1 00:00:03,336 --> 00:00:06,631 (内海(うつみ)洋貴(ひろき)) やれやれ とんだ空振りだよ 2 00:00:06,756 --> 00:00:08,717 (警官) まったくですよ 3 00:00:09,926 --> 00:00:12,804 (館脇(たてわき)正太郎(しょうたろう)) うそだ 確かに見たんだ 4 00:00:13,888 --> 00:00:15,432 あの骨は… 5 00:00:16,056 --> 00:00:19,269 警察は だませても 僕は だませない! 6 00:00:19,394 --> 00:00:22,021 だって あの人の正体を… 7 00:00:23,565 --> 00:00:24,858 知っている! 8 00:00:28,862 --> 00:00:31,322 (九条(くじょう)櫻子(さくらこ)) まだ何かあるの… か… 9 00:00:31,448 --> 00:00:32,490 うん? 10 00:00:33,033 --> 00:00:34,284 すいません… 11 00:00:35,160 --> 00:00:39,539 何だ 警察かと思ったら この間の少年じゃないか 12 00:00:39,664 --> 00:00:43,084 (正太郎) そう 僕と彼女の出会いは… 13 00:00:49,048 --> 00:00:51,718 旭川に 遅い初雪が降った あの日― 14 00:00:51,843 --> 00:00:55,680 僕は櫻子さんに 別れを告げられた 15 00:00:56,765 --> 00:01:00,810 以来 一度も 僕は 櫻子さんに会っていない 16 00:01:06,775 --> 00:01:09,486 思い切って 何度か メールしたけど 17 00:01:09,611 --> 00:01:11,237 返事はなかった 18 00:01:11,362 --> 00:01:13,031 もちろん 電話にも出ない 19 00:01:13,156 --> 00:01:15,992 そうこうするうちに 年も明け… 20 00:01:19,287 --> 00:01:21,289 未練たらしいのは 分かってる 21 00:01:21,414 --> 00:01:23,833 それでも じっとしていられなくて 22 00:01:23,958 --> 00:01:25,543 僕は街に出た 23 00:01:25,919 --> 00:01:29,047 だけど 家を訪ねる 勇気すらなく… 24 00:01:29,172 --> 00:01:32,217 さよならだ 少年 25 00:01:35,595 --> 00:01:36,596 (店員) いらっしゃいませ 26 00:01:36,721 --> 00:01:39,098 (男性1)あったけえ! (男性2)生き返る! 27 00:01:39,224 --> 00:01:41,559 来るわけないか… 28 00:01:42,435 --> 00:01:44,062 (店員) ありがとうございました 29 00:01:47,732 --> 00:01:49,484 (正太郎) 最悪だ… 30 00:01:53,071 --> 00:01:55,448 “最悪”か… 31 00:01:56,991 --> 00:02:01,996 (正太郎) 思えば僕と櫻子さんの出会いは 最悪だった 32 00:02:03,081 --> 00:02:07,001 それは おととしの秋 僕は まだ中学生で 33 00:02:07,127 --> 00:02:11,172 きっかけは永山(ながやま)の祖父母の家へ 遊びに行ったときだった 34 00:02:11,506 --> 00:02:15,593 以前 隣に住んでいた 谷内(やち)ハツ江(え)さんというおばあさんが 35 00:02:15,718 --> 00:02:18,263 老人ホームから いなくなってしまったのだ 36 00:02:18,763 --> 00:02:20,807 (正太郎の祖父) よし わしらも手伝おう! 37 00:02:20,932 --> 00:02:23,726 じゃあ 僕は 神社の方を捜してみるよ 38 00:02:24,310 --> 00:02:26,604 (正太郎) それが全ての始まりだった 39 00:02:30,483 --> 00:02:31,442 あっ… 40 00:02:39,826 --> 00:02:41,244 あの人は… 41 00:02:42,370 --> 00:02:43,955 谷内さん! 42 00:02:44,497 --> 00:02:48,501 (正太郎) 初めて櫻子さんを見たのは それよりも少し前 43 00:02:48,960 --> 00:02:50,712 夏のことだった 44 00:02:52,297 --> 00:02:57,176 永山神社から続く道を抜けると 古いお屋敷が見えてくる 45 00:02:57,760 --> 00:03:00,889 どこか現実離れした その雰囲気が気に入って 46 00:03:01,055 --> 00:03:05,852 祖父母の家への行き帰り 僕は時々 遠回りをしていた 47 00:03:11,774 --> 00:03:15,570 まるで幻のように 美しい人だと思った 48 00:03:17,655 --> 00:03:21,034 その日から “時々”は “必ず”になった 49 00:03:24,621 --> 00:03:26,331 一目ぼれとかじゃない 50 00:03:27,206 --> 00:03:28,708 だけど 僕は… 51 00:03:34,422 --> 00:03:38,301 そのころ僕は言葉にならない 鬱屈を抱えていた 52 00:03:38,509 --> 00:03:43,014 何となく先が見えてきた 未来に いらつき 退屈していた 53 00:03:43,765 --> 00:03:45,767 彼女は そんな日常に現れた― 54 00:03:47,143 --> 00:03:49,562 ささやかな非日常だったんだ 55 00:03:58,154 --> 00:03:59,906 けれど ある日… 56 00:04:00,031 --> 00:04:01,699 僕は 見てはいけないものを 57 00:04:01,824 --> 00:04:03,117 見てしまった 58 00:04:04,369 --> 00:04:07,121 (櫻子) いやあ ありがとう 待ちわびたよ 59 00:04:07,705 --> 00:04:11,668 おお これはいい! 理想的だ 60 00:04:11,793 --> 00:04:13,002 はっ…! 61 00:04:13,127 --> 00:04:16,755 (正太郎) それは明らかに 何かの死骸だった 62 00:04:16,880 --> 00:04:18,423 なのに彼女は… 63 00:04:19,676 --> 00:04:23,763 僕が見た 美しい幻の正体は… 64 00:04:24,973 --> 00:04:26,099 (正太郎) 谷内さん! 65 00:04:26,975 --> 00:04:29,560 そ… その人を放してください! 66 00:04:29,686 --> 00:04:31,229 (櫻子) 何だ? 君は 67 00:04:32,313 --> 00:04:33,606 近所の者です 68 00:04:33,731 --> 00:04:36,693 知り合いか! ちょうど よかった 69 00:04:36,818 --> 00:04:40,863 さっき道で出会ったんだが 認知症を患っているようで 70 00:04:40,989 --> 00:04:43,700 送り届けようにも らちが明かなくてね 71 00:04:45,868 --> 00:04:49,289 フン 私を 人さらいだとでも思ったか? 72 00:04:49,414 --> 00:04:53,293 (正太郎)うっ… それは… (谷内ハツ江)違う 違う! 73 00:04:53,418 --> 00:04:55,920 (谷内)こんな色じゃない! (正太郎)色? 74 00:04:56,045 --> 00:05:00,133 ここじゃない ここじゃないよ… 75 00:05:00,550 --> 00:05:03,219 ごめんよ ごめんよ… 76 00:05:03,344 --> 00:05:05,096 大丈夫ですか? 谷内さん 77 00:05:07,181 --> 00:05:08,182 あっ… 78 00:05:14,480 --> 00:05:18,484 (正太郎) その後 谷内さんは 無事ホームに送り届けられた 79 00:05:18,985 --> 00:05:24,115 僕は再び日常に戻り 退屈なまま高校生になるはずだった 80 00:05:24,949 --> 00:05:25,950 でも… 81 00:05:26,617 --> 00:05:30,955 (正太郎の祖父) えっ? おい 谷内さん また行方不明だとさ 82 00:05:31,080 --> 00:05:33,082 (正太郎の祖母)まあ… (正太郎)あっ! 83 00:05:33,791 --> 00:05:35,251 どうした! 正太郎! 84 00:05:35,376 --> 00:05:37,378 (正太郎) 心当たりがあるんだ! 85 00:05:37,962 --> 00:05:39,130 うん…? 86 00:05:40,339 --> 00:05:44,093 (正太郎) そう 僕と 櫻子さんの出会いは… 87 00:05:45,011 --> 00:05:47,513 (櫻子) で 私に何の用だ 88 00:05:47,638 --> 00:05:49,682 谷内さんを どうしたんですか! 89 00:05:49,807 --> 00:05:54,896 谷内? ああ この間の老女か また いなくなったのか? 90 00:05:55,021 --> 00:05:57,190 しらばっくれないでください! 91 00:05:57,315 --> 00:06:01,611 僕 見たんですよ! さっき あなたが裏庭で何をしてたのか! 92 00:06:01,736 --> 00:06:03,154 裏庭? 93 00:06:03,279 --> 00:06:05,364 うーん… あっ… 94 00:06:05,490 --> 00:06:09,452 フフッ… アハハハ! ハハハハ! 95 00:06:09,577 --> 00:06:11,412 何が おかしいんですか! 96 00:06:11,537 --> 00:06:13,790 警察を呼んだのは君か 97 00:06:14,082 --> 00:06:18,211 私を猟奇的な 要注意人物とでも言ったのかな? 98 00:06:18,961 --> 00:06:24,634 私が 谷内という老女を殺して 庭先で その骨を煮ているとでも? 99 00:06:24,759 --> 00:06:26,469 ち… 違うんですか? 100 00:06:26,594 --> 00:06:30,681 確かに骨は煮ているが 残念ながら人ではないよ 101 00:06:31,265 --> 00:06:33,017 じゃあ 何を… 102 00:06:33,476 --> 00:06:35,812 (正太郎)はっ…! (櫻子)知りたいか? 103 00:06:37,146 --> 00:06:38,147 あっ! 104 00:06:43,778 --> 00:06:44,821 あっ… 105 00:06:45,113 --> 00:06:48,866 骨格標本だ 全て私が作った 106 00:06:49,492 --> 00:06:51,035 (正太郎) 骨格標本? 107 00:06:51,369 --> 00:06:54,997 (櫻子) 死んだ動物から骨を取り出し 再び組み立てる 108 00:06:55,248 --> 00:06:58,126 標本士 それが私の仕事だ 109 00:06:58,417 --> 00:06:59,836 (正太郎) 庭の あれは… 110 00:07:00,044 --> 00:07:02,797 (櫻子) エゾシカだ すでに腐敗していたから 111 00:07:02,922 --> 00:07:05,174 おいしいシチューには ならなかったがね 112 00:07:06,300 --> 00:07:08,636 美しいとは思わないか? 113 00:07:08,761 --> 00:07:12,390 この強靭(きょうじん)さと あえかさを同居させた骨が 114 00:07:12,515 --> 00:07:17,728 生き物を 命を支えている そして死したあとも骨は残る 115 00:07:17,854 --> 00:07:21,232 骨は生の象徴であり 死の体現だ 116 00:07:23,985 --> 00:07:25,319 まあ いいさ 117 00:07:26,195 --> 00:07:28,906 せっかくだ お茶でも飲んでいくといい 118 00:07:29,073 --> 00:07:30,408 君 名前は? 119 00:07:30,533 --> 00:07:34,245 あっ… 正太郎 館脇正太郎です 120 00:07:34,370 --> 00:07:36,622 正太郎…! 121 00:07:37,582 --> 00:07:39,709 (正太郎) そんなに変ですか? 122 00:07:39,834 --> 00:07:45,173 (櫻子) ああ いや… 私は九条櫻子 この家の主人だ 123 00:07:50,845 --> 00:07:52,889 引っかかるのは 谷内ハツ江が 124 00:07:53,014 --> 00:07:56,142 神社の鳥居の色に 執着していたことだ 125 00:07:56,267 --> 00:07:58,311 (正太郎) はい “色が違う”と 126 00:07:59,604 --> 00:08:05,526 気が付くと 僕は櫻子さんに 事件の一部始終を打ち明けていた 127 00:08:10,072 --> 00:08:13,534 だとしたら捜すべきは この範囲だ 128 00:08:13,659 --> 00:08:16,329 (正太郎) 神社は あと2つですね 129 00:08:16,829 --> 00:08:18,039 (櫻子) では… 130 00:08:19,999 --> 00:08:21,876 行くぞ 少年! 131 00:08:22,084 --> 00:08:23,419 (正太郎) あっ はい… 132 00:08:23,544 --> 00:08:25,963 何だ まだ私が怖いか? 133 00:08:26,088 --> 00:08:28,049 いっ… いえ… 134 00:08:30,092 --> 00:08:33,054 (正太郎) 正直 まだ少し怖かった 135 00:08:33,346 --> 00:08:38,226 自分が骨にした動物たちに囲まれ 平然と暮らす彼女が 136 00:08:38,518 --> 00:08:42,145 骨を美しいと言ってはばからない 彼女のことが 137 00:08:42,355 --> 00:08:44,398 (櫻子)少年 (正太郎)ああ… はい! 138 00:08:44,524 --> 00:08:47,109 行くぞ ここではないようだ 139 00:08:48,694 --> 00:08:52,532 何を ぼんやりしている 日が暮れたら厄介だ 行くぞ 140 00:08:52,657 --> 00:08:53,699 あっ… はい! 141 00:08:55,034 --> 00:08:57,203 色が… 違う! 142 00:08:57,411 --> 00:09:01,415 (巫女(みこ)) 珍しいでしょう うちの鳥居は銀色なんですよ 143 00:09:01,541 --> 00:09:05,294 社殿も新しいようだが この神社は最近 改築されたのか? 144 00:09:05,503 --> 00:09:09,382 はい 近くに ククリヒメノミコトをお祀(まつ)りする 145 00:09:09,507 --> 00:09:11,634 白山(しらやま)神社があったんですが 146 00:09:11,759 --> 00:09:14,554 老朽化で こちらに合祀(ごうし)されたんです 147 00:09:14,679 --> 00:09:17,557 うーん… ククリヒメか… 148 00:09:17,682 --> 00:09:21,018 ええ そのとき 合わせて 鳥居も造り直したそうです 149 00:09:21,143 --> 00:09:23,354 (櫻子)場所は分かるか? (巫女)えっ… 150 00:09:23,479 --> 00:09:25,898 元の白山神社の場所だ 151 00:09:26,023 --> 00:09:27,149 はい… 152 00:09:28,192 --> 00:09:29,986 (櫻子) 分かったぞ 153 00:09:30,111 --> 00:09:32,196 (正太郎) “分かった”って 何がですか? 154 00:09:32,321 --> 00:09:35,408 “谷内”という苗字は 石川県に多いんだ 155 00:09:35,533 --> 00:09:39,412 石川県の白山は 山そのものが御神体で 156 00:09:39,537 --> 00:09:43,416 その白山比咩(しらやまひめ)神社が祀っているのが ククリヒメだ 157 00:09:44,000 --> 00:09:47,920 ククリヒメは死者と生者を結ぶ 女神といわれている 158 00:09:48,045 --> 00:09:50,506 あの… それが何か? 159 00:09:50,631 --> 00:09:52,133 (櫻子) ついてくれば分かる! 160 00:09:52,258 --> 00:09:54,510 あっ… 待ってくださいよ 九条さん 161 00:09:54,635 --> 00:09:56,512 (櫻子) 櫻子でいい 162 00:09:59,140 --> 00:10:03,477 (正太郎) そして その言葉のとおり 谷内ハツ江さんは 163 00:10:03,936 --> 00:10:06,522 白山神社の跡地で 見つかった 164 00:10:16,782 --> 00:10:18,868 (櫻子) くだらない感傷だ… 165 00:10:20,411 --> 00:10:22,705 (正太郎) それで どこへ行くんですか? 166 00:10:22,830 --> 00:10:26,292 (櫻子) 谷内ハツ江の探していたものを 見つけにいくのさ 167 00:10:26,584 --> 00:10:27,960 (正太郎) 谷内さんの? 168 00:10:28,085 --> 00:10:32,465 (櫻子) ああ でなければ 彼女は また 同じことを繰り返すだろう 169 00:10:32,590 --> 00:10:34,383 (正太郎)あっ… (櫻子)どうした? 170 00:10:34,508 --> 00:10:36,969 実は 谷内さん 何度 注意しても 171 00:10:37,094 --> 00:10:39,805 庭にある桜の木の下を 掘ってしまうみたいです 172 00:10:39,930 --> 00:10:42,308 うーん 桜か… 173 00:10:42,433 --> 00:10:43,893 何か知ってるんですか? 174 00:10:44,393 --> 00:10:49,440 少年 桜の木の下には 何が埋まっていると思う? 175 00:10:49,565 --> 00:10:50,566 (正太郎) えっ…? 176 00:10:55,488 --> 00:10:57,073 死体だよ 177 00:10:59,200 --> 00:11:01,369 (正太郎) そのときは なぜ そんなことを言ったのか 178 00:11:01,494 --> 00:11:03,329 理解できなかった 179 00:11:03,496 --> 00:11:07,166 でも今は 少し分かる気がする 180 00:11:08,042 --> 00:11:11,253 (正太郎) あっ! ああ… 181 00:11:11,379 --> 00:11:14,382 はあ…! ハハハ! 182 00:11:14,507 --> 00:11:18,386 すばらしい! 完全に きれいな状態だ! 183 00:11:18,511 --> 00:11:23,015 遺骨は成人男性 切歯縫合と 歯の磨耗具合から推定して 184 00:11:23,140 --> 00:11:26,394 年齢は30代から 40代といったところだな 185 00:11:26,519 --> 00:11:27,895 ど… どうして… 186 00:11:28,020 --> 00:11:30,815 (櫻子) 骨は加齢とともに変化するからさ 187 00:11:30,940 --> 00:11:35,319 多少の知識を持ってすれば 骨はさまざまなことを語ってくれる 188 00:11:35,611 --> 00:11:39,156 利き腕 右の肘関節に 変形が見られる 189 00:11:39,281 --> 00:11:42,284 恐らく生前は大工か畳職人など 190 00:11:42,410 --> 00:11:44,954 肘を酷使する職業に 就いていたんだろう 191 00:11:45,079 --> 00:11:46,789 (正太郎) そんなことまで… 192 00:11:46,914 --> 00:11:50,418 (櫻子) ある程度なら死因も分かるぞ 見たまえ 193 00:11:50,543 --> 00:11:56,298 ここに数か所 陥没骨折がある 何度も硬い物で殴られた証拠だ 194 00:11:56,424 --> 00:11:58,008 (正太郎) あっ… はあ… 195 00:11:58,134 --> 00:12:00,511 しかも 甲状軟骨が折れている 196 00:12:00,636 --> 00:12:03,347 これは首を絞められたことを 示唆している 197 00:12:03,472 --> 00:12:05,724 直接の死因は断定できないが 198 00:12:05,850 --> 00:12:09,562 この男は殴られ 首を絞められ 殺されたんだ 199 00:12:10,020 --> 00:12:11,647 えっ… 殺された? 200 00:12:11,772 --> 00:12:15,901 (櫻子) ああ だからこそ 谷内ハツ江は 必死で これを探したのさ 201 00:12:16,235 --> 00:12:18,320 じゃあ この人は… 202 00:12:19,363 --> 00:12:23,159 (櫻子) 少年 お得意の通報は しなくていいのか? 203 00:12:23,284 --> 00:12:24,785 (正太郎) あっ… えっ… 204 00:12:24,910 --> 00:12:29,498 でないと 標本として 私が 家に持ち帰ってしまうぞ 205 00:12:30,374 --> 00:12:35,254 (正太郎) その後 警察の捜査により 遺体は 谷内さんの父親と判明した 206 00:12:35,880 --> 00:12:40,759 けれど 事件発生から何十年という 年月が経過していることや 207 00:12:40,885 --> 00:12:44,722 証拠の不足などから 事件は お蔵入りとなった 208 00:12:45,848 --> 00:12:47,099 (正太郎) 谷内さん 209 00:12:49,435 --> 00:12:52,188 元気そうだな 顔色もいい 210 00:12:57,568 --> 00:13:00,029 今日は あなたに報告があって来た 211 00:13:00,154 --> 00:13:03,949 白山神社の桜の木の下にあった 骨のことだ 212 00:13:04,074 --> 00:13:05,326 はっ… 213 00:13:05,451 --> 00:13:06,827 安心していい 214 00:13:06,952 --> 00:13:10,289 あなたの探していたものは 私たちが見つけた 215 00:13:10,414 --> 00:13:13,667 今は きちんと埋葬され 供養もされている 216 00:13:13,876 --> 00:13:15,544 はっ… ああ! 217 00:13:15,669 --> 00:13:17,922 あなたが殺して埋めたのか? 218 00:13:21,550 --> 00:13:22,510 あっ… 219 00:13:22,801 --> 00:13:25,387 (谷内) しょうがなかったんだ… 220 00:13:25,513 --> 00:13:27,932 父ちゃんは 村一番の大工で 221 00:13:28,057 --> 00:13:31,435 ふだんは優しい 自慢の父ちゃんだったんだ 222 00:13:32,061 --> 00:13:34,313 でも お酒が入ると… 223 00:13:34,522 --> 00:13:36,315 暴力を振るったのか 224 00:13:36,440 --> 00:13:41,237 “すぐやむ 少しの辛抱だ” 母ちゃんはそう言ったけど 225 00:13:41,362 --> 00:13:45,491 あの日は違った どんなに止めても父ちゃんは… 226 00:13:45,616 --> 00:13:48,035 このままじゃ 母ちゃんが死んじゃう! 227 00:13:48,702 --> 00:13:52,665 気が付くと 父ちゃんは動かなくなってた 228 00:13:52,790 --> 00:13:56,835 夜のうちに母ちゃんと2人で 神社に埋めにいった 229 00:13:56,961 --> 00:14:00,506 あそこの神様は ジゾッコの神様だから… 230 00:14:00,631 --> 00:14:01,757 “ジゾッコ”? 231 00:14:01,882 --> 00:14:04,552 幼くして死んでしまった 子供のことだ 232 00:14:06,095 --> 00:14:09,598 前に死んだ 一番下の子も ここに埋めた 233 00:14:09,723 --> 00:14:12,226 死んだ子は神様に返すんだ 234 00:14:12,351 --> 00:14:15,771 赤ん坊を返せるなら 父ちゃんだって… 235 00:14:15,896 --> 00:14:17,273 けど… 236 00:14:18,065 --> 00:14:22,152 ずっと… ずっと謝りたかった 237 00:14:22,278 --> 00:14:27,658 父ちゃん ごめんよ! ごめんよ 父ちゃん…! 238 00:14:41,714 --> 00:14:44,675 (櫻子)哀れなものだな (正太郎)えっ…? 239 00:14:44,800 --> 00:14:48,262 (櫻子) 谷内ハツ江のことさ やむをえぬとはいえ― 240 00:14:48,387 --> 00:14:52,933 父親を殺したことで 彼女の心は 時を止めてしまった 241 00:14:53,058 --> 00:14:54,476 (正太郎) 時を… 242 00:14:54,602 --> 00:14:58,230 (櫻子) ああ あのときの後悔を 引きずったまま 243 00:14:58,355 --> 00:15:01,650 彼女は時の檻(おり)に とらわれ続けて生きたんだ 244 00:15:03,569 --> 00:15:05,863 ところで楽しかったか? 245 00:15:05,988 --> 00:15:09,116 (正太郎)えっ? (櫻子)日常から外れるのは 246 00:15:09,241 --> 00:15:10,576 どうして… 247 00:15:10,701 --> 00:15:15,039 フッ… だって 君は いつも退屈そうな顔をして 248 00:15:15,164 --> 00:15:17,166 家の前を通っていたじゃないか 249 00:15:17,291 --> 00:15:18,751 見てたんですか? 250 00:15:18,876 --> 00:15:21,712 そういう君は 私を見てたんだろ? 251 00:15:26,133 --> 00:15:26,967 あっ… 252 00:15:27,092 --> 00:15:31,472 深淵(しんえん)をのぞけば 深淵も また こちらを のぞいている 253 00:15:34,308 --> 00:15:38,395 などと言うのは大げさだが まあ 心しておくことだ 254 00:15:38,520 --> 00:15:42,232 人の秘密を暴こうとすれば その逆もしかり 255 00:15:42,358 --> 00:15:45,486 こちらも 相応のリスクを負うということさ 256 00:15:45,611 --> 00:15:47,696 気をつけます… 257 00:15:49,448 --> 00:15:51,492 この世の全てが灰色で 258 00:15:51,617 --> 00:15:54,703 時間が止まっているかのように 思えるときがある 259 00:15:55,204 --> 00:15:57,456 私にも そういうときがあったよ 260 00:15:58,082 --> 00:16:03,712 けれどね 決して時は止まらない 永遠に動き続けるんだ 261 00:16:03,837 --> 00:16:07,841 土に埋めた死体が やがて白い骨になるように 262 00:16:07,967 --> 00:16:12,429 いいかい 時を止めてしまうのは 常に自分自身なんだ 263 00:16:12,554 --> 00:16:18,018 未来にすくんで足を止めれば 何も得られない 何も始まらない 264 00:16:18,143 --> 00:16:20,354 ただ死んだように生きるだけだ 265 00:16:20,479 --> 00:16:25,484 ハア… ハア… ハア… 266 00:16:26,443 --> 00:16:28,362 (鴻上(こうがみ)百合子(ゆりこ)) えー ほんとに? 267 00:16:28,737 --> 00:16:31,365 あっ! 館脇くーん! 268 00:16:32,950 --> 00:16:36,745 (内海) うう… 今日は なんまら冷えるべさ 269 00:16:37,621 --> 00:16:41,834 おーい! 正ちゃん! あっけまして… ええ! 270 00:16:41,959 --> 00:16:43,585 (櫻子) そうだよ 少年 271 00:16:43,711 --> 00:16:47,089 君が望もうが 望むまいが 時は止まらない 272 00:16:47,214 --> 00:16:52,011 だからこそ見方を変えれば 世の中ほど面白いものはない 273 00:16:52,136 --> 00:16:55,514 悲観するな 君は まだ灰になってない 274 00:16:55,639 --> 00:16:59,643 血と肉があり 骨が しっかり 君を支えている 275 00:16:59,768 --> 00:17:02,021 (正太郎) そうだ 僕は まだ… 276 00:17:07,734 --> 00:17:14,157 ハア… ハア… ハア… ハア… 277 00:17:14,282 --> 00:17:15,909 (ヘクターの鳴き声) 278 00:17:16,035 --> 00:17:17,578 (櫻子) ヘクター どこへ行く! 279 00:17:19,663 --> 00:17:21,373 ヘクター! あっ…! 280 00:17:22,458 --> 00:17:23,791 よせ! やめろって! 281 00:17:23,916 --> 00:17:26,377 (櫻子) ヘクター 勝手に行くなと あれほど言… 282 00:17:26,712 --> 00:17:28,630 (正太郎) 櫻子さん… 283 00:17:29,715 --> 00:17:31,383 少年… 284 00:17:32,551 --> 00:17:34,053 何をしにきた 285 00:17:34,178 --> 00:17:35,846 日常から外れに… 286 00:17:36,346 --> 00:17:39,308 言ったはずだ もう ここに来てはいけない 287 00:17:39,433 --> 00:17:41,101 (櫻子)帰るんだ (正太郎)嫌です 288 00:17:41,226 --> 00:17:43,020 (櫻子)帰れ! (正太郎)帰りません! 289 00:17:45,355 --> 00:17:50,110 “時は止まらない” 櫻子さん 以前 僕に言いましたよね 290 00:17:50,235 --> 00:17:54,490 だから どんなに大切な人とも 必ず別れはきます 291 00:17:55,407 --> 00:18:01,288 確かに この1年で 僕は櫻子さんと たくさんの人の死を見てきました 292 00:18:01,538 --> 00:18:05,501 最後まで懸命に生きようとした 鴻上さんの おばあさん 293 00:18:05,626 --> 00:18:09,546 命懸けで子供たちを守った いいちゃんの お母さん 294 00:18:09,671 --> 00:18:12,091 僕のために うそをついてくれた おばあちゃん 295 00:18:12,466 --> 00:18:17,638 どんなに好きでも 大切でも いつか命の終わりはくる 296 00:18:17,763 --> 00:18:20,808 でも… だとしたら 297 00:18:20,933 --> 00:18:23,435 僕たちに残されるものって 何ですか? 298 00:18:23,560 --> 00:18:25,896 それは くだらない感傷ですか? 299 00:18:26,021 --> 00:18:28,857 命が消えたあと 残るのは骨だけですか? 300 00:18:38,367 --> 00:18:40,744 この先 何があるか分かりません 301 00:18:40,869 --> 00:18:43,914 正直 少し怖いです 302 00:18:44,373 --> 00:18:49,378 それでも僕は 櫻子さん あなたと一緒にいたい! 303 00:18:49,503 --> 00:18:52,756 同じ時を過ごし 同じ景色を見てみたい! 304 00:18:52,881 --> 00:18:56,260 たとえ それが つらいものでも 見る覚悟はあります 305 00:18:56,385 --> 00:19:01,181 駄目だ! 花房(はなぶさ)… あれは のぞいてはいけない深淵だ 306 00:19:01,306 --> 00:19:04,351 あれは もう… こちらを のぞき返している 307 00:19:04,560 --> 00:19:06,979 じっと見つめて 探している 308 00:19:07,104 --> 00:19:12,276 心の底に沈めた絶望を 恐れを 果たせなかった望みを… 309 00:19:12,442 --> 00:19:15,571 花房は 人の不安を駆り立て利用する 310 00:19:15,696 --> 00:19:17,364 君だって見たはずだ! 311 00:19:17,489 --> 00:19:20,534 花房の手に躍らされた者が どうなったか! 312 00:19:20,659 --> 00:19:22,369 (正太郎) だけど櫻子さんは― 313 00:19:22,494 --> 00:19:25,706 その花房の手から 命を守ったじゃないですか 314 00:19:26,290 --> 00:19:29,918 いいちゃんと赤ちゃん 藤岡(ふじおか)さんの命です 315 00:19:30,043 --> 00:19:32,838 あれは… 運が良かっただけだ 316 00:19:32,963 --> 00:19:36,216 櫻子さんがいてくれたから 今も みんな生きてるんです 317 00:19:36,341 --> 00:19:40,053 違う! だったら君は どうなる! あのとき 一つ間違えば… 318 00:19:40,179 --> 00:19:43,223 (正太郎) でも 僕は生きてる 生きて ここにいます 319 00:19:43,348 --> 00:19:46,852 ふざけるな! 死ななきゃ 分からないとでも言うのか! 320 00:19:46,977 --> 00:19:50,147 私は君の骨など見たくない… 321 00:19:50,272 --> 00:19:53,442 いいかげん 学べ 私のそばにいれば… 322 00:19:53,567 --> 00:19:54,443 安心でしょ? 323 00:20:00,866 --> 00:20:02,159 何を… 324 00:20:02,367 --> 00:20:05,662 もし花房に 立ち向かえる人がいるとしたら 325 00:20:05,787 --> 00:20:09,708 それは櫻子さん 僕は あなたしかいないと思うんです 326 00:20:10,334 --> 00:20:14,338 だから今までどおり あなたのそばにいさせてください 327 00:20:14,463 --> 00:20:17,966 あなたが直接 僕を守ってください 328 00:20:18,467 --> 00:20:19,927 花房の手から 329 00:20:22,471 --> 00:20:25,098 なんて… ちょっと ずるいですかね 330 00:20:29,603 --> 00:20:32,940 (櫻子) フッ… フフフ… 331 00:20:33,065 --> 00:20:34,733 櫻子さん? 332 00:20:34,900 --> 00:20:36,485 (櫻子) 参ったよ 333 00:20:37,361 --> 00:20:41,823 君の言うとおりだ 今 不安に駆られて君を手放し― 334 00:20:41,949 --> 00:20:47,454 あげく 失うようなことがあれば 私は一生 自分を許さないだろう 335 00:20:47,579 --> 00:20:49,081 櫻子さん… 336 00:20:49,456 --> 00:20:53,377 (櫻子) 約束するよ 君は私が守る 337 00:20:53,502 --> 00:20:56,129 花房の手などに触れさせるものか 338 00:20:56,255 --> 00:20:57,547 私は君を… 339 00:20:57,673 --> 00:20:59,049 (正太郎) 大丈夫ですよ 340 00:20:59,841 --> 00:21:01,677 櫻子さんは負けません 341 00:21:01,802 --> 00:21:03,720 (櫻子) なぜ そう言い切れる 342 00:21:03,845 --> 00:21:07,641 だって ほら 櫻子さんには こんなに優秀な助手が 343 00:21:08,225 --> 00:21:09,393 うん? 344 00:21:10,936 --> 00:21:15,023 (櫻子)あっ アップルパイがある (正太郎)えっ? 345 00:21:15,148 --> 00:21:19,653 (櫻子) ばあやの嫌がらせだ 君が来なくなってからというもの 346 00:21:19,778 --> 00:21:23,073 私への当てつけで 毎日のように そればかりだ 347 00:21:23,198 --> 00:21:25,575 (正太郎)はあ… (おなかの鳴る音) 348 00:21:25,701 --> 00:21:27,995 (櫻子) ほら 何を ぼんやりしている 349 00:21:28,120 --> 00:21:30,163 (正太郎)あっ… (櫻子)行くぞ 350 00:21:30,998 --> 00:21:32,541 正太郎 351 00:21:34,042 --> 00:21:37,379 あっ… はい! 352 00:21:46,722 --> 00:21:49,141 (ヘクターの鳴き声) 353 00:21:51,143 --> 00:21:54,354 (ばあや) まあ! おかえりなさい 354 00:21:59,776 --> 00:22:03,613 (正太郎) これは僕と櫻子さんの物語 355 00:22:09,745 --> 00:22:14,750 ♪~ 356 00:23:09,054 --> 00:23:14,059 ~♪ 357 00:23:14,184 --> 00:23:16,978 さあ 謎を解こうじゃないか 358 00:23:32,327 --> 00:23:35,413 (花房) 深淵へ ようこそ