1 00:00:34,134 --> 00:00:37,638 (円香)いいよぉ~! 結女ちゃん いいっ! 2 00:00:37,638 --> 00:00:40,307 まさに地上に咲いた花火! 3 00:00:40,307 --> 00:00:42,809 今年の花火大会は大失敗だね! 4 00:00:42,809 --> 00:00:45,979 (結女)あの円香さん 落ち着いて。 5 00:00:45,979 --> 00:00:49,650 なぜなら~ みんな結女ちゃんを 見ちゃうからねっ! 6 00:00:49,650 --> 00:00:51,985 バカにしてます? 7 00:00:51,985 --> 00:00:54,988 う~ 素直な気持ちなのに。 8 00:00:54,988 --> 00:00:57,157 結女ちゃん かわいいよね竹真? 9 00:00:57,157 --> 00:01:00,661 (竹真)うぅ…。 あ 水斗くん来た。 10 00:01:00,661 --> 00:01:05,666 ♬~ 11 00:01:05,666 --> 00:01:08,001 んっ! 12 00:01:08,001 --> 00:01:11,505 どうどう? 水斗くん 結女ちゃんキレイでしょ~? 13 00:01:13,507 --> 00:01:16,009 しゃ しゃ…。 (円香/水斗)んっ? 14 00:01:16,009 --> 00:01:18,679 写真! 写真撮ってもいい!? 15 00:01:18,679 --> 00:01:22,015 (水斗)はぁ? (円香)オッケー! 撮ろう撮ろう! 16 00:01:22,015 --> 00:01:25,018 へっ? かわいく撮ってね 水斗くん。 17 00:01:25,018 --> 00:01:27,321 あ ちが 私じゃなくて…。 18 00:01:30,023 --> 00:01:32,459 はぁ? 19 00:01:32,459 --> 00:01:35,462 な なんで 私のパスワード知ってるのよ! 20 00:03:17,497 --> 00:03:20,200 (祭囃子) 21 00:03:20,200 --> 00:03:22,169 どうして一緒に来たの? 22 00:03:22,169 --> 00:03:25,672 こういう人混み 大嫌いなくせに。 23 00:03:25,672 --> 00:03:28,008 好きなヤツはいないだろ。 24 00:03:28,008 --> 00:03:32,279 毎年 円香さんに無理やり 連れてこられるんだよ。 25 00:03:32,279 --> 00:03:36,616 今はもう 抵抗するのを諦めてるだけだ。 26 00:03:36,616 --> 00:03:39,286 ふぅん。 君こそ。 27 00:03:39,286 --> 00:03:41,788 こういう人混みは苦手だろう。 28 00:03:41,788 --> 00:03:46,626 う… まあいい思い出はないわね。 29 00:03:46,626 --> 00:03:50,964 お待たせ~ トイレめっちゃ混んでて大変だった。 30 00:03:50,964 --> 00:03:53,633 そっちも 手 つないどいたら? 31 00:03:53,633 --> 00:03:55,635 はぐれたら面倒だよ。 32 00:03:55,635 --> 00:03:57,804 はぐれるほど子どもじゃないよ。 33 00:03:57,804 --> 00:04:00,707 万が一はぐれたら 勝手にかえ…。 34 00:04:03,343 --> 00:04:05,312 どういうつもりだ。 35 00:04:05,312 --> 00:04:07,848 きょうだいなら普通こうするのよ。 36 00:04:07,848 --> 00:04:12,519 はぁ? 弟が迷子になったら 姉の責任だもの。 37 00:04:12,519 --> 00:04:16,156 そのとおり~ いいこと言うね 結女ちゃん。 38 00:04:16,156 --> 00:04:19,659 誰が弟だ… 僕が兄だろう。 39 00:04:19,659 --> 00:04:23,363 別に~ それでもいいけど? 40 00:04:23,363 --> 00:04:29,002 妹が迷子になったら 兄の責任だよ? ニヒヒッ。 41 00:04:29,002 --> 00:04:32,439 わかったよ… つないでればいいんだろ。 42 00:04:32,439 --> 00:04:34,941 素直に言うこと聞けてえらい。 43 00:04:34,941 --> 00:04:36,943 うるさい。 44 00:04:36,943 --> 00:04:41,948 《昨日 大泣きしてから なんだか心が軽い…。 45 00:04:41,948 --> 00:04:46,286 余計に背負っていたものを 降ろせたというか…》 46 00:04:46,286 --> 00:04:48,288 (にぎやかな声) 47 00:04:48,288 --> 00:04:51,291 二人とも 何か食べたいものある? 48 00:04:51,291 --> 00:04:54,294 (円香)おばあちゃんから 軍資金もらってるんだから➡ 49 00:04:54,294 --> 00:04:56,630 遠慮なく使っていきな~。 50 00:04:56,630 --> 00:04:59,966 夜店って明らかに高いんだよな…。 51 00:04:59,966 --> 00:05:02,969 これならコンビニでも行けば って気分になる。 52 00:05:02,969 --> 00:05:04,971 (円香)心配ご無用! 53 00:05:04,971 --> 00:05:07,474 田舎なので 意外とコンビニがありません。 54 00:05:07,474 --> 00:05:09,476 ニヒヒッ。 55 00:05:09,476 --> 00:05:11,478 (円香)あっ 射的あるよ。 56 00:05:11,478 --> 00:05:14,815 竹真 やる? や やる…。 57 00:05:14,815 --> 00:05:19,152 (円香)よ~し お姉ちゃんと 一緒に大当たり狙おう! 58 00:05:19,152 --> 00:05:21,655 (2人)う う~ん…。 59 00:05:23,990 --> 00:05:25,992 (円香)ちょっと右かな…。 60 00:05:25,992 --> 00:05:27,994 《きょ きょうだいって➡ 61 00:05:27,994 --> 00:05:30,330 こんなに距離が近いものなの?》 62 00:05:30,330 --> 00:05:34,434 (円香)ほら 竹真 もっとしっかり狙って いくよ。 63 00:05:34,434 --> 00:05:36,937 (撃つ音) 64 00:05:36,937 --> 00:05:38,939 (円香)あ~ 残念~。 65 00:05:38,939 --> 00:05:40,941 あぁ…。 66 00:05:40,941 --> 00:05:43,810 (円香)う~ん このままでは終われないなぁ。 67 00:05:43,810 --> 00:05:47,781 というわけで 水斗くん! 竹真のかたき討ち よろしく! 68 00:05:47,781 --> 00:05:49,983 じゃあ 一回だけ。 69 00:05:53,153 --> 00:05:56,823 結女ちゃんもサポートしてね。 あ ね と し てっ。 70 00:05:56,823 --> 00:05:59,326 へっ? や でも…。 あれぇ? 71 00:05:59,326 --> 00:06:03,997 た ん な る 弟に 後ろから 抱きつくだけのことなのに➡ 72 00:06:03,997 --> 00:06:07,834 結女ちゃんは 何を気にしてるのかな~? 73 00:06:07,834 --> 00:06:11,471 なっ。 (抱きつく音) 74 00:06:11,471 --> 00:06:14,474 おい…。 こ こら こっち見るな! 75 00:06:14,474 --> 00:06:16,810 ちゃんと狙いなさい! 76 00:06:16,810 --> 00:06:18,812 ちょっと右にズレてない? 77 00:06:18,812 --> 00:06:20,814 そんなことないだろ。 78 00:06:20,814 --> 00:06:24,317 ズレてるわよ! うるさいな。 これでいいか? 79 00:06:24,317 --> 00:06:26,987 左に行きすぎ もっと右。 80 00:06:26,987 --> 00:06:29,322 そう もう少し…。 81 00:06:29,322 --> 00:06:33,760 《ま まずい… 足が限界かも…。 82 00:06:33,760 --> 00:06:36,763 こ このままじゃ 胸が…》 83 00:06:36,763 --> 00:06:38,765 よし…。 84 00:06:38,765 --> 00:06:41,268 あ あっ! んっ!? 85 00:06:48,275 --> 00:06:50,277 似合わな…。 86 00:06:50,277 --> 00:06:53,780 心の中にとどめるってことが できないのか 君は。 87 00:06:53,780 --> 00:06:56,449 はい。 あっ。 88 00:06:56,449 --> 00:06:59,452 は…。 89 00:06:59,452 --> 00:07:01,454 あ ありがとう…。 90 00:07:01,454 --> 00:07:03,623 よかったね 竹真。 91 00:07:03,623 --> 00:07:06,793 なんで竹真くんが 欲しがってるってわかったの? 92 00:07:06,793 --> 00:07:11,131 あのぬいぐるみ 竹真が 今やってるゲームのキャラなんだよ。 93 00:07:11,131 --> 00:07:14,134 そうなの? 意外とよく見てるんだ。 94 00:07:16,303 --> 00:07:20,974 はぁ… あなた お兄ちゃんとしても不器用なのね。 95 00:07:20,974 --> 00:07:24,811 「も」ってなんだ。 僕がいつ不器用なことをした。 96 00:07:24,811 --> 00:07:29,316 ますます私の兄をやらせる わけには いかなくなったわ。 97 00:07:29,316 --> 00:07:32,452 君に姉をやらせるよりはマシだろう。 98 00:07:32,452 --> 00:07:35,221 ところでさっきの わざとか? 99 00:07:37,424 --> 00:07:39,759 わっ わざとなわけないでしょ!? 100 00:07:39,759 --> 00:07:44,464 そうか 義理のきょうだいが 変態じゃなくて安心したよ。 101 00:07:44,464 --> 00:07:48,468 へんたっ!? ちょっ そっちこそ 何を反応してるのよ! 102 00:07:48,468 --> 00:07:51,104 このくらい東頭さんで 慣れてるはずでしょ!? 103 00:07:51,104 --> 00:07:54,641 東頭はなんとも思わずに くっついてくるけど➡ 104 00:07:54,641 --> 00:07:57,644 君は緊張が伝わってくるんだよ。 105 00:07:57,644 --> 00:07:59,646 少しは落ち着け。 106 00:07:59,646 --> 00:08:01,648 なっ!? そ それじゃあ➡ 107 00:08:01,648 --> 00:08:04,651 私が東頭さんより 男慣れしてないみたいじゃない! 108 00:08:04,651 --> 00:08:07,120 (円香)はいは~い。 んっ! 109 00:08:07,120 --> 00:08:09,789 二人とも行くよ~。 110 00:08:09,789 --> 00:08:12,459 (ゲタの足音) 111 00:08:12,459 --> 00:08:15,161 (円香)あ~ いたいた。 おじさんたちだ。 112 00:08:15,161 --> 00:08:17,330 誰と話してるんでしょう? 113 00:08:17,330 --> 00:08:20,166 誰だったかな~? ほら うちって一応➡ 114 00:08:20,166 --> 00:08:22,836 昔は地元の名士 ってやつだったから➡ 115 00:08:22,836 --> 00:08:25,338 大人の付き合いが多いんだよね~。 116 00:08:25,338 --> 00:08:28,007 (由仁)結女~ 水斗く~ん。 117 00:08:30,477 --> 00:08:34,080 ちょうどよかった! 祁答院さん 娘の…。 118 00:08:34,080 --> 00:08:36,082 伊理戸結女です。 119 00:08:36,082 --> 00:08:39,786 (祁答院)あらあら かわいらしいお嬢さんだこと。 120 00:08:39,786 --> 00:08:43,790 水斗くんにもお父さん以外の 家族ができたのね。 121 00:08:43,790 --> 00:08:47,293 (2人)フフッ。 夏目から話を聞いて 心配していました。 122 00:08:47,293 --> 00:08:50,797 あなたも環境が変わって 大変でしょうけれど➡ 123 00:08:50,797 --> 00:08:53,933 水斗くんを よく見てあげてくださいね。 124 00:08:53,933 --> 00:08:55,935 はい…。 125 00:08:55,935 --> 00:08:59,472 《なんだろう… まるで水斗が➡ 126 00:08:59,472 --> 00:09:03,476 誰かの支えがないと 生きていけないみたいな言い方》 127 00:09:03,476 --> 00:09:05,478 種里家の皆さんには➡ 128 00:09:05,478 --> 00:09:08,648 よく花火が見える場所を 取ってあります。 129 00:09:08,648 --> 00:09:10,650 ご案内いたしましょう。 130 00:09:10,650 --> 00:09:12,652 (峰秋)毎年ありがとうございます。 131 00:09:12,652 --> 00:09:16,322 花火が上がるのは8時よね。 ああ。 132 00:09:16,322 --> 00:09:18,658 花火までは もう少し時間があるけど➡ 133 00:09:18,658 --> 00:09:21,995 みんなどうする? あれ 水斗くんは? 134 00:09:21,995 --> 00:09:23,997 んっ? えっ…。 135 00:09:23,997 --> 00:09:26,966 (円香)あちゃ~ またいなくなっちゃったか。 136 00:09:26,966 --> 00:09:30,470 水斗くん いつも花火の直前になると➡ 137 00:09:30,470 --> 00:09:32,572 一人でどっか行っちゃうんだよね。 138 00:09:32,572 --> 00:09:34,574 ん…。 139 00:09:34,574 --> 00:09:37,577 《そうか… そうだったんだ。 140 00:09:37,577 --> 00:09:39,913 今 わかった。 141 00:09:39,913 --> 00:09:41,915 あの場は水斗にとっては➡ 142 00:09:41,915 --> 00:09:44,918 楽しくない場だったんだ だから…》 143 00:09:44,918 --> 00:09:46,920 ((ああ ありがとな)) 144 00:09:46,920 --> 00:09:48,922 《きっとあれは➡ 145 00:09:48,922 --> 00:09:51,091 「付き合ってくれてありがとう」 という意味。 146 00:09:51,091 --> 00:09:56,096 でも 水斗は親戚の人たちを 無視していたわけじゃない。 147 00:09:56,096 --> 00:09:58,598 全く無関心だったなら➡ 148 00:09:58,598 --> 00:10:03,436 ぬいぐるみを渡すなんて 思いつきもしなかったはずだし》 149 00:10:03,436 --> 00:10:06,940 ((ごめん 君と付き合うことはできない。 150 00:10:06,940 --> 00:10:09,442 僕は狭量な人間でさ。 151 00:10:09,442 --> 00:10:13,446 本気で向き合えるのは どうも一人が限度らしい。 152 00:10:13,446 --> 00:10:17,617 そのたった一つの席をさ そんな権利もないくせに➡ 153 00:10:17,617 --> 00:10:20,286 まだ占有してるヤツがいるんだよ。 154 00:10:20,286 --> 00:10:22,622 (風の音) 155 00:10:22,622 --> 00:10:25,125 外 風強いのかな? 156 00:10:25,125 --> 00:10:27,460 📱んっ? ああ…。 157 00:10:27,460 --> 00:10:30,296 📱綾井。 んっ? 158 00:10:30,296 --> 00:10:32,799 📱いや…。 ん…。 159 00:10:32,799 --> 00:10:36,970 📱実はそろそろ スマホの充電がヤバくてさ。 160 00:10:36,970 --> 00:10:41,174 《充電しながら話してくれれば よかったのに…》)) 161 00:10:44,811 --> 00:10:47,146 《そうじゃない》 162 00:10:47,146 --> 00:10:49,816 (風の音) 163 00:10:49,816 --> 00:10:52,485 《私は知らなかった。 164 00:10:52,485 --> 00:10:55,154 二年前の私は知らなかった。 165 00:10:55,154 --> 00:10:58,324 この時期の彼が 田舎に帰っていて➡ 166 00:10:58,324 --> 00:11:01,661 地元の夏祭りに 足を運んでいたことなんて➡ 167 00:11:01,661 --> 00:11:03,830 知らなかったんだ。 168 00:11:03,830 --> 00:11:07,167 ただのクラスメイトだった頃…。 169 00:11:07,167 --> 00:11:09,168 彼女だった頃…。 170 00:11:09,168 --> 00:11:13,339 そして 家族になってからのこと。 171 00:11:13,339 --> 00:11:16,676 いろんな伊理戸水斗が。 172 00:11:16,676 --> 00:11:20,280 パズルのピースのように連なって つながって…》 173 00:11:22,515 --> 00:11:25,685 《立体感のある像を結んでいく。 174 00:11:25,685 --> 00:11:29,355 私は知らなかった。 恋人になった程度じゃ➡ 175 00:11:29,355 --> 00:11:31,357 わかるはずもなかったんだ。 176 00:11:31,357 --> 00:11:33,293 でも…》 177 00:11:33,293 --> 00:11:35,328 私 行ってきます。 178 00:11:35,328 --> 00:11:37,297 うん 行ってらっしゃい。 179 00:11:39,499 --> 00:11:41,501 (走る息遣い) 180 00:11:41,501 --> 00:11:47,507 ♬~ 181 00:11:47,507 --> 00:11:52,278 「僕は あなたに 引き留めてほしかったのです」。 182 00:12:02,989 --> 00:12:06,993 《物心ついた頃から 実感がなかった。 183 00:12:06,993 --> 00:12:12,498 何をしても他人事で 何を見ても絵空事で。 184 00:12:12,498 --> 00:12:16,502 人が人生と呼ぶもの そのすべてが➡ 185 00:12:16,502 --> 00:12:20,006 モニターの向こう側にあるように 感じられた。 186 00:12:20,006 --> 00:12:23,676 別に「人間失格」を 気取っているわけじゃない。 187 00:12:23,676 --> 00:12:26,679 ただ 共感ができなかったんだ》 188 00:12:26,679 --> 00:12:29,515 ((無事に生まれてこられて よかったなぁ。 189 00:12:29,515 --> 00:12:32,785 お母さんがいなくて かわいそうね)) 190 00:12:32,785 --> 00:12:35,455 《ただ 普通にここにいるだけなのに➡ 191 00:12:35,455 --> 00:12:39,792 息をしているだけなのに どうして褒められたり➡ 192 00:12:39,792 --> 00:12:42,128 憐れまれたり しなくちゃいけないんだ。 193 00:12:42,128 --> 00:12:44,797 わからない わからないから➡ 194 00:12:44,797 --> 00:12:50,803 僕の中にはただ 何もない穴が 広がっていくばかりだった。 195 00:12:50,803 --> 00:12:54,140 すべてが音もなく素通りしていく。 196 00:12:54,140 --> 00:12:58,144 そんな中 唯一 リアルに感じられたのが➡ 197 00:12:58,144 --> 00:13:00,480 文字の世界だった。 198 00:13:00,480 --> 00:13:02,482 ひい爺さんの➡ 199 00:13:02,482 --> 00:13:05,652 「シベリアの舞姫」を 初めて読んだときの衝撃は➡ 200 00:13:05,652 --> 00:13:08,021 今でも忘れられない。 201 00:13:08,021 --> 00:13:12,191 僕の心は 文字に変換された世界に触れて➡ 202 00:13:12,191 --> 00:13:14,694 初めて満たされた。 203 00:13:14,694 --> 00:13:17,697 「舞姫」で人の弱さを知り。 204 00:13:17,697 --> 00:13:20,867 「羅生門」で人のエゴを知り。 205 00:13:20,867 --> 00:13:24,037 「山月記」で人のプライドを知って。 206 00:13:24,037 --> 00:13:28,007 そして「こころ」で人の心を知った。 207 00:13:28,007 --> 00:13:32,111 僕にとっては 虚構の世界のほうが本物で➡ 208 00:13:32,111 --> 00:13:35,148 現実の世界のほうが偽物だった。 209 00:13:35,148 --> 00:13:37,150 だから…。 210 00:13:37,150 --> 00:13:41,487 綾井結女のことだって 最初は成り行きだったんだ。 211 00:13:41,487 --> 00:13:43,990 話しかけたのは気まぐれで。 212 00:13:43,990 --> 00:13:47,493 でも 初デートで夏祭りに行ったとき➡ 213 00:13:47,493 --> 00:13:49,829 心底イライラした。 214 00:13:49,829 --> 00:13:52,665 こんなに弱い人間がいるのか。 215 00:13:52,665 --> 00:13:55,835 他人がいないと まともに呼吸もできなそうな➡ 216 00:13:55,835 --> 00:13:57,837 こんな人間が。 217 00:13:57,837 --> 00:14:02,341 きっと僕が見捨てたら 彼女は誰も知らない暗がりで➡ 218 00:14:02,341 --> 00:14:04,677 ずっと泣き続けているんだろう。 219 00:14:04,677 --> 00:14:08,014 ああ… なんてかわいそうなんだろう。 220 00:14:08,014 --> 00:14:11,184 自分の中に生まれたその感情は➡ 221 00:14:11,184 --> 00:14:15,188 ずっと自分に 向けられていたものと同じだった。 222 00:14:15,188 --> 00:14:19,192 綾井… 君は僕の心に焼きついた。 223 00:14:19,192 --> 00:14:22,528 小説を読んだときよりも強烈に。 224 00:14:22,528 --> 00:14:24,530 僕にとっては➡ 225 00:14:24,530 --> 00:14:28,868 君だけがリアルに感じられる 人間だったんだ》 226 00:14:28,868 --> 00:14:32,772 《伊理戸水斗は ずっとあがいていた。 227 00:14:32,772 --> 00:14:35,775 抵抗していたのだ。 そして➡ 228 00:14:35,775 --> 00:14:39,946 そんな中 出会った 「綾井結女」という よすがが➡ 229 00:14:39,946 --> 00:14:42,949 「どうしようもない自分の運命」 と戦うための➡ 230 00:14:42,949 --> 00:14:45,952 唯一の武器だったんだ。 231 00:14:45,952 --> 00:14:49,789 けれど彼はそれを失った。 232 00:14:49,789 --> 00:14:53,459 母親がいないから かわいそうなんじゃない。 233 00:14:53,459 --> 00:14:58,464 彼にとっての奇跡であり かわいそうなこと それは…》 234 00:14:58,464 --> 00:15:00,666 (荒い息遣い) 235 00:15:03,136 --> 00:15:07,140 よっぽど暗いところが好きなのね。 236 00:15:07,140 --> 00:15:09,976 もやしの生まれ変わりか 何かなの? 237 00:15:09,976 --> 00:15:12,478 わざわざ嫌味を言いに来たのか? 238 00:15:12,478 --> 00:15:16,149 親戚にすらなじめない 寂しいヤツだって。 239 00:15:16,149 --> 00:15:20,987 まさか。 そんなのとっくの昔に わかっていたことだもの。 240 00:15:20,987 --> 00:15:23,990 口に出すだけ時間の無駄よ。 241 00:15:23,990 --> 00:15:28,494 二年前 夏祭りが初デートだったわよね。 242 00:15:28,494 --> 00:15:33,466 私が迷子になって 通話で泣き言を言って。 243 00:15:33,466 --> 00:15:37,136 はぁ? その何日後だったかしら。 244 00:15:37,136 --> 00:15:41,140 夜に突然 あなたから 通話してきたことがあったわね。 245 00:15:41,140 --> 00:15:43,142 覚えてる。 (風の音) 246 00:15:43,142 --> 00:15:46,946 声の後ろから かすかに 木が揺れる音がした。 247 00:15:46,946 --> 00:15:49,949 ここだったんだ。 248 00:15:49,949 --> 00:15:54,620 あなた 私のこと 本当に好きだったのね。 249 00:15:54,620 --> 00:15:56,722 ん…。 250 00:16:00,126 --> 00:16:02,128 ねぇ 覚えてる? 251 00:16:02,128 --> 00:16:04,964 初めてキスしたの いつだったか。 252 00:16:04,964 --> 00:16:08,467 10月の27日だろ。 253 00:16:08,467 --> 00:16:12,138 付き合い始めて ちょうど2か月のときだな。 254 00:16:12,138 --> 00:16:15,641 やっぱり覚えてた。 わかってたのか? 255 00:16:15,641 --> 00:16:20,146 だって 私のスマホパスワード解除したでしょ。 256 00:16:20,146 --> 00:16:24,150 日付をパスワードにするの やめたほうがいいぞ。 257 00:16:24,150 --> 00:16:26,152 そんなこと言って。 258 00:16:26,152 --> 00:16:28,988 あんなにすぐ 「1027」って入れたのは➡ 259 00:16:28,988 --> 00:16:32,291 自分でも使ってたことが あるからじゃないの? 260 00:16:34,927 --> 00:16:38,097 そう ちょうど2か月だったわね。 261 00:16:38,097 --> 00:16:40,433 その機を逃すと 3か月になるまで➡ 262 00:16:40,433 --> 00:16:45,271 待つことになりそうな気がして ちょっと焦ってた。 263 00:16:45,271 --> 00:16:48,441 僕はてっきり 雑誌かネットの胡乱な情報を➡ 264 00:16:48,441 --> 00:16:50,776 うのみにしたのかと思ったよ。 265 00:16:50,776 --> 00:16:54,447 う… まあ参考程度には見たけどね。 266 00:16:54,447 --> 00:16:56,449 参考程度には。 267 00:16:56,449 --> 00:17:00,786 でもどうせ 君のことだから そういうマニュアルでもない限り➡ 268 00:17:00,786 --> 00:17:03,789 あんな大胆なことは 一生できなかっただろうな。 269 00:17:03,789 --> 00:17:06,792 悪かったわね マニュアル人間で。 270 00:17:06,792 --> 00:17:09,795 彼女の けなげな努力を褒めなさいよ。 271 00:17:09,795 --> 00:17:13,966 えらいえらい。 キス顔もいっぱい練習したんだな。 272 00:17:13,966 --> 00:17:15,968 なんで知ってるの…。 273 00:17:15,968 --> 00:17:17,970 見ればすぐにわかったよ。 274 00:17:17,970 --> 00:17:21,140 君が初めてで あんなにキレイにできるわけがない。 275 00:17:21,140 --> 00:17:23,809 失礼ね。 私でもたまには➡ 276 00:17:23,809 --> 00:17:26,312 アドリブが うまくいくときもあるんだから。 277 00:17:26,312 --> 00:17:29,982 そういうときは だいたい僕が フォローしてやってただろ。 278 00:17:29,982 --> 00:17:32,251 あ~ 恩着せがましい。 279 00:17:32,251 --> 00:17:35,588 そういうのは あえて言わないのが いい男なんじゃないの? 280 00:17:35,588 --> 00:17:39,592 今更 君にいい男ぶって なんの得があるんだよ。 281 00:17:39,592 --> 00:17:43,262 それもそうね。 なんのメリットもなかったわ。 282 00:17:43,262 --> 00:17:45,765 これ以上 幻滅しようもないし。 283 00:17:45,765 --> 00:17:48,768 まったくもって こっちのセリフだな。 284 00:17:48,768 --> 00:17:53,139 ♬~ 285 00:17:53,139 --> 00:17:55,775 ねぇ。 なんだ。 286 00:17:55,775 --> 00:17:58,778 どうして私を彼女にしたの? 287 00:17:58,778 --> 00:18:01,948 たぶん 君じゃなくても よかったんだろうな。 288 00:18:01,948 --> 00:18:04,116 んっ はぁ? 289 00:18:04,116 --> 00:18:06,452 こんなのは結局めぐり合わせ。 290 00:18:06,452 --> 00:18:08,821 ただの偶然だろ。 291 00:18:08,821 --> 00:18:12,992 もし仮に君よりも先に 東頭と出会ってたら➡ 292 00:18:12,992 --> 00:18:17,330 君と付き合うことは なかったんだろうな。 293 00:18:17,330 --> 00:18:22,001 でも現実には 僕が出会ったのは君だった。 294 00:18:22,001 --> 00:18:24,670 簡単な椅子取りゲーム。 295 00:18:24,670 --> 00:18:26,672 早い者勝ちの原則だ。 296 00:18:26,672 --> 00:18:31,644 理由があるとしたら たぶんそれだけだ。 297 00:18:31,644 --> 00:18:34,413 満足したか? 298 00:18:34,413 --> 00:18:36,415 うん。 299 00:18:39,585 --> 00:18:42,588 そろそろね。 んっ? 300 00:18:42,588 --> 00:18:44,890 二年越しの悲願でしょ。 301 00:18:47,093 --> 00:18:49,395 (花火の音) 302 00:18:51,931 --> 00:18:54,767 やっと 二人で見れたわね。 303 00:18:54,767 --> 00:18:56,769 (花火の音) 304 00:18:56,769 --> 00:19:10,149 ♬~ 305 00:19:10,149 --> 00:19:12,985 ねぇ こっち見て。 306 00:19:12,985 --> 00:19:20,826 ♬~ 307 00:19:20,826 --> 00:19:24,497 《綾井結女ではなく 伊理戸結女として➡ 308 00:19:24,497 --> 00:19:29,668 生涯二度目のファーストキスが あなたに宣戦布告する。 309 00:19:29,668 --> 00:19:32,405 あなたの中の一人分の席…。 310 00:19:32,405 --> 00:19:38,077 そこに居座っている女を 必ず蹴落としてやる。 311 00:19:38,077 --> 00:19:41,080 あなたがどれだけ 「綾井結女」を好きだとしても》 312 00:19:41,080 --> 00:19:43,082 (花火の音) 313 00:19:43,082 --> 00:19:49,588 ♬~ 314 00:19:49,588 --> 00:19:52,758 《この私が 伊理戸結女が➡ 315 00:19:52,758 --> 00:19:55,461 絶対に口説き落としてあげる》 316 00:19:58,097 --> 00:20:00,099 (風鈴の音) 317 00:20:03,436 --> 00:20:07,273 (円香)ねね もしかして昨日 うまくいった? 318 00:20:07,273 --> 00:20:10,943 第一歩は踏み出せたんじゃ ないかと思います。 319 00:20:10,943 --> 00:20:14,780 やるぅ~! 何かあったら いつでも連絡してね! 私は…。 320 00:20:14,780 --> 00:20:16,782 (竹真)んっ! あいたっ! 321 00:20:16,782 --> 00:20:19,452 ちょ 何よ竹真! 反抗期!? 322 00:20:19,452 --> 00:20:21,454 ん…。 323 00:20:21,454 --> 00:20:23,456 竹真くん? 324 00:20:23,456 --> 00:20:25,624 うぅ…。 325 00:20:25,624 --> 00:20:28,294 えっ マジ? そういうこと? 326 00:20:28,294 --> 00:20:32,631 ん…。 あ~ それはなんというか…。 327 00:20:32,631 --> 00:20:36,635 ご愁傷様というか…。 328 00:20:36,635 --> 00:20:41,307 (夏目)ホンマに ありがとうな結女ちゃん。 329 00:20:41,307 --> 00:20:44,143 水斗のこと よろしゅう頼むで。 330 00:20:44,143 --> 00:20:48,981 彼は強い人ですから 私がいなくても大丈夫ですよ。 331 00:20:48,981 --> 00:20:51,150 でも 頼まれてはおきます。 332 00:20:51,150 --> 00:20:54,320 意外と寂しがりみたいなので。 333 00:20:54,320 --> 00:20:57,156 (セミの声) 334 00:20:57,156 --> 00:20:59,658 ばあさんと何を話してたんだ? 335 00:20:59,658 --> 00:21:01,660 なんだと思う? 336 00:21:01,660 --> 00:21:04,497 ん… 君 なんかおかしいぞ。 337 00:21:04,497 --> 00:21:08,501 心配しなくても 私たちは義理のきょうだいよ。 338 00:21:08,501 --> 00:21:10,836 水斗くん。 339 00:21:10,836 --> 00:21:13,839 当たり前だろ 結女さん。 340 00:21:13,839 --> 00:21:16,041 (セミの声) 341 00:21:18,677 --> 00:21:21,680 (鳥のさえずり) 342 00:21:21,680 --> 00:21:23,682 (いさな)どういうことですか 水斗くん! 343 00:21:23,682 --> 00:21:25,851 誰ですか このチャラ男は! 344 00:21:25,851 --> 00:21:27,853 (川波)どういうことだよ 伊理戸! 345 00:21:27,853 --> 00:21:30,356 誰だ この巨乳女は! 346 00:21:30,356 --> 00:21:32,792 はぁ…。 (暁月)このデバガメ…。 347 00:21:32,792 --> 00:21:36,829 水斗くんの友達は 私だけですよね? ねぇ? 348 00:21:36,829 --> 00:21:38,831 伊理戸さん というものがありながら➡ 349 00:21:38,831 --> 00:21:42,668 こんな女と遊ぶなんて 見損なったぜ! 350 00:21:42,668 --> 00:21:45,171 そういうことはしねえ と思ってたのに。 351 00:21:45,171 --> 00:21:48,841 川波 この女子は 東頭いさな。 352 00:21:48,841 --> 00:21:52,178 最近知り合って意気投合 しただけの友達だ。 353 00:21:52,178 --> 00:21:55,181 最近知り合って意気投合? 354 00:21:55,181 --> 00:21:58,684 東頭 この男は川波小暮。 355 00:21:58,684 --> 00:22:00,853 親友を 自称し 勝手に➡ 356 00:22:00,853 --> 00:22:03,522 付きまとってくる だけのクラスメイトだ。 357 00:22:03,522 --> 00:22:05,858 勝手に 付きまとってくる。 358 00:22:05,858 --> 00:22:07,860 なるほど。 359 00:22:07,860 --> 00:22:10,196 水斗くんのストーカーですね。 360 00:22:10,196 --> 00:22:13,666 なるほど。 伊理戸を狙った詐欺師か。 361 00:22:13,666 --> 00:22:15,701 なぜそうなる。 362 00:22:15,701 --> 00:22:18,370 オタクなら簡単に落とせる とでも思ったか? 363 00:22:18,370 --> 00:22:20,339 残念だが 伊理戸はそんな➡ 364 00:22:20,339 --> 00:22:22,341 軽い男じゃねえんだよ。 365 00:22:22,341 --> 00:22:25,511 プライドを傷つけられる 前に諦めたらどうだ? 366 00:22:25,511 --> 00:22:28,681 な 生々しい傷を無遠慮に…。 367 00:22:28,681 --> 00:22:30,683 おっと どうやらもう➡ 368 00:22:30,683 --> 00:22:33,619 返り討ちにされた 後だったみてぇだな。 369 00:22:33,619 --> 00:22:35,621 身の程をわきまえろって…。 (暁月)んっ。 370 00:22:35,621 --> 00:22:37,790 イッテテテ! 371 00:22:37,790 --> 00:22:41,126 東頭さんと伊理戸くんは なんともないの。 372 00:22:41,126 --> 00:22:43,462 ただの 仲のいい友達なの。 373 00:22:43,462 --> 00:22:46,298 そこに よこしまなものを 見出してるのは➡ 374 00:22:46,298 --> 00:22:49,802 アンタの汚れた心なの。 わかる? 375 00:22:49,802 --> 00:22:53,305 誰よりも心が汚れてるヤツに 言われたくねえ~。 376 00:22:53,305 --> 00:22:55,975 ああ? おおおっ!? 377 00:22:55,975 --> 00:22:59,478 私と水斗くんは 誰よりも仲よしってだけです。 378 00:22:59,478 --> 00:23:02,314 チャラい格好して 恋愛脳とか。 379 00:23:02,314 --> 00:23:05,150 これだから陽キャは 苦手なんですよ。 380 00:23:05,150 --> 00:23:07,820 その恋人距離感で言っても➡ 381 00:23:07,820 --> 00:23:09,822 全然 説得力ないから。 382 00:23:09,822 --> 00:23:11,824 いったん離れて。 383 00:23:11,824 --> 00:23:13,993 クフフフッ…。 む~。 384 00:23:13,993 --> 00:23:16,161 中学の時とは違って➡ 385 00:23:16,161 --> 00:23:19,999 友達たくさんできて よかったわね 弟くん。 386 00:23:19,999 --> 00:23:23,335 君も 高校デビューしたかいが あったようでなによりだ。 387 00:23:23,335 --> 00:23:25,337 妹よ。 388 00:23:27,840 --> 00:23:29,842 <結女/水斗:今となっては➡ 389 00:23:29,842 --> 00:23:32,811 若気の至りとしか 言いようがないが> 390 00:23:32,811 --> 00:23:36,649 <僕には中学2年から 中学3年にかけて➡ 391 00:23:36,649 --> 00:23:40,653 いわゆる彼女というものが 存在したことがある> 392 00:23:40,653 --> 00:23:44,990 <私には中学2年から 中学3年にかけて➡ 393 00:23:44,990 --> 00:23:48,494 いわゆる彼氏というものが 存在したことがある> 394 00:23:48,494 --> 00:23:52,131 < もう過去が 戻ってくることはない> 395 00:23:52,131 --> 00:23:55,968 < あの頃の幸せが よみがえることはない> 396 00:23:55,968 --> 00:23:58,837 <結女/水斗:だけど> 397 00:23:58,837 --> 00:24:00,839 < あの頃の感覚が➡ 398 00:24:00,839 --> 00:24:03,509 まだこの魂に焼き付いている> 399 00:24:03,509 --> 00:24:08,013 <今は それでもいい> 400 00:24:08,013 --> 00:24:11,517 <昔の恋が 終わってくれない> 401 00:24:11,517 --> 00:24:16,855 <大丈夫。 だって私は 私たちは…> 402 00:24:16,855 --> 00:24:20,526 <結女/水斗:新しく 紡ぎ上げることができるから>