1 00:00:01,334 --> 00:00:06,339 {\an8}♪~ 2 00:01:09,986 --> 00:01:14,991 {\an8}~♪ 3 00:01:43,937 --> 00:01:46,648 (ヴィクトール) 屋敷を取り巻く ぶどう畑は 4 00:01:46,731 --> 00:01:48,483 私のワイン学校 5 00:01:48,566 --> 00:01:52,529 先生は父の代からの使用人 リベロだった 6 00:01:54,489 --> 00:01:56,533 リベロが教えてくれたことは 7 00:01:56,616 --> 00:02:00,286 風や 土や ぶどうの匂いと一緒に 8 00:02:00,370 --> 00:02:03,665 何もかも はっきり 思い出すことができる 9 00:02:03,748 --> 00:02:06,209 そしてリベロは よくこう言ったものだ… 10 00:02:08,002 --> 00:02:10,213 (リベロ)いいですか ヴィクトールお坊ちゃん 11 00:02:10,296 --> 00:02:15,218 (リベロ)ぶどうの木は 女の子みたいに気難しいんですよ 12 00:02:17,345 --> 00:02:19,389 (ヴィクトール)そのとおりだった 13 00:02:19,472 --> 00:02:23,685 太陽が照りすぎても少なすぎても いい実はつけない 14 00:02:23,768 --> 00:02:26,729 寒さに強いが霜には弱い 15 00:02:27,397 --> 00:02:31,985 5月の遅霜には 徹夜で火をたいたものだ 16 00:02:35,321 --> 00:02:36,656 (幼いヴィクトール)ハァ~ 17 00:02:39,158 --> 00:02:42,579 (ヴィクトール)大切なのは 摘み入れ時期の判断だ 18 00:02:42,662 --> 00:02:46,332 早すぎては糖分不足で 良いワインにはならない 19 00:02:46,416 --> 00:02:49,377 遅すぎては香りがなくなる 20 00:02:49,460 --> 00:02:52,422 リベロは これをよく心得ていた 21 00:02:52,505 --> 00:02:56,968 勝負は 木が果実に 栄養を送らなくなる その瞬間です 22 00:02:57,051 --> 00:03:00,138 半日の遅れが決定的になるのです 23 00:03:01,264 --> 00:03:03,808 (幼いヴィクトール) この色の時 摘むんだね! 24 00:03:07,478 --> 00:03:08,730 う~ん 25 00:03:09,439 --> 00:03:12,442 (ヴィクトール) 全ては天候次第だった 26 00:03:12,525 --> 00:03:17,363 収穫直前のぶどうをひょうが襲い 全滅させたこともあった 27 00:03:17,447 --> 00:03:22,869 (遠雷の音) 28 00:03:24,495 --> 00:03:28,416 ワインの出来は 神のおぼしめし次第です 29 00:03:28,499 --> 00:03:30,335 (ヴィクトール)しかし 神は 30 00:03:30,418 --> 00:03:34,672 屋敷の横の畑のぶどうに 奇跡を起こされた 31 00:03:34,756 --> 00:03:39,010 戦争のさなか 1944年… 32 00:03:49,312 --> 00:03:50,146 ああっ! 33 00:03:51,648 --> 00:03:52,649 あっ… 34 00:03:52,732 --> 00:03:54,359 最高です 35 00:03:54,442 --> 00:03:57,320 最高のワインです ヴィクトールお坊ちゃん 36 00:03:57,403 --> 00:03:59,155 (幼いヴィクトール) やったな リベロ! 37 00:03:59,989 --> 00:04:01,407 (ヴィクトール)神は それ以来 38 00:04:01,491 --> 00:04:04,869 あのような恩恵を 与えてはくださらなかった… 39 00:04:08,247 --> 00:04:10,166 (電気をつける音) (マルグリット)ヴィクトール? 40 00:04:12,001 --> 00:04:14,545 (マルグリット) 物音がしたものだから… 41 00:04:14,629 --> 00:04:16,422 ノックしても返事はないし 42 00:04:16,506 --> 00:04:18,925 (ヴィクトール) ハハハハ これは失礼 43 00:04:19,008 --> 00:04:20,677 寝酒を所望したくなってね 44 00:04:23,554 --> 00:04:24,847 君もどうかね? 45 00:04:24,931 --> 00:04:26,599 いえ 結構よ 46 00:04:26,683 --> 00:04:28,851 大学のワイン醸造研究で 47 00:04:28,935 --> 00:04:31,312 嫌というほど ワインを口にしてたでしょ? 48 00:04:31,396 --> 00:04:35,525 今 オリゾン社に出す計画書を まとめながら 思い出してたわ 49 00:04:35,608 --> 00:04:36,734 ん… 50 00:04:37,694 --> 00:04:39,112 -(マルグリット)ヴィクトール -(ヴィクトール)ん? 51 00:04:39,904 --> 00:04:43,241 建物拡張の件で リベロが反対してるようだけど 52 00:04:44,200 --> 00:04:47,662 その計画で潰される畑は 我が家の家宝— 53 00:04:47,745 --> 00:04:50,915 1944年ものを生んだ畑だ 54 00:04:50,999 --> 00:04:53,668 思い入れもある だが… 55 00:04:53,751 --> 00:04:56,963 うちがもう そんなことを 言ってられる状況にないのは 56 00:04:57,046 --> 00:04:59,549 リベロもよく分かっているさ 57 00:04:59,632 --> 00:05:00,550 あなたは? 58 00:05:02,510 --> 00:05:03,845 心配ないよ 59 00:05:03,928 --> 00:05:06,973 私は44年ものを 超えようとするあまり 60 00:05:07,056 --> 00:05:09,058 利益を度外視しすぎた 61 00:05:09,142 --> 00:05:12,061 あれを超えるワインは 二度と現れない 62 00:05:12,145 --> 00:05:16,065 いかなる偉大なワインも あの44年ものには ひれ伏す 63 00:05:16,899 --> 00:05:18,860 当シャトーの再生計画は 64 00:05:18,943 --> 00:05:22,071 君の若い感性で どんどん進めてくれ 65 00:05:22,155 --> 00:05:23,990 ありがとう ヴィクトール 66 00:05:24,073 --> 00:05:26,659 でも“若い感性”と おっしゃるけど… 67 00:05:26,743 --> 00:05:30,663 ここには廃止すべき 古くて不経済なものが多すぎるわ 68 00:05:33,333 --> 00:05:36,669 (ヴィクトール)その中には リベロも含まれているんだね 69 00:05:40,631 --> 00:05:42,133 (マルグリット)おやすみなさい 70 00:05:42,842 --> 00:05:43,760 (ドアの閉まる音) 71 00:05:43,843 --> 00:05:45,303 (鳥のさえずり) 72 00:05:45,386 --> 00:05:48,639 (リベロ)ヴィクトール様 朝食でございます 73 00:05:49,515 --> 00:05:51,934 ああ… あともう少しだ 74 00:05:52,727 --> 00:05:54,937 終わりしだい行くよ リベロ 75 00:05:58,483 --> 00:05:59,692 マルグリットは? 76 00:05:59,776 --> 00:06:02,236 奥様は もうお済みになって 77 00:06:02,320 --> 00:06:04,697 ご自分のお部屋に お戻りになりました 78 00:06:05,281 --> 00:06:07,116 ん そうか… 79 00:06:10,244 --> 00:06:11,454 リベロ 80 00:06:11,537 --> 00:06:15,166 お前にはマルグリットのやることが 気に入らないかもしれんが 81 00:06:15,249 --> 00:06:17,877 彼女が正しいことも多い 82 00:06:19,003 --> 00:06:21,464 それはよく分かっております 83 00:06:21,547 --> 00:06:24,926 (ヴィクトール)リベロ 世の中は常に変化している 84 00:06:25,009 --> 00:06:29,472 生き残るには 少しずつ自分を 変えていかなければならないんだ 85 00:06:37,772 --> 00:06:39,357 (リベロ)ブーツを 用意いたしましょうか? 86 00:06:39,357 --> 00:06:40,191 (リベロ)ブーツを 用意いたしましょうか? 87 00:06:39,357 --> 00:06:40,191 {\an8}(ヴィクトール)ん? 88 00:06:40,274 --> 00:06:43,027 畑を見回りになるのでは? 89 00:06:44,404 --> 00:06:46,197 何でもお見通しだな 90 00:06:46,280 --> 00:06:47,824 旦那様のことは 91 00:06:47,907 --> 00:06:51,244 お生まれになる前から 存じ上げております 92 00:06:54,997 --> 00:06:57,458 やはり ここを潰されるのですか 93 00:06:57,542 --> 00:06:59,752 -(ヴィクトール)ん… -(リベロ)奇跡の名酒 94 00:06:59,836 --> 00:07:04,966 シャトー・ラジョンシュ1944年を 生み出した この畑を… 95 00:07:06,342 --> 00:07:07,218 ん… 96 00:07:07,301 --> 00:07:10,888 神のおぼしめし次第の 伝統的ワイン造りの時代は 97 00:07:10,972 --> 00:07:12,723 終わったんだよ… 98 00:07:18,479 --> 00:07:21,649 (キーボードをたたく音) 99 00:07:21,732 --> 00:07:25,111 (リベロ)奥様 夕食の時間でございます 100 00:07:25,194 --> 00:07:27,280 旦那様がお待ちです 101 00:07:27,363 --> 00:07:29,365 (マルグリット) もう そんな時間なの? 102 00:07:29,449 --> 00:07:30,449 後にするわ 103 00:07:31,159 --> 00:07:33,077 先代までの奥様は 104 00:07:33,161 --> 00:07:36,372 食卓で旦那様を お迎えになりましたが… 105 00:07:38,541 --> 00:07:42,461 私はこれまでの 羽飾りのような奥様とは違うのよ 106 00:07:43,963 --> 00:07:47,675 あなたがこだわっている 昔ながらのワイン造り 107 00:07:47,758 --> 00:07:49,677 それをこのまま続けたら 108 00:07:49,760 --> 00:07:52,430 あと3年で うちは 間違いなく破産するわ 109 00:07:53,264 --> 00:07:57,226 その間に44年もののような 奇跡でも起こらなければね 110 00:07:57,310 --> 00:07:59,979 そんな無謀な賭け できるわけないでしょ? 111 00:08:00,605 --> 00:08:01,439 ハァ~ 112 00:08:02,398 --> 00:08:06,277 あなたとヴィクトールの自慢の 44年ものみたいなワイン 113 00:08:06,360 --> 00:08:08,988 そんな味が分かる人は 万に1人よ 114 00:08:09,071 --> 00:08:12,992 そんな少数のために 休みもなく朝から晩まで 115 00:08:13,075 --> 00:08:16,287 手間のかかる超高級ワインを 造るより 116 00:08:16,370 --> 00:08:19,999 8割を満足させる 科学的ワイン造りを目指す 117 00:08:20,082 --> 00:08:23,002 それが合理的な考え方と いうものでしょ? 118 00:08:24,795 --> 00:08:26,005 何とか言いなさいよ 119 00:08:26,964 --> 00:08:30,426 奥様も このところ 大変お忙しいご様子 120 00:08:30,509 --> 00:08:35,056 しっかり栄養を取りませんと お体に障ります 121 00:08:42,355 --> 00:08:44,023 (キートン)ん~ うまい! 122 00:08:44,106 --> 00:08:45,316 (店主)だろ? 123 00:08:45,399 --> 00:08:49,278 うまいブルゴーニュワインを ブルゴーニュで飲めば なおさらさ 124 00:08:49,362 --> 00:08:51,572 いやあ 本当 そのとおりです 125 00:08:51,656 --> 00:08:54,242 何だか この土地の風土と文化が 126 00:08:54,325 --> 00:08:56,744 体に染み込んでくるような 気がします 127 00:08:56,827 --> 00:08:59,872 (店主)ハハハハ… なら 畑へ行って 128 00:08:59,956 --> 00:09:01,999 そこのぶどうでできた ワインを飲めば 129 00:09:02,083 --> 00:09:04,418 もっと深く味わえるだろうよ 130 00:09:04,502 --> 00:09:05,753 なるほど… 131 00:09:05,836 --> 00:09:07,046 (店主)もう1杯いくかい? 132 00:09:07,129 --> 00:09:09,590 じゃあ シャトー・ラジョンシュを ボトルで 133 00:09:11,676 --> 00:09:12,969 (店主)そうかい… 134 00:09:13,052 --> 00:09:15,596 シャトー・ラジョンシュへ 行くのかい 135 00:09:15,680 --> 00:09:18,683 あそこはロマネ・コンティや シャンベルタンと並ぶ— 136 00:09:18,766 --> 00:09:22,353 ブルゴーニュで最高級の 赤ワインのブランドだってことは 137 00:09:22,436 --> 00:09:23,646 あんたも知ってるだろ? 138 00:09:23,729 --> 00:09:24,605 (キートン)ええ 139 00:09:25,314 --> 00:09:28,234 でもなあ 何たって あそこの傑作は 140 00:09:28,317 --> 00:09:31,904 戦後 売り出された 1944年ものなんだ 141 00:09:31,988 --> 00:09:33,030 へえ… 142 00:09:34,073 --> 00:09:36,993 それには すごい話があってな 143 00:09:37,076 --> 00:09:39,870 1944年10月 144 00:09:37,076 --> 00:09:39,870 {\an8}(銃声) 145 00:09:39,870 --> 00:09:39,954 {\an8}(銃声) 146 00:09:39,954 --> 00:09:43,833 {\an8}(銃声) 147 00:09:39,954 --> 00:09:43,833 あの年は ぶどうの当たり年に なるはずだったんだが… 148 00:09:43,916 --> 00:09:46,002 (爆発音) 149 00:09:46,085 --> 00:09:48,713 (店主)ここら一帯を 占領していたドイツ軍に 150 00:09:48,796 --> 00:09:51,632 連合軍が総攻撃を仕掛けてきたんだ 151 00:09:52,258 --> 00:09:54,635 接収され ドイツ軍の 司令部になっていた— 152 00:09:54,719 --> 00:09:57,555 ラジョンシュの館の周りは 戦場になった 153 00:09:58,389 --> 00:10:00,808 ぶどう摘みは半日が勝負っていうが 154 00:10:00,891 --> 00:10:03,144 避難した地下の窓から 見えるぶどうに 155 00:10:03,227 --> 00:10:05,605 使用人が気がついた 156 00:10:06,272 --> 00:10:08,607 見てください あのぶどうの色 157 00:10:08,691 --> 00:10:11,110 今 摘めば 必ずいいワインができます 158 00:10:11,193 --> 00:10:12,611 (幼いヴィクトール)リベロ… 159 00:10:12,695 --> 00:10:14,113 (爆発音) 160 00:10:14,822 --> 00:10:18,117 (店主)ワインより命 普通はそうだろ? 161 00:10:18,784 --> 00:10:19,660 (爆発音) 162 00:10:20,328 --> 00:10:23,623 (店主)ところが 館の息子と使用人は 163 00:10:23,706 --> 00:10:27,084 弾の飛び交う中で摘んだんだよ 164 00:10:30,212 --> 00:10:31,922 坊ちゃん 大丈夫ですか? 165 00:10:32,006 --> 00:10:33,299 (幼いヴィクトール)う… うん! 166 00:10:35,551 --> 00:10:38,179 (店主)ドイツ野郎は 翌日 退却したが 167 00:10:38,262 --> 00:10:40,931 その後1週間 雨が続いた 168 00:10:41,015 --> 00:10:43,434 ぬれたぶどうじゃ ワインは造れない 169 00:10:43,517 --> 00:10:44,810 つまり他の畑は 170 00:10:44,894 --> 00:10:47,480 摘み取りのチャンスを 逃しちまったんだ 171 00:10:48,356 --> 00:10:52,318 結局 あの辺りで まともな1944年ものは 172 00:10:52,401 --> 00:10:55,863 その2人が摘んだ1たる 500本だけだったんだ 173 00:10:55,946 --> 00:10:57,657 奪い合いだったでしょうね 174 00:10:57,740 --> 00:10:58,616 ああ 175 00:10:58,699 --> 00:11:00,826 その上 神様の気まぐれか 176 00:11:00,910 --> 00:11:04,455 シャトー・ラジョンシュの中でも 最高の出来だったんだ 177 00:11:04,538 --> 00:11:07,958 アメリカの富豪なんか 1本10万フラン 出したそうだ 178 00:11:08,042 --> 00:11:09,377 ヒュ~! 179 00:11:09,460 --> 00:11:11,420 じゃあ もうかりましたね 180 00:11:11,504 --> 00:11:13,422 その時はな 181 00:11:13,506 --> 00:11:16,008 しかし 貴族の商法というか 182 00:11:16,092 --> 00:11:19,428 いい年はいいが ここんとこ 赤字続きだそうだ 183 00:11:19,512 --> 00:11:20,930 なるほどね~ 184 00:11:21,013 --> 00:11:22,932 -(店主)ところがだ! -(キートン)うん 185 00:11:23,015 --> 00:11:29,063 館主はその1944年ものを1本 売らずに残してあるってんだ 186 00:11:29,146 --> 00:11:30,481 どうしてまた? 187 00:11:30,564 --> 00:11:31,899 さあな~ 188 00:11:31,982 --> 00:11:35,152 置けば置くほど うまくなるワインだからな 189 00:11:35,236 --> 00:11:36,821 今 オークションにかければ 190 00:11:36,904 --> 00:11:39,949 100万 いや 1000万フランだって おかしくないところだ 191 00:11:40,032 --> 00:11:41,450 約2億円? 192 00:11:42,076 --> 00:11:44,537 しかし近々 その1本を抵当に 193 00:11:44,620 --> 00:11:48,457 世界的ウイスキー会社の オリゾン社から融資を受けるそうだ 194 00:11:49,125 --> 00:11:50,292 オリゾン社はボトルを 195 00:11:50,376 --> 00:11:54,463 パリのショールームにでも 飾るつもりだろうぜ ハハハ… 196 00:11:54,547 --> 00:11:55,923 まあ しかし 197 00:11:56,006 --> 00:11:59,218 1000万フランのワインってのは どんな味かねえ 198 00:11:59,301 --> 00:12:00,136 (キートン)そうですねえ 199 00:12:00,219 --> 00:12:03,639 緊張して のどを 通らないんじゃないかな 200 00:12:03,722 --> 00:12:04,557 ん? 201 00:12:06,308 --> 00:12:07,143 ああ? 202 00:12:07,226 --> 00:12:08,602 あの… 203 00:12:09,311 --> 00:12:10,146 カードで 204 00:12:10,229 --> 00:12:11,605 (レジの音) 205 00:12:17,528 --> 00:12:18,988 ん? 206 00:12:22,533 --> 00:12:25,453 (口の中でワインを転がす音) 207 00:12:25,536 --> 00:12:27,455 ふん… 208 00:12:28,247 --> 00:12:30,458 (ヴィクトール) シャトー・ラジョンシュへ ようこそ 209 00:12:30,541 --> 00:12:31,959 (キートン)おっ… 210 00:12:33,127 --> 00:12:34,003 ああ… 211 00:12:34,086 --> 00:12:38,132 私 ロイズ保険組合から来た キートンです 212 00:12:38,215 --> 00:12:40,134 オリゾン社が 今度 引き取るワインに 213 00:12:40,217 --> 00:12:42,011 保険をかける予定でして 214 00:12:42,094 --> 00:12:44,513 ああ 聞いてますよ 215 00:12:46,807 --> 00:12:49,727 (マルグリット)ここは アルコール発酵室です 216 00:12:49,810 --> 00:12:53,773 最初に この槽で 果皮も種子も一緒に発酵させます 217 00:12:53,856 --> 00:12:55,024 へえ~ 218 00:12:55,107 --> 00:12:57,276 昔ながらのオーク材のたるですね 219 00:12:57,359 --> 00:12:58,486 (マルグリット)ええ 220 00:12:58,569 --> 00:13:02,239 でも来季から 当シャトーも ステンレス槽へ移行しますのよ 221 00:13:02,948 --> 00:13:05,159 ここはアルコール発酵を 終えたワインを 222 00:13:05,242 --> 00:13:08,287 乳酸発酵させる熟成室です 223 00:13:08,370 --> 00:13:10,873 こちらも樹脂のタンクになります 224 00:13:10,956 --> 00:13:13,292 なぜ 木のたるじゃ いけないんですか? 225 00:13:14,210 --> 00:13:17,129 さまざまなニーズに応えるためです 226 00:13:17,213 --> 00:13:19,673 温度と酸素量を コントロールできるタンクは 227 00:13:19,757 --> 00:13:22,968 それを可能にし 熟成時間も節約します 228 00:13:23,802 --> 00:13:26,222 神のおぼしめし次第だった ワインの出来も 229 00:13:26,305 --> 00:13:29,517 これからは 科学の力で安定生産です 230 00:13:29,600 --> 00:13:30,559 (キートン)じゃあ 231 00:13:30,643 --> 00:13:34,063 何年かに一度 偶然 できる大傑作ってのは 232 00:13:34,146 --> 00:13:35,731 なくなってしまいますね 233 00:13:37,149 --> 00:13:41,070 例えば お宅の 1944年もののような… 234 00:13:42,905 --> 00:13:44,823 (マルグリット) それではキートンさん 235 00:13:44,907 --> 00:13:49,328 わたくし 今夜の調印式の 準備がありますので これで 236 00:13:49,411 --> 00:13:51,831 ヴィクトール あとお願いね 237 00:13:55,543 --> 00:13:58,295 (ヴィクトール)彼女の言う 科学的ワイン造りは 238 00:13:58,379 --> 00:14:01,674 実は親への愛情から 生まれたものなのです 239 00:14:01,757 --> 00:14:04,552 彼女の家もワイン農家でした 240 00:14:06,053 --> 00:14:09,014 厳しい畑仕事は休みがありません 241 00:14:09,098 --> 00:14:13,143 バカンスひとつ できない両親に 少しでも楽をさせようと 242 00:14:13,227 --> 00:14:16,522 一人娘のマルグリットが 打ち込んだのが 243 00:14:16,605 --> 00:14:19,108 科学的ワイン造りなのです 244 00:14:19,191 --> 00:14:21,193 (キートン)奥さんのご両親は? 245 00:14:21,277 --> 00:14:22,861 (ヴィクトール)亡くなりました 246 00:14:22,945 --> 00:14:25,114 やはり 仕事の過労からです 247 00:14:25,197 --> 00:14:29,493 そして優れたワインを 造ってきたことが土地の価格を上げ 248 00:14:29,577 --> 00:14:33,873 私が肩代わりしなければ 相続できないというところでした 249 00:14:35,291 --> 00:14:38,127 今や彼女にとって この計画は 250 00:14:38,210 --> 00:14:41,589 “復讐(ふくしゅう)のワイン造り”なのかも しれません 251 00:14:43,799 --> 00:14:44,884 (キートン)これですか 252 00:14:45,593 --> 00:14:49,930 世界にただ1本の シャトー・ラジョンシュ 1944年もの 253 00:14:50,014 --> 00:14:51,140 キートンさん 254 00:14:51,223 --> 00:14:53,475 どうぞ 手に取って 確かめてください 255 00:14:53,559 --> 00:14:55,936 えっ… いやあ 落としたら大変です 256 00:14:56,020 --> 00:14:59,440 しかし… よく残しておかれましたね 257 00:14:59,523 --> 00:15:01,817 実は このリベロと 258 00:15:01,900 --> 00:15:04,778 神の助けが必要なほど 苦しい目に遭ったら 259 00:15:04,862 --> 00:15:07,948 2人で飲もうと決めていたんです 260 00:15:08,824 --> 00:15:14,121 しかし そうせずに なんとかやってこれたのですが… 261 00:15:24,923 --> 00:15:28,636 (マルグリット)というわけで この建物は取り壊し 262 00:15:28,719 --> 00:15:32,973 地下には大醸造所 その上にはホテルを建設します 263 00:15:33,057 --> 00:15:36,060 横庭のぶどう畑は廃止しますが 264 00:15:36,143 --> 00:15:38,937 原料のぶどうの不足は 心配ありません 265 00:15:39,021 --> 00:15:40,564 当シャトーのブランドで 266 00:15:40,648 --> 00:15:43,984 大量に安定した品質のワインを 販売するため 267 00:15:44,068 --> 00:15:47,446 近くの畑のワインを混合し ブレンドするのです 268 00:15:47,529 --> 00:15:50,991 以上が 御社の融資を 受けることを前提とした— 269 00:15:51,659 --> 00:15:54,495 当シャトーの事業計画の概要です 270 00:15:54,578 --> 00:15:56,497 (拍手) 271 00:15:56,580 --> 00:15:58,499 (オリゾン社の社長) 大変 結構ですな 272 00:15:58,582 --> 00:16:01,585 (司会)調印式 ならびに ワインの引き渡し式は 273 00:16:01,669 --> 00:16:04,088 今夜のパーティーで行います 274 00:16:09,635 --> 00:16:11,095 (リベロ)ヴィクトール様 275 00:16:11,178 --> 00:16:12,012 (ヴィクトール)ん? 276 00:16:14,390 --> 00:16:15,516 何だね? 277 00:16:15,599 --> 00:16:20,020 今夜のパーティーを 最後の仕事とさせていただきます 278 00:16:22,064 --> 00:16:23,023 リベロ… 279 00:16:31,740 --> 00:16:33,325 ん… 280 00:16:36,370 --> 00:16:37,371 あ… 281 00:16:39,123 --> 00:16:43,377 ここは あの44年ものの畑なんです 282 00:16:43,460 --> 00:16:47,506 あのワインを手放さずにいた理由は もう1つあるんです 283 00:16:47,589 --> 00:16:53,053 あれには リベロと私の 命が懸かっていました… 284 00:16:53,971 --> 00:16:55,764 戦況が逆転し 285 00:16:55,848 --> 00:16:58,684 ドイツ兵が私たちの 新酒の話を聞きつけて 286 00:16:58,767 --> 00:17:00,019 戻ってきたのです 287 00:17:00,686 --> 00:17:01,562 (ドイツ兵)えいっ! 288 00:17:01,645 --> 00:17:03,605 (ヴィクトール)私とリベロは たると共に 289 00:17:03,689 --> 00:17:05,399 干し草の中に潜んでいました 290 00:17:05,482 --> 00:17:07,526 -(ドイツ兵)どこだ! 出てこい! -(ドイツ兵)隠れても無駄だ! 291 00:17:07,609 --> 00:17:08,485 えいっ! 292 00:17:11,488 --> 00:17:12,781 あっ… 293 00:17:16,869 --> 00:17:18,954 (ヴィクトール) 彼は声ひとつ上げずに 294 00:17:19,038 --> 00:17:21,290 私とワインを守ったのです 295 00:17:21,373 --> 00:17:22,958 私は… 296 00:17:23,041 --> 00:17:26,795 私は彼が命を懸けた全てを 売ろうとしている… 297 00:17:29,715 --> 00:17:32,301 (司会)皆さん 宴も たけなわですが 298 00:17:32,384 --> 00:17:33,594 ここで いよいよ 299 00:17:33,677 --> 00:17:37,806 当シャトー・ラジョンシュ 1944年ものの入場です 300 00:17:37,890 --> 00:17:41,310 (拍手) 301 00:17:41,393 --> 00:17:43,312 (来賓たち)おお~ 302 00:17:43,395 --> 00:17:46,315 (拍手) 303 00:17:55,532 --> 00:17:56,784 (司会)それでは いよいよ 304 00:17:56,867 --> 00:17:59,828 シャトー・ラジョンシュ館長 ヴィクトール・シャンボン氏より 305 00:17:59,912 --> 00:18:02,831 オリゾン社 社長 ジャン・ミシェル・クエフ氏に 306 00:18:02,915 --> 00:18:05,334 ボトルの引き渡しであります 307 00:18:05,417 --> 00:18:09,838 (拍手) (シャッター音) 308 00:18:54,424 --> 00:18:56,677 (キートン)本当にきれいですね 309 00:18:57,344 --> 00:18:58,804 コートドール 310 00:18:58,887 --> 00:19:02,683 “黄金の丘”という名は まさに今を指してるんですね 311 00:19:04,059 --> 00:19:06,645 ここ… 私の両親の畑なの 312 00:19:08,230 --> 00:19:10,899 あの木のある石垣までがそう 313 00:19:12,067 --> 00:19:15,404 “ラジョンシュの44年ものを 超えたい” 314 00:19:15,487 --> 00:19:19,700 それが この畑で働く父の 口癖だった 315 00:19:19,783 --> 00:19:21,410 だから私… 316 00:19:21,493 --> 00:19:24,788 あの1944年ものが憎かった 317 00:19:25,414 --> 00:19:28,083 両親の死と 切り離すことができなかった 318 00:19:28,166 --> 00:19:33,630 古い醸造法も横の畑も リベロも そして… 319 00:19:34,256 --> 00:19:36,466 ヴィクトールさえ憎んで… 320 00:19:38,176 --> 00:19:39,011 ハァ… 321 00:19:39,094 --> 00:19:41,180 でもダメなのは私のほう 322 00:19:41,263 --> 00:19:46,184 両親が亡くなってから この畑に来たこともなかった 323 00:19:47,311 --> 00:19:49,938 それなのに 昔のまま… 324 00:19:50,022 --> 00:19:53,692 子供のころ 見た畑 そのままなの… 325 00:19:54,359 --> 00:19:59,114 ヴィクトールさんとリベロさんが お父さんがそうしていたように 326 00:19:59,198 --> 00:20:01,700 ちゃんと畑を見ていたんですね 327 00:20:04,786 --> 00:20:07,748 (マルグリット)私 両親に 何もしてあげられなかった 328 00:20:09,458 --> 00:20:11,210 リベロ 行くのか? 329 00:20:11,293 --> 00:20:13,003 はい… 330 00:20:13,086 --> 00:20:16,089 しかし 最後に ワインを1杯というのも 331 00:20:16,173 --> 00:20:17,758 一興と存じます 332 00:20:20,928 --> 00:20:22,262 リベロ… 333 00:20:27,851 --> 00:20:30,938 んん? こ… これは? 334 00:20:31,021 --> 00:20:34,358 (リベロ)旦那様が必ずや ああなさると思いまして 335 00:20:34,441 --> 00:20:36,443 瓶をすり替えておきました 336 00:20:37,152 --> 00:20:38,862 旦那様のなさることは 337 00:20:38,946 --> 00:20:42,449 お生まれになる前から 存じ上げております 338 00:20:43,575 --> 00:20:44,993 ハァ… 339 00:20:45,077 --> 00:20:47,913 すまなかった リベロ 340 00:20:47,996 --> 00:20:50,958 私は… 私は… 341 00:20:57,297 --> 00:21:01,510 これは シャトー・ラジョンシュ 1944年です 342 00:21:02,135 --> 00:21:05,180 マルグリットさんにこそ ぜひ飲んでほしいと 343 00:21:05,263 --> 00:21:06,556 リベロさんが 344 00:21:12,980 --> 00:21:14,398 これが… 345 00:21:14,481 --> 00:21:17,567 父とヴィクトールが 目指したワインなのね… 346 00:21:20,153 --> 00:21:21,571 キートンさん 347 00:21:21,655 --> 00:21:24,324 さっきから ひと口も飲まないんですね 348 00:21:24,408 --> 00:21:26,743 いやあ… 1000万フラン… 349 00:21:26,827 --> 00:21:29,037 あ いや… 緊張しちゃって… 350 00:21:50,475 --> 00:21:55,480 {\an8}♪~ 351 00:23:04,966 --> 00:23:09,971 {\an8}~♪ 352 00:23:12,557 --> 00:23:13,392 (ナレーション)人生 353 00:23:13,475 --> 00:23:17,062 時には運を天に 任せなければならない時もある 354 00:23:17,646 --> 00:23:19,189 それは 将来 355 00:23:19,272 --> 00:23:22,359 あるいは 命をも懸けた真剣勝負 356 00:23:23,443 --> 00:23:27,239 だが そんな場面でも 彼は強気にハッタリをかます 357 00:23:27,322 --> 00:23:29,991 まるでポーカーでも しているかのように 358 00:23:31,034 --> 00:23:33,912 次は何と言って 人々を煙に巻くのだろうか 359 00:23:35,163 --> 00:23:37,415 次回 “出口なし”