1 00:00:02,002 --> 00:00:11,511 ♬~ 2 00:00:11,511 --> 00:00:15,349 (ロレンス)いろいろありましたが 金の密輸は 成功しました。 3 00:00:15,349 --> 00:00:17,517 私の商人としての未来。 4 00:00:17,517 --> 00:00:21,355 そして ノーラさんが 仕立て職人となる道も開けた。 5 00:00:21,355 --> 00:00:24,024 (ノーラ)フッ…。 6 00:00:24,024 --> 00:00:26,860 今日は 心行くまで 食べて 飲みましょう。 7 00:00:26,860 --> 00:00:29,663 では 我々の前途を祝して…。 8 00:02:12,332 --> 00:02:14,501 えっ? そうだったんですか? (ノーラ)はい。 9 00:02:14,501 --> 00:02:17,838 しかし お見事でしたね。 (ノーラ)あっ いえ。 10 00:02:17,838 --> 00:02:20,841 さすが ノーラさんだ。 羊たちが みんな➡ 11 00:02:20,841 --> 00:02:23,176 言うことを聞く いい子だったからです。 12 00:02:23,176 --> 00:02:25,679 ご謙遜を。 やはり あなたが➡ 13 00:02:25,679 --> 00:02:27,848 優れた羊飼いだからですよ。 (ホロ)あっ…。 14 00:02:27,848 --> 00:02:29,850 (ノーラ)そんなことは…。 15 00:02:29,850 --> 00:02:31,852 おっ 来ましたよ。 16 00:02:31,852 --> 00:02:34,054 おいしそう。 切りましょう。 17 00:02:40,694 --> 00:02:42,863 はい。 ありがとうございます。 18 00:02:42,863 --> 00:02:46,700 どういたしまして。 お前も いるか? 19 00:02:46,700 --> 00:02:50,871 んっ…。 んっ…。 欲しくなったら 言えよ。 20 00:02:50,871 --> 00:02:55,208 それにしても 羊が 岩塩を 見つけるとは 知りませんでした。 21 00:02:55,208 --> 00:02:58,378 なぜか あの子たちは 塩気が とても好きで。 22 00:02:58,378 --> 00:03:01,314 例えば 岩に 塩を軽く すり込んでおけば➡ 23 00:03:01,314 --> 00:03:04,017 いつまでも ずっと なめ続けるんですよ。 24 00:03:06,820 --> 00:03:09,489 そういえば いつだったか…。 25 00:03:09,489 --> 00:03:13,160 遠くの町には 羊を使った 変わった拷問があるらしいと➡ 26 00:03:13,160 --> 00:03:15,162 小耳に挟んだことがあるんです。 27 00:03:15,162 --> 00:03:18,165 そんな まさかなと 思っていたのですが…。 28 00:03:18,165 --> 00:03:20,333 (ノーラ)羊を使った? ええ。 29 00:03:20,333 --> 00:03:23,503 なんという名前の町か 失念してしまったのですが➡ 30 00:03:23,503 --> 00:03:27,841 そこの町の拷問は そう 羊に 足をなめさせるんですよ。 31 00:03:27,841 --> 00:03:29,843 えっ 羊に? 32 00:03:32,179 --> 00:03:35,182 んっ… んっ…。 フッ… フフッ…。 33 00:03:35,182 --> 00:03:38,351 ええ。 羊に なめさせるのですが➡ 34 00:03:38,351 --> 00:03:40,854 それも 足に 塩を付けるらしいのです。 ハァ…。 35 00:03:40,854 --> 00:03:42,856 最初のうちは くすぐったいだけですが➡ 36 00:03:42,856 --> 00:03:46,693 羊は 決して やめず ついに 笑い過ぎて 苦しくなるそうです。 37 00:03:46,693 --> 00:03:49,029 まあ…。 ノーラさんも 手や指を➡ 38 00:03:49,029 --> 00:03:51,364 羊に なめられることがあるのでは? 39 00:03:51,364 --> 00:03:54,701 (ノーラ)確かに 私が 干し肉を食べたあとの手を➡ 40 00:03:54,701 --> 00:03:57,370 どうにかして なめようと 羊たちが集まってきて➡ 41 00:03:57,370 --> 00:03:59,372 困ることがあります。 42 00:03:59,372 --> 00:04:02,976 その点 お連れになっている騎士は 聞き分けがよさそうで。 43 00:04:02,976 --> 00:04:06,313 あっ…。 44 00:04:06,313 --> 00:04:08,315 う~ん… エネクも エネクで➡ 45 00:04:08,315 --> 00:04:12,819 時折 頑張り過ぎてしまうというか 融通が利かないところがあって。 46 00:04:12,819 --> 00:04:14,821 (エネク)ワン! 47 00:04:19,326 --> 00:04:21,995 フッ…。 48 00:04:21,995 --> 00:04:24,331 とすると やはり 彼らを導く➡ 49 00:04:24,331 --> 00:04:26,833 羊飼いとしての腕が 確かなのでしょう。 50 00:04:26,833 --> 00:04:29,035 まあ そんな…。 51 00:04:31,671 --> 00:04:34,007 ところで やはり ノーラさんは この先…。 52 00:04:34,007 --> 00:04:38,011 (ロレンス/ノーラ)んっ? (ナイフを落とす音) 53 00:04:38,011 --> 00:04:41,348 なんだ? もう酔ったのか? 54 00:04:41,348 --> 00:04:44,351 んっ? お前 顔色が…。 ハァハァ…。 55 00:04:44,351 --> 00:04:47,854 なんでもない。 ちょっと…。 56 00:04:47,854 --> 00:04:49,856 あっ! あっ…。 57 00:04:49,856 --> 00:04:54,528 ホロ! ホロ! おい! しっかりしろ! ホロ! 58 00:04:54,528 --> 00:05:00,467 < わっちは もともと 何百年と 1人で麦畑におった。 59 00:05:00,467 --> 00:05:04,471 そのころは 毎日が 何事もなく過ぎていった。 60 00:05:04,471 --> 00:05:06,807 昨日と今日の区別はなく➡ 61 00:05:06,807 --> 00:05:09,309 明日と あさっての区別もない。 62 00:05:09,309 --> 00:05:12,813 時折 思い出したかのように 時間が進むのは➡ 63 00:05:12,813 --> 00:05:14,981 祭りの日くらいじゃった。 64 00:05:14,981 --> 00:05:17,984 1年に1回の 収穫の祭り。 65 00:05:17,984 --> 00:05:20,153 2回の 種まきの祭り。 66 00:05:20,153 --> 00:05:23,657 それから 霜が降りないように祈る祭りと➡ 67 00:05:23,657 --> 00:05:25,992 雨が降るように祈る祭りと➡ 68 00:05:25,992 --> 00:05:30,497 風が吹かないように祈る 祭りのときだけ。 69 00:05:30,497 --> 00:05:33,333 それに比べて 旅というのは➡ 70 00:05:33,333 --> 00:05:37,170 日々 生まれ変わるに等しいくらい 毎日が新鮮じゃ。 71 00:05:37,170 --> 00:05:39,506 連れと会ってから 過ごしてきた日は➡ 72 00:05:39,506 --> 00:05:43,009 まさしく 何百年分にも相当する。 73 00:05:43,009 --> 00:05:47,180 1日の中ですら 朝と夜では もう 全く違う。 74 00:05:47,180 --> 00:05:50,016 朝に 侃々諤々 けんかしたかと思えば➡ 75 00:05:50,016 --> 00:05:52,018 昼には仲直りして➡ 76 00:05:52,018 --> 00:05:55,021 口に付いたパンのかけらを取らせて からかい➡ 77 00:05:55,021 --> 00:05:57,524 夕方は 飯の取り合いで また けんかして➡ 78 00:05:57,524 --> 00:06:01,628 夜は 明日のことで 静かに話し合う。 79 00:06:01,628 --> 00:06:06,466 人と旅をしたり 暮らしたことは 他にも 何度かあった。 80 00:06:06,466 --> 00:06:09,469 忘れられぬ記憶もある。 81 00:06:09,469 --> 00:06:14,307 じゃが もう それらを思い出す余裕はない。 82 00:06:14,307 --> 00:06:16,810 昨日は 連れは どうしておったか➡ 83 00:06:16,810 --> 00:06:18,812 今日の朝は どうだったか➡ 84 00:06:18,812 --> 00:06:21,815 そして 今 何を たくらんでおるのか。 85 00:06:21,815 --> 00:06:24,150 のんびり 故郷のことを思い出しては➡ 86 00:06:24,150 --> 00:06:26,152 めそめそしていたのも➡ 87 00:06:26,152 --> 00:06:28,822 連れと出会って すぐまでじゃった。 88 00:06:28,822 --> 00:06:31,157 こんなに刺激に満ちた日々では➡ 89 00:06:31,157 --> 00:06:34,160 目が回ってしまって おちおち 悲しんでもいられぬ。 90 00:06:34,160 --> 00:06:36,830 楽しくないと言えば うそ。 91 00:06:36,830 --> 00:06:40,834 むしろ 楽しすぎて 不安なくらいの日々じゃ> 92 00:06:43,837 --> 00:06:46,172 あっ…。 93 00:06:46,172 --> 00:06:49,175 んっ? 94 00:06:49,175 --> 00:06:51,177 ここは? 95 00:06:59,185 --> 00:07:01,454 不覚…。 96 00:07:01,454 --> 00:07:05,292 ハァ…。 なんでじゃろうか。 97 00:07:05,292 --> 00:07:09,629 気に入らないから 怒り おもしろいから 笑い➡ 98 00:07:09,629 --> 00:07:13,133 つい うっかり 隙を見せてしまう。 99 00:07:13,133 --> 00:07:15,969 いや でも すべて 悪いのは あっちじゃ。 100 00:07:15,969 --> 00:07:20,473 苦難を乗り越えられたのは この賢狼のおかげだというのに。 101 00:07:20,473 --> 00:07:25,812 あんな羊飼いの 貧相な体つきの どこが…。 102 00:07:25,812 --> 00:07:28,648 それとも 金髪か? 103 00:07:28,648 --> 00:07:31,484 大体 あれは どこにいる? 104 00:07:31,484 --> 00:07:37,157 肝心なときに そばにいないとは いよいよ 役に立たぬ雄じゃ。 105 00:07:37,157 --> 00:07:40,360 んっ? あっ…。 んっ! 106 00:07:44,664 --> 00:07:46,666 ハァ…。 107 00:07:50,670 --> 00:07:53,506 んっ… フフッ…。 108 00:07:53,506 --> 00:07:57,811 う~ん…。 ハッ! 109 00:08:00,280 --> 00:08:04,117 あっ…。 なぜ 体調が悪いことを黙っていた? 110 00:08:04,117 --> 00:08:06,453 んっ…。 子どもじゃないんだ。 111 00:08:06,453 --> 00:08:09,622 倒れるまで 気が付かなかったとか 言うつもりはないな? 112 00:08:09,622 --> 00:08:11,624 本当に心配したんだ。 113 00:08:11,624 --> 00:08:14,461 これが 旅の途中だったら どうするつもりだったんだ? 114 00:08:14,461 --> 00:08:16,963 ちょっとしたことから 死につながることもあるんだぞ。 115 00:08:16,963 --> 00:08:19,299 すまぬ。 116 00:08:19,299 --> 00:08:22,469 いや… お前が無事なら いいんだ。 117 00:08:22,469 --> 00:08:26,139 風邪とか なんか… 病じゃないんだろ? 118 00:08:26,139 --> 00:08:29,142 フッ… 疲れが出ただけじゃろう。 119 00:08:29,142 --> 00:08:31,478 やはり そうか。 病だったら➡ 120 00:08:31,478 --> 00:08:36,316 俺も 多少は わかるからな。 ただ もしかしたらと。 121 00:08:36,316 --> 00:08:39,986 んっ? たまねぎとか 食ったんじゃないかと。 122 00:08:39,986 --> 00:08:42,655 わっちゃあ 犬ではありんせん。 123 00:08:42,655 --> 00:08:46,493 ああ 賢狼だからな。 じゃが 酒と馳走が➡ 124 00:08:46,493 --> 00:08:49,329 もったいなかったとは思うておる。 125 00:08:49,329 --> 00:08:52,665 俺は商人だからな。 そこのところは 抜かりない。 126 00:08:52,665 --> 00:08:55,001 残った物は 包んで もらってきてある。 127 00:08:55,001 --> 00:08:57,604 あっ! と言いたいところだが…。 えっ? 128 00:09:02,609 --> 00:09:04,611 んっ…。 129 00:09:07,280 --> 00:09:11,284 やっぱり 熱があるな。 相当 疲れてたんじゃないのか。 130 00:09:11,284 --> 00:09:14,120 主のせいじゃ。 えっ 俺? 131 00:09:14,120 --> 00:09:18,958 主の指は硬くて 狼の鼻先に似ておる。 132 00:09:18,958 --> 00:09:23,129 あっ? 鼻先を こすりつけてくるというのは➡ 133 00:09:23,129 --> 00:09:25,965 人間で言うと…。 あっ…。 134 00:09:25,965 --> 00:09:28,635 ちょっと 言えぬ。 んっ? なんだ? それ。 135 00:09:28,635 --> 00:09:31,137 もう よい。 ほっといてくりゃれ。 136 00:09:31,137 --> 00:09:33,306 まあ しばらく 肉は お預けだ。 137 00:09:33,306 --> 00:09:36,643 うっ…。 138 00:09:36,643 --> 00:09:40,146 そのかわり あしたは 病人食を用意してやるから➡ 139 00:09:40,146 --> 00:09:42,148 きっちり 体力を戻すんだな。 140 00:09:42,148 --> 00:09:44,651 主が優しいと あとが怖い。 141 00:09:44,651 --> 00:09:46,820 それは こっちのせりふだ。 142 00:09:46,820 --> 00:09:48,822 フフッ…。 143 00:09:57,664 --> 00:10:00,500 んっ… んっ…。 144 00:10:00,500 --> 00:10:03,002 ん~? 145 00:10:03,002 --> 00:10:05,839 どこに行って 何をしている? 146 00:10:05,839 --> 00:10:08,007 ヨイツでは 看病といえば➡ 147 00:10:08,007 --> 00:10:12,011 なめて 毛繕いをするか そばに寄り添っていることで➡ 148 00:10:12,011 --> 00:10:14,814 目を覚まして 隣にいないなどと…。 あっ! 149 00:10:20,019 --> 00:10:23,022 体調は どうだ? 起き上がれぬ。 150 00:10:23,022 --> 00:10:26,526 フッ… どうせ うそなんだろ? 151 00:10:26,526 --> 00:10:29,028 それじゃあ かゆを作ってもらってくるか。 152 00:10:29,028 --> 00:10:32,532 喉も渇きんす。 それ 水かや? 153 00:10:32,532 --> 00:10:36,202 ああ… いや お前 昨日 熱があっただろう? 154 00:10:36,202 --> 00:10:39,873 だから りんご酒をな。 ハッ! あっ! んっ! 155 00:10:39,873 --> 00:10:42,542 んっ! んっ… んっ…。 どうした? 156 00:10:42,542 --> 00:10:44,544 重くて 出られぬ。 157 00:10:46,546 --> 00:10:49,549 これで いいか? すまぬ。 158 00:10:57,891 --> 00:11:00,326 んっ…。 159 00:11:00,326 --> 00:11:02,328 んっ? 160 00:11:02,328 --> 00:11:04,330 んっ んっ ん~…。 161 00:11:04,330 --> 00:11:07,333 どうした? うむ… 味が…。 (匂いを嗅ぐ音) 162 00:11:07,333 --> 00:11:10,837 ああ 薄めてあるからな。 薄め過ぎじゃろうが! 163 00:11:10,837 --> 00:11:13,840 鼻が ばかになってしまったのかと 思いんす。 164 00:11:13,840 --> 00:11:17,343 お前 熱があっただろう? だから 薄い りんご酒なんだよ。 165 00:11:17,343 --> 00:11:19,345 なぜ 「だから」なのじゃ? 166 00:11:19,345 --> 00:11:23,183 んっ? そうか お前 この手の知識はないのか。 167 00:11:23,183 --> 00:11:25,852 お前が倒れたから 商館に行って➡ 168 00:11:25,852 --> 00:11:30,023 ありがたい医術書の翻訳を 慌てて ひもといてきたんだぞ。 169 00:11:30,023 --> 00:11:32,192 で それは どんなものじゃ? 170 00:11:32,192 --> 00:11:36,029 病とは 人の体の釣り合いが 崩れることによって起こる。 171 00:11:36,029 --> 00:11:38,865 それは 疲れとか よくない空気とか。 172 00:11:38,865 --> 00:11:41,701 あとは 星の運行によっても左右される。 173 00:11:41,701 --> 00:11:45,205 病は その釣り合いを 取り戻すことで治せる。 174 00:11:45,205 --> 00:11:49,042 そのために 人の体の 4つの状態を利用する。 175 00:11:49,042 --> 00:11:51,044 4つの状態? 176 00:11:51,044 --> 00:11:53,046 ああ。 人の体には➡ 177 00:11:53,046 --> 00:11:57,884 熱い 冷たい 乾いている 湿っているという状態がある。 178 00:11:57,884 --> 00:12:00,653 それは 食べ物によって 調節することができる。 179 00:12:00,653 --> 00:12:04,157 食べ物も また 熱い食べ物 冷たい食べ物➡ 180 00:12:04,157 --> 00:12:06,492 乾いている食べ物 湿っている食べ物に➡ 181 00:12:06,492 --> 00:12:08,494 分類できるからだ。 182 00:12:08,494 --> 00:12:11,664 お前は 熱があったから 冷たい食べ物である りんごが➡ 183 00:12:11,664 --> 00:12:14,334 ちょうどよい。 それなら わっちゃあ➡ 184 00:12:14,334 --> 00:12:16,836 生の りんごのほうが よかったんじゃが。 185 00:12:16,836 --> 00:12:18,838 それじゃあ だめなんだ。 んっ? 186 00:12:18,838 --> 00:12:23,009 りんごは冷たいが 医術のうえでは 乾いている食べ物だからな。 187 00:12:23,009 --> 00:12:26,846 体調の悪い人間は 乾いているから 湿らせないといけない。 188 00:12:26,846 --> 00:12:30,516 ふ~ん…。 そのために 飲み物である必要がある。 189 00:12:30,516 --> 00:12:35,355 ただ 強い酒は熱いから それを 薄めて 冷まさないといけない。 190 00:12:35,355 --> 00:12:37,690 ハァ… それで こんな➡ 191 00:12:37,690 --> 00:12:42,528 水に ちょっと色が付いたような まずい代物になっているのかや。 192 00:12:42,528 --> 00:12:46,866 それで わっちは 他に 何を食べさせてもらえるのかや? 193 00:12:46,866 --> 00:12:50,036 ああ 疲労が蓄積して 熱が出たとあれば➡ 194 00:12:50,036 --> 00:12:52,038 まず それを冷ます。 195 00:12:52,038 --> 00:12:54,040 また 体が乾いているはずだから➡ 196 00:12:54,040 --> 00:12:57,210 湿り気を取り戻す。 う~ん…。 197 00:12:57,210 --> 00:12:59,379 走ったあとは 喉が渇くだろ? 198 00:12:59,379 --> 00:13:01,648 しかし 湿り気は 体を冷やし➡ 199 00:13:01,648 --> 00:13:04,150 冷やし過ぎると 人は 憂鬱になる。 200 00:13:04,150 --> 00:13:06,986 よって しかる後に 温めなければならない。 201 00:13:06,986 --> 00:13:10,156 以上から… 以上から そうだな。 う~ん…。 202 00:13:10,156 --> 00:13:13,993 麦を 羊の乳で煮込んだ かゆに りんごの切り身を入れて➡ 203 00:13:13,993 --> 00:13:17,163 チーズを添えるといったところか。 あっ! 204 00:13:17,163 --> 00:13:20,333 これはだな まず りんごが…。 205 00:13:20,333 --> 00:13:22,835 うわっ! うむ! それでよい。 206 00:13:22,835 --> 00:13:27,006 わっちゃあ それが食べたい。 いや 食べなければ倒れてしまう。 207 00:13:27,006 --> 00:13:30,510 見てくりゃれ こんなにも 顔色が悪い。 208 00:13:30,510 --> 00:13:33,346 ほれ 主よ 早く持ってきんす! 209 00:13:33,346 --> 00:13:37,183 お前 ほんとは もう 全快してるんじゃないか? 210 00:13:37,183 --> 00:13:39,185 むっ… めまいが…。 211 00:13:39,185 --> 00:13:42,355 あっ! おっ… おい しっかりしろ! 212 00:13:42,355 --> 00:13:44,357 早くしてくりゃれ。 213 00:13:44,357 --> 00:13:46,359 うっ…。 214 00:13:46,359 --> 00:13:49,028 んっ…。 ったく…。 215 00:13:49,028 --> 00:13:51,364 で りんご酒は もういいのか? 216 00:13:51,364 --> 00:13:53,866 んっ… まあ これは これで よい。 217 00:13:53,866 --> 00:13:57,036 かゆは 大盛りでな。 218 00:13:57,036 --> 00:13:59,038 わかった わかった。 219 00:13:59,038 --> 00:14:01,140 (ドアの閉まる音) 220 00:14:03,810 --> 00:14:07,313 ふぁ~…。 221 00:14:07,313 --> 00:14:09,315 んっ…。 222 00:14:11,317 --> 00:14:14,153 < わっちは 時折 夢を見るんじゃ。 223 00:14:14,153 --> 00:14:18,324 故郷の夢。 それから 麦畑の夢。 224 00:14:18,324 --> 00:14:20,326 どれも懐かしいが➡ 225 00:14:20,326 --> 00:14:24,664 同時に 抱えきれないくらいの 嫌悪感も伴う夢じゃ。 226 00:14:24,664 --> 00:14:27,166 もろもろの上に立つ存在として➡ 227 00:14:27,166 --> 00:14:29,168 その責を ごくりと飲み込んで➡ 228 00:14:29,168 --> 00:14:32,171 過ごしていたときの ことじゃからの。 229 00:14:32,171 --> 00:14:35,508 頼み 頼まれしたわけでも ないのに➡ 230 00:14:35,508 --> 00:14:38,511 誰かがやらなければならぬ その責務➡ 231 00:14:38,511 --> 00:14:42,515 気が付いたときには ずっしりと首に食い込んでいた➡ 232 00:14:42,515 --> 00:14:46,185 重い 重い かせ。 233 00:14:46,185 --> 00:14:50,523 力があるから 頼られ 姿が でかいから あがめられ➡ 234 00:14:50,523 --> 00:14:52,692 役に立つから 尊ばれる。 235 00:14:52,692 --> 00:14:56,028 こちらが あがめてくれと 頼んだわけでもないのに➡ 236 00:14:56,028 --> 00:14:58,364 やつらを見放せぬばかりに➡ 237 00:14:58,364 --> 00:15:00,967 その おりの中に 閉じ込められる。 238 00:15:00,967 --> 00:15:03,469 頼んだわけでもないのに➡ 239 00:15:03,469 --> 00:15:06,139 頼まれたわけでもないのに➡ 240 00:15:06,139 --> 00:15:09,475 そんな幾百年じゃった。 241 00:15:09,475 --> 00:15:12,311 うまい食べ物の匂いは 嗅ぎ慣れた。 242 00:15:12,311 --> 00:15:15,648 しかし それに 鼻をひくつかせたときに➡ 243 00:15:15,648 --> 00:15:19,318 絶対に こんな 親しみにあふれた 笑みを見せてくれる者は➡ 244 00:15:19,318 --> 00:15:21,320 おらんかった。 245 00:15:21,320 --> 00:15:27,627 それが たとえ 身の程知らずの 生意気な者であってもの> 246 00:15:30,830 --> 00:15:33,666 んっ…。 起きれるか? 247 00:15:33,666 --> 00:15:36,836 ううん。 248 00:15:36,836 --> 00:15:40,840 全く…。 俺が 体調 悪くなったら➡ 249 00:15:40,840 --> 00:15:43,009 借りを返してくれるんだろうな? 250 00:15:43,009 --> 00:15:46,679 ヨイツの流儀でよければの。 なんだ? そりゃ。 251 00:15:46,679 --> 00:15:49,849 大丈夫。 わっちゃあ 鼻が利くからの➡ 252 00:15:49,849 --> 00:15:53,019 こんなふうになる前に気が付いて どうにかしんす。 253 00:15:53,019 --> 00:15:56,856 んっ… まあ 気が付かなかったのは悪かったよ。 254 00:15:56,856 --> 00:16:00,960 だが お前のほうからも できれば 言ってほしい。 255 00:16:00,960 --> 00:16:05,131 とにかく 俺は そう… 鈍いらしいから。 256 00:16:05,131 --> 00:16:07,633 そうじゃろうな。 257 00:16:07,633 --> 00:16:10,136 きっと 医者でも治せぬ病だろうて➡ 258 00:16:10,136 --> 00:16:12,471 そう簡単には 気が付かないじゃろう。 259 00:16:12,471 --> 00:16:14,640 えっ? なんでもありんせん。 260 00:16:14,640 --> 00:16:18,845 それより 飯。 全く… どこのお姫様だ。 261 00:16:22,148 --> 00:16:24,817 あっ! 262 00:16:24,817 --> 00:16:26,819 ハァー…。 263 00:16:26,819 --> 00:16:31,123 フッ… フッフッ… ハッ…。 264 00:16:33,159 --> 00:16:35,161 熱っ! 265 00:16:35,161 --> 00:16:38,664 さじに すくって 口に 運んでくりゃれ。 266 00:16:38,664 --> 00:16:40,833 ハァ…。 267 00:16:40,833 --> 00:16:43,669 ほらよ。 あ~むっ! 268 00:16:43,669 --> 00:16:48,508 う~ん! うんうん うんうん…。 269 00:16:48,508 --> 00:16:50,510 うん…。 270 00:16:50,510 --> 00:16:54,680 あむっ… りんごが もっと多いほうがよかったのに。 271 00:16:54,680 --> 00:16:58,017 かもな。 冷たいりんごは 人を憂鬱にする。 272 00:16:58,017 --> 00:17:01,287 んっ…。 わっちが…。 273 00:17:01,287 --> 00:17:03,956 わっちが 陽気に過ぎるとでも? 274 00:17:03,956 --> 00:17:06,959 少しは おとなしくなってもいい という意味だ。 275 00:17:11,464 --> 00:17:13,466 フゥー…。 276 00:17:13,466 --> 00:17:16,802 しかし こんだけ食べられれば 一安心だな。 277 00:17:16,802 --> 00:17:19,472 すぐ あしたか あさってには 治るだろう。 278 00:17:19,472 --> 00:17:22,141 まあ 焦ることはない。 この町を出たら➡ 279 00:17:22,141 --> 00:17:24,477 また しばらくは 荷馬車の上だ。 280 00:17:24,477 --> 00:17:26,646 ゆっくり養生すればいい。 281 00:17:26,646 --> 00:17:28,648 あっ…。 282 00:17:28,648 --> 00:17:31,651 しかし 主よ。 んっ? 283 00:17:31,651 --> 00:17:37,490 宿は その… 静かすぎるから…。 284 00:17:37,490 --> 00:17:42,662 フッ… 確かに 荷馬車の上は やかましいものな。 285 00:17:42,662 --> 00:17:46,499 どのみち 今日は 俺も やることがない。 286 00:17:46,499 --> 00:17:49,335 それに 大飯食らいの 誰かさんの 夜の献立も➡ 287 00:17:49,335 --> 00:17:51,337 相談しないといけないからな。 288 00:17:51,337 --> 00:17:54,674 で 何か 大ざっぱな希望はあるか? 289 00:17:54,674 --> 00:17:57,343 市場が閉まると 用意できなくなるからな。 290 00:17:57,343 --> 00:17:59,946 むっ… う~む…。 291 00:17:59,946 --> 00:18:01,948 一応 元気そうだが➡ 292 00:18:01,948 --> 00:18:04,116 その中身まで そうとは限らないから➡ 293 00:18:04,116 --> 00:18:08,287 重いものは だめだ。 んっ… 肉も? 294 00:18:08,287 --> 00:18:11,290 だめだめ。 かゆか パンを浸したスープか…。 295 00:18:11,290 --> 00:18:13,292 むぅ…。 296 00:18:13,292 --> 00:18:16,963 ならば さっきの それ。 羊の乳だったかや? 297 00:18:16,963 --> 00:18:20,132 甘い香りと濃い味が おいしかった。 それがよい。 298 00:18:20,132 --> 00:18:24,303 羊の乳か…。 何か 問題が? 299 00:18:24,303 --> 00:18:28,140 腐りやすいから まともなやつは 午後になると 値が上がるんだよ。 300 00:18:28,140 --> 00:18:31,310 新鮮なのを お望みだろう? もちろん。 301 00:18:31,310 --> 00:18:33,980 まあ なら また ノーラに探してもらうか。 302 00:18:33,980 --> 00:18:35,982 さすが 羊飼いだけあって➡ 303 00:18:35,982 --> 00:18:37,984 目利きは なかなかの…。 ノーラじゃと? 304 00:18:37,984 --> 00:18:40,319 あっ? う~ん…。 305 00:18:40,319 --> 00:18:43,990 いや 単に お前のために いい乳を 手に入れようと思ってだな…。 306 00:18:43,990 --> 00:18:47,159 金に物を言わせれば 目利きもくそもないじゃろが。 307 00:18:47,159 --> 00:18:50,329 あっ… あえて 道案内を 雇わない理由だってない。 308 00:18:50,329 --> 00:18:52,331 だっ… だがな…。 309 00:18:52,331 --> 00:18:55,668 だが なんで そんな ノーラを 目の敵にするんだ? 310 00:18:55,668 --> 00:18:57,670 はっ? なっ… なんと? 311 00:18:57,670 --> 00:18:59,672 いっ… いや あのな➡ 312 00:18:59,672 --> 00:19:03,109 過去に お前が 羊飼いと 何があったのかは知らないし➡ 313 00:19:03,109 --> 00:19:06,278 お前が狼なのであれば 気に食わないのは わかる。 314 00:19:06,278 --> 00:19:09,782 だが そこまで 敵意を むき出しに することはないだろう? 315 00:19:09,782 --> 00:19:12,451 ノーラは羊飼いだが なんというか…。 316 00:19:12,451 --> 00:19:14,954 ほら あれだけ 気立てがいいんだ。 317 00:19:14,954 --> 00:19:16,956 何事にも 例外ってものが…。 318 00:19:16,956 --> 00:19:19,792 ハァ…。 319 00:19:19,792 --> 00:19:22,461 主よ。 なっ… なんだ? 320 00:19:22,461 --> 00:19:26,298 わっちが悪かった。 そうか よかった。 321 00:19:26,298 --> 00:19:29,301 じゃが 好き嫌いは 理屈じゃありんせん。 322 00:19:29,301 --> 00:19:32,471 前も言った気がするが。 それは もちろん そうだ。 323 00:19:32,471 --> 00:19:35,141 理屈で すべてが割り切れるとは 思っちゃいない。 324 00:19:35,141 --> 00:19:37,143 じゃあ ちょっと 置いてくる。 325 00:19:37,143 --> 00:19:40,479 それでな 主よ。 今度は なんだ? 326 00:19:40,479 --> 00:19:42,481 う~ん…。 327 00:19:42,481 --> 00:19:44,483 んっ…。 328 00:19:44,483 --> 00:19:48,654 それ 置いてきたら すぐ戻ってきてくりゃれ。 329 00:19:48,654 --> 00:19:53,325 ああ わかったよ。 宿は 静かすぎるものな。 330 00:19:53,325 --> 00:19:56,662 では おとなしく待っているように。 331 00:19:56,662 --> 00:19:58,998 (ドアの閉まる音) 332 00:19:58,998 --> 00:20:00,100 ハァ…。 333 00:20:08,674 --> 00:20:10,876 う~ん…。 334 00:20:13,679 --> 00:20:17,183 んっ… んっ? (ドアの開く音) 335 00:20:17,183 --> 00:20:19,685 ホロ。 んっ! 336 00:20:21,854 --> 00:20:23,856 ハッ! 337 00:20:23,856 --> 00:20:27,526 ノーラさんが 見舞いに来てくれた。 フッ…。 338 00:20:27,526 --> 00:20:30,529 あ~…。 あっ? 339 00:20:30,529 --> 00:20:32,531 お加減は いかがですか? 340 00:20:32,531 --> 00:20:37,036 フッ… なに 疲れが 出てしまっただけでありんす。 341 00:20:37,036 --> 00:20:40,372 じゃが ちょっと 話し相手に飢えていんす。 342 00:20:40,372 --> 00:20:43,209 じゃからな 前々から聞きたかったことを➡ 343 00:20:43,209 --> 00:20:45,211 聞いてみたいと思うんじゃが。 344 00:20:45,211 --> 00:20:47,213 えっ 私にですか? 345 00:20:47,213 --> 00:20:50,049 私で答えられることでしたら。 346 00:20:50,049 --> 00:20:55,221 フッ… 羊を導く 最大のコツというのは 何かや? 347 00:20:55,221 --> 00:20:57,890 んっ? う~ん…。 348 00:20:57,890 --> 00:21:00,159 フッ…。 349 00:21:00,159 --> 00:21:04,830 あっ 広い心を持つことですね。 350 00:21:04,830 --> 00:21:06,832 あっ…。 351 00:21:13,672 --> 00:21:16,075 フッ… なるほどの。 352 00:21:18,010 --> 00:21:20,513 風が出てきましたね。 353 00:21:20,513 --> 00:21:23,182 フフッ…。 354 00:21:23,182 --> 00:21:26,852 羊は 自分が賢いと 思い込んでいるからのう。 355 00:21:26,852 --> 00:21:29,021 あっ! あっ…。 うん? 356 00:21:29,021 --> 00:21:31,690 ウフフッ…。 357 00:21:31,690 --> 00:21:33,859 あっ? フッ…。 358 00:21:33,859 --> 00:21:36,695 クッ… フフフフフフ…。 359 00:21:36,695 --> 00:21:39,198 はぁ…。 (笑い声) 360 00:21:39,198 --> 00:21:41,200 フゥ…。 (笑い声) 361 00:21:41,200 --> 00:21:44,703 ハハハハハハハ! (笑い声) 362 00:21:44,703 --> 00:21:46,872 ハハハハハハハ! (笑い声) 363 00:21:46,872 --> 00:21:51,377 あっ? あっ… アハハハハハハ! (笑い声) 364 00:23:24,003 --> 00:23:26,171 という お話じゃ。 365 00:23:26,171 --> 00:23:28,340 全く 困った羊じゃろう? 366 00:23:28,340 --> 00:23:32,344 狼は そのあと 羊を うまく扱えるようになったの? 367 00:23:32,344 --> 00:23:35,848 さ~て どうじゃろうな。 ウフフフッ! 368 00:23:35,848 --> 00:23:38,350 お話は まだ続くんだよね? 369 00:23:38,350 --> 00:23:41,186 もちろん。 じゃあ もっと! 370 00:23:41,186 --> 00:23:44,189 もっと お話 聞かせて! 371 00:23:44,189 --> 00:23:47,860 フッ… これ そう せかすでない。 372 00:23:47,860 --> 00:23:53,666 狼の故郷を探して 2人が次に向かったのは…。