1 00:00:01,084 --> 00:00:07,090 ♪~ 2 00:01:26,960 --> 00:01:32,960 ~♪ 3 00:01:38,010 --> 00:01:40,390 (ギンコ) その竹林で休んでいると― 4 00:01:40,760 --> 00:01:43,310 奇妙な男に声をかけられた 5 00:01:44,560 --> 00:01:48,310 (キスケ) あのう もし… 旅の方で? 6 00:01:48,440 --> 00:01:50,350 (ギンコ)ああ そうだが 7 00:01:50,730 --> 00:01:53,770 (キスケ)それなら 山を下りるんでしょうなぁ 8 00:01:53,900 --> 00:01:56,490 (ギンコ)ああ この西の方へな 9 00:01:56,940 --> 00:01:58,950 (キスケ)それは ちょうどいい 10 00:01:59,070 --> 00:02:01,950 ついて歩いて かまわんだろうか? 11 00:02:02,740 --> 00:02:04,490 (ギンコ)道に迷ったのか? 12 00:02:04,620 --> 00:02:08,410 (キスケ)ああ どうしても竹林から出られんのだ 13 00:02:08,960 --> 00:02:11,210 (ギンコ)よほどの方向音痴だな 14 00:02:11,330 --> 00:02:12,920 (キスケ)困ってたんだよ 15 00:02:13,500 --> 00:02:15,920 もう3年も人通りがなくてなぁ… 16 00:02:18,130 --> 00:02:19,430 3年? 17 00:02:19,840 --> 00:02:22,600 (キスケ) ああ… おかしいだろうが― 18 00:02:22,720 --> 00:02:25,890 俺は ずっとここから 出られずにいるんだよ 19 00:02:37,150 --> 00:02:40,950 (キスケ)もともと… ふもとの里の者なんだがな 20 00:02:41,570 --> 00:02:43,660 (ギンコ)なんだ 地元もんかよ 21 00:02:44,780 --> 00:02:49,160 日も見えないわけでなし なんで方角を失うのやら… 22 00:02:49,710 --> 00:02:53,000 それが 自分でも分からんのだよ 23 00:02:54,210 --> 00:02:57,460 (ギンコ)しかし… 広い竹林だな 24 00:03:01,930 --> 00:03:03,140 おっ!? 25 00:03:08,930 --> 00:03:13,600 (ギンコ)ハァ… ハァ… ハァ~… ハァ~… 26 00:03:13,730 --> 00:03:15,980 くそぉ… また戻った… 27 00:03:18,230 --> 00:03:21,650 どういうこった 磁石は狂っちゃいない 28 00:03:22,490 --> 00:03:24,870 俺たちは始め 西へ向かってる 29 00:03:25,200 --> 00:03:28,290 なのに 気がついたら 進路がズレてて… 30 00:03:28,410 --> 00:03:30,160 ズレて… ズレたあげく…― 31 00:03:30,750 --> 00:03:32,290 1周してる 32 00:03:34,460 --> 00:03:38,800 そうなんだ 自分の意思で… 進めなくなる 33 00:03:39,880 --> 00:03:41,550 なんなんだ こりゃ 34 00:03:41,670 --> 00:03:43,800 (キスケ) あんたも つかまったんだなぁ… 35 00:03:44,260 --> 00:03:48,510 こうなったら とりあえずここで 俺らと暮らすかい? 36 00:03:49,220 --> 00:03:51,310 冗談じゃねえぞ オイ 37 00:03:51,680 --> 00:03:54,310 ん… 他にもいるのか? 38 00:03:54,730 --> 00:03:58,610 (キスケ)ああ もともと ここに住んでた母子(おやこ)があってな 39 00:03:58,730 --> 00:03:59,730 あ… 40 00:04:00,440 --> 00:04:01,440 (セツ)あ… 41 00:04:02,030 --> 00:04:03,400 キスケ 42 00:04:04,320 --> 00:04:08,530 母はもういないが 娘とは今じゃ夫婦(めおと)だ 43 00:04:08,660 --> 00:04:13,830 もともと幼なじみだったし まあ… 不幸中の幸いだ 44 00:04:14,160 --> 00:04:15,040 へ~ 45 00:04:15,500 --> 00:04:18,590 旅の方だ ちょっと話をな 46 00:04:19,290 --> 00:04:20,920 嫁のセツだ 47 00:04:22,510 --> 00:04:23,800 ギンコさん 48 00:04:24,470 --> 00:04:28,760 つきあわせて すまなかったな 俺はもう家に戻るよ 49 00:04:28,890 --> 00:04:30,560 あんたも休んでくかい? 50 00:04:31,060 --> 00:04:35,020 いや… もう少し 別の方法を考えてみるよ 51 00:04:35,140 --> 00:04:36,400 (キスケ)そうか 52 00:04:36,810 --> 00:04:39,060 それじゃ 元気でな… 53 00:04:42,610 --> 00:04:43,650 (ギンコ)“元気でな”? 54 00:04:45,900 --> 00:04:47,610 どうも妙だな… 55 00:04:55,250 --> 00:04:56,250 あっ 56 00:04:58,080 --> 00:04:59,460 抜けた… 57 00:05:02,880 --> 00:05:04,210 やれやれだ… 58 00:05:04,300 --> 00:05:06,970 (老婆1)大丈夫かねぇ… (老婆2)分からないよ… 59 00:05:07,090 --> 00:05:09,260 何か? (老婆1)いや…― 60 00:05:09,390 --> 00:05:12,810 あんた あの竹林から 出てきなすったろ? 61 00:05:12,930 --> 00:05:13,850 (ギンコ)ああ 62 00:05:13,970 --> 00:05:16,690 中で 男を見なかったかい? 63 00:05:17,060 --> 00:05:20,650 ああ… ありゃ からかわれたのかね? 64 00:05:21,150 --> 00:05:23,730 なんなんだ? あの男は… 65 00:05:24,860 --> 00:05:27,820 (老婆2) 化け物に とらわれちまってんだよ 66 00:05:27,950 --> 00:05:30,910 あんた 無事でよかったよ 67 00:05:31,030 --> 00:05:32,660 化け物? (老婆2)ああ 68 00:05:32,780 --> 00:05:35,870 あん中にゃ 白い竹が生えててな… (老婆1)よしなよ! 69 00:05:36,000 --> 00:05:40,670 そんな里の名 汚(けが)すこと よそ様に言うんじゃないよ 70 00:05:45,340 --> 00:05:46,340 ん? 71 00:05:47,220 --> 00:05:48,510 ギンコさん 72 00:05:48,930 --> 00:05:51,720 あんた… 出られなかったのかい? 73 00:05:51,850 --> 00:05:55,600 (ギンコ)いや… 見たいものがあってな 戻ってきた 74 00:05:57,890 --> 00:06:01,940 この竹林に 白い竹が生えてると里で聞いた 75 00:06:02,650 --> 00:06:05,860 それと あんたや 嫁さんのことも…― 76 00:06:06,190 --> 00:06:07,400 少しな 77 00:06:08,860 --> 00:06:12,490 それを見て… どうしようってんだい? 78 00:06:13,660 --> 00:06:16,200 (ギンコ)それが俺の生業(なりわい)の 範ちゅうのモノなら― 79 00:06:16,330 --> 00:06:18,290 詳しく話を聞きたい 80 00:06:19,290 --> 00:06:21,710 非常に まれな現象なんでな 81 00:06:22,210 --> 00:06:25,630 もしかすると あんたをここから出す すべも あるかもしれん… 82 00:06:26,460 --> 00:06:27,920 あんたが もし…― 83 00:06:28,050 --> 00:06:31,550 これ以上踏み込むなと言うなら 1人でやるが… 84 00:06:37,180 --> 00:06:38,180 こっちだ 85 00:06:47,860 --> 00:06:51,320 これ以外にも あと4本ある 86 00:06:51,450 --> 00:06:54,370 ふうん… やっぱり“間借り竹”だな 87 00:06:54,780 --> 00:06:55,620 (キスケ)え… 88 00:06:55,740 --> 00:06:58,200 (ギンコ) まずは 聞かせてもらえるか? 89 00:06:59,080 --> 00:07:02,670 この竹林で起こったことの… すべてをな 90 00:07:04,840 --> 00:07:10,090 (キスケ)俺の里の子らが 聞かされて 育った話だ 91 00:07:11,930 --> 00:07:15,720 この竹林に 若い夫婦が住んでいた 92 00:07:16,310 --> 00:07:22,140 夫婦には長年 子ができず… 夫は陰気な家を空けるようになった 93 00:07:23,150 --> 00:07:27,110 女は草木と話をするような 変わり者だったが― 94 00:07:27,520 --> 00:07:30,860 やがて 夜な夜な竹林を 徘回(はいかい)するようになった 95 00:07:32,150 --> 00:07:35,370 そしてある時 子ができたようだと言う 96 00:07:36,660 --> 00:07:41,080 夫は女房を怪しんで ある晩 女房のあとをつけた 97 00:07:41,540 --> 00:07:42,790 すると― 98 00:07:44,210 --> 00:07:48,960 女房は陶然と 白い竹にすがりついていた 99 00:07:50,300 --> 00:07:56,510 夫は肝をつぶして逃げ出したが 里の人々にとがめられ 家へ戻った 100 00:07:57,350 --> 00:07:58,720 すると― 101 00:07:59,220 --> 00:08:03,350 女は タケノコを 赤子のように抱えていた 102 00:08:06,150 --> 00:08:08,020 タケノコ 産んだってか… 103 00:08:08,150 --> 00:08:09,980 (キスケ) 本人は そう言ったんだと… 104 00:08:10,610 --> 00:08:12,900 (ギンコ) だんなへの嫌がらせだったんじゃ… 105 00:08:13,900 --> 00:08:19,240 結果 夫は里から逃げ出したし… 俺らも そう思ってた 106 00:08:19,370 --> 00:08:23,870 実際 俺らが子どものころ “竹の子”を見にきた時も― 107 00:08:24,000 --> 00:08:26,630 普通の娘にしか 見えなかったからね… 108 00:08:27,380 --> 00:08:30,130 それが… セツだった 109 00:08:30,920 --> 00:08:33,760 そのころ すでに 母親は亡くなっていて― 110 00:08:33,880 --> 00:08:35,550 1人じゃ さみしかろうと― 111 00:08:35,680 --> 00:08:39,510 俺の妹や仲間らと よくここで遊んだ 112 00:08:40,140 --> 00:08:44,180 ただ… セツは異質なのだと 感じてはいた 113 00:08:44,690 --> 00:08:49,610 彼女は水しか口にせず 決して竹林からは出なかった 114 00:08:50,150 --> 00:08:54,110 それでも 皆… セツのことは好いていたんだ 115 00:08:55,400 --> 00:08:59,620 だが… ある時 俺らは竹林から出られなくなった 116 00:09:00,950 --> 00:09:03,330 皆で ぐるぐる竹林を回り― 117 00:09:03,450 --> 00:09:07,080 次第に 1人… 2人と 見えなくなった 118 00:09:07,870 --> 00:09:11,670 気がつけば… 俺は1人で取り残されてた 119 00:09:12,880 --> 00:09:17,090 翌日 里に戻れた連中が 捜しに来てくれたが― 120 00:09:17,220 --> 00:09:21,050 俺と一緒だと 皆 竹林から出られなかった 121 00:09:21,470 --> 00:09:24,930 フフフ… やっぱり… 知ってて俺を巻き込んだな 122 00:09:25,060 --> 00:09:27,100 ハハハ… すまない 123 00:09:27,230 --> 00:09:30,400 よその人ならどうかなと 思ったんだよ 124 00:09:31,690 --> 00:09:34,860 それからは セツの家で暮らした 125 00:09:35,490 --> 00:09:37,990 俺には妹以外 肉親はなくて― 126 00:09:38,110 --> 00:09:41,410 里の皆で 食う物なんかを 世話してくれた 127 00:09:42,280 --> 00:09:47,160 俺と妹は 里の皆に 育ててもらったようなもんだ 128 00:09:48,080 --> 00:09:52,790 皆 家族みたいな… いい里だった 129 00:09:53,630 --> 00:09:59,430 だが そんな暮らしが長引くと 里の者らの訪問も減っていった… 130 00:10:01,470 --> 00:10:04,680 キスケ… さみしい? 131 00:10:06,270 --> 00:10:07,480 いいや 132 00:10:08,640 --> 00:10:11,270 なら… よかった 133 00:10:12,400 --> 00:10:15,280 (キスケ) やがて… セツは子をみごもった 134 00:10:16,860 --> 00:10:17,820 だが… 135 00:10:18,650 --> 00:10:23,830 (赤ん坊の泣き声) 136 00:10:24,490 --> 00:10:27,830 (キスケ) その時… 初めて俺は…― 137 00:10:29,790 --> 00:10:32,210 セツの素性を思い知った 138 00:10:32,330 --> 00:10:34,420 (赤ん坊の泣き声) 139 00:10:35,960 --> 00:10:38,420 産婆は里へ逃げ帰り― 140 00:10:38,550 --> 00:10:42,010 それ以来 誰もここへは来なくなった― 141 00:10:42,140 --> 00:10:43,260 ってわけだ 142 00:10:43,760 --> 00:10:46,010 信じられんかもしれないが… 143 00:10:46,140 --> 00:10:48,100 ま… 驚いたがね… 144 00:10:49,810 --> 00:10:53,810 で あんたの言う マガリダケってのは なんなんだ? 145 00:10:55,020 --> 00:10:58,570 名に“竹”とつくが 草木ではない 146 00:10:59,740 --> 00:11:03,570 竹というのは 竹林一帯が同じ根を持つ 147 00:11:03,990 --> 00:11:06,330 それら すべてで1つの個… 148 00:11:06,450 --> 00:11:09,700 または 世代交代する家族といえる 149 00:11:10,370 --> 00:11:14,750 “間借り竹”は その根に寄生し 家族の一員になりすます“蟲(むし)”だ 150 00:11:16,090 --> 00:11:18,800 竹の根から養分を吸って育つが― 151 00:11:18,920 --> 00:11:22,300 その分 竹林を茂らせる成分を 根に戻し― 152 00:11:22,430 --> 00:11:25,850 竹林を広げ 自分の子株を増やしてく 153 00:11:26,720 --> 00:11:30,060 あんたの女房は 蟲と人との間の子 154 00:11:31,270 --> 00:11:33,770 俺たち蟲師(むしし)は“鬼蟲(おにこ)”と呼ぶ 155 00:11:33,900 --> 00:11:36,360 非常に まれな“まざりもの”だ 156 00:11:38,400 --> 00:11:40,570 少々… こたえたか 157 00:11:41,070 --> 00:11:42,240 (キスケ)いや… 158 00:11:42,820 --> 00:11:46,580 もう娘の生まれた姿 見たあとだしな… 159 00:11:47,200 --> 00:11:50,200 親がなんでも セツは…― 160 00:11:50,750 --> 00:11:51,830 セツだ 161 00:11:52,330 --> 00:11:55,540 里の皆は そうは思えんようだが… 162 00:11:55,920 --> 00:11:58,710 セツに会えば 分かってくれるはずなんだ 163 00:11:58,840 --> 00:12:03,010 いつかは3人で 里で暮らすことだって… 164 00:12:03,130 --> 00:12:06,010 (ギンコ) それで なんとか外に出たいわけか 165 00:12:06,470 --> 00:12:07,300 (キスケ)ああ 166 00:12:08,180 --> 00:12:11,430 それに 妹のことが気がかりだ 167 00:12:12,020 --> 00:12:13,980 俺のせいで つらい思いしてないか 168 00:12:16,560 --> 00:12:19,270 (ギンコ)1つ… 考えがある 169 00:12:36,970 --> 00:12:39,970 (ギンコ)不自然に方向を変える 地点を結ぶと…― 170 00:12:41,220 --> 00:12:42,560 ほぼ真円だ… 171 00:12:43,060 --> 00:12:46,270 自分の意思で… 進めなくなる 172 00:12:53,650 --> 00:12:57,740 (ギンコ) 円の中心にあるのが… あの株か 173 00:13:05,790 --> 00:13:09,500 (ギンコ)それが… あんた方の“命の水”かい? 174 00:13:11,250 --> 00:13:12,340 (セツ)ええ 175 00:13:12,460 --> 00:13:14,590 (ギンコ) 少し… 分けてもらっていいか? 176 00:13:15,000 --> 00:13:16,090 あ… 177 00:13:16,550 --> 00:13:19,630 ごめんなさい 大事な水だから― 178 00:13:19,760 --> 00:13:22,600 よそ様には やるなって母さんが… 179 00:13:23,890 --> 00:13:26,060 キスケにも? (セツ)え? 180 00:13:26,560 --> 00:13:30,350 一度だけ… あげちゃったけど― 181 00:13:30,980 --> 00:13:33,310 まだ 子どものころ… 182 00:13:35,730 --> 00:13:40,360 (ギンコ)なあ… あんたは 里の者らに忌み嫌われるのは― 183 00:13:40,740 --> 00:13:42,240 やはり つらいか? 184 00:13:43,070 --> 00:13:44,580 そうね 185 00:13:44,700 --> 00:13:49,040 でも私は… キスケと娘がいればいい 186 00:13:49,160 --> 00:13:52,290 キスケは出られなくて かわいそうだけど― 187 00:13:52,960 --> 00:13:54,000 私は…― 188 00:13:55,130 --> 00:13:58,340 それが… うれしいの 189 00:14:04,760 --> 00:14:06,060 (ギンコ)悪いが― 190 00:14:06,720 --> 00:14:09,140 少し 失敬するよ 191 00:14:20,570 --> 00:14:24,070 やっぱり… 出られないか 192 00:14:24,870 --> 00:14:28,330 こいつは… やっかいだな 193 00:14:34,420 --> 00:14:36,540 (キスケの娘)きゃ~ きゃ~ 194 00:14:37,000 --> 00:14:37,460 (キスケの娘の はしゃぎ声) 195 00:14:37,460 --> 00:14:42,090 ああ 今年もまた 葉が落ちるなぁ (キスケの娘の はしゃぎ声) 196 00:14:42,220 --> 00:14:43,550 (キスケの娘)きゃ~ 197 00:14:44,010 --> 00:14:44,590 (キスケ)竹の子どもが でっかくなるように― 198 00:14:44,590 --> 00:14:46,800 (キスケの娘) ふふ… あははっ ははっ (キスケ)竹の子どもが でっかくなるように― 199 00:14:47,390 --> 00:14:50,810 竹の母ちゃんが 葉っぱのごはん やってんだ… 200 00:14:51,020 --> 00:14:54,150 ふーん… どれが母ちゃん? 201 00:14:54,270 --> 00:14:55,770 みんなだよ 202 00:14:56,020 --> 00:14:58,520 みんなで子どもを育てるんだ 203 00:14:59,980 --> 00:15:05,110 父ちゃんは… この季節には 里のことを思い出すよ 204 00:15:06,780 --> 00:15:13,040 広くてなあ… 日がいっぱい差して にぎやかな里なんだよ 205 00:15:14,040 --> 00:15:17,040 お前にも 見せてやりたいなぁ 206 00:15:30,350 --> 00:15:32,350 う… う… 207 00:15:36,480 --> 00:15:38,360 大丈夫よね 208 00:15:38,900 --> 00:15:42,780 キスケは… きっと大丈夫 209 00:15:43,030 --> 00:15:44,030 (足音) 210 00:15:44,150 --> 00:15:45,110 (セツ)はっ! 211 00:15:49,530 --> 00:15:51,870 じゃあ 原因が分かったのか 212 00:15:52,620 --> 00:15:56,920 ああ 蟲には 草木と違い意思がある 213 00:15:57,380 --> 00:16:01,500 体の各部位に命令を下し 意思を遂行する 214 00:16:03,170 --> 00:16:08,850 この蟲にとっての体は この株を中心にした竹林一円だ 215 00:16:09,550 --> 00:16:12,220 そして その意思を伝えるものは― 216 00:16:12,640 --> 00:16:15,730 この… セツたちの飲む水だ 217 00:16:16,270 --> 00:16:20,190 普通の水は この株に近づけても 反応はしない 218 00:16:25,900 --> 00:16:30,620 この水を持ってるだけで この蟲の意思に感化されてしまうんだ 219 00:16:31,410 --> 00:16:33,620 むろん… それを口にした者― 220 00:16:34,160 --> 00:16:36,960 そして そのそばにいる者までも… 221 00:16:39,380 --> 00:16:42,880 (キスケ) 今日は暑いなあ のどが渇いた 222 00:16:44,380 --> 00:16:46,880 (セツ)一口 あげる 223 00:16:47,430 --> 00:16:48,590 (セツ)ああ… 224 00:16:49,470 --> 00:16:52,680 セツが それを知っていたとは 思えんがな 225 00:16:53,060 --> 00:16:57,190 ああ… だが じゃあ どうすればいいんだ 226 00:16:57,600 --> 00:17:02,150 それがな… 体から 水を抜ければいいんだろうが― 227 00:17:02,270 --> 00:17:04,690 正直 そのすべは思いつかん 228 00:17:05,860 --> 00:17:09,780 もう1つ… 手段は考えられるが… 229 00:17:12,450 --> 00:17:15,500 それは… 俺もやりたくない 230 00:17:15,870 --> 00:17:18,250 他にどんな影響があるか読めん 231 00:17:19,370 --> 00:17:22,670 そう… か… 232 00:17:23,840 --> 00:17:27,670 そうか… それなら ようやく― 233 00:17:28,090 --> 00:17:29,930 諦められる… 234 00:17:47,110 --> 00:17:48,740 (セツ)あなたが― 235 00:17:49,780 --> 00:17:52,570 キスケを とらえてくれてたのね 236 00:17:54,530 --> 00:17:55,990 ありがとう… 237 00:17:58,040 --> 00:17:59,500 ごめんなさい 238 00:18:02,290 --> 00:18:04,790 ふっ… ふんっ! 239 00:18:07,340 --> 00:18:09,170 ふっ! ふんっ! 240 00:18:09,550 --> 00:18:10,420 ううっ! 241 00:18:13,430 --> 00:18:15,010 どうして… 242 00:18:16,640 --> 00:18:18,600 (ギンコ) あんたには できんはずだ… 243 00:18:19,850 --> 00:18:22,020 あんたは そいつの“子株” 244 00:18:22,440 --> 00:18:24,560 そいつの体の一部なんだ 245 00:18:25,480 --> 00:18:27,900 脳に手足が逆らえんようにな 246 00:18:29,650 --> 00:18:31,570 全部 聞いていたのか? 247 00:18:32,150 --> 00:18:36,030 (セツ)キスケは… 私のせいで… 248 00:18:37,030 --> 00:18:39,950 でも キスケは 不幸だったわけじゃない 249 00:18:40,750 --> 00:18:45,960 (セツ)キスケは こんな素性の 私を幸せにしてくれた 250 00:18:46,880 --> 00:18:51,010 なのに私は キスケから里を奪った 251 00:18:51,130 --> 00:18:54,300 キスケは… 言ってくれたのに 252 00:18:54,890 --> 00:18:59,890 親がなんでも… 私は 私だって 253 00:19:00,850 --> 00:19:02,640 ううっ… (ギンコ)あ! 254 00:19:03,190 --> 00:19:04,730 (セツ)はあっ… 255 00:19:05,150 --> 00:19:07,400 (ギンコ)もうよせ! (セツ)ふんっ! 256 00:19:34,970 --> 00:19:36,800 セツー! 257 00:19:36,930 --> 00:19:38,680 どこ行っちまったんだ 258 00:19:48,860 --> 00:19:50,360 里だ… 259 00:19:50,730 --> 00:19:51,110 (戸をたたく音) 260 00:19:51,110 --> 00:19:51,860 (キスケの娘の泣き声) (戸をたたく音) 261 00:19:51,860 --> 00:19:51,980 (キスケの娘の泣き声) 262 00:19:51,980 --> 00:19:56,280 (キスケ)おーい 俺だ キスケだ やっと出られたんだ (キスケの娘の泣き声) 263 00:19:56,280 --> 00:19:57,160 (キスケの娘の泣き声) 264 00:19:58,070 --> 00:19:59,490 (キスケの妹)お兄ちゃん? 265 00:19:59,620 --> 00:20:01,620 (キスケ)ああ 元気だったか 266 00:20:02,080 --> 00:20:05,210 (キスケの妹)それ… 例の子ども? 267 00:20:05,920 --> 00:20:08,000 (キスケ)ああ… (キスケの妹)帰って 268 00:20:08,130 --> 00:20:09,250 話を聞いてくれ 269 00:20:09,380 --> 00:20:11,130 (キスケの妹) そんなもの 里に連れて下りないで 270 00:20:12,340 --> 00:20:14,590 私も もう… 子どもがいるの 271 00:20:14,720 --> 00:20:19,100 子どもにまで… 肩身の狭い思いさせないで 272 00:20:19,180 --> 00:20:24,350 (キスケの娘の泣き声) 273 00:20:27,400 --> 00:20:29,980 (キスケの娘) ねぇ お母ちゃんはー? 274 00:20:31,070 --> 00:20:32,440 そうだな… 275 00:20:34,490 --> 00:20:35,570 戻ろうか 276 00:20:38,910 --> 00:20:40,780 (ギンコ) それから しばらくは― 277 00:20:41,780 --> 00:20:44,870 3人は 幸せに暮らしたという 278 00:20:48,460 --> 00:20:49,630 だが― 279 00:20:50,710 --> 00:20:52,380 半年の後…― 280 00:20:54,630 --> 00:20:57,470 親株を切った影響を見に戻ると… 281 00:20:58,720 --> 00:21:01,760 間借り竹が… 一本もない 282 00:21:03,850 --> 00:21:05,770 (足音) 283 00:21:09,150 --> 00:21:10,480 (キスケ)あんたか… 284 00:21:14,360 --> 00:21:19,030 (キスケ)あれから 白い竹は 次々朽ちてしまった… 285 00:21:19,990 --> 00:21:23,990 あいつらは あの水あってのものだった 286 00:21:24,870 --> 00:21:29,710 苦しんで… ここへ 2人を埋めるころには― 287 00:21:31,080 --> 00:21:34,500 枯れ木みたいに… もろくなってた 288 00:21:35,550 --> 00:21:39,340 セツは… あんなことをしちゃ ならなかった 289 00:21:39,760 --> 00:21:42,180 あれはセツの親だったのに 290 00:21:43,600 --> 00:21:45,350 俺が そうさせた 291 00:21:45,930 --> 00:21:49,770 俺が… 里を捨てきれなかったから… 292 00:22:01,320 --> 00:22:05,410 ああ… もう 今年も そんな時季か… 293 00:22:06,580 --> 00:22:07,500 ん… 294 00:22:07,870 --> 00:22:11,250 白い竹… いつの間に… 295 00:22:15,040 --> 00:22:18,590 (赤ん坊の泣き声) 296 00:22:18,710 --> 00:22:20,510 (キスケ)赤子の声? 297 00:22:20,880 --> 00:22:23,260 (赤ん坊の泣き声) 298 00:22:23,390 --> 00:22:26,850 (キスケ)2人の… 墓の方からだ 299 00:22:26,970 --> 00:22:31,350 (赤ん坊の泣き声) 300 00:22:33,020 --> 00:22:39,030 ♪~ 301 00:23:26,990 --> 00:23:33,000 ~♪