1 00:00:38,543 --> 00:00:41,079 これをもらえるかい え? 2 00:00:41,079 --> 00:00:43,114 光酒とそれ 換えてくれるのか ええ… 3 00:00:43,114 --> 00:00:45,614 いや まあ 構わねえが 4 00:00:52,123 --> 00:01:15,113 飲まないのか 5 00:01:15,113 --> 00:01:17,113 ちと様子 見てくるわ 6 00:01:47,512 --> 00:02:00,892 おかげさんで 7 00:02:00,892 --> 00:02:05,830 まあ ここも古い光脈だからな 8 00:02:05,830 --> 00:02:11,936 次からは 別の光脈から 分けてもらった方がよさそうだ 9 00:02:11,936 --> 00:02:14,572 寿命か 10 00:02:14,572 --> 00:02:17,272 地中 深くに潜るだけさ 11 00:02:19,944 --> 00:02:23,844 きっと また力を蓄えたら戻ってくる 12 00:02:34,458 --> 00:02:37,358 何だ 何が始まるんだ 13 00:03:34,952 --> 00:03:37,488 ああ… 14 00:03:37,488 --> 00:03:41,125 光る酒が増えた 15 00:03:41,125 --> 00:03:43,125 一体 どういうカラクリだ 16 00:03:56,607 --> 00:03:58,643 うん? 17 00:03:58,643 --> 00:04:01,379 おい おかしいぞ 18 00:04:01,379 --> 00:04:03,981 もしや偽物か? 19 00:04:03,981 --> 00:04:06,250 ちっ… 違う 俺じゃない 20 00:04:06,250 --> 00:04:10,121 ああ… あ!あいつだ 21 00:04:10,121 --> 00:04:12,123 あいつから買ったんだ 22 00:04:12,123 --> 00:04:14,659 偽物 持ち込んだのは あいつだ 23 00:04:14,659 --> 00:04:17,659 おい 待て 捕まえろ 24 00:04:19,997 --> 00:04:22,900 何なんだよ 25 00:04:22,900 --> 00:04:25,500 俺 何かまずいことしたのか 26 00:04:36,380 --> 00:04:42,019 ふう… 27 00:04:42,019 --> 00:04:44,322 あ… おーい こっち… 28 00:04:44,322 --> 00:04:46,691 待ってくれ 29 00:04:46,691 --> 00:05:00,771 悪気はなかったんだ 30 00:05:00,771 --> 00:05:06,010 いや 俺は ふもとの里の蔵人だ 31 00:05:06,010 --> 00:05:09,780 蔵人?じゃあ その酒は? 32 00:05:09,780 --> 00:05:13,284 今年 うちの蔵で造った酒だ 33 00:05:13,284 --> 00:05:18,689 何年も試行錯誤して ようやくできた酒なんだ 34 00:05:18,689 --> 00:05:21,225 病で伏せっている父に 飲ませてやりたくて 35 00:05:21,225 --> 00:05:23,728 持って帰る途中 道に迷って 36 00:05:23,728 --> 00:05:26,664 紛れ込んじまっただけなんだ 37 00:05:26,664 --> 00:05:30,234 どうか 見逃してくれ 38 00:05:30,234 --> 00:05:32,534 一体 どうやって造った? 39 00:05:34,605 --> 00:05:36,874 杜氏だった父が倒れてから 40 00:05:36,874 --> 00:05:41,712 うちの蔵の酒は すっかり味が落ちてしまってな 41 00:05:41,712 --> 00:05:45,015 父の言う通りに やってるつもりだったが 42 00:05:45,015 --> 00:05:49,487 そう すぐに父の経験に 追いつけるはずもない 43 00:05:49,487 --> 00:05:52,890 それでも 蔵の名を落としたくなくて 44 00:05:52,890 --> 00:05:55,659 米を替え 水を替え 45 00:05:55,659 --> 00:05:59,130 手を尽くしたが 無駄だった 46 00:05:59,130 --> 00:06:01,999 だが ある時 ふと 47 00:06:01,999 --> 00:06:04,599 酵母を替えると どうなるかと思った 48 00:06:10,040 --> 00:06:14,278 野生のもので 試してみようと思ったんだ 49 00:06:14,278 --> 00:06:16,647 酵母は糖分を好むため 50 00:06:16,647 --> 00:06:23,387 花の蜜にいる酵母を集めて歩いた 51 00:06:23,387 --> 00:06:27,124 ほとんどは 大した変化は見られなかった 52 00:06:27,124 --> 00:06:30,324 だが たった1つの たるだけが 53 00:06:32,763 --> 00:06:35,963 黄金色に輝く美酒となった 54 00:06:45,676 --> 00:06:48,546 少量じゃ分からなかったんだが 55 00:06:48,546 --> 00:06:50,948 ちょっと妙な酔い方をしたな 56 00:06:50,948 --> 00:06:53,851 赤黒い毛のような幻覚が見えたり 57 00:06:53,851 --> 00:06:56,387 そりゃあ 幻覚じゃねえよ 58 00:06:56,387 --> 00:06:59,790 猩 々 髭って蟲だ 59 00:06:59,790 --> 00:07:03,427 蟲師が講を行う時の案内に使う 60 00:07:03,427 --> 00:07:06,197 酒を好む蟲は多いが 61 00:07:06,197 --> 00:07:09,700 奴らは光酒だけを巣に持って帰る 62 00:07:09,700 --> 00:07:13,700 奴らまで だまされたわけだ 大したもんだ 63 00:07:15,873 --> 00:07:19,143 いいだろう あんたの話 信じよう 64 00:07:19,143 --> 00:07:21,145 見逃してくれるのか 65 00:07:21,145 --> 00:07:26,650 その代わり その酒を 世に出すのはやめてもらう 66 00:07:26,650 --> 00:07:28,586 酔うと蟲が見える酒なんざ 67 00:07:28,586 --> 00:07:31,086 出回ったら いろいろ 無駄な騒ぎになりかねん 68 00:07:33,424 --> 00:07:37,428 それに いくら味がよくとも 幻が見えるんじゃ 69 00:07:37,428 --> 00:07:39,928 あんたらにとっても いい評判にはならんだろう 70 00:07:45,035 --> 00:07:49,039 恐らく あんたが 酵母の代わりに使ったのは 71 00:07:49,039 --> 00:07:52,676 吸蜜糖って蟲だろう 72 00:07:52,676 --> 00:07:58,015 酵母と同様 糖を食って酒とする微細の蟲だ 73 00:07:58,015 --> 00:08:01,886 光酒偽造の原料として 用いるという説はあれど 74 00:08:01,886 --> 00:08:05,656 成功した例は いまだ聞かない 75 00:08:05,656 --> 00:08:08,956 あんたの蔵人としての技量は 確かってことだろうな 76 00:08:12,196 --> 00:08:18,502 聞いていいか あの光酒とは一体 何なんだ? 77 00:08:18,502 --> 00:08:21,338 生命そのものの姿 78 00:08:21,338 --> 00:08:24,975 蟲患いには万薬の長だ 79 00:08:24,975 --> 00:08:27,878 蟲とは? まあ 80 00:08:27,878 --> 00:08:30,178 世を構成してるものの一部さね 81 00:08:33,651 --> 00:08:36,351 それ以上でも 以下でもない 82 00:08:47,865 --> 00:08:49,965 え? 83 00:08:54,538 --> 00:09:05,916 翌朝 蔵へ引き返すと 84 00:09:05,916 --> 00:09:14,358 話し合った結果 その酒の出荷は取りやめとなり 85 00:09:14,358 --> 00:09:17,828 というのも 時折 妙な客が訪れ 86 00:09:17,828 --> 00:00:25,658 その酒を 買っていくようになったためだ 87 00:00:25,658 --> 00:01:34,460 鳥の声 一体 どこから 88 00:01:34,460 --> 00:01:38,030 あれ? あなた ちゃんとしゃべれるのね 89 00:01:38,030 --> 00:01:41,767 ねえ もっと貝のある所 教えてあげよっか 90 00:01:41,767 --> 00:01:44,537 うん 91 00:01:44,537 --> 00:01:48,837 知ってる? 貝の中にも波の音 鳴ってるのよ 92 00:01:57,950 --> 00:02:00,550 うん また遊ぼうね 93 00:02:17,270 --> 00:02:20,170 ミナ ミナ 94 00:02:51,003 --> 00:02:56,242 ギンコってんですがね 95 00:02:56,242 --> 00:03:20,366 知らせた方がいいかと思って 96 00:03:20,366 --> 00:03:36,115 うわあ 97 00:03:36,115 --> 00:03:38,715 えっ… 鳥の声? 98 00:03:46,892 --> 00:03:49,028 まあ 凶兆といっても 99 00:03:49,028 --> 00:03:51,897 まだ 何が起こるかは 分からんのだが 100 00:03:51,897 --> 00:03:56,102 確実に近いうち 何らかの厄災がある 101 00:03:56,102 --> 00:03:58,502 村中に 備えを呼びかけといた方がいい 102 00:04:04,610 --> 00:04:08,447 村は村だ 俺には関係ねえよ 103 00:04:08,447 --> 00:04:10,447 うん? 104 00:04:12,585 --> 00:04:23,095 ミナちゃん 105 00:04:23,095 --> 00:04:25,095 大丈夫? 106 00:04:30,536 --> 00:04:37,610 うちまで送ってこうか? 107 00:04:37,610 --> 00:04:39,578 何にも言わないじゃない 108 00:04:39,578 --> 00:04:42,481 本当よ 109 00:04:42,481 --> 00:05:16,549 何してる 帰るぞ 110 00:05:16,549 --> 00:05:18,918 貝の歌とはいえど 歌っているのは 111 00:05:18,918 --> 00:05:32,298 貝殻の中にすむ蟲でしてね 112 00:05:32,298 --> 00:05:35,534 海で異変を察すると浜へ上がり 113 00:05:35,534 --> 00:05:38,834 貝の殻に閉じこもって 災いの去るのを待つんです 114 00:05:42,341 --> 00:05:45,778 そして 小さな声で鳴き続け 115 00:05:45,778 --> 00:05:49,315 仲間を丘へ呼ぶ 116 00:05:49,315 --> 00:05:51,884 それを耳の間近で聞いてしまうと 117 00:05:51,884 --> 00:05:55,855 人は 声の出し方を忘れてしまうんだ 118 00:05:55,855 --> 00:05:58,390 治す方法はあるのか 119 00:05:58,390 --> 00:06:02,290 なに 毎日 人の声 聞いていれば じき思い出す 120 00:06:07,800 --> 00:06:10,536 勝手なことをするからだ 121 00:06:10,536 --> 00:06:18,377 二度としたら許さんぞ 122 00:06:18,377 --> 00:06:29,421 村の方には 俺から伝えとくが 123 00:06:29,421 --> 00:06:32,324 海で災い? 124 00:06:32,324 --> 00:06:35,628 何だ そりゃ 高潮か? 125 00:06:35,628 --> 00:06:41,167 大嵐でも来るってのかい? 126 00:06:41,167 --> 00:06:43,936 備えはしておいた方がいい 127 00:06:43,936 --> 00:06:59,485 備えなら常にしている 128 00:06:59,485 --> 00:08:04,717 そんならいいが お前ら 明日もぬかるなよ 129 00:08:04,717 --> 00:08:07,686 気持ちは分からんでもない 130 00:08:07,686 --> 00:08:12,791 網元は 先に自分の女房を引き揚げたんだ 131 00:08:12,791 --> 00:08:25,271 でもよ 俺でも いざって時にはそうするぜ 132 00:08:25,271 --> 00:08:28,841 網元の気持ちも よく分かる 133 00:08:28,841 --> 00:08:30,841 胸の痛いことだよ 134 00:08:32,711 --> 00:08:34,711 ふーん 135 00:08:39,151 --> 00:08:43,022 おかえり お父ちゃん ああ 136 00:08:43,022 --> 00:08:47,693 あのね 今日 浜でミナちゃんに会ったの 137 00:08:47,693 --> 00:08:52,393 でも ミナちゃんのお父さんが 私と口きいちゃいけないって 138 00:08:54,466 --> 00:08:58,337 どうしてかな 139 00:08:58,337 --> 00:09:01,874 すまねえな 140 00:09:01,874 --> 00:09:04,276 お父ちゃん? 141 00:09:04,276 --> 00:09:08,147 お前は 何も気にしなくっていいんだ 142 00:09:08,147 --> 00:09:10,447 お前は 何も悪かねえ 143 00:09:13,952 --> 00:09:15,952 うん 分かったよ 144 00:09:18,791 --> 00:09:20,791 そうか 145 00:09:28,534 --> 00:09:30,734 大変だ フカが出た 146 00:09:33,172 --> 00:09:35,172 お前の女房が 147 00:09:38,977 --> 00:09:40,977 あ… 148 00:09:53,392 --> 00:09:57,329 俺が乗ってりゃ こんなことにはしなかった 149 00:09:57,329 --> 00:10:00,766 なあ 砂吉 あん時は 150 00:10:00,766 --> 00:10:04,303 どうしようもなかったんだよ 151 00:10:04,303 --> 00:10:08,607 どうしようもない?そうだな 152 00:10:08,607 --> 00:10:12,911 他人に女房の命 預けた 俺が悪かったんだ 153 00:10:12,911 --> 00:10:16,281 帰ってくれ 154 00:10:16,281 --> 00:10:19,981 これからは 己の身は己で守る 155 00:10:51,884 --> 00:10:53,884 また 数が増えたな 156 00:10:57,222 --> 00:11:01,527 貝が小さな声で鳴いている 157 00:11:01,527 --> 00:11:05,027 仲間のために 生きるために 158 00:11:31,323 --> 00:11:35,828 あの娘 大したもんだな まだ小せえのに 159 00:11:35,828 --> 00:11:38,597 うん?ああ 160 00:11:38,597 --> 00:11:42,801 ずっと母親の代わりに 潜ってきたんだしな 161 00:11:42,801 --> 00:11:45,401 うん 可哀想な気もするが 162 00:11:58,050 --> 00:12:01,019 うん… どうした? 163 00:12:01,019 --> 00:12:04,656 あ… 164 00:12:04,656 --> 00:12:07,960 このことは 誰にも言うんじゃないぞ 165 00:12:07,960 --> 00:12:11,196 俺に もしものことが あったとしても 166 00:12:11,196 --> 00:12:13,196 これがあれば何とかなる 167 00:12:15,934 --> 00:12:18,334 誰もお前を守っちゃくれねえ 168 00:12:21,707 --> 00:12:24,107 自分の身は 自分で守るんだ 169 00:12:30,315 --> 00:12:33,218 誰だ 170 00:12:33,218 --> 00:12:36,318 俺だ 話があって来た 171 00:12:39,858 --> 00:12:44,162 近いうち 海で災いがあると 蟲師が言ってきた 172 00:12:44,162 --> 00:12:46,162 お前たちも用心しとけ 173 00:12:48,133 --> 00:12:51,904 あんたに言われる筋合いはねえ 174 00:12:51,904 --> 00:12:56,742 なあ 何が起こるか予測つかんか? 175 00:12:56,742 --> 00:13:00,142 海の異変を察するのは お前が一番 長けていた 176 00:13:02,681 --> 00:13:04,950 知ったことか 177 00:13:04,950 --> 00:13:09,454 砂吉よ 村じゃ この10年 178 00:13:09,454 --> 00:13:13,258 海で1つの事故もなくやってきた 179 00:13:13,258 --> 00:13:19,865 この先も 俺の目の前で 誰一人 死なせはしない 180 00:13:19,865 --> 00:13:24,236 村に戻って 養殖を手伝っちゃくれんか 181 00:13:24,236 --> 00:13:29,508 ようやく うまく 育ってくれるようになったんだ 182 00:13:29,508 --> 00:13:34,046 これで皆 安心して 食っていけるようになる 183 00:13:34,046 --> 00:13:36,381 娘と2人だけで漁をしていては 184 00:13:36,381 --> 00:13:39,585 いつかは危ない目に遭うぞ 185 00:13:39,585 --> 00:13:43,088 それでいいのか 186 00:13:43,088 --> 00:13:48,594 お前のことだ 許せないのは 俺ばかりじゃないんだろう 187 00:13:48,594 --> 00:13:51,496 いまだに自分を責めているなら 188 00:13:51,496 --> 00:13:56,201 もう よせ お前にはもっと大事なことがある 189 00:13:56,201 --> 00:14:00,201 娘の将来を思うなら戻ってこい 190 00:14:07,813 --> 00:14:11,513 また来る くれぐれも用心しろ 191 00:14:30,068 --> 00:14:32,768 歌がやんだ 192 00:14:40,612 --> 00:14:44,912 分かった 念のため 皆を崖の上に避難させよう 193 00:14:59,965 --> 00:15:04,436 何だ? 何か光った 194 00:15:04,436 --> 00:15:08,006 魚があんなに 195 00:15:08,006 --> 00:15:10,006 これは… 196 00:15:13,645 --> 00:15:16,448 ああ… 197 00:15:16,448 --> 00:15:18,448 赤潮だ 198 00:15:41,206 --> 00:15:44,306 何てことだ 199 00:15:47,079 --> 00:15:51,379 どう逃げようとも 無駄だというのか 200 00:15:54,753 --> 00:15:56,753 こればかりは 201 00:15:59,591 --> 00:16:01,591 どうしようもない 202 00:16:08,967 --> 00:16:12,067 どうしようもなかったんだ 203 00:16:21,680 --> 00:16:25,517 ようやく赤潮も引いてきたな 204 00:16:25,517 --> 00:16:30,255 ああ だが これで養殖もおしまいだな 205 00:16:30,255 --> 00:16:33,625 まあ また 裸一貫 海女やりゃいいさ 206 00:16:33,625 --> 00:16:35,625 そうだな 207 00:16:38,530 --> 00:16:42,000 まだ声は戻らんか 208 00:16:42,000 --> 00:16:43,969 うん… 209 00:16:43,969 --> 00:16:48,769 もう少し 大勢の人の声を 聞かせたら いいんだと思うがね 210 00:16:51,243 --> 00:16:53,243 じゃ 俺はこれで 211 00:17:06,057 --> 00:17:10,557 妙だな 赤潮は去ったのに まだ海へ戻らない 212 00:17:13,365 --> 00:17:17,365 災いは まだ終わっていない? 213 00:17:22,073 --> 00:17:24,976 ミナ 214 00:17:24,976 --> 00:17:26,976 ついてこい 215 00:17:34,419 --> 00:17:36,688 砂吉 216 00:17:36,688 --> 00:17:38,723 海女漁は まだよせ 217 00:17:38,723 --> 00:17:42,527 赤潮の後は毒を持つ貝が出る 218 00:17:42,527 --> 00:17:46,932 まれなことだ 分かってるだろ 219 00:17:46,932 --> 00:17:50,836 あとは こうして やってくしかないんだ 220 00:17:50,836 --> 00:17:54,639 俺も やめた方がいいと思う 221 00:17:54,639 --> 00:17:57,976 凶兆が まだ去っちゃいない 222 00:17:57,976 --> 00:18:01,813 じゃあ どうしろというんだ 223 00:18:01,813 --> 00:18:05,350 砂吉 お前とて海が元に戻るまで 224 00:18:05,350 --> 00:18:07,350 どう食いつなぐんだ 225 00:18:14,025 --> 00:18:16,025 開けてみろ 226 00:18:18,496 --> 00:18:20,496 お! 227 00:18:22,367 --> 00:18:26,972 ミナの取った真珠だ 皆で分ければ わずかだが 228 00:18:26,972 --> 00:18:29,875 売れば 生活の足しにはなるだろう 229 00:18:29,875 --> 00:18:32,777 だが こんな立派な物を 230 00:18:32,777 --> 00:18:36,381 犠牲が出るよりはマシだ 231 00:18:36,381 --> 00:18:40,681 その代わり 俺と娘をまた よろしく頼む 232 00:18:55,333 --> 00:18:57,333 無論だとも 233 00:18:59,905 --> 00:19:03,141 その後 その近辺の浜で 234 00:19:03,141 --> 00:19:06,044 貝を食べたと思われる海鳥の骸が 235 00:19:06,044 --> 00:19:08,813 時折 見られた 236 00:19:08,813 --> 00:19:12,117 けれど結局 その村においては 237 00:19:12,117 --> 00:19:14,717 一人の犠牲も 出ることはなかったという 238 00:19:19,591 --> 00:19:21,591 あ… 239 00:19:34,606 --> 00:19:37,008 ミナちゃん 240 00:19:37,008 --> 00:19:40,908 早く あっ 今 行く 241 00:19:42,814 --> 00:19:46,714 何 見てたの? うん?何でもないよ 242 00:21:33,058 --> 00:21:35,058 「雪の下」 243 00:26:03,328 --> 00:26:07,198 およそ遠しとされしもの 244 00:26:07,198 --> 00:26:09,334 下等で奇怪 245 00:26:09,334 --> 00:26:15,173 見慣れた動植物とは まるで違うと おぼしきモノ達 246 00:26:15,173 --> 00:26:21,612 それら異形の一群を ヒトは古くから畏れを含み 247 00:26:21,612 --> 00:26:26,012 いつしか総じて「蟲」と呼んだ 248 00:26:41,099 --> 00:26:44,802 ねえ 兄ちゃん うん? 249 00:26:44,802 --> 00:26:49,474 湖に落ちたら 雪はどうなるの? 250 00:26:49,474 --> 00:26:53,311 溶けて湖の水になるんだよ 251 00:26:53,311 --> 00:26:57,248 ふーん 土の上に落ちればいいのにね 252 00:26:57,248 --> 00:27:00,385 雪は自分じゃ決められないんだよ 253 00:27:00,385 --> 00:27:03,785 ふーん 可哀想ね 254 00:27:05,757 --> 00:27:09,994 湖が凍ったら その上に積もるよ 255 00:27:09,994 --> 00:27:13,297 本当? 256 00:27:13,297 --> 00:27:15,733 いつ積もる? 257 00:27:15,733 --> 00:27:18,569 もっと寒くなったらな 258 00:27:18,569 --> 00:27:21,506 そっか 259 00:27:21,506 --> 00:27:23,806 早く凍るといいな 260 00:27:46,764 --> 00:27:51,469 ここらに 宿があるはずなんだが 261 00:27:51,469 --> 00:27:53,469 うん? 262 00:27:56,741 --> 00:28:00,912 雪に埋もれちまってる 空き家か 263 00:28:00,912 --> 00:28:02,912 おっ あっちか 264 00:28:12,523 --> 00:28:16,093 どうぞ ああ 助かるよ 265 00:28:16,093 --> 00:28:18,362 すっかり体が冷えちまってね 266 00:28:18,362 --> 00:28:23,067 こちらこそ この時期 お客は からきしですから 267 00:28:23,067 --> 00:28:26,537 そりゃあ まあ こんな雪の中 分け入ってくるのは 268 00:28:26,537 --> 00:28:28,840 よほどの物好きぐらいだろう 269 00:28:28,840 --> 00:28:33,244 おや それじゃあ お客さんは どういった物好きで? 270 00:28:33,244 --> 00:28:36,714 ここらの雪が面白くてね 271 00:28:36,714 --> 00:28:39,150 ちょっと いろいろ見ていこうかと 272 00:28:39,150 --> 00:28:41,686 はあ そうかい 273 00:28:41,686 --> 00:28:45,323 そりゃ 確かに雪の多い所だけど 274 00:28:45,323 --> 00:28:50,523 私らには それが当たり前で 面白いとも思わないがね 275 00:28:54,432 --> 00:28:59,070 お客さん お風呂の支度が… 276 00:28:59,070 --> 00:29:01,439 な… 何してるんです? 277 00:29:01,439 --> 00:29:04,342 ああ すまん そろそろ休むよ 278 00:29:04,342 --> 00:29:08,212 じゃあ 閉めますよ 279 00:29:08,212 --> 00:29:12,149 あ… うん? 280 00:29:12,149 --> 00:29:14,919 ああ これ 雪のかけらでしょ? 281 00:29:14,919 --> 00:29:17,788 見ていい? ああ 282 00:29:17,788 --> 00:29:20,588 へえ 随分 いろんな形があるのね 283 00:29:23,995 --> 00:29:26,497 これもそうなの? 284 00:29:26,497 --> 00:29:29,700 そっちのは雪蟲の類いだ 285 00:29:29,700 --> 00:29:33,371 雪片をほぐすと 時折 中に紛れている 286 00:29:33,371 --> 00:29:35,306 雪の中に こんなのが? 287 00:29:35,306 --> 00:29:39,210 ああ この辺りは特に多種多様だな 288 00:29:39,210 --> 00:29:43,681 里の周辺で集めただけで それだけいた 289 00:29:43,681 --> 00:29:45,983 これなんかは 雪ならしという 290 00:29:45,983 --> 00:29:49,287 動物の足跡にすみ着く蟲だ 291 00:29:49,287 --> 00:29:53,524 こいつが多い所では たちまち足跡が消えちまう 292 00:29:53,524 --> 00:29:57,495 狩りや人捜しをするには 困った奴だ 293 00:29:57,495 --> 00:30:00,264 じゃあ こっちのは? 294 00:30:00,264 --> 00:30:03,267 そりゃ 雪団子蟲だな 295 00:30:03,267 --> 00:30:05,403 ここへ来る途中でも見たが 296 00:30:05,403 --> 00:30:09,640 雪の上を転がって 雪玉を作って移動する 297 00:30:09,640 --> 00:30:11,676 雪玉が大きくなりすぎると 298 00:30:11,676 --> 00:30:14,478 そこらの木にぶつかって 身を軽くするが 299 00:30:14,478 --> 00:30:16,914 木のない所で出くわすと 追っかけてきて 300 00:30:16,914 --> 00:30:19,817 ぶつかられることもある 301 00:30:19,817 --> 00:30:21,752 それは厄介ね 302 00:30:21,752 --> 00:30:26,324 こいつが木にぶつかる衝撃で 雪崩が起こることもある 303 00:30:26,324 --> 00:30:28,292 案外 怖い奴さ 304 00:30:28,292 --> 00:30:33,564 他には? 一番 珍しいのが こいつかな 305 00:30:33,564 --> 00:30:36,367 群れで行動して 動物の個体を特定して 306 00:30:36,367 --> 00:30:38,302 まとわりつく 307 00:30:38,302 --> 00:30:43,207 そして チクチクと皮膚を刺して 体温を少しずつ奪う 308 00:30:43,207 --> 00:30:46,143 それで 取りつかれた 個体の周辺には 309 00:30:46,143 --> 00:30:49,680 いつも 雪が降っているように見える 310 00:30:49,680 --> 00:30:53,180 そのことから 常雪蟲と呼ばれている 311 00:30:55,219 --> 00:30:59,523 それに取りつかれたら どうなるの? 312 00:30:59,523 --> 00:31:03,394 体温は下がるが 命を落とすことはないという 313 00:31:03,394 --> 00:31:06,797 春になれば自然と消えるそうだ 314 00:31:06,797 --> 00:31:09,700 そう 315 00:31:09,700 --> 00:31:13,504 心当たりでもあるのか 316 00:31:13,504 --> 00:31:17,908 ここへ来る途中 雪に埋もれた家があったでしょ 317 00:31:17,908 --> 00:31:19,844 ああ あそこには 318 00:31:19,844 --> 00:31:22,813 私の友達が住んでるんです 319 00:31:22,813 --> 00:31:26,513 あの子がいるから あそこは雪に埋もれてしまったの 320 00:31:30,788 --> 00:31:35,326 その子 この冬の初め 321 00:31:35,326 --> 00:31:40,898 妹を湖で亡くしたんです 322 00:31:40,898 --> 00:31:44,602 それから少し経って 323 00:31:44,602 --> 00:31:48,039 気がついたら あの子の周りにだけ 324 00:31:48,039 --> 00:31:50,339 いつも雪が降るようになってたの 325 00:31:52,877 --> 00:31:55,346 トキ 326 00:31:55,346 --> 00:31:57,815 私よ 妙よ 327 00:31:57,815 --> 00:32:00,651 トキ いるのは分かってるのよ 328 00:32:00,651 --> 00:32:02,651 用があんの 329 00:32:04,822 --> 00:32:06,891 何? あんた 330 00:32:06,891 --> 00:32:09,560 ますます顔色 真っ白じゃない 331 00:32:09,560 --> 00:32:11,495 本当に何ともないの? 332 00:32:11,495 --> 00:32:13,764 別に 333 00:32:13,764 --> 00:32:17,301 その人は? 蟲師のギンコさん 334 00:32:17,301 --> 00:32:20,004 トキに話 聞きたいんだって 335 00:32:20,004 --> 00:32:22,604 ふーん どうぞ 336 00:32:32,883 --> 00:32:35,386 寒い 337 00:32:35,386 --> 00:32:40,057 寒くてすみません 俺 暖かくすると 338 00:32:40,057 --> 00:32:43,294 皮膚が焼けるように痛むので 339 00:32:43,294 --> 00:32:47,131 寒いのは まったく感じないんですけど 340 00:32:47,131 --> 00:32:49,131 それは いつから? 341 00:32:52,103 --> 00:32:54,103 あの日からかな 342 00:32:57,908 --> 00:33:01,108 あれは風のない雪の晩で 343 00:33:12,056 --> 00:33:16,861 サチ トキ およし 344 00:33:16,861 --> 00:33:19,330 それで 先頃 345 00:33:19,330 --> 00:33:22,733 湖に落ちた妹が 戻ったのかもと思って 346 00:33:22,733 --> 00:33:25,433 戸を開けたんです サチ 347 00:33:30,908 --> 00:33:35,208 その時 雪が体の中に 吹き込んだ気がして 348 00:33:37,248 --> 00:33:40,748 トキ 冷えるから もうお戻り 349 00:33:45,956 --> 00:33:50,795 あ… 熱い え? 350 00:33:50,795 --> 00:33:56,233 それ以来 暖かいものに近づけなくなって 351 00:33:56,233 --> 00:34:00,333 寒さや冷たさは まったく感じなくなったんです 352 00:34:03,808 --> 00:34:07,745 それから ずっと周りに雪が降ってる 353 00:34:07,745 --> 00:34:10,581 でも ちっとも寒くないし 354 00:34:10,581 --> 00:34:16,253 母さんたちには悪いけど 俺は別に何ともないんだ 355 00:34:16,253 --> 00:34:18,722 ちょっと手を見せてくれ 356 00:34:18,722 --> 00:34:22,126 はい あ… 357 00:34:22,126 --> 00:34:27,598 なんて冷たい手だ 人肌程度でもダメなのか 358 00:34:27,598 --> 00:34:31,302 皮膚が白くなって 凍傷を起こしかけてる 359 00:34:31,302 --> 00:34:35,072 たとえ感覚はなくとも 体は傷んでる 360 00:34:35,072 --> 00:34:39,043 温めねえと今に手足を失うぞ 361 00:34:39,043 --> 00:34:43,514 でも そうしたら やけどしそうに痛いんだ 362 00:34:43,514 --> 00:34:46,317 感覚を惑わされてるだけだ 363 00:34:46,317 --> 00:34:48,317 本当に やけどしたりはしない 364 00:34:50,888 --> 00:34:53,858 いいんだ このままで 365 00:34:53,858 --> 00:34:57,661 トキ 魚を取りに行かなきゃ 366 00:34:57,661 --> 00:35:00,361 ちょっと待ちなよ トキ 367 00:35:06,370 --> 00:35:09,273 すみません いや 368 00:35:09,273 --> 00:35:12,173 どうすれば 治す気になってくれるのか 369 00:35:15,779 --> 00:35:17,779 やんでる 370 00:35:20,618 --> 00:35:23,254 トキ 371 00:35:23,254 --> 00:35:25,890 ねえ 聞いてんの? 372 00:35:25,890 --> 00:35:28,792 あんた 絶対おかしいんだから 373 00:35:28,792 --> 00:35:31,092 ちゃんと体 大事にしなよ 374 00:35:33,631 --> 00:35:36,400 ついて来るなよ 危ねえから 375 00:35:36,400 --> 00:35:39,970 そっちこそ 気をつけなよ 376 00:35:39,970 --> 00:35:42,406 このごろ ボーッとしてるんだから 377 00:35:42,406 --> 00:35:44,406 分かってるよ 378 00:36:00,824 --> 00:36:02,824 うん? 379 00:36:06,497 --> 00:36:10,234 あれ?変だな 380 00:36:10,234 --> 00:36:13,734 雪が溶けずに沈んでいく 381 00:36:15,773 --> 00:36:17,773 こんなこともあるのか 382 00:36:21,912 --> 00:36:24,381 じゃあ 湖の底にも 383 00:36:24,381 --> 00:36:27,881 雪は積もるのかもしれないな サチ 384 00:36:29,887 --> 00:36:32,156 兄ちゃん 385 00:36:32,156 --> 00:36:35,059 ほら ここ こんなに凍ってる 386 00:36:35,059 --> 00:36:37,059 サチ そっちは… 387 00:36:48,238 --> 00:36:50,238 あ… 388 00:36:59,183 --> 00:37:03,083 トキ おーい トキ 389 00:37:07,391 --> 00:37:11,729 おーい あそこ 雪が 390 00:37:11,729 --> 00:37:15,966 トキ あの下にいるんだ 391 00:37:15,966 --> 00:37:17,966 トキ! 392 00:37:51,769 --> 00:37:55,406 あの辺りは深くて潜れやせんぞ 393 00:37:55,406 --> 00:37:59,406 日も落ちたし もう水に入るのは無理だ 394 00:38:01,278 --> 00:38:04,415 トキ 395 00:38:04,415 --> 00:38:06,915 トキ! 396 00:38:08,952 --> 00:38:12,523 その夜 里はひどく冷え込み 397 00:38:12,523 --> 00:38:16,123 湖は一夜のうちに 厚い氷で覆われた 398 00:38:28,372 --> 00:38:31,172 雪がやんでる 399 00:38:35,145 --> 00:38:37,948 トキ 400 00:38:37,948 --> 00:38:43,548 いつか こんなふうに なるんじゃないかって… 401 00:38:45,656 --> 00:38:48,459 止めてればよかった 402 00:38:48,459 --> 00:38:53,359 1人で湖に行かすんじゃなかった 403 00:39:07,945 --> 00:39:11,545 湖の氷が 冷えて縮んで割れるのか 404 00:39:34,404 --> 00:39:37,875 トキ? 405 00:39:37,875 --> 00:39:39,875 よせ 気のせいだ 406 00:39:41,778 --> 00:39:43,778 トキ 407 00:39:48,619 --> 00:39:50,754 おばさん 妙ちゃん トキが 408 00:39:50,754 --> 00:39:54,224 トキが戻ったの 本当? 409 00:39:54,224 --> 00:39:57,027 けど また出てってしまって 410 00:39:57,027 --> 00:40:00,330 凍傷を負ってて 体を温めようとしたら 411 00:40:00,330 --> 00:40:02,332 ひどく熱がって 412 00:40:02,332 --> 00:40:06,532 手分けして捜そう 早く治療しなけりゃ手遅れになる 413 00:40:08,972 --> 00:40:10,972 トキ 414 00:40:12,843 --> 00:40:15,512 トキ! 415 00:40:15,512 --> 00:40:17,915 あ… そうだ 416 00:40:17,915 --> 00:40:19,915 湖だ 417 00:40:38,835 --> 00:40:40,835 トキ! 418 00:40:43,140 --> 00:40:47,110 本当に トキなのね 419 00:40:47,110 --> 00:40:51,381 何してんのよ 早く手当てしないと 420 00:40:51,381 --> 00:40:53,884 俺が助かったんだ 421 00:40:53,884 --> 00:40:58,589 サチも まだ この底で眠ってるのかも 422 00:40:58,589 --> 00:41:03,327 ハッ… 湖の底の雪の下で 423 00:41:03,327 --> 00:41:06,129 俺 眠ってたんだ 424 00:41:06,129 --> 00:41:10,701 氷が割れる音がして目が覚めた 425 00:41:10,701 --> 00:41:15,038 けど あいつは 目が覚めなかったのかも 426 00:41:15,038 --> 00:41:17,774 何 言ってんの? 427 00:41:17,774 --> 00:41:20,711 だから俺が行って 助けてやらねえと 428 00:41:20,711 --> 00:41:24,615 やめて トキ!しっかりしてよ 429 00:41:24,615 --> 00:41:29,319 サチは もう死んじゃったの 430 00:41:29,319 --> 00:41:32,222 あの時 あんたが引き揚げて 431 00:41:32,222 --> 00:41:37,822 あんたの腕の中で 冷たくなって死んじゃったのよ 432 00:41:39,896 --> 00:41:43,667 俺が?適当なことを言うなよ 433 00:41:43,667 --> 00:41:45,669 そんな覚え ねえよ 434 00:41:45,669 --> 00:41:48,405 トキ 435 00:41:48,405 --> 00:41:50,405 妙 そこはダメだ 436 00:42:17,934 --> 00:42:19,934 立てるか? 437 00:42:25,342 --> 00:42:27,342 ほら おぶされ 438 00:42:41,358 --> 00:42:44,895 背中が熱い 439 00:42:44,895 --> 00:42:49,733 妙の心臓の辺りが熱を持ってる 440 00:42:49,733 --> 00:42:52,536 まだ間に合う 441 00:42:52,536 --> 00:42:54,536 まだ… 442 00:43:39,750 --> 00:43:44,654 頬が冷たい 443 00:43:44,654 --> 00:43:50,527 息も白くなってる 444 00:43:50,527 --> 00:43:52,527 手足が痛い 445 00:43:54,865 --> 00:43:56,865 寒い 446 00:43:58,735 --> 00:44:00,835 寒くてたまらない 447 00:44:06,977 --> 00:44:08,977 トキ 妙 448 00:44:14,251 --> 00:44:18,054 妙のわずかに残った体温で 温められたためか 449 00:44:18,054 --> 00:44:21,725 トキの感覚は 里へ帰り着くころには 450 00:44:21,725 --> 00:44:23,725 正常に戻っていた 451 00:44:28,999 --> 00:44:32,869 そして 彼の周りに 常に降っていた雪も 452 00:44:32,869 --> 00:44:34,969 いつしか やんでいた 453 00:44:38,108 --> 00:44:42,946 2人とも凍傷を負ったが 妙のものは軽く済んだ 454 00:44:42,946 --> 00:44:47,784 トキの傷はひどく 手足の指を何本か失ったが 455 00:44:47,784 --> 00:44:50,684 生きて戻っただけで奇跡といえた 456 00:44:52,989 --> 00:44:57,294 あの雪が守ってくれたのかな 457 00:44:57,294 --> 00:45:01,794 気がついたら 綿布団みたいに 雪で覆われてたんだ 458 00:45:05,569 --> 00:45:08,038 きれいだった 459 00:45:08,038 --> 00:45:10,038 あれは夢だったのかな 460 00:45:12,943 --> 00:45:14,943 いいや 461 00:45:27,057 --> 00:45:29,693 行こう 462 00:45:29,693 --> 00:45:32,229 うん 463 00:45:32,229 --> 00:45:35,131 本当に発つの? ああ 464 00:45:35,131 --> 00:45:39,669 ぐずぐずしてると 春まで 身動き取れなくなりそうだしな 465 00:45:39,669 --> 00:45:43,507 そう じゃあ 気をつけて 466 00:45:43,507 --> 00:45:46,843 そっちこそ 春まで十分 気をつけろよ 467 00:45:46,843 --> 00:45:50,046 うん 分かってる 468 00:45:50,046 --> 00:45:53,846 ここでは まだまだ 冬はこれからだからね 469 00:45:56,319 --> 00:46:01,019 四季の大半を 白い雪で覆われる地では 470 00:46:04,060 --> 00:46:09,060 水や地よりも 多くの異形が雪に潜む 471 00:46:15,672 --> 00:46:19,242 トキ 早く温まろう 472 00:46:19,242 --> 00:46:22,078 うん 473 00:46:22,078 --> 00:46:25,448 雪の上に 474 00:46:25,448 --> 00:46:28,652 雪の中に… 475 00:46:28,652 --> 00:46:30,652 雪の下に 476 00:48:07,784 --> 00:48:10,084 「夜を撫でる手」