1 00:00:07,040 --> 00:00:09,042 銀ね。 2 00:00:09,042 --> 00:00:11,011 結果 銀が よかったっすね。 3 00:00:16,984 --> 00:00:18,952 ちょっと もう… もう 勘弁してあげてもらえませんか? 4 00:00:55,622 --> 00:00:58,592 んっ! (刀身をさやに収める音) 5 00:01:00,627 --> 00:01:02,629 うっ…? 6 00:01:02,629 --> 00:01:04,598 (においを嗅ぐ音) 7 00:01:13,640 --> 00:01:17,311 若だんな! 大変だ。 栄吉さんが刺されました! 8 00:01:17,311 --> 00:01:20,647 何で…? 今 知らせが来たんです。 9 00:01:20,647 --> 00:01:24,651 三春屋の跡取りが 昌平橋の辺りで襲われたと。 10 00:01:24,651 --> 00:01:26,653 容体は? 分かりません。 11 00:01:26,653 --> 00:01:31,658 ただ 見ていた者の話では 大量に出血していたようです。 12 00:01:31,658 --> 00:01:35,662 大丈夫ですか 若だんな。 床を延べましょうか。 13 00:01:35,662 --> 00:01:37,664 店に行くよ。 14 00:01:37,664 --> 00:01:39,666 栄吉さんのところへ行くのは 駄目ですよ。 15 00:01:39,666 --> 00:01:44,271 下手人は逃げているようです。 外へ出るのは危ない。 16 00:01:44,271 --> 00:01:47,541 行きゃしないよ。 手当ての邪魔になるだけだ。 17 00:01:49,609 --> 00:01:51,612 それでは…。 ⚟(足音) 18 00:01:51,612 --> 00:01:53,614 おとっつあん 栄吉が。 19 00:01:53,614 --> 00:01:56,617 つい今 刺されたと聞いたところだよ。 20 00:01:56,617 --> 00:01:59,586 ここのところ 本当に物騒なことで。 21 00:02:01,621 --> 00:02:03,624 おとっつあん お願いだよ。 22 00:02:03,624 --> 00:02:06,626 源信先生を呼んで 栄吉を診てもらってよ。 23 00:02:06,626 --> 00:02:09,630 しかし 栄吉にも親がいることだし。 24 00:02:09,630 --> 00:02:13,633 先生は 謝礼が高いで有名だもの。 三春屋じゃ呼べないよ! 25 00:02:13,633 --> 00:02:16,637 おとっつあん! たった一人の幼なじみが死んだら➡ 26 00:02:16,637 --> 00:02:19,606 私は寝込んじまうからね! 27 00:02:21,642 --> 00:02:31,618 ♬~ 28 00:04:03,610 --> 00:04:06,947 昨日 大坂から届いた 岩おこしだよ。 29 00:04:06,947 --> 00:04:08,949 見舞いの品にするには➡ 30 00:04:08,949 --> 00:04:11,551 ちと かた過ぎるかなとは 思ったんだけど。 31 00:04:11,551 --> 00:04:14,554 へえ。 もし まだ無理なら➡ 32 00:04:14,554 --> 00:04:16,556 これは お春ちゃんたちに 食べてもらって。 33 00:04:16,556 --> 00:04:19,526 いや 食うのは全然平気なんだ。 34 00:04:21,561 --> 00:04:25,565 (栄吉)うまい。 さすが名の通った菓子だけあるね。 35 00:04:25,565 --> 00:04:28,902 まったく 私が栄吉の見舞いに 来る日があるなんて➡ 36 00:04:28,902 --> 00:04:30,904 思いもしなかったよ。 37 00:04:30,904 --> 00:04:33,573 医者のことといい 見舞いの品といい➡ 38 00:04:33,573 --> 00:04:35,575 本当に よくしてもらって。 39 00:04:35,575 --> 00:04:40,580 だって 栄吉が襲われたのは 私のせいだもの。 40 00:04:40,580 --> 00:04:44,584 俺に切りつけたのは 白髪頭のお武家だったけどねえ。 41 00:04:44,584 --> 00:04:48,588 一太郎 お前さん いつから 二本差しになったんだい? 42 00:04:48,588 --> 00:04:51,591 私がお前さんに用を頼まなきゃ➡ 43 00:04:51,591 --> 00:04:54,594 昌平橋なぞには 近寄らなかったろう? 44 00:04:54,594 --> 00:04:56,596 若だんな あれだけ叱られたのに➡ 45 00:04:56,596 --> 00:04:59,599 まだ 松之助さんと 会おうとでもしていたんですか。 46 00:04:59,599 --> 00:05:02,602 金をいくらか届けてもらうよう 頼んだんだよ。 47 00:05:02,602 --> 00:05:06,606 松之助兄さん 奉公先を 追い出されるかもしれないんだ。 48 00:05:06,606 --> 00:05:11,545 だからといって 何で 若だんなが 金を出さなきゃいけないんです? 49 00:05:11,545 --> 00:05:14,548 仁吉さん そう言わないでおくれなさいよ。 50 00:05:14,548 --> 00:05:18,552 実は 一太郎から預かった 金のおかげで生き延びたんだ。 51 00:05:18,552 --> 00:05:20,554 どういうこと? 52 00:05:20,554 --> 00:05:24,558 あの日 もうすぐ 昌平橋が見えるっていう辺りで➡ 53 00:05:24,558 --> 00:05:28,562 いきなり 小刀を抜いたお武家に 刺されたんだ。➡ 54 00:05:28,562 --> 00:05:31,565 腹のど真ん中を 切りつけられたんだけどね➡ 55 00:05:31,565 --> 00:05:34,568 懐に金の包みを入れていた。➡ 56 00:05:34,568 --> 00:05:36,570 そいつで刃先が滑って➡ 57 00:05:36,570 --> 00:05:39,573 脇腹を切られただけで 済んだんだよ。 58 00:05:39,573 --> 00:05:42,576 お前さんを襲ったやつは どんなふうだった? 59 00:05:42,576 --> 00:05:46,580 ああ… そういえば 何か変だったよ。 60 00:05:46,580 --> 00:05:50,250 第一 何で大刀の方を 抜かなかったんだろう。 61 00:05:50,250 --> 00:05:52,252 それは そうだね。 62 00:05:52,252 --> 00:05:54,921 そいつは いきなり近づいてきて➡ 63 00:05:54,921 --> 00:05:58,592 「香りがする お前 持っているだろう」 64 00:05:58,592 --> 00:06:00,594 と言ってきたんだ。 65 00:06:00,594 --> 00:06:02,596 (3人)ハッ! (栄吉)訳が分からないだろう?➡ 66 00:06:02,596 --> 00:06:05,599 金に困っているのかと思って 紙入れを出したのに➡ 67 00:06:05,599 --> 00:06:08,268 切りつけてきたんだ。➡ 68 00:06:08,268 --> 00:06:11,538 この話を聞いた日限の親分も➡ 69 00:06:11,538 --> 00:06:14,207 頭を抱えていたよ。 70 00:06:14,207 --> 00:06:16,543 そうだろうね…。 71 00:06:16,543 --> 00:06:20,547 《間違いない。 栄吉を襲ったのは なりそこないだ》 72 00:06:20,547 --> 00:06:24,551 《でも なぜ 薬種屋でもない 栄吉を襲ったんだ?》 73 00:06:24,551 --> 00:06:28,555 《いったい何が なりそこないを 引きつけたんだろう》 74 00:06:28,555 --> 00:06:31,558 栄吉 切りつけられた日のことだけど➡ 75 00:06:31,558 --> 00:06:35,562 印籠を持っていたかい? 印籠? いや。 76 00:06:35,562 --> 00:06:37,564 香りのするものは? 77 00:06:37,564 --> 00:06:40,567 (栄吉)そんなもの 平素は持っていないよ。 78 00:06:40,567 --> 00:06:42,569 そうか…。 79 00:06:42,569 --> 00:06:45,572 ああ いけない! 一つ 忘れてた。 80 00:06:45,572 --> 00:06:47,574 一太郎が書いた あの書き付け➡ 81 00:06:47,574 --> 00:06:49,576 そのお武家に 取られてしまったんだ。 82 00:06:49,576 --> 00:06:52,579 ごめんよ。 書き付け? 83 00:06:52,579 --> 00:06:55,582 (仁吉)何です? ただの紙切れ一枚だよ。 84 00:06:55,582 --> 00:06:58,585 長崎屋の名と 東屋の松之助兄さんの名が➡ 85 00:06:58,585 --> 00:07:00,587 書かれていただけ。 86 00:07:00,587 --> 00:07:03,590 《何だって そんなものを…》 87 00:07:03,590 --> 00:07:07,594 (栄吉)切られたとき 金子と一緒に懐から落ちたんだ。➡ 88 00:07:07,594 --> 00:07:11,531 侍は 金には目もくれずに その紙を拾うと➡ 89 00:07:11,531 --> 00:07:13,533 そのまま どこぞへ行ってしまった。➡ 90 00:07:13,533 --> 00:07:16,536 ほっとするのが先だったから➡ 91 00:07:16,536 --> 00:07:20,540 今まで 紙のことなぞ 忘れていたよ。 92 00:07:20,540 --> 00:07:24,511 預かった金子。 全部 揃ってるよ。 93 00:07:26,546 --> 00:07:29,549 これで 精のつくものでも 食べておくれ。 94 00:07:29,549 --> 00:07:32,552 (栄吉)いや でも。 余計なことは考えず➡ 95 00:07:32,552 --> 00:07:37,557 しっかり養生して 早く良くなることだよ。 96 00:07:37,557 --> 00:07:41,227 (栄吉)本当に いつもと逆だな。 97 00:07:41,227 --> 00:07:43,563 何だか妙な気分だよ。 98 00:07:43,563 --> 00:07:45,565 あっ。 99 00:07:45,565 --> 00:07:48,568 栄吉には 感謝しているんだよ。 100 00:07:48,568 --> 00:07:51,571 いつも助けてもらって。 101 00:07:51,571 --> 00:07:53,540 お互いさまだ。 102 00:07:55,575 --> 00:07:58,244 若だんな あまり長居すると➡ 103 00:07:58,244 --> 00:08:00,580 栄吉さんの体に障るのでは。 104 00:08:00,580 --> 00:08:04,584 うん。 栄吉 また来るからね。 105 00:08:04,584 --> 00:08:06,553 うん。 106 00:08:23,536 --> 00:08:26,806 寒かったでしょう。 すぐに お茶を入れます。 107 00:08:30,543 --> 00:08:35,515 何ですか 若だんな。 そんなに怖い顔をして。 108 00:08:38,551 --> 00:08:41,554 ねえ 仁吉 佐助。 109 00:08:41,554 --> 00:08:45,558 栄吉は 私と間違えられて 切られたんじゃないかい? 110 00:08:45,558 --> 00:08:49,229 驚いた。 何で突然そんなことを? 111 00:08:49,229 --> 00:08:52,565 仁吉と一緒に ぼてふりに襲われた日に➡ 112 00:08:52,565 --> 00:08:54,567 あいつは 私の前で➡ 113 00:08:54,567 --> 00:08:57,570 「香りがする 間違いない」 と言っていたよ。 114 00:08:57,570 --> 00:09:02,575 栄吉のときは 私が渡した 書き付けを持っていた。 115 00:09:02,575 --> 00:09:05,578 おまけに 侍は 書き付けを手に入れると➡ 116 00:09:05,578 --> 00:09:07,580 どこぞに消えてしまったという。 117 00:09:07,580 --> 00:09:11,584 栄吉さんが薬種屋と間違われて ケガをしたなら気の毒なことです。 118 00:09:11,584 --> 00:09:14,587 そういうことじゃないだろう? 私の周りに➡ 119 00:09:14,587 --> 00:09:18,591 なりそこないが目当てにしている 香りがあるんだよ。 120 00:09:18,591 --> 00:09:21,594 でも 私は 家では印籠なぞ持っていないし➡ 121 00:09:21,594 --> 00:09:25,598 第一 その中には 特別なものなど入っていない。 122 00:09:25,598 --> 00:09:28,601 いったい 何の香りなんだい? 123 00:09:28,601 --> 00:09:30,603 どういうことだい? 124 00:09:30,603 --> 00:09:32,605 それを あたしらに聞くんですか。 125 00:09:32,605 --> 00:09:35,608 なりそこないが 何を考えているかは➡ 126 00:09:35,608 --> 00:09:37,944 分かりかねます。 私のことなら➡ 127 00:09:37,944 --> 00:09:41,614 2人の方が 私自身より よく知っているじゃあないか。 128 00:09:41,614 --> 00:09:43,616 じいさまに 連れられてきたときから➡ 129 00:09:43,616 --> 00:09:45,618 妙に心得ていたくせして。 130 00:09:45,618 --> 00:09:47,620 どう言われましょうと➡ 131 00:09:47,620 --> 00:09:50,590 知らぬことを 答えたりできませんよ。 132 00:09:54,627 --> 00:09:56,629 若だんな ちょっといいですか。 133 00:09:56,629 --> 00:09:59,632 屏風のぞき お前の出てくる場ではないよ。 134 00:09:59,632 --> 00:10:01,634 黙ってな! 135 00:10:01,634 --> 00:10:05,305 犬神さん 白沢さん お客がおみえで。 136 00:10:05,305 --> 00:10:07,640 (仁吉・佐助)えっ? 137 00:10:07,640 --> 00:10:09,609 (3人)あっ…。 138 00:10:44,644 --> 00:10:47,647 これは 見越の入道さま。 139 00:10:47,647 --> 00:10:49,649 わざわざのおいでとは 知りませんで。 140 00:10:49,649 --> 00:10:51,618 こちらへどうぞ。 141 00:10:56,656 --> 00:11:00,627 (見越の入道)ちょっと お邪魔しますよ 若だんな。 142 00:11:02,662 --> 00:11:07,667 おお 今日は具合もいいようだ。 まずは よかった。 143 00:11:07,667 --> 00:11:09,669 それは どうも…。 ん? 144 00:11:09,669 --> 00:11:12,605 ワハハハハハ! 145 00:11:12,605 --> 00:11:15,608 入道さま 今日は どういったご用件で➡ 146 00:11:15,608 --> 00:11:18,611 いらしたのですか。 (見越の入道)そのことだがな➡ 147 00:11:18,611 --> 00:11:21,614 聞き慣れないことを 話すかもしれないが➡ 148 00:11:21,614 --> 00:11:26,619 若だんな お前さんのことだ。 よく聞いておくれ。 149 00:11:26,619 --> 00:11:28,588 私の? 150 00:11:34,627 --> 00:11:39,632 わしが ここに来たのは 皮衣殿の頼みによる。➡ 151 00:11:39,632 --> 00:11:44,971 犬神たちが このところ 派手に妖らを動かしているからな。 152 00:11:44,971 --> 00:11:46,973 何ぞあったのかと➡ 153 00:11:46,973 --> 00:11:51,311 体の弱い若だんなのことが 心配になったんだろうて。 154 00:11:51,311 --> 00:11:54,647 その皮衣殿とは どなたなんですか。 155 00:11:54,647 --> 00:11:57,650 (見越の入道)おぎんのことだよ。 えっ? 156 00:11:57,650 --> 00:12:00,653 長崎屋 伊三郎の妻 おぎん。 157 00:12:00,653 --> 00:12:05,658 おたえの母 お前さんの祖母だわな。 158 00:12:05,658 --> 00:12:08,661 しかし 祖母は 早くに亡くなったと聞いています。 159 00:12:08,661 --> 00:12:11,598 おぎんの本性は妖。 160 00:12:11,598 --> 00:12:15,602 よわい3,000年の大妖さね。 161 00:12:15,602 --> 00:12:19,606 わしとは昔からの知り合いでな。 162 00:12:19,606 --> 00:12:21,574 あや… かし? 163 00:12:23,610 --> 00:12:28,615 おやおや まったく信じられぬのか? 164 00:12:28,615 --> 00:12:31,618 (見越の入道)では 若だんなに 妖がついているのは➡ 165 00:12:31,618 --> 00:12:33,620 なぜだと思うかな?➡ 166 00:12:33,620 --> 00:12:38,625 それに お前さん 妖がいたら そうと分かるだろう?➡ 167 00:12:38,625 --> 00:12:43,630 たとえ うまく人の姿に化けていてもだ。 168 00:12:43,630 --> 00:12:48,635 じゃあ 私も妖なんですか? 169 00:12:48,635 --> 00:12:50,637 ワッハハハハ! 170 00:12:50,637 --> 00:12:56,643 古来 妖狐らとまじわり 子をなした人は結構な数いてな。➡ 171 00:12:56,643 --> 00:12:59,646 生まれた子らは 人として生をうける。➡ 172 00:12:59,646 --> 00:13:05,618 もっとも 尋常ならざる力が 多少は受け継がれるようだがの。 173 00:13:08,655 --> 00:13:11,591 あの もし分かっているのなら➡ 174 00:13:11,591 --> 00:13:13,593 教えていただきたいことが あるのですが。 175 00:13:13,593 --> 00:13:16,596 わしが知ることならばな。 176 00:13:16,596 --> 00:13:19,599 おっかさんは 祖母が妖だったことを➡ 177 00:13:19,599 --> 00:13:23,603 知っていなさるのですか? それは分かっているじゃろうて。 178 00:13:23,603 --> 00:13:27,607 お前と同じように おたえにも妖は分かる。 179 00:13:27,607 --> 00:13:31,611 おぎんは お前が生まれる前の年まで➡ 180 00:13:31,611 --> 00:13:34,614 ここで暮らしていたのだからな。 181 00:13:34,614 --> 00:13:36,616 じゃあ 祖父は? 182 00:13:36,616 --> 00:13:41,621 あの2人は 思い思われの間柄でなあ。➡ 183 00:13:41,621 --> 00:13:46,626 伊三郎殿は おぎんと出会った頃 武士で いいなずけまでおった。➡ 184 00:13:46,626 --> 00:13:48,628 それを全て捨てて➡ 185 00:13:48,628 --> 00:13:51,964 妖と分かっているおぎんと 添ったのだ。 186 00:13:51,964 --> 00:13:53,966 おぎんの同族からは➡ 187 00:13:53,966 --> 00:13:57,637 人ながら大したものと 思われたようだぞ。➡ 188 00:13:57,637 --> 00:14:02,642 2人は 西国から江戸へ 手に手を取って逃げた。➡ 189 00:14:02,642 --> 00:14:05,645 互いだけが頼りであった2人を➡ 190 00:14:05,645 --> 00:14:09,649 おぎんの一門は 大いに助けたと聞いておる。 191 00:14:09,649 --> 00:14:12,585 でも そんなふうに 全てを捨ててきたのに➡ 192 00:14:12,585 --> 00:14:15,588 祖母だけ 早死にしてしまうなんて…。 193 00:14:15,588 --> 00:14:17,590 ちょっと待ってください。 194 00:14:17,590 --> 00:14:20,593 祖母は 私が生まれる前に 死んだんですよ? 195 00:14:20,593 --> 00:14:23,596 なぜ今の私を心配できるんです? 196 00:14:23,596 --> 00:14:29,602 おや 皮衣殿は亡くなったか。 それは知らなんだの。 197 00:14:29,602 --> 00:14:31,604 生きているんですね。 198 00:14:31,604 --> 00:14:35,608 わしが先に会ったときは 元気であった。 199 00:14:35,608 --> 00:14:39,612 今 神なる荼枳尼天様に お仕え申し上げている。 200 00:14:39,612 --> 00:14:41,614 何と! 201 00:14:41,614 --> 00:14:45,618 若だんな 何も 目に見える世界だけが➡ 202 00:14:45,618 --> 00:14:48,621 この世にあるのではないぞ。 203 00:14:48,621 --> 00:14:51,624 祖母は そうまでして 祖父と一緒になったのに➡ 204 00:14:51,624 --> 00:14:53,960 なぜ別れて家を出たんですか。 205 00:14:53,960 --> 00:14:57,630 入道さま。 皮衣さまは 全てを若だんなに言えと➡ 206 00:14:57,630 --> 00:15:01,300 おっしゃいましたか。 (見越の入道)ハハッ お前さんは➡ 207 00:15:01,300 --> 00:15:05,638 相変わらず 一太郎殿を 子供扱いしているようだの。➡ 208 00:15:05,638 --> 00:15:08,307 まあ 妖の年から見れば➡ 209 00:15:08,307 --> 00:15:11,244 ほんの生まれたて というところだが➡ 210 00:15:11,244 --> 00:15:16,582 人の身なれば いつまでも 甘えてばかりではおられまいよ。➡ 211 00:15:16,582 --> 00:15:19,585 人殺しが続いているそうだの。 212 00:15:19,585 --> 00:15:21,587 はい。 その騒ぎに➡ 213 00:15:21,587 --> 00:15:26,592 付喪神のなりそこないが 関わっていると聞くが。 214 00:15:26,592 --> 00:15:29,595 そこまでは分かったのですが なりそこないが➡ 215 00:15:29,595 --> 00:15:31,597 何を求めているのかが 分かりません。 216 00:15:31,597 --> 00:15:34,600 ふむ。 ただ やつは➡ 217 00:15:34,600 --> 00:15:37,603 欲しいものを 私が持っていると思っている。 218 00:15:37,603 --> 00:15:39,605 そういう気がするのです。 219 00:15:39,605 --> 00:15:44,610 そやつは よほどのこと 付喪神になりたかったのだろうよ。 220 00:15:44,610 --> 00:15:47,613 己が欲に とらわれ過ぎると➡ 221 00:15:47,613 --> 00:15:51,284 周りのことなど 見えなくなるものだ。 222 00:15:51,284 --> 00:15:53,619 少し前にも そんな者がいた。 223 00:15:53,619 --> 00:15:58,624 まだ若い女だったが 子供に恵まれなくての。 224 00:15:58,624 --> 00:16:03,629 (見越の入道)1人生まれたのだが すぐに亡くなってしまったのだ。 225 00:16:03,629 --> 00:16:07,633 そのとき もう子供は望めないと 医者に言われたそうだが➡ 226 00:16:07,633 --> 00:16:11,637 女は どうしても 子供を欲しがった。➡ 227 00:16:11,637 --> 00:16:13,639 何ものにも代え難く➡ 228 00:16:13,639 --> 00:16:17,643 それこそ 狂ったのではないかと 思うほどに望んだのだ。➡ 229 00:16:17,643 --> 00:16:23,649 女は 己が命に代えても 子供が欲しいと 神に祈った。➡ 230 00:16:23,649 --> 00:16:27,653 そして この気持ちに 女の母が負けた。➡ 231 00:16:27,653 --> 00:16:31,657 この先 自分が従者となることと 引き換えに➡ 232 00:16:31,657 --> 00:16:35,661 荼枳尼天様から秘薬を頂いたのだ。 233 00:16:35,661 --> 00:16:40,666 死者の魂を蘇らせる神の薬でな。 234 00:16:40,666 --> 00:16:43,669 これを返魂香という。 235 00:16:43,669 --> 00:16:46,672 死者の… 魂? 236 00:16:46,672 --> 00:16:51,677 (見越の入道)女は 母を引き換えに するつもりではなかったが➡ 237 00:16:51,677 --> 00:16:56,349 母はすでに香を残して去った後で どうしようもない。➡ 238 00:16:56,349 --> 00:17:02,688 それで 荼枳尼天様から 授かった香を使ったのだ。 239 00:17:02,688 --> 00:17:06,692 生まれたのですか? その香のおかげで。 240 00:17:06,692 --> 00:17:11,631 うむ 死んだ子の魂が この世に引き戻された。➡ 241 00:17:11,631 --> 00:17:15,601 そう おたえは母になれたんだ。 242 00:17:19,639 --> 00:17:24,644 《私は 死んだはずの子供だった?》 243 00:17:24,644 --> 00:17:27,647 《いきなり言われても…》 244 00:17:27,647 --> 00:17:33,653 《でも 話の辻褄が それで合う》 245 00:17:33,653 --> 00:17:36,656 《つまり 私は 神の薬を使って➡ 246 00:17:36,656 --> 00:17:40,660 この世に戻ってきた者 ということになる》 247 00:17:40,660 --> 00:17:44,630 《人でも妖でもない 奇妙な生き物》 248 00:17:46,666 --> 00:17:48,668 《薬の香り…》 249 00:17:48,668 --> 00:17:51,671 《もしかしたら それを使った私から➡ 250 00:17:51,671 --> 00:17:54,674 今でも薬は香るのだろうか》 251 00:17:54,674 --> 00:17:58,678 《なりそこないは 欠けてしまった 己の魂を取り戻すために➡ 252 00:17:58,678 --> 00:18:02,682 その薬を求めているのだろうか》 253 00:18:02,682 --> 00:18:06,686 仁吉 佐助。 なりそこないは その返魂香を求めていると➡ 254 00:18:06,686 --> 00:18:10,690 お前たちは 察しを つけていたのじゃあないのかい? 255 00:18:10,690 --> 00:18:13,626 まあ そう怒りなさんな。 256 00:18:13,626 --> 00:18:16,629 返魂香のことを もっと早くに突き止めたとて➡ 257 00:18:16,629 --> 00:18:19,632 どうこうできたわけではない。 258 00:18:19,632 --> 00:18:21,634 それは そうですが…。 259 00:18:21,634 --> 00:18:26,639 神の庭山にある返魂樹より 作られる霊薬➡ 260 00:18:26,639 --> 00:18:28,641 めったなことでは手にできぬ。 261 00:18:28,641 --> 00:18:31,644 どうすれば その薬を 手に入れられるのですか。 262 00:18:31,644 --> 00:18:34,647 もう この世にはない。 263 00:18:34,647 --> 00:18:37,650 は…? 手に入らない? 264 00:18:37,650 --> 00:18:39,652 うむ。 265 00:18:39,652 --> 00:18:43,656 それでは なりそこないに 香を渡してやって➡ 266 00:18:43,656 --> 00:18:46,659 事を収めるわけには いかないのですね? 267 00:18:46,659 --> 00:18:48,628 無理だろうな。 268 00:18:51,664 --> 00:18:55,668 そうとなれば 残された道は二つしかない。 269 00:18:55,668 --> 00:18:59,338 なりそこないが力を失って 消えるまで待つか➡ 270 00:18:59,338 --> 00:19:01,674 あるいは 対決の道か。 271 00:19:01,674 --> 00:19:03,676 若だんな! 272 00:19:03,676 --> 00:19:06,679 霊薬が どこにもないことを話して 納得すればよし。 273 00:19:06,679 --> 00:19:11,617 言って得心しなければ 力ずくでさせるしかない。 274 00:19:11,617 --> 00:19:14,620 そういうことなら しばらくは おとなしく店にいてください。➡ 275 00:19:14,620 --> 00:19:17,623 今までの なりそこないの 振る舞いを見ても➡ 276 00:19:17,623 --> 00:19:19,625 話し合いで済むとは思えません! 277 00:19:19,625 --> 00:19:21,627 (佐助) そうしてください 若だんな!➡ 278 00:19:21,627 --> 00:19:25,297 この店だけなら 何があっても 付喪神のなりそこないなんぞに➡ 279 00:19:25,297 --> 00:19:27,633 入り込ませたり するもんじゃありません!➡ 280 00:19:27,633 --> 00:19:29,635 きっちりと守ってみせます! 281 00:19:29,635 --> 00:19:33,639 きっと それが 一番の策なんだろうね。 282 00:19:33,639 --> 00:19:37,643 私だって 何も好きこのんで 対峙したいわけじゃない。 283 00:19:37,643 --> 00:19:41,647 お前たちがいるのに のこのこ出掛けていくことはない。 284 00:19:41,647 --> 00:19:43,983 そうですとも! だけど。 285 00:19:43,983 --> 00:19:46,652 このまま 返魂香が手に入らなければ➡ 286 00:19:46,652 --> 00:19:49,321 消える時間が迫った なりそこないは➡ 287 00:19:49,321 --> 00:19:52,591 死に物狂いで 香を手に入れようとするだろう。 288 00:19:55,661 --> 00:19:57,663 ここで逃げたら➡ 289 00:19:57,663 --> 00:20:01,667 生まれてこなければよかったと 思うことになる。 290 00:20:01,667 --> 00:20:03,669 自分さえいなければ➡ 291 00:20:03,669 --> 00:20:06,672 たくさんの人が 死ななくて済んだんだよ。 292 00:20:06,672 --> 00:20:11,610 このままでは おっかさんが 返魂香を使ったことを➡ 293 00:20:11,610 --> 00:20:15,614 この身自身を 呪ってしまうかもしれない。 294 00:20:15,614 --> 00:20:20,619 そうなれば どのみち生きていくことも難しい。 295 00:20:20,619 --> 00:20:23,622 ハァ…。 296 00:20:23,622 --> 00:20:27,626 何てことだろう。 私は そのなりそこないを➡ 297 00:20:27,626 --> 00:20:30,629 何とかしなけりゃあ ならないらしい。 298 00:20:30,629 --> 00:20:33,632 何を言いだすんです! (佐助)おやめください! 299 00:20:33,632 --> 00:20:36,635 ワッハッハッハッハ! 300 00:20:36,635 --> 00:20:40,306 いや あっぱれだの。 寝込んでばかりで➡ 301 00:20:40,306 --> 00:20:43,642 しょっちゅう死にかけていると 聞いていたのに➡ 302 00:20:43,642 --> 00:20:47,646 中身は どうして 剛の者のようだ。 303 00:20:47,646 --> 00:20:52,651 やらなくっちゃならないと思うから なりそこないを止めにかかります。 304 00:20:52,651 --> 00:20:55,654 でも どうしたらできるかという 案があるわけじゃない。 305 00:20:55,654 --> 00:20:59,658 それでも お前さんは やってみると言う。 306 00:20:59,658 --> 00:21:02,661 いや 冥加なことだ。 307 00:21:02,661 --> 00:21:05,664 ニッ。 ガッハッハッハ!➡ 308 00:21:05,664 --> 00:21:08,667 ガッハッハッハッハ! 309 00:21:08,667 --> 00:21:10,669 ン~。 310 00:21:10,669 --> 00:21:12,638 うっ…。 311 00:21:14,607 --> 00:21:17,610 (見越の入道)皮衣殿がの 一太郎殿のことで➡ 312 00:21:17,610 --> 00:21:20,613 これ以上 人に迷惑がかかるなら➡ 313 00:21:20,613 --> 00:21:23,616 お前さんを 人の世から切り離して➡ 314 00:21:23,616 --> 00:21:26,285 自分のところへ 連れてきてほしいと➡ 315 00:21:26,285 --> 00:21:29,622 こう言わしゃってな。 (3人)えっ!? 316 00:21:29,622 --> 00:21:33,626 ただ私の身を心配して 来たわけではなかったのですね。 317 00:21:33,626 --> 00:21:37,630 (見越の入道)皮衣殿は今 神に仕える身だからの➡ 318 00:21:37,630 --> 00:21:41,634 己が孫を この世に呼び戻したことで➡ 319 00:21:41,634 --> 00:21:45,638 禍をまき散らすことになっては いけないと思ったのだろう。 320 00:21:45,638 --> 00:21:50,643 いや 己で何とかすると 言ってくれてよかったわ。 321 00:21:50,643 --> 00:21:53,646 つまり もし店に閉じこもって➡ 322 00:21:53,646 --> 00:21:55,648 災厄を やり過ごそうとしていたら➡ 323 00:21:55,648 --> 00:21:58,317 死ななくちゃならなかった わけですか。 324 00:21:58,317 --> 00:22:00,653 (見越の入道)まさか。 たった一人の孫を➡ 325 00:22:00,653 --> 00:22:06,325 殺すわけもなかろう。 ただ 人の世を離れるだけだ。 326 00:22:06,325 --> 00:22:09,662 お前は皮衣殿の孫だから➡ 327 00:22:09,662 --> 00:22:14,600 荼枳尼天様のお庭の隅にでも 置いていただけるのだろうよ。 328 00:22:14,600 --> 00:22:18,270 それじゃあ あの世に行くのと変わりがない。 329 00:22:18,270 --> 00:22:21,607 ガッハッハッハッハッハ! 330 00:22:21,607 --> 00:22:24,610 では お手並み拝見。 331 00:22:24,610 --> 00:22:27,580 (3人)うわっ! くっ…。 332 00:22:35,621 --> 00:22:45,598 ♬~