1 00:00:07,700 --> 00:00:08,950 (祭主の妻)あ… 2 00:00:10,820 --> 00:00:12,370 (祭主)どうした? 3 00:00:13,030 --> 00:00:14,410 うん… 4 00:00:14,700 --> 00:00:16,000 なんだろ これ 5 00:00:19,500 --> 00:00:21,040 ねえ あんた 6 00:00:21,670 --> 00:00:23,790 これ 歯かしら 7 00:00:30,220 --> 00:00:36,220 ♪~ 8 00:01:26,680 --> 00:01:32,690 ~♪ 9 00:01:36,650 --> 00:01:40,780 (ナレーション) 先祖(ちちはは)の血肉に根を張りし苗よ 10 00:01:41,530 --> 00:01:44,580 青い青い 葉を伸ばせ 11 00:01:45,410 --> 00:01:48,660 重い重い 実を付けよ 12 00:01:58,550 --> 00:02:00,840 (ギンコ)あの~ (農民1)んっ んん 13 00:02:01,260 --> 00:02:03,840 (ギンコ)なんか 食うもん 売ってもらえねえか? 14 00:02:04,140 --> 00:02:09,520 この田 見ろ ひどい冷夏で 蓄えするので 手一杯だ 15 00:02:09,640 --> 00:02:10,560 諦めな 16 00:02:11,690 --> 00:02:13,810 (農民2) ひと山 向こうの村に行きなよ 17 00:02:13,940 --> 00:02:15,060 (ギンコ)ん? 18 00:02:15,650 --> 00:02:18,320 (農民2)あそこだきゃ 今年は豊作だって 19 00:02:18,440 --> 00:02:21,360 おい 妙なこと 勧めんなよ 20 00:02:21,490 --> 00:02:25,030 やめときなよ あそこの米は 普通じゃねえ 21 00:02:25,160 --> 00:02:27,490 天災のたびに豊作になる 22 00:02:27,790 --> 00:02:30,040 先祖(せんぞ)の呪いなんだとよ 23 00:02:33,920 --> 00:02:35,080 (村人1)別れ作だ 24 00:02:35,540 --> 00:02:36,840 (村人2)別れ作だ… 25 00:02:38,170 --> 00:02:41,010 (村人3)また誰かが ご先祖様に取られるぞ 26 00:02:42,050 --> 00:02:43,970 (村人1)今年は誰が… 27 00:02:44,760 --> 00:02:48,850 (村人3)ご先祖様は 弱い者から取りなさる 28 00:02:49,060 --> 00:02:52,390 (ギンコ)やあ~ 見事な田だなあ 29 00:02:55,480 --> 00:02:57,150 (サネ)誰? 何か用? 30 00:02:57,610 --> 00:03:00,820 いや よけりゃあ 食うもん 売ってくれんかと思って 31 00:03:02,780 --> 00:03:04,110 (サネ)んっ 32 00:03:04,860 --> 00:03:09,240 よそもんに やるものはねえよ 毎年 十分な米は取れねえんだ 33 00:03:09,370 --> 00:03:12,660 蓄えられる時に 蓄えとかなきゃならねえ 34 00:03:12,910 --> 00:03:14,460 へえ~ それじゃあ― 35 00:03:14,580 --> 00:03:16,960 今年の豊作は 奇跡ってわけか 36 00:03:18,290 --> 00:03:22,800 そうだよ 俺らがしっかり ご先祖様をお祭りしてきたから― 37 00:03:22,920 --> 00:03:26,550 土になったご先祖様が 守ってくださってるんだ 38 00:03:29,470 --> 00:03:33,230 (ギンコ)その代わり 1人 連れてく… か? 39 00:03:34,940 --> 00:03:38,360 ご先祖の所業にしちゃあ あんまりだよな~ 40 00:03:40,690 --> 00:03:43,360 (サネ)仕方が… ないんだ 41 00:03:44,950 --> 00:03:47,530 (ギンコ)ちっとも 仕方なさそうじゃねえがな 42 00:03:47,950 --> 00:03:50,780 ちいと 話 聞かせてくれんか? 43 00:03:54,710 --> 00:03:59,000 (サネ)この村の田畑が ひどい 天災のたびに豊作になるのは― 44 00:03:59,130 --> 00:04:02,420 もう ずいぶん 昔からのことだって聞いてる 45 00:04:03,050 --> 00:04:06,130 そして そんな年には必ず― 46 00:04:06,260 --> 00:04:10,180 秋に 誰かの口の中に “瑞歯(みずは)”が生えてくる 47 00:04:10,550 --> 00:04:14,810 その歯は 秋の終わりには 抜け落ちて その人は― 48 00:04:15,930 --> 00:04:18,020 死ぬんだ… って 49 00:04:21,270 --> 00:04:26,240 その命は 豊作をもたらした ご先祖様への供え物だって― 50 00:04:26,360 --> 00:04:28,530 伝えられてきたんだ 51 00:04:29,700 --> 00:04:31,990 でも みんな感謝してきた 52 00:04:32,240 --> 00:04:34,950 この奇跡がなかったら この痩せた土地で― 53 00:04:35,080 --> 00:04:38,750 俺たちは今まで 生き延びては こられなかっただろうから 54 00:04:39,960 --> 00:04:43,380 命を落とす者に 共通する点はあるのか? 55 00:04:43,920 --> 00:04:47,720 (サネ)弱い者から… と言われている 56 00:04:49,550 --> 00:04:51,260 遺体は土葬に? 57 00:04:51,470 --> 00:04:52,390 (サネ)うん 58 00:04:52,760 --> 00:04:54,180 (ギンコ)抜けた歯は? 59 00:04:54,850 --> 00:04:58,440 歯は 祭主様が お堂にお祭りするんだ 60 00:04:59,520 --> 00:05:00,350 祭主? 61 00:05:00,730 --> 00:05:04,190 この村である 祭りの一切を 取りしきる人だよ 62 00:05:04,860 --> 00:05:08,900 俺は いずれ跡を継ぐんで いろいろ教わってるんだ 63 00:05:09,860 --> 00:05:11,320 抜けて少し経つと― 64 00:05:11,450 --> 00:05:14,580 歯は祭主様にしか 見えなくなるんだって 65 00:05:14,700 --> 00:05:17,410 だから祭主様がお祭りするんだ 66 00:05:18,000 --> 00:05:20,170 (ギンコ) お前は なんで跡継ぎに? 67 00:05:20,830 --> 00:05:23,000 俺も祭主様と同じで― 68 00:05:23,290 --> 00:05:27,050 時々 人に見えないものを 見るから 69 00:05:29,170 --> 00:05:31,970 (ギンコ)その祭主ってのに 会いたいんだが 70 00:05:33,720 --> 00:05:35,060 (サネ)祭主様~ 71 00:05:36,680 --> 00:05:38,560 裏の畑かなあ 72 00:05:45,520 --> 00:05:47,940 (ギンコ)農学書に 日誌 73 00:05:48,650 --> 00:05:51,070 (祭主)客人とは珍しいな (ギンコ)ん? 74 00:05:51,530 --> 00:05:53,490 (祭主)一体 どちらさんで? 75 00:05:57,080 --> 00:05:58,870 蟲師(むしし)のギンコと申します 76 00:06:01,750 --> 00:06:04,420 “ナラズの実”というのを 探しておるんですが 77 00:06:06,210 --> 00:06:08,050 さてねえ 78 00:06:08,550 --> 00:06:09,380 サネ 79 00:06:10,260 --> 00:06:12,260 お前 まだ 畑仕事の途中だろ 80 00:06:12,380 --> 00:06:13,890 終わってから また来な 81 00:06:14,680 --> 00:06:16,010 今年は豊作だ 82 00:06:16,140 --> 00:06:18,390 しっかり準備しねえと 追っつかねえぞ 83 00:06:19,180 --> 00:06:20,350 うん… 84 00:06:20,520 --> 00:06:24,150 (祭主)なんだ まだ おっかさんのこと 心配か? 85 00:06:25,730 --> 00:06:30,030 大丈夫 大丈夫だよ 心配すんな 86 00:06:30,150 --> 00:06:32,700 どら これ食わせてやりな 87 00:06:34,870 --> 00:06:35,700 うん 88 00:06:38,870 --> 00:06:40,660 (祭主)蟲師って やからは 先代のころにも― 89 00:06:40,790 --> 00:06:42,660 ここへ来たと聞いている 90 00:06:45,500 --> 00:06:49,420 だが むだ足だ ここには そんな実は ありはせん 91 00:06:50,800 --> 00:06:54,340 では この実りは 先祖の力によるものだと? 92 00:06:54,720 --> 00:06:56,850 (祭主)ご先祖の力か 93 00:06:57,180 --> 00:06:58,850 むろん それもある 94 00:06:59,430 --> 00:07:01,270 皆の信仰があるからこそ― 95 00:07:01,390 --> 00:07:04,560 この土地を見限ることなく 労働できる 96 00:07:05,270 --> 00:07:06,860 だが それだけじゃない 97 00:07:08,400 --> 00:07:12,400 長年 土を肥やすすべを 皆で研究し続けてきた 98 00:07:12,610 --> 00:07:17,030 その結果が 時に こういう実りを生むのだ 99 00:07:17,160 --> 00:07:19,370 毎年の収穫も増えている 100 00:07:19,790 --> 00:07:22,080 では“瑞歯”については? 101 00:07:25,120 --> 00:07:28,290 成人後 歯が生えるなど まれにあること 102 00:07:28,420 --> 00:07:30,300 実りとは無関係だ 103 00:07:30,420 --> 00:07:31,760 さあ もう帰ってくれ 104 00:07:32,340 --> 00:07:34,010 もう1つだけ 聞いていいか? 105 00:07:36,260 --> 00:07:37,510 なんだ? 106 00:07:37,760 --> 00:07:40,720 “ナラズの実”のことは ご存じのようで 107 00:07:41,770 --> 00:07:44,390 ああ 先代から聞いた 108 00:07:44,850 --> 00:07:49,230 ある1人の蟲師が“光脈(こうみゃく)”だかを 封じ込めたもの…― 109 00:07:49,730 --> 00:07:50,770 だったか… 110 00:07:51,070 --> 00:07:55,400 そう あんたも光脈は 感覚的に分かるだろ? 111 00:07:55,990 --> 00:07:57,780 蟲の見えるたちのようだから 112 00:07:58,700 --> 00:08:00,280 フーッ 113 00:08:00,410 --> 00:08:02,660 (ギンコ)蟲ってのは そういう微弱なモノになるほど― 114 00:08:02,790 --> 00:08:04,410 光を帯びてくる 115 00:08:04,870 --> 00:08:08,040 蟲の根源たる 光酒(こうき)というモノに近いからだ 116 00:08:08,170 --> 00:08:11,170 光脈とは 光酒の流れる筋 117 00:08:11,750 --> 00:08:14,510 それらはいわば 生命そのもの 118 00:08:14,630 --> 00:08:19,220 操作できれば 不死や蘇生… いかようにも使い道はある 119 00:08:20,550 --> 00:08:24,100 むろん それは蟲師最大の 禁じ手ではある 120 00:08:24,350 --> 00:08:27,600 が 例外も幾度となく 存在してきた 121 00:08:28,520 --> 00:08:30,560 この実も その1つ 122 00:08:31,690 --> 00:08:35,440 土に埋めれば 周囲に 1年限りの豊穣をもたらし― 123 00:08:35,570 --> 00:08:39,530 代償として恵みを受けた 生命体の1つを 奪ってゆく 124 00:08:40,740 --> 00:08:43,240 それが われわれに 伝わっている記録 125 00:08:43,620 --> 00:08:45,580 それで? あんたとしちゃ― 126 00:08:45,700 --> 00:08:48,330 その実を見つけ出して どうするつもりなんだ? 127 00:08:48,500 --> 00:08:51,250 抹消するのか? 活用するのか? 128 00:08:52,750 --> 00:08:56,590 俺が聞きたいのも そこでね あんたなら どうする? 129 00:08:57,590 --> 00:09:00,510 1つの命で 多くの命を救える実が― 130 00:09:00,640 --> 00:09:02,050 手の内にあったなら 131 00:09:03,890 --> 00:09:06,020 (祭主)使うだろうな 132 00:09:06,600 --> 00:09:09,730 そんな実が すでに 実在してしまってるのなら― 133 00:09:09,850 --> 00:09:12,610 犠牲を見過ごすことの方が罪だ 134 00:09:12,940 --> 00:09:14,900 (ギンコ) だが 確実に1人 死ぬことを― 135 00:09:15,030 --> 00:09:17,190 承知で実を埋めたなら― 136 00:09:17,820 --> 00:09:21,030 それは人を あやめることと同等だ 137 00:09:21,370 --> 00:09:24,120 例え それで助かる命が いくつあろうと― 138 00:09:24,450 --> 00:09:27,620 死ぬ者は意と関係なく 贄(にえ)にされる 139 00:09:29,500 --> 00:09:31,710 その程度の罪ならば― 140 00:09:31,830 --> 00:09:33,710 誰もが手を染めるだろう 141 00:09:33,840 --> 00:09:36,630 1人 失っても 2人 守れるのならば 142 00:09:37,340 --> 00:09:40,260 確かに 1年きりという 短い目で見りゃあ― 143 00:09:40,380 --> 00:09:41,640 使わん手は ないだろう 144 00:09:42,260 --> 00:09:45,260 だが 一度 使えば 何度も使うことになる 145 00:09:45,810 --> 00:09:47,720 そして あの実は生きている 146 00:09:47,850 --> 00:09:50,270 使うごとに 影響力は増してゆく 147 00:09:50,940 --> 00:09:54,270 やがては すべての均衡を 崩すモノともなりかねん 148 00:09:56,230 --> 00:09:58,780 (祭主)じゃあ お前は 使わんと言うのか 149 00:09:59,070 --> 00:10:02,280 使わずに いられるのか? 150 00:10:02,660 --> 00:10:05,910 分からんねえ 里で生きた覚えがないし 151 00:10:06,240 --> 00:10:08,160 そうなる前に 土地を捨てる 152 00:10:10,250 --> 00:10:12,370 ここには この土には― 153 00:10:12,500 --> 00:10:14,540 先祖の血肉が眠ってんだよ 154 00:10:14,920 --> 00:10:18,130 この土地を開き ようやく ここまでにしてきた 155 00:10:18,260 --> 00:10:20,380 それが俺らにとって 唯一の誇りなんだよっ 156 00:10:20,920 --> 00:10:25,180 その土に異形のモノを埋めるのは 土を汚(けが)すことにはならんのか? 157 00:10:29,350 --> 00:10:32,520 フンッ ハッ ハハハハ 158 00:10:32,770 --> 00:10:36,570 何を言ってる もしもの話だ 159 00:10:36,690 --> 00:10:38,610 そんなことは 分かってる 160 00:10:38,730 --> 00:10:41,950 そんな実が もしも本当にあったなら― 161 00:10:44,070 --> 00:10:47,410 もっと… 慎重に考える 162 00:10:51,660 --> 00:10:53,370 (祭主)そう 163 00:10:54,040 --> 00:10:57,500 そんな実は 1人の人の手に余る 164 00:10:59,000 --> 00:11:03,260 実りすぎた稲穂が 重い こうべを垂れるよに― 165 00:11:03,380 --> 00:11:07,430 必ず手から こぼれ落ち 土へと横たわるのだ 166 00:11:08,510 --> 00:11:13,730 そののちの 人の苦しみを 知るべくもなく 167 00:11:18,770 --> 00:11:21,320 (サネ)ハァ ハァ… あ! 168 00:11:21,440 --> 00:11:23,030 話は終わったの? 169 00:11:23,490 --> 00:11:25,360 まあ だいたいな 170 00:11:26,240 --> 00:11:29,870 それで あなたは皆を 助けてくれるの? 171 00:11:30,200 --> 00:11:34,120 ああ だが それには 村全体の承諾が要る 172 00:11:34,250 --> 00:11:37,210 別れ作の仕掛けを すべて話したうえでな 173 00:11:37,880 --> 00:11:39,880 どっかに 皆を集めてくれるか? 174 00:11:40,300 --> 00:11:43,590 う うん… でも 一体どういう… 175 00:11:44,800 --> 00:11:46,340 (祭主)田を焼くというのか? 176 00:11:50,140 --> 00:11:52,470 誰かに瑞歯の生える前に― 177 00:11:52,600 --> 00:11:54,890 実を消してしまうほか ないと? 178 00:11:55,480 --> 00:11:58,400 ああ そうだ ようやく 認めなすったか 179 00:11:58,730 --> 00:12:00,730 お前の思い違いだ 180 00:12:00,860 --> 00:12:04,950 そんなことをしても 誰も助からん 皆を餓死させるつもりか? 181 00:12:05,570 --> 00:12:07,910 1年 ここを離れれば 済むことだ 182 00:12:08,570 --> 00:12:10,870 いったん 散り散りになりゃ ほかの土地で それぞれ― 183 00:12:10,990 --> 00:12:14,410 なんとかして 1年 生き延びることは できるだろう 184 00:12:14,500 --> 00:12:15,410 (祭主)ハァ ハァ… 185 00:12:15,410 --> 00:12:18,420 春には 燃やした灰が 土を肥やしてくれてるはずだ (祭主)ハァ ハァ… 186 00:12:19,170 --> 00:12:23,300 ここを離れて 一体 何人が戻るというのか 187 00:12:23,920 --> 00:12:27,340 皆 知らぬから 耐えていられるのだ 188 00:12:27,510 --> 00:12:30,430 本当の豊穣というものを! 189 00:12:30,800 --> 00:12:33,100 いいのだ これで 190 00:12:33,270 --> 00:12:35,980 皆に… 妙なことを― 191 00:12:36,100 --> 00:12:39,190 吹き込むなど 許さんぞ…! 192 00:12:39,480 --> 00:12:40,860 ハァ… 193 00:12:41,940 --> 00:12:43,690 (サネ)祭主様! 194 00:12:48,780 --> 00:12:51,370 おっさん なんか 病持ちか 195 00:12:52,450 --> 00:12:54,040 (サネ) よくは 分からないけど― 196 00:12:54,450 --> 00:12:58,870 このごろ 体調が悪いみたいで 時々 薬 飲んでた 197 00:12:59,000 --> 00:13:00,040 (ギンコ)薬? 198 00:13:00,500 --> 00:13:02,960 (サネ)確か この中に 199 00:13:17,100 --> 00:13:18,640 (ギンコ) 一体 どういうつもりで― 200 00:13:18,770 --> 00:13:20,730 こんな毒 飲んでたんだか知らんが― 201 00:13:21,350 --> 00:13:24,110 このまま死んじまうのは 無責任なんじゃないか? 202 00:13:26,110 --> 00:13:27,610 蟲師さんよ 203 00:13:28,400 --> 00:13:30,360 田を焼こうなんざ…― 204 00:13:30,490 --> 00:13:34,120 あんた あの実を利用する気で 来たんじゃあなさそうだな 205 00:13:35,330 --> 00:13:36,490 頼む 206 00:13:37,120 --> 00:13:39,540 俺は あの実の最後の犠牲者は― 207 00:13:40,250 --> 00:13:42,290 俺にすると決めてたんだ 208 00:13:48,050 --> 00:13:51,470 (祭主)あの実を どこかから 持ち帰ったのは― 209 00:13:52,140 --> 00:13:55,100 先々代の祭主だったという 210 00:13:56,220 --> 00:14:00,560 それ以後 天災のたび 幾度となく 実は用いられたが― 211 00:14:00,690 --> 00:14:02,900 混乱を防ぐため その実は代々― 212 00:14:03,020 --> 00:14:05,480 祭主のみ 知るところとされてきた 213 00:14:06,190 --> 00:14:07,650 俺の代となり― 214 00:14:07,780 --> 00:14:11,150 実の使用を問われる 天災が訪れたのは― 215 00:14:11,280 --> 00:14:13,490 今から20年前のことだ 216 00:14:14,780 --> 00:14:17,990 (祭主)やはり使うべきだ このままでは… 217 00:14:20,460 --> 00:14:22,000 (祭主)出かけてくる 218 00:14:22,500 --> 00:14:24,000 (祭主の妻)そう 気をつけて 219 00:14:27,000 --> 00:14:28,710 (妻のせき) 220 00:14:37,010 --> 00:14:38,680 (祭主)これでいい 221 00:14:38,930 --> 00:14:41,730 (祭主) 俺は 村全体のことばかり考え… 222 00:14:42,310 --> 00:14:45,360 (祭主)これで いいんだ 223 00:14:46,360 --> 00:14:50,190 (祭主)妻が変調を 隠しているのに 気づかずにいた 224 00:14:51,240 --> 00:14:54,660 秋に 瑞歯を生やしたのは― 225 00:14:55,410 --> 00:14:57,030 妻だった… 226 00:15:00,700 --> 00:15:02,870 (祭主の妻)ねえ お願いよ 227 00:15:03,210 --> 00:15:05,420 お米… 食べて 228 00:15:06,130 --> 00:15:08,420 あんたまで 死んでしまう 229 00:15:10,550 --> 00:15:11,380 ハッ! 230 00:15:11,840 --> 00:15:13,380 あっ 何してんだ!? 231 00:15:16,800 --> 00:15:18,390 (祭主の妻)つらくとも食べて 232 00:15:19,970 --> 00:15:23,100 私の命を あんたが 食べてくれるなら― 233 00:15:23,230 --> 00:15:25,400 なんだか 死ぬのも怖くない 234 00:15:27,270 --> 00:15:28,190 (祭主)そんな米ですら― 235 00:15:28,190 --> 00:15:29,270 (祭主の泣き声) (祭主)そんな米ですら― 236 00:15:29,270 --> 00:15:30,480 (祭主の泣き声) 237 00:15:30,480 --> 00:15:33,700 体は貪欲に吸収していった (祭主の泣き声) 238 00:15:35,360 --> 00:15:38,280 やがて 妻から抜け落ちた実を― 239 00:15:38,410 --> 00:15:40,490 俺は捨てにいくつもりだった 240 00:15:41,370 --> 00:15:46,000 だが いずれまた くるであろう 天災のことを思った 241 00:15:46,420 --> 00:15:49,290 そして あと一度だけは― 242 00:15:49,420 --> 00:15:53,130 誰の犠牲も見ずに 実を使えることに気づいた 243 00:15:56,130 --> 00:15:59,220 そして今年 時はきた… 244 00:16:17,240 --> 00:16:21,410 俺から抜け落ちた実は サネに処分してもらうつもりだ 245 00:16:21,790 --> 00:16:26,620 あの実は あんたらの言う 光脈筋に埋めれば 取り込まれ― 246 00:16:26,750 --> 00:16:28,540 姿をなくすという 247 00:16:29,040 --> 00:16:33,840 ただ あれがどういう実かは 言わずにおくつもりだ 248 00:16:34,460 --> 00:16:35,720 いいのか? それで 249 00:16:36,510 --> 00:16:37,760 あんたは 誰より― 250 00:16:38,380 --> 00:16:41,760 ここで生きて この土地の 行く末を 見たいはずだろ 251 00:16:42,720 --> 00:16:47,520 (祭主)見えるさ このまま 諦めなければ― 252 00:16:47,640 --> 00:16:51,020 この土地は 少しずつ 豊かになってゆく 253 00:16:51,230 --> 00:16:55,740 いつか必ず 何不自由なく 暮らせる日がくるはずだ 254 00:16:56,150 --> 00:16:59,490 それが 何代先のことになるかは 分からんが― 255 00:16:59,610 --> 00:17:02,280 どのみち この目では 見れんのだしな 256 00:17:06,040 --> 00:17:09,620 (ギンコ)分かった あんたの望むとおりにすればいい 257 00:17:10,130 --> 00:17:13,840 ただ もう1つ 答えてほしい問いがある 258 00:17:23,640 --> 00:17:26,470 ハァ ハァ… 259 00:17:26,600 --> 00:17:27,520 ハッ! うう~っ! 260 00:17:27,640 --> 00:17:30,440 (祭主のせきこみ) 261 00:17:33,570 --> 00:17:35,230 は… 262 00:17:35,900 --> 00:17:39,360 ハハッ ハハハハハ 263 00:17:40,820 --> 00:17:43,120 (サネ)ハァ… ハァ… 264 00:17:43,240 --> 00:17:45,490 祭主様~! 265 00:17:47,410 --> 00:17:49,620 母さん もう きっと大丈夫だ 266 00:17:49,750 --> 00:17:52,170 米 食って 少しずつ 元気になってる 267 00:17:52,460 --> 00:17:55,960 そうか よかったな だから言ったろうが 268 00:17:56,090 --> 00:17:56,920 (サネ)うん! 269 00:17:58,170 --> 00:17:59,760 なあ サネ 270 00:17:59,880 --> 00:18:01,930 お前に話があるんだ 271 00:18:02,680 --> 00:18:05,970 大事な話だ よく聞いてくれ 272 00:18:07,060 --> 00:18:08,390 (村人たちの騒ぎ声) 273 00:18:08,520 --> 00:18:12,600 (村人1)ハハハ おいサネ なんか 祝詞 去年と違うぞ 274 00:18:12,980 --> 00:18:14,400 ハァ… 275 00:18:15,610 --> 00:18:19,400 (村人2)なあ まだ誰にも 瑞歯は生えとらんのか? 276 00:18:19,530 --> 00:18:21,400 (村人3)ああ まだ聞かん 277 00:18:22,030 --> 00:18:24,410 (村人2)ひょっとすると 今年の豊作は― 278 00:18:24,530 --> 00:18:27,410 別れ作じゃ なかったのかもしれんぞ 279 00:18:28,080 --> 00:18:32,920 (村人3)それじゃあ 正真正銘 わしらの努力で 実った稲なのか? 280 00:18:33,000 --> 00:18:35,080 (サネの走る音) 281 00:18:35,210 --> 00:18:39,340 (サネ)ハァ ハァ ハァ… 282 00:18:39,590 --> 00:18:42,880 うっ… ううっ… うっ 283 00:18:43,010 --> 00:18:45,430 ううっ… え? 284 00:18:46,100 --> 00:18:47,350 よう 285 00:18:49,100 --> 00:18:52,600 (サネ)祭りは 事なく進んでるよ 286 00:18:52,730 --> 00:18:54,850 みんな楽しそうだ 287 00:18:58,150 --> 00:19:00,070 ああ… 288 00:19:08,030 --> 00:19:09,790 あ… 289 00:19:18,460 --> 00:19:19,840 大丈夫 290 00:19:21,010 --> 00:19:23,510 言われたとおりにするよ 291 00:19:27,890 --> 00:19:29,930 祭主様… 292 00:19:32,020 --> 00:19:36,440 (泣き声) 293 00:19:36,560 --> 00:19:40,570 (サネ)なんでこんなの… こんなの やだよう 294 00:19:40,690 --> 00:19:43,440 (泣き声) 295 00:19:43,570 --> 00:19:44,400 あっ! 296 00:19:46,160 --> 00:19:49,200 これから俺がすることは 一切 他言しないでくれよ 297 00:19:52,160 --> 00:19:55,500 (ギンコ)もう1つ 答えてほしい問いがある 298 00:19:56,750 --> 00:19:59,090 光脈は生命そのものだと 言ったが― 299 00:19:59,210 --> 00:20:02,460 そのまま生物に流し込んでも 蘇生まではできない 300 00:20:02,800 --> 00:20:07,390 だが それを可能にしたのが 例の実… ということになる 301 00:20:09,430 --> 00:20:11,640 これは賭けだが あの実を食えば― 302 00:20:11,760 --> 00:20:14,480 動物も蘇生することが できるはずだ 303 00:20:15,440 --> 00:20:19,360 ただ 植物との相違ゆえ おそらく光脈は― 304 00:20:19,480 --> 00:20:22,150 あんたの中に 宿り続けるだろう 305 00:20:22,280 --> 00:20:24,740 そうなると それは 不死の…― 306 00:20:24,860 --> 00:20:27,160 生物を超えたモノとなる 307 00:20:28,110 --> 00:20:30,910 あんたは それを 受け入れられるか? 308 00:20:32,700 --> 00:20:36,620 (祭主)それは あんたらの 最大の 禁じ手だったんじゃないのか? 309 00:20:37,040 --> 00:20:40,130 そんなことをして 許されるのか? 310 00:20:41,130 --> 00:20:43,420 あんたが黙ってりゃあ バレやしねえよ 311 00:20:43,880 --> 00:20:45,970 成功するかは 分からんし― 312 00:20:46,090 --> 00:20:49,430 したところで あんたにとって 幸福なのかも 分からん 313 00:20:49,800 --> 00:20:52,180 だが 賭けてみるなら― 314 00:20:52,890 --> 00:20:54,390 あんたの傷 暴き立てて― 315 00:20:54,520 --> 00:20:57,770 実の存在を 確かめるようなまねした わびだ 316 00:20:57,890 --> 00:20:59,650 これくらい 手を汚してもいい 317 00:21:00,480 --> 00:21:02,150 しっかり考えてくれ 318 00:21:04,190 --> 00:21:06,150 (祭主)考えたところで― 319 00:21:07,240 --> 00:21:10,490 答えなど 決まっている 320 00:21:15,660 --> 00:21:19,210 俺はなあ… やはり見届けたい 321 00:21:19,790 --> 00:21:22,880 この土地がこの先 どうなってゆくのかを 322 00:21:37,230 --> 00:21:39,520 俺がしてきたことが― 323 00:21:40,440 --> 00:21:43,020 正しかったのかどうか 324 00:21:51,160 --> 00:21:52,820 (ナレーション) その里において― 325 00:21:53,530 --> 00:21:58,330 その年の豊作は のちのちまで 語り草になったという 326 00:21:59,290 --> 00:22:00,830 ともに― 327 00:22:02,330 --> 00:22:05,250 奇妙な伝説も生まれた 328 00:22:07,710 --> 00:22:11,760 長く続いた別れ作の 途絶えたその年― 329 00:22:11,880 --> 00:22:16,350 できた米は 死んだ男を よみがえらせた 330 00:22:18,680 --> 00:22:23,400 その男は 不老不死となり 諸国を歩き― 331 00:22:23,980 --> 00:22:28,650 時折 戻っては その地を潤す 新たな農法を― 332 00:22:28,780 --> 00:22:31,530 伝えてゆくのだという 333 00:22:32,030 --> 00:22:38,040 ♪~ 334 00:23:25,120 --> 00:23:31,130 ~♪