1 00:00:01,969 --> 00:00:04,638 (仁吉)始まりは… そう➡️ 2 00:00:04,638 --> 00:00:08,308 千年も前のことでしょうかね。 3 00:00:08,308 --> 00:00:12,813 アタシの思っていた人は やはり妖でしてね。 4 00:00:12,813 --> 00:00:16,316 平安の御代 故あって人にまじり➡️ 5 00:00:16,316 --> 00:00:19,987 禁中で女房として 暮らしていたのです。 6 00:00:19,987 --> 00:00:22,990 その人の名前は吉野といい➡️ 7 00:00:22,990 --> 00:00:26,493 菖蒲襲が似合う 大変きれいな方で➡️ 8 00:00:26,493 --> 00:00:32,666 ひよっこ妖だったアタシは その十二単に憧れていました。 9 00:00:32,666 --> 00:00:37,671 もっとも その思いは決して 口に出しはしませんでしたよ。 10 00:00:37,671 --> 00:00:39,673 何しろ➡️ 11 00:00:39,673 --> 00:00:42,843 吉野殿が めおとになりたいと 思っていた相手が➡️ 12 00:00:42,843 --> 00:00:45,012 すぐそばに いましたからね。 13 00:00:45,012 --> 00:00:47,514 アタシにできることといえば➡️ 14 00:00:47,514 --> 00:00:50,517 ただただ 吉野殿を守ることだけで。 15 00:00:50,517 --> 00:00:54,688 相手の男は鈴を 吉野殿に贈り➡️ 16 00:00:54,688 --> 00:00:58,859 2人はそれを合図に 逢瀬を重ねていたんです。 17 00:00:58,859 --> 00:01:01,461 ですが…。 18 00:01:01,461 --> 00:01:05,465 妖に比べて 人の命は はかなく短いもの。 19 00:01:05,465 --> 00:01:07,968 鈴君と呼ばれる相手は➡️ 20 00:01:07,968 --> 00:01:12,973 みそじにも届かないうちに 病を得て 身をまかってしまった。 21 00:01:12,973 --> 00:01:17,311 それでも 吉野殿は諦めなかった。 22 00:01:17,311 --> 00:01:20,314 ((吉野:私の 「鈴君」…。 23 00:01:20,314 --> 00:01:24,151 あの人は 絶対にまた この世に生を受けて➡️ 24 00:01:24,151 --> 00:01:27,321 この胸に戻ってくる)) 25 00:01:27,321 --> 00:01:30,157 バカなことだと思いました。 26 00:01:30,157 --> 00:01:35,329 生まれ変わったとて 人は人。 またすぐに死んでしまう。 27 00:01:35,329 --> 00:01:37,331 いや その前に➡️ 28 00:01:37,331 --> 00:01:41,501 吉野殿のことを 覚えているはずもないだろうと。 29 00:01:41,501 --> 00:01:45,105 しかし それから 300年後…。 30 00:01:48,842 --> 00:01:50,844 ((あっ…)) 31 00:01:50,844 --> 00:01:55,182 再び巡り合った2人は 互いに互いがわかったのです。 32 00:01:55,182 --> 00:02:00,687 ですが 5年後に再び 鈴君は亡くなってしまった。 33 00:02:02,623 --> 00:02:05,125 ((わかったでしょう? 白沢。 34 00:02:05,125 --> 00:02:09,630 鈴君は必ず 戻ってきてくださるの)) 35 00:02:09,630 --> 00:02:11,965 更に 250年が過ぎ➡️ 36 00:02:11,965 --> 00:02:14,468 吉野殿がおっしゃるとおり➡️ 37 00:02:14,468 --> 00:02:18,638 再び鈴君に 出会うことは かないました。 38 00:02:18,638 --> 00:02:22,309 最初の出会い同様 2度目も3度目も➡️ 39 00:02:22,309 --> 00:02:27,648 吉野殿は必ず鈴君から 鈴を渡されていたんです。 40 00:02:27,648 --> 00:02:29,816 この3度目の出会いで➡️ 41 00:02:29,816 --> 00:02:36,156 吉野殿が鈴君と共に暮らせたのは わずか2年でした。 42 00:02:36,156 --> 00:02:41,161 ((もう… 人間の男を待つのは やめませんか。 43 00:02:41,161 --> 00:02:43,830 人は早死にするものです。 44 00:02:43,830 --> 00:02:47,000 傷心で吉野殿がまいってしまう。 45 00:02:47,000 --> 00:02:51,838 大丈夫 本当に大丈夫。 私は平気よ。 46 00:02:51,838 --> 00:02:54,508 もう取り乱したりはしない。 47 00:02:54,508 --> 00:02:59,012 また必ず… 会えるもの…)) 48 00:02:59,012 --> 00:03:07,788 (泣き声) 49 00:03:07,788 --> 00:03:12,959 ところが その後 250年たっても 300年たっても➡️ 50 00:03:12,959 --> 00:03:15,962 鈴君は現れなかったんです。 51 00:04:59,166 --> 00:05:03,436 事が起こったのは 今から100年ほど前。 52 00:05:03,436 --> 00:05:06,773 そのころ 私と吉野殿は江戸に下り➡️ 53 00:05:06,773 --> 00:05:11,111 妖たちに手伝ってもらいながら 小間物屋を営んでおりました。 54 00:05:11,111 --> 00:05:13,613 ((大禿:白沢さん! んっ。 55 00:05:13,613 --> 00:05:16,116 (大禿)大変です! お嬢さんが➡️ 56 00:05:16,116 --> 00:05:18,785 不忍池の縁で 人さらいに襲われています! 57 00:05:18,785 --> 00:05:22,289 あっ! んっ…! 58 00:05:22,289 --> 00:05:25,792 《こんな宵に また稲荷神社に 出かけたのか! 59 00:05:25,792 --> 00:05:29,095 いつもこうだ! お嬢さんときたら!》 60 00:05:33,967 --> 00:05:36,636 血の臭い? んっ…。 61 00:05:36,636 --> 00:05:39,806 《お嬢さんは… ケガはないようだ》 62 00:05:39,806 --> 00:05:41,808 ていっ! うっ! あっ。 (鈴の音) 63 00:05:41,808 --> 00:05:43,810 (お吉)ハッ! 64 00:05:43,810 --> 00:05:46,146 お嬢さん… あっ。 65 00:05:46,146 --> 00:05:48,982 (男たち)あっ… ううっ…。 66 00:05:48,982 --> 00:05:53,153 (三橋の親分)おや こんな刻限にお参りかい? 67 00:05:53,153 --> 00:05:55,655 三橋の親分さん。 68 00:05:55,655 --> 00:06:00,760 (三橋の親分)信心深くて結構だが ちょいと尋ねたいことがある。 69 00:06:00,760 --> 00:06:04,931 この近くで子どもが かどわかされそうになってね。 70 00:06:04,931 --> 00:06:09,269 止めた近所の男が殺された。 下手人は逃げたままだ。 71 00:06:09,269 --> 00:06:13,940 アンタ 吉野屋のお吉さんだね。 怪しいヤツを見なかったかい? 72 00:06:13,940 --> 00:06:16,443 怪しいと言うなら…。 73 00:06:16,443 --> 00:06:18,445 何があったんだ。 74 00:06:18,445 --> 00:06:21,615 (弥七)アイツら お参りしていたお嬢さんを➡️ 75 00:06:21,615 --> 00:06:24,784 かどわかす気だったに違いねえ。 危ないですよ➡️ 76 00:06:24,784 --> 00:06:28,788 夜 女が一人歩きするのは。 フッ…。 フフ…。 77 00:06:28,788 --> 00:06:31,625 ケッ 人さらいの連中か。 78 00:06:31,625 --> 00:06:34,127 ソイツら どっちに消えたか わかりますか? 79 00:06:34,127 --> 00:06:36,463 たぶん 神社の奥へ。 80 00:06:36,463 --> 00:06:38,465 そうですかい。 81 00:06:40,467 --> 00:06:43,303 あっ? (足音) 82 00:06:43,303 --> 00:06:45,805 吉野屋の番頭でございます。 83 00:06:45,805 --> 00:06:48,308 うちのお嬢さんを 助けていただきまして➡️ 84 00:06:48,308 --> 00:06:50,477 誠にありがとうございました。 85 00:06:50,477 --> 00:06:52,979 いや こりゃあご丁寧に。 86 00:06:52,979 --> 00:06:55,982 たまたま通りかかったもんでね。 ハッ…。 (鈴の音) 87 00:06:55,982 --> 00:07:01,254 わっちは 薄紅売りの 弥七という者で 商売の帰りに➡️ 88 00:07:01,254 --> 00:07:04,090 ちょいとお稲荷さんを 拝んでいこうと ここへ寄ったら➡️ 89 00:07:04,090 --> 00:07:07,093 お嬢さんの後をつけるヤツを 見かけまして。 90 00:07:07,093 --> 00:07:12,098 呼びかけてみたら 返事よりも先に 拳が降ってきたというわけで。 91 00:07:12,098 --> 00:07:15,001 まあ 何事もなくて ようござんした。 92 00:07:17,771 --> 00:07:20,774 あなたなの? そうなんでしょう? 93 00:07:20,774 --> 00:07:22,776 「あなた」? 94 00:07:22,776 --> 00:07:25,445 違うの? 95 00:07:25,445 --> 00:07:28,615 すみません。 お嬢さんはずいぶん前に➡️ 96 00:07:28,615 --> 00:07:32,118 消息の知れなくなった方を 捜していましてね。 97 00:07:32,118 --> 00:07:36,623 幼なじみか何かですかい。 子どもの頃に別れていては➡️ 98 00:07:36,623 --> 00:07:40,460 そりゃあ 顔がわからなくても無理はない。 99 00:07:40,460 --> 00:07:43,797 これも縁だ。 紅を売り歩く先で➡️ 100 00:07:43,797 --> 00:07:47,634 お嬢さんのお捜しの人のことを 聞いて歩いてもいいですよ。 101 00:07:47,634 --> 00:07:50,136 本当ですか? んっ。 102 00:07:52,973 --> 00:07:55,976 近いですし 吉野屋さんに 知らせに参りましょう。 103 00:07:55,976 --> 00:07:58,078 それじゃあ失礼を。 104 00:08:02,916 --> 00:08:06,419 んっ…。 105 00:08:06,419 --> 00:08:09,923 お嬢さん あの弥七とかいう男を➡️ 106 00:08:09,923 --> 00:08:12,425 鈴君だと思っておいでなんで? 107 00:08:12,425 --> 00:08:16,596 違いますよ。 今まで出会えば 互いに一目で はっきりと➡️ 108 00:08:16,596 --> 00:08:19,766 相手を見分けてたじゃないですか。 109 00:08:19,766 --> 00:08:23,269 《偽者に決まってるさ》 110 00:08:23,269 --> 00:08:26,272 んっ? 弥七さんという若い男が➡️ 111 00:08:26,272 --> 00:08:29,275 お嬢さんを訪ねてきています。 えっ! 112 00:08:29,275 --> 00:08:31,611 (弥七)やぁ お吉のお嬢さん➡️ 113 00:08:31,611 --> 00:08:34,781 吉野屋は いい品物を そろえているんですね。 114 00:08:34,781 --> 00:08:39,285 本当に昨夜は ありがとうございました。 115 00:08:39,285 --> 00:08:41,287 やめておくんなさい。 116 00:08:41,287 --> 00:08:43,456 わっちは ただ お捜しの人について➡️ 117 00:08:43,456 --> 00:08:46,292 もう少し聞いておこうと 思っただけで。 118 00:08:46,292 --> 00:08:48,294 住んでいた所とかね。 119 00:08:48,294 --> 00:08:50,964 親や長屋がわかっていれば➡️ 120 00:08:50,964 --> 00:08:54,134 誰ぞに頼んででも とうに調べをつけております。 121 00:08:54,134 --> 00:08:56,803 そういやぁ そうか。 122 00:08:56,803 --> 00:09:00,573 弥七さん これは昨日のお礼に吉野屋から。 123 00:09:00,573 --> 00:09:03,410 些少ですが。 いいんですかい? 124 00:09:03,410 --> 00:09:07,414 一回助けていくらと 断ってケンカを したわけじゃなかったが➡️ 125 00:09:07,414 --> 00:09:11,418 これがあれば 京のいい紅を仕入れられるなぁ。 126 00:09:11,418 --> 00:09:14,587 どうもすみません。 んっ…。 127 00:09:14,587 --> 00:09:16,923 お吉さん いるかい? 128 00:09:16,923 --> 00:09:28,768 🎵~ 129 00:09:28,768 --> 00:09:31,604 (笑い声) 130 00:09:31,604 --> 00:09:34,107 んっ…。 (笑い声) 131 00:09:34,107 --> 00:09:36,109 (お吉)アハハ…。 (弥七)どうだい)) (指を鳴らす音) 132 00:09:51,958 --> 00:09:55,462 ((《あれから ひとつきほどたった》 133 00:09:55,462 --> 00:09:57,464 仁吉 わかったわ。 134 00:09:57,464 --> 00:10:01,301 あの弥七さんが 「鈴君」だったのよ! おや➡️ 135 00:10:01,301 --> 00:10:05,305 弥七が突然 前世を思い出した とでも言いましたか? 136 00:10:05,305 --> 00:10:08,975 弥七さんはね 10年ほど前に 火事に巻き込まれて➡️ 137 00:10:08,975 --> 00:10:10,977 大ケガをしたんですって。 138 00:10:10,977 --> 00:10:14,814 それ以来 小さい頃のことが 思い出せないそうなの。 139 00:10:14,814 --> 00:10:18,485 それで? だから そのせいで昔のことが…。 140 00:10:18,485 --> 00:10:21,988 私との思い出も 浮かんでこないのよ。 141 00:10:21,988 --> 00:10:23,990 きっと そうだと思わない? 142 00:10:23,990 --> 00:10:27,327 都合のいい話ですね。 143 00:10:27,327 --> 00:10:31,164 そりゃあ 江戸は火事が多い。 だからといって➡️ 144 00:10:31,164 --> 00:10:34,334 いきなり弥七さんが 鈴君だというのは➡️ 145 00:10:34,334 --> 00:10:36,336 考えが飛んでますよ。 146 00:10:36,336 --> 00:10:39,506 弥七のほうが 好ましくなったのなら➡️ 147 00:10:39,506 --> 00:10:43,009 何も無理やり 鈴君を待たなくともいいんですよ。 148 00:10:43,009 --> 00:10:45,345 死に別れたんだ。 149 00:10:45,345 --> 00:10:47,847 何百年も会える日を 待っていろとは➡️ 150 00:10:47,847 --> 00:10:49,849 あの方も言いますまいて。 151 00:10:49,849 --> 00:10:53,686 仁吉はいつでも しっかりしている。 152 00:10:53,686 --> 00:10:55,855 頼りになるよ。 153 00:10:55,855 --> 00:10:58,024 でも最近は➡️ 154 00:10:58,024 --> 00:11:00,527 憎たらしいばっかりだ! 155 00:11:03,129 --> 00:11:08,835 《弥七は待ち遠しい。 アタシは恨めしい か…》 156 00:11:11,804 --> 00:11:16,309 《長く お嬢さんのそばに いすぎたのかもしれない。 157 00:11:16,309 --> 00:11:20,647 いったい お嬢さんにとって アタシは なんなんだろう…。 158 00:11:20,647 --> 00:11:25,151 欠けてはならない ソロバンの玉の一個なのだろうか…。 159 00:11:25,151 --> 00:11:28,655 なければ 日々過ごすのが不自由だけど➡️ 160 00:11:28,655 --> 00:11:31,558 心の置き場ではない…》 161 00:11:38,498 --> 00:11:40,500 《千年…。 162 00:11:40,500 --> 00:11:44,103 アタシもいいかげん バカだよね》 163 00:11:51,177 --> 00:11:54,681 (弥七)お吉さん 今日は土産があるんだが➡️ 164 00:11:54,681 --> 00:11:56,683 受け取ってもらえるかい? (鈴の音) 165 00:11:56,683 --> 00:11:59,852 あっ…。 166 00:11:59,852 --> 00:12:03,122 京から仕入れた 取って置きの紅だ。 167 00:12:03,122 --> 00:12:06,626 あっ…。 168 00:12:06,626 --> 00:12:08,962 お吉さん どうしたんだい? 169 00:12:08,962 --> 00:12:12,632 こんな高価な品 どうもありがとう…。 170 00:12:12,632 --> 00:12:16,636 けど 今日は頭が痛くって… ごめんなさい。 171 00:12:20,807 --> 00:12:24,143 番頭さん。 んっ? 顔色一つ変えずにいるが➡️ 172 00:12:24,143 --> 00:12:27,480 心の内じゃあ いい気味だと 思ってるんだろうね。 173 00:12:27,480 --> 00:12:29,816 いきなり何を言いだすんだい? 174 00:12:29,816 --> 00:12:32,986 色男さんは お嬢さんが好きなのさ。 175 00:12:32,986 --> 00:12:35,655 そうなんでしょう? わかってるんでさぁ。 176 00:12:35,655 --> 00:12:38,157 なのに わっちが横から現れて➡️ 177 00:12:38,157 --> 00:12:40,326 大事なお嬢さんと 仲よくしているから➡️ 178 00:12:40,326 --> 00:12:43,830 気に食わないんだろう。 くだらない。 179 00:12:43,830 --> 00:12:46,332 もう用が終わったのなら 帰ったらいい。 180 00:12:46,332 --> 00:12:50,503 わっちのことを たかが物売りだと バカにしていなさるね。 181 00:12:50,503 --> 00:12:52,839 えっ? そうだろうが! 182 00:12:52,839 --> 00:12:55,008 えっ… あ… うぅ。 183 00:12:55,008 --> 00:12:57,844 帰えんな。 あっ。 184 00:12:57,844 --> 00:13:00,279 商売の邪魔だ。 うっ…。 185 00:13:00,279 --> 00:13:03,983 んんっ… このままじゃあ 済まさないからな! 186 00:13:14,127 --> 00:13:17,630 弥七さんが めおとになろうって言うんだよ。 187 00:13:17,630 --> 00:13:20,133 そりゃ 突然なお話で。 188 00:13:20,133 --> 00:13:22,969 それで 承知なすったんですか? 189 00:13:22,969 --> 00:13:25,972 するわけがないだろう。 一緒に末永く➡️ 190 00:13:25,972 --> 00:13:29,142 店をもり立てていこうって 言われたってさ。 191 00:13:29,142 --> 00:13:33,846 ハァ… 末永くなんて 暮らせるわけはない。 192 00:13:35,815 --> 00:13:40,119 やっぱり… 弥七さんは あの人じゃないんだよねぇ。 193 00:13:44,323 --> 00:13:46,826 魚屋から イワシを買いました。 194 00:13:46,826 --> 00:13:50,163 今夜は照り焼きにでも しましょうか。 195 00:13:50,163 --> 00:13:52,665 そうだね…。 196 00:14:00,106 --> 00:14:04,610 弥七さん わざわざ使いを出して 私に会いたいだなんて…。 197 00:14:04,610 --> 00:14:06,779 いったい どういう用なんだい? 198 00:14:06,779 --> 00:14:08,781 どういうって…。 199 00:14:08,781 --> 00:14:11,951 なんで わっちと めおとになってくれないんだい? 200 00:14:11,951 --> 00:14:14,954 あ…。 その理由を 聞かせてもらいたくって。 201 00:14:14,954 --> 00:14:16,956 それは…。 202 00:14:16,956 --> 00:14:22,295 黙ってちゃ わからないぜ。 弥七さん ごめんなさい。 203 00:14:22,295 --> 00:14:24,797 私 なんと言えば…。 204 00:14:24,797 --> 00:14:28,134 チッ… ああ もう めんどくせぇな。 あっ。 205 00:14:28,134 --> 00:14:30,837 黙って言うとおりにすりゃ いいものを! 206 00:14:33,139 --> 00:14:36,476 アンタたち! 207 00:14:36,476 --> 00:14:39,979 あの晩 アンタとケンカしていた 2人じゃないか。 208 00:14:39,979 --> 00:14:43,149 仲間だったのかい? フン だったらどうだい。 209 00:14:43,149 --> 00:14:45,151 うっ…。 こうなったら➡️ 210 00:14:45,151 --> 00:14:48,321 コイツをエサに あの番頭から 金をふんだくってやる! 211 00:14:48,321 --> 00:14:51,157 それとも売っ払ってやろうか! 212 00:14:51,157 --> 00:14:54,827 ああっ やっぱり違う。 違うんだ。 213 00:14:54,827 --> 00:14:59,665 鈴君なら何も覚えていなかろうと こんなことするもんか。 214 00:14:59,665 --> 00:15:04,103 私がバカだった。 あんまりにも会えなかったから。 215 00:15:04,103 --> 00:15:06,939 何 訳のわからないことを 言ってやがる。 (泣き声) 216 00:15:06,939 --> 00:15:09,108 おとなしくしろっ! あっ…。 (泣き声) 217 00:15:09,108 --> 00:15:12,945 まったく… 懲りない男だね。 218 00:15:12,945 --> 00:15:16,949 お前の正体は すっかりわかっているんだよ。 219 00:15:19,118 --> 00:15:21,120 ((どうせまた弥七と…。 220 00:15:21,120 --> 00:15:23,122 (鳴家)仁吉さん 仁吉さん。 あっ。 221 00:15:23,122 --> 00:15:25,958 (鳴家)弥七という者を 調べてまいりました。 222 00:15:25,958 --> 00:15:28,961 アヤツときたら なんと人さらいだったんですよ。 223 00:15:28,961 --> 00:15:31,631 なんだって!? 岡場所に出入りして➡️ 224 00:15:31,631 --> 00:15:34,300 かっさらったおなごを 売ってるらしいです。 225 00:15:34,300 --> 00:15:36,803 ひどいことに さらった者からは➡️ 226 00:15:36,803 --> 00:15:40,606 櫛でもかんざしでも金めの物は みんな取り上げているとか)) 227 00:15:43,309 --> 00:15:47,480 なっ… んっ うぐっ…! 228 00:15:47,480 --> 00:15:52,151 いいかげんにしないと 不忍池の底に沈めるぞ。 229 00:15:52,151 --> 00:15:54,153 (2人)ひぃっ! 230 00:15:54,153 --> 00:15:56,155 んっ…。 (鈴の音) 231 00:15:56,155 --> 00:16:00,426 あっ… これが 聞こえていた鈴の音の正体か。 232 00:16:00,426 --> 00:16:02,428 んっ… ああっ。 233 00:16:05,932 --> 00:16:08,768 返しなよ。 わっちのもんだ。 234 00:16:08,768 --> 00:16:11,437 お前も手下みたいに 早く逃げないと➡️ 235 00:16:11,437 --> 00:16:14,774 捕まったら 獄門間違いなしじゃないのかい。 236 00:16:14,774 --> 00:16:17,076 無一文で逃げられるものか! 237 00:16:21,447 --> 00:16:23,616 それを持って さっさといね。 238 00:16:23,616 --> 00:16:27,286 二度と吉野屋の前に 姿を見せるんじゃないよ。 239 00:16:27,286 --> 00:16:31,123 見かけたら 今度は まどろっこしいことはしない。 240 00:16:31,123 --> 00:16:34,126 んっ… ハァ ハァ…。 241 00:16:34,126 --> 00:16:38,130 ハァ ハァ ハァ…。 242 00:16:38,130 --> 00:16:40,132 どうしたんだい仁吉。 243 00:16:40,132 --> 00:16:43,302 今夜はずいぶんと 優しいじゃないか。 244 00:16:43,302 --> 00:16:45,972 見逃すなんてさ。 245 00:16:45,972 --> 00:16:49,475 弥七さんは 私を売るって言ってた。 246 00:16:49,475 --> 00:16:52,645 手慣れた感じだったよ。 247 00:16:52,645 --> 00:16:56,048 あの人 人さらいだったんだね。 248 00:16:58,985 --> 00:17:03,589 今になってわかるよ… アイツは鈴君じゃない。 249 00:17:03,589 --> 00:17:07,927 なのになんで 私は間違えたんだろう。 250 00:17:07,927 --> 00:17:13,933 もう… わからなく なっちまったんだろうか。 251 00:17:13,933 --> 00:17:16,102 また会えます。 (泣き声) 252 00:17:16,102 --> 00:17:18,604 こたびのことは 忘れてしまったらいい。 (泣き声) 253 00:17:18,604 --> 00:17:20,773 できませんか? (泣き声) 254 00:17:20,773 --> 00:17:24,610 忘れて 今までと同じように 待っていろと? 255 00:17:24,610 --> 00:17:27,446 私には もう待てる自信がない。 256 00:17:27,446 --> 00:17:31,951 だって 今度もわからないかも しれないじゃないか。 257 00:17:31,951 --> 00:17:35,788 また間違えるかもしれない。 258 00:17:35,788 --> 00:17:38,124 どうしよう…。 259 00:17:38,124 --> 00:17:42,295 お嬢さんは 理由なく 間違えたんじゃないんです。 260 00:17:42,295 --> 00:17:46,799 この鈴の音色。 これに引き付けられたんです。 261 00:17:46,799 --> 00:17:49,468 あっ…! (鈴の音) 262 00:17:49,468 --> 00:17:52,138 これに引かれるでしょう? 263 00:17:52,138 --> 00:17:55,808 これはたぶん… 鈴君の物なんだ。 264 00:17:55,808 --> 00:17:59,312 でも… なんで あの人が持っていたの? 265 00:17:59,312 --> 00:18:03,416 あの男は さらった女たちから 持ち物を奪っていた。 266 00:18:03,416 --> 00:18:06,585 きっと この鈴も奪ったんです。 267 00:18:06,585 --> 00:18:09,922 殺された 鈴君から。 268 00:18:09,922 --> 00:18:13,259 殺され… た? 269 00:18:13,259 --> 00:18:15,594 初めて弥七と出会った日➡️ 270 00:18:15,594 --> 00:18:19,765 境内には かすかに 新しい血の臭いがしていました。 271 00:18:19,765 --> 00:18:23,269 ((この近くで子どもが かどわかされそうになってね。 272 00:18:23,269 --> 00:18:25,938 止めた近所の男が殺された)) 273 00:18:25,938 --> 00:18:30,443 ハッ… それが 鈴君だったの? 274 00:18:30,443 --> 00:18:35,948 なんで気付かなかったんだろう… おまけに私ときたら…。 275 00:18:37,950 --> 00:18:43,122 あの人を殺した男を 鈴君と思うだなんて…。 276 00:18:43,122 --> 00:18:47,293 こんなんじゃ… もう私は あの人と…。 277 00:18:47,293 --> 00:18:51,464 会えないよ… きっと…。 278 00:18:51,464 --> 00:18:54,800 きっと 出会えますよ。 279 00:18:54,800 --> 00:18:58,638 あちらから見つけてくれることも あるでしょう。 280 00:18:58,638 --> 00:19:01,907 一方的な 片思いじゃあないんだから。 281 00:19:01,907 --> 00:19:06,078 千年 思い合っているんだから。 282 00:19:06,078 --> 00:19:12,585 千年… 長いね 千年は。 283 00:19:12,585 --> 00:19:17,256 《そう お嬢さんが アタシの気持ちを 知らないわけがない。 284 00:19:17,256 --> 00:19:20,760 千年 横にいたんだから。 285 00:19:20,760 --> 00:19:25,097 それでも お嬢さんが追うのは 鈴君なんだ。 286 00:19:25,097 --> 00:19:29,602 だから アタシの気持ちについては 決して口にしない。 287 00:19:29,602 --> 00:19:32,605 言えば2人の関係は 崩れてしまう》 288 00:19:32,605 --> 00:19:34,607 どうして…。 289 00:19:34,607 --> 00:19:38,110 《これじゃあ この先 千年たっても➡️ 290 00:19:38,110 --> 00:19:41,447 このままかもしれない。 291 00:19:41,447 --> 00:19:47,553 恋しい ただただ いとおしくて…》)) 292 00:19:58,631 --> 00:20:02,468 これで アタシの話は終わりです。 293 00:20:02,468 --> 00:20:04,804 (一太郎)じゃあ お吉さんは? 294 00:20:04,804 --> 00:20:06,972 そのまま鈴君と 会えなかったのかい? 295 00:20:06,972 --> 00:20:10,309 あっ… それが この話のあと➡️ 296 00:20:10,309 --> 00:20:14,980 100年ほどして 会えたんですよ。 そう よかった。 297 00:20:14,980 --> 00:20:18,484 あっ… よかったのかな? 298 00:20:18,484 --> 00:20:22,321 よかったんです。 今となっては。 299 00:20:22,321 --> 00:20:24,323 あっ…? 300 00:20:24,323 --> 00:20:27,827 (佐助)さあ また せきが出ますよ。 少し横になってください。 301 00:20:27,827 --> 00:20:30,996 そのほうが 丸薬もよく効きますから。 302 00:20:30,996 --> 00:20:33,999 そんな話 聞いたことないよ。 303 00:20:33,999 --> 00:20:38,003 あれ? 若だんな ご存じないんで? 304 00:20:38,003 --> 00:20:40,005 《若だんなも人だ。 305 00:20:40,005 --> 00:20:43,509 人の中でも とりわけ はかない命をお持ちだ。 306 00:20:43,509 --> 00:20:47,680 もし 若だんなが この世を去ることがあったら➡️ 307 00:20:47,680 --> 00:20:52,685 私は 何百年も また会える日を待つんだろうね。 308 00:20:52,685 --> 00:20:57,089 今だから あの方の気持ちが わかる気がするよ》 309 00:21:02,962 --> 00:21:06,298 《何事にも 時期というのは大切らしい。 310 00:21:06,298 --> 00:21:09,969 とにかく一回 会ったほうがいいだろう。 311 00:21:09,969 --> 00:21:14,974 今までのように こっそり様子を 確かめるだけじゃなくってさ》 312 00:22:50,002 --> 00:22:53,606 若だんな 日限の親分さんがお見えですよ。 313 00:22:55,674 --> 00:22:58,177 んっ…。 314 00:22:58,177 --> 00:23:01,614 あっ… 若だんな? 315 00:23:01,614 --> 00:23:04,016 (駕籠かき)エイホ エイホ エイホ…。 316 00:23:07,286 --> 00:23:09,288 んっ…。