1 00:00:04,650 --> 00:00:07,320 (ナレーション) およそ遠しとされしもの 2 00:00:08,200 --> 00:00:14,030 下等で奇怪 見慣れた動植物とは まるで違うとおぼしきモノたち 3 00:00:14,700 --> 00:00:19,540 それら異形の一群を ヒトは古くから畏(おそ)れを含み― 4 00:00:20,210 --> 00:00:24,460 いつしか総じて “蟲(むし)”と呼んだ… 5 00:00:30,180 --> 00:00:36,180 ♪~ 6 00:01:26,360 --> 00:01:32,370 ~♪ 7 00:01:41,500 --> 00:01:43,130 (少女)誰か来る… 8 00:01:47,800 --> 00:01:50,140 なんか妙なやつが来る 9 00:01:52,560 --> 00:01:53,640 誰か来る 10 00:01:57,560 --> 00:01:59,610 (ギンコ)なんか今いたな 11 00:02:00,980 --> 00:02:02,610 猿かね… 12 00:02:05,530 --> 00:02:09,820 しかし緑が異様なくらい 鮮やかな所だな― 13 00:02:12,080 --> 00:02:13,410 ここは… 14 00:02:26,630 --> 00:02:29,890 (ギンコ)生来… 緑や水…― 15 00:02:31,970 --> 00:02:34,390 生命を呼ぶ体質とでも いうのか…― 16 00:02:35,270 --> 00:02:39,900 そういうものを持つ人間が… まれにいる 17 00:02:48,280 --> 00:02:51,910 (五百蔵(いおろい)しんら)おー… 左手でも文字なら大丈夫だな… 18 00:02:52,950 --> 00:02:56,540 えーっと… “日ざしも徐々に和らぎ―” 19 00:02:56,660 --> 00:02:59,250 “木々は萌(も)え 鳥も…” 20 00:02:59,620 --> 00:03:01,380 (しんら)もともと 左が利き手だし― 21 00:03:01,920 --> 00:03:03,750 書きやすいな… 22 00:03:05,210 --> 00:03:06,420 (しんら)え… 23 00:03:07,460 --> 00:03:11,640 (鳥の鳴き声) 24 00:03:12,090 --> 00:03:13,640 あー… 25 00:03:14,680 --> 00:03:17,520 (しんら) しまった… そうだったか 26 00:03:17,640 --> 00:03:20,140 これらの文字は もともとは“絵”なのだ 27 00:03:20,270 --> 00:03:24,610 象形文字というやつ これらは これでいいとして… 28 00:03:24,690 --> 00:03:27,690 ぬっ… ほっ! ぬ… はっ 29 00:03:33,030 --> 00:03:35,120 (しんら)おいこら! “鳥”っ! 30 00:03:35,200 --> 00:03:37,410 (鳥の鳴き声) 31 00:03:37,540 --> 00:03:38,950 何だこりゃ… 32 00:03:41,790 --> 00:03:44,380 (しんら) 勝手に外に出るんじゃなーい! 33 00:03:44,500 --> 00:03:45,500 (ギンコ)墨? 34 00:03:45,590 --> 00:03:47,000 (走る足音) 35 00:03:47,130 --> 00:03:48,130 (しんら)あっ 36 00:03:48,840 --> 00:03:51,430 ハァ… み 見た? 37 00:03:51,550 --> 00:03:54,300 (ギンコ) あー そりゃもうバッチリと… 38 00:03:54,430 --> 00:03:58,270 きみ 五百蔵しんら君? (しんら)え? はぁ… 39 00:03:58,390 --> 00:04:00,270 (ギンコ) 書簡 読んでもらえたかな? 40 00:04:00,560 --> 00:04:07,230 あ じゃあ あなたが蟲師(むしし)の ギンコ… さん? 41 00:04:08,690 --> 00:04:10,860 (しんら) お断りの手紙を書いていたんです 42 00:04:11,820 --> 00:04:12,780 これまでも― 43 00:04:12,910 --> 00:04:15,910 何度かこういった“調査”の 申し入れはありましたが― 44 00:04:16,030 --> 00:04:17,870 すべて断ってきました 45 00:04:18,540 --> 00:04:20,540 祖母の遺言なんです 46 00:04:21,410 --> 00:04:24,380 僕のこの性質を広めてはならない… 47 00:04:24,500 --> 00:04:27,590 そして できる限り眠らせておくこと 48 00:04:28,250 --> 00:04:32,590 ご覧になったように 昔から僕がものの形を象(かたど)ると― 49 00:04:32,720 --> 00:04:36,930 それは既存の生物でなくとも 生命を持つんです 50 00:04:37,640 --> 00:04:42,890 でも “新たな生物を生み出すなど 人のしてよい所業ではない” 51 00:04:43,100 --> 00:04:46,770 “八百万(やおよろず)の神々の 怒りを受ける”と言って― 52 00:04:46,900 --> 00:04:50,780 左手でものを描くことを 祖母に禁じられました 53 00:04:51,070 --> 00:04:53,820 あ 右手で描くと 何もないんですけど― 54 00:04:53,950 --> 00:04:58,950 こないだ指 ケガしちゃいまして それで さっきのようなことに… 55 00:04:59,280 --> 00:05:02,290 なるほど あれは驚異の造形物だった 56 00:05:02,830 --> 00:05:06,750 僕も驚いた あんなものまで動きだすとは 57 00:05:06,880 --> 00:05:10,550 今までも さんざん妙なもの 動きだしたりしたけど 58 00:05:10,670 --> 00:05:12,210 (ギンコ)へー 例えば? 59 00:05:12,340 --> 00:05:15,930 ん… コウモリ傘とか 孫の手とか 60 00:05:17,680 --> 00:05:20,310 はっ 調査はお断りします (ギンコ)ちっ 61 00:05:20,850 --> 00:05:23,810 ま でもそのまま すぐ帰れとは 言いませんが 62 00:05:24,440 --> 00:05:27,270 こんな山奥まで入ってくるのは 大変だったでしょう 63 00:05:27,400 --> 00:05:28,810 今晩は ゆっくりしてってください 64 00:05:29,480 --> 00:05:32,320 それに 実は人に会うの 久しぶりで― 65 00:05:32,440 --> 00:05:35,570 世間話なら ぜひとも 付き合ってほしいんですよ 66 00:05:37,490 --> 00:05:38,740 (しんら)どうぞ 67 00:05:39,910 --> 00:05:41,740 僕が漬けた果実酒です 68 00:05:41,870 --> 00:05:45,000 普段は ここで1人で やってるんだけど 69 00:05:45,460 --> 00:05:46,830 へーえ 70 00:05:48,080 --> 00:05:51,090 こんな人けのない所に 1人で住んでんのか? 71 00:05:51,210 --> 00:05:54,170 (しんら)4年前に ばあちゃんが死んでからは 72 00:05:54,880 --> 00:05:58,590 ばあちゃんが この家を 出てはいけないと言ったから 73 00:06:00,220 --> 00:06:03,600 (ギンコ)確かに もしこいつが里に住み― 74 00:06:03,720 --> 00:06:06,600 人前でうっかり何かを 生み出してしまったら…― 75 00:06:07,230 --> 00:06:09,940 こんな風に平穏には 生かしてもらえんだろう… 76 00:06:11,980 --> 00:06:15,440 その性質は あまりに人知を離れてる 77 00:06:16,360 --> 00:06:19,620 ばあさんってのは なかなか賢明な人だったみたいだな 78 00:06:20,200 --> 00:06:21,200 (しんら)うん 79 00:06:21,830 --> 00:06:25,330 いつも 僕のこと考えてくれてた 80 00:06:32,290 --> 00:06:33,550 だけど… 81 00:06:35,510 --> 00:06:37,340 これ… 見てくれる? 82 00:06:38,260 --> 00:06:41,350 ん? お前が描いたのか? 83 00:06:41,430 --> 00:06:43,350 (しんら)うん 1人になると― 84 00:06:43,470 --> 00:06:46,350 時々そういうのが どこからか出てくるんだ 85 00:06:47,230 --> 00:06:49,900 いつも 一体 何なんだろうと思っていた 86 00:06:51,650 --> 00:06:54,570 僕は それらを見るのが 楽しくて…― 87 00:06:54,690 --> 00:06:57,240 写生しては ばあちゃんに見せてた 88 00:06:57,740 --> 00:06:58,900 けど… 89 00:06:59,610 --> 00:07:04,370 (祖母)お前はなぜ こんな幻(ゆめ)ばかり見ているのか… 90 00:07:04,490 --> 00:07:08,330 きっと あんな恐ろしい力が あるせいだ 91 00:07:08,460 --> 00:07:10,580 こんな幻は忘れておしまい 92 00:07:10,710 --> 00:07:12,880 恐ろしい 恐ろしい… 93 00:07:13,340 --> 00:07:15,050 哀れな子 94 00:07:16,550 --> 00:07:18,300 (しんら)そう言うばかりで― 95 00:07:18,420 --> 00:07:23,260 僕の見ているもののことを… 亡くなるまで信じてはくれなかった 96 00:07:25,100 --> 00:07:27,520 だから 僕自身ですら― 97 00:07:27,640 --> 00:07:32,560 本当は自分はどこかおかしいのかと 時々思ったりした 98 00:07:36,110 --> 00:07:40,150 ばあちゃんと僕は そこだけは分かり合えなかった 99 00:07:42,490 --> 00:07:46,660 それは… これらが皆 “蟲”だからだ 100 00:07:47,660 --> 00:07:48,700 蟲? 101 00:07:48,830 --> 00:07:52,830 (ギンコ)ああ 昆蟲(こんちゅう)や 爬蟲類(はちゅうるい)とは 一線を引く“蟲”だ 102 00:07:53,830 --> 00:07:55,750 大ざっぱに言うと こうだ 103 00:07:55,880 --> 00:07:59,590 こっちの4本が動物で 親指が植物だとする 104 00:08:00,420 --> 00:08:01,590 と… ヒトはここ 105 00:08:01,720 --> 00:08:05,180 心臓から一番遠い中指の先端に いるってことになるだろ 106 00:08:05,930 --> 00:08:09,180 手の内側に行くほど 下等な生物になっていく 107 00:08:11,020 --> 00:08:14,440 たどっていくと 手首辺りで 血管が1つになってるだろ 108 00:08:14,560 --> 00:08:15,440 (しんら)うん 109 00:08:15,560 --> 00:08:18,610 (ギンコ)ここらにいるのが 菌類や微生物だ 110 00:08:18,730 --> 00:08:20,150 この辺りまで さかのぼると― 111 00:08:20,280 --> 00:08:23,700 植物と動物との区別をつけるのは 難しくなってくる 112 00:08:25,280 --> 00:08:28,120 けど まだまだ その先にいるモノたちがある 113 00:08:28,620 --> 00:08:30,450 腕をさかのぼり― 114 00:08:31,370 --> 00:08:32,960 肩を通り過ぎる 115 00:08:33,870 --> 00:08:35,460 そしておそらく…― 116 00:08:36,080 --> 00:08:38,000 ここら辺にいるモノたちを― 117 00:08:38,130 --> 00:08:41,760 “蟲” あるいは “みどりもの”と呼ぶ… 118 00:08:42,630 --> 00:08:45,180 生命原生体(そのもの)に近いモノたちだ 119 00:08:47,550 --> 00:08:51,140 “そのもの”に近いだけあって 形や存在があいまいで― 120 00:08:51,270 --> 00:08:54,980 それらが見える性質と そうでない者に分かれてくる 121 00:08:55,770 --> 00:08:59,020 うん 透けてるのもいる 幽霊みたいに 122 00:08:59,360 --> 00:09:03,530 いわゆる幽霊ってやつの中にも 正体は蟲だというものもある 123 00:09:03,650 --> 00:09:06,030 ヒトに擬態できるモノもいるからな 124 00:09:07,240 --> 00:09:10,540 お前のばあさんには それらが見えなかったんだろう… 125 00:09:13,410 --> 00:09:15,540 感覚を分かち合うのは難しい 126 00:09:17,080 --> 00:09:19,540 相手の触れたことのない 手触りを― 127 00:09:20,170 --> 00:09:23,340 相手にそのまま伝えることは できないように…― 128 00:09:26,260 --> 00:09:28,050 見たことのない者と― 129 00:09:28,930 --> 00:09:31,810 その世界を分かち合うのは難しいさ 130 00:09:34,020 --> 00:09:35,980 (しんら)でも ばあちゃん 131 00:09:36,100 --> 00:09:40,570 僕はそのおかしなモノたちが この世界にいるってことが― 132 00:09:40,690 --> 00:09:43,280 うれしくて たまらないんだよ 133 00:09:47,320 --> 00:09:51,700 (しんらの寝息) 134 00:09:55,410 --> 00:09:58,380 (ギンコ)カワヤは… と 135 00:09:58,880 --> 00:10:02,550 しかし だだっ広い家だな 相当古いし… 136 00:10:02,670 --> 00:10:04,800 こんなとこ よく1人で… 137 00:10:07,300 --> 00:10:08,930 今 なんか横切ったな 138 00:10:10,350 --> 00:10:14,310 ま この家に 蟲がいないわけがないか 139 00:10:22,150 --> 00:10:23,150 どこへ… 140 00:10:23,650 --> 00:10:26,240 (少女)へえ 蟲ピンだ 141 00:10:28,700 --> 00:10:31,740 そいつで蟲を 串刺しにして飾るのか 142 00:10:32,950 --> 00:10:35,250 卑しい蟲師め 143 00:10:36,080 --> 00:10:37,660 卑しい? 144 00:10:38,080 --> 00:10:41,840 フー… 蟲に言われたかねえよ 145 00:10:43,880 --> 00:10:48,340 (少女)あっ!? な 何だこいつ 煙のくせに 146 00:10:48,430 --> 00:10:49,340 (少女) うっ… う… ううっ! 147 00:10:49,340 --> 00:10:51,720 (ギンコ)蟲だよ お前と同じ (少女) うっ… う… ううっ! 148 00:10:51,720 --> 00:10:51,850 (少女) うっ… う… ううっ! 149 00:10:51,850 --> 00:10:52,180 かわいいやつだろ (少女) うっ… う… ううっ! 150 00:10:52,180 --> 00:10:52,300 かわいいやつだろ 151 00:10:52,300 --> 00:10:53,600 うっ ぐうっ… ぐっ! うぐぐ… かわいいやつだろ 152 00:10:53,600 --> 00:10:53,720 うっ ぐうっ… ぐっ! うぐぐ… 153 00:10:53,720 --> 00:10:57,560 同胞には巻きついて離れない… すぐ消えるけどな うっ ぐうっ… ぐっ! うぐぐ… 154 00:10:57,680 --> 00:10:59,940 (少女)ハァ… ハァ… ハァ… 155 00:11:02,400 --> 00:11:03,610 あっ 156 00:11:03,980 --> 00:11:07,940 (ギンコ)ほぉ 半欠けだが きれいな色の杯(さかずき)だな 157 00:11:08,700 --> 00:11:10,780 お前もこれで 月見酒でもしてたのか? 158 00:11:10,910 --> 00:11:12,280 (少女)うるさい 返せっ 159 00:11:12,410 --> 00:11:15,080 ずうずうしく 人の家 上がり込みやがって 160 00:11:15,200 --> 00:11:16,870 とっとと出て行け 161 00:11:17,000 --> 00:11:19,330 (ギンコ) 蟲のくせにエラソーなやつだな 162 00:11:19,460 --> 00:11:21,580 人の家って… お前の家かよ 163 00:11:21,710 --> 00:11:23,210 (少女)ああ そうだ! 164 00:11:24,460 --> 00:11:29,590 (ギンコ)はー なるほど そういうことか 165 00:11:29,720 --> 00:11:33,930 お前は もともとヒトだったのが 蟲の性質を持ったたぐいのものだろ 166 00:11:34,550 --> 00:11:37,720 蟲として不完全だから そんなに弱いんだな 167 00:11:38,020 --> 00:11:42,730 緑の半欠けの杯 これでお前が そうなったのも見当がつく 168 00:11:43,190 --> 00:11:45,770 お前が誰かってこともな 169 00:11:45,900 --> 00:11:49,740 お前の名は… “レンズ”だ (少女)あ… 170 00:11:50,200 --> 00:11:51,110 (ギンコ)ここへ来る前に― 171 00:11:51,240 --> 00:11:54,120 しんらのことは 調べさせてもらったからな 172 00:11:55,410 --> 00:11:59,200 俺に この杯を 元に戻す案があるが― 173 00:11:59,960 --> 00:12:01,210 聞いてみるか? 174 00:12:02,580 --> 00:12:04,080 廉子(れんず)ばあさん 175 00:12:08,300 --> 00:12:11,340 ばあちゃんが まだこの家にいる? 176 00:12:12,380 --> 00:12:15,350 (ギンコ)と言っても むろんヒトとしてではないがな 177 00:12:16,300 --> 00:12:19,140 ヒトと蟲の中間のモノとしてだ 178 00:12:21,100 --> 00:12:23,810 (しんら)どういう… こと? 179 00:12:24,100 --> 00:12:28,320 フー… “蟲の宴(うたげ)”という 現象がある 180 00:12:29,070 --> 00:12:33,570 時に蟲がヒトに擬態し 宴に客を招くってもんだ 181 00:12:34,820 --> 00:12:37,370 そこでヒトは杯を手渡される 182 00:12:37,490 --> 00:12:42,210 そしてつがれた“酒”を飲み干すと 生物としての法則を失う… 183 00:12:43,420 --> 00:12:47,340 つまり蟲の… あちらの世界の住人となる 184 00:12:49,340 --> 00:12:51,550 ばあちゃんが それに? 185 00:12:51,970 --> 00:12:55,800 ああ しかし宴は途中で 中断されてしまった 186 00:12:56,890 --> 00:12:59,810 おかげで お前のばあさんは 蟲にならずに済んだが…― 187 00:13:00,390 --> 00:13:02,310 家に戻ったばあさんは もう― 188 00:13:02,890 --> 00:13:05,310 以前のばあさんでは なくなっていた… 189 00:13:06,230 --> 00:13:09,270 半分を あちら側に 置いてきてしまったんだ… 190 00:13:10,230 --> 00:13:16,030 しんら お前の知ってるばあさんは “半分”でしかなかったんだよ 191 00:13:16,950 --> 00:13:19,030 けど そのもう“半分”も 同じように― 192 00:13:19,990 --> 00:13:23,830 お前が生まれた日からずっと この家の中で見守ってたんだ 193 00:13:26,670 --> 00:13:30,050 (しんら) そんな… 全然気づかなかった… 194 00:13:30,960 --> 00:13:34,670 (ギンコ)彼女は完全な蟲では ないから お前には見えんのだ 195 00:13:35,180 --> 00:13:36,050 だが…― 196 00:13:36,930 --> 00:13:41,060 お前の“力”を使えば ばあさんを 完全な蟲にすることができる… 197 00:13:41,970 --> 00:13:46,020 そうすればもう 決して こちら側に戻ることはできないが… 198 00:13:47,600 --> 00:13:48,730 (ギンコ)どうする? 199 00:13:50,360 --> 00:13:52,070 (五百蔵廉子)本当か… 200 00:13:53,860 --> 00:13:56,030 本当にそうすれば…― 201 00:13:57,200 --> 00:13:59,950 しんらに会うことができるのか? 202 00:14:02,490 --> 00:14:05,580 (ギンコ)ばあさんの迷いは そう長くはなかったよ… 203 00:14:06,370 --> 00:14:09,250 力を… 貸してやれるな? 204 00:14:09,580 --> 00:14:10,790 しんら… 205 00:14:15,920 --> 00:14:18,800 (しんら)描くとこ見ちゃダメだよ (ギンコ)分かったって… 206 00:14:19,680 --> 00:14:22,810 じゃあ しんら さっきした ばあさんの話の宴の中で…― 207 00:14:23,270 --> 00:14:26,810 ばあさんが蟲にもらった杯を 左手で描いてみてくれ 208 00:14:27,190 --> 00:14:30,810 え でも… どんな色とか形とか 聞いてないよ? 209 00:14:31,230 --> 00:14:34,030 いいんだ それで 想像で描いてみてくれ 210 00:14:35,190 --> 00:14:36,400 (しんら)想像… 211 00:14:36,860 --> 00:14:40,660 (ギンコ)描けるはずだ ばあさんが受けた杯の半分は― 212 00:14:40,780 --> 00:14:44,080 子から孫へと 体内に受け継がれていくものだから 213 00:14:46,160 --> 00:14:47,410 (ギンコ) 見るなって言われたら― 214 00:14:47,910 --> 00:14:49,620 見んわけにはいかんだろう やっぱり 215 00:14:57,800 --> 00:15:00,930 緑… のような気がする 216 00:15:01,260 --> 00:15:06,100 この国の緑のような… 濃くて鮮やかな… 217 00:15:09,060 --> 00:15:12,860 それで 平たくて… 丸い形… 218 00:15:13,230 --> 00:15:14,650 (ギンコ)ご名答! 219 00:15:19,320 --> 00:15:22,410 すげぇ… (しんら)あっ 割れる… 220 00:15:26,830 --> 00:15:28,040 (ギンコ)廉子! 221 00:15:32,750 --> 00:15:35,840 (しんら) そこにいるの? ばあちゃん… 222 00:15:35,960 --> 00:15:36,880 (ギンコ)合わせるぞ 223 00:15:46,930 --> 00:15:48,220 何だ これ 224 00:15:49,430 --> 00:15:51,230 さぁ 飲んでみろ 廉子 225 00:16:15,380 --> 00:16:16,880 ばあちゃん? 226 00:16:19,630 --> 00:16:21,510 何照れてんだよ お前ら… 227 00:16:21,630 --> 00:16:24,550 いや だって思ってたより 若かったっつーか… 228 00:16:25,140 --> 00:16:28,560 ほら お前もいっとけ 祝いの酒だ (しんら)うん 229 00:16:31,810 --> 00:16:32,890 (しんら)ん… 230 00:16:33,850 --> 00:16:34,850 これは… ばあちゃんの記憶だ… 231 00:16:34,850 --> 00:16:37,190 (カラスの鳴き声) これは… ばあちゃんの記憶だ… 232 00:16:37,190 --> 00:16:37,610 これは… ばあちゃんの記憶だ… 233 00:16:40,490 --> 00:16:43,200 (廉子)急がないと日が落ちるな… 234 00:16:44,110 --> 00:16:45,120 ん… 235 00:16:47,530 --> 00:16:48,830 蟲… 236 00:17:11,600 --> 00:17:13,770 (廉子)列から出られない… 237 00:17:39,130 --> 00:17:43,550 (人型)さあ… 飲みなされ 五百蔵廉子どの… 238 00:17:44,880 --> 00:17:48,180 これは そなたのための宴なのだ 239 00:17:49,180 --> 00:17:51,010 (廉子)なんて かぐわしい… 240 00:17:57,520 --> 00:18:03,360 一口飲むほどに… ものを考える力を失わせる 241 00:18:04,820 --> 00:18:06,780 (人型)お気に召されたかの 242 00:18:07,860 --> 00:18:10,200 それは“光酒(こうき)”という生き物 243 00:18:10,330 --> 00:18:12,540 普段は真の闇の底で― 244 00:18:12,660 --> 00:18:16,870 巨大な光脈(こうみゃく)を作り 泳ぎ回っておるものだが― 245 00:18:17,000 --> 00:18:20,340 それを抽出することのできる その杯を― 246 00:18:20,460 --> 00:18:23,630 特別に そなたのために作ったのだ 247 00:18:24,050 --> 00:18:28,640 それは この世界に 生命が生まれた時から流れ出で― 248 00:18:28,760 --> 00:18:32,810 それが近付いた土地は 草青み 命芽吹き― 249 00:18:32,930 --> 00:18:35,230 遠ざかれば枯渇する 250 00:18:35,850 --> 00:18:37,730 つまり命の水 251 00:18:37,850 --> 00:18:40,900 この世に これよりうまいものはない 252 00:18:41,480 --> 00:18:45,530 杯を交わし 最高のもてなしをしたのには― 253 00:18:45,650 --> 00:18:48,070 そなたに頼みたいことがあるからだ 254 00:18:49,320 --> 00:18:54,200 これより31年後に誕生する そなたの孫は― 255 00:18:54,330 --> 00:18:59,080 生物世界を変えるほどの 特異な性質を持って生まれてくる 256 00:19:00,250 --> 00:19:04,090 そなたには生涯 その目付けをしてほしいのだ 257 00:19:04,960 --> 00:19:07,090 (廉子)私の孫… 258 00:19:07,380 --> 00:19:12,300 (人型)それが その子どもと この世界にとって幸福なことなのだ 259 00:19:12,890 --> 00:19:17,310 それを望まれるなら そなたに力を与えよう 260 00:19:17,810 --> 00:19:21,810 さあ 残りの酒を すべて飲み干されよ 261 00:19:29,530 --> 00:19:30,780 (カラスの鳴き声) ギャッ! 262 00:19:46,710 --> 00:19:48,130 (廉子)乾いてる… 263 00:19:54,100 --> 00:19:55,640 (廉子)帰らなきゃ… 264 00:19:55,720 --> 00:19:56,760 (杯の割れる音) 265 00:19:56,760 --> 00:19:57,140 (しんら・廉子)はっ… (杯の割れる音) 266 00:19:57,140 --> 00:19:58,060 (しんら・廉子)はっ… 267 00:20:19,910 --> 00:20:20,910 (廉子)しんら? 268 00:20:21,410 --> 00:20:24,670 あれ どうしたんだろ 僕… 269 00:20:27,050 --> 00:20:29,760 (ギンコ) しんらの涙は止まらなかった 270 00:20:30,470 --> 00:20:35,760 廉子の感情 感覚がつぶさに 流れ込んできたのだという 271 00:20:36,800 --> 00:20:39,140 ただ ただ…― 272 00:20:39,770 --> 00:20:44,400 杯が割れてしまったことが 悲しくて しかたなかったのだという… 273 00:20:46,190 --> 00:20:49,820 そして それに感応するように― 274 00:20:50,190 --> 00:20:52,820 光酒も杯から湧き続けた 275 00:20:54,200 --> 00:20:57,740 とめどなく… 流れ続けた 276 00:20:59,790 --> 00:21:01,540 (しんらの寝息) 277 00:21:03,500 --> 00:21:04,870 (廉子)もう行くのか? 278 00:21:09,670 --> 00:21:12,420 (ギンコ)すごいな 一面のコケだ 279 00:21:12,550 --> 00:21:16,640 (廉子)ああ 昨晩 光酒が染み込んだ一帯だな 280 00:21:17,640 --> 00:21:19,720 しんらの調査とやらは 諦めるのか? 281 00:21:20,600 --> 00:21:22,140 そーなあ… 282 00:21:22,270 --> 00:21:25,480 面倒な お目付け役が 復活しちまったからな 283 00:21:25,850 --> 00:21:30,480 ふふ… 調査抜きなら 近くへ来た時 寄るといい 284 00:21:30,780 --> 00:21:32,070 しかたがないとはいえ― 285 00:21:32,190 --> 00:21:35,320 こんな所に1人では しんらも さみしかろう 286 00:21:37,120 --> 00:21:39,990 別に その必要は ないんじゃないか? 287 00:21:40,660 --> 00:21:44,500 これからは… いつでも あんたが そばにいるんだから 288 00:21:48,290 --> 00:21:51,920 (しんら)あれ… ギンコは? (廉子)もう行ったぞ 289 00:21:52,210 --> 00:21:54,720 何だよ あいさつもなしに… 290 00:21:54,840 --> 00:21:58,430 (廉子)こっちも大した礼も してないし 悪かったな… 291 00:21:58,550 --> 00:21:59,760 (しんら)ん? 292 00:22:01,600 --> 00:22:04,180 いや… でも― 293 00:22:05,440 --> 00:22:08,270 緑の杯がないけどね… 294 00:22:12,110 --> 00:22:13,740 (ギンコ)それ以後― 295 00:22:13,860 --> 00:22:18,530 神の筆(ひだりて)を持つ少年についての 新しいうわさは― 296 00:22:18,950 --> 00:22:20,950 ふっつりと途切れた 297 00:22:21,080 --> 00:22:26,500 ♪~ 298 00:23:25,640 --> 00:23:31,650 ~♪