47,107 --> 00:17:50,778 ‪“私は23年前‬ ‪妻の澄さんを殺した”‬ 340 00:17:50,861 --> 00:17:55,032 ‪“それが真実であると説明せよ”‬ ‪という課題を出したそうです‬ 341 00:17:55,616 --> 00:17:58,077 ‪その課題に‬ ‪最もうまく応じた者に‬ 342 00:17:58,160 --> 00:18:00,454 ‪会長さんの遺産を‬ ‪相続するにあたっての‬ 343 00:18:00,537 --> 00:18:02,039 ‪優先権を与えると‬ 344 00:18:02,122 --> 00:18:06,043 ‪そして私に‬ ‪誰の説明が優れているかを判定し‬ 345 00:18:06,126 --> 00:18:07,836 ‪順位をつけよというわけです‬ 346 00:18:07,920 --> 00:18:10,839 ‪相続問題で課題とは厄介(やっかい)だな‬ 347 00:18:10,923 --> 00:18:12,174 ‪この課題によって‬ 348 00:18:12,257 --> 00:18:15,177 ‪過去の事件に関して‬ ‪思い出そうとするでしょうし‬ 349 00:18:15,260 --> 00:18:17,262 そういうフィルターを 通せば 350 00:18:17,346 --> 00:18:19,139 全てが疑わしく見え 351 00:18:19,223 --> 00:18:21,892 より父親を犯人と 信じやすい心理へと 352 00:18:21,975 --> 00:18:24,436 向かうというのが 会長の狙いです 353 00:18:24,520 --> 00:18:27,689 ‪その判定役となれば‬ ‪恨みも買いそうだ‬ 354 00:18:27,773 --> 00:18:29,191 ‪(琴子)その役のほかに‬ 355 00:18:29,274 --> 00:18:32,069 ‪子供さんたちが‬ ‪適切な説明が出せるよう‬ 356 00:18:32,152 --> 00:18:35,656 ‪助言やチェックをする役目まで‬ ‪期待されています‬ 357 00:18:35,739 --> 00:18:37,616 ‪(九郎)適切な説明も何も‬ 358 00:18:37,699 --> 00:18:40,786 ‪真実は妖狐に殺させた‬ ‪というものだろう‬ 359 00:18:40,869 --> 00:18:41,787 ‪(2人)あっ‬ 360 00:18:43,997 --> 00:18:45,666 ‪(琴子)うう~っ‬ 361 00:18:45,749 --> 00:18:49,253 ‪ええと だから‬ ‪適切なウソの説明です‬ 362 00:18:49,336 --> 00:18:51,713 ‪(九郎)会長さんには‬ ‪アリバイがあるというし‬ 363 00:18:51,797 --> 00:18:53,048 ‪そう簡単には‬ 364 00:18:53,132 --> 00:18:56,093 ‪父親を犯人とする解決は‬ ‪浮かばないだろう‬ 365 00:18:56,176 --> 00:18:57,261 ‪(琴子)恐らく‬ 366 00:18:57,344 --> 00:19:01,014 ‪私があらかじめ用意した‬ ‪適切なウソの解決に導く作業が‬ 367 00:19:01,098 --> 00:19:02,683 ‪必要になりますね‬ 368 00:19:02,766 --> 00:19:04,268 ‪手間ばかり増えますよ‬ 369 00:19:04,351 --> 00:19:07,479 ‪僕のくだんの能力で‬ ‪未来を決定すれば‬ 370 00:19:07,563 --> 00:19:10,774 ‪目的は確実に‬ ‪達成できるだろうが‬ 371 00:19:10,858 --> 00:19:14,444 ‪決定できる程度に信じられる‬ ‪解決は必要だからな‬ 372 00:19:15,320 --> 00:19:18,949 ‪というか 身内の殺人の話に‬ ‪部外者がいたら‬ 373 00:19:19,032 --> 00:19:21,201 ‪解答を出しにくくさせないか?‬ 374 00:19:21,285 --> 00:19:23,453 ‪(琴子)‬ ‪私も そうただしたんですが…‬ 375 00:19:23,537 --> 00:19:24,788 ‪(剛一)部外者がいれば‬ 376 00:19:24,872 --> 00:19:28,667 ‪これが私の冗談ではないと‬ ‪思わざるをえないだろう‬ 377 00:19:28,750 --> 00:19:30,085 ‪(琴子)ですって‬ 378 00:19:30,169 --> 00:19:34,006 ‪私を どこまでもいいように‬ ‪利用する気なんですよ‬ 379 00:19:35,173 --> 00:19:37,009 ‪交代です 先輩‬ 380 00:19:37,092 --> 00:19:38,844 ‪(九郎)これは もう取れないぞ‬ 381 00:19:38,927 --> 00:19:42,472 ‪(琴子)9月3日の正午に‬ ‪代表者をホテルに集め‬ 382 00:19:42,556 --> 00:19:44,600 ‪課題への解答を求めるそうです‬ 383 00:19:44,683 --> 00:19:49,730 ‪ただし 最終的な解答を聞くのは‬ ‪翌 9月4日の正午から‬ 384 00:19:49,813 --> 00:19:53,525 ‪それまでに集まった者で‬ ‪議論や情報交換をさせ‬ 385 00:19:53,609 --> 00:19:55,360 ‪解答の修正を行います‬ 386 00:19:55,444 --> 00:19:58,614 ‪(九郎)‬ ‪嫌な集まりになりそうだな‬ 387 00:19:58,697 --> 00:20:01,408 ‪(琴子)九郎先輩も‬ ‪その場にいることになるんですよ‬ 388 00:20:01,491 --> 00:20:03,827 ‪(九郎)‬ ‪その日はバイトが入ってるなあ‬ 389 00:20:03,911 --> 00:20:05,829 ‪(琴子)だから 今から断れ!‬ 390 00:20:05,913 --> 00:20:07,080 ‪(琴子)しかたない‬ 391 00:20:07,164 --> 00:20:09,499 ‪先輩のやる気を‬ ‪引き出してあげますか‬ 392 00:20:09,583 --> 00:20:12,961 私も少しは 申し訳なく思いますよ 393 00:20:13,045 --> 00:20:15,172 ‪なので 今日は 先輩のため‬ 394 00:20:15,255 --> 00:20:17,466 ‪色っぽい下着を‬ ‪つけてきてあげました‬ 395 00:20:17,549 --> 00:20:20,969 ‪なんとペイズリー柄ですよ‬ ‪まあ 見てください‬ 396 00:20:21,053 --> 00:20:22,179 ‪やめなさい!‬ 397 00:20:22,262 --> 00:20:24,473 ‪お前にそもそも色気はない‬ 398 00:20:24,556 --> 00:20:26,600 ‪ゼロに何を掛けてもゼロだ‬ 399 00:20:26,683 --> 00:20:29,311 ‪あと その柄の時点で‬ ‪色気を感じない‬ 400 00:20:29,394 --> 00:20:32,189 ‪(琴子)まあっ‬ ‪この淫靡(いんび)さが分からないとは!‬ 401 00:20:39,863 --> 00:20:43,033 ‪やりました!‬ ‪取れましたよ 先輩!‬ 402 00:20:43,867 --> 00:20:46,036 ‪(九郎)分かった 善処するよ‬ 403 00:20:46,119 --> 00:20:50,832 ‪妖怪や化け物のトラブルより‬ ‪人間相手のほうが疲れそうだが‬ 404 00:20:50,916 --> 00:20:52,250 ‪同感です‬ 405 00:20:52,334 --> 00:20:56,129 ‪とはいえ 算段は‬ ‪既についていますからご安心を‬ 406 00:20:56,213 --> 00:20:56,880 ‪ただ…‬ 407 00:20:56,964 --> 00:20:57,714 ‪ただ?‬ 408 00:20:57,798 --> 00:20:59,549 ‪いえ なんでも‬ 409 00:21:00,425 --> 00:21:05,639 ‪(琴子)会長は私をなぜ信用し‬ ‪あそこまで確信していたのか…‬ 410 00:21:07,391 --> 00:21:09,268 ‪(剛一)あらかじめ求めたとおり‬ 411 00:21:09,351 --> 00:21:14,272 ‪みんなには私が音無 澄さんを‬ ‪殺害したとする合理的な説明を‬ 412 00:21:14,356 --> 00:21:16,191 ‪提示してもらいたい‬ 413 00:21:17,109 --> 00:21:19,653 ‪最も優れた解答をした者に‬ 414 00:21:19,736 --> 00:21:23,031 ‪私の遺産相続について‬ ‪優先権を与える‬ 415 00:21:23,115 --> 00:21:27,411 ‪解答の評価は‬ ‪ここにいる岩永琴子さんが行う‬ 416 00:21:27,494 --> 00:21:32,290 ‪最終的な解答は明日 正午に‬ ‪ここで私がいる場で聞く‬ 417 00:21:32,374 --> 00:21:33,625 ‪それまでに琴子さんに‬ 418 00:21:33,709 --> 00:21:36,545 ‪何度 解答を‬ ‪提示してもらってもかまわず‬ 419 00:21:36,628 --> 00:21:39,548 ‪解答を‬ ‪変更 修正してもらってもいい‬ 420 00:21:39,631 --> 00:21:42,884 ‪(九郎)‬ ‪遺産相続で関係者を一堂に集める‬ 421 00:21:42,968 --> 00:21:46,888 ‪まるで 事件を引き起こすような‬ ‪舞台設定だな‬ 422 00:21:46,972 --> 00:21:48,807 ‪改めて紹介しよう‬ 423 00:21:48,890 --> 00:21:50,225 次男の晋(すすむ) 424 00:21:50,308 --> 00:21:53,061 音無グループの 常務取締役だ 425 00:21:53,145 --> 00:21:56,356 長女 薫子(かおるこ)の夫 藤沼耕也(ふじぬまこうや)君 426 00:21:56,440 --> 00:21:58,400 自身で起業した 中古車会社の 427 00:21:58,483 --> 00:21:59,818 社長をしている 428 00:21:59,901 --> 00:22:03,947 ‪薫子より耕也君のほうが‬ ‪頭も切れるし胆力もある‬ 429 00:22:04,448 --> 00:22:07,701 ‪彼のほうが課題に‬ ‪最良の答えを出せるだろう‬ 430 00:22:07,784 --> 00:22:11,455 長男 亮馬(りょうま)の娘で 私の孫である莉音(りおん)だ 431 00:22:11,538 --> 00:22:14,374 ‪亮馬は‬ ‪料理が一番のヤツだからな‬ 432 00:22:14,458 --> 00:22:17,210 ‪自分の店を休みにしてまでは‬ ‪やって来ない‬ 433 00:22:17,294 --> 00:22:20,797 ‪莉音にとって祖母の殺害は‬ ‪生まれる前のことだ‬ 434 00:22:20,881 --> 00:22:24,051 ‪だからこそ‬ ‪先入観なく事件を見られ‬ 435 00:22:24,134 --> 00:22:26,845 ‪みんなに違った視点を‬ ‪与えられるだろう‬ 436 00:22:26,928 --> 00:22:28,847 ‪以上の3名だ‬ 437 00:22:28,930 --> 00:22:31,808 ‪(晋)‬ ‪父さん 一体 何が目的だ?‬ 438 00:22:31,892 --> 00:22:33,435 ‪(剛一)言ってあるとおりだ‬ 439 00:22:33,518 --> 00:22:37,230 ‪お前たちに誰が母親を殺したか‬ ‪真実を知ってもらい‬ 440 00:22:37,314 --> 00:22:39,858 ‪その罪の報いは‬ ‪きちんと受けるものだと‬ 441 00:22:39,941 --> 00:22:41,193 ‪見せたいだけだ‬ 442 00:22:41,276 --> 00:22:43,737 ‪父さんに母さんを‬ ‪殺せたわけがない‬ 443 00:22:43,820 --> 00:22:45,364 ‪たとえ そうだとしても‬ 444 00:22:45,447 --> 00:22:47,783 ‪今更 それを裁く意味が‬ ‪どこにある?‬ 445 00:22:47,866 --> 00:22:48,992 ‪意味は お前たちが‬ 446 00:22:49,076 --> 00:22:52,245 ‪真実に至ったときに‬ ‪はっきり見えるだろう‬ 447 00:22:52,329 --> 00:22:54,873 ‪このお嬢さんを‬ ‪判定役にする理由は?‬ 448 00:22:54,956 --> 00:22:59,377 ‪琴子さんが最も真実を‬ ‪評価できる人物なのだよ‬ 449 00:22:59,461 --> 00:23:01,755 ‪岩永琴子と申します‬ 450 00:23:01,838 --> 00:23:04,716 ‪後ろに控えているのが 桜川(さくらがわ)九郎‬ 451 00:23:04,800 --> 00:23:09,054 ‪何分 私は右目が義眼‬ ‪左足が義足であるため‬ 452 00:23:09,137 --> 00:23:11,056 ‪万一のときの介添えとして‬ 453 00:23:11,139 --> 00:23:13,725 ‪桜川が同席する‬ ‪許可を頂いております‬ 454 00:23:14,309 --> 00:23:16,812 ‪私も桜川も‬ ‪ここで見聞きした内容は‬ 455 00:23:16,895 --> 00:23:18,522 ‪一切 口外いたしません‬ 456 00:23:19,106 --> 00:23:20,649 ‪この2日 ご安心のうえ‬ 457 00:23:20,732 --> 00:23:23,110 ‪話し合われ‬ ‪ご解答をお寄せください‬ 458 00:23:23,610 --> 00:23:28,573 ‪私は音無会長の望まれるまま‬ ‪真実と秩序に鑑みて‬ 459 00:23:28,657 --> 00:23:31,785 ‪公正に皆様の解答を‬ ‪評価させていただきます‬ 460 00:23:31,868 --> 00:23:33,912 ‪(剛一)そういう次第だ‬ 461 00:23:33,995 --> 00:23:36,581 ‪明日の解答を楽しみにしている‬ 462 00:23:36,665 --> 00:23:39,459 ‪では もう一度 言っておこうか‬ 463 00:23:39,543 --> 00:23:44,548 ‪23年前 私は澄さんを殺した‬ ‪私が犯人だ‬ 464 00:23:44,631 --> 00:23:47,759 ‪その真実を‬ ‪つまびらかにしてほしい‬ 465 00:23:51,054 --> 00:23:53,056 ♪~ 466 00:24:59,039 --> 00:25:01,041 ~♪