1 00:00:06,039 --> 00:00:08,008 (一太郎)ハッ…。 2 00:00:12,045 --> 00:00:15,048 喉元が切られている…。 3 00:00:15,048 --> 00:00:17,050 若だんな 早く行きましょう。 4 00:00:17,050 --> 00:00:20,053 さっきの野盗に見つかったら 大変です。 5 00:00:20,053 --> 00:00:23,056 ああ… うん。 6 00:00:23,056 --> 00:00:25,058 若だんな! 7 00:00:25,058 --> 00:00:35,068 ♬~ 8 00:00:35,068 --> 00:00:45,045 ♬~ 9 00:02:17,004 --> 00:02:19,006 (火打ち石を打つ音) 10 00:02:19,006 --> 00:02:22,009 本当に 人を呼ばなくて よかったんだろうか…。 11 00:02:22,009 --> 00:02:25,012 あの人は もう死んでいました。 12 00:02:25,012 --> 00:02:27,014 若だんなだって 確かめたじゃあないですか。 13 00:02:27,014 --> 00:02:30,951 なら 明日の朝 誰か別の人に 見つけられたって➡ 14 00:02:30,951 --> 00:02:33,954 全然 不都合はありませんよ。 15 00:02:33,954 --> 00:02:37,958 でも あの男の家の者が 心配しているよ きっと。 16 00:02:37,958 --> 00:02:40,961 若だんな 賭けてもいいですけどね➡ 17 00:02:40,961 --> 00:02:42,963 犬神さんも 白沢さんも➡ 18 00:02:42,963 --> 00:02:47,968 今頃 若だんなのこと 血相変えて捜してますよ。 19 00:02:47,968 --> 00:02:51,972 これ以上 帰りが遅くなるのは まずいんじゃないですか? 20 00:02:51,972 --> 00:02:55,976 職人みたいだったね 死んでた男の格好。 21 00:02:55,976 --> 00:02:58,945 (鈴彦姫)もう 忘れましょ! さあ 急ぎましょ! 22 00:03:08,989 --> 00:03:10,957 あっ。 あっ。 23 00:03:13,994 --> 00:03:15,962 (鈴彦姫・一太郎)あっ…。 24 00:03:17,998 --> 00:03:21,968 あ… あの… いたのか。 25 00:03:24,004 --> 00:03:27,007 犬神さん 白沢さん お久しぶりでございます。 26 00:03:27,007 --> 00:03:29,009 その名を呼ぶな! 27 00:03:29,009 --> 00:03:31,945 誰が聞いているやも しれないだろうに。 28 00:03:31,945 --> 00:03:33,947 (鈴彦姫)申し訳ありません…。 29 00:03:33,947 --> 00:03:36,950 佐助 仁吉 迎えに来てくれたのか。 30 00:03:36,950 --> 00:03:39,920 こんな夜に どこに行っていたんです? 31 00:03:43,957 --> 00:03:48,962 若だんな。 佐助が 他出の理由を聞いているでしょう。 32 00:03:48,962 --> 00:03:52,966 おや 言いたくないのですか? それは どういう了見…➡ 33 00:03:52,966 --> 00:03:54,968 血の臭いがする! 34 00:03:54,968 --> 00:03:56,970 一太郎坊ちゃん ケガをしたんですか!? 35 00:03:56,970 --> 00:03:58,972 もう! 坊ちゃんはよせと 言っているのに。 36 00:03:58,972 --> 00:04:00,974 いつまでも 子供じゃあないんだから…➡ 37 00:04:00,974 --> 00:04:03,977 ああ~! ケガなぞないわ! 38 00:04:03,977 --> 00:04:07,981 あ… あの 若だんなは ケガなぞ負ってはいませんよ。 39 00:04:07,981 --> 00:04:09,983 道の途中で 人殺しと行き合ったものだから➡ 40 00:04:09,983 --> 00:04:11,985 臭いがうつったのでしょう。 41 00:04:11,985 --> 00:04:13,987 お前 それは…。 42 00:04:13,987 --> 00:04:17,991 人殺し? (鈴彦姫)ハッ…。 43 00:04:17,991 --> 00:04:21,995 鈴彦姫 ご苦労だった。 もう帰れ。 44 00:04:21,995 --> 00:04:23,964 はい…。 45 00:04:30,003 --> 00:04:31,938 鈴彦姫。 46 00:04:31,938 --> 00:04:35,909 今日は お前がいて助かったよ。 47 00:04:44,951 --> 00:04:47,954 ん…。 48 00:04:47,954 --> 00:04:50,957 ハァ… 何で 一言もないのさ。 49 00:04:50,957 --> 00:04:52,959 お説教が待っていると 思ったのだけど。 50 00:04:52,959 --> 00:04:55,962 小言が欲しいんですか? そうじゃあないよ。 51 00:04:55,962 --> 00:04:59,966 妙に黙っているからさ かえって 居心地が悪いよ。 52 00:04:59,966 --> 00:05:01,968 こんな街中で 若だんなを➡ 53 00:05:01,968 --> 00:05:05,972 どやしつけるわけには いかないでしょうが。 54 00:05:05,972 --> 00:05:10,977 《どうして この2人にバレたのやら…》 55 00:05:10,977 --> 00:05:12,979 あっ!? 56 00:05:12,979 --> 00:05:14,981 (鳴家たち)きゅわきゅわ…。 57 00:05:14,981 --> 00:05:16,983 (屏風のぞき)若だんな…。 58 00:05:16,983 --> 00:05:20,987 屏風のぞき… お前 見つかっていたのか。 59 00:05:20,987 --> 00:05:23,990 んっ…。 60 00:05:23,990 --> 00:05:26,993 若だんなが常々 こいつと成り代わっていたこと➡ 61 00:05:26,993 --> 00:05:30,931 あたしらが気付いていないとでも 思っていたんですか? 62 00:05:30,931 --> 00:05:34,935 ハァ…。 ねえ 出してやってくれないか? 63 00:05:34,935 --> 00:05:37,938 私が頼んだことなのに このままじゃあ➡ 64 00:05:37,938 --> 00:05:40,941 胸が痛んでいけないよ。 頼まれたからって➡ 65 00:05:40,941 --> 00:05:43,944 若だんなを夜歩きに出すなんて 論外ですよ。 66 00:05:43,944 --> 00:05:46,947 こやつは勝手を楽しむ癖がある。 67 00:05:46,947 --> 00:05:50,951 生半可なことじゃあ 悔い改めたりしませんからね。 68 00:05:50,951 --> 00:05:52,953 いっそ この格好のまま➡ 69 00:05:52,953 --> 00:05:54,955 井戸にでも つるしておきましょうか。➡ 70 00:05:54,955 --> 00:05:57,958 一晩もすりゃあ 少しは後悔もしようってもので。 71 00:05:57,958 --> 00:05:59,960 (鳴家たち)きゅわきゅわ…。 (屏風のぞきのうめき声) 72 00:05:59,960 --> 00:06:01,962 やめておくれよ。 もともとが紙なんだもの➡ 73 00:06:01,962 --> 00:06:05,966 水に落ちたら ほどけて とけてしまうよ。 74 00:06:05,966 --> 00:06:09,970 ハァ… 勝手に出掛けて悪かったよ。 75 00:06:09,970 --> 00:06:11,972 屏風のぞきを 代わりに立てたことも➡ 76 00:06:11,972 --> 00:06:14,975 気がとがめているよ。 だからさ…。 77 00:06:14,975 --> 00:06:20,981 うむ… 他出の理由は 後できっちり聞くとして…。 78 00:06:20,981 --> 00:06:24,985 若だんな 人殺しに行き合ったんですって? 79 00:06:24,985 --> 00:06:27,988 (鳴家たち)きゅわ!? うん 話すからさ➡ 80 00:06:27,988 --> 00:06:30,924 屏風のぞきを許してやってよ。 81 00:06:30,924 --> 00:06:32,892 しょうがないですね。 82 00:06:34,928 --> 00:06:39,933 (鳴家たち)きゅわきゅわ…。 (屏風のぞきのうめき声) 83 00:06:39,933 --> 00:06:42,936 けっ! ごめんよ。 84 00:06:42,936 --> 00:06:46,940 (鳴家たち)きゅわ~。 (屏風のぞき)っとに もう…。 85 00:06:46,940 --> 00:06:51,911 では 若だんな 子細を話していただきましょうか。 86 00:06:53,947 --> 00:06:57,951 迫ってきた その人殺しは 間違いなく 男だったんですね。 87 00:06:57,951 --> 00:07:01,955 そうだよ。 がっしりした体つきに見えたね。 88 00:07:01,955 --> 00:07:03,957 町人だと思うよ。 89 00:07:03,957 --> 00:07:06,960 暗くて 周りが見えなかったと 言っていたのに➡ 90 00:07:06,960 --> 00:07:08,962 よくそこまで分かりましたね。 91 00:07:08,962 --> 00:07:10,964 そりゃあ必死だったもの。 92 00:07:10,964 --> 00:07:13,967 あいつ しつこく追ってきたからね。 93 00:07:13,967 --> 00:07:18,972 若だんなの前に立ったときは もう 人を殺した後だったんですね? 94 00:07:18,972 --> 00:07:22,976 そうさね その前から 血の臭いがしていたし➡ 95 00:07:22,976 --> 00:07:25,979 鈴彦姫が気付いたんだよ。 96 00:07:25,979 --> 00:07:29,983 まずいですね。 顔を見られたかもしれません。 97 00:07:29,983 --> 00:07:33,920 えっ!? あのね 本当に暗かったんだよ。 98 00:07:33,920 --> 00:07:37,924 提灯を持っていても いくらも先が見えなかった。 99 00:07:37,924 --> 00:07:40,927 私だって そいつの顔まで 見ちゃいないよ。 100 00:07:40,927 --> 00:07:43,930 その男は 自分の提灯は持っていなかった。 101 00:07:43,930 --> 00:07:46,933 そうですね? (佐助)では 明かりは➡ 102 00:07:46,933 --> 00:07:49,936 若だんなの手元にあった 提灯一つだ。 103 00:07:49,936 --> 00:07:52,939 若だんなの姿が 一番明るく見えたはずです。 104 00:07:52,939 --> 00:07:56,943 提灯には長崎屋と 屋号もあった。 105 00:07:56,943 --> 00:07:59,946 すぐに吹き消したんだけど…。 106 00:07:59,946 --> 00:08:03,950 あたしが その人殺しなら 若だんなを放っちゃおきません。 107 00:08:03,950 --> 00:08:05,952 えっ!? (仁吉)となりゃあ➡ 108 00:08:05,952 --> 00:08:08,955 そいつが捕まるまで 何があっても 家から出ないでくださいましよ。 109 00:08:08,955 --> 00:08:11,958 捕まらなかったら どうするんだい? 110 00:08:11,958 --> 00:08:14,961 取りあえず こっちで調べますんで。 111 00:08:14,961 --> 00:08:17,964 しばらくは 本当に気を付けてくださいよ。 112 00:08:17,964 --> 00:08:23,970 うん 分かっているよ。 大丈夫 おとなしくしているから。 113 00:08:23,970 --> 00:08:26,940 では 人殺しのことは ここまでで…。 114 00:08:35,982 --> 00:08:37,951 それじゃあ おやすみ。 115 00:08:40,987 --> 00:08:42,989 んっ? 116 00:08:42,989 --> 00:08:45,992 若だんな。 寝る前に もう一つ➡ 117 00:08:45,992 --> 00:08:48,995 言うことがあるんじゃあ ないですか?➡ 118 00:08:48,995 --> 00:08:51,998 どうして 夜に外出なんかしたんです? 119 00:08:51,998 --> 00:08:55,001 息抜きがしたかったんだよ。 120 00:08:55,001 --> 00:08:58,004 だって せんに喉を腫らして以来➡ 121 00:08:58,004 --> 00:09:00,006 まだ寒いって 出してくれないんだもの。 122 00:09:00,006 --> 00:09:03,009 それで 三春屋の栄吉さんのところに➡ 123 00:09:03,009 --> 00:09:05,011 わらび餅を食べに行ったとか➡ 124 00:09:05,011 --> 00:09:07,013 若だんなも17なんだから➡ 125 00:09:07,013 --> 00:09:11,017 栄吉さんに 吉原に連れていってと 頼んだとかね。 126 00:09:11,017 --> 00:09:15,021 そうだったら こう聞きはしないんですがね。 127 00:09:15,021 --> 00:09:18,024 だから 違うことがしたかったんだよ。 128 00:09:18,024 --> 00:09:20,026 夜歩きなんかしたことないからさ。 129 00:09:20,026 --> 00:09:24,030 それで 人っ子一人いないような 聖堂脇に わざわざ? 130 00:09:24,030 --> 00:09:26,032 初めてだもの➡ 131 00:09:26,032 --> 00:09:29,002 どっちへ行ったらいいかなんて 分かりゃしなかったんだよ! 132 00:09:30,970 --> 00:09:32,972 (鳴家たち)きゅわきゅわ…。 133 00:09:32,972 --> 00:09:37,977 ⚟(足音) 134 00:09:37,977 --> 00:09:40,980 (3人)あっ!? (藤兵衛)まだ起きていたのかい? 135 00:09:40,980 --> 00:09:43,983 早く寝ないと 体に障るよ。 136 00:09:43,983 --> 00:09:47,987 驚いた… おとっつあんこそ もう寝ているとばかり…。 137 00:09:47,987 --> 00:09:50,990 かわやに行ったら 離れから 明かりが漏れていたからね。 138 00:09:50,990 --> 00:09:52,992 佐助 仁吉➡ 139 00:09:52,992 --> 00:09:55,995 一太郎を早く寝かさなきゃ 駄目じゃないか。 140 00:09:55,995 --> 00:09:57,997 (仁吉・佐助)申し訳ございません。 141 00:09:57,997 --> 00:10:03,002 お前 前の冬に 長患いをしたばかりじゃないか。 142 00:10:03,002 --> 00:10:06,005 お願いだから 体を大事にしておくれ。 143 00:10:06,005 --> 00:10:10,009 おとっつあん それ もう みつきも前の話だよ。 144 00:10:10,009 --> 00:10:14,013 心配ないってば。 そんなこと言って➡ 145 00:10:14,013 --> 00:10:17,016 この前の夏みたいに 生きるか死ぬかの大病をしたら➡ 146 00:10:17,016 --> 00:10:19,018 どうするんだい? はしかには➡ 147 00:10:19,018 --> 00:10:22,989 二度はかからないよ。 ハァ…。 148 00:10:27,026 --> 00:10:30,964 《おとっつあんのおかげで 助かったな…》 149 00:10:30,964 --> 00:10:33,967 ⚟(野寺坊)ふらり火に 助けてもらったらしいよ。 150 00:10:33,967 --> 00:10:35,969 ⚟(守狐)ああ あれが都合良く➡ 151 00:10:35,969 --> 00:10:38,972 お助けできるところにいて よかったこと。 152 00:10:38,972 --> 00:10:43,977 ⚟(獺)けど 妖が みんな 若だんなの味方とは限らないのに。 153 00:10:43,977 --> 00:10:47,981 ⚟(野寺坊) いやいや 人よりましさね。➡ 154 00:10:47,981 --> 00:10:49,983 怖いのは やっこだよ。 155 00:10:49,983 --> 00:10:54,988 ⚟(守狐)いや 一番怖いのは やっぱり 犬神だよ 白沢だよ。 156 00:10:54,988 --> 00:10:57,957 ⚟(野寺坊・獺) 違いない 違いない。 157 00:11:01,995 --> 00:11:03,963 ハァ…。 158 00:11:29,956 --> 00:11:33,893 (おたえ) 朝 店を開けて程ないころにね➡ 159 00:11:33,893 --> 00:11:37,897 日限の親分が 日本橋の方へ 急いでいたんだそうな。 160 00:11:37,897 --> 00:11:40,900 聞いたかい? いいえ まだ…。 161 00:11:40,900 --> 00:11:43,903 人があやめられていたんだそうな。 162 00:11:43,903 --> 00:11:45,905 あたしは思わず 仁吉を捕まえて➡ 163 00:11:45,905 --> 00:11:48,908 お前が ちゃんと 部屋で寝ているかどうか➡ 164 00:11:48,908 --> 00:11:50,910 聞いてしまったよ。 えっ? 165 00:11:50,910 --> 00:11:52,912 だって お前 ゆうべ 外に出ていたろ? 166 00:11:52,912 --> 00:11:55,915 知っていなさったの!? 167 00:11:55,915 --> 00:11:57,917 《仁吉たちが話すはずもない》 168 00:11:57,917 --> 00:12:02,922 《昔っから おっかさんは こうやって見透かすことがある》 169 00:12:02,922 --> 00:12:05,925 あんなに遅くに どこへ行ってたんだい? 170 00:12:05,925 --> 00:12:07,594 お前は 体のたちが弱いんだから➡ 171 00:12:07,594 --> 00:12:10,930 ことに 気を付けておくれでないと➡ 172 00:12:10,930 --> 00:12:12,932 心配でならないよ…。 173 00:12:12,932 --> 00:12:16,936 悪かったから おっかさん そんな顔しないでくださいよ。 174 00:12:16,936 --> 00:12:19,939 私は殺されてませんから。 175 00:12:19,939 --> 00:12:22,942 当たり前だよ。 そんなことになったら➡ 176 00:12:22,942 --> 00:12:25,912 おっかさん 生きてはいけないから…。 177 00:12:27,947 --> 00:12:29,949 《おとっつあんも おっかさんも➡ 178 00:12:29,949 --> 00:12:33,886 毎日 毎日 私の心配のしどおしで…》 179 00:12:33,886 --> 00:12:36,889 《「いっそ この子が すっぱり 死んでしまったら」なんて➡ 180 00:12:36,889 --> 00:12:39,859 考えたことはないのかしら…》 181 00:12:42,895 --> 00:12:44,897 おはようございます 若だんな。 182 00:12:44,897 --> 00:12:46,899 おはよう 番頭さん。 183 00:12:46,899 --> 00:12:48,901 何かご用で? 184 00:12:48,901 --> 00:12:50,903 いや…。 185 00:12:50,903 --> 00:12:52,905 《用と言われても➡ 186 00:12:52,905 --> 00:12:55,908 任されている仕事なんて ありはしないじゃないか》 187 00:12:55,908 --> 00:12:58,911 《私なぞ ここにいなくたって➡ 188 00:12:58,911 --> 00:13:02,915 店は こうして 回っているんだからね》 189 00:13:02,915 --> 00:13:07,920 《だからこそ 私の代わりに…》 190 00:13:07,920 --> 00:13:10,890 三春屋の栄吉のところへ 行ってくるよ。 191 00:13:13,926 --> 00:13:16,896 若だんな どうぞ。 192 00:13:18,931 --> 00:13:22,935 (街の人々の話し声) 193 00:13:22,935 --> 00:13:28,941 ここには一人で来られるよ。 もう 子供じゃないんだから。 194 00:13:28,941 --> 00:13:31,878 おや 一太郎 いらっしゃい。 195 00:13:31,878 --> 00:13:34,881 やあ 栄吉。 じゃあ 栄吉さん➡ 196 00:13:34,881 --> 00:13:37,884 帰りは 若だんなのこと よろしくお願いしますね。 197 00:13:37,884 --> 00:13:40,887 (栄吉)はいよ。 (仁吉)戻られたら➡ 198 00:13:40,887 --> 00:13:45,892 昨夜の他出の件 きっちり お話ししていただきますよ。 199 00:13:45,892 --> 00:13:48,861 まだ覚えてたんだ…。 200 00:13:51,898 --> 00:13:56,903 《大きさが まちまち… 餅の厚さも揃ってない》 201 00:13:56,903 --> 00:13:59,906 《これは 栄吉が作ったものだね》 202 00:13:59,906 --> 00:14:03,910 大福餅をもらおうかな。 あいよ。 203 00:14:03,910 --> 00:14:07,914 お目が高いね。 それは俺が作った自信作なんだ。 204 00:14:07,914 --> 00:14:09,916 あら 一太郎さん。 205 00:14:09,916 --> 00:14:13,920 今 お茶を入れますから 奥へ上がっていってください。 206 00:14:13,920 --> 00:14:16,923 ありがとう お春ちゃん。 207 00:14:16,923 --> 00:14:19,926 昨日 着いた荷なんだけど いいものだから➡ 208 00:14:19,926 --> 00:14:21,928 一回 三春屋さんにって。 209 00:14:21,928 --> 00:14:24,897 そいつぁ すまないね。 210 00:14:28,935 --> 00:14:30,870 (栄吉)へえ~ これで ようかんでも作るか。 211 00:14:30,870 --> 00:14:32,872 やめときなよ。 212 00:14:32,872 --> 00:14:35,875 これは 讃岐の上物の白砂糖なんだよ。 213 00:14:35,875 --> 00:14:38,878 だから 作ってみたいんじゃあないか。 214 00:14:38,878 --> 00:14:41,881 だってさ せんに 栄吉が作ったようかん➡ 215 00:14:41,881 --> 00:14:45,885 ようじを刺したら 端から崩れて 食べられなかったじゃないか。 216 00:14:45,885 --> 00:14:48,888 ん~。 それじゃあ もったいないよ。 217 00:14:48,888 --> 00:14:50,857 今度は うまくいくよ! 218 00:14:52,892 --> 00:14:56,896 兄さん ほら 一太郎さんの顔をご覧よ。 219 00:14:56,896 --> 00:14:59,899 何だよ ちゃんと できてるだろう? 220 00:14:59,899 --> 00:15:01,901 お春ちゃんの言うとおりだね。 221 00:15:01,901 --> 00:15:03,903 ほらね。 222 00:15:03,903 --> 00:15:05,905 何だよ 一太郎まで。 223 00:15:05,905 --> 00:15:07,907 お春 もういいから 店へ行ってろ。 224 00:15:07,907 --> 00:15:11,911 はいはい。 一太郎さん ごゆっくり。 225 00:15:11,911 --> 00:15:13,880 うん。 226 00:15:18,918 --> 00:15:21,888 これ。 すまないねぇ 栄吉。 227 00:15:31,931 --> 00:15:35,935 実はね 昨日の夜 東屋に行ったんだよ。 228 00:15:35,935 --> 00:15:38,938 えっ? 一太郎 お前一人で あんな所まで? 229 00:15:38,938 --> 00:15:41,941 松之助さんに 会いに行ったのかい? 230 00:15:41,941 --> 00:15:43,943 うん けど 会えなかった。 231 00:15:43,943 --> 00:15:48,948 それに夜 他出したことが 仁吉と佐助にバレてしまってね。 232 00:15:48,948 --> 00:15:50,950 そりゃ 大目玉食らったろう? 233 00:15:50,950 --> 00:15:52,952 うん。 234 00:15:52,952 --> 00:15:55,955 で いつまで続けるんだい? 235 00:15:55,955 --> 00:15:58,958 仁吉さんや佐助さんにも 内緒にしたままで。 236 00:15:58,958 --> 00:16:00,960 2人とも勘がいいからね➡ 237 00:16:00,960 --> 00:16:03,963 もう 何か隠していると 気付いているよ。 238 00:16:03,963 --> 00:16:06,966 そりゃ 心配するだろうよ。 239 00:16:06,966 --> 00:16:08,968 俺も ひとつき お前さんの顔見ないと➡ 240 00:16:08,968 --> 00:16:12,972 またぞろ 死にかけているのかと 思うくらいだもの。 241 00:16:12,972 --> 00:16:15,975 きついことを。 生きていると➡ 242 00:16:15,975 --> 00:16:17,977 自分の思いどおりに ならないことが➡ 243 00:16:17,977 --> 00:16:20,980 いっぱいあるのさ。 どうしたのさ? 244 00:16:20,980 --> 00:16:23,983 今日は 妙に悟った口調じゃあないか。 245 00:16:23,983 --> 00:16:29,989 ハァ… 昨日な あんをひと鍋 駄目にした。 246 00:16:29,989 --> 00:16:31,924 自分だけで作ってみたんだ。 247 00:16:31,924 --> 00:16:34,927 親父に最初 煮方が足りないと言われて➡ 248 00:16:34,927 --> 00:16:38,931 次は 水の足しようが悪いと言われ➡ 249 00:16:38,931 --> 00:16:41,934 何としてもうまくできなかった。 250 00:16:41,934 --> 00:16:44,937 最後には 鍋底を焦がしてしまって…。 251 00:16:44,937 --> 00:16:47,940 おいらぁ 一太郎がうらやましいよ。 252 00:16:47,940 --> 00:16:49,942 この死に損ないが? 253 00:16:49,942 --> 00:16:52,945 うらやましくて たまんないんだよ! 254 00:16:52,945 --> 00:16:54,947 長崎屋くらいの おおだなになれば➡ 255 00:16:54,947 --> 00:16:57,950 若だんなが体が弱くたって 困らない。 256 00:16:57,950 --> 00:17:00,953 店を切り回すのは 番頭や手代の仕事だ。 257 00:17:00,953 --> 00:17:03,956 現に おじさんは 仕事をしないからって➡ 258 00:17:03,956 --> 00:17:06,959 お前を叱ることはないんだろう? 259 00:17:06,959 --> 00:17:08,961 それは…。 260 00:17:08,961 --> 00:17:11,964 昔は悩んでなかったよ。 261 00:17:11,964 --> 00:17:14,967 小さいながら 店の跡取りに生まれて➡ 262 00:17:14,967 --> 00:17:16,969 奉公に行かなくてもいいし…。 263 00:17:16,969 --> 00:17:19,972 けど あん一つ満足に 作れないんじゃ➡ 264 00:17:19,972 --> 00:17:22,975 菓子屋は やっていけないよ。 265 00:17:22,975 --> 00:17:24,977 他にできることが あるわけじゃなし…。 266 00:17:24,977 --> 00:17:27,947 俺は どうすればいいんだろう。 267 00:17:29,982 --> 00:17:31,918 大丈夫さね。 268 00:17:31,918 --> 00:17:34,921 おじさんだって まだ若いんだし➡ 269 00:17:34,921 --> 00:17:37,924 ゆっくり 修業をしていけばいいのさ。 270 00:17:37,924 --> 00:17:43,930 《確かに 物事 なかなか 思うとおりにはいかないね》 271 00:17:43,930 --> 00:17:45,932 じゃあね 栄吉。 272 00:17:45,932 --> 00:17:47,900 (栄吉)ああ。 273 00:17:49,936 --> 00:17:52,939 (仁吉)おかえりなさいまし。 274 00:17:52,939 --> 00:17:55,942 若だんな 昨日のこと…。 275 00:17:55,942 --> 00:17:57,944 やあ 若だんな。 276 00:17:57,944 --> 00:17:59,946 日限の親分さん。 277 00:17:59,946 --> 00:18:03,950 親分さん 今朝方 怖いことがあったそうで…。 278 00:18:03,950 --> 00:18:06,953 耳が早いな。 (仁吉)あぁ…。 279 00:18:06,953 --> 00:18:09,922 そんな話は 店先では何ですんで。 280 00:18:11,958 --> 00:18:15,928 それで 事件のあらましは? 281 00:18:17,964 --> 00:18:20,933 血なまぐさい話だよ。 282 00:18:22,969 --> 00:18:24,971 (日限の親分) ホトケさんを見つけたのは➡ 283 00:18:24,971 --> 00:18:26,973 近所に住まうご隠居でね。➡ 284 00:18:26,973 --> 00:18:31,911 毎朝 聖堂の周りを 掃き清めるのが日課だそうな。 285 00:18:31,911 --> 00:18:36,882 信心深いというのに とんだものと出会っちまった。 286 00:18:38,918 --> 00:18:41,921 (日限の親分)殺されたのは 大工の徳兵衛という者だ。➡ 287 00:18:41,921 --> 00:18:43,923 印ばんてんを着ていたんでね➡ 288 00:18:43,923 --> 00:18:47,927 早くに どこの者か分かったってことさ。 289 00:18:47,927 --> 00:18:49,929 やつは 棟りょうとして➡ 290 00:18:49,929 --> 00:18:51,931 6人ばかりも 人を使っていたそうだ。 291 00:18:51,931 --> 00:18:55,935 腕の立つ大工だったらしいが…。 292 00:18:55,935 --> 00:19:00,606 何で殺されたのやら 今のところ 見当もついちゃあいない。 293 00:19:00,606 --> 00:19:03,943 賭け事が好きだったとか 借金があったとか…。 294 00:19:03,943 --> 00:19:08,948 駆け付けた女房 弟子に聞いたが そんな話はなかったな。 295 00:19:08,948 --> 00:19:11,951 女のことで もめていたんじゃ? 296 00:19:11,951 --> 00:19:15,955 色っぽい事柄に縁があるとは 思えなかったがね。 297 00:19:15,955 --> 00:19:19,959 俺よりも年上で しかも 屋根に上っていたら➡ 298 00:19:19,959 --> 00:19:22,962 鬼瓦と間違えられそうなご面相だ。 299 00:19:22,962 --> 00:19:24,964 首が落とされていて…。 300 00:19:24,964 --> 00:19:26,966 えっ!? いつもとは違うことを➡ 301 00:19:26,966 --> 00:19:31,904 差し引いても 男前とは程遠いやつだったぜ。 302 00:19:31,904 --> 00:19:34,907 《首が落とされていた?》 303 00:19:34,907 --> 00:19:38,911 《いや… 確かに 首はあったはず》 304 00:19:38,911 --> 00:19:42,915 《なら あの後 誰かが切り落とした?》 305 00:19:42,915 --> 00:19:45,918 ど… どうしたんでい? 若だんな。 306 00:19:45,918 --> 00:19:51,924 あっ… いえ 親分さん 首を落とすって どうして➡ 307 00:19:51,924 --> 00:19:54,927 誰が そんなことをしたんだと 思います? 308 00:19:54,927 --> 00:19:56,929 定廻り同心の旦那の話じゃあ➡ 309 00:19:56,929 --> 00:20:00,933 お武家の試し切りじゃないか ってことだ。 310 00:20:00,933 --> 00:20:03,936 はあ…。 (日限の親分)それにしても➡ 311 00:20:03,936 --> 00:20:05,938 大工の棟りょうが 仕事の後に➡ 312 00:20:05,938 --> 00:20:09,942 何で 聖堂前のあんな場所に 行ったのかね? 313 00:20:09,942 --> 00:20:12,945 誰ぞに会いに行っての帰りとか…。 314 00:20:12,945 --> 00:20:15,948 ⚟(日限の親分)棟りょうにせよ 女将さんにせよ➡ 315 00:20:15,948 --> 00:20:18,951 昌平橋を渡った先とは 縁がないそうだ。 316 00:20:18,951 --> 00:20:22,955 ⚟(仁吉)失礼しますよ。 317 00:20:22,955 --> 00:20:25,958 日限の親分。 下っ引きの正吾さんが➡ 318 00:20:25,958 --> 00:20:28,961 親分を捜しに来ていますよ。 319 00:20:28,961 --> 00:20:32,932 こりゃいけねえ。 長っ尻になったかの。 320 00:20:37,903 --> 00:20:40,906 これは 女将さんに。 (日限の親分)いつも すまないな。 321 00:20:40,906 --> 00:20:43,909 じゃあ 若だんな またな。 322 00:20:43,909 --> 00:20:45,878 また いらしてくださいね。 323 00:20:48,914 --> 00:20:53,919 どうやら まだ 下手人のめぼしも ついていないようですね。 324 00:20:53,919 --> 00:20:57,923 (佐助)けっ。 まったく役に立たない親分さんで。 325 00:20:57,923 --> 00:21:00,926 まんじゅう平らげたり 袖の下取るしか能がないなら➡ 326 00:21:00,926 --> 00:21:03,929 いない方がましってもんで。 327 00:21:03,929 --> 00:21:05,931 よそでは そんなこと言うんじゃないよ。 328 00:21:05,931 --> 00:21:10,936 (佐助)心得ていますから 心配は無用ですよ。 329 00:21:10,936 --> 00:21:13,939 あたしは できる手代ですからね。 330 00:21:13,939 --> 00:21:16,942 その優秀な手代が 何の用だい? 331 00:21:16,942 --> 00:21:21,947 佐助が こっちの店に 顔を出すなんて珍しいじゃないか。 332 00:21:21,947 --> 00:21:23,616 先ほど 知らせが来ましてね。 333 00:21:23,616 --> 00:21:27,953 品川沖に うちの常磐丸が着いたそうで。 334 00:21:27,953 --> 00:21:31,891 あの船には 例の荷を積んでますんで。 335 00:21:31,891 --> 00:21:34,894 ああ 長崎からの。 336 00:21:34,894 --> 00:21:37,863 で いつ こっちに来るの? 337 00:21:54,914 --> 00:22:04,890 ♬~