1 00:00:01,042 --> 00:00:07,048 ♪~ 2 00:01:26,500 --> 00:01:32,500 ~♪ 3 00:01:46,180 --> 00:01:47,230 (虹郎(こうろう))やんできたな 4 00:01:52,820 --> 00:01:55,230 ハァ ハァ… これは近い! 5 00:01:56,360 --> 00:01:57,490 消えるな 6 00:01:57,990 --> 00:01:58,990 消えるな… 7 00:01:59,070 --> 00:02:01,030 ハァ ハァ… 8 00:02:01,160 --> 00:02:03,240 消えないでくれ… 9 00:02:26,310 --> 00:02:28,100 (ギンコ)邪魔するよ (男)ああ 10 00:02:28,680 --> 00:02:30,310 (ギンコ)いや まいったね 11 00:02:30,440 --> 00:02:32,020 (男)まったくだ 12 00:02:32,440 --> 00:02:34,820 (ギンコ)ろくに前も見えやしない 13 00:02:37,530 --> 00:02:39,110 フーッ 14 00:02:39,280 --> 00:02:41,320 (男)いつになったら やむのやら 15 00:02:41,950 --> 00:02:44,370 あと半刻(はんとき)は このままだな 16 00:02:45,490 --> 00:02:46,330 ん? 17 00:02:46,740 --> 00:02:48,580 あんた 商人かい? 18 00:02:49,330 --> 00:02:51,540 食いもんなら なんか売ってくれ 19 00:02:51,670 --> 00:02:54,420 長雨で 皆 やられちまってな 20 00:02:55,250 --> 00:02:58,670 (虹郎)いや この中は空だ 商人でもない 21 00:02:58,800 --> 00:03:01,380 (ギンコ) あ? じゃ 何 入れんだ? 22 00:03:01,510 --> 00:03:02,890 でかい かめだなあ 23 00:03:03,010 --> 00:03:05,100 ふっ へっへっへ そりゃあ 兄ちゃん― 24 00:03:05,220 --> 00:03:06,930 死体だよ 死体 25 00:03:07,470 --> 00:03:10,100 あ~…? 虹だよ 26 00:03:11,690 --> 00:03:15,440 こいつになあ 虹を入れて 持ち帰るために― 27 00:03:15,560 --> 00:03:17,400 俺は旅をしてるのさ 28 00:03:19,530 --> 00:03:20,900 (ギンコ)ほお~ 29 00:03:21,070 --> 00:03:22,740 ふっ へっへっへ そりゃいい 30 00:03:22,860 --> 00:03:26,410 おい 話してみろよ なんだって そんなことしてんのか 31 00:03:27,030 --> 00:03:29,450 ちょうど退屈してたとこだ 32 00:03:31,410 --> 00:03:34,000 ああ いいぜ あれは― 33 00:03:35,170 --> 00:03:37,630 俺がガキのころの話だ 34 00:03:38,750 --> 00:03:40,170 (虹郎の父)んん… 35 00:03:41,550 --> 00:03:42,800 ハァ~… 36 00:03:44,510 --> 00:03:46,300 (虹郎の母)はっ! あんた! 37 00:03:46,510 --> 00:03:48,060 賢郎(けんろう) 父ちゃんを! 38 00:03:48,180 --> 00:03:50,020 (賢郎)お父ちゃん またかよ よしてくれよ 39 00:03:50,350 --> 00:03:54,100 あ~ 雨が… 雨がくる 雨がくる… 虹がたつ 40 00:03:54,730 --> 00:03:56,360 (賢郎)うわっ! んぐ… (虹郎の母)あんた! 41 00:03:56,480 --> 00:03:58,110 あんた! 42 00:04:01,190 --> 00:04:05,490 (虹郎)俺の父親は 俺が物心ついたころ すでに― 43 00:04:05,610 --> 00:04:09,830 雨気(あまけ)を悟ると にわかに 別人の様相となり― 44 00:04:09,950 --> 00:04:12,710 さも うれしげに 山野を駆け回っては― 45 00:04:12,830 --> 00:04:17,540 何日も里に戻らぬような 奇妙なたちの男だった 46 00:04:22,380 --> 00:04:27,720 そして数日後 ぬかるみに はまっているのを発見されたり― 47 00:04:27,930 --> 00:04:30,890 自分で ひょっこり 帰ってきたりするのだった 48 00:04:32,640 --> 00:04:37,020 そして 雨の降らない日は 浴びるほど 水を飲んだ 49 00:04:38,150 --> 00:04:39,980 (虹郎の母) 恥ずかしいったらないよ 50 00:04:40,110 --> 00:04:43,190 もういっそ 帰って こなくったっていいのに 51 00:04:43,860 --> 00:04:46,860 俺にも 自分が どうしちまったのか― 52 00:04:46,990 --> 00:04:48,780 分からんのだよ 53 00:04:49,370 --> 00:04:51,540 あの 虹を見た時から… 54 00:04:51,870 --> 00:04:54,000 (虹郎の母)そんな虹が あるものか! あんたの頭が― 55 00:04:54,120 --> 00:04:56,080 いかれちまっただけだよっ! 56 00:04:59,840 --> 00:05:01,040 (虹郎)なあ 父ちゃん 57 00:05:01,920 --> 00:05:04,760 雨ん中 走ってる時 楽しいのか? 58 00:05:04,970 --> 00:05:07,010 ん? ああ いや… 59 00:05:07,130 --> 00:05:09,680 これが なんとも言えず 楽しい 60 00:05:09,800 --> 00:05:11,310 じゃあ 俺もやる (虹郎の父)はっ 61 00:05:11,890 --> 00:05:15,850 そりゃ いかん 母ちゃんに どなられるぞ 62 00:05:15,980 --> 00:05:18,270 それじゃ また虹の話 してよ 63 00:05:18,650 --> 00:05:21,150 そうか… んんっ 64 00:05:21,820 --> 00:05:23,780 これも母ちゃんには 内緒だぞ 65 00:05:24,490 --> 00:05:25,360 うん! 66 00:05:25,490 --> 00:05:28,950 (虹郎の父)あの日はな お前の産まれる 前の日で― 67 00:05:29,070 --> 00:05:31,990 ようやく大水の引いた日だったよ 68 00:05:32,490 --> 00:05:32,660 (人々のざわめき) 69 00:05:32,660 --> 00:05:36,540 (橋大工)畜生 あんなに 苦労して建てたものを… (人々のざわめき) 70 00:05:36,710 --> 00:05:41,790 (虹郎の父)仕方がない まだまだ 考えが足りんということだろう 71 00:05:42,170 --> 00:05:45,170 (橋大工)だが あれ以上 頑丈な橋なんて… 72 00:05:46,760 --> 00:05:47,800 はっ 73 00:05:48,590 --> 00:05:50,220 (虹郎の父)虹だ 74 00:05:50,430 --> 00:05:52,720 やけに はっきりしてるな 75 00:05:53,600 --> 00:05:55,640 (虹郎)よくよく見てみれば― 76 00:05:56,180 --> 00:05:59,940 その虹は すぐそこの河原から 生えていたという 77 00:06:01,520 --> 00:06:05,070 (虹郎の父)虹のたもとを掘れば お宝があると聞くが… 78 00:06:07,240 --> 00:06:08,900 なっ! 79 00:06:09,400 --> 00:06:10,410 ん… 80 00:06:11,700 --> 00:06:13,160 消え… 81 00:06:14,660 --> 00:06:15,740 んっ! 82 00:06:18,750 --> 00:06:20,670 (虹郎)それから その虹は― 83 00:06:22,170 --> 00:06:26,170 雨のあとには 必ずどこかに 姿を現すようになった 84 00:06:28,090 --> 00:06:31,970 見るたびに姿を変えて 親父(おやじ)を楽しませたが― 85 00:06:32,390 --> 00:06:34,180 ほかの者には見えないようで― 86 00:06:35,470 --> 00:06:41,100 唯一 虹に反応を示していたのが まだ乳飲み子だった 俺だという 87 00:06:41,850 --> 00:06:43,610 けれど ある日― 88 00:06:44,690 --> 00:06:47,400 やけに 遠くにいるなと思ったら… 89 00:06:49,110 --> 00:06:51,700 それきり 現れなくなった 90 00:06:52,070 --> 00:06:55,700 それ以来 飲んでも飲んでも のどが渇く 91 00:06:56,120 --> 00:07:01,000 雨の降りそうな日は 体の底が ざわざわしてな 92 00:07:01,120 --> 00:07:03,960 気がつくと 野山を駆け回っている 93 00:07:04,880 --> 00:07:07,460 こうやって まともでいる時は また― 94 00:07:07,840 --> 00:07:09,630 あの虹が… 95 00:07:11,090 --> 00:07:13,260 恋しくて 恋しくて…― 96 00:07:14,140 --> 00:07:16,220 たまらんのだ 97 00:07:17,930 --> 00:07:19,980 どこにいるのか― 98 00:07:20,310 --> 00:07:22,940 いつか 探しに行ってみたい 99 00:07:24,310 --> 00:07:29,190 (虹郎)しかし やがて親父は 病で床に伏すようになった 100 00:07:32,780 --> 00:07:37,490 それでも 雨の前になると 外へ出たがり 暴れたが― 101 00:07:37,620 --> 00:07:41,540 やがて 足も立たぬほどに 衰弱していった 102 00:07:42,660 --> 00:07:44,500 (虹郎)親父 水 103 00:07:46,130 --> 00:07:49,250 ああ あの虹が 見たいなあ 104 00:07:53,220 --> 00:07:56,970 それで なんとか その虹を見つけ出して― 105 00:07:57,100 --> 00:08:00,520 親父に見せてやろうと 旅をしてるってわけさ 106 00:08:01,560 --> 00:08:06,270 (男)ふっ へへ… で? 虹を両手で ふん捕まえんのか? 107 00:08:06,400 --> 00:08:09,150 そりゃあ 実際 見てみねえと 分からんさ 108 00:08:09,270 --> 00:08:11,610 (男)ふっ それも そうだ 109 00:08:11,740 --> 00:08:14,320 おっ 小降りになってきた 110 00:08:14,450 --> 00:08:17,160 さて… 行くかな 111 00:08:18,120 --> 00:08:21,370 その咄(はなし) 最後のツメが甘かったな 112 00:08:21,700 --> 00:08:23,160 まっ 達者でな 113 00:08:27,080 --> 00:08:28,170 さて 俺も 114 00:08:28,840 --> 00:08:30,130 んんっ! 115 00:08:32,300 --> 00:08:33,420 んっ! 116 00:08:33,550 --> 00:08:35,430 (ギンコ)おい 待てよ 117 00:08:35,720 --> 00:08:39,640 その虹 探すんなら あっちへ向かった方がいい 118 00:08:39,850 --> 00:08:40,680 ん? 119 00:08:41,260 --> 00:08:44,270 今の話 ホラ話ではないだろう 120 00:08:44,600 --> 00:08:48,230 親父さんが見たってのは 虹蛇(こうだ)という蟲(むし)だ 121 00:08:48,360 --> 00:08:49,190 なっ…! 122 00:08:49,770 --> 00:08:52,690 (ギンコ)俺も今まで 一度だけ 見たことあんだが― 123 00:08:53,070 --> 00:08:56,240 生えてる根元ってのを 見たかったんだよな~ 124 00:08:56,360 --> 00:08:58,700 ってことで よけりゃあ 協力するけど 125 00:08:59,450 --> 00:09:01,700 報酬は 当面の飯代 126 00:09:02,410 --> 00:09:05,750 あ~ その でかい かめな 売っ払っちまえ 127 00:09:05,870 --> 00:09:08,170 役にゃ立たんと思うぞ 128 00:09:10,040 --> 00:09:12,880 ほれ どうすんだよ 129 00:09:15,380 --> 00:09:18,340 まずなあ 普通の虹ってのは― 130 00:09:18,470 --> 00:09:21,850 太陽を背にしてる時しか 見えないもんなんだよ 131 00:09:22,430 --> 00:09:23,270 ん… 132 00:09:24,140 --> 00:09:27,480 だが 虹蛇は それとは 関係なく 現れる 133 00:09:28,480 --> 00:09:31,940 あと それからな 色の並びが逆なんだよ 134 00:09:32,070 --> 00:09:35,690 その辺を見極めてから 追わないと きりがない 135 00:09:36,320 --> 00:09:38,990 なあ ギンコとかいったなあ 136 00:09:39,320 --> 00:09:40,160 んん? 137 00:09:40,700 --> 00:09:44,410 あんただって 何か目的があって 旅してたんじゃないのか? 138 00:09:44,540 --> 00:09:47,870 なぜ こんな 通りすがりの者に 手を貸す? 139 00:09:48,000 --> 00:09:50,380 だから 俺もそれ 見たいだけだよ 140 00:09:51,170 --> 00:09:54,550 特別 目的があって 旅してるわけじゃなくてな 141 00:09:55,300 --> 00:09:58,930 でもまあ ずっと 虹蛇 探してるわけにも… 142 00:09:59,260 --> 00:10:02,890 そうだなあ 立秋までに 見つからなきゃ 手を引くよ 143 00:10:03,600 --> 00:10:05,390 それなら いいだろ? 144 00:10:05,930 --> 00:10:10,060 雨上がりに よく姿を 見せるってのは 虹と同じらしい 145 00:10:10,310 --> 00:10:12,360 雨を読んで 移動しなけりゃあな 146 00:10:13,820 --> 00:10:16,360 それなら ずいぶんと心得てきた 147 00:10:16,990 --> 00:10:20,360 この辺りは 当分 雨は望めそうにない 148 00:10:22,870 --> 00:10:27,000 あっ あの山 “かつら”がかかっている 149 00:10:27,120 --> 00:10:29,210 あの周辺は 明日 雨だ 150 00:10:29,660 --> 00:10:31,210 (ギンコ)ほお~ 151 00:10:31,460 --> 00:10:35,590 俺だってな やみくもに 歩き回ってきたわけじゃねえんだよ 152 00:10:44,720 --> 00:10:46,220 出た! (ギンコ)ん? 153 00:10:47,350 --> 00:10:49,730 いや… ありゃ ただの虹だ 154 00:10:56,860 --> 00:10:58,150 あれも違うな 155 00:11:01,400 --> 00:11:05,870 まあ 予想はしていたが 探すとなると 見つからんもんだな 156 00:11:07,080 --> 00:11:10,370 あんたは 旅を始めて どのぐらいになるんだ? 157 00:11:12,960 --> 00:11:14,420 5年になるなあ 158 00:11:15,210 --> 00:11:17,000 フーッ 159 00:11:17,420 --> 00:11:18,840 5年… 160 00:11:19,340 --> 00:11:21,260 なあ あの話― 161 00:11:21,380 --> 00:11:24,430 病床の親父に 見せるためってのは ウソだろ 162 00:11:25,470 --> 00:11:29,180 病人 抱えた家族を放って 5年も旅してるなんてな 163 00:11:30,930 --> 00:11:33,560 親父に見せたいってのは ウソじゃない 164 00:11:33,940 --> 00:11:36,400 でも それが 行動の端(たん)じゃなかったな 165 00:11:38,230 --> 00:11:39,940 俺の名を 言ったっけか? 166 00:11:40,070 --> 00:11:40,900 (ギンコ)ん? いや 167 00:11:41,780 --> 00:11:43,320 虹郎という 168 00:11:43,610 --> 00:11:46,580 虹を探しては はいかいを繰り返す親父を― 169 00:11:46,700 --> 00:11:48,910 常に背負う名だ 170 00:11:49,490 --> 00:11:52,660 この名のために 村では笑い者にされてきたよ 171 00:11:53,920 --> 00:11:57,170 西の国に 有名な暴れ川がある 172 00:11:57,290 --> 00:12:00,670 俺の家はそこに 代々 橋を架けてきた 橋大工だ 173 00:12:01,460 --> 00:12:04,840 何度 架けても 大水のたびに 橋を流された 174 00:12:05,390 --> 00:12:08,310 皆 親父には期待していたんだがな 175 00:12:09,850 --> 00:12:12,850 それでも 親父の跡を継いだ 兄は優秀だった 176 00:12:13,640 --> 00:12:17,150 壊れるたびに 丈夫な構造の 橋を考え出していた 177 00:12:17,770 --> 00:12:20,860 俺には そんな才能が からきし なくてな 178 00:12:24,200 --> 00:12:28,620 腱(けん)を切る けがをしてから 左手の自由が利かねえ 179 00:12:28,950 --> 00:12:31,620 大工としても二流以下だ 180 00:12:32,370 --> 00:12:36,040 いつしか あの村には 俺の居場所は― 181 00:12:36,370 --> 00:12:38,630 親父のそばしか なくなっていた 182 00:12:39,590 --> 00:12:43,630 それに耐えられなくなって 逃げ出してきちまったんだよ 183 00:12:45,260 --> 00:12:48,220 フーッ じゃあ 結局なんだ? 184 00:12:48,350 --> 00:12:50,390 虹を探してる理由ってのは 185 00:12:53,930 --> 00:12:57,770 虹を見るたび 追わずには いられなかったんだよ 186 00:12:57,940 --> 00:13:00,820 (虹郎)ハァ ハァ… 消えるな 187 00:13:01,230 --> 00:13:03,820 消えるな… ハァ… 188 00:13:05,490 --> 00:13:08,280 (虹郎)親父の言葉を 確かめたかったのもあるし― 189 00:13:08,410 --> 00:13:10,870 親父や俺を笑ってきた 村の連中に― 190 00:13:10,990 --> 00:13:13,830 原因は これだと 言ってやりたかった 191 00:13:15,750 --> 00:13:19,630 けど何より 村を出ても 俺は結局 負け犬だからな 192 00:13:20,790 --> 00:13:25,380 何か 生きるための目的を作らにゃ ただ生きてくことすらできねえ 193 00:13:27,300 --> 00:13:28,470 目的ね 194 00:13:28,930 --> 00:13:31,930 お前は 目的もなく 旅をしてると 言ったな 195 00:13:32,060 --> 00:13:34,980 まあ 何か理由はあるんだろうが 196 00:13:35,680 --> 00:13:37,940 旅をしてくのも 楽じゃない 197 00:13:38,270 --> 00:13:40,980 目的がなくて 旅を 続ける気になるものか? 198 00:13:41,940 --> 00:13:44,480 そりゃあ たまに休みたくもなる 199 00:13:45,030 --> 00:13:47,990 そういう時 こうやって 目的を作る 200 00:13:48,820 --> 00:13:51,620 そうすれば こうやって 余暇も生まれるだろ 201 00:13:52,120 --> 00:13:55,500 ただ生きるために 生きてる分には 余暇ってもんが ないからな 202 00:13:56,870 --> 00:13:57,750 ケッ 203 00:13:58,000 --> 00:14:01,380 こっちは真剣にやってるってのに 息抜きのつもりかよ 204 00:14:01,500 --> 00:14:04,090 (ギンコ)俺だって 真剣には やってるだろう 205 00:14:04,210 --> 00:14:05,760 (虹郎)心構えの問題だ 206 00:14:06,300 --> 00:14:07,420 なんだそりゃあ 207 00:14:07,550 --> 00:14:10,470 休むのだって 生きるためには 切実な問題だ 208 00:14:10,930 --> 00:14:14,510 それにな お前よりは まっとうな動機だと思うがな 209 00:14:15,680 --> 00:14:17,810 お前は後ろめたさを 紛らわすために― 210 00:14:17,930 --> 00:14:20,480 虹を追うことで 自虐を続けてるだけだろ 211 00:14:21,770 --> 00:14:23,020 不毛だねえ 212 00:14:23,150 --> 00:14:24,940 どこへなりと 根を下ろして― 213 00:14:25,070 --> 00:14:27,530 過去なんて 捨て去りゃあ よかったのによ 214 00:14:31,910 --> 00:14:33,370 分かっている 215 00:14:33,530 --> 00:14:35,790 それが できんから ここにいるんだ 216 00:14:36,540 --> 00:14:39,290 だが それも潮時かもしれん 217 00:14:39,410 --> 00:14:42,290 俺も 立秋までってことにするかな 218 00:14:42,460 --> 00:14:43,290 あ… 219 00:14:44,880 --> 00:14:46,300 おい 待てよ 220 00:14:46,710 --> 00:14:48,090 おい 221 00:14:51,720 --> 00:14:54,680 (セミの鳴き声) 222 00:14:55,600 --> 00:14:57,720 (ギンコ) おっ お目が高いね 旦那 223 00:14:58,270 --> 00:14:59,930 そいつは人魚の爪だ 224 00:15:00,060 --> 00:15:02,230 煎じて飲めば ほれ薬になんだよ 225 00:15:02,350 --> 00:15:03,400 (客の男)ええっ… 226 00:15:03,520 --> 00:15:04,690 (ギンコ)安くしとくよ~ 227 00:15:05,270 --> 00:15:08,940 (客の男)今は それよか 雨を降らす薬は ないもんかね 228 00:15:09,070 --> 00:15:10,530 そりゃ ねえよ 229 00:15:11,110 --> 00:15:13,370 (客の男) こう 日照り続きじゃあな 230 00:15:13,490 --> 00:15:15,080 田も 枯れっちまうよぉ 231 00:15:15,280 --> 00:15:18,540 そんな薬があったら とうに使ってるわ 232 00:15:20,370 --> 00:15:21,790 お~い 233 00:15:22,170 --> 00:15:24,170 ちゃんと空 見てろよ~ 234 00:15:24,290 --> 00:15:25,710 そろそろ降ってもいいころだろ 235 00:15:27,670 --> 00:15:29,010 ハァ… 236 00:15:32,130 --> 00:15:33,680 のど渇いた 237 00:15:35,140 --> 00:15:37,970 もう… 汗も出ねえ 238 00:15:42,690 --> 00:15:43,980 (虹郎の父)雨がくる… 239 00:15:44,230 --> 00:15:45,270 (虹郎)あっ! 240 00:15:49,110 --> 00:15:53,030 (虹郎の父)雨がくる… 雨がくる 雨がくる…! 241 00:15:59,540 --> 00:16:00,700 虹がたつ… 242 00:16:01,160 --> 00:16:02,710 (虹郎)ギンコ! (ギンコ)ん!? 243 00:16:03,420 --> 00:16:04,710 んっ ハァ… 244 00:16:04,870 --> 00:16:05,710 あれを見ろ 245 00:16:06,290 --> 00:16:07,960 な… 太陽が― 246 00:16:09,210 --> 00:16:10,960 虹の中に… 247 00:16:12,050 --> 00:16:12,970 ハァ ハァ 248 00:16:13,300 --> 00:16:14,970 (客の男)あっ おい ほれ薬 249 00:16:15,090 --> 00:16:16,720 悪いな 店じまいだ 250 00:16:17,300 --> 00:16:20,720 お~い あんまり 初めっから 飛ばすなよ 251 00:16:20,810 --> 00:16:24,140 (ギンコと虹郎の荒い息) 252 00:16:28,480 --> 00:16:33,240 (虹郎)ハァ ハァ… 畜生っ! どこへ消えた…! 253 00:16:33,700 --> 00:16:36,950 ハァ… 位置は この辺りでいいはずだ 254 00:16:37,870 --> 00:16:40,950 この辺り 雨は まだ降りそうだし 255 00:16:42,160 --> 00:16:44,750 そう遠くへは 行ってないかもしれない 256 00:16:45,420 --> 00:16:47,630 今日は ここで待ってみよう 257 00:16:58,510 --> 00:17:01,430 (虹郎)雨の場所が 目で見ずとも 分かった 258 00:17:03,730 --> 00:17:05,890 親父もこうだったのか 259 00:17:06,600 --> 00:17:07,940 (虹郎の父)虹郎 260 00:17:09,150 --> 00:17:12,440 お前もそろそろ 俺や― 261 00:17:12,820 --> 00:17:16,820 俺のつけた名前が 恨めしくなるころだろうな 262 00:17:17,200 --> 00:17:22,450 俺は 俺が見た この世で 一番美しいものの名を― 263 00:17:22,580 --> 00:17:25,460 お前にやりたかったのだが 264 00:17:27,000 --> 00:17:28,710 悪かったな 265 00:17:29,250 --> 00:17:32,090 おかげで 友達にも 笑われるのだろ? 266 00:17:33,130 --> 00:17:34,090 ああ 267 00:17:35,590 --> 00:17:37,050 これを 268 00:17:38,470 --> 00:17:42,010 別の いい名を考えておいた 269 00:17:42,430 --> 00:17:44,600 明日からは そう名乗れ 270 00:17:45,730 --> 00:17:47,270 いいよ… 271 00:17:48,140 --> 00:17:51,230 そんなこと… 言うなよ 272 00:17:51,360 --> 00:17:52,900 俺… 273 00:17:53,440 --> 00:17:55,110 負けねえから 274 00:17:55,690 --> 00:17:57,900 親父より立派な― 275 00:17:59,700 --> 00:18:02,490 橋大工になってみせるから 276 00:18:27,520 --> 00:18:29,980 おい 起きろ 降ってるぞ 277 00:18:30,270 --> 00:18:33,980 (虹郎)んっ… んん ああ 278 00:18:36,030 --> 00:18:36,990 ああっ 279 00:18:37,070 --> 00:18:39,110 (ギンコ)んんっ ん~! 280 00:18:42,160 --> 00:18:42,990 ん? 281 00:18:43,370 --> 00:18:44,830 あ… 出た 282 00:18:45,830 --> 00:18:47,450 (ギンコ)急げ! 近いぞ (虹郎)おお! 283 00:18:47,660 --> 00:18:49,460 (2人の荒い息) 284 00:18:59,300 --> 00:19:03,680 (虹郎)ハァ ハァ ハァ… 285 00:19:03,760 --> 00:19:05,180 ハァ… あ? 286 00:19:15,860 --> 00:19:16,860 すげえ… 287 00:19:18,070 --> 00:19:23,360 (虹郎の父)俺の見た この世で 一番 美しいものの名を… 288 00:19:24,660 --> 00:19:26,780 美しい… 289 00:19:28,040 --> 00:19:29,500 あっ! よせ! 290 00:19:30,120 --> 00:19:32,870 (虹郎)親父が 言っていたことは 本当だった 291 00:19:33,330 --> 00:19:36,590 こいつは… 持って帰らにゃ 292 00:19:45,890 --> 00:19:48,010 (ギンコ)チッ んん! 293 00:19:48,470 --> 00:19:50,640 んあっ! ハァ… ハァ… 294 00:19:51,430 --> 00:19:55,860 フーッ バカ野郎が どうともないか? 295 00:19:56,310 --> 00:19:58,190 あ… ああ 296 00:19:58,650 --> 00:20:01,440 (ギンコ)近くで見るまで 確証はなかったが― 297 00:20:01,570 --> 00:20:03,240 皮膚にビリビリくる 298 00:20:03,360 --> 00:20:06,120 こいつは ナガレモノの一種だ 299 00:20:06,240 --> 00:20:07,910 (虹郎)ナガレモノ? 300 00:20:08,870 --> 00:20:11,370 (ギンコ) 命を持つモノでありながら― 301 00:20:11,580 --> 00:20:14,620 自然現象そのものに 近しいモノ 302 00:20:15,170 --> 00:20:20,880 命があること以外は 光と雨の作る現象である 虹と同じ 303 00:20:21,170 --> 00:20:25,180 おそらく 虹蛇を 作り出したものは 光と― 304 00:20:25,300 --> 00:20:26,760 光酒(こうき)を含む 雨だ 305 00:20:27,300 --> 00:20:28,760 (虹郎)コウキ…? 306 00:20:28,890 --> 00:20:31,600 (ギンコ) 蟲の生命の元となるモノだ 307 00:20:33,770 --> 00:20:38,020 ナガレモノとは 洪水や 台風と 似たようなもの 308 00:20:38,270 --> 00:20:41,070 発生する理由はあれど 目的はない 309 00:20:41,650 --> 00:20:43,860 ただ流れるためだけに生じ― 310 00:20:43,990 --> 00:20:49,410 何からも干渉を受けず 影響だけを及ぼし 去ってゆく 311 00:20:49,910 --> 00:20:52,540 そういう蟲は 触れれば 取りつく 312 00:20:56,960 --> 00:21:00,800 (虹郎)一瞬 あれの中に 入った気がした 313 00:21:01,590 --> 00:21:03,260 親父は― 314 00:21:03,380 --> 00:21:07,050 あの上昇する 滝のようなものに のまれたんだろうか 315 00:21:09,850 --> 00:21:12,390 俺の自由になる相手じゃ なかったか 316 00:21:14,060 --> 00:21:16,350 体に穴の開いたようだ 317 00:21:17,100 --> 00:21:20,820 いっそ すがすがしいくらいだ 318 00:21:23,360 --> 00:21:25,190 これから どうすんだよ 319 00:21:25,320 --> 00:21:28,610 さあ しばし考えるさ 320 00:21:29,120 --> 00:21:29,950 お前は? 321 00:21:32,620 --> 00:21:35,200 ハハッ こいつと同じか 322 00:21:36,160 --> 00:21:39,420 また 流れるだけだよな 323 00:21:41,840 --> 00:21:45,210 (ギンコ)その後 男が どこへ行ったかは 知る由もない 324 00:21:46,090 --> 00:21:51,350 ただ 西の国の有名な暴れ川に 壊れぬ橋ができたと聞いた 325 00:21:52,640 --> 00:21:55,980 増水してくれば 渡し板の片方を外し― 326 00:21:56,100 --> 00:22:01,480 水の流れるままに泳がせ 水が引いたら 元に戻す… 327 00:22:02,440 --> 00:22:06,610 ナガレ橋という名の橋が 1人の男の考えで― 328 00:22:06,690 --> 00:22:08,490 架けられているという 329 00:22:08,910 --> 00:22:14,910 ♪~ 330 00:23:26,020 --> 00:23:32,030 ~♪