1 00:00:01,260 --> 00:00:07,099 下等で奇怪 見慣れた動植物とは まるで違うとおぼしきモノたち 2 00:00:07,766 --> 00:00:12,605 それら異形の一群を ヒトは古くから畏(おそ)れを含み― 3 00:00:13,272 --> 00:00:17,526 いつしか総じて “蟲(むし)”と呼んだ… 4 00:00:23,240 --> 00:00:29,246 ♪~ 5 00:01:26,428 --> 00:01:32,434 ~♪ 6 00:01:41,569 --> 00:01:43,195 (少女)誰か来る… 7 00:01:47,866 --> 00:01:50,202 なんか妙なやつが来る 8 00:01:52,621 --> 00:01:53,706 誰か来る 9 00:01:57,626 --> 00:01:59,670 (ギンコ)なんか今いたな 10 00:02:01,046 --> 00:02:02,673 猿かね… 11 00:02:05,593 --> 00:02:09,888 しかし緑が異様なくらい 鮮やかな所だな― 12 00:02:12,141 --> 00:02:13,475 ここは… 13 00:02:26,697 --> 00:02:29,950 (ギンコ)生来… 緑や水…― 14 00:02:32,036 --> 00:02:34,455 生命を呼ぶ体質とでも いうのか…― 15 00:02:35,331 --> 00:02:39,960 そういうものを持つ人間が… まれにいる 16 00:02:48,344 --> 00:02:51,972 (五百蔵(いおろい)しんら)おー… 左手でも文字なら大丈夫だな… 17 00:02:53,015 --> 00:02:56,602 えーっと… “日ざしも徐々に和らぎ―” 18 00:02:56,727 --> 00:02:59,313 “木々は萌(も)え 鳥も…” 19 00:02:59,688 --> 00:03:01,440 (しんら)もともと 左が利き手だし― 20 00:03:01,982 --> 00:03:03,817 書きやすいな… 21 00:03:05,277 --> 00:03:06,487 (しんら)え… 22 00:03:07,529 --> 00:03:11,700 (鳥の鳴き声) 23 00:03:12,159 --> 00:03:13,702 あー… 24 00:03:14,745 --> 00:03:17,581 (しんら) しまった… そうだったか 25 00:03:17,706 --> 00:03:20,209 これらの文字は もともとは“絵”なのだ 26 00:03:20,334 --> 00:03:24,671 象形文字というやつ これらは これでいいとして… 27 00:03:24,755 --> 00:03:27,758 ぬっ… ほっ! ぬ… はっ 28 00:03:33,097 --> 00:03:35,182 (しんら)おいこら! “鳥”っ! 29 00:03:35,265 --> 00:03:37,476 (鳥の鳴き声) 30 00:03:37,601 --> 00:03:39,019 何だこりゃ… 31 00:03:41,855 --> 00:03:44,441 (しんら) 勝手に外に出るんじゃなーい! 32 00:03:44,566 --> 00:03:45,567 (ギンコ)墨? 33 00:03:45,651 --> 00:03:47,069 (走る足音) 34 00:03:47,194 --> 00:03:48,195 (しんら)あっ 35 00:03:48,904 --> 00:03:51,490 ハァ… み 見た? 36 00:03:51,615 --> 00:03:54,368 (ギンコ) あー そりゃもうバッチリと… 37 00:03:54,493 --> 00:03:58,330 きみ 五百蔵しんら君? (しんら)え? はぁ… 38 00:03:58,455 --> 00:04:00,332 (ギンコ) 書簡 読んでもらえたかな? 39 00:04:00,624 --> 00:04:07,297 あ じゃあ あなたが蟲師(むしし)の ギンコ… さん? 40 00:04:08,757 --> 00:04:10,926 (しんら) お断りの手紙を書いていたんです 41 00:04:11,885 --> 00:04:12,845 これまでも― 42 00:04:12,970 --> 00:04:15,973 何度かこういった“調査”の 申し入れはありましたが― 43 00:04:16,098 --> 00:04:17,933 すべて断ってきました 44 00:04:18,600 --> 00:04:20,602 祖母の遺言なんです 45 00:04:21,478 --> 00:04:24,440 僕のこの性質を広めてはならない… 46 00:04:24,565 --> 00:04:27,651 そして できる限り眠らせておくこと 47 00:04:28,318 --> 00:04:32,656 ご覧になったように 昔から僕がものの形を象(かたど)ると― 48 00:04:32,781 --> 00:04:36,994 それは既存の生物でなくとも 生命を持つんです 49 00:04:37,703 --> 00:04:42,958 でも “新たな生物を生み出すなど 人のしてよい所業ではない” 50 00:04:43,167 --> 00:04:46,837 “八百万(やおよろず)の神々の 怒りを受ける”と言って― 51 00:04:46,962 --> 00:04:50,841 左手でものを描くことを 祖母に禁じられました 52 00:04:51,133 --> 00:04:53,886 あ 右手で描くと 何もないんですけど― 53 00:04:54,011 --> 00:04:59,016 こないだ指 ケガしちゃいまして それで さっきのようなことに… 54 00:04:59,349 --> 00:05:02,352 なるほど あれは驚異の造形物だった 55 00:05:02,895 --> 00:05:06,815 僕も驚いた あんなものまで動きだすとは 56 00:05:06,940 --> 00:05:10,611 今までも さんざん妙なもの 動きだしたりしたけど 57 00:05:10,736 --> 00:05:12,279 (ギンコ)へー 例えば? 58 00:05:12,404 --> 00:05:15,991 ん… コウモリ傘とか 孫の手とか 59 00:05:17,743 --> 00:05:20,370 はっ 調査はお断りします (ギンコ)ちっ 60 00:05:20,913 --> 00:05:23,874 ま でもそのまま すぐ帰れとは 言いませんが 61 00:05:24,500 --> 00:05:27,336 こんな山奥まで入ってくるのは 大変だったでしょう 62 00:05:27,461 --> 00:05:28,879 今晩は ゆっくりしてってください 63 00:05:29,546 --> 00:05:32,382 それに 実は人に会うの 久しぶりで― 64 00:05:32,508 --> 00:05:35,636 世間話なら ぜひとも 付き合ってほしいんですよ 65 00:05:37,554 --> 00:05:38,805 (しんら)どうぞ 66 00:05:39,973 --> 00:05:41,808 僕が漬けた果実酒です 67 00:05:41,934 --> 00:05:45,062 普段は ここで1人で やってるんだけど 68 00:05:45,521 --> 00:05:46,897 へーえ 69 00:05:48,148 --> 00:05:51,151 こんな人けのない所に 1人で住んでんのか? 70 00:05:51,276 --> 00:05:54,238 (しんら)4年前に ばあちゃんが死んでからは 71 00:05:54,947 --> 00:05:58,659 ばあちゃんが この家を 出てはいけないと言ったから 72 00:06:00,285 --> 00:06:03,664 (ギンコ)確かに もしこいつが里に住み― 73 00:06:03,789 --> 00:06:06,667 人前でうっかり何かを 生み出してしまったら…― 74 00:06:07,292 --> 00:06:10,003 こんな風に平穏には 生かしてもらえんだろう… 75 00:06:12,047 --> 00:06:15,509 その性質は あまりに人知を離れてる 76 00:06:16,426 --> 00:06:19,680 ばあさんってのは なかなか賢明な人だったみたいだな 77 00:06:20,264 --> 00:06:21,265 (しんら)うん 78 00:06:21,890 --> 00:06:25,394 いつも 僕のこと考えてくれてた 79 00:06:32,359 --> 00:06:33,610 だけど… 80 00:06:35,571 --> 00:06:37,406 これ… 見てくれる? 81 00:06:38,323 --> 00:06:41,410 ん? お前が描いたのか? 82 00:06:41,493 --> 00:06:43,412 (しんら)うん 1人になると― 83 00:06:43,537 --> 00:06:46,415 時々そういうのが どこからか出てくるんだ 84 00:06:47,291 --> 00:06:49,960 いつも 一体 何なんだろうと思っていた 85 00:06:51,712 --> 00:06:54,631 僕は それらを見るのが 楽しくて…― 86 00:06:54,756 --> 00:06:57,301 写生しては ばあちゃんに見せてた 87 00:06:57,801 --> 00:06:58,969 けど… 88 00:06:59,678 --> 00:07:04,433 (祖母)お前はなぜ こんな幻(ゆめ)ばかり見ているのか… 89 00:07:04,558 --> 00:07:08,395 きっと あんな恐ろしい力が あるせいだ 90 00:07:08,520 --> 00:07:10,647 こんな幻は忘れておしまい 91 00:07:10,772 --> 00:07:12,941 恐ろしい 恐ろしい… 92 00:07:13,400 --> 00:07:15,110 哀れな子 93 00:07:16,612 --> 00:07:18,363 (しんら)そう言うばかりで― 94 00:07:18,488 --> 00:07:23,327 僕の見ているもののことを… 亡くなるまで信じてはくれなかった 95 00:07:25,162 --> 00:07:27,581 だから 僕自身ですら― 96 00:07:27,706 --> 00:07:32,628 本当は自分はどこかおかしいのかと 時々思ったりした 97 00:07:36,173 --> 00:07:40,218 ばあちゃんと僕は そこだけは分かり合えなかった 98 00:07:42,554 --> 00:07:46,725 それは… これらが皆 “蟲”だからだ 99 00:07:47,726 --> 00:07:48,769 蟲? 100 00:07:48,894 --> 00:07:52,898 (ギンコ)ああ 昆蟲(こんちゅう)や 爬蟲類(はちゅうるい)とは 一線を引く“蟲”だ 101 00:07:53,899 --> 00:07:55,817 大ざっぱに言うと こうだ 102 00:07:55,943 --> 00:07:59,655 こっちの4本が動物で 親指が植物だとする 103 00:08:00,489 --> 00:08:01,657 と… ヒトはここ 104 00:08:01,782 --> 00:08:05,243 心臓から一番遠い中指の先端に いるってことになるだろ 105 00:08:05,994 --> 00:08:09,247 手の内側に行くほど 下等な生物になっていく 106 00:08:11,083 --> 00:08:14,503 たどっていくと 手首辺りで 血管が1つになってるだろ 107 00:08:14,628 --> 00:08:15,504 (しんら)うん 108 00:08:15,629 --> 00:08:18,674 (ギンコ)ここらにいるのが 菌類や微生物だ 109 00:08:18,799 --> 00:08:20,217 この辺りまで さかのぼると― 110 00:08:20,342 --> 00:08:23,762 植物と動物との区別をつけるのは 難しくなってくる 111 00:08:25,347 --> 00:08:28,183 けど まだまだ その先にいるモノたちがある 112 00:08:28,684 --> 00:08:30,519 腕をさかのぼり― 113 00:08:31,436 --> 00:08:33,021 肩を通り過ぎる 114 00:08:33,939 --> 00:08:35,524 そしておそらく…― 115 00:08:36,149 --> 00:08:38,068 ここら辺にいるモノたちを― 116 00:08:38,193 --> 00:08:41,822 “蟲” あるいは “みどりもの”と呼ぶ… 117 00:08:42,698 --> 00:08:45,242 生命原生体(そのもの)に近いモノたちだ 118 00:08:47,619 --> 00:08:51,206 “そのもの”に近いだけあって 形や存在があいまいで― 119 00:08:51,331 --> 00:08:55,043 それらが見える性質と そうでない者に分かれてくる 120 00:08:55,836 --> 00:08:59,089 うん 透けてるのもいる 幽霊みたいに 121 00:08:59,423 --> 00:09:03,593 いわゆる幽霊ってやつの中にも 正体は蟲だというものもある 122 00:09:03,719 --> 00:09:06,096 ヒトに擬態できるモノもいるからな 123 00:09:07,305 --> 00:09:10,600 お前のばあさんには それらが見えなかったんだろう… 124 00:09:13,478 --> 00:09:15,605 感覚を分かち合うのは難しい 125 00:09:17,149 --> 00:09:19,609 相手の触れたことのない 手触りを― 126 00:09:20,235 --> 00:09:23,405 相手にそのまま伝えることは できないように…― 127 00:09:26,324 --> 00:09:28,118 見たことのない者と― 128 00:09:28,994 --> 00:09:31,872 その世界を分かち合うのは難しいさ 129 00:09:34,082 --> 00:09:36,043 (しんら)でも ばあちゃん 130 00:09:36,168 --> 00:09:40,630 僕はそのおかしなモノたちが この世界にいるってことが― 131 00:09:40,756 --> 00:09:43,341 うれしくて たまらないんだよ 132 00:09:47,387 --> 00:09:51,767 (しんらの寝息) 133 00:09:55,479 --> 00:09:58,440 (ギンコ)カワヤは… と 134 00:09:58,940 --> 00:10:02,611 しかし だだっ広い家だな 相当古いし… 135 00:10:02,736 --> 00:10:04,863 こんなとこ よく1人で… 136 00:10:07,365 --> 00:10:08,992 今 なんか横切ったな 137 00:10:10,410 --> 00:10:14,372 ま この家に 蟲がいないわけがないか 138 00:10:22,214 --> 00:10:23,215 どこへ… 139 00:10:23,715 --> 00:10:26,301 (少女)へえ 蟲ピンだ 140 00:10:28,762 --> 00:10:31,807 そいつで蟲を 串刺しにして飾るのか 141 00:10:33,016 --> 00:10:35,310 卑しい蟲師め 142 00:10:36,144 --> 00:10:37,729 卑しい? 143 00:10:38,146 --> 00:10:41,900 フー… 蟲に言われたかねえよ 144 00:10:43,944 --> 00:10:48,406 (少女)あっ!? な 何だこいつ 煙のくせに 145 00:10:48,490 --> 00:10:49,407 (少女) うっ… う… ううっ! 146 00:10:49,407 --> 00:10:51,785 (少女) うっ… う… ううっ! 147 00:10:49,407 --> 00:10:51,785 (ギンコ)蟲だよ お前と同じ 148 00:10:51,785 --> 00:10:51,910 (少女) うっ… う… ううっ! 149 00:10:51,910 --> 00:10:52,244 (少女) うっ… う… ううっ! 150 00:10:51,910 --> 00:10:52,244 かわいいやつだろ 151 00:10:52,244 --> 00:10:52,369 かわいいやつだろ 152 00:10:52,369 --> 00:10:53,662 かわいいやつだろ 153 00:10:52,369 --> 00:10:53,662 うっ ぐうっ… ぐっ! うぐぐ… 154 00:10:53,662 --> 00:10:53,787 うっ ぐうっ… ぐっ! うぐぐ… 155 00:10:53,787 --> 00:10:57,624 うっ ぐうっ… ぐっ! うぐぐ… 156 00:10:53,787 --> 00:10:57,624 同胞には巻きついて離れない… すぐ消えるけどな 157 00:10:57,749 --> 00:11:00,001 (少女)ハァ… ハァ… ハァ… 158 00:11:02,462 --> 00:11:03,672 あっ 159 00:11:04,047 --> 00:11:08,009 (ギンコ)ほぉ 半欠けだが きれいな色の杯(さかずき)だな 160 00:11:08,760 --> 00:11:10,846 お前もこれで 月見酒でもしてたのか? 161 00:11:10,971 --> 00:11:12,347 (少女)うるさい 返せっ 162 00:11:12,472 --> 00:11:15,141 ずうずうしく 人の家 上がり込みやがって 163 00:11:15,267 --> 00:11:16,935 とっとと出て行け 164 00:11:17,060 --> 00:11:19,396 (ギンコ) 蟲のくせにエラソーなやつだな 165 00:11:19,521 --> 00:11:21,648 人の家って… お前の家かよ 166 00:11:21,773 --> 00:11:23,275 (少女)ああ そうだ! 167 00:11:24,526 --> 00:11:29,656 (ギンコ)はー なるほど そういうことか 168 00:11:29,781 --> 00:11:33,994 お前は もともとヒトだったのが 蟲の性質を持ったたぐいのものだろ 169 00:11:34,619 --> 00:11:37,789 蟲として不完全だから そんなに弱いんだな 170 00:11:38,081 --> 00:11:42,794 緑の半欠けの杯 これでお前が そうなったのも見当がつく 171 00:11:43,253 --> 00:11:45,839 お前が誰かってこともな 172 00:11:45,964 --> 00:11:49,801 お前の名は… “レンズ”だ (少女)あ… 173 00:11:50,260 --> 00:11:51,177 (ギンコ)ここへ来る前に― 174 00:11:51,303 --> 00:11:54,180 しんらのことは 調べさせてもらったからな 175 00:11:55,473 --> 00:11:59,269 俺に この杯を 元に戻す案があるが― 176 00:12:00,020 --> 00:12:01,271 聞いてみるか? 177 00:12:02,647 --> 00:12:04,149 廉子(れんず)ばあさん 178 00:12:08,361 --> 00:12:11,406 ばあちゃんが まだこの家にいる? 179 00:12:12,449 --> 00:12:15,410 (ギンコ)と言っても むろんヒトとしてではないがな 180 00:12:16,369 --> 00:12:19,205 ヒトと蟲の中間のモノとしてだ 181 00:12:21,166 --> 00:12:23,877 (しんら)どういう… こと? 182 00:12:24,169 --> 00:12:28,381 フー… “蟲の宴(うたげ)”という 現象がある 183 00:12:29,132 --> 00:12:33,637 時に蟲がヒトに擬態し 宴に客を招くってもんだ 184 00:12:34,888 --> 00:12:37,432 そこでヒトは杯を手渡される 185 00:12:37,557 --> 00:12:42,270 そしてつがれた“酒”を飲み干すと 生物としての法則を失う… 186 00:12:43,480 --> 00:12:47,400 つまり蟲の… あちらの世界の住人となる 187 00:12:49,402 --> 00:12:51,613 ばあちゃんが それに? 188 00:12:52,030 --> 00:12:55,867 ああ しかし宴は途中で 中断されてしまった 189 00:12:56,952 --> 00:12:59,871 おかげで お前のばあさんは 蟲にならずに済んだが…― 190 00:13:00,455 --> 00:13:02,374 家に戻ったばあさんは もう― 191 00:13:02,958 --> 00:13:05,377 以前のばあさんでは なくなっていた… 192 00:13:06,294 --> 00:13:09,339 半分を あちら側に 置いてきてしまったんだ… 193 00:13:10,298 --> 00:13:16,096 しんら お前の知ってるばあさんは “半分”でしかなかったんだよ 194 00:13:17,013 --> 00:13:19,099 けど そのもう“半分”も 同じように― 195 00:13:20,058 --> 00:13:23,895 お前が生まれた日からずっと この家の中で見守ってたんだ 196 00:13:26,731 --> 00:13:30,110 (しんら) そんな… 全然気づかなかった… 197 00:13:31,027 --> 00:13:34,739 (ギンコ)彼女は完全な蟲では ないから お前には見えんのだ 198 00:13:35,240 --> 00:13:36,116 だが…― 199 00:13:36,992 --> 00:13:41,121 お前の“力”を使えば ばあさんを 完全な蟲にすることができる… 200 00:13:42,038 --> 00:13:46,084 そうすればもう 決して こちら側に戻ることはできないが… 201 00:13:47,669 --> 00:13:48,795 (ギンコ)どうする? 202 00:13:50,422 --> 00:13:52,132 (五百蔵廉子)本当か… 203 00:13:53,925 --> 00:13:56,094 本当にそうすれば…― 204 00:13:57,262 --> 00:14:00,015 しんらに会うことができるのか? 205 00:14:02,559 --> 00:14:05,645 (ギンコ)ばあさんの迷いは そう長くはなかったよ… 206 00:14:06,438 --> 00:14:09,315 力を… 貸してやれるな? 207 00:14:09,649 --> 00:14:10,859 しんら… 208 00:14:15,989 --> 00:14:18,867 (しんら)描くとこ見ちゃダメだよ (ギンコ)分かったって… 209 00:14:19,743 --> 00:14:22,871 じゃあ しんら さっきした ばあさんの話の宴の中で…― 210 00:14:23,330 --> 00:14:26,875 ばあさんが蟲にもらった杯を 左手で描いてみてくれ 211 00:14:27,250 --> 00:14:30,879 え でも… どんな色とか形とか 聞いてないよ? 212 00:14:31,296 --> 00:14:34,090 いいんだ それで 想像で描いてみてくれ 213 00:14:35,258 --> 00:14:36,468 (しんら)想像… 214 00:14:36,926 --> 00:14:40,722 (ギンコ)描けるはずだ ばあさんが受けた杯の半分は― 215 00:14:40,847 --> 00:14:44,142 子から孫へと 体内に受け継がれていくものだから 216 00:14:46,227 --> 00:14:47,479 (ギンコ) 見るなって言われたら― 217 00:14:47,979 --> 00:14:49,689 見んわけにはいかんだろう やっぱり 218 00:14:57,864 --> 00:15:00,992 緑… のような気がする 219 00:15:01,326 --> 00:15:06,164 この国の緑のような… 濃くて鮮やかな… 220 00:15:09,125 --> 00:15:12,921 それで 平たくて… 丸い形… 221 00:15:13,296 --> 00:15:14,714 (ギンコ)ご名答! 222 00:15:19,386 --> 00:15:22,472 すげぇ… (しんら)あっ 割れる… 223 00:15:26,893 --> 00:15:28,103 (ギンコ)廉子! 224 00:15:32,816 --> 00:15:35,902 (しんら) そこにいるの? ばあちゃん… 225 00:15:36,027 --> 00:15:36,945 (ギンコ)合わせるぞ 226 00:15:46,996 --> 00:15:48,289 何だ これ 227 00:15:49,499 --> 00:15:51,292 さぁ 飲んでみろ 廉子 228 00:16:15,442 --> 00:16:16,943 ばあちゃん? 229 00:16:19,696 --> 00:16:21,573 何照れてんだよ お前ら… 230 00:16:21,698 --> 00:16:24,617 いや だって思ってたより 若かったっつーか… 231 00:16:25,201 --> 00:16:28,621 ほら お前もいっとけ 祝いの酒だ (しんら)うん 232 00:16:31,875 --> 00:16:32,959 (しんら)ん… 233 00:16:33,918 --> 00:16:34,919 これは… ばあちゃんの記憶だ… 234 00:16:34,919 --> 00:16:37,255 これは… ばあちゃんの記憶だ… 235 00:16:34,919 --> 00:16:37,255 (カラスの鳴き声) 236 00:16:37,255 --> 00:16:37,672 これは… ばあちゃんの記憶だ… 237 00:16:40,550 --> 00:16:43,261 (廉子)急がないと日が落ちるな… 238 00:16:44,179 --> 00:16:45,180 ん… 239 00:16:47,599 --> 00:16:48,892 蟲… 240 00:17:11,664 --> 00:17:13,833 (廉子)列から出られない… 241 00:17:39,192 --> 00:17:43,613 (人型)さあ… 飲みなされ 五百蔵廉子どの… 242 00:17:44,948 --> 00:17:48,243 これは そなたのための宴なのだ 243 00:17:49,244 --> 00:17:51,079 (廉子)なんて かぐわしい… 244 00:17:57,585 --> 00:18:03,424 一口飲むほどに… ものを考える力を失わせる 245 00:18:04,884 --> 00:18:06,844 (人型)お気に召されたかの 246 00:18:07,929 --> 00:18:10,265 それは“光酒(こうき)”という生き物 247 00:18:10,390 --> 00:18:12,600 普段は真の闇の底で― 248 00:18:12,725 --> 00:18:16,938 巨大な光脈(こうみゃく)を作り 泳ぎ回っておるものだが― 249 00:18:17,063 --> 00:18:20,400 それを抽出することのできる その杯を― 250 00:18:20,525 --> 00:18:23,695 特別に そなたのために作ったのだ 251 00:18:24,112 --> 00:18:28,700 それは この世界に 生命が生まれた時から流れ出で― 252 00:18:28,825 --> 00:18:32,870 それが近付いた土地は 草青み 命芽吹き― 253 00:18:32,996 --> 00:18:35,290 遠ざかれば枯渇する 254 00:18:35,915 --> 00:18:37,792 つまり命の水 255 00:18:37,917 --> 00:18:40,962 この世に これよりうまいものはない 256 00:18:41,546 --> 00:18:45,592 杯を交わし 最高のもてなしをしたのには― 257 00:18:45,717 --> 00:18:48,136 そなたに頼みたいことがあるからだ 258 00:18:49,387 --> 00:18:54,267 これより31年後に誕生する そなたの孫は― 259 00:18:54,392 --> 00:18:59,147 生物世界を変えるほどの 特異な性質を持って生まれてくる 260 00:19:00,315 --> 00:19:04,152 そなたには生涯 その目付けをしてほしいのだ 261 00:19:05,028 --> 00:19:07,155 (廉子)私の孫… 262 00:19:07,447 --> 00:19:12,368 (人型)それが その子どもと この世界にとって幸福なことなのだ 263 00:19:12,952 --> 00:19:17,373 それを望まれるなら そなたに力を与えよう 264 00:19:17,874 --> 00:19:21,878 さあ 残りの酒を すべて飲み干されよ 265 00:19:29,594 --> 00:19:30,845 ギャッ! 266 00:19:29,594 --> 00:19:30,845 (カラスの鳴き声) 267 00:19:46,778 --> 00:19:48,196 (廉子)乾いてる… 268 00:19:54,160 --> 00:19:55,703 (廉子)帰らなきゃ… 269 00:19:55,787 --> 00:19:56,829 (杯の割れる音) 270 00:19:56,829 --> 00:19:57,205 (杯の割れる音) 271 00:19:56,829 --> 00:19:57,205 (しんら・廉子)はっ… 272 00:19:57,205 --> 00:19:58,122 (しんら・廉子)はっ… 273 00:20:19,977 --> 00:20:20,978 (廉子)しんら? 274 00:20:21,479 --> 00:20:24,732 あれ どうしたんだろ 僕… 275 00:20:27,110 --> 00:20:29,821 (ギンコ) しんらの涙は止まらなかった 276 00:20:30,530 --> 00:20:35,827 廉子の感情 感覚がつぶさに 流れ込んできたのだという 277 00:20:36,869 --> 00:20:39,205 ただ ただ…― 278 00:20:39,831 --> 00:20:44,460 杯が割れてしまったことが 悲しくて しかたなかったのだという… 279 00:20:46,254 --> 00:20:49,882 そして それに感応するように― 280 00:20:50,258 --> 00:20:52,885 光酒も杯から湧き続けた 281 00:20:54,262 --> 00:20:57,807 とめどなく… 流れ続けた 282 00:20:59,851 --> 00:21:01,602 (しんらの寝息) 283 00:21:03,563 --> 00:21:04,939 (廉子)もう行くのか? 284 00:21:09,736 --> 00:21:12,488 (ギンコ)すごいな 一面のコケだ 285 00:21:12,613 --> 00:21:16,701 (廉子)ああ 昨晩 光酒が染み込んだ一帯だな 286 00:21:17,702 --> 00:21:19,787 しんらの調査とやらは 諦めるのか? 287 00:21:20,663 --> 00:21:22,206 そーなあ… 288 00:21:22,331 --> 00:21:25,543 面倒な お目付け役が 復活しちまったからな 289 00:21:25,918 --> 00:21:30,548 ふふ… 調査抜きなら 近くへ来た時 寄るといい 290 00:21:30,840 --> 00:21:32,133 しかたがないとはいえ― 291 00:21:32,258 --> 00:21:35,386 こんな所に1人では しんらも さみしかろう 292 00:21:37,180 --> 00:21:40,057 別に その必要は ないんじゃないか? 293 00:21:40,725 --> 00:21:44,562 これからは… いつでも あんたが そばにいるんだから 294 00:21:48,357 --> 00:21:51,986 (しんら)あれ… ギンコは? (廉子)もう行ったぞ 295 00:21:52,278 --> 00:21:54,781 何だよ あいさつもなしに… 296 00:21:54,906 --> 00:21:58,493 (廉子)こっちも大した礼も してないし 悪かったな… 297 00:21:58,618 --> 00:21:59,827 (しんら)ん? 298 00:22:01,662 --> 00:22:04,248 いや… でも― 299 00:22:05,500 --> 00:22:08,336 緑の杯がないけどね… 300 00:22:12,173 --> 00:22:13,800 (ギンコ)それ以後― 301 00:22:13,925 --> 00:22:18,596 神の筆(ひだりて)を持つ少年についての 新しいうわさは― 302 00:22:19,013 --> 00:22:21,015 ふっつりと途切れた 303 00:22:21,140 --> 00:22:26,562 ♪~ 304 00:23:25,705 --> 00:23:31,711 ~♪