1 00:04:41,042 --> 00:04:43,811 その竹林で休んでいると 2 00:04:43,811 --> 00:04:47,682 奇妙な男に声を掛けられた 3 00:04:47,682 --> 00:04:51,552 あの… もし 旅の方で? 4 00:04:51,552 --> 00:04:53,888 ああ そうだが 5 00:04:53,888 --> 00:04:56,924 それなら 山を下りるんでしょうな? 6 00:04:56,924 --> 00:05:00,061 ああ この西のほうへな 7 00:05:00,061 --> 00:05:05,833 それは ちょうどいい ついて歩いて かまわんだろうか? 8 00:05:05,833 --> 00:05:08,769 道に迷ったのか? ああ 9 00:05:08,769 --> 00:05:12,073 どうしても 竹林から出られんのだ 10 00:05:12,073 --> 00:05:16,610 よほどの方向音痴だな 困ってたんだよ 11 00:05:16,610 --> 00:05:21,248 もう 3年も人通りがなくてな 12 00:05:21,248 --> 00:05:25,820 3年? ああ おかしいだろうが 13 00:05:25,820 --> 00:05:30,520 俺は ずっと ここから出られずにいるんだよ 14 00:05:40,267 --> 00:05:44,705 もともと ふもとの里の者なんだがな 15 00:05:44,705 --> 00:05:47,942 何だ 地元もんかよ 16 00:05:47,942 --> 00:05:52,780 日も見えないわけでなし 何で 方角を失うのやら… 17 00:05:52,780 --> 00:05:57,351 それが 自分でも分からんのだよ 18 00:05:57,351 --> 00:06:01,751 しかし 広い竹林だな 19 00:06:05,025 --> 00:06:07,025 あっ 20 00:06:16,737 --> 00:06:21,308 くそっ また戻った 21 00:06:21,308 --> 00:06:25,613 どういうこった? 磁石は 狂っちゃいない 22 00:06:25,613 --> 00:06:28,282 俺たちは 初め 西へ向かってる 23 00:06:28,282 --> 00:06:31,485 なのに 気が付いたら進路がズレてて 24 00:06:31,485 --> 00:06:33,888 ズレて… ズレたあげく 25 00:06:33,888 --> 00:06:37,625 一周してる 26 00:06:37,625 --> 00:06:42,963 そうなんだ 自分の意志で進めなくなる 27 00:06:42,963 --> 00:06:47,368 何なんだ こりゃ? あんたも捕まったんだな 28 00:06:47,368 --> 00:06:52,239 こうなったら とりあえず ここで 俺らと暮らすかい? 29 00:06:52,239 --> 00:06:54,775 冗談じゃねえぞ おい 30 00:06:54,775 --> 00:06:57,711 ん… ほかにもいるのか? 31 00:06:57,711 --> 00:07:01,849 ああ もともと ここに住んでた親子があってな 32 00:07:01,849 --> 00:07:05,119 あっ 33 00:07:05,119 --> 00:07:07,488 キスケ 34 00:07:07,488 --> 00:07:11,759 母は もう いないが 娘とは 今じゃ夫婦だ 35 00:07:11,759 --> 00:07:14,261 もともと 幼なじみだったし 36 00:07:14,261 --> 00:07:18,632 まあ 不幸中の幸いだ へえ 37 00:07:18,632 --> 00:07:22,403 旅の方だ ちょっと話をな 38 00:07:22,403 --> 00:07:25,606 嫁のセツだ 39 00:07:25,606 --> 00:07:27,541 ギンコさん 40 00:07:27,541 --> 00:07:29,543 つきあわせて すまなかったな 41 00:07:29,543 --> 00:07:32,012 俺は もう家に戻るよ 42 00:07:32,012 --> 00:07:35,249 あんたも休んでいくかい? いや 43 00:07:35,249 --> 00:07:39,954 もう少し別の方法を考えてみるよ そうか 44 00:07:39,954 --> 00:07:43,254 それじゃ 元気でな 45 00:07:45,726 --> 00:07:48,963 「元気でな」? 46 00:07:48,963 --> 00:07:52,363 どうも 妙だな 47 00:07:58,339 --> 00:08:01,175 あっ 48 00:08:01,175 --> 00:08:03,275 抜けた 49 00:08:06,013 --> 00:08:08,282 やれやれだ 大丈夫かねえ? 50 00:08:08,282 --> 00:08:11,185 分からないよ… 何か? 51 00:08:11,185 --> 00:08:16,023 いや… あんた あの竹林から出てきなすったろ? 52 00:08:16,023 --> 00:08:19,994 ああ 中で 男を見なかったかい? 53 00:08:19,994 --> 00:08:24,265 ああ ありゃ からかわれたのかね? 54 00:08:24,265 --> 00:08:27,935 何なんだ あの男は? 55 00:08:27,935 --> 00:08:30,938 化け物に捕らわれちまってんだよ 56 00:08:30,938 --> 00:08:34,108 あんた 無事でよかったよ 57 00:08:34,108 --> 00:08:36,877 化け物? ああ あん中にゃ 58 00:08:36,877 --> 00:08:38,946 白い竹が生えて… よしなよ 59 00:08:38,946 --> 00:08:44,846 そんな 里の名 汚すこと よそ様に言うんじゃないよ 60 00:08:48,355 --> 00:08:50,291 うん? 61 00:08:50,291 --> 00:08:54,962 ギンコさん あんた 出られなかったのかい? 62 00:08:54,962 --> 00:08:57,631 いや 見たいものがあってな 63 00:08:57,631 --> 00:09:01,068 戻ってきた 64 00:09:01,068 --> 00:09:05,773 この竹林に白い竹が生えてると 里で聞いた 65 00:09:05,773 --> 00:09:12,012 それと あんたや嫁さんのことも 少しな 66 00:09:12,012 --> 00:09:16,817 それを見て どうしようってんだい? 67 00:09:16,817 --> 00:09:19,520 それが 俺の なりわいの範ちゅうのものなら 68 00:09:19,520 --> 00:09:25,326 詳しく話を聞きたい 非常に まれな現象なんでな 69 00:09:25,326 --> 00:09:27,628 もしかすると あんたをここから出す 70 00:09:27,628 --> 00:09:29,563 すべもあるかもしれん 71 00:09:29,563 --> 00:09:33,233 あんたが もし これ以上 踏み込むなと言うなら 72 00:09:33,233 --> 00:09:36,333 1人でやるが 73 00:09:40,140 --> 00:09:42,540 こっちだ 74 00:09:50,985 --> 00:09:56,123 これ以外にも あと4本ある ふーん 75 00:09:56,123 --> 00:09:58,892 やっぱり 間借り竹だな ん? 76 00:09:58,892 --> 00:10:02,229 まずは 聞かせてもらえるか? 77 00:10:02,229 --> 00:10:07,935 この竹林で起こったことの すべてをな 78 00:10:07,935 --> 00:10:15,075 俺の里の子らが 聞かされて育った話だ 79 00:10:15,075 --> 00:10:19,480 この竹林に若い夫婦が住んでいた 80 00:10:19,480 --> 00:10:22,116 夫婦には 長年 子ができず 81 00:10:22,116 --> 00:10:26,286 夫は 陰気な家を空けるようになった 82 00:10:26,286 --> 00:10:30,658 女は 草木と話をするような 変わり者だったが 83 00:10:30,658 --> 00:10:35,329 やがて 夜な夜な 竹林を はいかいするようになった 84 00:10:35,329 --> 00:10:39,767 そして あるとき 「子ができたようだ」と言う 85 00:10:39,767 --> 00:10:44,605 夫は女房を怪しんで ある晩 女房の後をつけた 86 00:10:44,605 --> 00:10:47,274 すると… 87 00:10:47,274 --> 00:10:53,414 女房は 陶然と 白い竹に すがりついていた 88 00:10:53,414 --> 00:10:56,316 夫は肝を潰して逃げ出したが 89 00:10:56,316 --> 00:11:00,521 里の人々に とがめられ 家へ戻った 90 00:11:00,521 --> 00:11:09,229 すると 女は竹の子を 赤子のように抱えていた 91 00:11:09,229 --> 00:11:13,701 竹の子を産んだってか? 本人は そう言ったんだと 92 00:11:13,701 --> 00:11:17,004 旦那への嫌がらせだったんじゃ? 93 00:11:17,004 --> 00:11:22,443 結果 夫は里から逃げ出したし 俺らも そう思ってた 94 00:11:22,443 --> 00:11:27,147 実際 俺らが子供のころ 竹の子を見にきたときも 95 00:11:27,147 --> 00:11:30,484 普通の娘にしか 見えなかったからね 96 00:11:30,484 --> 00:11:34,088 それが セツだった 97 00:11:34,088 --> 00:11:36,990 そのころ すでに 母親は亡くなっていて 98 00:11:36,990 --> 00:11:40,661 1人じゃ寂しかろうと 俺の妹や仲間らと 99 00:11:40,661 --> 00:11:43,263 よく ここで遊んだ 100 00:11:43,263 --> 00:11:47,801 ただ セツは異質なのだと 感じてはいた 101 00:11:47,801 --> 00:11:53,307 彼女は 水しか口にせず 決して竹林からは出なかった 102 00:11:53,307 --> 00:11:58,479 それでも 皆 セツのことは 好いていたんだ 103 00:11:58,479 --> 00:12:04,017 だが あるとき 俺らは 竹林から出られなくなった 104 00:12:04,017 --> 00:12:10,924 皆で ぐるぐる 竹林を回り 次第に1人2人と見えなくなった 105 00:12:10,924 --> 00:12:15,963 気が付けば 俺は1人で取り残されてた 106 00:12:15,963 --> 00:12:20,367 翌日 里に戻れた連中が 捜しにきてくれたが 107 00:12:20,367 --> 00:12:24,638 俺と一緒だと 皆 竹林から出られなかった 108 00:12:24,638 --> 00:12:28,208 フン やっぱり知ってて 俺を巻き込んだな 109 00:12:28,208 --> 00:12:30,210 ハハハ すまない 110 00:12:30,210 --> 00:12:34,815 よその人なら どうかなと思ったんだよ 111 00:12:34,815 --> 00:12:38,552 それからは セツの家で暮らした 112 00:12:38,552 --> 00:12:41,288 俺には 妹以外 肉親はなくて 113 00:12:41,288 --> 00:12:45,259 里の皆で 食うものなんかを世話してくれた 114 00:12:45,259 --> 00:12:51,031 俺と妹は 里の皆に 育ててもらったようなもんだ 115 00:12:51,031 --> 00:12:56,703 皆 家族みたいな いい里だった 116 00:12:56,703 --> 00:13:04,511 だが そんな暮らしが長引くと 里の者らの訪問も減っていった 117 00:13:04,511 --> 00:13:09,283 キスケ 寂しい? 118 00:13:09,283 --> 00:13:11,752 いいや 119 00:13:11,752 --> 00:13:15,455 なら よかった 120 00:13:15,455 --> 00:13:19,993 やがて セツは 子をみごもった 121 00:13:19,993 --> 00:13:21,993 だが… 122 00:13:27,601 --> 00:13:32,840 そのとき 初めて俺は… 123 00:13:32,840 --> 00:13:37,040 セツの素性を思い知った 124 00:13:39,079 --> 00:13:42,349 産婆は里へ逃げ帰り それ以来 125 00:13:42,349 --> 00:13:46,920 誰も ここへは 来なくなったってわけだ 126 00:13:46,920 --> 00:13:52,759 信じられんかもしれないが ま 驚いたがね 127 00:13:52,759 --> 00:13:58,131 で あんたの言う 「間借り竹」ってのは 何なんだ? 128 00:13:58,131 --> 00:14:02,836 なに 「竹」とつくが 草木ではない 129 00:14:02,836 --> 00:14:07,140 竹というのは 竹林一帯が同じ根を持つ 130 00:14:07,140 --> 00:14:09,576 それら すべてで 一つの子 131 00:14:09,576 --> 00:14:13,447 または 世代交代する家族といえる 132 00:14:13,447 --> 00:14:19,253 間借り竹は その根に寄生し 家族の一員になりすます蟲だ 133 00:14:19,253 --> 00:14:22,089 竹の根から養分を吸って育つが 134 00:14:22,089 --> 00:14:25,492 その分 竹林を茂らせる成分を根に戻し 135 00:14:25,492 --> 00:14:29,830 竹林を広げ 自分の子株を増やしてく 136 00:14:29,830 --> 00:14:34,334 あんたの女房は蟲と人との間の子 137 00:14:34,334 --> 00:14:37,004 俺たち蟲師は 「鬼蠱」と呼ぶ 138 00:14:37,004 --> 00:14:41,508 非常に まれな まざりモノだ 139 00:14:41,508 --> 00:14:45,946 少々 こたえたか? いや 140 00:14:45,946 --> 00:14:50,350 もう 娘の生まれた姿 見た後だしな 141 00:14:50,350 --> 00:14:55,322 親が何でも セツは… セツだ 142 00:14:55,322 --> 00:14:59,026 里の皆は そうは思えんようだが 143 00:14:59,026 --> 00:15:01,929 セツに会えば 分かってくれるはずなんだ 144 00:15:01,929 --> 00:15:06,266 いつかは 3人で 里で暮らすことだって 145 00:15:06,266 --> 00:15:11,171 それで 何とか外に出たいわけか ああ 146 00:15:11,171 --> 00:15:15,042 それに 妹のことが気がかりだ 147 00:15:15,042 --> 00:15:19,646 俺のせいで つらい思いしてないか… 148 00:15:19,646 --> 00:15:22,346 一つ 考えがある 149 00:15:39,766 --> 00:15:43,971 不自然に方向を変える 地点を結ぶと 150 00:15:43,971 --> 00:15:45,906 ほぼ 真円だ 151 00:15:45,906 --> 00:15:51,306 自分の意志で進めなくなる 152 00:15:56,483 --> 00:16:02,083 円の中心にあるのが あの株か 153 00:16:08,662 --> 00:16:14,101 それが あんた方の 命の水かい? 154 00:16:14,101 --> 00:16:17,904 ええ 少し分けてもらっていいか? 155 00:16:17,904 --> 00:16:20,807 あ… ごめんなさい 156 00:16:20,807 --> 00:16:24,544 大事な水だから よそ様には やるなって… 157 00:16:24,544 --> 00:16:26,613 母さんが 158 00:16:26,613 --> 00:16:29,383 キスケにも? え? 159 00:16:29,383 --> 00:16:33,754 一度だけ あげちゃったけど 160 00:16:33,754 --> 00:16:38,558 まだ 子供のころ 161 00:16:38,558 --> 00:16:43,397 なあ あんたは 里の者らに忌み嫌われるのは 162 00:16:43,397 --> 00:16:47,567 やはり つらいか? そうね 163 00:16:47,567 --> 00:16:52,005 でも あたしは キスケと娘がいればいい 164 00:16:52,005 --> 00:16:55,842 キスケは 出られなくて かわいそうだけど 165 00:16:55,842 --> 00:17:02,442 あたしは それが嬉しいの 166 00:17:07,454 --> 00:17:09,456 悪いが 167 00:17:09,456 --> 00:17:12,556 少し 失敬するよ 168 00:17:23,437 --> 00:17:27,674 やっぱり 出られないか 169 00:17:27,674 --> 00:17:32,674 こいつは やっかいだな 170 00:17:37,317 --> 00:17:39,886 キャア キャアー 171 00:17:39,886 --> 00:17:43,090 アハハハ… ああ 今年も また 172 00:17:43,090 --> 00:17:46,793 葉が落ちるな 173 00:17:46,793 --> 00:17:50,230 竹の子供が でっかくなるように 174 00:17:50,230 --> 00:17:53,900 竹の母ちゃんが 葉っぱのゴハン やってんだ 175 00:17:53,900 --> 00:17:58,738 ふーん 誰が母ちゃん? みんなだよ 176 00:17:58,738 --> 00:18:02,676 みんなで子供を育てるんだ 177 00:18:02,676 --> 00:18:09,516 父ちゃんは この季節には 里のことを思い出すよ 178 00:18:09,516 --> 00:18:13,720 広くてな 日が いっぱい差して 179 00:18:13,720 --> 00:18:16,690 にぎやかな里なんだよ 180 00:18:16,690 --> 00:18:21,290 お前にも 見せてやりたいな 181 00:18:39,346 --> 00:18:41,781 大丈夫よね? 182 00:18:41,781 --> 00:18:46,981 キスケは きっと大丈夫 183 00:18:52,325 --> 00:18:56,630 じゃあ 原因が分かったのか? ああ 184 00:18:56,630 --> 00:19:00,233 蟲には草木と違い 意思がある 185 00:19:00,233 --> 00:19:06,039 体の各部位に命令を下し 意思を遂行する 186 00:19:06,039 --> 00:19:12,445 この蟲にとっての体は この株を中心にした 竹林一円だ 187 00:19:12,445 --> 00:19:15,382 そして その意思を伝えるものは 188 00:19:15,382 --> 00:19:19,119 この セツたちの飲む水だ 189 00:19:19,119 --> 00:19:24,919 普通の水は この株に近づけても 反応はしない 190 00:19:28,795 --> 00:19:30,730 この水を持ってるだけで 191 00:19:30,730 --> 00:19:34,267 この蟲の意思に 感化されてしまうんだ 192 00:19:34,267 --> 00:19:37,037 無論 それを口にした者 193 00:19:37,037 --> 00:19:42,242 そして その そばにいる者までも 194 00:19:42,242 --> 00:19:47,113 今日は暑いな のどが渇いた 195 00:19:47,113 --> 00:19:52,319 一口 あげる 196 00:19:52,319 --> 00:19:55,989 セツが それを知っていたとは 思えんがな 197 00:19:55,989 --> 00:19:58,858 ああ… だが じゃあ 198 00:19:58,858 --> 00:20:01,895 どうすればいいんだ? それがな 199 00:20:01,895 --> 00:20:05,165 体から水を抜ければ いいんだろうが 200 00:20:05,165 --> 00:20:08,702 正直 その すべは思いつかん 201 00:20:08,702 --> 00:20:15,208 もう一つ 手段は考えられるが 202 00:20:15,208 --> 00:20:18,712 それは 俺も やりたくない 203 00:20:18,712 --> 00:20:22,215 ほかに どんな影響があるか読めん 204 00:20:22,215 --> 00:20:26,686 そうか… 205 00:20:26,686 --> 00:20:30,924 そうか それなら ようやく 206 00:20:30,924 --> 00:20:33,924 諦められる 207 00:20:49,943 --> 00:20:52,612 あなたが 208 00:20:52,612 --> 00:20:57,417 キスケを捕らえてくれてたのね 209 00:20:57,417 --> 00:21:00,887 ありがとう 210 00:21:00,887 --> 00:21:03,187 ごめんなさい 211 00:21:16,303 --> 00:21:19,506 どうして? 212 00:21:19,506 --> 00:21:22,709 あんたには できんはずだ 213 00:21:22,709 --> 00:21:25,345 あんたは そいつの子株 214 00:21:25,345 --> 00:21:28,248 そいつの体の一部なんだ 215 00:21:28,248 --> 00:21:32,485 脳に手足が逆らえんようにな 216 00:21:32,485 --> 00:21:35,021 全部 聞いていたのか? 217 00:21:35,021 --> 00:21:39,859 キスケは 私のせいで… 218 00:21:39,859 --> 00:21:43,663 でも キスケは 不幸だったわけじゃない 219 00:21:43,663 --> 00:21:49,602 キスケは こんな素性の私を 幸せにしてくれた 220 00:21:49,602 --> 00:21:54,007 なのに 私は キスケから里を奪った 221 00:21:54,007 --> 00:21:57,744 キスケは 言ってくれたのに 222 00:21:57,744 --> 00:22:04,517 親が何でも 私は 私だって! 223 00:22:04,517 --> 00:22:07,987 あっ… 224 00:22:07,987 --> 00:22:10,787 もう よせ 225 00:22:37,851 --> 00:22:42,451 セツ! どこ行っちまったんだ? 226 00:22:51,698 --> 00:22:54,701 里だ 227 00:22:54,701 --> 00:22:57,237 おい 俺だ キスケだ! 228 00:22:57,237 --> 00:23:00,940 やっと 出られたんだ 229 00:23:00,940 --> 00:23:04,811 お兄ちゃん? ああ 元気だったか? 230 00:23:04,811 --> 00:23:08,681 それ 例の子供? 231 00:23:08,681 --> 00:23:10,950 ああ 帰って 232 00:23:10,950 --> 00:23:15,155 話を聞いてくれ そんなもの 里に連れて下りないで 233 00:23:15,155 --> 00:23:17,590 あたしも もう子供がいるの 234 00:23:17,590 --> 00:23:21,990 子供にまで 肩身の狭い思いさせないで 235 00:23:30,170 --> 00:23:33,873 ねえ お母ちゃんは? 236 00:23:33,873 --> 00:23:37,310 そうだな 237 00:23:37,310 --> 00:23:39,810 戻ろうか 238 00:23:41,748 --> 00:23:48,348 それから しばらくは 3人は幸せに暮らしたという 239 00:23:51,257 --> 00:23:57,430 だが 半年の後 240 00:23:57,430 --> 00:24:01,401 親株を切った影響を見に戻ると 241 00:24:01,401 --> 00:24:06,101 間借り竹が 1本もない 242 00:24:11,945 --> 00:24:13,945 あんたか 243 00:24:17,217 --> 00:24:22,889 あれから 白い竹は 次々 朽ちてしまった 244 00:24:22,889 --> 00:24:27,660 あいつらは あの水あってのものだった 245 00:24:27,660 --> 00:24:33,933 苦しんで ここへ 2人を埋めるころには 246 00:24:33,933 --> 00:24:38,404 枯れ木みたいに もろくなってた 247 00:24:38,404 --> 00:24:42,575 セツは あんなことをしちゃならなかった 248 00:24:42,575 --> 00:24:46,446 あれは セツの親だったのに… 249 00:24:46,446 --> 00:24:48,815 俺が そうさせたんだ 250 00:24:48,815 --> 00:24:52,515 俺が… 里を捨て切れなかったから 251 00:25:04,130 --> 00:25:09,402 ああ もう 今年も そんな時期か 252 00:25:09,402 --> 00:25:12,605 ん… 白い竹? 253 00:25:12,605 --> 00:25:15,605 いつの間に 254 00:25:21,414 --> 00:25:26,152 赤子の声? 255 00:25:26,152 --> 00:25:31,552 2人の墓のほうからだ 256 00:31:14,033 --> 00:31:21,207 誰もが息を潜めるころに 芽吹くは 春の まがいもの 257 00:31:21,207 --> 00:31:30,107 春と浮かれて長居をすれば いつしか その身は凍りつく 258 00:31:32,351 --> 00:31:37,251 あれ?花が咲いてる 259 00:31:40,826 --> 00:31:43,626 蝶だ! 260 00:32:19,532 --> 00:32:22,134 はあ… 261 00:32:22,134 --> 00:32:24,434 うん? 262 00:32:36,415 --> 00:32:38,351 どちらさん? 263 00:32:38,351 --> 00:32:43,651 この雪で 困ってるんだが 一晩 宿を頼めんだろうか 264 00:32:49,795 --> 00:32:51,795 どうぞ 265 00:32:54,200 --> 00:32:56,736 うん… 266 00:32:56,736 --> 00:32:59,638 あれ? 267 00:32:59,638 --> 00:33:01,674 ミハル? 268 00:33:01,674 --> 00:33:06,174 まったく もう 朝から どこ ほっつき歩いてんのよ 269 00:33:10,850 --> 00:33:13,350 行ったのかしら? 270 00:33:22,862 --> 00:33:24,797 何してんだ? 271 00:33:24,797 --> 00:33:29,897 うん? あっ 危ねえ… バカ よせ! 272 00:33:36,142 --> 00:33:40,142 ミハル! 273 00:33:42,448 --> 00:33:45,948 あの… その子 274 00:33:48,254 --> 00:33:51,490 妙なもの見つけても やたらと 手出さんように 275 00:33:51,490 --> 00:33:54,360 言っとくんだな は? 276 00:33:54,360 --> 00:33:58,831 でも あれ珍しいやつだったのに… あんた また やったのね 277 00:33:58,831 --> 00:34:01,400 この バカ! いてっ! 278 00:34:01,400 --> 00:34:04,303 あの あなた 279 00:34:04,303 --> 00:34:10,003 この子の見てるもの… あなたにも見えるの? 280 00:34:13,012 --> 00:34:16,882 俺たちは 蟲って呼んでんだがね 281 00:34:16,882 --> 00:34:21,687 あれが見える者にも 恐れる者と親しむ者とあるが 282 00:34:21,687 --> 00:34:24,890 あの子は めっぽう後者のようだな 283 00:34:24,890 --> 00:34:27,793 ええ もともと生き物は好きで 284 00:34:27,793 --> 00:34:31,664 捕まえては 持って帰るような子だったけど 285 00:34:31,664 --> 00:34:34,900 3年前の冬 あれが見えるようになってから 286 00:34:34,900 --> 00:34:38,404 あの子の行動は おかしなことばかり 287 00:34:38,404 --> 00:34:43,876 あの冬 ミハルは山へ入ったきり 行方知れずになったんです 288 00:34:43,876 --> 00:34:48,380 それから数日 吹雪が続き 289 00:34:48,380 --> 00:34:53,552 戻ろう これ以上は無理だ 290 00:34:53,552 --> 00:34:58,324 望みは絶たれたものと 思われました 291 00:34:58,324 --> 00:35:00,726 けれど… 292 00:35:00,726 --> 00:35:03,496 ミハル? 293 00:35:03,496 --> 00:35:06,899 春になって ひょっこり帰ってきたんです 294 00:35:06,899 --> 00:35:12,705 それ以来 妙なものがいると言って 夢中で追い回すようになり 295 00:35:12,705 --> 00:35:15,641 冬の食べ物が 底をつくころになると 296 00:35:15,641 --> 00:35:19,478 ふいと 姿を消すようになったんです 297 00:35:19,478 --> 00:35:24,150 そして 晩には里の外れで倒れていて 298 00:35:24,150 --> 00:35:31,257 そのまま こんこんと 春まで眠り続けるんです 299 00:35:31,257 --> 00:35:34,793 そして 懐に 冬に あるはずのない 300 00:35:34,793 --> 00:35:38,664 山菜や 木の芽を 忍ばせているんです 301 00:35:38,664 --> 00:35:42,635 いったい どこへ 行っていたのか聞いても… 302 00:35:42,635 --> 00:35:44,770 覚えてない 303 00:35:44,770 --> 00:35:47,540 袋は家の外で開けちゃダメだよ 304 00:35:47,540 --> 00:35:50,943 皆に知れたら面倒だから 305 00:35:50,943 --> 00:35:53,612 …としか言わなくて 306 00:35:53,612 --> 00:35:56,048 うちは 姉弟2人だけだから 307 00:35:56,048 --> 00:35:59,251 助けようとしてくれてるのは 分かるんだけど 308 00:35:59,251 --> 00:36:01,187 不安で ならないんです 309 00:36:01,187 --> 00:36:05,891 どう考えたって あんなこと おかしいわ 310 00:36:05,891 --> 00:36:10,362 ふむ… そりゃ 「春まがい」ってやつかもしれんな 311 00:36:10,362 --> 00:36:14,033 春… まがい? 312 00:36:14,033 --> 00:36:19,371 木に咲く花のような姿をした 空吹って蟲がいると聞く 313 00:36:19,371 --> 00:36:21,907 そいつは 特殊な匂いを出して 314 00:36:21,907 --> 00:36:27,046 冬眠中の動物や植物の活動を 促すんだそうだ 315 00:36:27,046 --> 00:36:31,283 そして おびき出した動物の精気を吸う 316 00:36:31,283 --> 00:36:35,754 吸われたものは 春まで再び眠り続けるという 317 00:36:35,754 --> 00:36:39,458 それ以上のことは 分からんがな 318 00:36:39,458 --> 00:36:43,362 あの… 蟲って いったい何なの? 319 00:36:43,362 --> 00:36:46,599 そう 恐れるようなものばかりでもない 320 00:36:46,599 --> 00:36:50,469 下手に手を出さなきゃ そう困ることもないんだが 321 00:36:50,469 --> 00:36:53,839 あいつの場合はな… 322 00:36:53,839 --> 00:36:58,043 害のあるやつを 教えとくぐらいはできるが 323 00:36:58,043 --> 00:37:00,243 え… 324 00:37:02,715 --> 00:37:05,951 おい ミハル あそこにいるやつ 325 00:37:05,951 --> 00:37:08,754 あれは ちょいと やっかいだからな 326 00:37:08,754 --> 00:37:11,190 って おーい 人の話 聞け! 327 00:37:11,190 --> 00:37:13,125 ほらほら こういうとこに 328 00:37:13,125 --> 00:37:16,762 いっぱい いんだ ああ… 出すな 出すな 329 00:37:16,762 --> 00:37:22,668 ちっとは 落ち着け くそっ 安請け合いしすぎたな… 330 00:37:22,668 --> 00:37:27,906 お前さ どこで山菜 見つけてきてんだ? 331 00:37:27,906 --> 00:37:29,875 知らね 別に 332 00:37:29,875 --> 00:37:32,378 横取りしようってんじゃ ねえからさ 333 00:37:32,378 --> 00:37:36,348 案内してくれよ 姉ちゃんに 言うつもりだろ? 334 00:37:36,348 --> 00:37:40,552 俺は ただ 調査しときたいだけだよ 335 00:37:40,552 --> 00:37:44,523 ふーん 336 00:37:44,523 --> 00:37:48,294 お前さ 心配かけてんの 分かってんだろ? 337 00:37:48,294 --> 00:37:51,997 姉さんに 場所ぐらい教えてやれよ 338 00:37:51,997 --> 00:37:55,668 そしたら 姉ちゃん 追っかけてくるだろ? 339 00:37:55,668 --> 00:37:58,570 役に立ちたいってのも分かるが 340 00:37:58,570 --> 00:38:03,709 姉さんの気持ち無視してたんじゃ それもワガママにすぎんだろ 341 00:38:03,709 --> 00:38:06,412 お前には 戻るべきところがあるんだ 342 00:38:06,412 --> 00:38:11,712 あんまり 向こうに踏み込みすぎるなよ 343 00:38:16,555 --> 00:38:19,391 あ これ見た 344 00:38:19,391 --> 00:38:23,262 ほお じゃ この辺はどうだ? 345 00:38:23,262 --> 00:38:26,899 うーん 知らない 346 00:38:26,899 --> 00:38:29,702 ミハル ちゃんと やんなさいよ! 347 00:38:29,702 --> 00:38:32,705 うん 348 00:38:32,705 --> 00:38:38,310 あの ギンコさん 明日も続き いいかしら? 349 00:38:38,310 --> 00:38:43,215 かまわんよ 今のところ ほかに用もないし 350 00:38:43,215 --> 00:38:48,954 それじゃ いつまで いられるの? 351 00:38:48,954 --> 00:38:54,159 どうだろうな 土地にもよるが まあ こいつが 一とおり 352 00:38:54,159 --> 00:38:57,930 この辺にいる蟲を覚えるまでは いられるだろう 353 00:38:57,930 --> 00:39:00,332 飲み込みは かなり いいし 354 00:39:00,332 --> 00:39:03,302 あと 10日くらいか 355 00:39:03,302 --> 00:39:06,438 土地によるって? 356 00:39:06,438 --> 00:39:09,341 俺は どうも蟲を寄せる体質でな 357 00:39:09,341 --> 00:39:13,245 蟲の多い豊かな土地だと 長くは いられない 358 00:39:13,245 --> 00:39:16,615 集まりすぎると いいことはない 359 00:39:16,615 --> 00:39:19,651 ここは ミハルの見てる 蟲の種類からしても 360 00:39:19,651 --> 00:39:22,421 豊かな土地とは言えんようだ 361 00:39:22,421 --> 00:39:26,125 多少の長居は障りないだろう 362 00:39:26,125 --> 00:39:29,461 なら いられるだけ いるといいよ 363 00:39:29,461 --> 00:39:34,299 ほら 冬の旅は大変でしょ? 春まで いればいい 364 00:39:34,299 --> 00:39:38,299 そりゃ 山の様子次第だが 365 00:39:46,879 --> 00:39:51,250 ん… 何だ ありゃ? 366 00:39:51,250 --> 00:39:53,950 サナギ? 367 00:39:57,623 --> 00:40:00,526 あの辺だったよな 368 00:40:00,526 --> 00:40:04,396 蟲… のように見えたが 369 00:40:04,396 --> 00:40:08,596 そろそろ 寄り始めたのか? 370 00:40:12,571 --> 00:40:16,671 やはり 以前と比べて増えている 371 00:40:21,580 --> 00:40:26,552 少し 長居しすぎたな 372 00:40:26,552 --> 00:40:28,687 あっ ギンコ! 373 00:40:28,687 --> 00:40:30,622 里に用があるの 374 00:40:30,622 --> 00:40:32,558 ミハルを お願い 375 00:40:32,558 --> 00:40:35,928 今 中で寝てるから ああ 376 00:40:35,928 --> 00:40:38,428 気いつけてな 377 00:40:45,003 --> 00:40:49,975 おーい ミハル 378 00:40:49,975 --> 00:40:54,075 あの野郎 また ふらふら出歩いてんな 379 00:41:05,757 --> 00:41:09,157 どこまで行ってんだ? 380 00:41:14,166 --> 00:41:18,066 ああ… くそっ どっちへ行った? 381 00:41:23,575 --> 00:41:26,375 ミハル! 382 00:41:31,750 --> 00:41:35,850 いったん戻って 立て直すか 383 00:41:48,867 --> 00:41:51,767 ミハル おい! 384 00:41:55,407 --> 00:41:57,807 もしや… 385 00:42:03,615 --> 00:42:07,715 春まがい… か? 386 00:42:15,894 --> 00:42:19,197 なあ すず そう思い詰めるな 387 00:42:19,197 --> 00:42:21,967 いつもと同じ症状なんだろう? 388 00:42:21,967 --> 00:42:25,404 なら 春には ちゃんと目覚めるさ 389 00:42:25,404 --> 00:42:28,640 うん 390 00:42:28,640 --> 00:42:31,209 それまで つきあってやりたいが 391 00:42:31,209 --> 00:42:34,079 俺は もう 行かにゃならん 392 00:42:34,079 --> 00:42:38,016 そんなの… ミハルが起きたら寂しがる 393 00:42:38,016 --> 00:42:41,453 すまないな 394 00:42:41,453 --> 00:42:44,453 また 顔 見にくる 395 00:43:00,439 --> 00:43:09,139 誰もが目覚めを歌うころ まがいものは 眠りにつく 396 00:43:18,824 --> 00:43:26,624 そして また 冬山で1人 春と嘯く 397 00:43:38,176 --> 00:43:42,047 よお すず 398 00:43:42,047 --> 00:43:44,616 ギン… 399 00:43:44,616 --> 00:43:46,816 うん? 400 00:43:49,054 --> 00:43:54,860 あれから1年 ずっと眠ったままだってのか? 401 00:43:54,860 --> 00:43:58,397 うん いったい 何が いけなかったのか 402 00:43:58,397 --> 00:44:02,601 分からなくて… 403 00:44:02,601 --> 00:44:08,407 ミハルが行っていた場所を 捜し出すしかないな 404 00:44:08,407 --> 00:44:12,411 でも それじゃ ミハルと同じになってしまうかも 405 00:44:12,411 --> 00:44:15,681 ミハルは 春には 目覚めるはずだったんだろう? 406 00:44:15,681 --> 00:44:18,150 目覚めるための何かが足りんのだ 407 00:44:18,150 --> 00:44:21,753 行けば それが分かるはず 408 00:44:21,753 --> 00:44:25,553 戻らんようなら 山の北側辺りを捜してみてくれ 409 00:44:43,108 --> 00:44:49,808 去年 ミハルの足跡は こっちへ向かってたよな 410 00:44:59,391 --> 00:45:01,391 くそっ 411 00:45:03,261 --> 00:45:05,861 いったい どこに? 412 00:45:09,868 --> 00:45:14,968 あれは ミハルの袋に入ってた… 413 00:45:19,311 --> 00:45:22,581 甘い匂い 414 00:45:22,581 --> 00:45:26,781 うん?あっちだ! 415 00:45:48,373 --> 00:45:50,573 目が くらむ 416 00:45:55,147 --> 00:45:59,718 早く出たほうがいい 空吹は 「木につく花の形」 417 00:45:59,718 --> 00:46:02,418 …だったな 418 00:46:05,657 --> 00:46:10,762 どれも普通の花にしか見えん 419 00:46:10,762 --> 00:46:15,262 手がかりは いったい どこにある? 420 00:46:22,040 --> 00:46:25,240 どんどん体温が下がっていく 421 00:46:30,348 --> 00:46:33,848 匂いが 変わってる 422 00:46:37,522 --> 00:46:39,457 何だ? 423 00:46:39,457 --> 00:46:43,461 急に体が 冷えてきやがった 424 00:46:43,461 --> 00:46:47,561 手が… 動かねえ 425 00:46:55,640 --> 00:47:01,740 何で あの蝶だけが… 426 00:47:07,219 --> 00:47:10,689 こいつ! 427 00:47:10,689 --> 00:47:14,489 くそったれ… 428 00:47:16,595 --> 00:47:19,397 分かったってのに 429 00:47:19,397 --> 00:47:24,397 眠くて しょうがねえ… 430 00:47:56,968 --> 00:48:00,538 バカ 431 00:48:00,538 --> 00:48:04,542 ギンコのバカ! 432 00:48:04,542 --> 00:48:11,942 私 どうしたらいい どうしたら起きるの? 433 00:48:25,597 --> 00:48:27,597 何? 434 00:48:37,208 --> 00:48:39,844 何か… 435 00:48:39,844 --> 00:48:44,144 出たような気がしたけど 436 00:49:00,198 --> 00:49:04,936 何の匂いだ? 437 00:49:04,936 --> 00:49:11,136 そうか もう 春か 438 00:49:21,019 --> 00:49:23,922 何だ ありゃ? 439 00:49:23,922 --> 00:49:26,391 ギンコ! 440 00:49:26,391 --> 00:49:30,195 あっ ミハルは? 441 00:49:30,195 --> 00:49:34,065 ミハル ミハ… うん? 442 00:49:34,065 --> 00:49:36,134 あっ! 443 00:49:36,134 --> 00:49:40,505 ああ… 444 00:49:40,505 --> 00:49:43,505 姉ちゃん? 445 00:49:48,246 --> 00:49:51,983 その後 天井の花のようなものは 446 00:49:51,983 --> 00:49:55,854 数日の間 強い芳香を放った後 447 00:49:55,854 --> 00:49:59,691 見覚えのある姿に変わった 448 00:49:59,691 --> 00:50:03,962 あのとき見たサナギみたいなのが 空吹だったとはな 449 00:50:03,962 --> 00:50:06,831 で お前は 空吹の羽化を 450 00:50:06,831 --> 00:50:09,768 春まがいの発生の合図に してたわけか 451 00:50:09,768 --> 00:50:13,138 うん ギンコが 蝶を逃がさなかったら 452 00:50:13,138 --> 00:50:17,008 春には ちゃんと花になって 起こしてくれたはずなんだよ 453 00:50:17,008 --> 00:50:18,977 そういうことは 先に言っとけっての 454 00:50:18,977 --> 00:50:22,313 俺 あいつらが一等好きだから 455 00:50:22,313 --> 00:50:26,651 秘密にしておきたかった 456 00:50:26,651 --> 00:50:30,021 冬に山菜を生やして 助けてくれるし 457 00:50:30,021 --> 00:50:34,793 雪ん中で飛んでるのも きれいだし 458 00:50:34,793 --> 00:50:37,695 でも あいつらは そうやって 餌を集めて 459 00:50:37,695 --> 00:50:41,566 生きてるだけ… なんだよな 460 00:50:41,566 --> 00:50:45,837 ふーん 何だ 分かってきてるじゃないか 461 00:50:45,837 --> 00:50:49,574 そう やつらは 決して友人じゃない 462 00:50:49,574 --> 00:50:52,243 ただの奇妙な隣人だ 463 00:50:52,243 --> 00:50:56,114 気を許すもんじゃない 464 00:50:56,114 --> 00:51:03,021 でも 好きでいるのは自由だがな 465 00:51:03,021 --> 00:51:06,357 うん 466 00:51:06,357 --> 00:51:10,228 なあ やっぱり いっぺん家に寄ってきなよ 467 00:51:10,228 --> 00:51:13,898 いや ずいぶん 長居しちまったからな 468 00:51:13,898 --> 00:51:17,102 一刻も早く出たほうがいい 469 00:51:17,102 --> 00:51:21,106 そんなの 姉ちゃん寂しがる 470 00:51:21,106 --> 00:51:24,906 世話になったと言っといてくれな 471 00:51:29,214 --> 00:51:35,019 なあ また来るよな? 472 00:51:35,019 --> 00:51:39,891 さあな まあ 冬じゃねえときにな 473 00:51:39,891 --> 00:51:45,763 何で? 人間も冬は弱っていかんからな 474 00:51:45,763 --> 00:51:48,663 うん? 475 00:51:51,202 --> 00:51:56,374 凍て山に芽吹く 幻の春 476 00:51:56,374 --> 00:52:00,979 雪路に灯る家の明かり 477 00:52:00,979 --> 00:52:06,284 それらは逃れがたく 長居を誘う 478 00:52:06,284 --> 00:52:11,284 獣も蟲も 人も同様