1 00:00:01,126 --> 00:00:07,132 ♪~ 2 00:01:26,850 --> 00:01:32,850 ~♪ 3 00:01:36,810 --> 00:01:41,400 (あき)嫁入りの時 北の森を通ってまいりました 4 00:01:41,990 --> 00:01:45,990 恐らく その時に ついたのだと思います 5 00:01:48,490 --> 00:01:51,790 いつの間にか ぽつりと― 6 00:01:51,910 --> 00:01:56,420 かずき綿(わた)に緑色の染みが 出来ていました 7 00:01:57,130 --> 00:01:59,750 (あき)気がついたのは 婚礼のあと… 8 00:02:00,000 --> 00:02:03,340 ひどく まがまがしいもののように 思えました 9 00:02:05,260 --> 00:02:09,510 その翌年 最初の子を成しました 10 00:02:10,100 --> 00:02:14,230 この長男 ワタヒコです 11 00:02:15,560 --> 00:02:18,770 斑(はん)が出始めてから 衰える一方で― 12 00:02:18,900 --> 00:02:21,780 見るたびに あの染みを思い出すのです 13 00:02:24,030 --> 00:02:27,530 (ギンコ)もし見当違いでしたら お許しを 14 00:02:28,240 --> 00:02:30,450 この子 生まれた時― 15 00:02:30,580 --> 00:02:32,950 ヒトの姿をしていましたか? 16 00:02:33,250 --> 00:02:34,330 ハッ… 17 00:02:38,330 --> 00:02:39,540 いいえ 18 00:02:40,880 --> 00:02:45,930 獣の姿ですら… ありませんでした 19 00:02:55,100 --> 00:02:56,980 (ギンコ) あれから三月(みつき)足らず 20 00:02:57,940 --> 00:03:00,520 再び その家に招かれるとは… 21 00:03:06,240 --> 00:03:07,070 (ギンコ)ん? 22 00:03:10,120 --> 00:03:11,410 (ヤスケ)ギンコ! 23 00:03:11,950 --> 00:03:13,200 (ヤスケ)よく来てくれた 24 00:03:13,330 --> 00:03:15,290 (ギンコ)文(ふみ)は読んだ まだ間に合うか? 25 00:03:15,410 --> 00:03:17,580 (ヤスケ)ああ 早く家へ 26 00:03:19,790 --> 00:03:21,090 すまないな 27 00:03:21,210 --> 00:03:25,550 お前の言ったとおりに するつもりでいたんだが… 28 00:03:25,840 --> 00:03:27,340 いや それはいい 29 00:03:27,470 --> 00:03:29,010 よく知らせてくれた 30 00:03:29,130 --> 00:03:30,180 だが… 31 00:03:30,470 --> 00:03:33,310 正直 ここまで早くなるとはな 32 00:03:33,720 --> 00:03:34,560 (ヤスケ)ああ 33 00:03:35,220 --> 00:03:38,390 恐ろしく成長が早くなっている 34 00:03:41,190 --> 00:03:43,730 (ギンコ) この子 生まれた時― 35 00:03:43,860 --> 00:03:46,240 ヒトの姿をしていましたか? 36 00:03:47,610 --> 00:03:49,820 あき 大丈夫か? 37 00:03:50,660 --> 00:03:52,320 ここからは俺が… 38 00:03:53,910 --> 00:03:55,830 そう あれは… 39 00:03:56,500 --> 00:03:59,830 獣の姿ですら… なく… 40 00:04:01,420 --> 00:04:03,040 (産婆の叫び声) 41 00:04:03,460 --> 00:04:04,380 (産婆)あ… ああ… 42 00:04:08,130 --> 00:04:09,930 (ヤスケ)産声も上げぬ― 43 00:04:10,840 --> 00:04:14,600 緑色の えたいの知れぬ塊でした 44 00:04:15,970 --> 00:04:17,640 (あき)あ… (ヤスケ)あき! 45 00:04:17,770 --> 00:04:18,600 (産婆)逃げるぞい! 46 00:04:21,230 --> 00:04:22,060 (ヤスケ)くそっ 47 00:04:28,740 --> 00:04:32,700 (ヤスケ)それは あっという間に 床下に入り込み― 48 00:04:32,820 --> 00:04:34,700 姿を消した 49 00:04:35,740 --> 00:04:39,410 妻は強く子どもを 欲していたが― 50 00:04:39,960 --> 00:04:42,290 それも もう無理に思われ― 51 00:04:43,130 --> 00:04:45,460 ふさぎ込む日々が続いた 52 00:04:48,130 --> 00:04:51,590 そして1年が過ぎたころ… 53 00:04:52,510 --> 00:04:55,100 (物音) 54 00:04:55,260 --> 00:04:58,720 なんの音だ 床下か…? 55 00:05:01,310 --> 00:05:02,140 ハッ! 56 00:05:02,770 --> 00:05:04,650 (ひっかく音) 57 00:05:05,020 --> 00:05:08,480 (ヤスケ)誰かが 捨てていったのか… 58 00:05:09,070 --> 00:05:12,570 (あき)違うわ あの時の子よ 59 00:05:13,110 --> 00:05:14,950 私たちの子 60 00:05:16,120 --> 00:05:18,410 (ヤスケ) あきに よく似ているな 61 00:05:19,080 --> 00:05:22,750 (あき)あれから ちゃんと 人の姿に育ったのだわ 62 00:05:23,710 --> 00:05:27,340 (ヤスケ) 俺は内心 恐ろしかったが― 63 00:05:27,880 --> 00:05:30,210 そう思い込むことにした 64 00:05:31,880 --> 00:05:35,720 その子 ワタヒコの成長は 早かった 65 00:05:37,100 --> 00:05:40,520 新鮮な小魚や木の実を 好んで食べ― 66 00:05:41,230 --> 00:05:44,560 半年余りで3歳児ほどにもなった 67 00:05:45,310 --> 00:05:48,940 ただ 頭の中は赤子のまま 68 00:05:49,690 --> 00:05:53,820 表情はなく 言葉を発することもなかった 69 00:05:54,570 --> 00:05:59,080 それでも ますます 自分たちに似てくる面ざしに― 70 00:05:59,620 --> 00:06:02,160 次第に情も移っていった 71 00:06:04,290 --> 00:06:06,380 そんな ある晩だった 72 00:06:07,250 --> 00:06:11,300 (猫の鳴き声) 73 00:06:11,460 --> 00:06:14,170 (ヤスケ)猫か… うるさいな 74 00:06:14,550 --> 00:06:16,430 (猫の鳴き声) 75 00:06:16,550 --> 00:06:18,720 (ヤスケ)シッ… シッ 76 00:06:19,470 --> 00:06:20,510 ハッ! 77 00:06:20,930 --> 00:06:25,190 (ヤスケ)また赤子が… 同じように床下にいた 78 00:06:26,480 --> 00:06:29,980 ワタヒコと 何から何までそっくりよ 79 00:06:30,110 --> 00:06:32,530 同じように育てなきゃね 80 00:06:32,900 --> 00:06:35,990 もしかして まだ増えるかしら 81 00:06:36,160 --> 00:06:38,530 恐ろしいこと言うなよ 82 00:06:38,990 --> 00:06:40,740 (ヤスケ)予感は的中した 83 00:06:41,580 --> 00:06:43,620 ワタヒコは半年ごとに― 84 00:06:43,750 --> 00:06:46,210 まるで湧くように増えていった 85 00:06:47,120 --> 00:06:51,210 しかし 何度も床下を 掘り返してみたが― 86 00:06:51,420 --> 00:06:54,470 何も変わったものは 見つからなかった 87 00:06:55,340 --> 00:06:57,380 (ヤスケ) そして 今年に入って― 88 00:06:57,510 --> 00:07:01,260 少しずつ長男の様子が おかしくなっていったんです 89 00:07:01,890 --> 00:07:04,640 1日の大半を眠り続け― 90 00:07:05,140 --> 00:07:07,520 緑の発疹が増えていく 91 00:07:08,190 --> 00:07:10,650 医者には さじを投げられました 92 00:07:11,690 --> 00:07:15,570 それで あなたのような方が いると聞き… 93 00:07:16,200 --> 00:07:17,530 (ギンコ)残念ながら― 94 00:07:18,200 --> 00:07:21,740 我々 蟲師にも この子を救う手はありません 95 00:07:21,870 --> 00:07:22,990 (あき・ヤスケ)えっ! 96 00:07:23,120 --> 00:07:25,700 (ギンコ)これが寿命なのです 97 00:07:27,080 --> 00:07:29,540 綿吐(わたはき)という蟲がいます 98 00:07:29,750 --> 00:07:33,000 緑色の綿のような姿で 空中を漂い― 99 00:07:33,670 --> 00:07:37,470 身重のヒトの体内に入り 卵(らん)に寄生します 100 00:07:37,970 --> 00:07:40,300 生まれてくる時は ヘドロ状だが― 101 00:07:40,430 --> 00:07:43,970 素早い動きで 床下や天井裏に逃げ込み― 102 00:07:44,180 --> 00:07:45,560 1年がたったころ― 103 00:07:45,680 --> 00:07:49,980 赤子の姿の“人茸(ひとたけ)”を ヒトの親元へ送り込む 104 00:07:50,600 --> 00:07:54,610 それからの増え方といい 記録と寸分たがわない 105 00:07:55,030 --> 00:07:56,530 ま しかし― 106 00:07:56,650 --> 00:07:59,320 念のため 床下を見てきてもいいか? 107 00:08:01,320 --> 00:08:02,700 (ギンコ)いや 明かりはいい 108 00:08:05,080 --> 00:08:06,250 (ギンコ)いるな… 109 00:08:06,370 --> 00:08:09,410 しかも 相当でかく育ってる 110 00:08:11,290 --> 00:08:13,130 間違いない 綿吐だ 111 00:08:13,250 --> 00:08:16,300 (ヤスケ)そんな… 何も いないじゃないか 112 00:08:16,550 --> 00:08:18,510 この土を日の下でよく見ろ 113 00:08:21,130 --> 00:08:22,800 (ヤスケ)あ… ひいっ! 114 00:08:23,760 --> 00:08:25,260 (ギンコ)人茸の体は― 115 00:08:25,390 --> 00:08:29,140 この蟲の本体と 糸のようなものでつながってる 116 00:08:30,520 --> 00:08:34,400 あれらは 本体に養分を送るための― 117 00:08:34,520 --> 00:08:36,570 蟲の一部にすぎないんだよ 118 00:08:37,440 --> 00:08:39,990 そんな… バカな 119 00:08:41,320 --> 00:08:44,320 (ギンコ)あの子は じきに役目を終え 壊死(えし)します 120 00:08:44,870 --> 00:08:49,160 そして その死に際に 大量の“たね”を吐きます 121 00:08:49,910 --> 00:08:52,790 その前に 殺さなければなりません 122 00:08:53,040 --> 00:08:54,790 (ヤスケ)な… (あき)何言ってるの? 123 00:08:55,170 --> 00:08:57,920 なんのために あなたを呼んだと 思ってるのよ 124 00:08:58,050 --> 00:09:02,010 あの子を その蟲とやらから 救ってやってちょうだいよ 125 00:09:03,550 --> 00:09:05,970 救える子どもなど もういません 126 00:09:06,640 --> 00:09:10,600 あの子らは あなたたちの 子どもの皮をかぶった― 127 00:09:10,730 --> 00:09:12,060 蟲なんです 128 00:09:12,770 --> 00:09:14,440 そして あれこそが― 129 00:09:14,560 --> 00:09:17,520 生まれてくるはずだった あなた方の子どもを― 130 00:09:17,650 --> 00:09:19,570 殺したモノなんです 131 00:09:20,280 --> 00:09:23,070 どうか ご理解ください 132 00:09:31,200 --> 00:09:32,250 (ギンコ)悪いな 133 00:09:32,620 --> 00:09:35,580 恨んで… いいのにな 134 00:09:43,720 --> 00:09:46,800 よく 嫁さん 説得してくれたな 135 00:09:48,180 --> 00:09:51,020 (ヤスケ) まだ口も利いてくれんけどな 136 00:09:52,180 --> 00:09:54,810 3年以上も育ててきたんだ 137 00:09:54,940 --> 00:09:56,440 無理もない… 138 00:09:58,070 --> 00:10:02,030 ただ どうしても ほかの子らは手元にと 139 00:10:02,320 --> 00:10:05,030 俺からも… どうか見逃してやってくれ 140 00:10:05,160 --> 00:10:08,530 あの子ら 発症するまでは なんの害もないんだ 141 00:10:08,950 --> 00:10:12,750 その代わり 次男も 次に生まれてくる子どもも― 142 00:10:12,870 --> 00:10:17,790 ちゃんと俺が たねを吐く前に 殺してみせるから 143 00:10:21,510 --> 00:10:25,760 綿吐の寿命は10年から30年と 個体差がある 144 00:10:26,090 --> 00:10:28,930 あと何年 この状態が続くのかも― 145 00:10:29,600 --> 00:10:34,310 一体 あんたが何人の子を 殺さねばならんのかも分からん 146 00:10:35,140 --> 00:10:36,060 それでもか? 147 00:10:36,810 --> 00:10:39,690 ああ 約束する 148 00:10:43,320 --> 00:10:46,780 あんたは あれを恐ろしいと 言っていたな 149 00:10:47,570 --> 00:10:49,570 それでも育てていきたいと 言うのか? 150 00:10:51,490 --> 00:10:55,960 俺は かみさんを 悲しませたくないだけだ 151 00:10:56,540 --> 00:10:57,670 あきは― 152 00:10:57,790 --> 00:11:01,290 残った4人もワタヒコと呼んで かわいがっている 153 00:11:02,380 --> 00:11:04,800 あの子らを すべて失えば― 154 00:11:05,170 --> 00:11:07,510 どうなってしまうか分からん 155 00:11:08,640 --> 00:11:11,640 あれは昔 一度― 156 00:11:11,760 --> 00:11:15,390 山向こうの町の 大店(おおだな)の家に嫁いでいるんだ 157 00:11:16,390 --> 00:11:20,310 そこで 嘱望されてた 跡取りを生んだが― 158 00:11:20,610 --> 00:11:22,770 1歳を数える前に― 159 00:11:23,190 --> 00:11:26,110 ささいなことで 死なせてしまったらしい 160 00:11:27,200 --> 00:11:29,320 離縁も それが原因だ 161 00:11:30,410 --> 00:11:34,950 どうして… どうして こんなむごい… 162 00:11:36,040 --> 00:11:37,250 フー… 163 00:11:38,420 --> 00:11:41,790 これまでは 綿吐の子と分かれば― 164 00:11:41,920 --> 00:11:44,420 直ちに 全員を殺してきたらしい 165 00:11:45,260 --> 00:11:48,380 そうすることで 根まで枯らしてきたんだよ 166 00:11:49,090 --> 00:11:51,470 いずれは危険となる 2つ目以降を― 167 00:11:51,600 --> 00:11:53,220 生かしておいた記録はない 168 00:11:54,560 --> 00:11:58,440 それらが この先 なんらかの 変化をしないとは言い切れん 169 00:11:58,560 --> 00:11:59,640 し… しかし… 170 00:11:59,770 --> 00:12:00,940 (ギンコ)とはいえ― 171 00:12:02,150 --> 00:12:03,690 しないかもしれん 172 00:12:04,780 --> 00:12:05,610 え… 173 00:12:05,860 --> 00:12:09,070 “分からんものも 皆殺し”ってのは― 174 00:12:09,200 --> 00:12:10,860 大ざっぱで好きじゃない 175 00:12:11,620 --> 00:12:14,410 訳あって ここで ずっと監視はできんが― 176 00:12:14,530 --> 00:12:17,250 三月のうちには また様子を見に来る 177 00:12:18,000 --> 00:12:20,080 何かあったら そこへ文をくれ 178 00:12:21,290 --> 00:12:24,460 ああ! 恩に着る 179 00:12:26,710 --> 00:12:30,930 (ギンコ)そして文は 三月足らずで届けられた 180 00:12:32,720 --> 00:12:36,220 (ワタヒコ)来た… 来たよ あいつだよ 181 00:12:36,680 --> 00:12:37,680 殺される 182 00:12:38,020 --> 00:12:39,140 大丈夫だよ 183 00:12:39,730 --> 00:12:41,100 心配ないよ 184 00:12:42,350 --> 00:12:43,900 (五男)うああ… 185 00:12:44,110 --> 00:12:45,610 (あき)ん? ワタヒコ…? 186 00:12:46,940 --> 00:12:48,320 (五男)あいつが来るよ 187 00:12:56,230 --> 00:12:57,390 (ヤスケ)ああ 188 00:12:57,980 --> 00:13:02,070 かみさんなら どうにか納得してくれたようだ 189 00:13:02,690 --> 00:13:05,150 異形のものを育てているんだ 190 00:13:05,440 --> 00:13:07,740 この おきてだけは守らねば 191 00:13:08,660 --> 00:13:11,450 (ヤスケ)あき ギンコが来てくれたぞ 192 00:13:15,870 --> 00:13:17,870 (あき)ようこそ おいでくださいました 193 00:13:19,210 --> 00:13:20,040 いや… 194 00:13:20,420 --> 00:13:22,090 ギンコ こっちだ 195 00:13:22,210 --> 00:13:23,250 (ギンコ)ああ 196 00:13:25,380 --> 00:13:26,300 (ぶつかる音) 197 00:13:31,470 --> 00:13:33,100 (ギンコ)い… てっ 198 00:13:33,350 --> 00:13:34,180 (ヤスケ)ギンコ? 199 00:13:36,140 --> 00:13:37,310 ギンコ! 200 00:13:44,320 --> 00:13:45,150 (ギンコ)ん… 201 00:13:45,280 --> 00:13:46,860 (ヤスケ)あっ 気がついたか 202 00:13:46,990 --> 00:13:48,110 (ギンコ)あたたたた… 203 00:13:48,240 --> 00:13:49,700 (ヤスケ) 横になってた方がいい 204 00:13:50,490 --> 00:13:53,280 (ギンコ)あ~… 帰りてぇ… 205 00:13:53,410 --> 00:13:56,040 (ヤスケ) 本当に わびのしようもない 206 00:13:56,370 --> 00:14:00,710 あいつは 事が済むまで 寝間から出さんようにするから 207 00:14:01,580 --> 00:14:03,290 ああ そうしてくれ 208 00:14:05,420 --> 00:14:09,090 分かってくれたと思っていた… 209 00:14:11,510 --> 00:14:14,850 何やら いろいろと 事情が変わったようだな 210 00:14:16,100 --> 00:14:20,390 ああ すぐ話すつもりで いたんだが― 211 00:14:20,600 --> 00:14:22,060 あの子らな… 212 00:14:22,190 --> 00:14:25,610 ただ成長が 早まっただけじゃないんだ 213 00:14:26,360 --> 00:14:27,360 ある時― 214 00:14:27,480 --> 00:14:30,780 次男にしか教えたことのない クリの皮むきを― 215 00:14:30,900 --> 00:14:32,620 四男がやっていた 216 00:14:33,160 --> 00:14:35,910 次男は やっとのことで 覚えたのに― 217 00:14:36,040 --> 00:14:38,250 見よう見まねで覚えたのか― 218 00:14:38,370 --> 00:14:41,920 少しずつ 知恵がついているようだった 219 00:14:43,000 --> 00:14:44,170 (次男)うー うー… 220 00:14:44,290 --> 00:14:46,420 あら 雨に濡(ぬ)れたのね 221 00:14:46,550 --> 00:14:48,630 すぐ 着替え出すからね 222 00:14:50,800 --> 00:14:52,180 (三男)おとう 223 00:14:52,300 --> 00:14:53,140 (ヤスケ)ん? 224 00:14:53,760 --> 00:14:56,260 おとう 腹減った 225 00:14:57,010 --> 00:15:00,270 あき こいつ しゃべったぞ 226 00:15:00,890 --> 00:15:04,270 そうかそうか 今すぐ やるからな 227 00:15:05,440 --> 00:15:10,740 (ヤスケ)そんな中 次男が あの症状を現し始めた 228 00:15:12,150 --> 00:15:14,160 (あき)まだ早いわよ 229 00:15:14,280 --> 00:15:18,660 上の子が こうなったのは つい この間じゃない… 230 00:15:20,200 --> 00:15:21,540 やらねば 231 00:15:21,870 --> 00:15:25,040 こいつは俺たちの務めだ 232 00:15:27,380 --> 00:15:28,300 (次男)おとう 233 00:15:28,420 --> 00:15:30,460 死ぬの怖い (ヤスケ)ハッ… 234 00:15:30,880 --> 00:15:34,300 殺さないで 助けて 235 00:15:34,970 --> 00:15:36,050 まだ生きたい 236 00:15:37,680 --> 00:15:38,720 ハァ… 237 00:15:39,930 --> 00:15:44,480 (ヤスケ)あれは もう 人のようなものになってしまった 238 00:15:44,850 --> 00:15:47,480 たとえ我が子の敵(かたき)だろうと― 239 00:15:47,900 --> 00:15:50,440 俺たちには… もう… 240 00:15:50,650 --> 00:15:52,240 (ギンコ)なんてことだ 241 00:15:52,900 --> 00:15:55,030 思考力を持ちやがった 242 00:15:55,530 --> 00:15:59,490 いや これまでも 機能はあったのだ 243 00:16:00,450 --> 00:16:03,660 それが長男の死で 危機を察したからか… 244 00:16:04,460 --> 00:16:08,960 それも 1人が得た情報が 全員に伝播(でんぱ)している 245 00:16:10,130 --> 00:16:13,550 一人一人は根元でつながった 全体の一部 246 00:16:15,050 --> 00:16:18,430 5人分の情報を 皆が いちどきに得る 247 00:16:19,050 --> 00:16:20,720 歩みは早い 248 00:16:21,430 --> 00:16:24,520 だが “人のようなもの”…? 249 00:16:25,890 --> 00:16:26,980 否(いな)! 250 00:16:27,600 --> 00:16:29,610 かの中に棲(す)むは― 251 00:16:29,820 --> 00:16:32,860 ただ思考するばかりの くさびら 252 00:16:35,030 --> 00:16:36,490 (ワタヒコ)失敗した… 253 00:16:36,780 --> 00:16:39,950 殺される 殺される… 254 00:16:40,740 --> 00:16:42,240 たねを守らなきゃ 255 00:16:42,700 --> 00:16:45,250 何か方法があった気がする 256 00:16:45,790 --> 00:16:49,840 忘れてしまった 忘れてしまった… 257 00:16:50,210 --> 00:16:53,380 言葉を覚えて 忘れてしまった… 258 00:16:54,010 --> 00:16:57,930 たねを… たねを守る方法… 259 00:17:15,030 --> 00:17:16,860 (ヤスケ)どうだ 具合は? 260 00:17:17,110 --> 00:17:21,870 (ギンコ)ああ… まあ なんとか起きてられるよ 261 00:17:21,990 --> 00:17:23,870 そうか よかった 262 00:17:24,160 --> 00:17:26,790 次男は奥の間だな? 263 00:17:27,710 --> 00:17:28,790 (ヤスケ)ああ 264 00:17:29,000 --> 00:17:30,250 行ってくる 265 00:17:31,000 --> 00:17:35,420 その後 根を払い 残りの子らを連れていく 266 00:17:36,220 --> 00:17:40,970 もう あれらをこれ以上 あんたたちの元に置いてはおけん 267 00:17:47,060 --> 00:17:48,770 (戸を開ける音) 268 00:17:52,690 --> 00:17:55,900 助けて 殺さないで 269 00:17:56,280 --> 00:17:57,990 死にたくない 270 00:17:58,110 --> 00:17:58,950 むだだ 271 00:17:59,280 --> 00:18:01,200 どうして殺すの? 272 00:18:01,700 --> 00:18:04,200 お前らが人の子を食うからだ 273 00:18:04,580 --> 00:18:06,410 僕らは悪くない 274 00:18:06,950 --> 00:18:08,660 俺らも悪かない 275 00:18:09,160 --> 00:18:12,170 だが 俺たちの方が強い 276 00:18:12,420 --> 00:18:15,380 だから お前は たねを残せずに死ぬんだ 277 00:18:19,130 --> 00:18:20,680 そうか 278 00:18:20,800 --> 00:18:22,470 それじゃあ… 279 00:18:22,890 --> 00:18:24,600 しかたがない 280 00:18:25,390 --> 00:18:28,930 やろう やろう… 281 00:18:31,270 --> 00:18:32,100 (ギンコ)ん? 282 00:18:33,940 --> 00:18:34,770 あ…! 283 00:18:39,240 --> 00:18:42,490 あいつら 床下の根もろとも 焼くつもりか 284 00:18:42,740 --> 00:18:43,660 うっ! 285 00:18:44,580 --> 00:18:45,620 ああ…! 286 00:18:47,410 --> 00:18:49,540 そうか もしやお前ら… 287 00:18:50,040 --> 00:18:53,210 お前の持っていた 巻物に書いてあった 288 00:18:53,460 --> 00:18:56,840 本来なら 無意識に できるはずなんだがな 289 00:18:57,710 --> 00:19:00,050 たねを守るには こうするしかない 290 00:19:00,970 --> 00:19:02,890 我らの勝ちだ 291 00:19:05,970 --> 00:19:06,810 (ヤスケ)ギンコ! 292 00:19:06,930 --> 00:19:08,810 (ギンコ)来るな 表へ出ろ 293 00:19:08,930 --> 00:19:11,770 ワタヒコは… あの子たちは どこ? 294 00:19:11,890 --> 00:19:13,310 (ギンコ)火をつけたのは あいつらだ 295 00:19:13,690 --> 00:19:14,690 (あき)どきなさいよ! 296 00:19:14,810 --> 00:19:16,940 たねのためなら なんでもするんだ 297 00:19:17,070 --> 00:19:18,650 あいつらは そういう蟲なんだ 298 00:19:18,900 --> 00:19:20,610 あれは もう私の子よ! 299 00:19:21,150 --> 00:19:22,910 (ギンコ)なっ… (ヤスケ)あき! 300 00:19:23,990 --> 00:19:25,320 う… うう… 301 00:19:25,450 --> 00:19:27,030 (あき)ワタヒコ… 302 00:19:27,530 --> 00:19:29,080 ワタヒコ! 303 00:19:44,010 --> 00:19:45,260 ああ… 304 00:19:53,520 --> 00:19:54,980 (あき)ワタヒコ… 305 00:19:57,270 --> 00:19:58,940 ワタヒコ… 306 00:20:12,120 --> 00:20:14,370 (ギンコ) 根は完全に消えている 307 00:20:18,880 --> 00:20:19,840 ん… 308 00:20:20,380 --> 00:20:21,210 (あきの泣き声) 309 00:20:21,210 --> 00:20:24,590 (ギンコ)綿吐は 災害などの危機に陥ると― (あきの泣き声) 310 00:20:24,590 --> 00:20:24,720 (あきの泣き声) 311 00:20:24,720 --> 00:20:26,970 人茸を根から切り離し― (あきの泣き声) 312 00:20:27,140 --> 00:20:29,640 たねだけでも よそへ逃がそうとする 313 00:20:30,430 --> 00:20:34,940 人茸は姿を変えて 長い眠りに入る 314 00:20:35,060 --> 00:20:36,230 (あき)ああ… 315 00:20:39,770 --> 00:20:42,400 こ… れが…? 316 00:20:43,990 --> 00:20:46,450 再生が いつになるかは 分からない 317 00:20:47,530 --> 00:20:49,620 あんたたちの死んだあとかも しれない 318 00:20:50,410 --> 00:20:54,330 いずれにせよ 時が来るまで あんたらに預けとく 319 00:20:54,450 --> 00:20:57,670 (あきの泣き声) 320 00:20:57,790 --> 00:20:59,630 分かった 321 00:21:00,090 --> 00:21:02,840 肌身離さず持っているよ… 322 00:21:02,960 --> 00:21:07,430 (あきの泣き声) 323 00:21:13,850 --> 00:21:15,770 (ワタヒコ)何を渡したんだ? 324 00:21:15,890 --> 00:21:17,310 (ギンコ)鉱物だよ 325 00:21:17,520 --> 00:21:21,570 生活の糧の一部だったのに… 丸損だ 326 00:21:22,900 --> 00:21:24,820 (ワタヒコ) なぜ そんなことを? 327 00:21:26,240 --> 00:21:27,950 不可解な生き物だ 328 00:21:28,070 --> 00:21:29,780 お前が言うか 329 00:21:30,950 --> 00:21:33,620 お前… 眠りに入るんじゃねえのかよ 330 00:21:34,490 --> 00:21:36,960 これまでの記録じゃ そうなってんぞ 331 00:21:37,710 --> 00:21:40,170 知らん 眠くはない 332 00:21:40,630 --> 00:21:42,170 お前こそ― 333 00:21:43,050 --> 00:21:45,880 なぜ 私を 今のうちに殺さない? 334 00:21:47,510 --> 00:21:49,680 まだ寿命があるからだ 335 00:21:52,640 --> 00:21:54,350 (ワタヒコ)不可解な生き物だ 336 00:21:54,470 --> 00:21:57,390 (ギンコ)いいから… お前 もう寝ろよ 337 00:21:57,520 --> 00:22:03,520 ♪~ 338 00:23:26,480 --> 00:23:32,490 ~♪