1 00:00:01,001 --> 00:00:07,007 ♪〜 2 00:01:23,541 --> 00:01:29,547 〜♪ 3 00:01:34,052 --> 00:01:35,720 (美佐江(みさえ)) うちには そんなお金… 4 00:01:36,679 --> 00:01:40,725 (医師)あなたの命の問題ですよ (美佐江)は… はぁ… 5 00:01:41,351 --> 00:01:42,852 (受付)お大事に どうぞ 6 00:01:45,396 --> 00:01:47,565 (司会) いよいよ 期待のアニメ番組— 7 00:01:47,690 --> 00:01:50,443 「マロミまどろみ」が スタートするわけですが 8 00:01:50,568 --> 00:01:52,612 いかがですか? 鷺(さぎ)さん 9 00:01:52,737 --> 00:01:55,073 マロミの生みの親として 今のお気持ちは? 10 00:01:55,365 --> 00:01:56,533 (月子(つきこ))はい あの… 11 00:01:56,658 --> 00:02:02,247 マロミが ここまで 皆さんに愛され 育ってくれて 何というか… 12 00:02:03,248 --> 00:02:08,837 これからも このアニメを通じて 安らぎの輪が広まってくれればと 13 00:02:09,003 --> 00:02:11,631 (コメンテーター) あっ… 和みますよね この子 見てると 14 00:02:11,923 --> 00:02:13,383 (月子)ありがとうございます 15 00:02:13,508 --> 00:02:17,345 そういうふうに思っていただけると とても うれしいです 16 00:02:17,470 --> 00:02:20,598 (司会) それでは 「マロミまどろみ」をお楽しみに! 17 00:02:27,272 --> 00:02:30,108 (女子学生A) なんか また出たらしいよ 少年バット 18 00:02:30,233 --> 00:02:32,819 (女子学生B) 違うよ もう少年じゃないんだってば 19 00:02:33,778 --> 00:02:36,197 (主婦A) なんでも 屈強な岩男なんですって 20 00:02:38,116 --> 00:02:40,618 (主婦B) 体中ゴツゴツでデコボコしてて… 21 00:02:42,829 --> 00:02:45,123 (子供A) 顔なんか こ〜んなに ただれてて… 22 00:02:47,083 --> 00:02:50,003 (主婦B) 人間っていうより バケモノなんですって バケモノ 23 00:02:52,297 --> 00:02:55,216 (ローラーブレードの音) 24 00:03:04,350 --> 00:03:08,021 (少年バット)ハァハァハァ… 25 00:03:08,479 --> 00:03:13,526 あなたのことは知っています どうして ここにいるのかも 26 00:03:13,860 --> 00:03:16,738 (少年バット)ハァハァ… 27 00:03:17,071 --> 00:03:21,242 私が あなたを呼んだのですね… 28 00:03:21,409 --> 00:03:23,745 (少年バット)ハァハァ… 29 00:03:23,912 --> 00:03:28,583 確かに 私は考えました “もう いなくなりたい” 30 00:03:28,708 --> 00:03:32,378 “このうえ 手術までして 生き長らえたくない”と 31 00:03:33,922 --> 00:03:35,798 私は間違っていました 32 00:03:37,342 --> 00:03:40,678 たとえ一瞬でも “死にたい”などと… 33 00:03:40,803 --> 00:03:45,099 それでは あの人を… 主人を裏切ることになる 34 00:03:45,808 --> 00:03:48,645 あなたも 主人をよく知っているはずです 35 00:03:48,770 --> 00:03:51,522 (少年バット)うん? (美佐江)まだ分からないのですか 36 00:03:52,106 --> 00:03:56,027 この部屋を見て 何も思い当たりませんか? 37 00:03:58,988 --> 00:03:59,822 (少年バット)あっ… 38 00:04:00,114 --> 00:04:03,243 そうです 私の主人は… 39 00:04:03,368 --> 00:04:06,120 (電動ブレーカーの音) 40 00:04:06,246 --> 00:04:08,122 (猪狩(いかり)) あっ! そっち行っちゃダメだ 41 00:04:09,958 --> 00:04:12,377 (笛の音) 42 00:04:21,344 --> 00:04:24,681 (美佐江) あなたは 現実から 逃れようとする人たちを— 43 00:04:24,806 --> 00:04:27,684 見境なく襲っているそうですね 44 00:04:28,935 --> 00:04:30,061 (少年バット)フッ… 45 00:04:30,228 --> 00:04:33,690 それで その人たちを 楽にしてあげているとでも? 46 00:04:34,524 --> 00:04:37,277 救済のつもりだとでも 言いたいのですか? 47 00:04:37,402 --> 00:04:39,195 (少年バット)ンッ… ンンッ! 48 00:04:39,487 --> 00:04:41,906 (美佐江)お座りなさい (少年バット)ンッ… 49 00:04:42,198 --> 00:04:44,993 人間は あなたが考えているほど— 50 00:04:45,118 --> 00:04:48,788 弱くも あさましくもないと いうことを話してあげます 51 00:04:48,913 --> 00:04:51,207 そこへ お座りなさい 52 00:04:52,959 --> 00:04:54,502 (少年バット)ンンッ… 53 00:04:55,878 --> 00:04:58,464 (美佐江) 私は生まれつき体が弱く— 54 00:04:58,589 --> 00:05:01,759 子供のころから 長くは生きられないと— 55 00:05:01,884 --> 00:05:04,053 お医者さまにも言われていました 56 00:05:04,178 --> 00:05:05,138 (少年バット)はぁ? 57 00:05:05,263 --> 00:05:09,767 (美佐江) だから 成人しても 結婚など夢にも思っていなかった 58 00:05:10,310 --> 00:05:15,356 そんな私の前に あの人が現れ 言ってくれたのです 59 00:05:16,482 --> 00:05:19,235 “私の全てを受け入れる”と 60 00:05:20,611 --> 00:05:23,656 (美佐江) “僕には 君しかいない”と 61 00:05:29,037 --> 00:05:30,538 うれしかった 62 00:05:31,372 --> 00:05:36,294 私たちは一緒になりました ささやかで つつましい生活 63 00:05:36,919 --> 00:05:39,422 私は幸せでした 64 00:05:39,547 --> 00:05:40,965 (美佐江)でも… (少年バット)あっ… 65 00:05:41,090 --> 00:05:44,469 (美佐江) 幸福は 長くは続かなかった 66 00:05:44,594 --> 00:05:49,891 程なく分かったのです 私が子供を産めない体だと 67 00:05:50,224 --> 00:05:53,019 母体が出産に耐えられないと 68 00:05:53,144 --> 00:05:56,773 (少年バット)ンンッ… (美佐江)私は絶望しました 69 00:05:56,981 --> 00:06:00,193 主人に どう顔向けしていいか… 70 00:06:00,318 --> 00:06:03,196 あのときほど 自分を呪ったことはありません 71 00:06:03,321 --> 00:06:04,280 (少年バット)ンンッ… 72 00:06:04,530 --> 00:06:07,658 (美佐江)そんな私をあの人は… (少年バット)ンンッ… 73 00:06:08,117 --> 00:06:10,286 許してくれたのです 74 00:06:10,411 --> 00:06:12,580 “現実を受け入れよう” 75 00:06:12,705 --> 00:06:15,166 そう言って 抱きしめてくれたのです 76 00:06:15,666 --> 00:06:17,752 私は泣きました 77 00:06:17,877 --> 00:06:22,673 あの人の腕の中で 声を上げて泣きました 78 00:06:23,007 --> 00:06:26,260 (少年バット)ハァ… (美佐江)あんなにも気高く— 79 00:06:26,886 --> 00:06:28,346 崇高な人を… 80 00:06:28,513 --> 00:06:29,347 ハァハァ… 81 00:06:29,472 --> 00:06:31,474 (美佐江)私は知りません 82 00:06:32,225 --> 00:06:33,476 (警備員)遅(おせ)えじゃねえか! 83 00:06:33,559 --> 00:06:35,436 なに遅刻してんだよ 84 00:06:35,853 --> 00:06:39,232 (猪狩) す… すいません 前の現場が ちょっと押しちゃって 85 00:06:39,357 --> 00:06:41,651 (警備員) 新米が言い訳してんじゃねえ! 86 00:06:41,776 --> 00:06:44,320 (警備員)さっさと持ち場に就け! (猪狩)は… はい 87 00:06:44,487 --> 00:06:46,280 (猪狩)ンッ! ンンッ… 88 00:06:46,405 --> 00:06:47,824 (警備員)こら! 何やってんだ! 89 00:06:48,491 --> 00:06:50,451 す… すんません 90 00:06:51,327 --> 00:06:53,246 私は決めました 91 00:06:53,371 --> 00:06:56,374 “自分も この人に恥じぬ女になろう” 92 00:06:56,499 --> 00:07:02,046 “思うに任せぬ この身に甘えず どこまでも尽くしていこう”と 93 00:07:02,380 --> 00:07:03,047 (少年バット)グッ… 94 00:07:03,381 --> 00:07:07,677 でも いつのころからか 私の思いとは裏腹に— 95 00:07:07,802 --> 00:07:11,305 主人は 次第に 家を空けるようになりました 96 00:07:11,973 --> 00:07:14,308 “仕事なのだから しかたがない”と— 97 00:07:14,434 --> 00:07:17,145 最初は 私も自分に言い聞かせていた 98 00:07:17,270 --> 00:07:18,146 (少年バット)ンンッ… 99 00:07:18,271 --> 00:07:23,025 (美佐江) けれど “とうとう あの人は 私が疎ましくなったのではないか” 100 00:07:23,526 --> 00:07:28,072 “仕事にかこつけて 私から離れていたいのではないか” 101 00:07:28,197 --> 00:07:29,949 ムリもありません 102 00:07:30,074 --> 00:07:34,287 このとおり 私は何の役にも立たない病気の身 103 00:07:35,329 --> 00:07:36,873 耐え難かった 104 00:07:37,915 --> 00:07:39,792 あの人が離れていくことより— 105 00:07:39,917 --> 00:07:44,130 自分が あの人の 重荷になっているというそのことが 106 00:07:44,255 --> 00:07:47,925 それなら… あの人を 苦しめるくらいなら いっそ… 107 00:07:50,720 --> 00:07:52,472 (美佐江)恥ずかしい (少年バット)ンッ… 108 00:07:52,763 --> 00:07:57,185 主人は私のために 身を粉にして働いてくれている 109 00:07:57,310 --> 00:07:58,769 なのに その私が— 110 00:07:58,895 --> 00:08:01,939 主人を信じてあげられなくて どうするんでしょう 111 00:08:02,273 --> 00:08:03,691 なんて卑しい… 112 00:08:03,816 --> 00:08:06,694 なんて バチ当たりな考えなんでしょう 113 00:08:07,195 --> 00:08:10,865 私は自分を恥じ 主人の帰りを待ちました 114 00:08:10,990 --> 00:08:12,408 (少年バット)ンンッ! (美佐江)そう 115 00:08:12,533 --> 00:08:14,869 私の居場所が あの人であるように— 116 00:08:14,994 --> 00:08:19,415 あの人の居場所も また私なのだと 固く そう信じて 117 00:08:19,874 --> 00:08:22,043 (警備員) たまには早く帰ってやんなよ 118 00:08:22,168 --> 00:08:24,795 (猪狩)うん? (警備員)お母ちゃんの所によ 119 00:08:24,921 --> 00:08:27,131 せっかく 早上がりできるってのに— 120 00:08:27,256 --> 00:08:30,176 3か所も 現場 ハシゴすることないっしょ 121 00:08:30,426 --> 00:08:33,054 いいんですよ どうせ もう… 122 00:08:35,139 --> 00:08:37,099 (中学生A) ああ… テストかったりい 123 00:08:37,225 --> 00:08:40,561 (中学生B) マジ超うぜえ 少年バット来ねえかな 124 00:08:40,937 --> 00:08:44,273 (中学生C) どうせなら 学校とか ぶっ壊してほしいよな 125 00:08:44,440 --> 00:08:46,651 (ICカードのタッチ音) 126 00:08:46,859 --> 00:08:48,152 (猪狩)う〜んと… 127 00:08:48,277 --> 00:08:49,362 (ぶつかる音) ンンッ… 128 00:08:49,570 --> 00:08:51,364 アッ… ハァ… 129 00:08:55,201 --> 00:08:57,703 (女性)どこ行く? (女性)私 海行きたいな 130 00:08:59,497 --> 00:09:00,790 (女子学生)ねえねえ どこ行く? 131 00:09:00,915 --> 00:09:04,752 (女子学生) えっ そうなの? ちょっと ありえなくない? 132 00:09:04,919 --> 00:09:07,755 (女子学生たちの話し声) 133 00:09:12,969 --> 00:09:14,345 (猪狩)どうせ どこにも… 134 00:09:14,470 --> 00:09:16,973 (笛の音) 135 00:09:20,476 --> 00:09:21,435 あっ… 136 00:09:29,527 --> 00:09:31,070 (猪狩)遅くなって すみません 137 00:09:31,404 --> 00:09:35,533 (犬飼(いぬかい)) いろいろ教えてやっから 荷物は そこでいいからよ 138 00:09:36,367 --> 00:09:38,536 (犬飼)…で 何したの? (猪狩)はぁ? 139 00:09:38,744 --> 00:09:40,705 (犬飼)とぼけなさんなって 140 00:09:40,830 --> 00:09:44,292 その年で警備員ってことは よっぽど何かあったんでしょう 141 00:09:44,584 --> 00:09:46,544 (猪狩)アア… (犬飼)待った! 142 00:09:47,003 --> 00:09:49,171 その面構えからすると… 143 00:09:49,297 --> 00:09:50,256 コレか? 144 00:09:50,548 --> 00:09:52,174 (猪狩)いえ 私は… 145 00:09:52,300 --> 00:09:56,762 (犬飼) チェッ… ハズレか いや お仲間かと思ったんだけどな 146 00:09:57,179 --> 00:09:58,264 あんた… 147 00:09:58,556 --> 00:10:02,018 お… 俺? いや 俺は5年 食らい込んでたのよ 148 00:10:02,727 --> 00:10:04,604 出たはいいけど 仕事はねえし 149 00:10:04,729 --> 00:10:09,191 まあ 警備員だったら ほら… 履歴も資格も関係ねえからって 150 00:10:09,358 --> 00:10:11,736 えっ? うん? 151 00:10:11,861 --> 00:10:14,864 旦那? 猪狩の旦那? 152 00:10:15,197 --> 00:10:18,075 やっぱり そうだ 猪狩の旦那だ 153 00:10:18,200 --> 00:10:21,746 いや 俺ですよ ほら! 昔 旦那にお世話になった… 154 00:10:22,163 --> 00:10:25,875 (猪狩)ハッ… 犬飼か (犬飼)ええ ヘヘヘッ… 155 00:10:26,417 --> 00:10:29,920 (美佐江) 日ごろは顧みなくても いずれは帰ってくる所 156 00:10:30,588 --> 00:10:34,216 疲れを癒やし 安らぎを取り戻す所 157 00:10:34,592 --> 00:10:38,095 この家が あの人にとって そんな場所であるよう— 158 00:10:38,220 --> 00:10:41,432 私は努めて 妻であろうと心がけました 159 00:10:41,599 --> 00:10:42,558 (飯台を壊す音) 160 00:10:43,267 --> 00:10:45,728 あの人が いつ帰ってきてもいいように— 161 00:10:45,853 --> 00:10:48,439 毎日 お布団を干し お風呂を沸かし… 162 00:10:48,606 --> 00:10:49,440 (障子を壊す音) 163 00:10:49,857 --> 00:10:53,444 (美佐江) いつだったか 珍しく 家で夕飯を取りながら— 164 00:10:53,569 --> 00:10:55,946 ふと こんなことを 言ってくれました 165 00:10:56,072 --> 00:10:58,908 “やっぱり お前のメシが いちばんだ” 166 00:10:59,033 --> 00:11:01,410 “俺が 心おきなく仕事ができるのも—” 167 00:11:01,535 --> 00:11:03,954 “お前のおかげだ”って 168 00:11:04,372 --> 00:11:06,540 そんなある日のことでした 169 00:11:06,666 --> 00:11:09,669 主人と私が 積み上げてきたものを— 170 00:11:09,794 --> 00:11:13,422 一瞬にして打ち砕いてしまう 出来事が起きたのは 171 00:11:14,548 --> 00:11:15,925 (少年バット)フフッ… 172 00:11:16,467 --> 00:11:18,928 そうです あなたの事件です 173 00:11:26,936 --> 00:11:28,771 (猪狩)皮肉なもんだな 174 00:11:28,896 --> 00:11:33,442 かつての警察と泥棒が 同じ仕事で顔を合わせるとは 175 00:11:33,692 --> 00:11:35,945 いや こっちこそ びっくりでさぁ 176 00:11:36,070 --> 00:11:39,073 まさか こんな所で旦那に会えるなんてよ 177 00:11:39,198 --> 00:11:40,658 (猪狩)しかし 感心じゃないか 178 00:11:40,783 --> 00:11:46,455 お前のことだから 刑期を終えても てっきり 元の稼業に戻るとばかり 179 00:11:46,622 --> 00:11:48,582 ああ〜 ダメダメ! 180 00:11:48,707 --> 00:11:52,670 もう俺みたいな昔ながらの盗っ人(と)は お呼びじゃありませんよ 181 00:11:53,170 --> 00:11:56,966 錠前破りが“ピッキング”ですよ 冗談じゃねえ 182 00:11:57,091 --> 00:11:59,927 (猪狩) お前は昔から時代がかってたぜ 183 00:12:00,511 --> 00:12:03,931 ほっかむりに 唐草模様の風呂敷包みなんて— 184 00:12:04,056 --> 00:12:06,142 挙げたこっちが驚いた 185 00:12:06,475 --> 00:12:09,145 泥棒っつったら 唐草模様でしょうが 186 00:12:09,478 --> 00:12:13,441 (猪狩) そりゃ そうだ 泥棒っつったら唐草模様 187 00:12:13,566 --> 00:12:18,404 酔っ払いっつったら寿司折(すしおり) おでんだったら丸 三角 四角 188 00:12:19,155 --> 00:12:23,200 (猪狩)それが お約束ってもんだ (犬飼)ヘヘヘヘッ… 189 00:12:23,409 --> 00:12:27,913 まあ 何にせよ あれだ すっかり時代が変わっちまった 190 00:12:29,957 --> 00:12:31,459 どこも同じか 191 00:12:31,584 --> 00:12:33,669 (犬飼)えっ? (猪狩)いや… 192 00:12:34,044 --> 00:12:37,131 何だろうなぁ お前の顔を見て— 193 00:12:37,256 --> 00:12:40,092 不思議と 家に帰ってきたような気分になった 194 00:12:40,342 --> 00:12:42,178 そんなもんスかねえ 195 00:12:42,303 --> 00:12:43,429 (クラクション) うん? 196 00:12:43,554 --> 00:12:45,139 (笛の音) 197 00:12:45,306 --> 00:12:48,142 (バックブザー) 198 00:12:48,309 --> 00:12:52,688 (バックブザー) 199 00:12:52,813 --> 00:12:56,108 覚えてますよ 旦那にされた説教 200 00:12:58,027 --> 00:13:00,613 “たとえ 世の中が間違っていようとも—” 201 00:13:00,738 --> 00:13:02,573 “正しいことは きっとある” 202 00:13:02,698 --> 00:13:05,993 “だから 俺たちは生きていける”ってね 203 00:13:06,702 --> 00:13:07,703 フフッ… 204 00:13:08,204 --> 00:13:11,248 (犬飼)ヘヘヘヘッ… (猪狩)ハハハハッ… 205 00:13:11,499 --> 00:13:13,751 そんな主人の信念を… 206 00:13:13,918 --> 00:13:15,794 (少年バット)ハァハァ… 207 00:13:16,045 --> 00:13:17,796 (美佐江) あなたは踏みつけにし— 208 00:13:17,922 --> 00:13:21,050 あざ笑うかのように 次々と人を襲った 209 00:13:21,217 --> 00:13:22,801 (少年バット)ンンッ… 210 00:13:23,344 --> 00:13:25,846 (美佐江) あるとき 主人に言われました 211 00:13:25,971 --> 00:13:29,266 “犯人(ホシ)を挙げるまで 家に帰らない”と 212 00:13:29,725 --> 00:13:32,228 (美佐江)私は承知しました (少年バット)ハハハッ… 213 00:13:32,353 --> 00:13:36,482 “この犯人逮捕に 全てを懸けるつもりでいる” 214 00:13:36,607 --> 00:13:40,778 それなら その決心を励まし 支えるのが妻の務め 215 00:13:41,445 --> 00:13:44,990 離れていても 私の心は主人と一緒でした 216 00:13:45,115 --> 00:13:48,994 私たちは2人で あなたに立ち向かったのです 217 00:13:49,119 --> 00:13:53,040 (少年バット)ハハハハッ… (美佐江)なのに… それなのに… 218 00:13:53,165 --> 00:13:55,834 (少年バット)ハハハハッ… 219 00:13:56,043 --> 00:13:57,670 (犬飼)クビですか 220 00:13:58,504 --> 00:14:03,008 (猪狩) もう俺みたいな昔ながらの刑事は お呼びじゃないのさ 221 00:14:03,133 --> 00:14:04,843 お前さんと同じだよ 222 00:14:04,969 --> 00:14:07,555 (犬飼) 旦那は貧乏クジを引いたんでさぁ 223 00:14:08,180 --> 00:14:11,600 いや 俺も あの事件は ニュースで見ましたがね 224 00:14:11,725 --> 00:14:15,145 年端も行かねえガキが 人を襲いまくるなんざ— 225 00:14:15,271 --> 00:14:20,317 正気の沙汰じゃねえんだ ありゃ 時代が生んだ怪物ですぜ 226 00:14:22,027 --> 00:14:25,948 (猪狩) そう… 確かに 怪物だった 227 00:14:26,115 --> 00:14:28,993 (少年バット)ハハハハッ… 228 00:14:29,159 --> 00:14:33,664 負けました 私たちは夫婦として敗北しました 229 00:14:33,831 --> 00:14:35,624 (少年バット)ハハハッ… 230 00:14:35,875 --> 00:14:42,298 主人は職を失い 私たちには もう何も残されていなかった 231 00:14:42,423 --> 00:14:43,173 ハッ… 232 00:14:45,175 --> 00:14:46,886 アア… 233 00:14:47,261 --> 00:14:48,554 フフッ… フフッ… 234 00:14:48,721 --> 00:14:52,224 アア… アア… 235 00:14:53,809 --> 00:14:56,437 アハハハハッ… 236 00:14:56,604 --> 00:14:59,773 (少年バット)ンッ… (美佐江)アハハハハッ… 237 00:14:59,940 --> 00:15:03,235 (少年バット)アア… (美佐江)ア〜ハハハハッ… 238 00:15:03,402 --> 00:15:04,904 アア… 239 00:15:05,029 --> 00:15:06,155 ンンッ! 240 00:15:11,452 --> 00:15:14,288 (美佐江) それでも 私たちは諦めなかった 241 00:15:14,914 --> 00:15:18,375 いつまでも失意に溺れていて どうしましょう 242 00:15:18,500 --> 00:15:21,462 主人は今 新しい仕事に就いています 243 00:15:22,171 --> 00:15:25,966 その仕事に誇りを持ち 一生懸命 働いてくれている 244 00:15:26,342 --> 00:15:30,846 そう 私たちは 新たな1歩を踏み出したのです 245 00:15:31,013 --> 00:15:32,806 クッ… ンンッ… 246 00:15:33,265 --> 00:15:37,102 (猪狩) 実際 やっとれんよ 誇りを懸けて ホシを追い— 247 00:15:37,227 --> 00:15:40,230 トカゲのシッポのように 切り捨てられ— 248 00:15:40,356 --> 00:15:42,816 あげくの果てが このザマだ 249 00:15:43,233 --> 00:15:46,028 この仕事だって まんざらでもありませんよ 250 00:15:46,320 --> 00:15:51,575 (猪狩) フン… 確かに悪くないな どんな負け犬にでも務まる 251 00:15:53,577 --> 00:15:56,080 (犬飼)あっ… (猪狩)うん? 252 00:15:56,205 --> 00:15:58,832 (犬飼)旦那 それは? (猪狩)うん? 253 00:15:59,166 --> 00:16:00,167 ああ… 254 00:16:00,626 --> 00:16:04,380 俺は負け犬 こいつは勝ち犬 255 00:16:04,880 --> 00:16:06,256 道で拾ったんだ 256 00:16:06,382 --> 00:16:08,801 (犬飼)へえ… (猪狩)フッ… 257 00:16:09,468 --> 00:16:12,888 (鳩村(はとむら)) ほら 急いで! 早くしないと始まっちゃうわよ! 258 00:16:13,013 --> 00:16:17,267 (猪狩) あっ! すみません! 工事中なんで通用口のほうへ… 259 00:16:17,393 --> 00:16:19,603 (鳩村)うん? 刑事さん… 260 00:16:20,187 --> 00:16:21,605 あれ? なんで? 261 00:16:22,564 --> 00:16:25,234 つ… 通用口のほうへお願いします 262 00:16:27,361 --> 00:16:28,654 (猪狩)鷺さん (月子)うん? 263 00:16:29,154 --> 00:16:32,574 これ よく見ると かわいいですね 264 00:16:36,495 --> 00:16:37,538 フフッ… 265 00:16:37,705 --> 00:16:40,833 (壊す音) 266 00:16:41,083 --> 00:16:43,919 生活は苦しくなりました 267 00:16:44,044 --> 00:16:48,382 折しも 私が お医者さまに かかる費用は かさむ一方で— 268 00:16:48,507 --> 00:16:51,427 家計は ますます火の車 269 00:16:51,885 --> 00:16:55,806 あるとき 私は言いました “私さえいなければ—” 270 00:16:55,931 --> 00:16:59,226 “こんな苦しい思いを しないで済むのに” 271 00:16:59,852 --> 00:17:03,856 そんな私に あの人は 怖い目をして こう言ったのです 272 00:17:03,981 --> 00:17:06,567 “二度と そんなことを言うんじゃない” 273 00:17:06,692 --> 00:17:09,570 “お前は ただ逃げようとしているだけだ” 274 00:17:09,778 --> 00:17:11,071 ンンッ… 275 00:17:11,280 --> 00:17:13,782 “現実から逃げてはいけない” 276 00:17:13,907 --> 00:17:17,536 “その場しのぎの救いなど まやかしにすぎない” 277 00:17:17,870 --> 00:17:22,583 “どんなに苦しくても 目を背けず 一緒に乗り越えていこう” 278 00:17:22,708 --> 00:17:26,086 毅然(きぜん)として あの人は そう言ってくれました 279 00:17:26,378 --> 00:17:30,966 あの人は そういう人なのです 気高く 強い人なのです 280 00:17:31,383 --> 00:17:33,302 ンッ… ンンッ… 281 00:17:33,594 --> 00:17:38,057 あなたは 私の心の隙間につけいり ここへ現れた 282 00:17:38,223 --> 00:17:43,312 私を殺すために 偽りの救済を与えるために 283 00:17:43,479 --> 00:17:45,898 けれども もう惑わされません 284 00:17:46,023 --> 00:17:50,319 “死んでしまいたい”などと 二度と考えたりしません 285 00:17:50,486 --> 00:17:52,196 ンンッ… 286 00:17:52,321 --> 00:17:53,280 アアッ アアッ! 287 00:17:53,447 --> 00:17:56,784 そう 人間とは そういうものなのです 288 00:17:56,992 --> 00:18:01,663 どんなにつらくても その現実に 立ち向かうことができるのです 289 00:18:01,830 --> 00:18:03,415 ンンーッ! 290 00:18:03,582 --> 00:18:05,042 (たたきつける音) 291 00:18:05,417 --> 00:18:09,797 (美佐江) あなたには それが分からない 人間でないあなたには 292 00:18:10,297 --> 00:18:11,799 (美佐江)ただ苦しんでる人を— 293 00:18:11,965 --> 00:18:15,803 傷つけ 殺(あや)め それで楽にしてあげたつもりでいる 294 00:18:16,345 --> 00:18:18,555 こざかしい! あなたは— 295 00:18:18,680 --> 00:18:21,809 そんなことで悦に入るのが せいぜいなのでしょう 296 00:18:22,017 --> 00:18:25,312 あなたは 存在そのものが まやかしなのです 297 00:18:25,479 --> 00:18:28,816 そう その場かぎりの安らぎで 人を惑わす— 298 00:18:29,274 --> 00:18:31,819 このマロミとやらと同じなのです 299 00:18:31,985 --> 00:18:34,029 (少年バット)ンンッ… 300 00:18:34,196 --> 00:18:36,031 ウオーッ! 301 00:18:44,540 --> 00:18:47,543 私は手術を受けます 302 00:18:48,794 --> 00:18:52,464 (犬飼) ヘヘヘヘッ… すいませんね つきあわせちゃって 303 00:18:52,631 --> 00:18:55,467 (猪狩) かまわんさ 落ちこぼれ同士 楽しく飲もう 304 00:18:55,884 --> 00:19:01,557 元気出してくださいよ 旦那 人生 なにも仕事が全てじゃ… 305 00:19:01,682 --> 00:19:04,768 そうだ 奥さんがいるじゃないですか 306 00:19:04,893 --> 00:19:06,854 あっ そういえば お体が… 307 00:19:07,271 --> 00:19:10,858 (猪狩)おかげさまで生きているよ (犬飼)そりゃ 何よりだ 308 00:19:10,983 --> 00:19:14,194 できた女房だって 旦那 いつか 俺にも… 309 00:19:14,319 --> 00:19:18,448 ああ できてるさ できすぎたぐらいだ 310 00:19:18,574 --> 00:19:21,076 (猪狩)ハァ… (犬飼)うん? 311 00:19:21,493 --> 00:19:26,081 (猪狩) いつも 俺の帰りを待って 雨が降っても 布団は干す 312 00:19:26,206 --> 00:19:28,834 断水のときにも空だきする 313 00:19:29,209 --> 00:19:33,505 いつだったか 急な出張で1週間 留守にした 314 00:19:33,630 --> 00:19:37,593 帰ると 1週間前のメシが そのまま そこにあった 315 00:19:38,135 --> 00:19:42,347 あいつは その前で ずっと俺の帰りを待っていたんだ 316 00:19:42,472 --> 00:19:43,724 (マスター)へい お待ち 317 00:19:43,849 --> 00:19:46,977 長患いのせいで あいつは心まで… 318 00:19:48,896 --> 00:19:52,774 そんなあいつを支えるために 今日まで頑張ってきたが— 319 00:19:53,025 --> 00:19:55,194 もう限界かもしれん 320 00:19:55,319 --> 00:19:57,821 (犬飼)旦那は疲れてるだけでさぁ 321 00:19:58,197 --> 00:20:00,616 さあ おでんでも食べて 322 00:20:01,033 --> 00:20:03,994 あのくそいまいましい 事件のせいッスよ 323 00:20:04,119 --> 00:20:06,830 そんなもんは もう さっさと忘れて… 324 00:20:06,955 --> 00:20:10,125 (猪狩)正直 どうでもいい (犬飼)えっ? 325 00:20:10,584 --> 00:20:13,712 あの事件も少年バットも もういいんだ 326 00:20:14,129 --> 00:20:16,048 ただひとつ はっきりしているのは— 327 00:20:16,173 --> 00:20:19,259 俺の時代は もう終わったってことだ 328 00:20:20,260 --> 00:20:22,429 子供のころ 俺が憧れたのは— 329 00:20:22,554 --> 00:20:25,849 お前みたいな唐草模様の 風呂敷を持った— 330 00:20:25,974 --> 00:20:29,353 泥棒を追いかける警官の姿だった 331 00:20:29,478 --> 00:20:33,690 だが そんな風景は 永遠に失われてしまった 332 00:20:34,066 --> 00:20:36,985 俺の居場所は もう どこにもない 333 00:20:38,403 --> 00:20:41,198 (犬飼)そうでしょうか? (猪狩)うん? 334 00:20:46,203 --> 00:20:47,454 (犬飼)行きましょう 335 00:20:47,621 --> 00:20:50,040 (戸の開閉音) 336 00:20:50,374 --> 00:20:51,500 えっ? 337 00:20:52,209 --> 00:20:55,420 (女の子)それ! (女性)おかえりなさい 338 00:20:57,422 --> 00:21:02,803 (子供たちの はしゃぎ声) 339 00:21:03,428 --> 00:21:05,305 (猪狩)こ… これは… 340 00:21:05,472 --> 00:21:07,432 (カラスの鳴き声) 341 00:21:07,599 --> 00:21:08,976 (男の子)いけ! (女の子)頑張れ! 342 00:21:09,101 --> 00:21:10,352 (ガラスの割れる音) 343 00:21:10,852 --> 00:21:12,396 (男性)こらー! 344 00:21:12,646 --> 00:21:15,691 (男性)フンフンフン…♪ (しゃっくり) 345 00:21:21,196 --> 00:21:22,072 (タバコ屋)いらっしゃい 346 00:21:22,197 --> 00:21:24,032 (猪狩)ショッポ (タバコ屋)はいよ 347 00:21:33,917 --> 00:21:35,669 (おばちゃん)泥棒! 348 00:21:36,086 --> 00:21:38,380 (おばちゃん) 誰か その泥棒を捕まえておくれ! 349 00:21:39,298 --> 00:21:41,133 (猪狩)待て! (泥棒)ハァハァ… 350 00:21:41,383 --> 00:21:42,634 (猪狩)待て待て! 351 00:21:43,093 --> 00:21:45,345 さあ! おとなしく観念しろ! 352 00:21:45,512 --> 00:21:47,597 (子供たち)♪ いついつでやる 353 00:21:47,764 --> 00:21:50,559 ♪ よあけのばんに 354 00:21:51,143 --> 00:21:54,563 ♪ つるとかめとすべった 355 00:21:54,688 --> 00:21:58,984 ♪ うしろのしょうめんだーれ 356 00:22:06,825 --> 00:22:09,911 (馬庭(まにわ))奥さん… (美佐江)帰ってこないんです 357 00:22:10,078 --> 00:22:13,915 あの人が帰ってこないんです 358 00:22:16,043 --> 00:22:17,586 (馬庭)係長が? 359 00:22:21,381 --> 00:22:27,387 ♪〜 360 00:23:44,256 --> 00:23:50,262 〜♪ 361 00:23:53,598 --> 00:23:58,353 (老人) そも 獅子奮迅のユニコーン 362 00:23:58,478 --> 00:24:01,106 あまた群がる人形(ひとがた)と— 363 00:24:01,273 --> 00:24:04,067 賢者の声に導かれ 364 00:24:04,192 --> 00:24:10,323 月の麓で いにしえの 剣(つるぎ) 手に入れ ペガサスに 365 00:24:10,448 --> 00:24:13,869 誰が呼んだか 聖戦士 366 00:24:13,994 --> 00:24:17,205 昔は いい子だったのに 367 00:24:17,330 --> 00:24:18,456 さて…