1 00:00:03,185 --> 00:00:07,022 (薬売り)人は変わるもの 時は移ろうもの 2 00:00:07,656 --> 00:00:09,725 海は たゆとうもの 3 00:00:10,059 --> 00:00:13,629 同じ港を目指し 船出(ふなで)したとて— 4 00:00:13,729 --> 00:00:20,002 見える海原 波の色 高さは それぞれ相たがえるもの 5 00:00:21,971 --> 00:00:25,207 アヤカシ モノノ怪(ケ) 海坊主 6 00:00:25,741 --> 00:00:30,379 人の心に闇あるかぎり おとなうものは絶えずして 7 00:00:31,914 --> 00:00:35,618 向かえ! いざなう声こそ 恐るるべし 8 00:00:40,656 --> 00:00:46,662 ♪~ 9 00:01:52,928 --> 00:01:58,934 ~♪ 10 00:02:13,782 --> 00:02:18,487 (加世(かよ)) 確かに この薬売りさんは 坂井(さかい)の化猫(ばけねこ)騒動を収めた 11 00:02:18,787 --> 00:02:22,491 でも 結局 坂井家は 取り潰しになっちゃったし— 12 00:02:22,891 --> 00:02:25,294 誰が本当に助けられたのか というと… 13 00:02:26,495 --> 00:02:29,498 ホントは この人 誰の味方なの? 14 00:02:30,032 --> 00:02:31,900 (薬売り) あんまり怖い顔 していると— 15 00:02:32,201 --> 00:02:34,103 嫁のもらい手がなくなる 16 00:02:34,837 --> 00:02:36,939 大きな お世話です! 17 00:02:38,874 --> 00:02:42,111 聞いても本当のこと 言いそうにないけど 聞きます 18 00:02:42,244 --> 00:02:46,014 薬売りさんが羅針盤を 細工したんじゃないんですよね? 19 00:02:46,315 --> 00:02:47,316 どうだかね? 20 00:02:47,416 --> 00:02:48,517 うーん! 21 00:02:51,220 --> 00:02:54,289 (薬売り)羅針盤に細工は しなかったとしても— 22 00:02:54,389 --> 00:02:57,826 私も この“龍(りゅう)の三角(さんかく)” アヤカシの海へ— 23 00:02:57,926 --> 00:02:59,761 連れてこられたんですよ 24 00:03:02,431 --> 00:03:03,532 誰に? 25 00:03:03,932 --> 00:03:04,900 (鈴の音) 26 00:03:05,000 --> 00:03:05,868 はあ? 27 00:03:06,368 --> 00:03:09,171 この剣って 命を持ってるとか? 28 00:03:09,505 --> 00:03:11,840 (薬売り)さあ どうだか 29 00:03:12,207 --> 00:03:14,109 あのね 薬売りさん! 30 00:03:14,209 --> 00:03:17,279 あなたが何だか すごい人だってことは認めるわよ 31 00:03:17,379 --> 00:03:18,881 でもね だからって— 32 00:03:18,981 --> 00:03:21,817 その もったいぶった態度は あんまりだと思うのよ! 33 00:03:22,151 --> 00:03:24,520 そんなんじゃ 女の子にモテませんからね! 34 00:03:26,989 --> 00:03:28,524 (薬売り)はい はい 35 00:03:29,792 --> 00:03:33,328 前に アヤカシとモノノ怪は 違うって言ってましたよね 36 00:03:33,462 --> 00:03:35,798 同じようなもんじゃ ないんですか? 37 00:03:35,898 --> 00:03:38,133 だって アヤカシも八百万(やおよろず)の神様も— 38 00:03:38,233 --> 00:03:39,401 同じようなもんだって… 39 00:03:40,102 --> 00:03:44,173 (薬売り)現世(うつしよ)に 人や獣や鳥がいるのと等しく— 40 00:03:44,273 --> 00:03:47,943 この世ならざるアヤカシも あまねく いるものだ 41 00:03:48,277 --> 00:03:51,246 アヤカシって人が死んだら なるものなんですか? 42 00:03:51,380 --> 00:03:53,515 (柳幻殃斉(やなぎげんようさい))…と言う者も いる 43 00:03:53,849 --> 00:03:57,085 先刻の船幽霊も その手合いだろうて 44 00:03:57,186 --> 00:03:58,520 だが それだけではなく— 45 00:03:58,821 --> 00:04:03,025 物や道具に魂が宿ることもあるし 千差万別よ 46 00:04:03,125 --> 00:04:06,161 (薬売り)ただ どういう筋で なったにせよ 47 00:04:06,261 --> 00:04:08,864 アヤカシの道理は 人には分からん 48 00:04:09,097 --> 00:04:10,365 (加世)じゃあ モノノ怪は? 49 00:04:10,465 --> 00:04:13,468 (幻殃斉)モノノ怪の“怪”って もともと何か 知っているか? 50 00:04:13,602 --> 00:04:15,604 (加世)知らないから 聞いてるんでしょ 51 00:04:15,904 --> 00:04:17,406 (幻殃斉)病のことよ 52 00:04:17,506 --> 00:04:20,075 そして“モノ”とは 荒ぶる神のこと 53 00:04:20,175 --> 00:04:24,880 …ってことは モノノ怪は 人を病のように祟(たた)る… 54 00:04:24,980 --> 00:04:27,983 恨み 悲しみ 憎しみ 55 00:04:28,150 --> 00:04:31,920 激しい人の情念が アヤカシと結びつくと どうなるか 56 00:04:33,155 --> 00:04:36,859 もはや 封印の呪符(じゅふ)など効かぬ 摩羅(まら)の鬼 57 00:04:36,992 --> 00:04:39,361 (佐々木兵衛(ささきひょうえ)) しかし その退魔の剣なら斬れると 58 00:04:40,262 --> 00:04:41,997 (薬売り)ただし モノノ怪の… 59 00:04:42,097 --> 00:04:46,501 (加世)“形(かたち)”と“真(まこと)”と“理(ことわり)”が なくては抜けない 60 00:04:47,502 --> 00:04:50,305 おぬしが言う “真”と“理”とは何だ? 61 00:04:51,640 --> 00:04:54,309 (薬売り) “真”とは 事のありさま 62 00:04:55,477 --> 00:04:58,513 “理”とは 心のありさま 63 00:04:59,147 --> 00:05:01,416 (佐々木)ほう ありさまとな 64 00:05:01,984 --> 00:05:04,653 (加世)じゃあ この海には アヤカシだけじゃなくて— 65 00:05:04,953 --> 00:05:07,022 モノノ怪もいるってこと なんですか? 66 00:05:12,361 --> 00:05:14,096 (てんびんの音) (薬売り)ん? 67 00:05:14,196 --> 00:05:15,063 (鈴の音) 68 00:05:15,163 --> 00:05:16,965 (加世)うん? (幻殃斉)えっ 69 00:05:17,299 --> 00:05:19,134 (幻殃斉)ん… うん? 70 00:05:20,936 --> 00:05:22,971 (菖源(そうげん)の悲鳴) 71 00:05:23,105 --> 00:05:26,141 まったく 頼りにならぬ坊主どもだ 72 00:05:26,909 --> 00:05:29,244 アヤカシだろうが モノノ怪だろうが— 73 00:05:29,344 --> 00:05:33,015 次こそは わが呪法にて 退散させて見せようぞ 74 00:05:35,651 --> 00:05:37,119 (加世)一緒に来てくださいよ! 75 00:05:37,552 --> 00:05:39,087 今 行きますよ 76 00:05:40,389 --> 00:05:41,256 だが… 77 00:05:41,356 --> 00:05:42,924 (てんびんの音) 78 00:05:43,558 --> 00:05:45,527 (薬売り)少々 やっかいですよ 79 00:05:47,396 --> 00:05:48,330 ああ… 80 00:05:59,207 --> 00:06:01,043 (三國屋多門(みくにやたもん))鬼火が こんなに! 81 00:06:01,343 --> 00:06:03,578 (佐々木) 明るいのはよいが 面妖(めんよう)な 82 00:06:04,646 --> 00:06:06,515 (幻殃斉) へさきのほうから 何か来る! 83 00:06:15,457 --> 00:06:17,592 (三國屋)あれが… アヤカシ!? 84 00:06:18,026 --> 00:06:19,428 (佐々木)一太刀で斬れそうだ 85 00:06:22,698 --> 00:06:26,268 (三國屋) ああ やはり アヤカシだ! 宙を飛んでいる 86 00:06:26,702 --> 00:06:31,206 (幻殃斉)あれは海座頭(うみざとう)だ 刀で斬れる手合いではない 87 00:06:31,306 --> 00:06:32,274 (佐々木)では どうする? 88 00:06:35,977 --> 00:06:40,749 フフッ あいつは問うてくる “自分の姿が怖いか”と 89 00:06:41,583 --> 00:06:43,285 “怖い”と答えてはならない 90 00:06:43,685 --> 00:06:46,121 “怖くない”と答えてやるのだ 91 00:06:46,221 --> 00:06:48,457 そしたら 去ってくれるんでしょうか? 92 00:06:48,557 --> 00:06:49,524 (幻殃斉)うん? 93 00:06:50,359 --> 00:06:53,128 あ いや… いや 待て ええ~ 94 00:06:53,628 --> 00:06:54,496 おお そうだ! 95 00:06:55,230 --> 00:06:57,766 この旅の行く先に 何があるかは分からない 96 00:06:58,700 --> 00:07:02,070 それが いちばん怖いと 答えればよいのだ 97 00:07:03,038 --> 00:07:04,606 (琵琶(びわ)の音) 98 00:07:06,308 --> 00:07:08,310 (海座頭)船の者たちに問う! 99 00:07:09,111 --> 00:07:10,112 (幻殃斉)ほら 来た 100 00:07:10,212 --> 00:07:12,647 一人ひとりに問う 101 00:07:12,748 --> 00:07:16,184 答えねば 生きた亡者となって とわに— 102 00:07:16,284 --> 00:07:19,721 この海を さまようであろう 103 00:07:20,022 --> 00:07:21,790 おお! 問うがよい 104 00:07:22,090 --> 00:07:22,791 よいな? 105 00:07:23,091 --> 00:07:24,259 あ… はい 106 00:07:30,432 --> 00:07:34,636 (海座頭) お前が恐ろしいことは— 107 00:07:35,303 --> 00:07:37,506 何だ! 108 00:07:37,606 --> 00:07:39,508 ええ ああっ 私 こここ… 109 00:07:39,608 --> 00:07:43,245 この旅の先に何があるのか わ 分からない… 110 00:07:43,345 --> 00:07:48,617 お前が 本当に恐ろしいことは 何だ? 111 00:07:49,151 --> 00:07:50,318 ホントは— 112 00:07:50,419 --> 00:07:55,690 か… 金を全て失い 一文無しに なってしまうことでございます 113 00:07:55,791 --> 00:07:57,292 (幻殃斉)あ~あ 114 00:07:57,392 --> 00:08:00,228 (琵琶の音) 115 00:08:00,729 --> 00:08:01,596 あっ! 116 00:08:02,330 --> 00:08:04,399 あっ あっ あっ あっ… 117 00:08:05,734 --> 00:08:08,336 (うめき声) 118 00:08:09,071 --> 00:08:10,305 うっ… うわ! 119 00:08:12,541 --> 00:08:15,610 (えずく声) 120 00:08:15,710 --> 00:08:18,513 ああ… ああ… 121 00:08:20,482 --> 00:08:21,516 あっ! 122 00:08:23,218 --> 00:08:25,487 南蛮渡来の大事な金魚が! 123 00:08:26,088 --> 00:08:30,092 大枚をはたき船の造作(ぞうさく)を変えてまで 運んできたのに… 124 00:08:31,693 --> 00:08:33,395 (琵琶の音) 125 00:08:34,296 --> 00:08:35,197 ん? 126 00:08:37,332 --> 00:08:41,369 お前が いちばん 恐ろしいことは何だ? 127 00:08:42,104 --> 00:08:44,773 この世に怖いものなど 俺にはない 128 00:08:47,676 --> 00:08:50,612 この九字兼定(くじかねさだ)は 俺の手に渡ってから— 129 00:08:50,779 --> 00:08:52,447 100人もの血を吸ってきた 130 00:08:53,582 --> 00:08:55,183 殺人鬼かよ 131 00:08:55,717 --> 00:08:58,520 (佐々木)一度は アヤカシを斬ってみたかったものよ 132 00:08:58,620 --> 00:08:59,688 だから無理だって 133 00:09:00,222 --> 00:09:01,123 たあっ! 134 00:09:01,423 --> 00:09:04,159 (琵琶の音) 135 00:09:04,259 --> 00:09:05,193 あっ! 136 00:09:06,228 --> 00:09:07,262 あ… 137 00:09:08,263 --> 00:09:09,331 うん? 138 00:09:15,470 --> 00:09:16,338 (佐々木)うわあ! 139 00:09:19,841 --> 00:09:22,477 (男の亡者)佐々木兵衛 140 00:09:22,677 --> 00:09:26,448 よくも辻(つじ)斬りしてくれたな 141 00:09:26,581 --> 00:09:28,150 (女の亡者)兵衛様 142 00:09:28,517 --> 00:09:31,786 迷い出たな 亡者ども 地獄へ帰れ! 143 00:09:32,854 --> 00:09:37,559 (岩井(いわい)師範) 地獄に落ちるのは お前だ 佐々木兵衛 144 00:09:37,659 --> 00:09:39,594 ひいっ 岩井!? 知らぬ! 145 00:09:39,694 --> 00:09:41,396 貴殿を斬ったのは 俺ではない 146 00:09:41,496 --> 00:09:43,331 こ… この兼定が 147 00:09:43,431 --> 00:09:45,800 だから 俺は江戸へ落ちようと… 148 00:09:46,468 --> 00:09:48,570 成仏してくれ! ああっ 149 00:09:56,711 --> 00:09:59,281 (剣が折れる音) 150 00:10:01,783 --> 00:10:04,786 (佐々木の叫び声) 151 00:10:04,953 --> 00:10:06,454 (源慧(げんけい))おお… 152 00:10:07,856 --> 00:10:09,357 (菖源)お侍様 153 00:10:09,457 --> 00:10:10,792 あの侍 154 00:10:10,892 --> 00:10:14,496 怖いものは ないというのは ウソであったということか 155 00:10:14,930 --> 00:10:16,631 これまで斬ってきた者たちが— 156 00:10:16,932 --> 00:10:19,601 本当は ずっと怖かったのであろうて 157 00:10:19,734 --> 00:10:22,437 ウソを言うと どうかなっちゃうんですか? 158 00:10:22,871 --> 00:10:24,406 あんなふうに 159 00:10:24,506 --> 00:10:26,341 あの様子から察するに— 160 00:10:26,441 --> 00:10:30,212 おのが心の内の恐怖を まざまざと見せられるのだろう 161 00:10:30,312 --> 00:10:31,279 えっ! 162 00:10:31,413 --> 00:10:34,916 じゃあ ホントのこと言っても ウソついても同じじゃないですか 163 00:10:36,251 --> 00:10:37,586 どうすればいいんですか? 164 00:10:38,286 --> 00:10:43,725 心の内が問題なれば 他人が どうこうできるわけもない 165 00:10:47,329 --> 00:10:48,697 やっかいって こういうこと? 166 00:10:48,797 --> 00:10:50,832 (琵琶の音) (海座頭)女! 167 00:10:51,499 --> 00:10:55,704 お前が いちばん 恐ろしいことは何だ? 168 00:10:55,804 --> 00:11:00,609 も もう 私… 今は あなたが いちばん怖いわよ 169 00:11:00,809 --> 00:11:03,878 でも 何だろう 私が いちばん怖いことって 170 00:11:03,979 --> 00:11:05,814 (海座頭)聞こえぬわ! 171 00:11:05,914 --> 00:11:07,515 せかさないでよ! 172 00:11:07,616 --> 00:11:11,720 ええと… 私は まだ ステキな恋とかも してないし 173 00:11:12,420 --> 00:11:15,256 これから きっと楽しいことだって いっぱいあるはず 174 00:11:15,390 --> 00:11:18,560 幸せな結婚して かわいい子供とかできて… 175 00:11:18,660 --> 00:11:21,963 でも… そんな これからのことを 何も経験しないで— 176 00:11:22,263 --> 00:11:24,599 死んじゃうってことが いちばん怖いのかな? 177 00:11:24,699 --> 00:11:27,302 (琵琶の音) 178 00:11:27,402 --> 00:11:28,303 ああっ! 179 00:11:31,373 --> 00:11:33,675 う… ううっ 180 00:11:37,479 --> 00:11:40,649 (うめき声) 181 00:11:41,449 --> 00:11:43,585 ああ~ うう… 182 00:11:44,586 --> 00:11:46,755 ああ~! 183 00:11:48,590 --> 00:11:50,659 ハァ ハァ… 184 00:11:58,033 --> 00:11:59,067 うっ! 185 00:12:06,441 --> 00:12:09,344 イヤ… イヤああ! 186 00:12:09,444 --> 00:12:11,513 私 もう結婚なんてしない 187 00:12:11,646 --> 00:12:14,349 子供なんて 絶対産みたくない! 188 00:12:14,449 --> 00:12:15,450 (薬売り)落ち着いて 189 00:12:15,550 --> 00:12:19,387 海座頭が見せるのは幻 悪い夢を見たに すぎない 190 00:12:19,487 --> 00:12:21,723 加世さんの“真”は 何も変わらない 191 00:12:23,324 --> 00:12:24,492 薬売りさん 192 00:12:24,826 --> 00:12:26,528 (琵琶の音) 193 00:12:27,429 --> 00:12:28,463 次は 俺か 194 00:12:29,431 --> 00:12:33,068 お前が いちばん 恐ろしいことは何だ? 195 00:12:33,368 --> 00:12:34,903 おっ 俺は 196 00:12:35,003 --> 00:12:36,805 俺が いちばん怖いのは— 197 00:12:36,905 --> 00:12:39,741 ま… まんじゅうだ アハハ 198 00:12:39,874 --> 00:12:40,875 まんじゅうが怖い 199 00:12:41,409 --> 00:12:42,077 落語かよ 200 00:12:42,377 --> 00:12:44,746 (琵琶の音) 201 00:12:44,846 --> 00:12:45,714 おっ! 202 00:12:49,417 --> 00:12:50,385 おっ 203 00:12:51,519 --> 00:12:54,522 おお… これは 204 00:12:57,926 --> 00:13:01,029 うーん なんと美味な酒蒸しの… 205 00:13:02,097 --> 00:13:04,032 うう!? ああっ! 206 00:13:04,132 --> 00:13:06,434 うう… ううっ 207 00:13:09,804 --> 00:13:12,040 (吐く音) 208 00:13:13,041 --> 00:13:17,779 どんな幻を見せられたか あんまし想像したくない 209 00:13:19,114 --> 00:13:21,649 (源慧)さて 残ったる3人 210 00:13:21,750 --> 00:13:24,886 誰から海座頭に答えますかな? 211 00:13:26,154 --> 00:13:28,056 問うがいい 答えよう 212 00:13:29,157 --> 00:13:33,561 お前が本当に恐ろしいことは 何だ? 213 00:13:33,895 --> 00:13:37,732 私が本当に恐ろしいこと それは— 214 00:13:37,832 --> 00:13:41,903 この世の果てには“形”も “真”も“理”もない世界が— 215 00:13:42,003 --> 00:13:45,974 ただ存在しているということを 知るのが… 怖い 216 00:13:46,074 --> 00:13:50,011 (琵琶の音) 217 00:13:54,549 --> 00:13:55,683 うん? 218 00:13:57,185 --> 00:13:58,186 うん 219 00:14:00,722 --> 00:14:02,857 はあ… ハハハ 220 00:14:04,526 --> 00:14:07,662 おお うん… 221 00:14:23,945 --> 00:14:25,046 薬売りさん 222 00:14:27,182 --> 00:14:30,051 アヤカシが集う モノノ怪の海 223 00:14:30,552 --> 00:14:36,057 その海へ この船を差し向けた訳 お聞かせ願いたく 224 00:14:36,558 --> 00:14:39,561 (菖源)え… わ… 私(わたくし)は 225 00:14:39,694 --> 00:14:40,962 (琵琶の音) 226 00:14:41,729 --> 00:14:45,967 お前が本当に恐ろしいことは 何だ? 227 00:14:46,901 --> 00:14:50,705 わ… 私(わたくし)が 本当に恐ろしいのは 228 00:14:52,640 --> 00:14:54,776 私(わたくし)が 本当に恐ろしいのは… 229 00:14:55,210 --> 00:14:56,845 (菖源)源慧様です (加世)えっ? 230 00:14:57,145 --> 00:15:01,249 源慧様は 大変 立派な お師匠様です 231 00:15:01,716 --> 00:15:04,052 けれど この江戸への旅では— 232 00:15:04,152 --> 00:15:06,688 おかしなことばかり なさっておられます 233 00:15:06,821 --> 00:15:08,256 そうかもしれぬな 234 00:15:09,524 --> 00:15:13,027 ゆうべも ずっと お題目を唱えておられましたが… 235 00:15:13,127 --> 00:15:19,100 (源慧と菖源の読経) 236 00:15:19,801 --> 00:15:21,703 (菖源)ああ… 237 00:15:22,971 --> 00:15:24,072 (源慧)菖源 238 00:15:24,172 --> 00:15:26,608 (菖源)は… はい 源慧様 239 00:15:26,808 --> 00:15:28,877 (源慧)船の長旅に酔ったか? 240 00:15:28,977 --> 00:15:30,612 (菖源)ああ… いえ 241 00:15:30,712 --> 00:15:34,282 (源慧)酔ったのなら 潮風に当たってくるがよい 242 00:15:34,582 --> 00:15:38,786 (菖源)私(わたくし)は… (源慧)夜風に当たってくるとよい 243 00:15:39,254 --> 00:15:40,555 (菖源)分かりました 244 00:15:40,655 --> 00:15:42,023 そうだったんだ 245 00:15:42,156 --> 00:15:44,692 (菖源)そうは 思いたくなかったのですが— 246 00:15:44,792 --> 00:15:46,828 私を上へと追いやったあとに… 247 00:15:49,898 --> 00:15:53,167 羅針盤に細工が できたのは— 248 00:15:55,169 --> 00:15:56,871 お師匠様だけです 249 00:16:13,755 --> 00:16:14,622 ん? 250 00:16:18,927 --> 00:16:20,929 どうして こんなこと… 251 00:16:21,029 --> 00:16:24,098 皆を 巻き込むつもりはなかった 252 00:16:24,666 --> 00:16:25,700 しかし漁師たちに— 253 00:16:25,800 --> 00:16:28,937 この“龍の三角”まで 乗せてくれと頼んでも— 254 00:16:29,037 --> 00:16:31,973 誰も引き受けては くれなかった 255 00:16:32,073 --> 00:16:34,142 震えていますね 256 00:16:34,776 --> 00:16:37,312 そこまで あなたを恐怖させながら— 257 00:16:37,612 --> 00:16:41,049 この海にまで来なくては ならなくなった訳 258 00:16:41,683 --> 00:16:44,285 海座頭! 問うがいい 259 00:16:45,320 --> 00:16:49,157 お前が本当に恐ろしいことは— 260 00:16:49,257 --> 00:16:50,959 それは 何だ? 261 00:16:51,960 --> 00:16:53,161 これを待っていたんだ 262 00:16:53,261 --> 00:16:54,662 ああ… 263 00:16:54,762 --> 00:16:59,033 私が50年もの間 ずっと そのことを考え— 264 00:16:59,133 --> 00:17:02,270 恐ろしさに 身を震わせ続けてきたもの 265 00:17:03,037 --> 00:17:04,973 それは この海にある 266 00:17:05,073 --> 00:17:07,809 (琵琶の音) 267 00:17:08,109 --> 00:17:12,080 それは この海に漂い続け この海そのものを— 268 00:17:12,180 --> 00:17:15,183 アヤカシの集う魔境に 変化させたもの 269 00:17:15,283 --> 00:17:17,085 (琵琶の音) 270 00:17:18,186 --> 00:17:19,954 それは 一体 何? 271 00:17:20,054 --> 00:17:21,756 (琵琶の音) 272 00:17:22,957 --> 00:17:23,958 それは… 273 00:17:24,058 --> 00:17:27,695 (琵琶の音) 274 00:17:27,795 --> 00:17:30,732 アヤカシの海を作りしもの それは… 275 00:17:30,832 --> 00:17:34,969 (琵琶の音) 276 00:17:37,138 --> 00:17:41,109 50年前に 私の妹が乗って流された— 277 00:17:41,209 --> 00:17:42,343 “虚(うつ)ろ船” 278 00:17:42,644 --> 00:17:43,978 (琵琶の音) 279 00:17:49,350 --> 00:17:53,287 (うなり声) 280 00:17:53,388 --> 00:17:58,860 (琵琶の音) 281 00:18:03,865 --> 00:18:06,167 (幻殃斉)海座頭は消えたのか? 282 00:18:06,734 --> 00:18:08,736 虚ろ船って何ですか? 283 00:18:09,070 --> 00:18:10,038 (幻殃斉)それはな… 284 00:18:10,838 --> 00:18:14,175 もともとは 大木をくり抜いて 造られた船のことだ 285 00:18:14,709 --> 00:18:16,110 中が 空洞? 286 00:18:16,411 --> 00:18:18,346 そんな船に乗ったら 出られないじゃない 287 00:18:18,846 --> 00:18:21,683 (幻殃斉)そう 出られない そういう船なのだ 288 00:18:21,783 --> 00:18:22,784 えっ? 289 00:18:23,084 --> 00:18:26,120 そんな船に 源慧さんの妹さんが どうして? 290 00:18:28,456 --> 00:18:30,091 (鎖の音) 291 00:18:30,191 --> 00:18:35,029 おお! 鎖の音が… 虚ろ船をしばった鎖の音が! 292 00:18:35,363 --> 00:18:37,365 (源慧のうめき声) 293 00:18:37,465 --> 00:18:38,366 あっ? 294 00:18:53,815 --> 00:18:58,186 (鎖が引き揚げられる音) 295 00:19:09,063 --> 00:19:14,836 (読経) 296 00:19:17,805 --> 00:19:20,274 (幻殃斉) これも幻なのか? 虚ろ船が… 297 00:19:20,374 --> 00:19:23,010 (加世) 幻じゃない! 私にも見えてる 298 00:19:23,111 --> 00:19:27,381 源慧様 50年前に 一体 何があったのですか? 299 00:19:27,482 --> 00:19:29,283 妹様は どうして— 300 00:19:29,383 --> 00:19:31,452 虚ろ船なんかで 流されたのですか? 301 00:19:31,753 --> 00:19:35,790 あっ こんな小さな船が この海を変えてしまったの? 302 00:19:40,261 --> 00:19:42,764 (源慧の読経) 303 00:19:42,864 --> 00:19:47,001 (木を削るような音) 304 00:19:47,502 --> 00:19:49,470 何だ? この音 305 00:19:49,771 --> 00:19:51,139 中から聞こえてくる 306 00:19:52,173 --> 00:19:53,040 人だ! 307 00:19:53,141 --> 00:19:55,143 中で人が ひっかいているぞ 308 00:19:55,243 --> 00:19:57,812 50年前から ずっと この中に… 309 00:19:57,912 --> 00:19:59,046 そんな ありえない! 310 00:19:59,147 --> 00:20:01,916 ひいい! もう耐えられない 311 00:20:02,016 --> 00:20:05,520 こんな… こんな恐ろしいことは もう たくさんよ! 312 00:20:05,820 --> 00:20:06,487 くう~! 313 00:20:07,121 --> 00:20:08,823 あのモノノ怪の— 314 00:20:09,891 --> 00:20:12,426 “真”と“理” 315 00:20:14,562 --> 00:20:17,064 お聞かせ願いたく候(そうろう) 316 00:20:19,033 --> 00:20:21,569 許しておくれ お庸(よう) 317 00:20:21,903 --> 00:20:23,471 50年もの間— 318 00:20:23,571 --> 00:20:27,975 お前のことを忘れた時は 一時(いっとき)も なかった 319 00:20:28,976 --> 00:20:31,546 私の身代わりに 虚ろ船に 自ら入り— 320 00:20:32,079 --> 00:20:35,016 “龍の三角”へ流れていった お前が— 321 00:20:35,116 --> 00:20:37,318 よもや… よもや ここを— 322 00:20:37,418 --> 00:20:40,588 このような アヤカシの集いし 魔境に変えるほどの— 323 00:20:40,888 --> 00:20:43,457 怨念を持ち続けようなどと… 324 00:20:44,859 --> 00:20:46,928 どうして思えよう 325 00:20:47,161 --> 00:20:51,232 (ひっかく音) 326 00:20:51,332 --> 00:20:54,035 (とどろく雷鳴) 327 00:20:58,940 --> 00:21:01,209 モノノ怪の“形” 328 00:21:02,910 --> 00:21:03,978 来たれり 329 00:21:04,078 --> 00:21:05,279 (剣の鳴る音) 330 00:21:10,484 --> 00:21:16,490 ♪~ 331 00:22:23,324 --> 00:22:29,330 ~♪