1 00:03:31,160 --> 00:03:33,460 (鴎外)エリス…。 2 00:03:36,270 --> 00:03:39,170 書かせないつもりか。 3 00:03:41,770 --> 00:03:46,170 お前は まだ僕を恨んで…。 4 00:03:51,450 --> 00:03:56,150 ハァハァハァ…。 5 00:04:00,630 --> 00:04:07,630 《エリス お前が 書かせないというなら➡ 6 00:04:07,630 --> 00:04:10,800 それでもいい。 7 00:04:10,800 --> 00:04:14,140 もうすぐ 月が満ちる。 8 00:04:14,140 --> 00:04:22,480 きっと あの子は 僕の前から消えてしまう。 9 00:04:22,480 --> 00:04:28,480 あの 満月の夜に 突然現れたように》 10 00:04:30,990 --> 00:04:34,160 《時間がない…。 11 00:04:34,160 --> 00:04:37,160 僕には 時間がない》 12 00:04:49,110 --> 00:04:51,610 (芽衣)ニャーヌー ニャニャヌー? 13 00:04:51,610 --> 00:04:54,280 (芽衣)ニャウヌゥー? (春草)何してるの? 14 00:04:54,280 --> 00:04:57,120 あっ 黒猫知らない? って 聞いてました。 15 00:04:57,120 --> 00:04:59,450 ほら この子 藤田さんのところにいた➡ 16 00:04:59,450 --> 00:05:02,290 ロースちゃん そっくり ニャーウン? 17 00:05:02,290 --> 00:05:04,460 そんなので伝わるの? 18 00:05:04,460 --> 00:05:06,460 伝わりますよ。 19 00:05:06,460 --> 00:05:08,460 思いは 伝わるんです。 20 00:05:11,800 --> 00:05:14,200 《思いは 伝わるんです》 21 00:05:16,470 --> 00:05:18,640 ⦅チャーリー:芽衣ちゃんが ここにいたいなら➡ 22 00:05:18,640 --> 00:05:20,640 そうしても いいんだよ⦆ 23 00:05:20,640 --> 00:05:26,150 《はい ずっと待ってます。 24 00:05:26,150 --> 00:05:28,150 鴎外さん》 25 00:05:32,820 --> 00:05:34,820 子リスちゃん。 26 00:05:34,820 --> 00:05:36,760 わ~! 27 00:05:36,760 --> 00:05:39,760 甘いものでも 食べに行かないかい? 28 00:05:39,760 --> 00:05:44,260 もちろん 春草も。 ニャー。 29 00:05:44,260 --> 00:05:46,260 はい 喜んで! 30 00:05:49,770 --> 00:05:51,940 春草は なぜ来ないのだろう? 31 00:05:51,940 --> 00:05:55,110 はい 急に おなかが痛くなったとかで。 32 00:05:55,110 --> 00:05:57,110 ふむ…。 33 00:05:57,110 --> 00:05:59,110 そうかい。 34 00:06:04,120 --> 00:06:07,950 ⦅いってきますね 春草さん⦆ 35 00:06:07,950 --> 00:06:10,960 《春草:鴎外さんと いるときの君は➡ 36 00:06:10,960 --> 00:06:15,760 なんて 幸せそうに笑うんだ》 37 00:06:22,140 --> 00:06:24,140 (大地)ねぇ 辰野さん。 38 00:06:24,140 --> 00:06:26,310 東京駅は なぜ 小口積みなんですか? 39 00:06:26,310 --> 00:06:28,310 (辰野)東京駅だって? 40 00:06:28,310 --> 00:06:30,640 東亰停車場のことかね? 41 00:06:30,640 --> 00:06:33,650 あれはまだ 設計中だが… ん? 42 00:06:33,650 --> 00:06:35,820 今 なんと言ったね 小口積みだと? 43 00:06:35,820 --> 00:06:38,920 あんな大きな駅に 小口積みとは 珍しいと思いましてね。 44 00:06:38,920 --> 00:06:42,260 (芽衣)わぁ いただきます。 45 00:06:42,260 --> 00:06:47,090 ん~ ほっぺたが落ちます。 46 00:06:47,090 --> 00:06:50,430 子リスちゃんは 実に おいしそうに食べる。 47 00:06:50,430 --> 00:06:55,940 僕は そんな 子リスちゃんを 見ていられれば それで十分だ。 48 00:06:55,940 --> 00:06:58,100 いやいや そんな~。 49 00:06:58,100 --> 00:07:01,110 あの鴎外さん どうですか? 小説の進み具合は? 50 00:07:01,110 --> 00:07:03,110 あっ…。 51 00:07:03,110 --> 00:07:06,450 《あっ 聞いてはいけなかった?》 52 00:07:06,450 --> 00:07:10,280 あ あの や 八雲さんが 藤田さんの家を➡ 53 00:07:10,280 --> 00:07:12,290 カフェフジタって呼んでて➡ 54 00:07:12,290 --> 00:07:16,960 カフェフジタの五郎メシっていうのが おいしそうなんですよね~。 55 00:07:16,960 --> 00:07:19,790 うんうん 子リスちゃんの おいしそうな顔は➡ 56 00:07:19,790 --> 00:07:21,960 実に おいしそうだ。 57 00:07:21,960 --> 00:07:23,960 アハハハ。 58 00:07:23,960 --> 00:07:27,630 《しょ 小説のことは 聞かないほうがいいのかな》 59 00:07:27,630 --> 00:07:30,800 あっ 鏡花さんが書いた あの お芝居➡ 60 00:07:30,800 --> 00:07:34,310 やっぱり 白雪役は 音二郎さんなんでしょうか。 61 00:07:34,310 --> 00:07:36,910 でも 鏡花さんも 一気に筆が進んで➡ 62 00:07:36,910 --> 00:07:40,250 書き上げられてよかったですね。 63 00:07:40,250 --> 00:07:43,250 あっ す すみません つ つい…。 64 00:07:43,250 --> 00:07:48,250 せっかくの 気晴らしなのに ごめんなさい。 65 00:07:48,250 --> 00:07:51,090 ウフフ 子リスちゃん➡ 66 00:07:51,090 --> 00:07:53,090 ぜんざいを追加するかい? 67 00:07:53,090 --> 00:07:56,100 えっ い いいんですか? もちろん。 68 00:07:56,100 --> 00:07:58,100 (芽衣)わ~。 69 00:07:58,100 --> 00:08:01,100 あ~ん ウフフ…。 70 00:08:04,100 --> 00:08:07,770 あま~い 幸せ~。 71 00:08:07,770 --> 00:08:09,770 フフ。 72 00:08:11,780 --> 00:08:17,780 もう… 書くのは やめようかと思っているのだよ。 73 00:08:22,120 --> 00:08:24,120 えっ? 74 00:08:24,120 --> 00:08:30,620 し 執筆を… ですか? 75 00:08:33,470 --> 00:08:38,070 書けなくてね。 76 00:08:38,070 --> 00:08:42,070 それに➡ 77 00:08:42,070 --> 00:08:46,750 僕には こうして 現実の お前が目の前にいる。 78 00:08:46,750 --> 00:08:53,750 それで 十分ではないかと 思ってね。 79 00:08:53,750 --> 00:08:55,760 ん? 80 00:08:55,760 --> 00:08:59,760 それは うれしいですけど…。 81 00:09:04,100 --> 00:09:07,270 もっと➡ 82 00:09:07,270 --> 00:09:10,670 喜んでくれると思ったのだが? 83 00:09:13,440 --> 00:09:17,780 躯体は イギリス積みにして。 イギリス積み!? ツーツーテンテンですね! 84 00:09:17,780 --> 00:09:20,450 でも 私 読みたいです。 85 00:09:20,450 --> 00:09:22,780 鴎外さんの小説 読みたいです。 86 00:09:22,780 --> 00:09:24,780 だから…。 87 00:09:32,790 --> 00:09:35,460 書けないのだよ…。 88 00:09:35,460 --> 00:09:54,080 ♪~ 89 00:09:54,080 --> 00:09:56,080 あの…。 90 00:09:59,590 --> 00:10:05,590 こんな 何もできない 何も知らない 私が➡ 91 00:10:05,590 --> 00:10:11,600 生意気なんですけど 私➡ 92 00:10:11,600 --> 00:10:17,440 やっぱり 鴎外さんに 小説 書いてほしいです。 93 00:10:17,440 --> 00:10:24,440 途中で やめてしまうなんて 鴎外さんらしくない気がして。 94 00:10:24,440 --> 00:10:45,060 ♪~ 95 00:10:45,060 --> 00:10:47,070 君。 96 00:10:47,070 --> 00:10:49,670 春草さん。 ちょっと いいかな。 97 00:11:23,440 --> 00:11:26,770 鴎外さんが 書こうとしているのは➡ 98 00:11:26,770 --> 00:11:35,780 鴎外さんと 鴎外さんの元恋人の話なんだ。 99 00:11:35,780 --> 00:11:40,450 鴎外さんが かつて 留学先で出会った恋人のことを➡ 100 00:11:40,450 --> 00:11:44,450 小説にしようとしているんだよ。 101 00:11:47,290 --> 00:11:51,300 (春草)2人は ドイツで出会い 恋に落ちた。 102 00:11:51,300 --> 00:11:55,300 生涯を共にすると考えていたんだ。 103 00:11:55,300 --> 00:11:59,640 だけど 国のために留学していた 鴎外さんは➡ 104 00:11:59,640 --> 00:12:04,640 彼女との結婚を 周囲に反対された。 105 00:12:04,640 --> 00:12:06,980 一個人としてではなく➡ 106 00:12:06,980 --> 00:12:11,320 公人として生きることしか 許されなかったんだ。 107 00:12:11,320 --> 00:12:18,220 そして 鴎外さんは 彼女との別れを決意した。 108 00:12:20,160 --> 00:12:22,660 エリス…。 109 00:12:26,170 --> 00:12:31,670 鴎外さんは そのことを 今でも 悔やんでいるんだと思う。 110 00:12:31,670 --> 00:12:36,780 エリス わかっているよ。 111 00:12:36,780 --> 00:12:42,110 僕に 書かせない つもりなのだろう? 112 00:12:42,110 --> 00:12:44,620 安心しなさい。 113 00:12:44,620 --> 00:12:47,950 僕は もう 書くのはやめたのだ。 114 00:12:47,950 --> 00:12:50,460 だから➡ 115 00:12:50,460 --> 00:12:56,630 もう 現れないでくれ! 116 00:12:56,630 --> 00:12:59,430 エリス…。 117 00:13:01,470 --> 00:13:04,140 その物語は➡ 118 00:13:04,140 --> 00:13:08,640 封印していた 鴎外さんの心の軌跡。 119 00:13:08,640 --> 00:13:11,480 だから 書けないんだ。 120 00:13:11,480 --> 00:13:18,820 鴎外さんは なぜ そんな つらい話を書こうと…。 121 00:13:18,820 --> 00:13:22,990 君のためだろう。 122 00:13:22,990 --> 00:13:27,660 鴎外さんは 今 過去と向き合おうとしている。 123 00:13:27,660 --> 00:13:35,830 それは 今いる 君のためだよ。 124 00:13:35,830 --> 00:13:40,940 その… ために。 125 00:13:40,940 --> 00:13:44,440 あんなに苦しんで…。 126 00:14:38,430 --> 00:14:41,430 鴎外… さん? 127 00:15:05,790 --> 00:15:07,790 あっ 君! 128 00:15:14,800 --> 00:15:16,800 (フミ)あっ 芽衣さん。 129 00:15:16,800 --> 00:15:19,310 フミさん! 130 00:15:19,310 --> 00:15:22,810 あの 今 鴎外さんが…。 えっ? 131 00:15:22,810 --> 00:15:24,810 そこで すれ違ったんですけど➡ 132 00:15:24,810 --> 00:15:27,810 お声を おかけしても まるで聞こえてない ご様子で➡ 133 00:15:27,810 --> 00:15:30,480 ふら~っと…。 134 00:15:30,480 --> 00:15:32,480 フミさん ありがとうございます! 135 00:15:32,480 --> 00:15:48,100 ♪~ 136 00:15:48,100 --> 00:15:52,770 《鴎外さん 鴎外さん!》 137 00:15:52,770 --> 00:15:55,170 あっ 鴎外さん! 138 00:15:58,110 --> 00:16:00,110 おや なんだい? 139 00:16:00,110 --> 00:16:02,110 あっ すみません! 140 00:16:02,110 --> 00:16:04,120 こりゃあ また べっぴんさんじゃないか。 141 00:16:04,120 --> 00:16:06,120 人違いでした~っ! えっ? 142 00:16:09,790 --> 00:16:11,790 あっ! 143 00:16:17,130 --> 00:16:19,300 何やってるの。 144 00:16:19,300 --> 00:16:22,970 私 鴎外さんを➡ 145 00:16:22,970 --> 00:16:25,800 追い詰めてしまったのかもって。 146 00:16:25,800 --> 00:16:28,810 何も知らないで 私…。 147 00:16:28,810 --> 00:16:32,980 だとしても 鴎外さんは そんな弱い人じゃない。 148 00:16:32,980 --> 00:16:35,650 そうかもしれない。 149 00:16:35,650 --> 00:16:40,590 そうだとしても 鴎外さんが 苦しんでいるのに➡ 150 00:16:40,590 --> 00:16:44,420 何もしないでいられない。 151 00:16:44,420 --> 00:16:49,120 俺は そんな 君の姿 見ていられない! 152 00:16:58,770 --> 00:17:02,770 ありがとうございます 春草さん。 153 00:17:06,110 --> 00:17:09,110 私 大丈夫です。 154 00:17:15,620 --> 00:17:19,720 《大丈夫 大丈夫》 155 00:17:32,140 --> 00:17:34,140 (春草)芽衣! 156 00:17:39,080 --> 00:17:41,410 えっ…。 157 00:17:41,410 --> 00:18:02,430 ♪~ 158 00:18:02,430 --> 00:18:10,440 お前は 僕が作り出した 幻なんだろう。 159 00:18:10,440 --> 00:18:13,780 僕の弱い心 そのものだ。 160 00:18:13,780 --> 00:18:19,950 それは 初めからわかっていた。 161 00:18:19,950 --> 00:18:22,120 書くのをやめれば➡ 162 00:18:22,120 --> 00:18:25,960 消えてくれると思ったのだけどね。 163 00:18:25,960 --> 00:18:32,460 エリス お前と向き合うことが…。 164 00:18:36,400 --> 00:18:41,910 こんなにも 苦しいとは 想像もしていなかったよ。 165 00:18:41,910 --> 00:18:47,080 もう やめたのだ エリス 僕は 書かない。 166 00:18:47,080 --> 00:18:49,080 いや…。 167 00:18:53,090 --> 00:18:56,260 書けないのだ。 168 00:18:56,260 --> 00:19:00,260 フッ… 過去にも今にも 向き合えないとは。 169 00:19:00,260 --> 00:19:05,160 自分が これほど情けないとは 思っていなかった。 170 00:19:12,770 --> 00:19:16,110 エリス…。 171 00:19:16,110 --> 00:19:18,110 鴎外さん! 172 00:19:20,110 --> 00:19:22,780 よかったです! 173 00:19:22,780 --> 00:19:25,180 やっと見つけた。 174 00:19:31,120 --> 00:19:34,720 見ないでくれ こんな僕を。 175 00:19:37,900 --> 00:19:42,400 私は 悩んでいる鴎外さんも 好きです。 176 00:19:42,400 --> 00:19:44,400 フッ…。 177 00:19:44,400 --> 00:19:46,400 大好きです。 178 00:19:49,410 --> 00:19:58,080 私は読みます どんなお話でも どんな… 悲しい物語でも。 179 00:19:58,080 --> 00:20:01,750 いや 僕は もう…。 180 00:20:01,750 --> 00:20:04,090 書けます。 181 00:20:04,090 --> 00:20:07,260 鴎外さんなら きっと書けます。 182 00:20:07,260 --> 00:20:12,760 鴎外さんが こんなに苦しんで 取り組んだ お話です。 183 00:20:12,760 --> 00:20:16,460 きっと… きっと すてきな お話になります。 184 00:20:25,610 --> 00:20:31,280 それでも… それでも どうしても➡ 185 00:20:31,280 --> 00:20:38,890 どうしても だめだったら 鴎外さん そのときは➡ 186 00:20:38,890 --> 00:20:43,900 私と一緒に逃げましょう。 187 00:20:43,900 --> 00:20:48,100 温泉とか! フフッ いいですね。 188 00:20:54,910 --> 00:20:58,080 芽衣。 はい。 189 00:20:58,080 --> 00:21:00,380 ずっと いてくれ… 芽衣。 190 00:21:02,750 --> 00:21:05,920 僕のそばに。 191 00:21:05,920 --> 00:21:09,250 ずっと いてくれ。 192 00:21:09,250 --> 00:21:12,260 はい います。 193 00:21:12,260 --> 00:21:17,460 私は ず~っと 鴎外さんの そばにいます。 194 00:21:25,100 --> 00:21:27,110 《芽衣…。 195 00:21:27,110 --> 00:21:33,710 君は 何て強いんだ》 196 00:21:45,120 --> 00:21:48,120 落ちていました 書斎の床に。 197 00:22:09,480 --> 00:22:11,820 エリス…。 198 00:22:11,820 --> 00:23:00,520 ♪~ 199 00:23:02,470 --> 00:23:06,810 わあ~ 書き上がったんですね! 200 00:23:06,810 --> 00:23:09,140 うむ。 201 00:23:09,140 --> 00:23:15,980 まったく お前のおかげだよ 芽衣。 202 00:23:15,980 --> 00:23:17,980 ありがとう。 203 00:23:17,980 --> 00:23:20,320 私は何も。 204 00:23:20,320 --> 00:23:22,820 でも そう言ってもらえて うれしいです。 205 00:23:22,820 --> 00:23:24,820 読むのが楽しみです。 206 00:23:24,820 --> 00:23:27,160 いや 子リスちゃんには 読ませないよ。 207 00:23:27,160 --> 00:23:29,160 えっ なんで!? 208 00:23:35,830 --> 00:23:39,100 ⦅私が 黒猫を見つけますから! 209 00:23:39,100 --> 00:23:43,110 私 見たいです 春草さんの完成した絵!⦆ 210 00:23:43,110 --> 00:23:47,110 《きっと 今なら描ける》 211 00:24:02,130 --> 00:24:05,130 クッ…。 212 00:24:07,130 --> 00:24:09,130 目が…。