1 00:04:31,050 --> 00:04:36,356 なあ 吹 はい? 2 00:04:36,356 --> 00:04:40,827 お前 うちの勤めは 来年までだったよな 3 00:04:40,827 --> 00:04:45,398 はい じゃあ その後はどうするんだ? 4 00:04:45,398 --> 00:04:48,601 里に帰って仕事はあるのか? 5 00:04:48,601 --> 00:04:51,401 まだ何も… 6 00:04:54,040 --> 00:04:58,945 なら 俺と… 7 00:04:58,945 --> 00:05:06,085 あ いや また今度な ああ 明星だ 8 00:05:06,085 --> 00:05:08,085 あ… 9 00:05:18,564 --> 00:05:23,836 清志朗さん あれ 何かしら? 10 00:05:23,836 --> 00:05:28,007 どれ? 空から糸が垂れてる 11 00:05:28,007 --> 00:05:32,607 糸? この糸 いったいどこから… 12 00:05:52,965 --> 00:05:56,369 はいはい よしよし 13 00:05:56,369 --> 00:06:01,574 よしよし 泣きやんでおくれ でなきゃ おうちに戻れないよ 14 00:06:01,574 --> 00:06:04,510 ほれ お星様がいっぱいだよ 15 00:06:04,510 --> 00:06:08,414 そうだ あの星 どこ行ったかな 16 00:06:08,414 --> 00:06:11,250 尾っぽのついた ほうき星 17 00:06:11,250 --> 00:06:15,555 おい お前 今の本当か? 18 00:06:15,555 --> 00:06:18,758 ほうき星ですか?はい 昨日 19 00:06:18,758 --> 00:06:21,661 どの辺だ? あの辺りで 20 00:06:21,661 --> 00:06:26,199 どっちに動いてた? えっと 向こうのほうに 21 00:06:26,199 --> 00:06:30,403 光ったり消えたりしながら くねくね動いてた 22 00:06:30,403 --> 00:06:32,972 そんな彗星あるかな 23 00:06:32,972 --> 00:06:35,875 まあ でも もしあれば大発見だな 24 00:06:35,875 --> 00:06:41,775 よし 絶対見つけてやる えっと 吹だったな でかしたぞ 25 00:06:44,684 --> 00:06:49,484 結局 そんな星が 見つかることはなかった 26 00:06:52,291 --> 00:06:58,064 吹はカンのひどい末の妹の 子守りとして家に来た 27 00:06:58,064 --> 00:07:00,967 時折 そんな不可思議なことを話し 28 00:07:00,967 --> 00:07:05,667 そのため里には 吹を白い目で見る者もいた 29 00:07:08,408 --> 00:07:14,080 おーい 吹! 吹ー! 30 00:07:14,080 --> 00:07:17,350 吹ー! ああ 旦那様 31 00:07:17,350 --> 00:07:20,620 こちらにもおりません もうよい 32 00:07:20,620 --> 00:07:24,357 子守りに疲れて逃げ出したのだ あの恩知らずめが 33 00:07:24,357 --> 00:07:26,959 父上 吹は決してそんな 34 00:07:26,959 --> 00:07:29,862 仕事を放り出すような 娘ではありません 35 00:07:29,862 --> 00:07:32,565 あいつは河原で 糸をつかもうとして 36 00:07:32,565 --> 00:07:36,402 そしたら目の前で消えて… 清志朗坊ちゃん 37 00:07:36,402 --> 00:07:40,902 どうせなら もう少しまともな 言い訳を考えてやっちゃ… 38 00:07:44,277 --> 00:07:46,477 本当なんだ 39 00:07:50,450 --> 00:07:55,750 吹… いったい どこ行っちまったんだ 40 00:08:08,301 --> 00:08:13,001 ん?何事だ ありゃ 41 00:08:16,108 --> 00:08:18,208 あれ? 42 00:08:20,880 --> 00:08:24,280 ここ どこだろう 43 00:08:27,153 --> 00:08:30,853 この人 誰だろう 44 00:08:32,859 --> 00:08:37,663 私 なんで… 45 00:08:37,663 --> 00:08:43,163 この人と 山の中 歩いてるんだろう? 46 00:08:56,349 --> 00:08:58,649 ほら これを飲め 47 00:09:00,720 --> 00:09:04,156 あっ それ飲んで早く治ってくれねえと 48 00:09:04,156 --> 00:09:06,993 いつまでも面倒は見れねえぞ 49 00:09:06,993 --> 00:09:11,531 お前だって 早く元に戻りたいだろう 50 00:09:11,531 --> 00:09:17,970 元に? 何も覚えてないのか 51 00:09:17,970 --> 00:09:22,808 参ったな お前はな 強い蟲の気を帯びて 52 00:09:22,808 --> 00:09:25,711 ひどく曖昧なものに なっちまってる 53 00:09:25,711 --> 00:09:30,550 おそらく今 他の人に お前の姿は見えはしない 54 00:09:30,550 --> 00:09:36,022 その手に生えた白い糸 それに触れちまったせいだろう 55 00:09:36,022 --> 00:09:41,494 放っておけば どんどん人から離れていく 56 00:09:41,494 --> 00:09:46,465 あなたは 私を助けてくれてるの? 57 00:09:46,465 --> 00:09:50,965 さてね 自分のしたいように しているだけだ 58 00:09:58,878 --> 00:10:02,678 まっ 何だ こらえろ 59 00:10:04,650 --> 00:10:09,255 うん 多少血色が良くなってきたな 60 00:10:09,255 --> 00:10:12,258 そうかな ほれ 行くぞ 61 00:10:12,258 --> 00:10:17,396 ん… どこへ行くの? 里を探すんだよ 62 00:10:17,396 --> 00:10:21,267 人のにおいのある所にいるほうが 治りも早い 63 00:10:21,267 --> 00:10:26,105 記憶が戻らんなら とりあえず 近くの里に置いてもらえ 64 00:10:26,105 --> 00:10:29,605 しかし どっち行きゃいいのかね 65 00:10:50,930 --> 00:10:56,636 何か地面の底で光ってる ああ 66 00:10:56,636 --> 00:10:59,605 今のお前には さぞよく見えるだろう 67 00:10:59,605 --> 00:11:05,077 ここは光脈筋のようだ 68 00:11:05,077 --> 00:11:09,915 何が光ってるの? 光酒っつってな 69 00:11:09,915 --> 00:11:14,654 蟲の生まれる前の姿のものが 群れをなして泳いでる 70 00:11:14,654 --> 00:11:18,524 蟲って よく物陰でじっとしてたり 71 00:11:18,524 --> 00:11:22,228 空中を漂ってる 小さなものたちのこと? 72 00:11:22,228 --> 00:11:25,698 ああ 73 00:11:25,698 --> 00:11:29,869 きれい… あまり見るんじゃない 74 00:11:29,869 --> 00:11:36,042 あの光は目の毒だ 慣れすぎると 日の光が見れなくなる 75 00:11:36,042 --> 00:11:40,246 光の川なら上にもある 76 00:11:40,246 --> 00:11:44,483 あれは夜にも日の光を浴びて 光ってるものだ 77 00:11:44,483 --> 00:11:47,153 こっちの川を見ろ 78 00:11:47,153 --> 00:11:51,057 ああ… ほんとだ 79 00:11:51,057 --> 00:11:56,662 まるで鏡に映っているみたい 80 00:11:56,662 --> 00:11:59,398 似て非なるものだ 81 00:11:59,398 --> 00:12:02,198 見誤らんよう気を付けろ 82 00:12:14,413 --> 00:12:17,717 よく寝れた 83 00:12:17,717 --> 00:12:22,088 昨日は嬢ちゃん 夜泣きしなかったんだ 84 00:12:22,088 --> 00:12:24,988 よかった 85 00:12:27,259 --> 00:12:31,697 どうした? 私 帰らなきゃ 86 00:12:31,697 --> 00:12:34,397 あ 記憶が戻ったのか? 87 00:12:38,971 --> 00:12:41,507 あっ 向こうだわ 88 00:12:41,507 --> 00:12:44,907 あの山のふもとが 私のいた里 89 00:12:49,749 --> 00:12:52,718 ん? 90 00:12:52,718 --> 00:12:58,457 お前 吹じゃねえか いなくなった あれ ほんとだ 91 00:12:58,457 --> 00:13:02,061 吹だよ お前 どこ行ってたんだい 92 00:13:02,061 --> 00:13:05,931 あの… ずっと山に 93 00:13:05,931 --> 00:13:09,135 山なら 皆でずいぶん探したけどな 94 00:13:09,135 --> 00:13:11,537 いったい どこ隠れてたんだい 95 00:13:11,537 --> 00:13:14,807 私 隠れてなんか… 96 00:13:14,807 --> 00:13:18,511 ただ河原で空から垂れた糸 引っ張ったら 97 00:13:18,511 --> 00:13:21,413 周りが真っ暗になって 98 00:13:21,413 --> 00:13:26,252 気が付いたら山にいたの 99 00:13:26,252 --> 00:13:28,587 またそんな たわ言 言って 100 00:13:28,587 --> 00:13:31,423 逃げといて怖くなって 戻ったのかい? 101 00:13:31,423 --> 00:13:34,126 でもね ちょっと遅かったよ 102 00:13:34,126 --> 00:13:37,630 旦那さん もう代わりを 雇っちまったから 103 00:13:37,630 --> 00:13:40,430 そんな… 吹! 104 00:13:43,435 --> 00:13:47,306 清志朗さん お前 無事で? 105 00:13:47,306 --> 00:13:49,308 はい ケガは? 106 00:13:49,308 --> 00:13:53,308 大丈夫です あの人に助けてもらって 107 00:13:55,481 --> 00:13:59,919 何とお礼を言ったらいいか… どうぞ家へおいでください 108 00:13:59,919 --> 00:14:05,724 さあ 吹も帰ろう でも もう代わりの人が… 109 00:14:05,724 --> 00:14:11,324 私 戻れない なら 俺の嫁として戻ってくれ 110 00:14:14,433 --> 00:14:18,838 吹が戻ったら言おうと決めていた 111 00:14:18,838 --> 00:14:20,938 いいだろ? 112 00:14:26,445 --> 00:14:30,045 たわけたことを! わしは許さんぞ 113 00:14:33,285 --> 00:14:36,488 どうも お待たせして 114 00:14:36,488 --> 00:14:39,525 いいのか?何か揉めてたようだが 115 00:14:39,525 --> 00:14:44,230 ええ すぐに認めてくれるとは 思えませんから 116 00:14:44,230 --> 00:14:49,730 それで お話というのは? 吹の消えた時のことを聞きたい 117 00:14:51,837 --> 00:14:56,175 信じていただけるかどうか 118 00:14:56,175 --> 00:14:59,144 あの日 吹は 119 00:14:59,144 --> 00:15:05,217 空から糸が垂れていると言って 宙をつかむ仕草をしたんです 120 00:15:05,217 --> 00:15:11,991 その瞬間… 吹はポーンと宙に舞い上がり 121 00:15:11,991 --> 00:15:16,091 空の高みで ふっと消えてしまったんです 122 00:15:20,232 --> 00:15:25,204 誰も信じちゃくれませんし 俺自身 あれを見るまでは 123 00:15:25,204 --> 00:15:27,439 吹に見えてるらしきものは 124 00:15:27,439 --> 00:15:31,310 幻くらいにしか 思ってなかったのですが 125 00:15:31,310 --> 00:15:35,748 なるほど 天辺草か え? 126 00:15:35,748 --> 00:15:38,717 空のはるか高みにすむ蟲だ 127 00:15:38,717 --> 00:15:42,488 蟲… ああ 128 00:15:42,488 --> 00:15:48,193 陰より生まれ 陽と陰の境に たむろするものどものことだ 129 00:15:48,193 --> 00:15:51,163 吹は それを物陰で じっとしてるものや 130 00:15:51,163 --> 00:15:54,833 宙を漂う小さなものたちと言った 131 00:15:54,833 --> 00:15:57,736 それが見える者は少ないが 132 00:15:57,736 --> 00:16:02,141 この世界の隅々にまで それはいる 133 00:16:02,141 --> 00:16:04,476 あなたにも吹と同じものが? 134 00:16:04,476 --> 00:16:09,682 ま それを飯の種にしてるものでね 135 00:16:09,682 --> 00:16:13,886 それは うらやましいな 136 00:16:13,886 --> 00:16:17,222 吹は幸せ者だな 137 00:16:17,222 --> 00:16:19,158 だが 気を付けてやれ 138 00:16:19,158 --> 00:16:23,158 あいつは まだ その蟲の影響から 抜けきれていない 139 00:16:25,097 --> 00:16:29,802 天辺草って蟲は 普段は 尾のついた風船のような姿をして 140 00:16:29,802 --> 00:16:34,073 光脈筋って特別な土地の 上空を巡っている 141 00:16:34,073 --> 00:16:37,943 空中の微小な光を帯びた 蟲を食って生きていて 142 00:16:37,943 --> 00:16:42,381 それが夜には 蛇行する星のようにも見える 143 00:16:42,381 --> 00:16:47,019 そのため 別名迷い星ともいうな 144 00:16:47,019 --> 00:16:49,388 あ… 向こうのほうに 145 00:16:49,388 --> 00:16:52,888 光ったり消えたりしながら くねくねと… 146 00:16:54,960 --> 00:16:58,831 そいつが まれに 上空のエサに不足すると 147 00:16:58,831 --> 00:17:03,535 釣り糸のごとく地平近くまで 触手を伸ばしてくる 148 00:17:03,535 --> 00:17:06,505 それが糸のように見えるんだ 149 00:17:06,505 --> 00:17:08,974 だがそれに動物が触れると 150 00:17:08,974 --> 00:17:12,511 いったん上空に巻き上げるも 飲み込めず 151 00:17:12,511 --> 00:17:15,311 上空高くで放り出しちまう 152 00:17:17,316 --> 00:17:21,186 それで たいがいは 地面に落ちて命を落とすが 153 00:17:21,186 --> 00:17:25,357 吹は運よく木に引っかかって 助かったんだな 154 00:17:25,357 --> 00:17:29,194 だが 飲み込まれかけたのか 155 00:17:29,194 --> 00:17:32,865 吹は強く蟲の気を帯びちまった 156 00:17:32,865 --> 00:17:37,236 あんたらが山を探しても見つけ られなかったのは そのためだ 157 00:17:37,236 --> 00:17:41,740 吹は人の目に見えないものに なっていた 158 00:17:41,740 --> 00:17:45,244 この薬で ずいぶんと 回復はできたが 159 00:17:45,244 --> 00:17:47,713 まだ完全じゃない 160 00:17:47,713 --> 00:17:52,551 手に残った糸で空につながってる 不安定な状態のままだ 161 00:17:52,551 --> 00:17:55,454 へたをすれば ぶり返す 162 00:17:55,454 --> 00:17:59,691 吹が人に戻るために必要なのは 163 00:17:59,691 --> 00:18:02,561 この薬だけじゃなく 164 00:18:02,561 --> 00:18:07,699 あとは自身の 人でいたいという思いだろう 165 00:18:07,699 --> 00:18:11,603 あんたが そう思わせてやるんだな 166 00:18:11,603 --> 00:18:15,203 ま 余計な口出しかもしらんがね 167 00:18:17,376 --> 00:18:22,214 はい 肝に銘じます 168 00:18:22,214 --> 00:18:25,217 もっとゆっくりしていかれたら… 169 00:18:25,217 --> 00:18:28,620 これ以上は長居できんもんでな 170 00:18:28,620 --> 00:18:32,891 じゃあ近いうちに 俺ら 必ず 祝言あげますから 171 00:18:32,891 --> 00:18:35,427 そのときは ぜひ いらしてください 172 00:18:35,427 --> 00:18:38,330 ん?ま かまうなよ 173 00:18:38,330 --> 00:18:42,768 でも みんな ギンコさんのおかげだから 174 00:18:42,768 --> 00:18:47,168 分かったよ じゃ また寄らせてもらうよ 175 00:18:50,342 --> 00:18:54,079 しかし 176 00:18:54,079 --> 00:18:56,579 その後 届いた文は 177 00:19:06,091 --> 00:19:12,865 また吹が姿を消したことを 知らせるものだった 178 00:19:12,865 --> 00:19:19,004 いったい どういうこった? ギンコさん 179 00:19:19,004 --> 00:19:21,773 うちの親父は やはり 180 00:19:21,773 --> 00:19:26,445 なかなか俺らのことを 許しちゃくれなかった 181 00:19:26,445 --> 00:19:29,481 説得を重ねる日が続いて 182 00:19:29,481 --> 00:19:34,586 吹は肩身の狭い思いを し続けてきた 183 00:19:34,586 --> 00:19:39,424 そうするうち 吹の体は 徐々に軽くなってゆき 184 00:19:39,424 --> 00:19:43,762 風が吹けば 宙に舞うようになっていった 185 00:19:43,762 --> 00:19:49,535 そして日がたつにつれ 地表に留まっていられなくなった 186 00:19:49,535 --> 00:19:52,504 吹 頼むから下りてこいよ 187 00:19:52,504 --> 00:19:56,308 どうすれば下りられるか 分からないの 188 00:19:56,308 --> 00:20:00,012 あと一息で 親父も折れてくれそうなのに 189 00:20:00,012 --> 00:20:03,882 こんな姿 見られたら… ごめんなさい 190 00:20:03,882 --> 00:20:06,982 体が勝手に浮き上がってしまうの 191 00:20:09,421 --> 00:20:13,859 いいな じっとしてろよ 薬もちゃんと飲むんだぞ 192 00:20:13,859 --> 00:20:15,859 はい 193 00:20:17,863 --> 00:20:21,600 だが ある日 194 00:20:21,600 --> 00:20:24,570 あ… 195 00:20:24,570 --> 00:20:28,340 吹!吹? 196 00:20:28,340 --> 00:20:32,878 それきり どこを探しても… 197 00:20:32,878 --> 00:20:37,482 言ったはずだぞ お前が つなぎとめててやるんだと 198 00:20:37,482 --> 00:20:42,888 俺は努めたさ 周りの者に 吹を受け入れてもらおうと 199 00:20:42,888 --> 00:20:46,658 だが 吹があんな様では… 200 00:20:46,658 --> 00:20:53,098 誰よりあんたが 今の吹を 受け入れられずにいるんだな 201 00:20:53,098 --> 00:20:55,133 あんたが吹を否定したから 202 00:20:55,133 --> 00:20:58,904 吹は人の姿を保てなくなったんだ 203 00:20:58,904 --> 00:21:03,075 保て… なく? 204 00:21:03,075 --> 00:21:07,075 見えずとも 吹は今もここにいる 205 00:21:11,416 --> 00:21:16,054 そんなバカな! 吹をこのまま失いたくなければ 206 00:21:16,054 --> 00:21:20,792 受け入れてやれ 受け入れろったって 207 00:21:20,792 --> 00:21:25,264 見も触れもできないものを どうやって 208 00:21:25,264 --> 00:21:27,833 あんたしかいないんだ 209 00:21:27,833 --> 00:21:34,072 今もまだ かろうじて 吹を留まらせているものは 210 00:21:34,072 --> 00:21:36,272 あんたの存在なんだろ 211 00:21:49,321 --> 00:21:54,221 いったい どうすりゃいいってんだ 212 00:21:56,161 --> 00:22:00,832 吹… 清志朗坊ちゃんは 213 00:22:00,832 --> 00:22:05,170 どうして 星ばかり見てるんですか? 214 00:22:05,170 --> 00:22:08,807 うーん なんだろな 215 00:22:08,807 --> 00:22:11,176 昼間 やなことあっても 星は 216 00:22:11,176 --> 00:22:14,513 いつでも同じように現れるだろ? 217 00:22:14,513 --> 00:22:20,319 そういうの見てると 不思議と落ち着くんだよな 218 00:22:20,319 --> 00:22:26,191 私も 嬢ちゃん 泣きやんでくれなくて 悲しい時 219 00:22:26,191 --> 00:22:30,062 星を数えて紛らわすんです 220 00:22:30,062 --> 00:22:36,768 だから明るくなってくると 何だか寂しくなる 221 00:22:36,768 --> 00:22:39,738 だんだん数が減っていって 222 00:22:39,738 --> 00:22:42,838 気が付くと 1つもいなくなっている 223 00:22:45,344 --> 00:22:50,615 みんな 昼間は どこへ行ってしまうんだろか 224 00:22:50,615 --> 00:22:56,154 バカだな 吹 昼間だって星は ほんとは空にあんだぞ 225 00:22:56,154 --> 00:22:59,124 ほんとに? 本当だよ 226 00:22:59,124 --> 00:23:02,094 日の光が強いから 見えなくなるだけで 227 00:23:02,094 --> 00:23:04,694 本当はちゃんと空の上にあるんだ 228 00:23:09,167 --> 00:23:13,038 どこにも行かないんだ 229 00:23:13,038 --> 00:23:15,038 見えなくても 230 00:23:17,876 --> 00:23:20,276 ずっと空にいるんだ 231 00:23:27,519 --> 00:23:29,519 吹… 232 00:23:34,960 --> 00:23:40,499 それは実に奇妙な光景だったと 人々は言った 233 00:23:40,499 --> 00:23:43,702 急きょ執り行われた その祝言には 234 00:23:43,702 --> 00:23:47,706 花嫁の姿はなく それでもなお… 235 00:23:47,706 --> 00:23:50,609 さあ 吹 飲んでくれ 花婿は まるで 236 00:23:50,609 --> 00:23:53,178 花嫁がいるかのごとくに ふるまった 237 00:23:53,178 --> 00:23:55,947 いや こうかな? 238 00:23:55,947 --> 00:23:58,550 そんな姿を見て 人々は 239 00:23:58,550 --> 00:24:02,850 婿のほうまでおかしくなって しまったのだとささやいた 240 00:24:07,726 --> 00:24:14,926 やがて 男はその里の外れに 1人居を構えたという 241 00:24:17,769 --> 00:24:22,974 相も変わらず いない嫁に 語りかける男の姿に 242 00:24:22,974 --> 00:24:27,574 里の者は やがて 近寄らなくなったという 243 00:24:34,886 --> 00:24:40,586 けれど やがて… 清志朗さん 244 00:24:43,128 --> 00:24:46,565 あれ?あれは… ほれ 245 00:24:46,565 --> 00:24:50,565 吹だよ いったい いつ戻ったのかね 246 00:24:52,737 --> 00:24:56,737 人々は吹の姿を見るようになり 247 00:24:59,277 --> 00:25:03,915 そののちは 吹の姿を消す癖は 248 00:25:03,915 --> 00:25:07,215 もう二度とでなかったという 249 00:31:42,847 --> 00:31:47,518 何だ ギンコ お前か 250 00:31:47,518 --> 00:31:49,618 どうも 251 00:31:54,292 --> 00:31:56,794 どうだ 仕事のほうは 252 00:31:56,794 --> 00:32:01,633 まあ 相変わらずだよ 淡幽の調子は? 253 00:32:01,633 --> 00:32:04,135 こちらも変わりはない 254 00:32:04,135 --> 00:32:06,471 さっきまで 執筆をしておられたので 255 00:32:06,471 --> 00:32:08,771 お休み中だがな 256 00:32:11,209 --> 00:32:15,747 今日も書庫に行くのだろ ああ 257 00:32:15,747 --> 00:32:17,847 そっちで待っておれ 258 00:33:04,796 --> 00:33:07,231 どのあたりを読みたい? 259 00:33:07,231 --> 00:33:10,134 先代までのは あらかた読んだな 260 00:33:10,134 --> 00:33:14,372 それじゃあ 淡幽お嬢さんの代からだね 261 00:33:14,372 --> 00:33:20,178 そっちの棚からだよ どうも お世話さま 262 00:33:20,178 --> 00:33:23,648 あ そうだ あれ出しな 葉巻 263 00:33:23,648 --> 00:33:29,420 ここで吸ったりしねえよ もしもがあっちゃならないからね 264 00:33:29,420 --> 00:33:34,592 ここの書物が ただの蟲封じ 指南書ではないこと 265 00:33:34,592 --> 00:33:38,129 忘れてはおらんだろうな 266 00:33:38,129 --> 00:33:41,632 分かってるよ 267 00:33:41,632 --> 00:33:48,206 そう これらの書物は 紛れもなく秘書である 268 00:33:48,206 --> 00:33:51,109 内容はもちろんのこと 269 00:33:51,109 --> 00:33:55,847 その存在理由において 主に 270 00:33:55,847 --> 00:34:00,385 「序 狩房家第四代筆記者 271 00:34:00,385 --> 00:34:04,155 淡幽の生誕についての諸々 272 00:34:04,155 --> 00:34:08,955 狩房家付き蟲師 薬袋たま記す」 273 00:34:21,305 --> 00:34:25,910 これは… 間違いございません 274 00:34:25,910 --> 00:34:30,610 墨色の痣… 四代目の筆記者です 275 00:34:33,184 --> 00:34:35,284 淡幽お嬢さん 276 00:34:39,490 --> 00:34:43,161 部屋にお戻りください 嫌だ 277 00:34:43,161 --> 00:34:46,064 私も外で遊びたい 278 00:34:46,064 --> 00:34:49,934 なんで読み書きの 勉強ばかりなの? 279 00:34:49,934 --> 00:34:53,034 なんで この足動かないの? 280 00:34:56,841 --> 00:35:01,546 そうですね お嬢さんには もう 281 00:35:01,546 --> 00:35:04,916 お分かりいただけると 思いますので 282 00:35:04,916 --> 00:35:08,716 すべてお話しいたしましょう 283 00:35:11,189 --> 00:35:17,428 その右足の痣は 蟲を封じた跡なのです 284 00:35:17,428 --> 00:35:22,800 たまの先祖の蟲師が お嬢さんのご先祖のお体に 285 00:35:22,800 --> 00:35:26,070 禁種の蟲を封じたのです 286 00:35:26,070 --> 00:35:30,041 禁種? はい 287 00:35:30,041 --> 00:35:37,281 本来 私ども動植物と蟲は 同調しておるものです 288 00:35:37,281 --> 00:35:41,853 動植物栄えるところ 蟲も栄え 289 00:35:41,853 --> 00:35:45,289 枯れたるところでは枯れるもの 290 00:35:45,289 --> 00:35:49,026 けれど その昔の大天災の折 291 00:35:49,026 --> 00:35:52,230 動植物も蟲も衰えゆく中 292 00:35:52,230 --> 00:35:55,099 異質な蟲が現れ 293 00:35:55,099 --> 00:35:59,871 他のすべての生命を 消さんとしたのです 294 00:35:59,871 --> 00:36:03,741 どんな蟲なの? 姿も形も 295 00:36:03,741 --> 00:36:07,311 体内に封じた方法も 296 00:36:07,311 --> 00:36:12,150 記録は一切見つかっておりません 297 00:36:12,150 --> 00:36:15,052 たまの一族に伝わっているのは 298 00:36:15,052 --> 00:36:19,290 身重でありながら蟲を封じた ご先祖様のお体は 299 00:36:19,290 --> 00:36:23,494 全身 墨の色となり 300 00:36:23,494 --> 00:36:28,332 蟲は体内で生き続けましたが ご先祖様は 301 00:36:28,332 --> 00:36:33,938 出産後 命を落とされたということです 302 00:36:33,938 --> 00:36:37,742 それから狩房家には 何代かにお1人 303 00:36:37,742 --> 00:36:43,142 体の一部に墨色の痣を持つ方が お生まれになるのです 304 00:36:46,984 --> 00:36:52,723 ここに それがまだ生きてるの? 305 00:36:52,723 --> 00:36:55,760 私もそのうち死んじゃうの? そうさせぬために 306 00:36:55,760 --> 00:36:58,930 たまがおりまする 307 00:36:58,930 --> 00:37:05,736 蟲を眠らすお力も お嬢さんは お備えになっているはずなのです 308 00:37:05,736 --> 00:37:09,173 たまがお手伝いいたします 309 00:37:09,173 --> 00:37:12,910 今少し読み書きが お達者になられた日には 310 00:37:12,910 --> 00:37:15,813 たまと別邸へと参りましょう 311 00:37:15,813 --> 00:37:20,117 そこで禁種の蟲を 地下に眠らすのです 312 00:37:20,117 --> 00:37:26,724 そうすれば体の痣は消え 歩けるようにもなるでしょう 313 00:37:26,724 --> 00:37:29,760 これまで3人のご先祖様が そうして 314 00:37:29,760 --> 00:37:33,660 少しずつ眠らせてきたのですよ 315 00:37:35,866 --> 00:37:39,166 お嬢さん 着きましたよ 316 00:37:50,982 --> 00:37:53,882 ずいぶんと昔の夢だったな 317 00:38:00,224 --> 00:38:04,929 その後 たまから聞かされた 蟲の眠らせ方は 318 00:38:04,929 --> 00:38:06,929 意外な方法だった 319 00:38:12,203 --> 00:38:14,772 これから たまのするお話を 320 00:38:14,772 --> 00:38:19,010 あとから紙に 写し取ってくださいまし 321 00:38:19,010 --> 00:38:24,749 たまの話はすべて たまが昔 蟲師をしていた頃 322 00:38:24,749 --> 00:38:27,318 蟲をほふった体験談 323 00:38:27,318 --> 00:38:30,655 夢物語のような実話ばかり 324 00:38:30,655 --> 00:38:33,557 大捕り物は活劇調に 325 00:38:33,557 --> 00:38:37,194 悲しい話はあんどんの下で 326 00:38:37,194 --> 00:38:41,065 遠い土地 見知らぬ人々の物語 327 00:38:41,065 --> 00:38:46,370 それらは常に私の心を引きつけた 328 00:38:46,370 --> 00:38:50,374 けれど それを紙に記す時 329 00:38:50,374 --> 00:38:53,678 足の痣には激痛が走った 330 00:38:53,678 --> 00:38:58,215 今 蟲が体から出てきているの? 331 00:38:58,215 --> 00:39:03,054 そうです たまが蟲を ほふってきたという事実が 332 00:39:03,054 --> 00:39:06,457 その蟲にとっては呪なのです 333 00:39:06,457 --> 00:39:09,457 おつらいでしょうが こらえてください 334 00:39:13,264 --> 00:39:19,036 たま たまも私のために 335 00:39:19,036 --> 00:39:24,675 蟲師にならねばならん宿命を おわされたのだな 336 00:39:24,675 --> 00:39:30,948 つらいこともあったろう? それを恨んだりもしたろう? 337 00:39:30,948 --> 00:39:34,819 そのようなものは お嬢さんに会えましたことで 338 00:39:34,819 --> 00:39:37,722 すっかり消え申した 339 00:39:37,722 --> 00:39:41,222 今は感謝しておりますよ 340 00:39:43,294 --> 00:39:46,197 続き 話して 341 00:39:46,197 --> 00:39:51,097 大丈夫で? うん 大丈夫よ 342 00:39:54,905 --> 00:39:58,642 たまが いかに 私の痛みを紛らわそうと 343 00:39:58,642 --> 00:40:01,078 苦心してくれていたか 344 00:40:01,078 --> 00:40:05,883 それは やがて時が過ぎ たまの話も尽き 345 00:40:05,883 --> 00:40:09,887 他の蟲師を 招くようになる頃に分かった 346 00:40:09,887 --> 00:40:13,090 そして私は その害蟲めを一掃すべく 347 00:40:13,090 --> 00:40:16,794 山中に天敵である蟲を 348 00:40:16,794 --> 00:40:19,029 こちらの蟲でございますが 349 00:40:19,029 --> 00:40:21,832 大量に放ったのでございます 350 00:40:21,832 --> 00:40:27,571 害蟲めは ひと月もせぬうちに ちらとも見ぬようになりました 351 00:40:27,571 --> 00:40:31,041 むろん こちらの蟲も その後 処理いたしました 352 00:40:31,041 --> 00:40:33,741 増えすぎては困りますのでな 353 00:40:39,216 --> 00:40:44,716 私が聞いてきた話は皆 しょせん殺生な話だったのか 354 00:40:46,690 --> 00:40:53,464 足の痛みは 心の痛みも 伴うものになっていった 355 00:40:53,464 --> 00:40:56,901 微小で下等なる生命へのおごり 356 00:40:56,901 --> 00:41:02,440 異形の者たちへの 理由なきおそれが招く殺生 357 00:41:02,440 --> 00:41:07,344 そういうものが 少なからず感じ取れるのだ 358 00:41:07,344 --> 00:41:12,750 殺さずともすむのではないかと? 359 00:41:12,750 --> 00:41:17,588 失礼ながら それは実際に 蟲と対峙した者でなければ 360 00:41:17,588 --> 00:41:19,688 言えぬことかと 361 00:41:21,959 --> 00:41:24,795 それは そのとおりで 362 00:41:24,795 --> 00:41:28,895 けれど 私には どうしようもないことだった 363 00:41:37,141 --> 00:41:41,111 私だって この足さえ動けば… 364 00:41:41,111 --> 00:41:45,416 あの もし 365 00:41:45,416 --> 00:41:48,352 狩房家の娘さん? 366 00:41:48,352 --> 00:41:50,788 ああ やっぱね 367 00:41:50,788 --> 00:41:53,657 この辺 他に家ないしね 368 00:41:53,657 --> 00:41:58,996 あっ じゃあ これが噂の墨色の痣? 369 00:41:58,996 --> 00:42:01,499 お前も蟲師か? 370 00:42:01,499 --> 00:42:04,201 蟲の話 集めてんだろ? 371 00:42:04,201 --> 00:42:08,839 協力すれば狩房文庫は 閲覧できると聞いたんだが 372 00:42:08,839 --> 00:42:11,775 悪いが 帰ってくれ 373 00:42:11,775 --> 00:42:16,080 蟲を殺す話は もうたくさんだ 374 00:42:16,080 --> 00:42:21,385 じゃあ殺さねえ話な ああ そっちのほうがずいぶん多いな 375 00:42:21,385 --> 00:42:26,357 いや それでは役に立たない… えーまずはホクロを食う蟲の話 376 00:42:26,357 --> 00:42:29,857 ホクロ? ん?何か 今 言いかけたろ 377 00:42:32,029 --> 00:42:35,366 いや いい 378 00:42:35,366 --> 00:42:38,966 話してくれ 蟲の話 379 00:42:44,975 --> 00:42:50,247 本当は たまの許可が下りてから でないといけないんだが 380 00:42:50,247 --> 00:42:54,685 きっと たまはお前のような蟲師は 雇いたがらんだろうし 381 00:42:54,685 --> 00:42:56,685 特別な 382 00:43:07,064 --> 00:43:09,366 すげえ 383 00:43:09,366 --> 00:43:13,103 ただし 扱いには 十分気を付けてくれ 384 00:43:13,103 --> 00:43:16,874 その文字列の中に 蟲が眠っておるのだ 385 00:43:16,874 --> 00:43:19,877 ああ その話は聞いてる 386 00:43:19,877 --> 00:43:24,682 禁種の蟲だろ? そう簡単にはくたばらねえ 387 00:43:24,682 --> 00:43:28,082 それにしても こいつは 蟲師には宝だな 388 00:43:30,254 --> 00:43:37,861 そうだな だが これらは すべて死の目録だ 389 00:43:37,861 --> 00:43:45,603 私は生物と蟲が共に 生きている話を もっと聞きたい 390 00:43:45,603 --> 00:43:49,473 たまには 何とか私から話を通す 391 00:43:49,473 --> 00:43:53,344 また話をしに来てくれるか? 392 00:43:53,344 --> 00:43:55,444 喜んで 393 00:44:01,752 --> 00:44:05,022 お嬢さん? おや お目覚めでしたか 394 00:44:05,022 --> 00:44:10,828 ああ ギンコが来ておりますが 395 00:44:10,828 --> 00:44:13,028 すぐ呼んでくれ 396 00:44:19,403 --> 00:44:22,803 ん?何だ?これ 397 00:44:25,609 --> 00:44:31,109 紙魚の卵?やばい! これも これもか? 398 00:44:33,851 --> 00:44:37,154 文字列が崩れだしてる 399 00:44:37,154 --> 00:44:41,025 起きた… のか? 400 00:44:41,025 --> 00:44:43,027 ギンコ おたまさん 401 00:44:43,027 --> 00:44:46,927 紙魚が紙を食い始めてるぞ 封が解けちまう 402 00:44:53,404 --> 00:44:55,404 なんと! 403 00:44:59,610 --> 00:45:05,983 お嬢さん! どうした? 404 00:45:05,983 --> 00:45:08,485 封の一部が解けました 405 00:45:08,485 --> 00:45:11,285 そちらへ向かっておりまする! 406 00:45:21,799 --> 00:45:24,368 えらいことになったな 407 00:45:24,368 --> 00:45:27,668 なに この部屋からは出られん 408 00:45:31,542 --> 00:45:34,244 ちゃんと生きておったのだな 409 00:45:34,244 --> 00:45:39,416 ほんと 数百年も 眠ってたとは思えんな 410 00:45:39,416 --> 00:45:43,620 いや お前のことだよ ギンコ 411 00:45:43,620 --> 00:45:49,760 なんか余裕だな こいつらを元に戻せるのか? 412 00:45:49,760 --> 00:45:54,631 私にだって できる蟲封じはあるのだぞ 413 00:45:54,631 --> 00:45:57,801 たま はい 414 00:45:57,801 --> 00:46:00,704 ん? 415 00:46:00,704 --> 00:46:03,204 文字列の動きが止まってる 416 00:46:07,277 --> 00:46:12,177 この部屋の壁と天井には 特別なのりが塗ってあるのだ 417 00:46:14,118 --> 00:46:19,118 巻の1853 1の章 418 00:46:30,200 --> 00:46:33,670 2の章 419 00:46:33,670 --> 00:46:38,041 内容 全部覚えてるのか? 420 00:46:38,041 --> 00:46:40,377 紙魚がいようといまいと 421 00:46:40,377 --> 00:46:43,914 いずれ紙は劣化するものだからな 422 00:46:43,914 --> 00:46:48,685 少しずつ こうして 写しをせねばならんのだ 423 00:46:48,685 --> 00:46:53,490 かといって普通に写したのでは 封じたことにならぬ 424 00:46:53,490 --> 00:46:57,961 これが家に伝わる写しのやり方だ 425 00:46:57,961 --> 00:47:01,665 あの紙魚は お嬢さんの愛玩物なのだよ 426 00:47:01,665 --> 00:47:06,069 え? あれは愛嬌があってよい 427 00:47:06,069 --> 00:47:09,573 少し増えすぎなんじゃねえか? いいだろ 428 00:47:09,573 --> 00:47:14,044 私が こうして きっちり 写しをすればよいことだ 429 00:47:14,044 --> 00:47:16,747 またそれは危険な遊びを 430 00:47:16,747 --> 00:47:19,983 決してヘタをしたりはしない 431 00:47:19,983 --> 00:47:23,883 それが私の務めなのだから 432 00:47:26,757 --> 00:47:32,257 文字の海に溺れるように 生きている娘が1人いる 433 00:47:34,531 --> 00:47:39,336 ハハハ… それで一件落着か 434 00:47:39,336 --> 00:47:44,107 他には? うーん 435 00:47:44,107 --> 00:47:46,944 今日は これくらいにしとくか 436 00:47:46,944 --> 00:47:52,182 まだいいぞ 蟲封じに 使えそうな話は5割もなかったろ 437 00:47:52,182 --> 00:47:55,782 昨日の今日で疲れてんだろ 無理すんな 438 00:47:59,289 --> 00:48:01,289 分かったよ 439 00:48:07,064 --> 00:48:12,502 ギンコ 終わるまで そこにいてくれな 440 00:48:12,502 --> 00:48:14,802 ああ 441 00:49:03,186 --> 00:49:06,423 蟲に体を浸食されながら 442 00:49:06,423 --> 00:49:10,827 蟲を愛でつつ 蟲を封じる 443 00:49:10,827 --> 00:49:15,227 そういう娘が1人いる 444 00:49:24,708 --> 00:49:28,612 終わりましたか? ああ 布団を 445 00:49:28,612 --> 00:49:34,217 ギンコ 休まなくても平気だ 446 00:49:34,217 --> 00:49:39,517 それより外が見たい 連れてってくれるか 447 00:49:51,301 --> 00:49:57,301 この足 いったいいつになれば 動かせるようになるんだろうな 448 00:49:59,409 --> 00:50:04,982 焦るなよ 少しずつでも 痣は減ってきてるんだろ 449 00:50:04,982 --> 00:50:09,553 ほんの少しずつだ 450 00:50:09,553 --> 00:50:12,255 死ぬまでに消せなければ 451 00:50:12,255 --> 00:50:16,093 いずれ私の子孫が 引き継ぐことになる 452 00:50:16,093 --> 00:50:20,893 今までずっと そうだったように 453 00:50:22,866 --> 00:50:27,766 私の代でも 結局 かなわないのかもしれないな 454 00:50:43,186 --> 00:50:48,086 お前さ 足治ったら どうすんだ? 455 00:50:51,895 --> 00:50:54,895 お前と旅がしたいな 456 00:50:56,800 --> 00:51:00,604 話に聞いた蟲を見たい 457 00:51:00,604 --> 00:51:03,140 なんてな 458 00:51:03,140 --> 00:51:06,540 よくても その頃 私は老婆だがな 459 00:51:08,945 --> 00:51:10,945 うーん 460 00:51:12,849 --> 00:51:15,519 冗談だよ いいぜ 461 00:51:15,519 --> 00:51:21,619 それまで無事 俺が 生き延びられてたら… だがな 462 00:51:28,532 --> 00:51:30,901 生きてるんだよ 463 00:51:30,901 --> 00:51:34,304 いや 明日にでも 蟲に 食われてっかもしんねえし 464 00:51:34,304 --> 00:51:38,175 それでも生きてるんだよ 465 00:51:38,175 --> 00:51:40,243 無茶言ってんな 466 00:51:40,243 --> 00:51:43,943 アッハハ… 何とかなるさ