1 00:00:01,126 --> 00:00:07,132 ♪~ 2 00:01:26,570 --> 00:01:32,570 ~♪ 3 00:01:37,790 --> 00:01:39,660 (清志朗(せいじろう))なあ 吹(ふき) 4 00:01:40,040 --> 00:01:41,330 (吹)はい? 5 00:01:43,040 --> 00:01:46,920 (清志朗)お前 うちの勤めは 来年までだったよな? 6 00:01:47,510 --> 00:01:48,670 (吹)はい 7 00:01:49,420 --> 00:01:51,680 (清志朗) じゃあ そのあとはどうするんだ? 8 00:01:52,090 --> 00:01:54,430 里に帰って 仕事はあるのか? 9 00:01:55,260 --> 00:01:57,810 (吹)まだ… 何も… 10 00:02:00,730 --> 00:02:03,810 (清志朗)なら… 俺と… 11 00:02:05,730 --> 00:02:08,730 あっ いや… また今度な 12 00:02:08,860 --> 00:02:10,740 ああ 明星だ 13 00:02:12,360 --> 00:02:13,200 (吹)あっ 14 00:02:25,290 --> 00:02:27,340 セイジロさん 15 00:02:27,800 --> 00:02:29,670 あれ 何かしら 16 00:02:30,510 --> 00:02:31,840 どれ? 17 00:02:32,180 --> 00:02:34,590 (吹)空から糸が垂れてる 18 00:02:34,720 --> 00:02:35,600 糸? 19 00:02:35,890 --> 00:02:39,140 この糸 一体 どこから… 20 00:02:59,290 --> 00:02:59,660 (赤ん坊の泣き声) 21 00:02:59,660 --> 00:03:01,910 (吹)はいはい よしよし (赤ん坊の泣き声) 22 00:03:02,960 --> 00:03:05,210 よしよし 泣きやんでおくれ 23 00:03:05,330 --> 00:03:07,920 でなきゃ おうちに戻れないよ 24 00:03:08,250 --> 00:03:11,170 ほれ お星さまが いっぱいだよ 25 00:03:11,300 --> 00:03:14,880 そうだ… あの星 どこ行ったかな 26 00:03:15,220 --> 00:03:17,600 尾っぽのついた ほうき星 (清志朗)んっ 27 00:03:18,050 --> 00:03:21,100 おい お前 今の本当か? 28 00:03:22,270 --> 00:03:25,100 ほうき星ですか? はい 昨日 29 00:03:25,480 --> 00:03:26,850 どの辺だ? 30 00:03:26,980 --> 00:03:28,060 あの辺りで 31 00:03:28,400 --> 00:03:30,020 (清志朗)どっちに動いてた? 32 00:03:30,150 --> 00:03:32,780 (吹)えっと 向こうの方に 33 00:03:32,900 --> 00:03:36,280 光ったり消えたりしながら くねくね 動いてた 34 00:03:37,110 --> 00:03:39,490 そんな すい星あるかな 35 00:03:39,620 --> 00:03:42,290 まあ でも もしあれば 大発見だな 36 00:03:42,620 --> 00:03:44,710 よし! 絶対 見つけてやる 37 00:03:44,830 --> 00:03:48,250 えっと… 吹だったな でかしたぞ 38 00:03:51,500 --> 00:03:56,260 (清志朗)結局 そんな星が 見つかることはなかった 39 00:03:58,970 --> 00:04:03,770 吹は 癇(かん)のひどい末の妹の 子守りとして 家に来た 40 00:04:04,730 --> 00:04:07,560 時折 そんな 不可思議なことを話し― 41 00:04:07,770 --> 00:04:12,320 そのため里には 吹を 白い目で見る者もいた 42 00:04:15,070 --> 00:04:19,120 (村人たち)おーい 吹~ 43 00:04:20,780 --> 00:04:22,200 吹~! 44 00:04:22,580 --> 00:04:26,000 (使用人)ああ 旦那さま こちらにもおりません 45 00:04:26,120 --> 00:04:29,250 (清志朗の父)もうよい 子守りに疲れて 逃げ出したのだ 46 00:04:29,380 --> 00:04:30,840 あの恩知らずめが 47 00:04:30,960 --> 00:04:33,550 (清志朗) 父上! 吹は決してそんな― 48 00:04:33,670 --> 00:04:36,170 仕事を放り出すような 娘ではありません 49 00:04:36,630 --> 00:04:40,850 あいつは河原で糸をつかもうとして そしたら 目の前で消えて… 50 00:04:41,260 --> 00:04:43,100 (使用人)清志朗坊ちゃん 51 00:04:43,220 --> 00:04:47,560 どうせなら もう少しまともな 言い訳を 考えてやっちゃ… 52 00:04:51,190 --> 00:04:53,320 本当なんだ 53 00:04:57,150 --> 00:04:58,530 吹… 54 00:04:59,700 --> 00:05:02,370 一体 どこ行っちまったんだ? 55 00:05:14,710 --> 00:05:15,550 (ギンコ)ん? 56 00:05:17,090 --> 00:05:19,050 何事だ? ありゃ 57 00:05:22,930 --> 00:05:24,720 (吹)あれ? 58 00:05:27,680 --> 00:05:30,560 ここ どこだろう 59 00:05:33,900 --> 00:05:35,360 この人…― 60 00:05:35,860 --> 00:05:37,150 誰だろう 61 00:05:39,610 --> 00:05:42,780 私… なんで― 62 00:05:44,370 --> 00:05:46,370 この人と― 63 00:05:46,870 --> 00:05:49,710 山の中 歩いてるんだろう 64 00:06:03,050 --> 00:06:04,680 ほら これを飲め 65 00:06:07,100 --> 00:06:07,930 はっ! 66 00:06:08,430 --> 00:06:10,730 (ギンコ)それ飲んで 早く治ってくれねえと― 67 00:06:10,850 --> 00:06:13,600 いつまでも面倒は見れねえぞ 68 00:06:13,730 --> 00:06:16,440 お前だって 早く元に戻りたいだろ 69 00:06:18,230 --> 00:06:19,940 元… に? 70 00:06:20,400 --> 00:06:22,610 何も覚えてないのかあ 71 00:06:24,570 --> 00:06:25,410 まいったな 72 00:06:26,870 --> 00:06:29,500 お前はなあ 強い蟲(むし)の気(け) 帯びて― 73 00:06:29,620 --> 00:06:32,080 ひどく あいまいなモノに なっちまってる 74 00:06:32,460 --> 00:06:36,590 おそらく今 ほかのヒトに お前の姿は見えはしない 75 00:06:37,250 --> 00:06:39,420 その手に生えた 白い糸 76 00:06:39,670 --> 00:06:41,840 それに触れちまったせいだろう 77 00:06:42,680 --> 00:06:46,800 放っておけば どんどん ヒトから離れてゆく 78 00:06:48,180 --> 00:06:49,850 あなたは…― 79 00:06:50,270 --> 00:06:52,430 私を助けてくれてるの? 80 00:06:53,270 --> 00:06:54,730 さてね 81 00:06:55,190 --> 00:06:57,730 自分のしたいように してるだけだ 82 00:07:00,530 --> 00:07:02,240 (吹)フーッ 83 00:07:03,950 --> 00:07:05,490 あっ! ぐぐぐ… 84 00:07:05,610 --> 00:07:08,580 まっ なんだ こらえろ 85 00:07:11,200 --> 00:07:12,040 (ギンコ)うん 86 00:07:12,910 --> 00:07:15,540 多少 血色がよくなってきたな 87 00:07:15,960 --> 00:07:16,830 (吹)そうかな… 88 00:07:16,960 --> 00:07:19,800 ほれ 行くぞ (吹)ん? 89 00:07:20,300 --> 00:07:21,760 どこへ行くの? 90 00:07:21,880 --> 00:07:23,380 (ギンコ)里を探すんだよ 91 00:07:24,090 --> 00:07:27,890 人のにおいのある所に いる方が 治りも早い 92 00:07:28,010 --> 00:07:31,640 記憶が戻らんなら とりあえず 近くの里に置いてもらえ 93 00:07:32,930 --> 00:07:36,190 しかし… どっち行きゃあ いいのかね… 94 00:07:50,700 --> 00:07:52,660 はっ… あ! 95 00:07:57,670 --> 00:08:01,050 何か 地面の底で光ってる 96 00:08:01,670 --> 00:08:02,880 ああ 97 00:08:03,210 --> 00:08:05,720 今のお前には さぞ よく見えるだろ? 98 00:08:06,430 --> 00:08:09,680 ここは 光脈筋(こうみゃくすじ)のようだ 99 00:08:11,810 --> 00:08:13,890 (吹)何が光ってるの? 100 00:08:14,640 --> 00:08:16,440 (ギンコ)光酒(こうき)っつってな― 101 00:08:16,640 --> 00:08:21,020 蟲の生まれる前の姿のモノが 群れを成して 泳いでる 102 00:08:21,360 --> 00:08:25,150 蟲って よく物陰で じっとしてたり― 103 00:08:25,280 --> 00:08:28,740 空中を漂ってる 小さなものたちのこと? 104 00:08:28,860 --> 00:08:30,070 (ギンコ)ああ 105 00:08:30,320 --> 00:08:31,660 ふうん 106 00:08:32,370 --> 00:08:33,450 きれい 107 00:08:33,580 --> 00:08:35,620 (ギンコ)あまり見るんじゃない (吹)ん? 108 00:08:36,580 --> 00:08:38,540 (ギンコ)あの光は 目の毒だ 109 00:08:38,670 --> 00:08:41,380 慣れすぎると 日の光が 見れなくなる 110 00:08:42,670 --> 00:08:45,090 光の河(かわ)なら 上にもある 111 00:08:46,920 --> 00:08:50,340 あれは夜にも 日の光を浴びて 光ってるものだ 112 00:08:51,140 --> 00:08:52,180 こっちの河を見ろ 113 00:08:53,850 --> 00:08:56,140 わあ ほんとだ 114 00:08:57,850 --> 00:09:01,400 まるで 鏡に映っているみたい 115 00:09:03,270 --> 00:09:05,150 (ギンコ)似て非なるものだ 116 00:09:06,110 --> 00:09:08,700 見誤らんよう 気をつけろ 117 00:09:21,080 --> 00:09:22,960 (吹)よく寝れた 118 00:09:24,460 --> 00:09:27,760 昨日は 嬢ちゃん 夜泣きしなかったんだ 119 00:09:28,760 --> 00:09:30,430 よかった 120 00:09:31,680 --> 00:09:33,300 ああ! 121 00:09:33,930 --> 00:09:34,760 どうした? 122 00:09:35,390 --> 00:09:37,980 私… 帰らなきゃ! 123 00:09:38,390 --> 00:09:40,440 あっ 記憶が戻ったのか? 124 00:09:45,690 --> 00:09:48,070 あっ! 向こうだわ! 125 00:09:48,190 --> 00:09:51,410 あの山のふもとが 私のいた里 126 00:09:56,240 --> 00:09:57,080 (村人1)ん? 127 00:09:59,540 --> 00:10:03,960 お前 吹じゃねえか いなくなった… 128 00:10:04,250 --> 00:10:05,790 (村人2)ありゃ ほんとだ (村人1)吹だよ 129 00:10:05,920 --> 00:10:08,130 (村人3) お前 どこ行ってたんだい 130 00:10:08,760 --> 00:10:10,220 あの… 131 00:10:10,720 --> 00:10:12,090 ずっと山に 132 00:10:12,680 --> 00:10:15,680 (村人1)山なら 皆で ずいぶん捜したけどなあ 133 00:10:15,800 --> 00:10:17,850 一体 どこ隠れてたんだい? 134 00:10:18,180 --> 00:10:21,350 私 隠れてなんか… 135 00:10:21,480 --> 00:10:25,060 ただ河原で 空から垂れた糸 引っ張ったら― 136 00:10:25,190 --> 00:10:27,520 周りが真っ暗になって 137 00:10:28,230 --> 00:10:29,820 気がついたら― 138 00:10:30,940 --> 00:10:32,530 山にいたの 139 00:10:32,990 --> 00:10:35,120 (村人2) また そんな たわ言 言って 140 00:10:35,240 --> 00:10:37,950 (村人3)逃げといて 怖くなって 戻ったのかい? 141 00:10:38,080 --> 00:10:40,200 でもねえ ちょっと遅かったよ 142 00:10:40,790 --> 00:10:43,710 旦那さん もう 代わりを雇っちまったから 143 00:10:44,290 --> 00:10:45,710 そんな 144 00:10:45,830 --> 00:10:47,290 (清志朗)吹! 145 00:10:50,210 --> 00:10:51,550 セイジロさん! 146 00:10:51,760 --> 00:10:53,930 (清志朗)お前 無事で! 147 00:10:54,050 --> 00:10:55,970 (吹)はい (清志朗)ケガは? 148 00:10:56,100 --> 00:10:59,810 (吹)大丈夫です あの人に 助けてもらって 149 00:11:02,180 --> 00:11:04,350 なんと お礼を言ったらいいか 150 00:11:04,480 --> 00:11:06,520 どうぞ 家へおいでください 151 00:11:06,650 --> 00:11:08,270 さあ 吹も帰ろう 152 00:11:08,400 --> 00:11:11,740 でも もう 代わりの人が 153 00:11:12,490 --> 00:11:14,490 私 戻れない… 154 00:11:14,570 --> 00:11:18,160 なら 俺の嫁として戻ってくれ 155 00:11:21,330 --> 00:11:24,460 吹が戻ったら 言おうと決めていた 156 00:11:25,540 --> 00:11:27,000 いいだろ? 157 00:11:32,970 --> 00:11:37,140 (清志朗の父) たわけたことを わしは許さんぞ! 158 00:11:40,060 --> 00:11:42,520 どうも お待たせして 159 00:11:42,980 --> 00:11:45,730 いいのか? 何か もめてたようだが 160 00:11:46,190 --> 00:11:50,110 ええ すぐに認めてくれるとは 思えませんから 161 00:11:50,730 --> 00:11:53,280 それで お話というのは? 162 00:11:53,400 --> 00:11:55,610 吹の 消えた時のことを聞きたい 163 00:11:58,370 --> 00:12:01,660 信じていただけるかどうか 164 00:12:02,660 --> 00:12:04,460 あの日 吹は― 165 00:12:05,790 --> 00:12:10,960 空から糸が垂れていると言って 宙をつかむしぐさをしたんです 166 00:12:11,710 --> 00:12:13,130 その瞬間― 167 00:12:14,260 --> 00:12:16,800 吹は ぽーんと宙に舞い上がり― 168 00:12:18,510 --> 00:12:22,470 空の高みで ふっと 消えてしまったんです 169 00:12:26,640 --> 00:12:28,770 誰も信じちゃくれませんし― 170 00:12:29,230 --> 00:12:33,860 俺自身 あれを見るまでは 吹に 見えてるらしきものは― 171 00:12:33,980 --> 00:12:36,820 幻くらいにしか 思ってなかったのですが 172 00:12:37,950 --> 00:12:39,870 なるほど 天辺草(てんぺんぐさ)か 173 00:12:40,320 --> 00:12:41,160 え… 174 00:12:42,240 --> 00:12:45,000 空のはるか高みに棲(す)む蟲だ 175 00:12:45,370 --> 00:12:46,660 蟲? 176 00:12:46,790 --> 00:12:48,000 (ギンコ)ああ 177 00:12:48,920 --> 00:12:54,130 陰(いん)より生まれ 陽と陰の境に たむろするモノどものことだ 178 00:12:54,630 --> 00:12:57,630 吹はそれを 物陰でじっとしてるものや― 179 00:12:57,760 --> 00:13:00,970 宙を漂う 小さなものたちと言った 180 00:13:01,350 --> 00:13:04,060 それが見える者は少ないが― 181 00:13:04,180 --> 00:13:07,430 この世界の隅々にまで それはいる 182 00:13:08,640 --> 00:13:10,900 あなたにも 吹と同じものが? 183 00:13:11,020 --> 00:13:14,530 (ギンコ)まっ それを 飯の種にしてる者でね 184 00:13:16,190 --> 00:13:19,200 それは うらやましいな 185 00:13:20,450 --> 00:13:23,030 吹は幸せ者だな 186 00:13:23,700 --> 00:13:25,620 だが 気をつけてやれ 187 00:13:25,740 --> 00:13:29,370 あいつはまだ その蟲の影響から 抜け切れていない 188 00:13:31,750 --> 00:13:36,260 天辺草って蟲は 普段は尾のついた 風船のような姿をして― 189 00:13:36,380 --> 00:13:39,880 光脈筋って 特別な土地の 上空を巡っている 190 00:13:40,590 --> 00:13:44,100 空中の 微小な光を帯びた蟲を 食って 生きていて― 191 00:13:44,510 --> 00:13:47,810 それが夜には 蛇行する星のようにも見える 192 00:13:48,930 --> 00:13:53,810 そのため 別名 迷い星とも言うな (清志朗)あっ… 193 00:13:53,980 --> 00:13:59,110 (吹)向こうの方に 光ったり 消えたりしながら くねくねと… 194 00:14:01,490 --> 00:14:05,280 (ギンコ)そいつがまれに 上空の餌に不足すると― 195 00:14:05,410 --> 00:14:09,910 釣り糸のごとく 地平近くまで 触手を伸ばしてくる 196 00:14:10,040 --> 00:14:12,460 それが糸のように見えるんだ 197 00:14:13,170 --> 00:14:17,090 だがそれに動物が触れると いったん 上空に巻き上げるも― 198 00:14:17,460 --> 00:14:21,880 のみ込めず 上空高くで 放り出しちまう 199 00:14:23,840 --> 00:14:27,600 それで大概は 地面に落ちて 命を落とすが― 200 00:14:27,720 --> 00:14:31,270 吹は運よく 木に引っかかって 助かったんだな 201 00:14:31,890 --> 00:14:38,030 だが のみ込まれかけたのか 吹は強く 蟲の気を帯びちまった 202 00:14:39,400 --> 00:14:41,820 あんたらが山を捜しても 見つけられなかったのは― 203 00:14:41,950 --> 00:14:43,450 そのためだ 204 00:14:43,740 --> 00:14:46,700 吹は ヒトの目に 見えないモノになっていた 205 00:14:48,240 --> 00:14:51,250 この薬でずいぶんと 回復はできたが― 206 00:14:51,710 --> 00:14:53,670 まだ完全じゃない 207 00:14:54,210 --> 00:14:59,000 手に残った糸で 空につながってる 不安定な状態のままだ 208 00:14:59,130 --> 00:15:01,210 下手をすれば ぶり返す 209 00:15:01,970 --> 00:15:05,340 吹がヒトに戻るために 必要なのは― 210 00:15:06,140 --> 00:15:08,310 この薬だけじゃなく― 211 00:15:09,060 --> 00:15:12,350 あとは自身の ヒトでいたいという思いだろう 212 00:15:14,230 --> 00:15:17,440 あんたが そう思わせてやるんだな 213 00:15:18,230 --> 00:15:21,740 まあ 余計な口出しかもしらんがね 214 00:15:23,950 --> 00:15:26,740 はい 肝に銘じます 215 00:15:28,870 --> 00:15:31,330 (清志朗) もっと ゆっくりしていかれたら… 216 00:15:31,830 --> 00:15:34,210 (ギンコ)これ以上は 長居できんもんでな 217 00:15:35,170 --> 00:15:39,290 じゃあ 近いうちに俺ら 必ず祝言 あげますから― 218 00:15:39,420 --> 00:15:41,880 その時は ぜひ いらしてください 219 00:15:42,010 --> 00:15:44,510 (ギンコ)ん~? まあ 構うなよ 220 00:15:44,880 --> 00:15:48,550 でも みんな ギンコさんの おかげだから 221 00:15:49,300 --> 00:15:50,930 分かったよ 222 00:15:51,060 --> 00:15:53,680 じゃあ また寄らせてもらうよ 223 00:15:56,940 --> 00:15:58,360 (ギンコ)しかし― 224 00:16:00,650 --> 00:16:02,940 その後 届いた文は… 225 00:16:08,370 --> 00:16:09,740 (驚く人々の声) 226 00:16:12,660 --> 00:16:17,960 (ギンコ)また 吹が姿を 消したことを 知らせるものだった 227 00:16:19,460 --> 00:16:21,670 (ギンコ)一体 どういうこった? 228 00:16:22,550 --> 00:16:24,050 (清志朗)ギンコさん 229 00:16:25,510 --> 00:16:27,380 うちの親父(おやじ)は― 230 00:16:27,510 --> 00:16:31,600 やはり なかなか俺らのことを 許しちゃくれなかった 231 00:16:32,970 --> 00:16:35,680 説得を重ねる日が続いて― 232 00:16:36,100 --> 00:16:39,560 吹は肩身の狭い思いを し続けてきた 233 00:16:41,110 --> 00:16:42,730 そうするうち― 234 00:16:43,110 --> 00:16:45,900 吹の体は 徐々に軽くなってゆき― 235 00:16:46,030 --> 00:16:49,240 風が吹けば 宙に舞うように なっていった 236 00:16:50,280 --> 00:16:55,450 そして日が経つにつれ 地表に とどまっていられなくなった 237 00:16:56,040 --> 00:16:58,790 吹 頼むから降りてこいよ 238 00:16:59,120 --> 00:17:01,840 どうすれば降りられるか 分からないの 239 00:17:02,840 --> 00:17:06,380 あと一息で親父も 折れてくれそうなのに 240 00:17:06,550 --> 00:17:08,550 こんな姿 見られたら… 241 00:17:08,680 --> 00:17:12,720 ごめんなさい 体が勝手に 浮き上がってしまうの 242 00:17:15,930 --> 00:17:17,980 いいな? じっとしてろよ 243 00:17:18,100 --> 00:17:19,690 薬も ちゃんと飲むんだぞ 244 00:17:20,350 --> 00:17:21,650 はい 245 00:17:24,570 --> 00:17:26,610 (清志朗)だが ある日… 246 00:17:28,200 --> 00:17:29,110 あ… 247 00:17:31,200 --> 00:17:33,950 吹! 吹? 248 00:17:34,870 --> 00:17:37,910 それきり どこを捜しても… 249 00:17:39,370 --> 00:17:41,040 言ったはずだぞ 250 00:17:41,170 --> 00:17:43,630 お前が つなぎとめててやるんだ と 251 00:17:44,000 --> 00:17:49,010 俺は務めたさ 周りの者に 吹を受け入れてもらおうと 252 00:17:49,420 --> 00:17:52,640 だが 吹が あんな様では… 253 00:17:53,140 --> 00:17:55,060 誰よりあんたが― 254 00:17:55,510 --> 00:17:57,930 今の吹を 受け入れられずにいるんだな 255 00:17:58,560 --> 00:17:59,480 はっ 256 00:17:59,600 --> 00:18:01,650 (ギンコ) あんたが 吹を否定したから― 257 00:18:01,770 --> 00:18:04,690 吹はヒトの姿を 保てなくなったんだ 258 00:18:05,480 --> 00:18:08,820 保て… なく… 259 00:18:09,570 --> 00:18:13,320 見えずとも 吹は今も ここにいる 260 00:18:17,910 --> 00:18:19,290 そんな バカな 261 00:18:19,790 --> 00:18:23,790 吹をこのまま 失いたくなければ 受け入れてやれ 262 00:18:24,290 --> 00:18:26,340 (清志朗)受け入れろったって… 263 00:18:27,300 --> 00:18:31,170 見も 触れも できないものを どうやって…? 264 00:18:31,760 --> 00:18:33,090 あんたしか いないんだ 265 00:18:34,300 --> 00:18:40,020 今もまだ かろうじて吹を とどまらせているものは― 266 00:18:40,600 --> 00:18:42,810 あんたの存在なんだろう 267 00:18:55,870 --> 00:18:57,580 一体…― 268 00:18:58,450 --> 00:19:00,750 どうすりゃいいってんだ 269 00:19:02,790 --> 00:19:04,210 吹…? 270 00:19:05,540 --> 00:19:07,250 (吹)セイジロ坊ちゃんは― 271 00:19:07,380 --> 00:19:10,340 どうして 星ばかり 見てるんですか? 272 00:19:11,670 --> 00:19:14,550 うーん なんだろな 273 00:19:15,390 --> 00:19:17,220 昼間 やなことあっても― 274 00:19:17,350 --> 00:19:20,470 星はいつでも おんなじように現れるだろ? 275 00:19:21,020 --> 00:19:23,060 そういうの見てると― 276 00:19:23,560 --> 00:19:26,400 不思議と落ち着くんだよな 277 00:19:26,900 --> 00:19:32,690 私も 嬢ちゃん 泣きやんでくれなくて 悲しい時― 278 00:19:32,820 --> 00:19:35,570 星を数えて紛らわすんです 279 00:19:36,620 --> 00:19:42,500 だから 明るくなってくると なんだか さみしくなる 280 00:19:43,290 --> 00:19:45,830 だんだん数が減っていって― 281 00:19:46,370 --> 00:19:49,340 気がつくと 1つもいなくなっている 282 00:19:51,840 --> 00:19:56,300 みんな 昼間はどこへ 行ってしまうんだろか 283 00:19:57,140 --> 00:20:01,560 バカだな 吹 昼間だって星は ほんとは空にあんだぞ 284 00:20:02,640 --> 00:20:03,770 ほんとに? 285 00:20:04,230 --> 00:20:08,610 本当だよ 日の光が強いから 見えなくなるだけで― 286 00:20:08,730 --> 00:20:11,520 本当はちゃんと 空の上にあるんだ 287 00:20:15,700 --> 00:20:18,740 (吹)どこにも 行かないんだ 288 00:20:19,570 --> 00:20:21,450 見えなくても― 289 00:20:24,500 --> 00:20:26,960 ずっと空にいるんだ 290 00:20:34,090 --> 00:20:35,510 (清志朗)吹… 291 00:20:41,510 --> 00:20:45,810 (ギンコ)それは 実に奇妙な 光景だったと 人々は言った 292 00:20:47,020 --> 00:20:49,810 急きょ 執り行われた その祝言には― 293 00:20:50,190 --> 00:20:53,530 花嫁の姿はなく それでもなお… 294 00:20:54,320 --> 00:20:55,900 (清志朗)さあ吹 飲んでくれ 295 00:20:55,900 --> 00:20:57,990 (ギンコ)花婿は まるで 花嫁がいるかのごとくに振る舞った (清志朗)さあ吹 飲んでくれ 296 00:20:57,990 --> 00:20:59,530 (ギンコ)花婿は まるで 花嫁がいるかのごとくに振る舞った 297 00:20:59,660 --> 00:21:01,990 いや こうかな 298 00:21:02,450 --> 00:21:04,830 (ギンコ) そんな姿を見て 人々は― 299 00:21:04,950 --> 00:21:09,330 婿の方まで おかしくなって しまったのだと ささやいた 300 00:21:14,300 --> 00:21:15,880 やがて― 301 00:21:16,800 --> 00:21:21,590 男はその里の外れに 1人 居を構えたという 302 00:21:24,350 --> 00:21:28,440 相も変わらず いない嫁に 語りかける男の姿に― 303 00:21:29,480 --> 00:21:34,070 里の者はやがて 近寄らなくなったという 304 00:21:41,410 --> 00:21:44,870 けれど やがて… 305 00:21:45,370 --> 00:21:47,200 (吹)セイジロさん 306 00:21:49,710 --> 00:21:52,710 (村人1)あれ? あれは… ほれ 307 00:21:53,170 --> 00:21:57,090 (村人2) 吹だよ 一体 いつ戻ったのかね 308 00:21:59,260 --> 00:22:03,720 (ギンコ)人々は 吹の姿を 見るようになり― 309 00:22:05,810 --> 00:22:10,350 そののちは 吹の姿を消すクセは― 310 00:22:10,480 --> 00:22:13,940 もう二度と 出なかったという 311 00:22:17,980 --> 00:22:23,990 ♪~ 312 00:23:26,850 --> 00:23:32,850 ~♪