1 00:05:20,294 --> 00:05:22,294 あれか 2 00:05:28,569 --> 00:05:31,205 両手で耳を ふさいでいたら 3 00:05:31,205 --> 00:05:35,505 額が盛りあがって 角が4本 生えてきた 4 00:05:38,279 --> 00:05:42,216 雪の降る夜 音が消えたら 5 00:05:42,216 --> 00:05:46,954 誰かと話すか 耳をふさげ 6 00:05:46,954 --> 00:05:49,557 さもなきゃ耳が 7 00:05:49,557 --> 00:05:51,557 食われるぞ 8 00:06:00,935 --> 00:06:04,438 ようこそ おいでくださいました 9 00:06:04,438 --> 00:06:08,876 蟲師のギンコさんでしたね 10 00:06:08,876 --> 00:06:13,114 ええ 村長の白沢でございます 11 00:06:13,114 --> 00:06:17,752 村を代表してお呼びいたしました 12 00:06:17,752 --> 00:06:21,222 ここは ご覧のとおり深い山の底 13 00:06:21,222 --> 00:06:25,559 風の通らぬ静かな里でございます 14 00:06:25,559 --> 00:06:28,062 特に このような雪の晩には 15 00:06:28,062 --> 00:06:30,464 物音ひとつしなくなり 16 00:06:30,464 --> 00:06:35,069 話し声すら消えてしまうことも あるといいます 17 00:06:35,069 --> 00:06:37,004 そして そういう時 18 00:06:37,004 --> 00:06:40,608 耳を病んでしまう者が出るのです 19 00:06:40,608 --> 00:06:43,411 それは両耳ですか? 20 00:06:43,411 --> 00:06:46,313 ほとんどの者が片耳です 21 00:06:46,313 --> 00:06:50,317 ふもとの町の お医者方は 首をひねるばかりで 22 00:06:50,317 --> 00:06:55,417 もしや異形の影響やもしれぬと 思いいたったのです 23 00:07:05,666 --> 00:07:09,403 なるほど この粘液 24 00:07:09,403 --> 00:07:12,940 原因は蟲ですな 25 00:07:12,940 --> 00:07:15,640 はあ 「うん」といいます 26 00:07:17,778 --> 00:07:20,314 これが音を食ってるんです 27 00:07:20,314 --> 00:07:24,085 普通 森の中に生息する蟲ですが 28 00:07:24,085 --> 00:07:27,455 雪は音を吸収する 29 00:07:27,455 --> 00:07:30,755 だから音を求めて 里へ下りてきたんでしょう 30 00:07:37,465 --> 00:07:40,935 あー ここにいました 31 00:07:40,935 --> 00:07:43,771 かなり大きな群れが 巣くってますね 32 00:07:43,771 --> 00:07:46,671 これじゃ音を 食いつくしてしまうわけだ 33 00:07:51,612 --> 00:07:56,784 そうなると群れを離れて 獣に寄生を し始める 34 00:07:56,784 --> 00:07:59,284 一見 かたつむりのようだ 35 00:08:03,257 --> 00:08:07,128 消えた 移動したんですな 36 00:08:07,128 --> 00:08:11,966 耳の中に かたつむり そっくりな 器官があるのを ご存じですか? 37 00:08:11,966 --> 00:08:16,604 飢えたうんは自らの殻を捨て そこに寄生し 38 00:08:16,604 --> 00:08:20,040 入ってくる音を すべて食ってしまうんです 39 00:08:20,040 --> 00:08:23,010 ですが器官が壊されたわけでは ありません 40 00:08:23,010 --> 00:08:25,846 あの 41 00:08:25,846 --> 00:08:28,582 お湯って これぐらいで 42 00:08:28,582 --> 00:08:30,582 どうも 43 00:08:34,989 --> 00:08:38,289 これを耳に流し込めば 44 00:08:51,205 --> 00:08:54,408 これ このとおり 45 00:08:54,408 --> 00:08:58,112 辛っ 何だ これ 塩ですよ 46 00:08:58,112 --> 00:09:02,950 塩?あっ 聞こえるぞ 47 00:09:02,950 --> 00:09:06,654 あとは それを屋根裏中に 吹きつけておけば 48 00:09:06,654 --> 00:09:08,654 問題ないでしょう 49 00:09:10,925 --> 00:09:12,860 驚きました 50 00:09:12,860 --> 00:09:16,360 蟲師の仕事というのを 初めて見ました 51 00:09:18,399 --> 00:09:20,334 あとは1人だけ 52 00:09:20,334 --> 00:09:23,671 両耳を病んでしまった者が 53 00:09:23,671 --> 00:09:27,371 私の孫なんですが 54 00:09:30,544 --> 00:09:34,648 他の者とは明らかに様子が違う 55 00:09:34,648 --> 00:09:40,648 孫のさまは村の者には一切 漏らさないでいただけますか 56 00:09:59,607 --> 00:10:01,542 うるさい 57 00:10:01,542 --> 00:10:03,542 静かにしろっ 58 00:10:11,785 --> 00:10:17,057 真火です 前の冬から このようなことに 59 00:10:17,057 --> 00:10:20,657 突然その角が生えたかと思うと 60 00:10:22,630 --> 00:10:26,967 それまで聞こえていた音が 聞こえなくなり 61 00:10:26,967 --> 00:10:32,773 これまでに聞いたこともない音が 聞こえ出したと言うのです 62 00:10:32,773 --> 00:10:35,676 こんな物音ひとつしない夜でも 63 00:10:35,676 --> 00:10:39,113 家の内で外で音がする 64 00:10:39,113 --> 00:10:42,116 ささやくような音 とどろくような音 65 00:10:42,116 --> 00:10:45,886 耳をふさいでも隙間を埋めても 変わらない 66 00:10:45,886 --> 00:10:48,886 角から音が入ってくると 67 00:10:51,525 --> 00:10:56,697 これは もしや… 「阿」 え? 68 00:10:56,697 --> 00:11:01,197 うんと共に行動し うんの作った無音を食う蟲です 69 00:11:03,337 --> 00:11:07,141 これに寄生されると 見境なく音を拾うために 70 00:11:07,141 --> 00:11:11,011 近くの音だけを聞くことは できなくなります 71 00:11:11,011 --> 00:11:15,849 ですが うんに比べて 非常に数の少ない蟲でして 72 00:11:15,849 --> 00:11:21,288 伝えられている治療の記録は 1件のみです 73 00:11:21,288 --> 00:11:25,793 それによると うんと同じように 塩水を用いても 74 00:11:25,793 --> 00:11:28,696 阿は耳から出てこなかった 75 00:11:28,696 --> 00:11:32,533 さらに様々な生薬などを 試してみたが 76 00:11:32,533 --> 00:11:35,502 効果のあるものは見つからず 77 00:11:35,502 --> 00:11:39,840 患者が発病した その次の冬の終わり 78 00:11:39,840 --> 00:11:44,411 夜も昼も洪水のように 押し寄せる音の中で 79 00:11:44,411 --> 00:11:47,448 患者は精神を すり減らし 80 00:11:47,448 --> 00:11:50,048 やがて衰弱死してしまったと 81 00:11:52,119 --> 00:11:55,619 その次の 冬の終わり… 82 00:11:59,259 --> 00:12:03,259 とにもかくにも相手を知らねばね 83 00:12:18,245 --> 00:12:20,814 俺の声が聞こえるか? 84 00:12:20,814 --> 00:12:28,055 うん 周りの音が 少し静かになった 85 00:12:28,055 --> 00:12:32,559 お兄さんが来てから ますます音が増えて 86 00:12:32,559 --> 00:12:35,295 頭が割れそうだったんだ 87 00:12:35,295 --> 00:12:38,031 そりゃ悪かったな 88 00:12:38,031 --> 00:12:41,235 俺は どうも蟲を呼ぶ体質でね 89 00:12:41,235 --> 00:12:44,138 蟲ってのは ガチャガチャ うるさいだろ 90 00:12:44,138 --> 00:12:46,807 この煙で遠ざけておいた 91 00:12:46,807 --> 00:12:50,544 蟲?この音が? 92 00:12:50,544 --> 00:12:53,480 ほとんどは そうだろうな 93 00:12:53,480 --> 00:12:57,317 人間ってのは 特別に耳の悪い動物でな 94 00:12:57,317 --> 00:13:02,790 多くの獣たちは もっと多彩な音を 聞き分けて生きてる 95 00:13:02,790 --> 00:13:08,595 が 獣たちでも聞き取れない でかい音の層があるらしい 96 00:13:08,595 --> 00:13:10,998 それが蟲の声の層 97 00:13:10,998 --> 00:13:14,902 蟲は こんなに大きな声で 話しているの? 98 00:13:14,902 --> 00:13:18,338 そうじゃない 1匹1匹のつぶやきは 99 00:13:18,338 --> 00:13:21,241 微小なもんだろう 100 00:13:21,241 --> 00:13:25,112 だが蟲は数えることなど できんほどいる 101 00:13:25,112 --> 00:13:29,082 それだけの ものどもが ひと言つぶやけば どうだ 102 00:13:29,082 --> 00:13:32,686 それは すさまじい音量で こだまのように呼応し 103 00:13:32,686 --> 00:13:35,086 世界を はいずり回っているという 104 00:13:37,391 --> 00:13:40,294 お前の耳の奥にいる阿という蟲が 105 00:13:40,294 --> 00:13:42,663 お前の静寂を食う 106 00:13:42,663 --> 00:13:44,598 すると その角が生え 107 00:13:44,598 --> 00:13:48,302 そこから あらゆる層の音が 流れ込み始めた 108 00:13:48,302 --> 00:13:50,904 おそらく そういうことだろう 109 00:13:50,904 --> 00:13:55,075 耳のほうには何ら変化は 見られなかったからな 110 00:13:55,075 --> 00:13:58,575 その角 どんなふうにして 生えてきた? 111 00:14:03,250 --> 00:14:07,488 耳を ふさいでたんだ 112 00:14:07,488 --> 00:14:09,523 去年の冬 113 00:14:09,523 --> 00:14:13,827 母さんが死んでしまったから 114 00:14:13,827 --> 00:14:17,731 母さんが よくそうしてたから 115 00:14:17,731 --> 00:14:21,568 思い出して まねしてみたんだ 116 00:14:21,568 --> 00:14:23,904 そしたら 117 00:14:23,904 --> 00:14:29,209 額が盛りあがって角が生えてきた 118 00:14:29,209 --> 00:14:32,880 耳を ふさいでた? 119 00:14:32,880 --> 00:14:35,582 どうして お前の母さんは 120 00:14:35,582 --> 00:14:39,453 わからない 思い出せないんだ 121 00:14:39,453 --> 00:14:44,725 母さんも俺と同じ 角が生える病気で 122 00:14:44,725 --> 00:14:50,197 耳を ふさいでも 音は防げなかったはず 123 00:14:50,197 --> 00:14:53,897 あの時 母さんは何か言って 124 00:14:56,803 --> 00:15:00,007 弱り果ててしまった両手で 125 00:15:00,007 --> 00:15:04,278 強く俺の耳を ふさいだ 126 00:15:04,278 --> 00:15:08,749 でも あの時 何て言ったか 127 00:15:08,749 --> 00:15:11,151 覚えてるはずなのに 128 00:15:11,151 --> 00:15:14,721 いつも 思い出そうとするのに 129 00:15:14,721 --> 00:15:18,292 頭の中にも どんどん音が 流れてきて 130 00:15:18,292 --> 00:15:21,562 聞き取れない 131 00:15:21,562 --> 00:15:24,965 そうか 132 00:15:24,965 --> 00:15:28,902 これは 悪いが運がいい 133 00:15:28,902 --> 00:15:32,739 全く同じ環境での症例があるとは 134 00:15:32,739 --> 00:15:35,339 どこかに処置法の鍵はあるはずだ 135 00:15:42,416 --> 00:15:47,087 娘の末期… ですか 136 00:15:47,087 --> 00:15:50,123 そりゃあ 可哀想なものでした 137 00:15:50,123 --> 00:15:54,361 音のために ろくに眠りが 取れぬのです 138 00:15:54,361 --> 00:15:58,061 真火の前では決して 口にしませんでしたが 139 00:16:00,067 --> 00:16:02,970 しきりに言ってました 140 00:16:02,970 --> 00:16:05,906 どんな音も届かない所で 141 00:16:05,906 --> 00:16:09,209 ゆっくりと眠りたい 142 00:16:09,209 --> 00:16:11,578 先ほどの お話と同じ 143 00:16:11,578 --> 00:16:15,015 発病した次の冬の終わり 144 00:16:15,015 --> 00:16:19,252 その望む所へ行ってしまいました 145 00:16:19,252 --> 00:16:22,623 最期まで苦しめられたわけですか 146 00:16:22,623 --> 00:16:25,092 ええ 147 00:16:25,092 --> 00:16:28,295 いえ いいえ 違います 148 00:16:28,295 --> 00:16:33,133 あの子 あの日 急に言い出しました 149 00:16:33,133 --> 00:16:37,537 母さん 音が消えたの 150 00:16:37,537 --> 00:16:39,773 今度は ぴんと 151 00:16:39,773 --> 00:16:42,442 何も聞こえなくなった 152 00:16:42,442 --> 00:16:44,711 怖いの 153 00:16:44,711 --> 00:16:48,711 あんなに恐ろしかった音が なつかしい 154 00:16:51,618 --> 00:16:54,755 そして そのまま間もなく 155 00:16:54,755 --> 00:16:58,659 消えるように死んでしまいました 156 00:16:58,659 --> 00:17:03,463 死に際になって 音が全く 聞こえなくなってしまったと 157 00:17:03,463 --> 00:17:05,732 はい 158 00:17:05,732 --> 00:17:08,402 他に何か? いいえ 159 00:17:08,402 --> 00:17:11,805 ですが おそらく さっき真火が言っていたのは 160 00:17:11,805 --> 00:17:13,840 この時期のことでしょう 161 00:17:13,840 --> 00:17:18,111 私も当時 奇妙に思っては いました 162 00:17:18,111 --> 00:17:21,211 あの子 一体 何のために 163 00:17:23,650 --> 00:17:27,020 死に際に訪れた静寂 164 00:17:27,020 --> 00:17:31,925 宿主の死期を悟って 阿は逃げ出したのか 165 00:17:31,925 --> 00:17:36,997 いや なら聴覚は元に戻るはずだ 166 00:17:36,997 --> 00:17:40,367 何も聞こえなくなるとは どういうことだ 167 00:17:40,367 --> 00:17:44,767 なのに一体 何から耳を ふさぎたかったんだ 168 00:17:48,475 --> 00:17:51,011 どこ行くんだ お前 169 00:17:51,011 --> 00:17:54,481 つっても聞こえんのか 170 00:17:54,481 --> 00:17:56,883 だっ 171 00:17:56,883 --> 00:18:01,722 大丈夫 ちょっと散歩… するだけ 172 00:18:01,722 --> 00:18:05,258 ばあちゃんには内緒 173 00:18:05,258 --> 00:18:10,597 ずっと家の中にいたら 余計おかしくなる 174 00:18:10,597 --> 00:18:13,197 か… 母さんの 175 00:18:15,535 --> 00:18:20,040 母さんの死んじゃった時のこと ばっかり 176 00:18:20,040 --> 00:18:22,040 思い出すからさ 177 00:18:27,848 --> 00:18:30,517 仕方ないか 178 00:18:30,517 --> 00:18:34,517 自分と同じ病で 母親をみとったんだからな 179 00:18:42,462 --> 00:18:46,466 降ってきた 行かすんじゃなかったか 180 00:18:46,466 --> 00:18:49,269 真火 真火 181 00:18:49,269 --> 00:18:52,939 ああ ギンコさん 真火がいないんです 182 00:18:52,939 --> 00:18:55,842 大丈夫 どっちへ行ったか 見てましたから 183 00:18:55,842 --> 00:18:59,045 ええ?何で行かせたんですか 184 00:18:59,045 --> 00:19:01,045 捜しに行ってきまーす 185 00:19:05,685 --> 00:19:07,685 静かだ 186 00:19:10,524 --> 00:19:13,424 だが決して無音じゃない 187 00:19:15,428 --> 00:19:20,200 耳を そばだてれば 雪の積もるのにも音はある 188 00:19:20,200 --> 00:19:22,569 周りに音がなくなれば 189 00:19:22,569 --> 00:19:25,369 自分の心臓の音が聞こえてくる 190 00:19:27,407 --> 00:19:31,011 だが あらゆる音を拾うとなると 191 00:19:31,011 --> 00:19:34,311 1つ1つの音は もう聞こえなくなるのか 192 00:19:36,483 --> 00:19:39,920 それが極限まで高まれば 193 00:19:39,920 --> 00:19:42,589 もしや 194 00:19:42,589 --> 00:19:47,189 もしや それが 音が消える… ということか 195 00:19:49,663 --> 00:19:51,663 そうか 196 00:19:53,567 --> 00:19:55,567 ん? 197 00:20:02,042 --> 00:20:04,477 えっ? 198 00:20:04,477 --> 00:20:10,317 ごめんなさい でも ちゃんと すぐ帰るつもりだったんだ 199 00:20:10,317 --> 00:20:13,820 途中で吹雪いてきたから 200 00:20:13,820 --> 00:20:18,024 やむまで ここで 待っていようと思って 201 00:20:18,024 --> 00:20:21,995 だけど どんどん強くなってきて… 202 00:20:21,995 --> 00:20:24,195 えっ?声が 203 00:20:39,312 --> 00:20:42,082 あっ 204 00:20:42,082 --> 00:20:46,820 こらこら お前ら ケンカすんなよ 205 00:20:46,820 --> 00:20:49,322 阿は どいつだ 206 00:20:49,322 --> 00:20:54,127 うんは右巻き 阿は左巻き っと 207 00:20:54,127 --> 00:20:56,127 お前だ 208 00:21:12,412 --> 00:21:16,283 真火 両手を貸してくれ 209 00:21:16,283 --> 00:21:19,083 お前の母親のようにな 210 00:21:29,796 --> 00:21:31,796 こう? 211 00:21:42,242 --> 00:21:45,912 溶けた 212 00:21:45,912 --> 00:21:50,750 両手で耳を ふさいでも 無音にはなりません 213 00:21:50,750 --> 00:21:55,555 彼女は死ぬ直前に 何かから耳を ふさぎたかったわけではなく 214 00:21:55,555 --> 00:21:59,855 その時 聞こえる音を 聞こうとしていたんだと思います 215 00:22:01,928 --> 00:22:05,432 聞こえますか? 216 00:22:05,432 --> 00:22:10,003 小さな地鳴りのような音が 217 00:22:10,003 --> 00:22:14,474 それは腕の筋肉の 運動している音だといいます 218 00:22:14,474 --> 00:22:19,379 つまり阿の弱点は 他の生物の生きている音だろうと 219 00:22:19,379 --> 00:22:22,215 しかし その音は生物に寄生すれば 220 00:22:22,215 --> 00:22:25,051 常に体内に響いている 221 00:22:25,051 --> 00:22:30,357 阿にとって そこは 居心地のよい所ではないはず 222 00:22:30,357 --> 00:22:33,259 だから消そうとする 223 00:22:33,259 --> 00:22:38,665 阿が溶けだすか 宿主が衰弱死するか 224 00:22:38,665 --> 00:22:41,868 その答えが出るのが およそ1年後 225 00:22:41,868 --> 00:22:44,204 ということなんでしょう 226 00:22:44,204 --> 00:22:47,974 彼女は それに気づいていたんじゃ ないでしょうか 227 00:22:47,974 --> 00:22:52,178 けれど その時には 衰えが進みすぎていて 228 00:22:52,178 --> 00:22:56,016 もはや手遅れとなっていた 229 00:22:56,016 --> 00:22:58,918 真火 230 00:22:58,918 --> 00:23:04,591 聞こえる?これが母さんの音だよ 231 00:23:04,591 --> 00:23:09,162 昔 母さん 見たんだよ 232 00:23:09,162 --> 00:23:11,564 父さんとね 233 00:23:11,564 --> 00:23:13,564 火を噴く山 234 00:23:17,003 --> 00:23:22,242 この音は あの溶岩の音にそっくり 235 00:23:22,242 --> 00:23:24,711 だから 母さん 236 00:23:24,711 --> 00:23:27,680 消えそうなくらい不安な時 237 00:23:27,680 --> 00:23:30,583 この音を聞くの 238 00:23:30,583 --> 00:23:34,954 何でも溶かす溶岩みたいに 239 00:23:34,954 --> 00:23:37,357 不安も つらさも 240 00:23:37,357 --> 00:23:42,729 みんな 溶かし込んでしまえる 気がするの 241 00:23:42,729 --> 00:23:46,599 ほら お前もやってごらん 242 00:23:46,599 --> 00:23:49,799 お前の中にも溶岩が 243 00:24:02,582 --> 00:24:05,785 ああっ 244 00:24:05,785 --> 00:24:08,785 溶岩が… 真火 245 00:24:10,757 --> 00:24:14,160 真っ赤な溶岩が 246 00:24:14,160 --> 00:24:16,160 流れてるよ 247 00:24:21,334 --> 00:24:24,704 では これが報酬ということで 248 00:24:24,704 --> 00:24:28,241 ええ 本当に それで よろしいの? 249 00:24:28,241 --> 00:24:30,176 けっこうですよ 250 00:24:30,176 --> 00:24:32,679 いいのね?真火 251 00:24:32,679 --> 00:24:34,679 うん 252 00:24:43,323 --> 00:24:45,323 ん? 253 00:24:48,628 --> 00:24:50,563 え? 254 00:24:50,563 --> 00:24:53,933 世界は静かだろう 真火 255 00:24:53,933 --> 00:24:56,336 慣れるまでは 落ち着かないだろうし 256 00:24:56,336 --> 00:24:59,436 断たれた世界を 恋しく思うこともあるだろう 257 00:25:01,174 --> 00:25:04,077 だが それも春になって 258 00:25:04,077 --> 00:25:06,177 にぎやかになれば忘れる 259 00:25:08,314 --> 00:25:12,819 俺 忘れない 260 00:25:12,819 --> 00:25:15,688 ずっと聞いてたんだ 261 00:25:15,688 --> 00:25:19,559 母さんと同じ音 262 00:25:19,559 --> 00:25:23,163 ぞっとするぐらい 263 00:25:23,163 --> 00:25:25,163 きれいな音 264 00:31:17,884 --> 00:31:22,588 蟲師? ギンコと申します 265 00:31:22,588 --> 00:31:26,025 予知夢を ご覧になるそうですね 266 00:31:26,025 --> 00:31:28,928 ちまたで評判ですよ 267 00:31:28,928 --> 00:31:30,897 ですが その夢 ちょっと 268 00:31:30,897 --> 00:31:34,834 問題があるんじゃないかと 思いましてね 269 00:31:34,834 --> 00:31:40,306 どういうことだ? 恐らく 蟲が絡んでますな 270 00:31:40,306 --> 00:31:42,975 夢の中に住む蟲です 271 00:31:42,975 --> 00:31:45,878 そいつが予知夢を見せるんですよ 272 00:31:45,878 --> 00:31:48,314 そして どんどん増殖する 273 00:31:48,314 --> 00:31:52,184 この薬で 数を調整したほうがいい 274 00:31:52,184 --> 00:31:54,987 今は どれぐらいの割合で予知夢を? 275 00:31:54,987 --> 00:31:58,658 十のうち 1つ 2つ 276 00:31:58,658 --> 00:32:03,996 じきに 4~5回にはなる そしたら これを飲むといい 277 00:32:03,996 --> 00:32:08,668 それ以上飲めば 毒となります 278 00:32:08,668 --> 00:32:13,339 だが ほっておけば 夢から覚めなくなっちまう 279 00:32:13,339 --> 00:32:16,008 大切なのは 均衡です 280 00:32:16,008 --> 00:32:20,346 必ず 飲んでくださいよ 281 00:32:20,346 --> 00:32:23,346 なくなるころ また来ます 282 00:32:25,217 --> 00:32:29,021 どうぞ それまで 283 00:32:29,021 --> 00:32:32,021 よい夢を 284 00:32:42,969 --> 00:32:46,639 「寝言と会話をしてはいけない」 285 00:32:46,639 --> 00:32:52,339 それは 彼岸の国の言葉 286 00:32:59,986 --> 00:33:05,658 あれから 1年と経っていない はずなんだが 287 00:33:05,658 --> 00:33:09,358 これは一体 どういうわけだ? 288 00:33:34,620 --> 00:33:37,523 来たか 289 00:33:37,523 --> 00:33:41,293 蟲師 待ってたよ 290 00:33:41,293 --> 00:33:45,965 お前に聞きたいことがあってな 291 00:33:45,965 --> 00:33:48,634 あんた 一人か? 292 00:33:48,634 --> 00:33:52,304 この町の ありさま もしかして… 293 00:33:52,304 --> 00:33:55,975 ああ そうだ 294 00:33:55,975 --> 00:34:00,675 聞かせてやるよ 全部な 295 00:34:13,325 --> 00:34:16,228 あっ 296 00:34:16,228 --> 00:34:18,664 やれやれ 297 00:34:18,664 --> 00:34:21,364 どっこいしょっと 298 00:34:23,335 --> 00:34:26,005 うん? 299 00:34:26,005 --> 00:34:29,875 すごいぞ 300 00:34:29,875 --> 00:34:32,575 こりゃ 水脈だ 301 00:34:34,613 --> 00:34:37,913 これで 田を広げられるな 302 00:34:45,958 --> 00:34:47,893 おい 出たぞ! 303 00:34:47,893 --> 00:34:50,296 また ジンの夢が当たったぞ 304 00:34:50,296 --> 00:34:53,296 町に知らせてこい 305 00:34:58,637 --> 00:35:00,973 農家の方が お礼にって 306 00:35:00,973 --> 00:35:03,876 こんなに 307 00:35:03,876 --> 00:35:06,312 なんか 悪いわね 308 00:35:06,312 --> 00:35:08,647 ああ 309 00:35:08,647 --> 00:35:10,983 だが 刃物研ぎだけじゃ なかなか いいもん 310 00:35:10,983 --> 00:35:13,652 食わしてやれんからな うん? 311 00:35:13,652 --> 00:35:17,990 ありがたいよ わあ 山桃 312 00:35:17,990 --> 00:35:20,659 でも ジン うん? 313 00:35:20,659 --> 00:35:23,562 予知夢の回数が増えている 314 00:35:23,562 --> 00:35:29,001 あの蟲師って人の 言ったとおりね 315 00:35:29,001 --> 00:35:31,904 お前 信じてるのか? 316 00:35:31,904 --> 00:35:34,607 蟲が夢を見せているだとか 317 00:35:34,607 --> 00:35:39,278 分からないわ でも… もしも 318 00:35:39,278 --> 00:35:42,948 もしも それが 本当だったら 319 00:35:42,948 --> 00:35:48,821 分かったよ あの薬は飲んでおく 320 00:35:48,821 --> 00:35:51,821 そう よかった 321 00:35:53,959 --> 00:35:57,659 西の崖が 崩れたぞ! 322 00:36:00,633 --> 00:36:03,302 ありがとうございました 323 00:36:03,302 --> 00:36:06,972 もし予言がなかったら 今ごろは 324 00:36:06,972 --> 00:36:10,972 ほんとに 何と お礼を言ったらよいか 325 00:36:16,982 --> 00:36:21,654 きぬ 俺は 時々 恐ろしくなるんだよ 326 00:36:21,654 --> 00:36:23,589 え? 327 00:36:23,589 --> 00:36:26,525 夢に見たままが まことになると 328 00:36:26,525 --> 00:36:30,329 まるで 俺が しでかしたことの ように思えるんだ 329 00:36:30,329 --> 00:36:32,264 そんな… 330 00:36:32,264 --> 00:36:36,135 ジンさん! 331 00:36:36,135 --> 00:36:39,605 これ この間のお礼だ 取っといてくれ 332 00:36:39,605 --> 00:36:43,275 あ… ああ 333 00:36:43,275 --> 00:36:45,945 なあ わしらにも いい夢を見てくれよ 334 00:36:45,945 --> 00:36:49,281 さあ それは ちょっと… ハッハハハ 335 00:36:49,281 --> 00:36:52,618 無理 言うなよ 夢だもんな 336 00:36:52,618 --> 00:36:56,318 じゃ また期待しているよ どうも 337 00:36:58,490 --> 00:37:00,492 大丈夫よ ジン 338 00:37:00,492 --> 00:37:02,962 きっと あなたは みんなを救うために 339 00:37:02,962 --> 00:37:05,631 予言を授かっているのよ 340 00:37:05,631 --> 00:37:09,501 だって みんな あなたのおかげで 幸せそうじゃない 341 00:37:09,501 --> 00:37:13,973 恐れることなんて 何もないわ 342 00:37:13,973 --> 00:37:17,373 ああ… そうだな 343 00:37:19,845 --> 00:37:24,316 妻には そう言ったが 344 00:37:24,316 --> 00:37:29,316 俺の予知夢への恐れは消えず 進んで薬を飲むようになった 345 00:37:31,590 --> 00:37:33,590 だが… 346 00:37:35,461 --> 00:37:37,761 津波だ! 347 00:37:47,940 --> 00:37:52,611 まゆが… あの子が浜に 348 00:37:52,611 --> 00:37:54,546 そんな! 349 00:37:54,546 --> 00:37:58,484 こんな夢は 一度も 350 00:37:58,484 --> 00:38:01,287 まったくだ… こんな大災害 351 00:38:01,287 --> 00:38:03,587 なぜ 予知できなかったんだ 352 00:38:08,160 --> 00:38:10,760 まゆ… 353 00:38:23,976 --> 00:38:27,646 この薬を 飲んだばかりだったからだ 354 00:38:27,646 --> 00:38:31,346 だから まゆの命を救えなかった 355 00:38:34,253 --> 00:38:37,923 俺は薬を飲むのを やめた 356 00:38:37,923 --> 00:38:39,858 すると 357 00:38:39,858 --> 00:38:46,598 たちまち予知夢の回数は増え 内容も より正確になっていった 358 00:38:46,598 --> 00:38:52,471 見て ジン 家の前に お礼の品が 359 00:38:52,471 --> 00:38:56,942 元気 出さなくてはね 360 00:38:56,942 --> 00:38:59,642 そんな ある日だった 361 00:39:06,952 --> 00:39:10,622 夢を見たの?ひどい汗… 362 00:39:10,622 --> 00:39:14,960 悪い夢? い… いや 363 00:39:14,960 --> 00:39:18,831 体調が悪いだけだ 364 00:39:18,831 --> 00:39:21,531 夢じゃない 365 00:39:24,303 --> 00:39:26,903 そして 翌日 366 00:39:38,650 --> 00:39:40,650 うん? 367 00:39:46,525 --> 00:39:48,525 きぬ 368 00:39:50,662 --> 00:39:53,999 夢に見た病 そのものだった 369 00:39:53,999 --> 00:40:02,341 指先から青いカビが生えて 全身に広がり 泥のように崩れて 370 00:40:02,341 --> 00:40:05,244 そして 371 00:40:05,244 --> 00:40:08,544 俺ひとりが 町に残された 372 00:40:12,684 --> 00:40:15,354 ギンコと言ったな 373 00:40:15,354 --> 00:40:18,023 その夢が まことになったとき 374 00:40:18,023 --> 00:40:21,693 俺は 気が付いた 375 00:40:21,693 --> 00:40:25,030 あのとき お前が俺を 376 00:40:25,030 --> 00:40:28,430 だましたってことにな 377 00:40:31,637 --> 00:40:35,974 俺の中にいるのは 予知夢を見せる蟲なんかじゃない 378 00:40:35,974 --> 00:40:41,313 俺の見た夢を 現世に持ち出し 伝染させる蟲なんだよ 379 00:40:41,313 --> 00:40:44,216 あの青い病 380 00:40:44,216 --> 00:40:48,187 俺の近くにいる者から 感染していった 381 00:40:48,187 --> 00:40:54,187 妻 隣家 向かいの筋 382 00:40:56,328 --> 00:41:01,628 そして 眼前に 夢と同じ光景が作られた 383 00:41:04,203 --> 00:41:08,674 俺が これまで 予言してきたことは すべて 384 00:41:08,674 --> 00:41:14,012 俺の夢が 作り出したことだったんだ 385 00:41:14,012 --> 00:41:17,683 そうだろ?なのに… 386 00:41:17,683 --> 00:41:20,683 なぜ あんなウソをついた! 387 00:41:24,556 --> 00:41:29,695 この蟲は 完全にたつことができないからだ 388 00:41:29,695 --> 00:41:31,630 寄生されたが 最後 389 00:41:31,630 --> 00:41:36,330 生涯 均衡を保ち 共生してゆくしかないんだ 390 00:41:38,971 --> 00:41:42,307 だが 蟲本来の性質を告げれば 391 00:41:42,307 --> 00:41:46,178 宿主は自分の作り出すものの 大きさに 耐えられなくなる 392 00:41:46,178 --> 00:41:49,181 そう そして 死ねばよかったんだよ! 393 00:41:49,181 --> 00:41:52,317 こんな災いのもとは 394 00:41:52,317 --> 00:41:56,617 なぜ 生かしておいた なぜ! 395 00:42:02,327 --> 00:42:04,263 悪かった 396 00:42:04,263 --> 00:42:06,665 こうなっちまった以上 397 00:42:06,665 --> 00:42:10,365 蟲をたつ術を 何としても見つけてみせる 398 00:42:12,337 --> 00:42:16,008 生きてくれ 399 00:42:16,008 --> 00:42:19,878 「夢野間」 宿主の夢の中に住むが 400 00:42:19,878 --> 00:42:23,348 時折 夢から出てくることもある 401 00:42:23,348 --> 00:42:26,685 そして そのとき宿主が見ていた夢を 402 00:42:26,685 --> 00:42:30,355 うつつに伝染させる 媒体となるんだ 403 00:42:30,355 --> 00:42:34,960 つまり すべての夢を 予知夢にするわけじゃないが 404 00:42:34,960 --> 00:42:40,632 増殖するほど 夢から出てくる回数も増えてゆく 405 00:42:40,632 --> 00:42:45,971 そして 再現できる規模や範囲も 大きくなってしまう 406 00:42:45,971 --> 00:42:49,308 だが 蟲自体は 日に さらされれば消える 407 00:42:49,308 --> 00:42:52,211 弱々しいものだ 408 00:42:52,211 --> 00:42:56,181 それが なぜ 現世に 出てきたがるかは分からない 409 00:42:56,181 --> 00:43:01,887 だが どこかに夢うつつを結ぶ 蟲たちだけの通い路があり 410 00:43:01,887 --> 00:43:08,660 宿主が目覚めている間 蟲たちは そこで眠っているという 411 00:43:08,660 --> 00:43:13,360 それを見つけられれば 何とか できるかもしれない 412 00:43:17,336 --> 00:43:22,007 しかし これほどの速さと規模は 見聞きしたことがない 413 00:43:22,007 --> 00:43:24,676 あの薬では食い止められん 414 00:43:24,676 --> 00:43:27,579 かといって 服用を増やせば… 415 00:43:27,579 --> 00:43:29,579 うん? 416 00:43:32,951 --> 00:43:35,351 おい! 417 00:43:40,292 --> 00:43:42,961 薬 全部 飲んだのか? 418 00:43:42,961 --> 00:43:46,361 しっかりしろ 解毒剤を! かまうな 419 00:43:48,300 --> 00:43:50,969 もういい 420 00:43:50,969 --> 00:43:54,306 とても… 421 00:43:54,306 --> 00:43:56,906 生きられん 422 00:44:14,626 --> 00:44:16,995 眼球が動き出した 423 00:44:16,995 --> 00:44:19,898 夢を見始めたんだ 424 00:44:19,898 --> 00:44:23,298 許してくれ 寝言? 425 00:44:25,337 --> 00:44:29,207 お前に罪などないさ 426 00:44:29,207 --> 00:44:31,610 蟲にも罪などない 427 00:44:31,610 --> 00:44:36,481 互いに ただ その生を遂行していただけだ 428 00:44:36,481 --> 00:44:41,286 誰にも罪などないんだ 429 00:44:41,286 --> 00:44:46,286 死ぬんじゃない お前は 何も間違っちゃいない 430 00:44:50,295 --> 00:44:52,230 あれは 雁か? 431 00:44:52,230 --> 00:44:55,967 あ? 432 00:44:55,967 --> 00:45:00,305 やっぱり 寝言か… 脈略がない 433 00:45:00,305 --> 00:45:02,240 お前 一体 どこにいるんだ? 434 00:45:02,240 --> 00:45:04,976 早いとこ 戻ってこいよな 435 00:45:04,976 --> 00:45:08,313 葦の原にいる 436 00:45:08,313 --> 00:45:11,913 えっ… 返事をした? 437 00:45:14,186 --> 00:45:17,786 な… 何だ この耳鳴り? 438 00:45:25,864 --> 00:45:29,334 これは 一体… 439 00:45:29,334 --> 00:45:32,938 今の会話で こいつの夢が 現世とつながった 440 00:45:32,938 --> 00:45:36,638 これが 雁に見えているのか? 441 00:45:38,810 --> 00:45:42,810 これは全部 夢野間の群れだ 442 00:46:07,639 --> 00:46:12,511 あ… お父ちゃん おかえり 443 00:46:12,511 --> 00:46:14,980 ウフフ まゆ! 444 00:46:14,980 --> 00:46:17,883 おかえりなさい え? 445 00:46:17,883 --> 00:46:20,283 きぬ… 446 00:46:23,321 --> 00:46:25,257 ああ… 447 00:46:25,257 --> 00:46:27,993 す… すまない うん? 448 00:46:27,993 --> 00:46:31,263 すまないな お前たち! 449 00:46:31,263 --> 00:46:33,198 憎んでるだろう? 450 00:46:33,198 --> 00:46:36,935 俺が… お前たち みんなを 451 00:46:36,935 --> 00:46:40,272 殺してしまったんだ 452 00:46:40,272 --> 00:46:42,941 いいのよ ジン 453 00:46:42,941 --> 00:46:46,278 あなたのせいじゃないわ 454 00:46:46,278 --> 00:46:49,578 あなたは悪くないわ 455 00:46:54,619 --> 00:46:57,919 誰か いるのか? 456 00:47:03,962 --> 00:47:06,362 俺だ 457 00:47:08,834 --> 00:47:11,636 びょうぶに 何か映っている 458 00:47:11,636 --> 00:47:14,306 火? 熱い… 459 00:47:14,306 --> 00:47:17,642 あ? 誰か… 460 00:47:17,642 --> 00:47:21,642 映っているのは 俺の夢か? 461 00:47:24,983 --> 00:47:29,654 枕から 夢が燃え移った 462 00:47:29,654 --> 00:47:32,557 そうか! 463 00:47:32,557 --> 00:47:34,857 こっちにも 464 00:47:38,463 --> 00:47:41,600 起きろ! 465 00:47:41,600 --> 00:47:43,600 水を 466 00:47:49,474 --> 00:47:54,613 夢は 枕を通ってやってきた 467 00:47:54,613 --> 00:47:57,282 「蟲たちだけの通い路」 468 00:47:57,282 --> 00:48:01,882 「目覚めているとき そこで蟲たちは眠るという」 469 00:48:10,629 --> 00:48:14,629 まさか こんなところにいたのか 470 00:48:18,970 --> 00:48:23,642 いまいましい 蟲どもめ 471 00:48:23,642 --> 00:48:25,642 やめろ! 472 00:48:52,604 --> 00:48:56,942 な… なぜ? 473 00:48:56,942 --> 00:48:59,342 俺まで 474 00:49:19,197 --> 00:49:22,634 応急処置が よかったようだな 475 00:49:22,634 --> 00:49:25,934 何とか 助かるだろう 476 00:49:45,857 --> 00:49:49,327 こうなるのが分かってたのか? 477 00:49:49,327 --> 00:49:52,627 枕を斬っただけなのに 478 00:49:56,201 --> 00:50:00,939 知ってるか? 枕の語源は 魂の蔵 479 00:50:00,939 --> 00:50:04,676 「魂の蔵」だって 説がある 480 00:50:04,676 --> 00:50:09,014 生きてるうち 3割近くも 頭を預けている場所だ 481 00:50:09,014 --> 00:50:13,685 そこに魂が宿ると 考えられていたんだろう 482 00:50:13,685 --> 00:50:16,588 そして そこは 夢野間の巣であり 483 00:50:16,588 --> 00:50:21,359 夢と うつつを つなぐ通路となっていた 484 00:50:21,359 --> 00:50:26,359 斬れば何かを失うのは お前だろうと思った 485 00:50:29,701 --> 00:50:36,307 夢と うつつの間にあるは 魂の蔵 486 00:50:36,307 --> 00:50:42,907 誰も この道を通らねば 彼岸の国は見てこれぬ 487 00:50:49,320 --> 00:50:54,659 その後 男は再び 研ぎ師を始めたという 488 00:50:54,659 --> 00:50:58,329 腕は確かで 評判を呼んだ 489 00:50:58,329 --> 00:51:03,668 しかし なぜか 次第に心を病んでいったという 490 00:51:03,668 --> 00:51:06,337 時に 往来で刀を振り回し 491 00:51:06,337 --> 00:51:09,337 最後は みずからに刃を突き立てた 492 00:51:15,346 --> 00:51:17,682 人々は言った 493 00:51:17,682 --> 00:51:21,553 あの男は 眠るのを とても恐れていた 494 00:51:21,553 --> 00:51:26,853 眠ると 魂がストンと どこかへ 滑り落ちてゆくのだそうだ 495 00:51:30,028 --> 00:51:36,428 男は 枕をたった あの日から 一度も夢を見なかったという