1 00:00:14,534 --> 00:00:21,934 君がどうして泣いているのか 僕には何も解からない 2 00:00:22,267 --> 00:00:29,000 “解かるよ”なんて言葉 軽々しく口に出来ない 3 00:00:29,067 --> 00:00:36,701 だから教えて 君が苦しむ理由(わけ)を 4 00:00:36,767 --> 00:00:48,267 僕に出来る精一杯の事 君にしてあげたいから 5 00:00:48,434 --> 00:00:56,200 今 瞬間(とき)を生きる君に この唄を贈ろう 6 00:00:56,267 --> 00:01:03,200 精一杯生きる君に この唄を贈ろう 7 00:01:04,133 --> 00:01:24,100 今日までこんなに苦しんだから 明日からは楽しく過ごせるよ きっと 8 00:01:25,434 --> 00:01:32,601 だから君よ 独りで苦しまないで 9 00:01:43,267 --> 00:01:44,300 はあ… 10 00:01:46,501 --> 00:01:47,701 貴志君ー 11 00:01:47,767 --> 00:01:48,267 あ? 12 00:01:48,334 --> 00:01:50,734 ねえ あけてくれないかしら 13 00:01:51,234 --> 00:01:51,968 塔子さん? 14 00:01:52,400 --> 00:01:53,234 あ… 15 00:01:53,767 --> 00:01:54,567 はーい! 16 00:01:55,334 --> 00:01:58,701 ごめんなさい 鍵をなくしちゃって 17 00:01:59,634 --> 00:02:00,767 ん… 18 00:02:01,834 --> 00:02:03,467 買い物早かったですね 19 00:02:04,100 --> 00:02:06,300 あれ? 鍵かかってませんよ 20 00:02:09,834 --> 00:02:10,934 誰もいない… 21 00:02:11,868 --> 00:02:12,367 あ! 22 00:02:15,534 --> 00:02:19,067 しまった たぶん今 妖怪が入ってこようと 23 00:02:20,334 --> 00:02:21,167 入ってる! 24 00:02:21,367 --> 00:02:22,400 うっ はっ はっ 25 00:02:22,734 --> 00:02:23,968 友人帳目当てか? 26 00:02:24,267 --> 00:02:27,100 先生! はっ えっ はっ はあ 27 00:02:27,167 --> 00:02:27,968 ニャンコ先生! 28 00:02:28,234 --> 00:02:28,734 はっ! 29 00:02:29,100 --> 00:02:29,701 あ! 30 00:02:32,467 --> 00:02:34,234 お前が夏目貴志だな 31 00:02:34,567 --> 00:02:35,701 友人帳はどこだ 32 00:02:36,367 --> 00:02:38,834 塔子さんの声を真似たのはお前か 33 00:02:39,300 --> 00:02:41,701 ふっ さあ 友人帳をよこせ 34 00:02:42,200 --> 00:02:44,367 よこさねば この腕へし折ってやるぞ 35 00:02:44,434 --> 00:02:45,701 ん… いって! 36 00:02:45,767 --> 00:02:48,000 だめだ 友人帳は渡せない! 37 00:02:48,234 --> 00:02:48,834 よこせ! 38 00:02:49,000 --> 00:02:50,467 痛… いって 39 00:02:50,534 --> 00:02:52,100 言ってるだろうが! 40 00:02:52,367 --> 00:02:53,901 ごほっ! 41 00:02:57,200 --> 00:02:59,934 おい夏目 ジャムのふたあけてくれ 42 00:03:00,167 --> 00:03:01,067 先生! 43 00:03:01,133 --> 00:03:01,634 ん? 44 00:03:02,400 --> 00:03:04,601 何なんだ この小汚い奴は 45 00:03:05,033 --> 00:03:06,868 -ほれ ほれほれ おー -く くっそう… 46 00:03:07,334 --> 00:03:09,901 こんな もやしに屈するとは屈辱 47 00:03:10,434 --> 00:03:13,634 しかし力押しで かなわぬというならば… 48 00:03:14,234 --> 00:03:17,300 くっ こ こんなこともあろうかと 49 00:03:18,133 --> 00:03:20,901 ちゃんと袖の下を 用意してきてくれたわー! 50 00:03:23,300 --> 00:03:24,000 えっ… 51 00:03:26,467 --> 00:03:27,367 お願いします 52 00:03:32,467 --> 00:03:33,200 んー ふふふー 53 00:03:33,267 --> 00:03:36,567 だから 友人帳を やるわけにはいかないんだ 54 00:03:36,968 --> 00:03:37,901 ふう… 55 00:03:38,367 --> 00:03:39,934 では 貸すというのは? 56 00:03:40,000 --> 00:03:40,834 無理だ 57 00:03:40,968 --> 00:03:41,667 んー 58 00:03:41,734 --> 00:03:42,334 ちっ 59 00:03:42,734 --> 00:03:45,934 貸すって… いったい なんに使うつもりだ? 60 00:03:46,367 --> 00:03:46,968 うん… 61 00:03:47,267 --> 00:03:47,801 ふっ ふっ 62 00:03:48,267 --> 00:03:50,868 カリカミという妖ものをご存知だろう 63 00:03:51,667 --> 00:03:53,834 私はまだ会ったことがないのだが 64 00:03:54,467 --> 00:03:57,801 友人帳とやらに名が載っているらしいと うわさで聞いてな 65 00:03:58,400 --> 00:04:00,133 そやつを呼び出して頂きたい 66 00:04:00,400 --> 00:04:04,033 会ったことのない者を 呼び出して どうするつもりだ 67 00:04:06,133 --> 00:04:06,634 あ? 68 00:04:06,868 --> 00:04:07,567 これだ 69 00:04:08,200 --> 00:04:08,801 紙? 70 00:04:09,601 --> 00:04:10,734 だいぶ古そうだな 71 00:04:11,501 --> 00:04:12,534 ガビガビしてる 72 00:04:12,767 --> 00:04:13,901 そうなのだ 73 00:04:14,234 --> 00:04:15,701 触ると崩れそうだろう 74 00:04:17,267 --> 00:04:18,000 それで? 75 00:04:18,067 --> 00:04:18,767 あ… 76 00:04:19,601 --> 00:04:21,534 むほ むほ んまっ… 77 00:04:21,968 --> 00:04:23,567 分からんのか にぶちんが! 78 00:04:24,100 --> 00:04:25,734 しょうがないから話してやろう 79 00:04:25,901 --> 00:04:27,801 長くなるぞ 覚悟しろ! 80 00:04:28,234 --> 00:04:29,367 ええー! 81 00:04:29,434 --> 00:04:30,767 おっ 酒だ! 82 00:04:33,767 --> 00:04:39,334 私は声真似が得意で 人に聞かせる力を持ったヨビコという者 83 00:04:40,501 --> 00:04:43,701 元は 狩山山道の古木に住んでおった 84 00:04:44,667 --> 00:04:49,234 いつの頃からか その前を 人間の女が通るようになり 85 00:04:49,901 --> 00:04:51,734 毎日のようにやって来る 86 00:04:55,167 --> 00:04:57,434 人間になど興味はなかったが 87 00:04:58,067 --> 00:05:00,300 なに ただの気まぐれだ 88 00:05:01,734 --> 00:05:07,334 山深いそこは人には危険だろうと 少し心配になり 女をつけてみたのだ 89 00:05:08,834 --> 00:05:11,901 すると… その先に古いお堂があり 90 00:05:12,968 --> 00:05:15,868 なんとも眼差しの涼やかな男が来ていて 91 00:05:18,767 --> 00:05:20,968 女はとても とても嬉しそうに 92 00:05:21,934 --> 00:05:25,000 幸せそうに笑って話をしていたのだ 93 00:05:27,367 --> 00:05:30,100 どうやら2人は そこで逢引きをしていたようだ 94 00:05:31,033 --> 00:05:35,133 逢引きといっても会って 他愛もない話をする程度のものだが 95 00:05:36,501 --> 00:05:40,367 本当に 毎日 毎日… 96 00:05:41,100 --> 00:05:42,634 のぞいてたわけか 97 00:05:43,000 --> 00:05:43,667 違う! 98 00:05:44,067 --> 00:05:46,167 古堂を荒らしたりせぬか 見張っておったのだ 99 00:05:46,467 --> 00:05:47,767 ふーん 100 00:05:47,968 --> 00:05:49,334 んん んんー… 101 00:05:49,400 --> 00:05:50,467 先生 102 00:05:50,934 --> 00:05:52,968 すまない 続けてくれないか? 103 00:05:54,367 --> 00:05:55,000 うん 104 00:05:55,868 --> 00:05:56,767 うふふっ 105 00:05:56,834 --> 00:05:58,734 睦まじい恋仲に見えたが 106 00:05:59,434 --> 00:06:04,400 男は色々忙しいらしく 少し話しては すぐ帰っていき 107 00:06:08,767 --> 00:06:13,100 女は男の帰ったほうを いつまでも眺めていて… 108 00:06:16,367 --> 00:06:19,801 日が暮れようという頃に やっと山道を帰るものだから 109 00:06:21,167 --> 00:06:23,901 獣やヘビに襲われてもかなわんと思い 110 00:06:25,100 --> 00:06:27,167 追っ払ってやったりしておったのだ 111 00:06:31,567 --> 00:06:32,167 ぷぷっ! 112 00:06:32,434 --> 00:06:34,167 笑うな! 毎日だぞ 113 00:06:34,501 --> 00:06:38,167 全く… 余計な仕事を 増やされた身にもなれ 114 00:06:38,501 --> 00:06:40,234 ああ いや ごめん 115 00:06:40,701 --> 00:06:42,267 優しいなと思って 116 00:06:43,767 --> 00:06:45,634 いいや 優しくなど… 117 00:06:46,434 --> 00:06:46,934 え? 118 00:06:47,434 --> 00:06:48,300 ええ もういい! 119 00:06:48,367 --> 00:06:49,334 んふっ ふーふ 120 00:06:49,400 --> 00:06:51,267 とにかく さっさとカリカミを呼び出せ! 121 00:06:51,901 --> 00:06:54,400 ああ 悪いが俺には呼び出せない 122 00:06:54,601 --> 00:06:56,601 何? 嘘をつけ! 123 00:06:56,968 --> 00:07:01,400 友人帳に名のある妖ものは皆 命令すれば抗えぬと聞いたぞ 124 00:07:01,934 --> 00:07:04,634 はあ 顔と名前を知ってる場合だ 125 00:07:05,300 --> 00:07:09,601 名を集めたのは祖母で 俺は会ったことがない妖怪ばかりだ 126 00:07:09,968 --> 00:07:11,901 何いいーっ! 127 00:07:13,934 --> 00:07:14,434 わっ! 128 00:07:14,801 --> 00:07:17,067 まさか役に立たんとは… 129 00:07:17,300 --> 00:07:19,334 タダ酒を飲んでおきながら 130 00:07:19,901 --> 00:07:21,367 俺は飲んでないぞ 131 00:07:21,734 --> 00:07:23,968 今日はここで休ませてもらう 132 00:07:24,234 --> 00:07:27,267 どうするかをもう一度 考えねばならな… 133 00:07:27,667 --> 00:07:28,968 んー… 134 00:07:29,033 --> 00:07:29,834 おい! 135 00:07:30,200 --> 00:07:32,767 もう寝てる ここで寝られても… 136 00:07:32,934 --> 00:07:39,000 んー まあ人里に降りるだけでも かなり消耗する妖ものもいるからな 137 00:07:39,067 --> 00:07:39,567 ひっ… 138 00:07:39,634 --> 00:07:40,467 はあ… 139 00:07:40,934 --> 00:07:41,601 んふふ 140 00:07:41,667 --> 00:07:42,901 困ったな 141 00:07:44,467 --> 00:07:49,801 こういう自由なようで なにか思いを 抱えている妖に触れてしまうと 142 00:07:49,901 --> 00:07:50,901 わっ はっ 143 00:07:52,801 --> 00:07:55,634 その夜 案の定 夢を見た 144 00:07:56,234 --> 00:07:58,901 隆彦さん 隆彦さん… 145 00:07:59,067 --> 00:08:02,000 誰かを呼ぶ声は あまりに悲しげで 146 00:08:02,067 --> 00:08:03,334 隆彦さん… 147 00:08:03,501 --> 00:08:06,667 それを聞く妖も きっと… 148 00:08:07,133 --> 00:08:07,634 あ… 149 00:08:08,033 --> 00:08:08,734 うわ あ… 150 00:08:08,834 --> 00:08:11,667 貴志君ー ご飯よー! 151 00:08:14,734 --> 00:08:16,300 さあ さあ どうぞ 152 00:08:16,701 --> 00:08:18,067 うふ 153 00:08:18,634 --> 00:08:19,667 うっふ 154 00:08:41,601 --> 00:08:44,100 それで どうすることにしたんだ? 155 00:08:44,734 --> 00:08:48,868 仕方がない 自力でカリカミを 探してみることにする 156 00:08:50,434 --> 00:08:51,801 まだ聞いてないぞ 157 00:08:53,968 --> 00:08:56,801 どうして そのカリカミに会いたいんだ? 158 00:08:56,901 --> 00:08:57,901 夏目だ 159 00:08:58,167 --> 00:09:01,901 おいしそう 友人帳の夏目ー! 160 00:09:02,067 --> 00:09:02,567 え? 161 00:09:02,667 --> 00:09:03,334 へえっ! 162 00:09:05,167 --> 00:09:06,968 えええーん! 163 00:09:07,400 --> 00:09:08,467 ううぐっ! 164 00:09:08,968 --> 00:09:09,801 がうっ 165 00:09:10,367 --> 00:09:11,067 あ! 166 00:09:11,701 --> 00:09:15,033 小物のくせに いい度胸だな え? 167 00:09:15,100 --> 00:09:17,834 ありがとう ヨビコ 助かった 168 00:09:19,701 --> 00:09:20,567 なるほど… 169 00:09:20,868 --> 00:09:21,367 え? 170 00:09:21,934 --> 00:09:23,100 -むう ぐぐっ -あ… 171 00:09:23,167 --> 00:09:23,667 ん? 172 00:09:24,033 --> 00:09:24,634 夏目? 173 00:09:27,334 --> 00:09:29,567 何するんだ どこへ行く! 174 00:09:30,534 --> 00:09:34,234 カリカミの顔は知らぬが 住んでいると 言われる辺りの場所は知っている 175 00:09:35,067 --> 00:09:39,400 友人帳の夏目が来れば 向こうから名を返せと寄ってくるかもしれん 176 00:09:40,167 --> 00:09:41,701 俺を餌にする気か? 177 00:09:42,234 --> 00:09:42,868 は… 178 00:09:44,734 --> 00:09:47,267 カリカミは穏やかな妖ものと聞いている 179 00:09:47,701 --> 00:09:51,133 私が必ず守り 家へ帰すと約束しよう 180 00:09:51,567 --> 00:09:52,701 だから今しばらく 181 00:09:53,067 --> 00:09:55,234 お力を 夏目殿! 182 00:09:57,534 --> 00:09:58,501 だったら 183 00:09:59,400 --> 00:10:00,968 ちゃんと わけを話してくれ 184 00:10:06,234 --> 00:10:07,100 はあ… 185 00:10:08,367 --> 00:10:11,167 カリカミは古紙を修正する妖もの 186 00:10:12,367 --> 00:10:17,601 雨ざらしで開けなくなった この紙を 開けるようにしてくれるかもしれんのだ 187 00:10:27,133 --> 00:10:29,334 昨日話した2人の逢引きだが 188 00:10:30,734 --> 00:10:33,133 ある日から男が ぴたりと来なくなった 189 00:10:34,901 --> 00:10:37,934 それでも女は古堂に来て 男を待っていたのだ 190 00:10:38,968 --> 00:10:43,167 気になって 私は男の家に様子を見に行った 191 00:10:44,701 --> 00:10:50,300 それまでの2人の話から 男が街の名家の長男と知っていたのだ 192 00:10:50,868 --> 00:10:53,400 素敵な花婿さんと花嫁さん 193 00:10:53,901 --> 00:10:57,400 ええ それに大変な富豪のお嬢さんで 194 00:10:58,267 --> 00:11:01,634 これで傾きかけていたこの家も やっと安泰ね 195 00:11:02,033 --> 00:11:04,667 本家なんだから しっかりとしてもらわないとね 196 00:11:09,667 --> 00:11:12,534 人と妖が共にいられぬのは知っていたが 197 00:11:13,567 --> 00:11:18,100 人と人も いくら想い合おうと 共にいられぬことがあるなど… 198 00:11:19,367 --> 00:11:22,067 隆彦さん 隆彦さん… 199 00:11:24,968 --> 00:11:27,801 しかし女は なにも知らずに待ち続けた 200 00:11:27,901 --> 00:11:29,067 隆彦さん… 201 00:11:29,634 --> 00:11:33,167 毎日 毎日… 男の名を呼んで 202 00:11:34,434 --> 00:11:35,734 隆彦さん… 203 00:11:37,634 --> 00:11:38,200 はい 204 00:11:38,267 --> 00:11:38,834 あ! 205 00:11:39,367 --> 00:11:39,901 あ… は! 206 00:11:40,634 --> 00:11:42,601 隆彦さん そこにいるの? 207 00:11:42,734 --> 00:11:44,934 ああ あけてはいけない ヨウコさん 208 00:11:45,434 --> 00:11:46,033 え? 209 00:11:46,734 --> 00:11:51,968 その… ちょっとした病にかかってしまい 君にまだ近づけないんだ 210 00:11:52,067 --> 00:11:52,968 病… 211 00:11:53,100 --> 00:11:55,167 大丈夫? どんな病気に… 212 00:11:57,801 --> 00:11:58,400 ああ 213 00:11:58,968 --> 00:12:01,234 も もうほとんど治ったんだ 214 00:12:02,033 --> 00:12:02,968 本当に? 215 00:12:03,167 --> 00:12:06,367 ああ 君には しばらく用心のために… 216 00:12:07,634 --> 00:12:10,634 そう そう… 217 00:12:10,934 --> 00:12:12,400 よかった… 218 00:12:13,100 --> 00:12:14,667 よかった 219 00:12:16,067 --> 00:12:16,934 ヨビコ… 220 00:12:18,234 --> 00:12:23,834 私はこの時本当は 彼に代わり 別れを言ってやるべきだったのだ 221 00:12:24,534 --> 00:12:28,300 なのに 彼女の笑い声はあまりに楽しげで 222 00:12:28,634 --> 00:12:30,501 うふふ ふふっ 223 00:12:30,801 --> 00:12:34,100 ありがとう 隆彦さん 会いに来てくれて 224 00:12:34,400 --> 00:12:38,567 でも 体に障るといけないから もう帰って下さい 225 00:12:39,167 --> 00:12:40,701 あ いや 平気なんだ 226 00:12:40,968 --> 00:12:42,567 いや しかし… 227 00:12:42,868 --> 00:12:43,767 その代わり 228 00:12:44,033 --> 00:12:46,634 明日 また明日ここで 229 00:12:46,701 --> 00:12:47,300 うふ 230 00:12:48,901 --> 00:12:52,868 また明日… また明日と日を重ねていき 231 00:12:53,534 --> 00:12:54,801 何度も会いに行った 232 00:12:59,801 --> 00:13:01,934 隆彦さん 疲れたでしょう? 233 00:13:02,300 --> 00:13:03,734 いいや ちっとも 234 00:13:04,467 --> 00:13:08,567 でも雨も降ってきそうだし どうぞ先に帰って下さい 235 00:13:08,968 --> 00:13:11,100 いや ヨウコさんこそ先に 236 00:13:11,501 --> 00:13:13,601 だめ 隆彦さんが先に 237 00:13:13,734 --> 00:13:15,734 いや ヨウコさんが先に 238 00:13:16,000 --> 00:13:17,467 随分 強情… 239 00:13:17,667 --> 00:13:18,300 えっ 240 00:13:18,834 --> 00:13:19,400 何! 241 00:13:19,834 --> 00:13:21,501 ヨウコさんこそ頑固者だ! 242 00:13:22,167 --> 00:13:23,100 まあ 243 00:13:24,067 --> 00:13:26,000 あ うふっ うふふ 244 00:13:26,501 --> 00:13:30,100 うふふふふ ふふっ ふふふ… 245 00:13:34,334 --> 00:13:36,267 今日は とてもいいお天気 246 00:13:36,868 --> 00:13:38,434 うん 本当に 247 00:13:39,267 --> 00:13:41,234 木々はだいぶ色づいて 248 00:13:42,300 --> 00:13:43,801 うん 本当に 249 00:13:45,534 --> 00:13:46,701 寒くはない? 250 00:13:47,501 --> 00:13:49,267 うん 大丈夫 251 00:13:49,901 --> 00:13:50,701 ふふ 252 00:13:54,868 --> 00:13:56,801 昨日夢を見たの 253 00:13:57,634 --> 00:13:58,868 いい夢だった 254 00:13:59,467 --> 00:14:02,133 小さな窓から 海を見ているの 255 00:14:03,167 --> 00:14:06,334 海は静かで きらきら光っていて… 256 00:14:07,267 --> 00:14:08,467 それは どこ? 257 00:14:08,801 --> 00:14:12,601 それがね そんな所の記憶はないのに 258 00:14:13,067 --> 00:14:16,467 なぜだか 懐かしさで胸がいっぱいで… 259 00:14:16,968 --> 00:14:17,801 ふーん 260 00:14:18,467 --> 00:14:20,534 そこへ帰ってきたような 261 00:14:21,567 --> 00:14:24,200 穏やかな いい気持ちで… 262 00:14:26,033 --> 00:14:26,834 行ってみたい 263 00:14:27,200 --> 00:14:29,200 え? 夢の話よ 264 00:14:29,434 --> 00:14:31,434 夢でも どこでも 265 00:14:31,567 --> 00:14:34,400 うふ そんな子供みたいなこと 266 00:14:35,067 --> 00:14:36,734 隆彦さんじゃないみたい 267 00:14:36,934 --> 00:14:39,033 何っ そ そんなことはちっともない! 268 00:14:39,100 --> 00:14:42,767 うふふ ムキになって ますますおかしい 269 00:14:42,834 --> 00:14:44,400 あ… ふっ 270 00:14:44,834 --> 00:14:45,567 ふふふふ 271 00:14:45,634 --> 00:14:47,567 おかしい… かな 272 00:14:48,133 --> 00:14:49,067 ええ 273 00:14:50,934 --> 00:14:52,067 とっても… 274 00:14:52,634 --> 00:14:56,234 会えば会うほど 彼女が笑えば笑うほど 275 00:14:57,200 --> 00:14:59,868 罪の重さを知ったのだ 276 00:15:01,767 --> 00:15:02,501 はあ 277 00:15:04,200 --> 00:15:05,467 不思議ね 278 00:15:06,634 --> 00:15:09,434 顔を見られなくなって こうして 279 00:15:10,067 --> 00:15:12,334 あなたの声だけを聞いていると 280 00:15:12,734 --> 00:15:16,534 前よりもっと 親しくなれたような気がするの 281 00:15:18,300 --> 00:15:19,133 けれど 282 00:15:19,701 --> 00:15:21,467 ほんの少しだけでいい 283 00:15:22,334 --> 00:15:23,501 顔が見たい… 284 00:15:26,501 --> 00:15:27,667 会いたいの! 285 00:15:31,601 --> 00:15:32,434 はっ! 286 00:15:33,734 --> 00:15:35,200 すまん ヨウコさん! 287 00:15:36,868 --> 00:15:39,868 あの男は家のために もう ここには来られなくなった 288 00:15:41,100 --> 00:15:43,300 私は彼のふりをした偽物なのだ 289 00:15:44,834 --> 00:15:45,601 すまん… 290 00:15:47,534 --> 00:15:48,167 はっ! 291 00:15:49,801 --> 00:15:50,534 すまん! 292 00:15:59,434 --> 00:16:03,133 なんとも… 許されざる行いだ 293 00:16:04,534 --> 00:16:08,501 傷ついた彼女の顔を 見ることができず それっきり… 294 00:16:09,634 --> 00:16:14,734 自分の罪と彼女が怖くて それ以来 古堂や古木には帰れず 295 00:16:15,467 --> 00:16:16,467 旅に出た 296 00:16:23,567 --> 00:16:26,067 人にとっては長い時が経った頃 297 00:16:27,300 --> 00:16:29,901 私はもう一度 あの古堂に行ってみた 298 00:16:30,968 --> 00:16:31,767 すると 299 00:16:32,701 --> 00:16:37,534 飛ばされぬよう 石の置かれた 文のようなものを見つけたのだ 300 00:16:39,334 --> 00:16:41,667 全く関係のないものかもしれん 301 00:16:42,400 --> 00:16:45,767 しかし ひょっとしたら ヨウコさんの残した文かもしれん 302 00:16:46,901 --> 00:16:50,501 もしそうなら 隆彦に宛てたものかもしれんし 303 00:16:51,467 --> 00:16:53,300 私に宛てたものかもと 304 00:16:54,234 --> 00:16:55,133 それが… 305 00:16:56,734 --> 00:17:01,501 怒りや憎しみの言葉であるなら 私は受けとめなければならない 306 00:17:02,000 --> 00:17:03,734 ずっと逃げてきたが… 307 00:17:05,000 --> 00:17:07,501 やはり どうしても忘れられなかった 308 00:17:09,234 --> 00:17:12,667 もし叶うなら この文を読んでみたいのだ 309 00:17:13,033 --> 00:17:13,701 ん… 310 00:17:13,934 --> 00:17:14,734 なるほど 311 00:17:16,267 --> 00:17:20,501 そこまで聞いたなら 俺も中身が気になるな 312 00:17:28,400 --> 00:17:30,033 んーにゃっ! 全く! 313 00:17:30,267 --> 00:17:35,100 あの チョボマユ妖怪 どこへ行ったー! このーおっ! 314 00:17:35,234 --> 00:17:39,033 おーい カリカミー! おーい! 315 00:17:39,567 --> 00:17:40,701 ん? ん? 316 00:17:40,767 --> 00:17:42,667 カリカミはいないかー? 317 00:17:43,667 --> 00:17:45,367 名を返しに来たんだー 318 00:17:46,467 --> 00:17:50,267 あのアホめ! また しょうもないことをー! 319 00:17:51,467 --> 00:17:53,167 おーい! 320 00:17:53,267 --> 00:17:54,701 カリカミー! 321 00:17:55,601 --> 00:17:57,968 大事なものを返しに来たんだー 322 00:17:58,434 --> 00:18:00,033 どうか来てくれー 323 00:18:01,868 --> 00:18:02,567 何者だ! 324 00:18:02,701 --> 00:18:04,734 こーら 夏目ー! 325 00:18:04,801 --> 00:18:05,834 ニャンコ先生 326 00:18:05,901 --> 00:18:09,100 んんー 全くもう! 勝手にふらふらと 327 00:18:09,200 --> 00:18:11,801 そんなに妖共の餌になりたいかー! 328 00:18:12,467 --> 00:18:12,968 -あ… -うお! 329 00:18:13,033 --> 00:18:14,000 ふるにゃっ わわ! うぐ… 330 00:18:21,868 --> 00:18:25,033 名をお返し頂けるとは本当ですか? 331 00:18:25,667 --> 00:18:28,400 レイコとは少し違った気配がするが… 332 00:18:28,467 --> 00:18:29,033 あ! 333 00:18:29,334 --> 00:18:30,801 夏目レイコは祖母です 334 00:18:31,100 --> 00:18:32,767 友人帳を譲り受けました 335 00:18:33,901 --> 00:18:36,667 長いあいだ縛ってすみません 返します 336 00:18:37,300 --> 00:18:39,334 それと 頼みもあるんです 337 00:18:39,968 --> 00:18:41,234 頼み? 338 00:18:41,701 --> 00:18:44,601 友人帳があるなら命ずればよいものを 339 00:18:44,934 --> 00:18:46,801 それは私の願いなのです 340 00:18:48,334 --> 00:18:50,501 この文を元に戻して頂きたい 341 00:18:51,334 --> 00:18:52,801 どうかお願いします 342 00:18:55,634 --> 00:18:59,868 ふん レイコとはまた別の 変わり者のようだ 343 00:19:00,434 --> 00:19:01,367 よろしい 344 00:19:01,434 --> 00:19:04,534 その願い名を返してくれる礼としよう 345 00:19:06,200 --> 00:19:09,133 我を守りし者よ その名を示せ 346 00:19:11,234 --> 00:19:13,367 カリカミ 君へ返そう 347 00:19:14,434 --> 00:19:15,234 受けてくれ 348 00:19:19,968 --> 00:19:21,167 おお お… 349 00:19:27,801 --> 00:19:31,367 全くかなわぬ 人の子に負けるとは 350 00:19:32,467 --> 00:19:34,767 いつでも私を呼び出すとよろしい 351 00:19:35,234 --> 00:19:39,667 いつか その紙が古びでもしたら 私が直して進ぜよう 352 00:19:39,801 --> 00:19:41,467 え これが? 353 00:19:44,601 --> 00:19:45,868 あ はあ… 354 00:19:46,801 --> 00:19:48,767 確かにお返し頂いた 355 00:19:49,100 --> 00:19:51,834 では次は こちらの番 356 00:19:54,434 --> 00:19:55,067 ああ… 357 00:19:56,267 --> 00:19:56,767 あ は… 358 00:19:56,834 --> 00:20:01,067 んん… よき紙かな よき紙かな 359 00:20:03,367 --> 00:20:04,167 ふんっ 360 00:20:08,834 --> 00:20:10,267 おおー! 361 00:20:11,501 --> 00:20:12,767 大事にされよ 362 00:20:13,300 --> 00:20:15,434 おお… おお! 363 00:20:15,601 --> 00:20:17,033 ありがとう カリカミ殿 364 00:20:17,801 --> 00:20:19,501 ありがとう 夏目殿 365 00:20:19,667 --> 00:20:22,968 おーい ちょぼまゆ! 感謝は酒で示せえーい! 366 00:20:23,834 --> 00:20:25,968 ありがとう 助かりました 367 00:20:26,534 --> 00:20:28,067 女の文ですな 368 00:20:28,334 --> 00:20:30,000 しかし この気配… 369 00:20:30,167 --> 00:20:33,267 書いた女は もうこの世におりませぬよ 370 00:20:33,667 --> 00:20:34,300 ああ… 371 00:20:36,567 --> 00:20:37,100 はい 372 00:20:38,267 --> 00:20:40,601 そうだ あの紙の色 373 00:20:42,567 --> 00:20:47,968 妖の胸には今も鮮やかな あの声も 笑顔も 374 00:20:48,434 --> 00:20:52,234 みんな ずっとずっと 遠い日々 375 00:20:53,801 --> 00:20:58,200 人はあまりに あっという間に流されて… 376 00:21:01,567 --> 00:21:02,434 レイコも 377 00:21:02,501 --> 00:21:03,000 あ… は! 378 00:21:03,434 --> 00:21:05,501 もう いないのですね 379 00:21:06,634 --> 00:21:07,467 う… 380 00:21:07,968 --> 00:21:08,767 これが? 381 00:21:12,734 --> 00:21:17,200 やあね そうなったら あたし もう おばあちゃんじゃない 382 00:21:17,567 --> 00:21:18,501 うふふ 383 00:21:21,834 --> 00:21:22,634 夏目! 384 00:21:23,467 --> 00:21:24,334 先生… 385 00:21:24,400 --> 00:21:26,033 ぼーっとしおって 386 00:21:26,167 --> 00:21:29,801 そんなに腑抜けて また食われそうになっても知らんぞ 387 00:21:29,934 --> 00:21:30,501 ふっ 388 00:21:31,133 --> 00:21:33,534 お前は これからまた旅を? 389 00:21:33,868 --> 00:21:37,067 いや もう元の古木に帰ろうと思う 390 00:21:37,834 --> 00:21:42,300 古堂も残っているし またあの場所を見守っていこうかと 391 00:21:42,734 --> 00:21:43,634 そうか 392 00:21:44,801 --> 00:21:46,934 手紙はお前宛てだったのか? 393 00:21:47,601 --> 00:21:49,834 何が書いてあったか聞いてもいいかな 394 00:21:50,834 --> 00:21:54,634 それが 恥ずかしいことに人の字は読めぬ 395 00:21:56,000 --> 00:21:58,267 読んでくれぬか 夏目殿 396 00:22:03,200 --> 00:22:03,801 あ! は… 397 00:22:12,100 --> 00:22:14,634 なんと書いてある? 夏目殿 398 00:22:15,300 --> 00:22:17,934 悲しいと? 許せぬと? 399 00:22:19,133 --> 00:22:20,667 ん… いや 400 00:22:35,901 --> 00:22:41,467 微笑んだうしろ姿に 401 00:22:41,534 --> 00:22:48,234 泣きそうな顔を 隠してた 402 00:22:48,734 --> 00:22:54,434 やさしさで胸がいたくて 403 00:22:54,734 --> 00:23:01,868 こんなに日々がいとおしくて 404 00:23:02,634 --> 00:23:15,033 風の音に 夕闇に 懐かしい君を思い出す 405 00:23:15,567 --> 00:23:28,601 いつまでも一緒だよ と 叶わぬことくり返し 406 00:23:32,734 --> 00:23:38,634 ぬくもりはこの手に 407 00:23:39,133 --> 00:23:44,901 あざやかなまま 生きている 408 00:23:45,534 --> 00:23:51,934 忘れたくないもの 409 00:23:52,334 --> 00:24:02,200 受け取った愛を 未来にかえながら 410 00:24:06,067 --> 00:24:08,033 彼は何を見ていたのだろう 411 00:24:08,100 --> 00:24:10,567 夏目 変なものがくっついてるぞ 412 00:24:10,801 --> 00:24:13,234 この妖怪 昔会ったことがある 413 00:24:13,434 --> 00:24:15,234 聞けないままで別れたけれど 414 00:24:15,501 --> 00:24:17,534 あの町には変わった奴がいたんだ 415 00:24:18,033 --> 00:24:20,367 彼は今 笑っているだろうか