1 00:00:07,841 --> 00:00:09,300 (薬売り)憎しと思うこと 2 00:00:10,427 --> 00:00:11,886 悔しと思うこと 3 00:00:12,595 --> 00:00:14,681 決して許せぬと思うこと 4 00:00:15,515 --> 00:00:18,560 それは何だと 己が己に問えば― 5 00:00:18,685 --> 00:00:22,605 それは 底なしの海に 身を投げるも同じ 6 00:00:22,981 --> 00:00:25,900 果てなしの海に船出(ふなで)するも同じ 7 00:00:26,526 --> 00:00:28,194 決して 見てはならぬ 8 00:00:28,319 --> 00:00:30,905 決して 考えてはならぬ 9 00:00:31,990 --> 00:00:32,866 暗き海 10 00:00:33,366 --> 00:00:37,370 おのが内にありながら 決して のぞいてはならぬ場所 11 00:00:42,083 --> 00:00:48,089 ♪~ 12 00:01:54,572 --> 00:02:00,578 ~♪ 13 00:02:04,374 --> 00:02:06,459 (ひっかく音) (源慧(げんけい)の読経) 14 00:02:06,584 --> 00:02:11,256 (読経) 15 00:02:15,468 --> 00:02:21,015 (菖源(そうげん))源慧様 この中に 50年前に妹様が入られ― 16 00:02:21,141 --> 00:02:24,644 今まで この海を漂っていたと 申されるのですか? 17 00:02:24,769 --> 00:02:26,521 (柳幻殃斉(やなぎげんようさい))やはりな 18 00:02:26,646 --> 00:02:29,858 “龍(りゅう)の三角(さんかく)”は この“虚(うつ)ろ船”の 怨念が生み出した― 19 00:02:29,983 --> 00:02:31,359 モノノ怪(ケ)であったか 20 00:02:31,484 --> 00:02:34,362 (源慧の読経) 21 00:02:34,863 --> 00:02:35,864 (加世(かよ))でも 22 00:02:35,989 --> 00:02:39,325 それは モノノ怪の“真(まこと)”では ないということ 23 00:02:39,826 --> 00:02:42,620 (幻殃斉)ならば この虚ろ船を開いて― 24 00:02:42,745 --> 00:02:45,248 屍(しかばね)を 丁重に弔うことで― 25 00:02:45,373 --> 00:02:48,793 我らの船は陸(おか)へ帰ることが できようぞ 26 00:02:48,918 --> 00:02:50,587 (三國屋多門(みくにやたもん)) こ… これを開けるですと? 27 00:02:51,129 --> 00:02:53,965 そんな恐ろしいこと とても できません! 28 00:02:54,090 --> 00:02:55,550 (加世)だって 50年も― 29 00:02:55,675 --> 00:02:58,386 ずっと この中に 閉じ込められていたんでしょ? 30 00:02:58,511 --> 00:03:00,763 出たいよね きっと… 31 00:03:01,222 --> 00:03:04,475 (菖源)ああ 私は怖い… 怖いです 32 00:03:04,601 --> 00:03:07,312 人が こんな中で 何日も生きられるはずがない 33 00:03:08,021 --> 00:03:11,065 死んでから 50年も海に漂っていたら― 34 00:03:11,190 --> 00:03:13,985 屍とて 朽ち果てているはずです 35 00:03:14,110 --> 00:03:15,570 ならばこそ― 36 00:03:15,695 --> 00:03:20,033 その ふびんな源慧殿の妹君の魂を 救ってやるのだ 37 00:03:20,199 --> 00:03:22,327 それこそ 坊主の役目であろう 38 00:03:22,452 --> 00:03:23,912 うう… 39 00:03:24,078 --> 00:03:26,122 (三國屋) やはり 開けねばなりませぬか? 40 00:03:26,247 --> 00:03:27,206 えっ? 41 00:03:27,832 --> 00:03:29,000 うう… 42 00:03:29,125 --> 00:03:31,669 (加世) 開けて… いいんですよね? 43 00:03:31,794 --> 00:03:36,633 (薬売り) この海をずっと漂い 朽ちて モノノ怪と なりたくないのなら 44 00:03:37,717 --> 00:03:39,761 進んで モノノ怪になりたい人なんか― 45 00:03:39,886 --> 00:03:41,262 いないでしょう 46 00:03:41,888 --> 00:03:44,057 それに 薬売りさんは― 47 00:03:44,182 --> 00:03:47,143 モノノ怪になってしまった人を 成仏させるために― 48 00:03:47,268 --> 00:03:49,270 この海に来たんじゃないんですか? 49 00:03:49,395 --> 00:03:51,564 (源慧の読経) 50 00:03:51,689 --> 00:03:54,317 (何かを動かす音) (読経) 51 00:03:55,944 --> 00:03:57,612 (幻殃斉)では行くぞ! 52 00:03:58,029 --> 00:03:59,989 せ~の! 53 00:04:00,114 --> 00:04:02,033 (力む声) 54 00:04:02,158 --> 00:04:04,661 (三國屋) これは相当 手ごわいですなあ 55 00:04:04,786 --> 00:04:05,662 (幻殃斉)ああ ダメだ 56 00:04:05,787 --> 00:04:08,414 薬売りさん 見てないで手伝ってよ! 57 00:04:08,539 --> 00:04:09,749 (幻殃斉)もう一回! 58 00:04:10,166 --> 00:04:12,001 (加世たち)せ~の! 59 00:04:12,418 --> 00:04:15,546 (3人の力む声) 60 00:04:16,756 --> 00:04:17,924 そうか 61 00:04:18,800 --> 00:04:19,926 あっ! 62 00:04:20,301 --> 00:04:21,636 (薬売り)では… (幻殃斉)えっ? 63 00:04:21,761 --> 00:04:24,180 (加世)みんな よけてー! (三國屋)うわああ! 64 00:04:27,267 --> 00:04:31,312 (加世)もう~! いつも いきなりなんだから! 65 00:04:35,566 --> 00:04:38,778 (読経) 66 00:04:48,121 --> 00:04:49,038 開くぞ! 67 00:04:56,504 --> 00:04:58,840 (ひっかく音) 68 00:04:59,632 --> 00:05:00,675 (鈴の音) 69 00:05:10,893 --> 00:05:13,021 (源慧)私と お庸(よう)は― 70 00:05:13,146 --> 00:05:18,401 この海の近くにある 小さな島で生まれた 71 00:05:21,112 --> 00:05:24,407 父母は早くに海で亡くなった 72 00:05:24,991 --> 00:05:27,702 お庸とは 5つ違いで― 73 00:05:27,827 --> 00:05:31,456 ほかに 同じ年頃の子供も いなかったため― 74 00:05:31,581 --> 00:05:35,168 私と お庸は いつも一緒に過ごした 75 00:05:35,335 --> 00:05:37,670 本当に仲が よかった 76 00:05:38,212 --> 00:05:42,050 いや… むしろ よすぎたのかもしれない 77 00:05:43,176 --> 00:05:47,930 (若い源慧)私は15の年に 仏門へ入ることになった 78 00:05:49,307 --> 00:05:51,225 それは 島の決めたことで― 79 00:05:52,477 --> 00:05:54,729 私も そして お庸も― 80 00:05:55,396 --> 00:05:58,483 それに反対することなど できなかった 81 00:06:03,529 --> 00:06:04,739 (お庸)あに様 82 00:06:06,491 --> 00:06:07,825 (幻殃斉)おっ! (源慧)お庸… 83 00:06:07,950 --> 00:06:10,536 (菖源)妹様は… (加世)影も形も… 84 00:06:11,245 --> 00:06:13,498 (幻殃斉)骸(むくろ)すら ない (源慧)お庸! 85 00:06:13,956 --> 00:06:15,917 あ… ああ 86 00:06:18,044 --> 00:06:21,923 (源慧) その時から 私の名は源慧となった 87 00:06:22,423 --> 00:06:27,095 島から離れ 厳しい修行に 精進する日々が続いた 88 00:06:27,762 --> 00:06:33,017 その厳しさに耐えられず 脱落していく者たちが多い中― 89 00:06:33,142 --> 00:06:36,020 私は じっと耐えた 90 00:06:36,145 --> 00:06:39,524 お庸のことを忘れようと 思っていたのかもしれない 91 00:06:39,649 --> 00:06:41,109 しかし… 92 00:06:41,234 --> 00:06:46,072 お庸は 私のことを忘れた時など 1日とて なかったという 93 00:06:46,656 --> 00:06:51,994 私が立派な僧侶になることを 祈り続けていたのだった 94 00:06:52,286 --> 00:06:57,458 そうしているであろうことは 私には 十分に分かっていたのだ 95 00:06:57,917 --> 00:06:59,627 兄と妹 96 00:06:59,752 --> 00:07:03,881 決して 結ばれることのない縁(えにし) 97 00:07:04,632 --> 00:07:06,968 お庸は確かに この中に… 98 00:07:07,093 --> 00:07:09,971 (薬売り) 妹君が モノノ怪なのでは… 99 00:07:11,681 --> 00:07:13,141 ないようだ 100 00:07:13,683 --> 00:07:17,395 では モノノ怪の“真”は 一体 どこにあると? 101 00:07:17,520 --> 00:07:18,729 (てんびんの音) (幻殃斉)うん? 102 00:07:18,855 --> 00:07:19,689 (加世)うん? 103 00:07:20,314 --> 00:07:24,152 (幻殃斉)ああ… また モノノ怪との距離を測るのか? 104 00:07:24,777 --> 00:07:27,071 今度は測るだけでなく… 105 00:07:27,196 --> 00:07:27,822 あっ! 106 00:07:27,947 --> 00:07:30,575 (読経) 107 00:07:30,700 --> 00:07:33,494 (薬売り) たぐり寄せてみようかと 108 00:07:34,328 --> 00:07:36,622 モノノ怪の“真”を 109 00:07:38,249 --> 00:07:41,461 話していただけますか? 110 00:07:42,128 --> 00:07:45,339 50年前の この 虚ろ船と― 111 00:07:46,007 --> 00:07:48,217 妹君に まつわる事々を 112 00:07:48,342 --> 00:07:52,805 てんびんで“真”を… 明らかに? 113 00:07:53,097 --> 00:07:57,185 (読経) 114 00:08:03,483 --> 00:08:08,070 (源慧) 仏の道 人の道に背いて― 115 00:08:08,196 --> 00:08:12,825 お庸と一緒になることを 幾度 夢に見たことか 116 00:08:13,701 --> 00:08:17,538 それでも 私は 修行に耐えることを選んだ 117 00:08:19,081 --> 00:08:20,249 それから? 118 00:08:21,042 --> 00:08:23,628 それは 徳を積むためであったか 119 00:08:24,837 --> 00:08:26,047 煩悩を断ち切ろうという― 120 00:08:26,172 --> 00:08:29,217 強固な意志の なせぬがためであったか 121 00:08:29,759 --> 00:08:32,136 そうだったのでは ないのですか? 122 00:08:35,139 --> 00:08:36,933 怖かったのだよ 123 00:08:37,225 --> 00:08:38,893 私は恐ろしかった 124 00:08:40,061 --> 00:08:43,356 結ばれぬまでも お庸のそばに いたい 125 00:08:44,565 --> 00:08:46,609 それが 私の本心 126 00:08:48,653 --> 00:08:50,321 しかし… 127 00:08:50,530 --> 00:08:54,492 お庸とて女 誰かと いずれは結ばれる 128 00:08:54,909 --> 00:08:56,744 結ばれねば ならぬ 129 00:08:58,079 --> 00:09:00,373 それを知りたくなかった 130 00:09:00,998 --> 00:09:03,292 それを知った時の私の心が― 131 00:09:03,417 --> 00:09:06,671 とてつもなく恐ろしいものに なることを― 132 00:09:07,213 --> 00:09:11,050 私は畏怖していたのだよ 133 00:09:12,510 --> 00:09:14,804 源慧様が そんな… 134 00:09:14,929 --> 00:09:17,223 そんな心を お持ちであったとは 135 00:09:17,848 --> 00:09:19,850 (源慧) 持っていたのではない 136 00:09:19,976 --> 00:09:22,311 ずっと その心は 私の中に― 137 00:09:22,436 --> 00:09:25,439 居座り続けているのだ 菖源 138 00:09:26,732 --> 00:09:30,111 私のような師匠を持って すまないな 139 00:09:30,278 --> 00:09:32,989 (菖源の泣き声) 140 00:09:33,781 --> 00:09:38,411 でも どうして お庸さんは 虚ろ船なんかに… 141 00:09:42,081 --> 00:09:43,124 (鈴の音) 142 00:09:45,585 --> 00:09:46,460 そう 143 00:09:47,503 --> 00:09:49,088 それは… 144 00:09:51,757 --> 00:09:55,428 (源慧)私が 修行を始めてから― 145 00:09:55,553 --> 00:09:58,180 5年が過ぎた頃のこと 146 00:09:58,598 --> 00:10:01,601 “龍の三角”と呼ばれる海は― 147 00:10:02,143 --> 00:10:05,354 アヤカシが出る前でも― 148 00:10:05,479 --> 00:10:10,484 頻繁に荒れて 多くの船が沈んでいた 149 00:10:11,986 --> 00:10:14,447 特に その年の夏は― 150 00:10:14,572 --> 00:10:18,492 島の船の半分までもが 沈んでしまった 151 00:10:19,285 --> 00:10:22,705 島からの文(ふみ)で そのことを知った私は― 152 00:10:22,830 --> 00:10:25,791 それを己の定めと結びつけた 153 00:10:26,917 --> 00:10:27,835 文には決して― 154 00:10:27,960 --> 00:10:32,381 柱となって海を鎮めてほしいとは 書いていなかったが 155 00:10:32,506 --> 00:10:34,383 (若い源慧の泣き声) 156 00:10:34,508 --> 00:10:38,304 それを望む心は ありありと読み取れた 157 00:10:39,472 --> 00:10:41,432 このまま生涯を― 158 00:10:41,557 --> 00:10:45,478 えたいの知れぬ己の心におびえ 逃げ続けるよりは― 159 00:10:45,603 --> 00:10:47,313 柱となろう 160 00:10:47,730 --> 00:10:49,982 それを島の者たちが望むなら 161 00:10:50,107 --> 00:10:53,778 そして そのほうが 楽になるのであれば 162 00:10:54,195 --> 00:10:57,323 島の者たちは 私の決意を聞き― 163 00:10:57,448 --> 00:11:01,035 総出で 虚ろ船を仕立てることになった 164 00:11:01,160 --> 00:11:01,994 (加世)虚ろ船 165 00:11:02,119 --> 00:11:05,081 (幻殃斉)そこで 虚ろ船が出てくるわけか 166 00:11:05,581 --> 00:11:06,916 しかし ならば― 167 00:11:07,041 --> 00:11:10,086 本来は 源慧殿が入るべきところの 虚ろ船 168 00:11:10,586 --> 00:11:13,506 いかなる次第で お庸さんが入ることに? 169 00:11:13,631 --> 00:11:17,009 (鈴の音) 170 00:11:20,096 --> 00:11:21,472 (鎖の音) 171 00:11:23,474 --> 00:11:27,895 (源慧)島の者たちは それは見事な船を造り上げた 172 00:11:29,188 --> 00:11:31,732 (源慧)それが この 虚ろ船 173 00:11:33,025 --> 00:11:38,239 できたばかりの時は それは美しい仕立てであった 174 00:11:38,989 --> 00:11:43,411 船出を控えた夜明けに 私は お庸と再会した 175 00:11:44,537 --> 00:11:48,749 お庸は 16の美しい娘になっていた 176 00:11:49,458 --> 00:11:52,044 会わねば よかったのかもしれない 177 00:11:52,169 --> 00:11:54,130 いや どちらにしても― 178 00:11:54,296 --> 00:11:58,175 私は 虚ろ船に乗ることは できなかったであろう 179 00:12:00,469 --> 00:12:03,097 私は怖くなったのだ 180 00:12:03,848 --> 00:12:07,977 内側からは出られない 虚ろ船に乗って― 181 00:12:08,102 --> 00:12:10,104 仏になることなど 182 00:12:10,479 --> 00:12:15,734 私には とても できないのだと分かったのだ 183 00:12:17,653 --> 00:12:21,740 そんな 私の意気地のなさ 情けなさを― 184 00:12:22,116 --> 00:12:24,118 お庸は 優しさだと思った 185 00:12:24,743 --> 00:12:28,747 この私に そんな言葉が ふさわしくないということは― 186 00:12:29,415 --> 00:12:32,251 誰より私が知っていたのに! 187 00:12:35,963 --> 00:12:39,091 しかし もう船出の時は近い 188 00:12:39,216 --> 00:12:43,596 島の者たちは 私が柱となることを求めているのだ 189 00:12:44,096 --> 00:12:46,891 すると お庸は言った 190 00:12:47,516 --> 00:12:53,189 “あに様の代わりに この お庸が虚ろ船に乗ります”と 191 00:12:53,814 --> 00:12:54,773 ええっ! 192 00:12:54,899 --> 00:12:55,900 (源慧)もちろん 私は― 193 00:12:56,025 --> 00:12:58,194 “そんなことは させられない” と言った 194 00:12:59,695 --> 00:13:04,658 しばしの間 押し問答が続いたあと お庸が言ったのだ 195 00:13:06,535 --> 00:13:09,121 (お庸の声)あに様とは 決して結ばれぬ仲 196 00:13:09,497 --> 00:13:12,708 ならば ほかの誰とも結ばれぬうちに― 197 00:13:12,833 --> 00:13:15,252 私は 御仏の元へ参ります 198 00:13:16,003 --> 00:13:19,131 あに様が 功徳を積んでおられる間― 199 00:13:19,256 --> 00:13:20,633 私は ずっと… 200 00:13:21,217 --> 00:13:24,011 あに様の夢ばかり見ていました 201 00:13:24,553 --> 00:13:27,181 その つらい日々から 逃れられるのならば― 202 00:13:27,890 --> 00:13:30,476 喜んで 虚ろ船で参ります 203 00:13:30,601 --> 00:13:31,435 そんな… 204 00:13:32,144 --> 00:13:34,480 (源慧) 何ということであろう 205 00:13:34,980 --> 00:13:39,193 お庸は ずっと 私と同じことを思っていたのだ 206 00:13:41,153 --> 00:13:43,239 添い遂げられぬのなら― 207 00:13:43,614 --> 00:13:47,076 2人一緒に 虚ろ船に入ればよかったのだ 208 00:13:48,077 --> 00:13:50,913 それすらも 私には恐ろしかった 209 00:13:51,789 --> 00:13:56,669 私には その場から 逃げ出すことしか できなかった 210 00:13:57,920 --> 00:14:01,840 すぐに私も自害しよう 来世で再び会おうと 211 00:14:02,174 --> 00:14:05,427 心の中で お庸に言い続けた 212 00:14:06,428 --> 00:14:09,974 しかし 死ぬ勇気すら 私には なかった 213 00:14:10,891 --> 00:14:16,313 縁も ゆかりもない富士の山へ入り 修行の日々を送った 214 00:14:19,233 --> 00:14:23,571 私の修行の激しさを 人々は敬ったが 215 00:14:23,988 --> 00:14:25,322 50年の間― 216 00:14:25,698 --> 00:14:30,286 私は お庸の鎮魂を 唱え続けてきたのだ 217 00:14:33,581 --> 00:14:37,001 (幻殃斉)そうして お庸さんは 虚ろ船に 218 00:14:37,585 --> 00:14:40,880 そして 50年もの間 海を漂い続け― 219 00:14:41,005 --> 00:14:43,090 モノノ怪になったと 220 00:14:43,215 --> 00:14:44,800 お庸さんが かわいそうよ! 221 00:14:47,177 --> 00:14:48,220 (薬売り)違う 222 00:14:48,345 --> 00:14:50,055 (てんびんの音) (加世)えっ 違うって何が? 223 00:14:50,639 --> 00:14:53,267 この海に渦巻く モノノ怪 224 00:14:53,976 --> 00:14:58,522 それは お庸さんの怨念ではない 225 00:14:58,647 --> 00:14:59,857 (てんびんの音) 226 00:14:59,982 --> 00:15:02,526 (薬売り)それは“真”では― 227 00:15:03,736 --> 00:15:04,570 …ない 228 00:15:04,695 --> 00:15:06,363 (鈴の音) 229 00:15:06,488 --> 00:15:10,910 そういえば 源慧殿 その手で隠されている物… 230 00:15:11,035 --> 00:15:12,119 (加世)えっ? (幻殃斉)何? 231 00:15:13,704 --> 00:15:15,456 (薬売り)どうされた? (源慧)ああっ! 232 00:15:20,502 --> 00:15:23,797 (薬売り)ずっと見ていたのだな? (菖源)何を今更… 233 00:15:24,381 --> 00:15:27,760 (薬売り) お庸さんを恐れ 己の心を恐れ― 234 00:15:28,594 --> 00:15:30,012 恐れは恐れを呼び― 235 00:15:30,512 --> 00:15:35,476 いつしか人が得心できぬほどの 強大な影となって― 236 00:15:35,601 --> 00:15:39,939 あなたと身を分かち 海を さまよっていた 237 00:15:40,856 --> 00:15:41,690 (剣の鳴る音) 238 00:15:42,358 --> 00:15:43,984 (薬売り)“真”は― 239 00:15:45,319 --> 00:15:46,236 あなただ! 240 00:15:47,404 --> 00:15:49,490 (源慧)そ… そうだったのか 241 00:15:50,115 --> 00:15:54,995 私は それを50年もの間 恐れ続けていたというのか 242 00:15:56,747 --> 00:15:58,582 では お庸は… 243 00:15:58,707 --> 00:16:00,417 お庸は どこへ… 244 00:16:00,542 --> 00:16:02,670 (薬売り)モノノ怪になる ことなどなく― 245 00:16:02,795 --> 00:16:06,131 柱となって この海と1つになった 246 00:16:06,256 --> 00:16:07,800 あの海坊主は― 247 00:16:07,925 --> 00:16:12,012 心の奥底にある別のものを 覆い隠さんがための― 248 00:16:12,137 --> 00:16:13,597 あなたの… 249 00:16:19,436 --> 00:16:21,313 分身 250 00:16:25,317 --> 00:16:26,944 源慧殿に問う 251 00:16:27,319 --> 00:16:30,781 モノノ怪を斬るということは 源慧殿の心を斬ること 252 00:16:31,490 --> 00:16:34,034 2つに分かたれた心を1つとし― 253 00:16:34,159 --> 00:16:36,829 あなたが最初から なかったものとしたかった― 254 00:16:36,954 --> 00:16:41,458 あなたの本心を 心へ戻すこととなる 255 00:16:42,209 --> 00:16:44,753 それでもよいかと 問う! 256 00:16:45,671 --> 00:16:47,506 ああ… ああ… 257 00:16:47,631 --> 00:16:48,757 (泣き声) 258 00:16:49,508 --> 00:16:51,343 (若い源慧の声)出世してえんだよ 259 00:16:51,760 --> 00:16:53,053 (泣き声) 260 00:16:53,178 --> 00:16:56,598 (若い源慧の声) 坊主になったのも 出世して いい生活して… 261 00:16:56,932 --> 00:16:58,225 死ぬためなんかじゃねえや 262 00:16:58,684 --> 00:16:59,685 まっこと残念だ 263 00:16:59,810 --> 00:17:02,521 (若い源慧の声)助かったー! こいつは 馬鹿(ばか)じゃねえのか? 264 00:17:02,646 --> 00:17:05,566 (お庸)御仏の元に参ります前に 1つだけ お願いが… 265 00:17:05,691 --> 00:17:07,735 (若い源慧の声)何だ 金か? ねえぞ そんなもん 266 00:17:07,860 --> 00:17:10,487 (お庸) お庸はずっと あに様のこと― 267 00:17:10,904 --> 00:17:12,364 お慕い申し上げておりました 268 00:17:16,702 --> 00:17:17,536 (若い源慧)えっ? 269 00:17:18,328 --> 00:17:20,622 (お庸)あに様とは 決して結ばれぬ仲 270 00:17:21,123 --> 00:17:23,834 ならば ほかの誰とも結ばれぬうちに― 271 00:17:24,293 --> 00:17:26,754 私は 御仏の元へ参ります 272 00:17:30,132 --> 00:17:31,425 フフッ 273 00:17:31,967 --> 00:17:36,138 何か 不思議と とても生きた心地がします 274 00:17:42,936 --> 00:17:47,066 (源慧の声) 私は 妹に教えられたのだ 275 00:17:48,567 --> 00:17:53,614 正直 私は お庸のことが 好きかどうかも分からなかった 276 00:17:54,323 --> 00:18:00,079 こんな くだらない人間の私にも ただ1つ 分かったことは… 277 00:18:04,374 --> 00:18:07,336 愛される喜び 278 00:18:12,174 --> 00:18:15,719 随分 時間が かかってしまったな 279 00:18:24,394 --> 00:18:26,230 お願いいたす 280 00:18:27,731 --> 00:18:29,149 斬ってくだされ 281 00:18:29,274 --> 00:18:30,317 (剣の鳴る音) 282 00:18:30,442 --> 00:18:31,652 承知 283 00:18:32,069 --> 00:18:33,821 解き 放つ! 284 00:18:36,365 --> 00:18:38,492 (退魔(たいま)の剣)解き放つ! 285 00:18:45,874 --> 00:18:46,708 うん? 286 00:18:48,210 --> 00:18:50,462 ウオオオ! 287 00:18:56,844 --> 00:18:58,137 (うなり声) 288 00:19:00,973 --> 00:19:02,349 ウオオ! 289 00:19:03,392 --> 00:19:06,436 (剣の叫び声) 290 00:19:15,028 --> 00:19:17,197 (モノノ怪の叫び声) 291 00:19:45,225 --> 00:19:47,978 (菖源)うっ (加世たち)ああ… 292 00:19:49,479 --> 00:19:50,689 源慧様 293 00:19:50,814 --> 00:19:54,067 大丈夫ですよ 息もありますし 294 00:19:54,568 --> 00:19:57,529 (加世)ホントは キレイな顔してたんだ 295 00:19:59,072 --> 00:20:02,409 何か… 少し 笑ってるみたい 296 00:20:11,501 --> 00:20:12,628 (お庸の声)あに様 297 00:20:12,753 --> 00:20:18,759 ♪~ 298 00:20:23,430 --> 00:20:24,681 (源慧)お庸? 299 00:21:39,840 --> 00:21:45,846 ~♪ 300 00:21:54,104 --> 00:21:56,940 (佐々木兵衛(ささきひょうえ))今まで ありがとう 301 00:22:05,282 --> 00:22:06,658 うう! 302 00:22:06,783 --> 00:22:09,286 (うめき声) 303 00:22:09,411 --> 00:22:11,913 ああっ! ハァ 304 00:22:12,205 --> 00:22:16,043 ハァ ハァ ハァ 305 00:22:16,460 --> 00:22:17,753 ハッハ… 306 00:22:17,961 --> 00:22:21,340 ハハハハ 307 00:22:21,673 --> 00:22:24,843 フフフ ヘヘヘヘッ 308 00:22:25,343 --> 00:22:26,803 絶対に… 309 00:22:28,096 --> 00:22:29,431 忘れないよ