1 00:04:46,912 --> 00:04:49,615 うーん 2 00:04:49,615 --> 00:04:52,150 静寂を食う蟲 3 00:04:52,150 --> 00:04:55,621 「阿」に寄生されたとき できる角か 4 00:04:55,621 --> 00:04:59,291 なるほど こりゃ珍しい 5 00:04:59,291 --> 00:05:01,226 で そっちは? 6 00:05:01,226 --> 00:05:06,431 神の筆を持つ少年の描いた杯 何? 7 00:05:06,431 --> 00:05:10,335 あの人物が 蟲師嫌いなのは有名だぞ 8 00:05:10,335 --> 00:05:12,871 もう少し マシな嘘をつけよ ギンコ 9 00:05:12,871 --> 00:05:14,806 いやいや 10 00:05:14,806 --> 00:05:18,410 無理に売るつもりはないんだ 化野先生 11 00:05:18,410 --> 00:05:23,248 こいつは ただの収集家には もったいない代物でね 12 00:05:23,248 --> 00:05:27,052 まあ… よく見せろ 売ってもいいが 13 00:05:27,052 --> 00:05:31,056 ちょっと協力してほしいって 話なんだよ 14 00:05:31,056 --> 00:05:34,459 ここへ来る途中 妙なものに会ってな 15 00:05:34,459 --> 00:05:36,395 それを捕獲したい 16 00:05:36,395 --> 00:05:40,565 妙なもの? ああ 聞いたことないか? 17 00:05:40,565 --> 00:05:44,970 液状の蟲の その成れの果て 18 00:05:44,970 --> 00:05:47,770 生き沼だ 19 00:05:55,047 --> 00:05:58,083 その山脈を越える間 20 00:05:58,083 --> 00:06:01,183 よく沼を見た 21 00:06:03,288 --> 00:06:05,557 また 沼だ 22 00:06:05,557 --> 00:06:07,657 うん? 23 00:06:13,965 --> 00:06:20,806 しかし 迂回をし のちのち 山腹から見返ると 24 00:06:20,806 --> 00:06:26,278 決まって沼は 跡形もなく消えているのだ 25 00:06:26,278 --> 00:06:29,781 そして また1つ山を越えたころに 26 00:06:29,781 --> 00:06:34,519 次なる沼が 姿を現す 27 00:06:34,519 --> 00:06:38,419 狐狸にでも化かされてんのかね 28 00:06:55,207 --> 00:07:00,045 お前 この前の沼にいたよな? 29 00:07:00,045 --> 00:07:04,316 この山は どこか抜け道でもあるのか? 30 00:07:04,316 --> 00:07:08,253 一瞬 目を疑った 31 00:07:08,253 --> 00:07:11,453 その髪の異様な緑さだ 32 00:07:14,025 --> 00:07:18,325 沼の水で 芯まで染めたような 33 00:07:29,508 --> 00:07:33,211 あの… 34 00:07:33,211 --> 00:07:38,049 そのまま行くと 何かあるの? うん? 35 00:07:38,049 --> 00:07:41,052 じゃあ 俺も ちょっと聞きたいんだが 36 00:07:41,052 --> 00:07:43,288 いいかな? 37 00:07:43,288 --> 00:07:48,188 この沼 普通の沼じゃないよな? 38 00:07:51,363 --> 00:07:55,967 この沼は 旅をしているの 39 00:07:55,967 --> 00:08:00,772 何度も 地中へ潜ったり 浮いたりしながら 40 00:08:00,772 --> 00:08:05,577 あなたと同じように この山を越えようとしてるみたい 41 00:08:05,577 --> 00:08:09,448 ほう そりゃ すごい 生き沼か 42 00:08:09,448 --> 00:08:13,084 で アンタも 一緒に移動してきてるわけ? 43 00:08:13,084 --> 00:08:15,284 何で また? 44 00:08:19,558 --> 00:08:21,526 まあ ともかく 45 00:08:21,526 --> 00:08:24,529 このまま まっすぐ行けば海に出る 46 00:08:24,529 --> 00:08:28,333 俺が目指しているのは そこの猟師町 47 00:08:28,333 --> 00:08:34,706 海に出たら もう沼には ついていけんな 48 00:08:34,706 --> 00:08:37,409 ところでさ 沼の水 49 00:08:37,409 --> 00:08:41,179 明日の朝 ちょっと調べたいんだが 50 00:08:41,179 --> 00:08:44,950 どうぞ なんせ 暗くて 51 00:08:44,950 --> 00:08:47,986 新種っぽいな 52 00:08:47,986 --> 00:08:51,857 沼が 旅をしてるなんて 53 00:08:51,857 --> 00:08:55,660 信じてもらえないかと思った ああ 54 00:08:55,660 --> 00:09:00,165 仕事柄 大概の現象は 受け入れるさ 55 00:09:00,165 --> 00:09:04,035 仕事? 蟲師という 56 00:09:04,035 --> 00:09:08,039 蟲の起こす現象ってのが どれも奇妙でな 57 00:09:08,039 --> 00:09:10,642 例えば 「水蠱」ってやつで 58 00:09:10,642 --> 00:09:14,412 液状の蟲… なんてのもいるんだが 59 00:09:14,412 --> 00:09:20,352 無色透明の液体だが 生きている 60 00:09:20,352 --> 00:09:26,625 古い水脈の水に好んですみ 池や井戸に とどまることもある 61 00:09:26,625 --> 00:09:29,494 水と誤り 水蠱を飲み続けると 62 00:09:29,494 --> 00:09:32,931 常に水に触れていないと 呼吸が できなくなり 63 00:09:32,931 --> 00:09:35,367 体が透け始める 64 00:09:35,367 --> 00:09:40,739 それを 放っておくと 液状化し 流れ出してしまう 65 00:09:40,739 --> 00:09:46,945 そして 当の蟲は あるとき 突然 消滅している 66 00:09:46,945 --> 00:09:49,848 そういうのが いるぐらいだから まあ 67 00:09:49,848 --> 00:09:55,353 沼が自分で動くのもありかな …と思えてくるのさ 68 00:09:55,353 --> 00:10:01,026 そういう アンタこそ 気味悪いとは思わなかったのか? 69 00:10:01,026 --> 00:10:04,062 私は… 70 00:10:04,062 --> 00:10:08,333 恐ろしいと思ったことはないわ 71 00:10:08,333 --> 00:10:15,640 初めて見た姿が あまりに力強くて 神々しかったから 72 00:10:15,640 --> 00:10:19,644 力強い どんな姿だ? 73 00:10:19,644 --> 00:10:21,913 泳いでいたの 74 00:10:21,913 --> 00:10:28,553 増水して 荒れ狂う川の底 75 00:10:28,553 --> 00:10:34,253 私は流れに飲み込まれ 浮き上がることもできずにいた 76 00:10:37,062 --> 00:10:39,664 そこへ 77 00:10:39,664 --> 00:10:43,864 緑色の巨大なものが 78 00:10:48,206 --> 00:10:53,506 激流の底を 悠然と さかのぼってきた 79 00:10:57,482 --> 00:11:03,121 気が付くと 山あいの沼のふちだった 80 00:11:03,121 --> 00:11:05,690 この色 81 00:11:05,690 --> 00:11:08,093 私は 気付いた 82 00:11:08,093 --> 00:11:11,730 この沼は 今 沼のふりをしているが 83 00:11:11,730 --> 00:11:15,600 あのときの 緑のものだと 84 00:11:15,600 --> 00:11:21,406 そのときには もう この色に染まっていたの 85 00:11:21,406 --> 00:11:26,578 たぶん もう私は 一度死んでいるのよ 86 00:11:26,578 --> 00:11:33,985 でも この沼が 「生きていていい」と言ってくれた 87 00:11:33,985 --> 00:11:37,489 だから 私にとって この沼は 88 00:11:37,489 --> 00:11:41,289 唯一の居場所なの 89 00:12:04,082 --> 00:12:07,819 せめて 90 00:12:07,819 --> 00:12:13,058 これを着て お行き 91 00:12:13,058 --> 00:12:18,863 水神様の嫁になるのだと 思っておくれ 92 00:12:18,863 --> 00:12:23,601 母親のことは みんなで助けてゆくで 93 00:12:23,601 --> 00:12:25,837 心配するでない 94 00:12:25,837 --> 00:12:29,841 お前の名は語られるであろう 95 00:12:29,841 --> 00:12:38,241 水禍から村を救った 誉れ高き娘として 96 00:12:59,604 --> 00:13:04,909 飲み続けると 体が透明に… 97 00:13:04,909 --> 00:13:08,009 やがて 流れ出す 98 00:13:20,391 --> 00:13:22,391 行くのね 99 00:13:24,362 --> 00:13:26,362 うん? 100 00:13:29,200 --> 00:13:32,537 ああ! 101 00:13:32,537 --> 00:13:37,375 地下に 潜ってく 102 00:13:37,375 --> 00:13:40,345 おい もう行くのか? ちょっと待たせろよ 103 00:13:40,345 --> 00:13:44,249 調べてえ 104 00:13:44,249 --> 00:13:48,486 いろいろ教えてくれて ありがとう 105 00:13:48,486 --> 00:13:52,986 私 この沼の一部になるの 106 00:13:55,059 --> 00:13:58,159 待て おい! 107 00:14:11,609 --> 00:14:13,745 消えた 108 00:14:13,745 --> 00:14:17,615 くそっ 何で気付かなかった 109 00:14:17,615 --> 00:14:21,786 あれは 水蠱の成れの果てだったんだ 110 00:14:21,786 --> 00:14:26,558 水蠱は井戸から消えたあと 自ら移動していたんだ 111 00:14:26,558 --> 00:14:30,195 私 この沼の一部になるの 112 00:14:30,195 --> 00:14:32,130 バカな 113 00:14:32,130 --> 00:14:35,466 それが どういうことか 分かってんのか? 114 00:14:35,466 --> 00:14:39,871 「生きていていい」と言ってくれた 115 00:14:39,871 --> 00:14:42,571 お前 116 00:14:45,543 --> 00:14:49,343 生きていたかったんだろう? 117 00:15:02,961 --> 00:15:08,561 沼は海へ向かってるんだったな 118 00:15:10,702 --> 00:15:13,037 海へ向かう沼か 119 00:15:13,037 --> 00:15:15,406 何か知ってるのか? 120 00:15:15,406 --> 00:15:18,009 古い猟師に聞いたことがある 121 00:15:18,009 --> 00:15:23,715 何でも 鯨以上もありそうな 緑のものが川を下ってきて 122 00:15:23,715 --> 00:15:26,150 海へ入ると まるで分解されるように 123 00:15:26,150 --> 00:15:29,821 死んでしまうってことが あるそうだ 124 00:15:29,821 --> 00:15:32,724 実際 見たことはないそうだが 125 00:15:32,724 --> 00:15:38,363 まるで 死に場所を求めるように 海へ来るんだと 126 00:15:38,363 --> 00:15:41,833 ともかく 急ごうか 127 00:15:41,833 --> 00:15:45,069 猟師たちが 騒いでないところを見ると 128 00:15:45,069 --> 00:15:49,374 まだ 海へは出てないようだ 129 00:15:49,374 --> 00:15:51,376 あった あった 130 00:15:51,376 --> 00:15:54,012 これが この辺りの地下水脈の地図 131 00:15:54,012 --> 00:15:56,314 珍品だぜ 132 00:15:56,314 --> 00:15:59,817 振り子で水脈波の反応を調べて 作ったものらしい 133 00:15:59,817 --> 00:16:02,720 確かなんだろうな? 試しに 井戸を掘ったら 134 00:16:02,720 --> 00:16:04,722 五分ってところだった 135 00:16:04,722 --> 00:16:08,526 沼を見た場所と この水脈が一致するな 136 00:16:08,526 --> 00:16:12,697 やっぱり 水蠱は 地下水脈内で移動するのか 137 00:16:12,697 --> 00:16:15,566 でも ここで枝分かれしてる 138 00:16:15,566 --> 00:16:19,037 これじゃ 進路は予測できんな 139 00:16:19,037 --> 00:16:23,241 なあ おい ギンコ こういう地図もあるぞ 140 00:16:23,241 --> 00:16:26,144 数万年前の川の予想地図 141 00:16:26,144 --> 00:16:29,047 そこの川も 河口の域こそ同じだが 142 00:16:29,047 --> 00:16:31,916 昔は ずいぶん よそを流れていたようで面白いぞ 143 00:16:31,916 --> 00:16:35,520 あのな 今 お前の収集物自慢を 144 00:16:35,520 --> 00:16:39,324 聞いてる暇は… 145 00:16:39,324 --> 00:16:41,824 見せてくれ 146 00:16:46,097 --> 00:16:49,033 重なった… どういうことだ? 147 00:16:49,033 --> 00:16:52,270 この水脈は もともと川だったんだ 148 00:16:52,270 --> 00:16:55,173 川が川でなくなり 地中に埋もれたら 149 00:16:55,173 --> 00:16:58,643 小石の層となって残ることが多い 150 00:16:58,643 --> 00:17:03,414 雨水は そういった層に向かって 浸透していく 151 00:17:03,414 --> 00:17:06,417 かつて川だった場所は 地中に埋もれても 152 00:17:06,417 --> 00:17:10,621 地下水の通う川となるんだ 153 00:17:10,621 --> 00:17:13,825 あの沼は かつての この川を記憶していて 154 00:17:13,825 --> 00:17:16,627 たどっているのかもしれん 155 00:17:16,627 --> 00:17:19,330 死に場所を定めて… か? 156 00:17:19,330 --> 00:17:22,033 まるで 鮭や鮎だな 157 00:17:22,033 --> 00:17:25,770 ともかく いずれ この河口へやってくるはず 158 00:17:25,770 --> 00:17:28,306 海へ出ちまったら 手が出せない 159 00:17:28,306 --> 00:17:30,241 化野 うん? 160 00:17:30,241 --> 00:17:36,047 人を集めてくれないか 河口付近に網を張る 161 00:17:36,047 --> 00:17:39,384 よし いくぞ 引っ張れ! 162 00:17:39,384 --> 00:17:41,484 オーッ! 163 00:17:43,554 --> 00:17:46,958 悪いな こんなに大勢 よかったのか? 164 00:17:46,958 --> 00:17:51,162 なに 猟師は今 みーんな 暇こいてんのさ 165 00:17:51,162 --> 00:17:55,400 このごろの海ときたら 死んだみてえに 魚がいない 166 00:17:55,400 --> 00:17:59,303 ま それに 化野先生の頼みだしな 167 00:17:59,303 --> 00:18:01,706 医者ってのは 役得だな 168 00:18:01,706 --> 00:18:05,406 いやいや 人徳… みたいなね 169 00:18:07,345 --> 00:18:09,280 しかし ギンコ 170 00:18:09,280 --> 00:18:12,050 この網に まだ娘が引っ掛かる状態かどうか 171 00:18:12,050 --> 00:18:14,852 分からないんだろう? ああ 172 00:18:14,852 --> 00:18:17,822 たが それに 懸けるしかないだろう 173 00:18:17,822 --> 00:18:21,325 いや なぜ そうまでして助けたい? 174 00:18:21,325 --> 00:18:26,731 無論 お前に 自責の念もあるんだろうが 175 00:18:26,731 --> 00:18:30,601 娘が 何としても生きたいと 言っていたのなら分かる 176 00:18:30,601 --> 00:18:33,538 だが 娘は もう沼の一部になることを 177 00:18:33,538 --> 00:18:35,940 望んでいたんだろう? 178 00:18:35,940 --> 00:18:40,311 そのほうが 本人にとって幸せって事情も 179 00:18:40,311 --> 00:18:42,246 この世にはある 180 00:18:42,246 --> 00:18:46,984 酷なようだがな 181 00:18:46,984 --> 00:18:50,388 例の緑の杯だが あ? 182 00:18:50,388 --> 00:18:55,226 あれは もともと くだんの少年の祖母のものでな 183 00:18:55,226 --> 00:18:59,831 蟲でも人でもなくなっていた 彼女が少年の目に映るためには 184 00:18:59,831 --> 00:19:06,104 蟲から授かったという あの杯を復元するしかなかった 185 00:19:06,104 --> 00:19:10,441 そうすれば 決して人には戻れなくなるが 186 00:19:10,441 --> 00:19:16,114 俺は彼女の希望のもとに 蟲にしたんだ 187 00:19:16,114 --> 00:19:20,685 だが 本当に そうして よかったのかは分からない 188 00:19:20,685 --> 00:19:27,425 「蟲の側へ行く」ということは 普通に死ぬこととは違う 189 00:19:27,425 --> 00:19:32,263 蟲とは 生と死の間にあるものだ 190 00:19:32,263 --> 00:19:37,568 人を指すもののようで 物質を指すものでもある 191 00:19:37,568 --> 00:19:41,539 死にながら 生きているようなもの 192 00:19:41,539 --> 00:19:44,942 それは一度きりの瞬間の死より 193 00:19:44,942 --> 00:19:50,114 想像を絶する 修羅だとは思わんか 194 00:19:50,114 --> 00:19:52,917 少しずつ 人の心は摩滅される 195 00:19:52,917 --> 00:19:56,687 そんなところへ行こうというのに 196 00:19:56,687 --> 00:20:01,893 あいつは 最後に見たとき 大事そうに晴れ着を着ていた 197 00:20:01,893 --> 00:20:08,393 それ以上の酷な事情ってのは そうあるもんじゃないだろう 198 00:20:10,368 --> 00:20:16,774 何も来ないね 199 00:20:16,774 --> 00:20:19,774 今 何か音? 200 00:20:22,246 --> 00:20:25,746 来たぞ! 201 00:20:28,152 --> 00:20:31,589 な… 何だ こりゃ 202 00:20:31,589 --> 00:20:34,625 勢い 殺せ 網 持ってかれっぞ! 203 00:20:34,625 --> 00:20:37,328 撃つな 中に人がいる! 204 00:20:37,328 --> 00:20:39,728 えっ? 205 00:20:42,500 --> 00:20:45,700 引っ張れ! 206 00:20:57,648 --> 00:20:59,884 す… すり抜けちまった 207 00:20:59,884 --> 00:21:02,784 人がいたぞ 赤い着物の… 208 00:21:23,107 --> 00:21:27,707 もう 手遅れだったのか? 209 00:21:48,399 --> 00:21:52,036 おい どうなってんだ この大群は! 210 00:21:52,036 --> 00:21:53,971 こっちもだ 211 00:21:53,971 --> 00:21:58,271 えっ… ウワーッ!何だ こりゃ… 212 00:22:02,680 --> 00:22:04,615 ギンコ 娘が見つかった 213 00:22:04,615 --> 00:22:08,486 生きている 214 00:22:08,486 --> 00:22:12,986 ただし 寒天状だったそうだ 215 00:22:14,925 --> 00:22:18,763 先生! 娘は どんなだい? 216 00:22:18,763 --> 00:22:23,334 海水で あの緑のやつの成分は 抜けたみたいだな 217 00:22:23,334 --> 00:22:26,370 うん 今は白玉状くらいかね 218 00:22:26,370 --> 00:22:30,941 あの緑のやつの死骸を食いに 魚が集まってきてんだ 219 00:22:30,941 --> 00:22:34,845 沖は魚で真っ黒だ 一目 拝ませてくれ 220 00:22:34,845 --> 00:22:39,645 あの娘は よいものを連れてきてくれた 221 00:22:43,821 --> 00:22:46,057 おい! 222 00:22:46,057 --> 00:22:48,757 聞こえるか? 223 00:22:59,070 --> 00:23:04,975 海へ出たら… 沼が死んでいくのが 224 00:23:04,975 --> 00:23:07,812 分かった 225 00:23:07,812 --> 00:23:15,519 自分が沼に溶けていくの すごく すごく怖かった 226 00:23:15,519 --> 00:23:20,991 けど… 沼が死んでいくのが 227 00:23:20,991 --> 00:23:23,291 悲しかった 228 00:23:28,666 --> 00:23:31,335 あれは 数万年は生きている 229 00:23:31,335 --> 00:23:34,835 お前は その最後の旅に同行したわけだ 230 00:23:37,141 --> 00:23:40,441 会えて よかったな 231 00:23:42,913 --> 00:23:45,413 うん 232 00:23:50,221 --> 00:23:53,224 やあ いお 233 00:23:53,224 --> 00:23:55,524 化野先生 234 00:23:57,661 --> 00:24:00,898 おお 今日も大漁だな ええ 235 00:24:00,898 --> 00:24:03,834 遠方の魚も集まってきてるんです 236 00:24:03,834 --> 00:24:08,572 沼の死骸を食べて こんなに大きく 237 00:24:08,572 --> 00:24:11,475 髪 すっかり黒くなったな 238 00:24:11,475 --> 00:24:16,814 ええ だから もう 水の中で息はできないんだけど 239 00:24:16,814 --> 00:24:19,784 もう それでいいの 240 00:24:19,784 --> 00:24:22,420 沼の死んだ この海で 241 00:24:22,420 --> 00:24:27,320 自分の力で 生きていきたい 242 00:24:31,128 --> 00:24:33,497 また 沼だ 243 00:24:33,497 --> 00:24:37,501 1 2 3 4… 244 00:24:37,501 --> 00:24:42,139 浮上しながら進んでたのは… へっ 245 00:24:42,139 --> 00:24:46,539 子孫を残すためだったんだな 246 00:24:49,914 --> 00:24:54,452 沼は生まれ やがて よどみ 247 00:24:54,452 --> 00:24:59,190 その懐に築き続けた 宇宙の終えんには 248 00:24:59,190 --> 00:25:04,390 自らの足を持ち 動き始める 249 00:31:17,000 --> 00:31:20,904 今日も日が昇り また沈む 250 00:31:20,904 --> 00:31:25,609 朝咲く花が 首から落ちる 251 00:31:25,609 --> 00:31:30,180 今日も日が沈み また昇る 252 00:31:30,180 --> 00:31:34,418 辺り一面 花が咲く 253 00:31:34,418 --> 00:31:38,618 けれど 昨日とは別の花 254 00:31:46,563 --> 00:31:51,335 おーい まだ着かんのか? 255 00:31:51,335 --> 00:31:54,238 もうじきですよ 256 00:31:54,238 --> 00:31:58,542 あの… 医者の先生が 紹介してくれたってことは 257 00:31:58,542 --> 00:32:01,178 あなたも そうなんですよね? 258 00:32:01,178 --> 00:32:05,549 いいや 蟲師ってんだ 259 00:32:05,549 --> 00:32:08,986 露骨に不安がるなよ 話を聞いた感じじゃ 260 00:32:08,986 --> 00:32:12,189 確かに 俺の範ちゅうだよ あ… ごめんなさい 261 00:32:12,189 --> 00:32:15,092 初めて聞いたもんだから 262 00:32:15,092 --> 00:32:18,492 あっ 見えました 263 00:32:31,341 --> 00:32:34,011 あこや 知ってるか? 264 00:32:34,011 --> 00:32:37,714 海の向こうに行けば 広くて きれいな土地があって 265 00:32:37,714 --> 00:32:40,617 みんな 幸せに暮らしてるんだ 266 00:32:40,617 --> 00:32:45,155 いつか行こうよ 連れてってやるよ 267 00:32:45,155 --> 00:32:49,355 だから そんな顔してるなよ 268 00:32:52,396 --> 00:32:54,665 うん 269 00:32:54,665 --> 00:32:57,365 そうそう 270 00:33:00,237 --> 00:33:03,140 なあ 何で 島を遠巻きに見てんだ? 271 00:33:03,140 --> 00:33:05,709 じき 潮が変わるんだよ 272 00:33:05,709 --> 00:33:10,647 ここらは複雑な潮目になってて 流れも速く 強い 273 00:33:10,647 --> 00:33:15,447 島に入れるのは 大潮の日 僅かな時間だけなんだ 274 00:33:18,088 --> 00:33:21,425 なるほど 簡単には入れそうにねえな 275 00:33:21,425 --> 00:33:24,225 頭 気を付けてください 276 00:33:36,773 --> 00:33:39,810 お前さん 漁師か何かか? 277 00:33:39,810 --> 00:33:42,579 この島に 漁師はいない 278 00:33:42,579 --> 00:33:47,779 月に一度しか 安全に船を出せる日が ないからね 279 00:33:52,255 --> 00:33:55,158 岩しかないな うん 280 00:33:55,158 --> 00:33:59,529 土が少なくて 貧しい島なんだ 281 00:33:59,529 --> 00:34:01,865 みんな 何とか生きてる 282 00:34:01,865 --> 00:34:04,701 生き神を心の支えにね 283 00:34:04,701 --> 00:34:07,637 生き神? あっ 人だ 隠れて 284 00:34:07,637 --> 00:34:11,308 ごめんね これは食べらんないんだよ 285 00:34:11,308 --> 00:34:17,014 生き神様に差し上げて お前の病気 治してもらわなきゃね 286 00:34:17,014 --> 00:34:19,049 さあ おぶさりな 287 00:34:19,049 --> 00:34:22,853 今に きっと楽になる なあ おい 288 00:34:22,853 --> 00:34:27,357 俺たちは 何で 隠れなきゃならねえんだ? 289 00:34:27,357 --> 00:34:30,961 俺が見てほしいのは その生き神なんだ 290 00:34:30,961 --> 00:34:33,930 あ? あの子は ただの人間だったんだ 291 00:34:33,930 --> 00:34:36,400 どうか 助けてください 292 00:34:36,400 --> 00:34:40,500 みんな だまされているだけなんだ 293 00:34:44,508 --> 00:34:46,908 あの子だよ 294 00:34:53,083 --> 00:34:57,921 隣が父親の この家の当主だ 295 00:34:57,921 --> 00:35:01,358 彼女の身には 毎日 奇跡が起こる 296 00:35:01,358 --> 00:35:06,158 今日は それを信者の人たちが 参拝できる日なんだ 297 00:35:37,594 --> 00:35:40,494 呼吸も完全に止まった 298 00:35:43,533 --> 00:35:45,669 今の見たか? え? 299 00:35:45,669 --> 00:35:47,604 お前には見えんのか 300 00:35:47,604 --> 00:35:51,475 さあ しっかりと その香を吸い込みなされ 301 00:35:51,475 --> 00:35:56,313 心の苦しみも病も 取り除いてくださるでしょう 302 00:35:56,313 --> 00:36:01,118 不老不死なる生き神様の 御力です 303 00:36:01,118 --> 00:36:05,021 あとは また元の姿に回復していくんだ 304 00:36:05,021 --> 00:36:09,421 夜明けには 何もなかったように目を覚ます 305 00:36:11,595 --> 00:36:15,932 話のとおりだったが さすがに驚いたな 306 00:36:15,932 --> 00:36:18,201 あれで病が治るって? 307 00:36:18,201 --> 00:36:20,670 あんなの デタラメだ! 308 00:36:20,670 --> 00:36:24,207 俺の母さんは 治らずに死んじゃったよ 309 00:36:24,207 --> 00:36:29,179 畑の収穫を ほとんど 生き神に貢いでたのに 310 00:36:29,179 --> 00:36:34,518 あの生き神信仰は 当主の一族が この島で始めたんだ 311 00:36:34,518 --> 00:36:40,824 潮を読み 初めて島に入ったのが 当主の先祖の一団だったらしい 312 00:36:40,824 --> 00:36:47,631 それ以来 当主の一族からは 代々 生き神が現れるようになった 313 00:36:47,631 --> 00:36:51,468 それを聞いた人たちが この島の奇跡を慕って 314 00:36:51,468 --> 00:36:55,338 少しずつ 集まり始めたんだ 315 00:36:55,338 --> 00:37:00,177 1人 生き神が死ぬと また別の生き神が現れる 316 00:37:00,177 --> 00:37:03,380 半年と経たないうちにね 317 00:37:03,380 --> 00:37:07,384 そうしていくうち あの生き神の出す匂いで 318 00:37:07,384 --> 00:37:11,021 不治の病が治ったという人も出た 319 00:37:11,021 --> 00:37:14,721 俺は とても信じる気になれなかった 320 00:37:16,660 --> 00:37:18,960 けど… 321 00:37:22,165 --> 00:37:25,535 あこや 322 00:37:25,535 --> 00:37:29,105 また 外の者と遊んでおるのか 323 00:37:29,105 --> 00:37:33,944 来なさい 大事な用がある 324 00:37:33,944 --> 00:37:39,883 先代の生き神が死んで ひと月のころだった 325 00:37:39,883 --> 00:37:45,555 あれも 昨日みたいな 大潮の日だったのを覚えてる 326 00:37:45,555 --> 00:37:47,857 そして あれきり 327 00:37:47,857 --> 00:37:52,696 あんな 言葉も通じない 昨日のことも覚えていられない 328 00:37:52,696 --> 00:37:57,067 人で ないものに なってしまったんだ 329 00:37:57,067 --> 00:38:00,804 それが どういうことだったか しばらくして分かった 330 00:38:00,804 --> 00:38:05,008 ほう また 病が治った者が出たのか 331 00:38:05,008 --> 00:38:09,846 やれやれ 暗示で治ってしまうとは めでたいものだ 332 00:38:09,846 --> 00:38:13,316 あこやも 出来のよい子供じゃなかったが 333 00:38:13,316 --> 00:38:17,687 孝行できて満足だろう 334 00:38:17,687 --> 00:38:19,623 許せなくて 俺は 335 00:38:19,623 --> 00:38:22,525 あこやを治せる人を 探しに出たんだ 336 00:38:22,525 --> 00:38:25,428 もう戻らないと言って 島を出た 337 00:38:25,428 --> 00:38:29,866 戻ってるのが知れたら 当主は 俺を疑うだろう 338 00:38:29,866 --> 00:38:33,403 正直 ギンコさん あんたの身も危険だ 339 00:38:33,403 --> 00:38:36,940 ハア… まっずいとこ来ちまったな 340 00:38:36,940 --> 00:38:40,810 お願いだよ このまま黙ってるなんて嫌だよ 341 00:38:40,810 --> 00:38:43,110 うん? 342 00:38:45,649 --> 00:38:48,151 まあ つきあってやるよ 343 00:38:48,151 --> 00:38:51,451 早いとこ 本人 診させてくれよな 344 00:39:02,232 --> 00:39:04,567 脈が 異常なほど速い 345 00:39:04,567 --> 00:39:08,167 体温も 人の常温を はるかに超えている 346 00:39:21,318 --> 00:39:24,154 そろそろだな 347 00:39:24,154 --> 00:39:26,656 明かりを頼む 348 00:39:26,656 --> 00:39:29,559 ちょいと失礼するよ 349 00:39:29,559 --> 00:39:34,064 いた 蟲だ 350 00:39:34,064 --> 00:39:35,999 うん? 351 00:39:35,999 --> 00:39:39,803 あっ! 352 00:39:39,803 --> 00:39:44,474 子を産んで 親が死んだんだ 何が見えたの? 353 00:39:44,474 --> 00:39:47,844 原因は 鼻腔に寄生しているものだ 354 00:39:47,844 --> 00:39:52,248 だが こいつを取って 元に戻れるのか? 355 00:39:52,248 --> 00:39:54,250 患者は この子だけなのか? 356 00:39:54,250 --> 00:39:57,954 ほかにも数人いる 357 00:39:57,954 --> 00:40:02,525 あの岬に隔離されてるんだ 358 00:40:02,525 --> 00:40:06,196 彼らも皆 あこやと同じなんだ 359 00:40:06,196 --> 00:40:10,596 昔から ごく まれに そういう人が出る 360 00:40:13,336 --> 00:40:18,975 代々の当主は 彼らを たたえて ここに住まわせてきたんだ 361 00:40:18,975 --> 00:40:23,580 生き神に近づけた 信仰の厚き者としてね 362 00:40:23,580 --> 00:40:26,516 残された家族は祝福してる 363 00:40:26,516 --> 00:40:29,419 自分たちの血筋に すべての苦しみから 364 00:40:29,419 --> 00:40:33,419 解放された者が出たってね 365 00:40:42,732 --> 00:40:47,537 結局 新しい発見は なかったか 366 00:40:47,537 --> 00:40:49,572 なあ あの子が発病した日も 367 00:40:49,572 --> 00:40:51,941 大潮だったな? うん 368 00:40:51,941 --> 00:40:57,247 大潮の日しか入れない場所とか どっか思いつくか? 369 00:40:57,247 --> 00:41:00,447 岬の先端の洞 370 00:41:03,052 --> 00:41:05,352 あの辺りだよ 371 00:41:07,724 --> 00:41:11,561 何か探してるの? いた! 372 00:41:11,561 --> 00:41:14,798 見ろ こいつも寄生されている 373 00:41:14,798 --> 00:41:19,398 ほかにも いるはずだ この一帯を探してみてくれ 374 00:41:23,440 --> 00:41:28,340 また2匹 見つかったよ ああ 置いといてくれ 375 00:41:34,451 --> 00:41:38,288 ナギ! 376 00:41:38,288 --> 00:41:42,025 両方 見つかったぞ 377 00:41:42,025 --> 00:41:44,694 ううう… 378 00:41:44,694 --> 00:41:47,697 大丈夫だから あこや 静かに 379 00:41:47,697 --> 00:41:51,468 一瞬で済む ああ… 380 00:41:51,468 --> 00:41:53,468 ここか 381 00:42:08,017 --> 00:42:10,417 あこや 382 00:42:12,755 --> 00:42:15,091 ナ… ギ? 383 00:42:15,091 --> 00:42:18,962 あこや!よかった… 384 00:42:18,962 --> 00:42:21,762 よかった 385 00:42:27,537 --> 00:42:30,540 そう… 父様は どうして? 386 00:42:30,540 --> 00:42:33,776 あこや 島を出よう 387 00:42:33,776 --> 00:42:36,346 次の大潮まで あと3日 388 00:42:36,346 --> 00:42:41,184 当主様に治ってることを 隠し通すんだ 389 00:42:41,184 --> 00:42:45,054 でも 私 この島が好きよ 390 00:42:45,054 --> 00:42:49,859 父様も きっと 悪かったって言ってくれる 391 00:42:49,859 --> 00:42:55,064 私が逃げれば ほかの誰かが生き神になるだけ 392 00:42:55,064 --> 00:42:57,066 その原因を持ち出せばいい 393 00:42:57,066 --> 00:43:00,870 この島から 蟲の悪用を絶つためにはな 394 00:43:00,870 --> 00:43:04,674 生き神になった日のこと 覚えてるか? 395 00:43:04,674 --> 00:43:09,512 あの日は 父様に呼ばれて 396 00:43:09,512 --> 00:43:17,020 あこや さあ お前のために採ってきたんだよ 397 00:43:17,020 --> 00:43:21,257 ああ きれい 398 00:43:21,257 --> 00:43:25,757 いい香りだろう 吸うてごらん 399 00:43:30,700 --> 00:43:34,437 昼顔に似た 香りの強い花? 400 00:43:34,437 --> 00:43:36,506 あの岬の洞で見たよ 401 00:43:36,506 --> 00:43:39,876 暗がりに 確かに昼顔が咲いてた 402 00:43:39,876 --> 00:43:42,412 あれが原因? 403 00:43:42,412 --> 00:43:44,480 3日後か うん 404 00:43:44,480 --> 00:43:48,217 とにかく 当主様に 気付かれないようにしなきゃ 405 00:43:48,217 --> 00:43:52,917 あこや それまでは生き神を演じてくれ 406 00:44:08,538 --> 00:44:11,638 どうした 調子が戻らんか? 407 00:44:15,945 --> 00:44:19,148 何だか 不安で たまらないの 408 00:44:19,148 --> 00:44:24,954 生き神だったころは 日が暮れて 衰え始めて眠りにつくとき 409 00:44:24,954 --> 00:44:30,593 いつも とても満たされた気持ちで 目を閉じられたのに 410 00:44:30,593 --> 00:44:33,496 今は恐ろしいの 411 00:44:33,496 --> 00:44:39,602 目が覚めても ただ昨日までの 現実の続きが待っている 412 00:44:39,602 --> 00:44:43,773 目の前に広がる あてどない ぼう大な時間に 413 00:44:43,773 --> 00:44:47,210 足が すくむ 414 00:44:47,210 --> 00:44:52,148 お前さん 蟲の時間で 生きてたんじゃないかな 415 00:44:52,148 --> 00:44:54,951 あの蟲は 寄生したの動物の体内時間を 416 00:44:54,951 --> 00:44:57,820 同調させるものだったんだ 417 00:44:57,820 --> 00:45:00,723 生き物の寿命は 種によって それぞれ違うが 418 00:45:00,723 --> 00:45:04,594 生涯 脈打つ回数は ほぼ同じといわれてる 419 00:45:04,594 --> 00:45:09,098 体内に流れる時間の密度は 皆 違うってことだ 420 00:45:09,098 --> 00:45:11,801 あの蟲の生涯は およそ1日 421 00:45:11,801 --> 00:45:16,339 それを お前さんは 毎日 味わっていた 422 00:45:16,339 --> 00:45:20,939 そう… それでかな 423 00:45:23,880 --> 00:45:28,751 一日一日 一刻一刻が 424 00:45:28,751 --> 00:45:32,155 息をのむほど 新しくて 425 00:45:32,155 --> 00:45:38,555 何かを考えようとしても 追いつかないくらい 426 00:45:45,368 --> 00:45:51,268 いつも 心の中が いっぱいだったの 427 00:45:56,979 --> 00:46:00,379 あと半時もすれば 入れるよ 428 00:46:04,721 --> 00:46:06,656 あこや 429 00:46:06,656 --> 00:46:08,624 おや おかしいねえ 430 00:46:08,624 --> 00:46:12,028 とうに 衰弱している時間だというのに 431 00:46:12,028 --> 00:46:14,497 と… 父様 私 432 00:46:14,497 --> 00:46:18,501 どうしてだか 治ってしまったの 黙れ! 433 00:46:18,501 --> 00:46:22,004 ナギが戻っているそうだね 434 00:46:22,004 --> 00:46:25,775 どこへ行ったか知っているね? 435 00:46:25,775 --> 00:46:30,575 ああ 今日は大潮だったね 436 00:46:42,225 --> 00:46:46,562 暗闇に昼顔 すごい匂いだ 437 00:46:46,562 --> 00:46:49,132 この部分が蟲の巣か 438 00:46:49,132 --> 00:46:53,736 動物に寄生したほうが 確実に子を残せるんだろうな 439 00:46:53,736 --> 00:46:57,036 あっ ギンコさん 440 00:47:01,277 --> 00:47:04,680 生き神様 どちらへ? 441 00:47:04,680 --> 00:47:10,820 あの… 岬の洞って どこにあるか教えてください 442 00:47:10,820 --> 00:47:13,656 おい 生き神様が言葉を… 443 00:47:13,656 --> 00:47:16,959 ごめんなさい すべて話しますから! 444 00:47:16,959 --> 00:47:22,159 お願い ナギを助けて! 445 00:47:24,167 --> 00:47:28,004 ナギ ここで何をしている? このっ… 446 00:47:28,004 --> 00:47:31,307 よくも のうのうと… よせ!どうする気だよ? 447 00:47:31,307 --> 00:47:35,178 ほっとけ どのみち やつらは長くはない 448 00:47:35,178 --> 00:47:40,950 蟲を安易に利用し続ければ 人は少しずつ 正気を奪われていく 449 00:47:40,950 --> 00:47:43,319 いずれ あんたらは破滅する 450 00:47:43,319 --> 00:47:46,856 蟲を扱うには 不相応だったんだよ 451 00:47:46,856 --> 00:47:50,760 挑発してるけど 何か考え あるのかな… 452 00:47:50,760 --> 00:47:55,331 さてと ナギ… 逃げるぞ! ええっ! 453 00:47:55,331 --> 00:47:59,831 追え むくろは浮かばんようにやれ はい! 454 00:48:04,807 --> 00:48:07,107 さて 455 00:48:10,513 --> 00:48:13,783 うん? 456 00:48:13,783 --> 00:48:16,118 花を持っていたぞ ああ 457 00:48:16,118 --> 00:48:18,454 あこや殿の言ったとおりだ 458 00:48:18,454 --> 00:48:20,454 許せん 459 00:48:24,293 --> 00:48:28,130 追っ手は まいたみたいだけど 潮が上がってきた 460 00:48:28,130 --> 00:48:31,830 くそっ もって あと半時かな 461 00:48:34,070 --> 00:48:36,839 人だ いたぞ!ナギたちだ 462 00:48:36,839 --> 00:48:38,808 おーい よけてろ 463 00:48:38,808 --> 00:48:42,108 岩穴を広げるからな 464 00:48:54,223 --> 00:48:58,728 私が 殺したんだ 465 00:48:58,728 --> 00:49:01,631 父様… 466 00:49:01,631 --> 00:49:03,633 父様! 467 00:49:03,633 --> 00:49:07,436 さあ お前のために採ってきたんだよ 468 00:49:07,436 --> 00:49:10,836 そんな顔してるなよ 469 00:49:15,044 --> 00:49:17,947 いい香りだろう 470 00:49:17,947 --> 00:49:20,747 吸うてごらん 471 00:49:22,752 --> 00:49:25,421 あっ! 472 00:49:25,421 --> 00:49:28,424 あこや! 473 00:49:28,424 --> 00:49:30,826 どうして… 474 00:49:30,826 --> 00:49:37,333 どうして! ごめん… ね ナギ 475 00:49:37,333 --> 00:49:44,106 向こうなら 生きていけるの 476 00:49:44,106 --> 00:49:46,575 最初より 強く寄生している 477 00:49:46,575 --> 00:49:49,175 これを取り出すのは… 478 00:49:52,048 --> 00:49:54,848 もう いいんだ 479 00:50:07,196 --> 00:50:11,500 あこやが 心底 満たされた表情をするのは 480 00:50:11,500 --> 00:50:14,400 生き神でいるときだけだったから 481 00:50:22,144 --> 00:50:26,482 今日も日が昇り また沈む 482 00:50:26,482 --> 00:50:31,320 朝咲く花が 首から落ちる 483 00:50:31,320 --> 00:50:35,491 今日も日が沈み また昇る 484 00:50:35,491 --> 00:50:39,695 辺り一面 花が咲く 485 00:50:39,695 --> 00:50:43,032 けれど 昨日とは別の花 486 00:50:43,032 --> 00:50:48,838 されど今日も きれいな花 487 00:50:48,838 --> 00:50:53,142 あの日 大潮を逃してしまった ギンコさんは 488 00:50:53,142 --> 00:50:56,545 ひと月の間 島に残った 489 00:50:56,545 --> 00:51:01,784 その間 岬の人たちを すべて 治療することができた 490 00:51:01,784 --> 00:51:06,455 けれど 大潮が来て あの洞が開くたび 491 00:51:06,455 --> 00:51:10,760 誰かが 生き神に戻っている 492 00:51:10,760 --> 00:51:14,630 恐らく何人かは 治療を ありがたく思っちゃいない 493 00:51:14,630 --> 00:51:17,533 いずれ また花を吸うだろう 494 00:51:17,533 --> 00:51:21,103 あこやが言ってたんだよ 恐ろしいの 495 00:51:21,103 --> 00:51:24,974 目の前に広がる あてどない膨大な時間に 496 00:51:24,974 --> 00:51:28,477 足が すくむ 497 00:51:28,477 --> 00:51:31,447 俺たちも似たようなものだよ 498 00:51:31,447 --> 00:51:36,852 これから 何を糧に 生きていけばいいか分からない 499 00:51:36,852 --> 00:51:40,723 普通に生きりゃ いいんだよ 500 00:51:40,723 --> 00:51:43,759 魚が取れりゃ 少しは楽になるだろう 501 00:51:43,759 --> 00:51:48,464 いつでも船を出せるよう あの洞を 皆で削ればいい 502 00:51:48,464 --> 00:51:51,864 容易なことじゃないだろう 503 00:51:53,869 --> 00:51:56,769 だが お前の目の前には 504 00:51:59,008 --> 00:52:04,308 果てしなく ぼう大な時間が 広がっているんだからな