1 00:00:05,038 --> 00:00:08,041 ガッハッハッハッハッハ! 2 00:00:08,041 --> 00:00:12,012 では お手並み拝見。 3 00:00:14,047 --> 00:00:16,016 (3人)うわっ! くっ…。 4 00:00:23,056 --> 00:00:26,059 相変わらず あのお方は すさまじい。 5 00:00:26,059 --> 00:00:29,062 大丈夫ですか? うん。 6 00:00:29,062 --> 00:00:31,064 あたしは➡ 7 00:00:31,064 --> 00:00:36,036 もう少しで 若だんなをこの世から はじき出してしまうところだった。 8 00:00:39,072 --> 00:00:42,075 仁吉 震えている場合じゃないからね。 9 00:00:42,075 --> 00:00:44,077 この店に とどまりたかったら➡ 10 00:00:44,077 --> 00:00:47,080 私は あのなりそこないを どうにかしなくちゃいけない。 11 00:00:47,080 --> 00:00:50,050 お前さんの力が必要だからね。 12 00:00:52,085 --> 00:00:54,087 佐助も そうだよ。 13 00:00:54,087 --> 00:00:59,092 この際 私の体のことより 考えなくちゃいけないのは➡ 14 00:00:59,092 --> 00:01:02,029 どうやって なりそこないと対峙するかだ。 15 00:01:02,029 --> 00:01:05,032 助けておくれだよね? 16 00:01:05,032 --> 00:01:15,008 ♬~ 17 00:02:48,035 --> 00:02:51,038 お前たちが 誰の命で ここに来たのか➡ 18 00:02:51,038 --> 00:02:53,040 ようやく分かったよ。 19 00:02:53,040 --> 00:02:54,708 おぎんさま…➡ 20 00:02:54,708 --> 00:02:58,045 つまり 私のおばあさまの お言い付けだったんだね? 21 00:02:58,045 --> 00:03:00,047 はい。 (佐助)そうです。 22 00:03:00,047 --> 00:03:03,050 前から 時折 感じていたんだ。 23 00:03:03,050 --> 00:03:07,054 お前たちの主人が 自分だという気がしないと。 24 00:03:07,054 --> 00:03:10,057 でも 今なら分かる。 25 00:03:10,057 --> 00:03:13,060 すぐには ふに落ちないこともあるけれど➡ 26 00:03:13,060 --> 00:03:16,063 色々 合点がいったよ。 27 00:03:16,063 --> 00:03:21,068 じゃあ 仁吉の初恋の相手が おぎんさまだってこともですかい? 28 00:03:21,068 --> 00:03:24,071 あっ! 佐助! えっ? そうなのかい? 29 00:03:24,071 --> 00:03:28,075 (佐助)フッフフフ…。 (仁吉)はい。➡ 30 00:03:28,075 --> 00:03:33,013 せんだって お話しした吉野さま そして お吉さまというのは➡ 31 00:03:33,013 --> 00:03:37,017 実は おぎんさまのことなんです。 そうだったんだ。 32 00:03:37,017 --> 00:03:40,020 佐助! まったく 余計なことを…。 33 00:03:40,020 --> 00:03:42,022 ヘヘッ。 34 00:03:42,022 --> 00:03:44,024 それで あの後 おぎんさまが出会った➡ 35 00:03:44,024 --> 00:03:48,028 鈴君というのが 伊三郎旦那で。 36 00:03:48,028 --> 00:03:50,030 なるほどね…。 37 00:03:50,030 --> 00:03:53,033 さて 私は 見越の入道さまに➡ 38 00:03:53,033 --> 00:03:57,037 なりそこないを 何とかすると 宣言をしてしまったんだ。 39 00:03:57,037 --> 00:03:59,039 早速 策を練らないとね。 40 00:03:59,039 --> 00:04:04,044 おそらく 今 やつは 栄吉を斬ったお侍に とりついて➡ 41 00:04:04,044 --> 00:04:07,047 返魂香を探し回っているはず。 42 00:04:07,047 --> 00:04:11,051 これ以上 私のせいで 犠牲者を出すわけにはいかないよ。 43 00:04:11,051 --> 00:04:13,019 はい。 44 00:04:17,057 --> 00:04:20,060 (おくま)タイを手に入れましたので 塩焼きに。 45 00:04:20,060 --> 00:04:23,063 小骨は あらかた おくまが取っておきましたよ。 46 00:04:23,063 --> 00:04:26,066 た~んと召し上がってくださいな。 47 00:04:26,066 --> 00:04:29,069 ありがとう おくま。 48 00:04:29,069 --> 00:04:32,005 ねえ おくま 私が幼いころ…➡ 49 00:04:32,005 --> 00:04:35,008 ちょうど うちに 薬種問屋ができたころだったかな。 50 00:04:35,008 --> 00:04:39,012 長崎屋には 守り神がついている って言ってたよね? 51 00:04:39,012 --> 00:04:42,015 おや そんなこと言いましたかね? 52 00:04:42,015 --> 00:04:45,018 私も そうじゃないかと思うよ。 53 00:04:45,018 --> 00:04:50,023 あら 急に どうしたんですか? 何となく そう思ったんだよ。 54 00:04:50,023 --> 00:04:52,025 ⚟(障子の開く音) (おくま)うん? 55 00:04:52,025 --> 00:04:55,028 一太郎…。 56 00:04:55,028 --> 00:04:57,998 奥さまには お茶を お持ちしますね。 57 00:05:02,035 --> 00:05:04,037 そう…。 58 00:05:04,037 --> 00:05:06,039 じゃあ お前は 全部 聞いたというんだね。 59 00:05:06,039 --> 00:05:08,041 はい。 60 00:05:08,041 --> 00:05:11,011 その上で お願いがあるんですが。 61 00:05:19,052 --> 00:05:22,055 ご苦労だったね。 (小僧)はい。 62 00:05:22,055 --> 00:05:27,027 仁吉と佐助を呼んでくれるかい? はい。 では 失礼します。 63 00:05:39,005 --> 00:05:42,008 (仁吉)若だんな それは? 護符だよ。 64 00:05:42,008 --> 00:05:45,011 店の者に頼んで もらってきてもらったんだ。 65 00:05:45,011 --> 00:05:50,016 効くんですか? そんなもの。 効いてもらわねば困る。 66 00:05:50,016 --> 00:05:55,021 妖封じで高名な上野の寛朝さまと 東叡山の寿真さまに➡ 67 00:05:55,021 --> 00:05:59,025 万金の寄進を行って 頂いたものだからね。 68 00:05:59,025 --> 00:06:02,028 万金の寄進? いかほどですか? 69 00:06:02,028 --> 00:06:05,031 寛朝さまの護符が 50枚で25両。 70 00:06:05,031 --> 00:06:07,033 寿真さまからは➡ 71 00:06:07,033 --> 00:06:11,037 妖が斬れるという守り刀を 25両で頂いた。 72 00:06:11,037 --> 00:06:14,040 近ごろの坊主は ごうつくばりだこと。 73 00:06:14,040 --> 00:06:18,044 ところで 若だんな その金は どうしたんです? 74 00:06:18,044 --> 00:06:22,048 いくら何でも紙入れに そんな大金 入っていたわけではないでしょう? 75 00:06:22,048 --> 00:06:25,051 何となく おとっつあんには 言いづらくてさ➡ 76 00:06:25,051 --> 00:06:27,053 おっかさんから もらったんだよ。 77 00:06:27,053 --> 00:06:30,991 100両 欲しいと言ったら 小判でくれたよ。 78 00:06:30,991 --> 00:06:35,996 よく そんなに下さいましたね。 何に使うって言ったんです? 79 00:06:35,996 --> 00:06:37,998 何も言わなかったよ。 80 00:06:37,998 --> 00:06:42,002 けど おっかさんは 分かっていたと思う。 81 00:06:42,002 --> 00:06:45,972 効くとも効かぬとも 分からぬものにねぇ…。 82 00:06:48,008 --> 00:06:50,010 あっ。 83 00:06:50,010 --> 00:06:52,012 ねえ 屏風のぞき。 84 00:06:52,012 --> 00:06:56,016 (屏風のぞき)何だい? 若だんな。 あたしゃ うたた寝を…。 85 00:06:56,016 --> 00:06:59,019 ハッ! 86 00:06:59,019 --> 00:07:02,022 あの… もしかして これ 効いたのかい? 87 00:07:02,022 --> 00:07:04,024 (屏風のぞき) それは 妖封じの護符だろう!➡ 88 00:07:04,024 --> 00:07:07,027 若だんなは あたしを 封じ込めようとするのかい!? 89 00:07:07,027 --> 00:07:08,695 違うって! 90 00:07:08,695 --> 00:07:11,031 ちょっと これの効き目を 見てみたかったんだよ。 91 00:07:11,031 --> 00:07:13,033 ちょっとだけ…。 92 00:07:13,033 --> 00:07:15,035 (屏風のぞき)ひどいよ! あたしは これでも➡ 93 00:07:15,035 --> 00:07:18,038 今まで 若だんなのために 尽くしてきたのに。 94 00:07:18,038 --> 00:07:20,040 ごめん! 怒らないでおくれな。 95 00:07:20,040 --> 00:07:23,043 こんなに効くとは 思わなかったんだよ。 96 00:07:23,043 --> 00:07:25,045 (佐助・仁吉)フフフ…。 97 00:07:25,045 --> 00:07:27,047 そういえば…。 98 00:07:27,047 --> 00:07:30,016 鳴家たちの姿もないね。 99 00:07:31,985 --> 00:07:34,988 護符を貼るのは やはり 昌平橋から➡ 100 00:07:34,988 --> 00:07:38,992 不忍池に向かう道がいいかしらね。 101 00:07:38,992 --> 00:07:42,996 なりそこないは 今まで 返魂香の香りに釣られて➡ 102 00:07:42,996 --> 00:07:48,001 通町をうろついていた。 被害者も ここの人が多い。 103 00:07:48,001 --> 00:07:52,005 まずは そこを 護符で封じて あいつを遠ざけようと思う。 104 00:07:52,005 --> 00:07:56,676 争い事になるとしたら なるべく 人も家も少ない所がいいですね。 105 00:07:56,676 --> 00:07:58,345 うん。 106 00:07:58,345 --> 00:08:00,013 いったん 長崎屋付近に➡ 107 00:08:00,013 --> 00:08:02,015 近づけないように しておいてから➡ 108 00:08:02,015 --> 00:08:06,019 そこから わざわざ 私が離れた所へ向かう。 109 00:08:06,019 --> 00:08:07,687 そうすれば なりそこないは➡ 110 00:08:07,687 --> 00:08:11,024 返魂香の香りに誘われて 後をついてくるはずだよ。 111 00:08:11,024 --> 00:08:14,027 (仁吉)場所は 上野の東叡山と お考えですか? 112 00:08:14,027 --> 00:08:16,029 ああ。 113 00:08:16,029 --> 00:08:20,033 江戸は どこでも 町屋や 武家屋敷が広がっているからね。 114 00:08:20,033 --> 00:08:22,035 なりそこないが 暴れてもいいような所は➡ 115 00:08:22,035 --> 00:08:24,037 そうそうない。 116 00:08:24,037 --> 00:08:26,039 通町からは かなり離れているが➡ 117 00:08:26,039 --> 00:08:30,043 あそこの境内なら 広さは 申し分ないと思う。 118 00:08:30,043 --> 00:08:32,045 それに 上野には➡ 119 00:08:32,045 --> 00:08:34,047 寛朝さまも寿真さまも いらっしゃる。 120 00:08:34,047 --> 00:08:38,051 万が一 なりそこないが 私の手に負えなかったときには➡ 121 00:08:38,051 --> 00:08:40,053 封じてもらえるかもしれない。 122 00:08:40,053 --> 00:08:45,058 まずは 護符に 25両分 効いてほしいですね。 123 00:08:45,058 --> 00:08:47,060 元手は とりたいところで。 124 00:08:47,060 --> 00:08:51,064 さっき 見ただろう。 じゅうぶんに 効き目はあるよ。 125 00:08:51,064 --> 00:08:52,732 あとは➡ 126 00:08:52,732 --> 00:08:55,068 なりそこないを おびき出す香りを どうにかしないとね。 127 00:08:55,068 --> 00:08:58,071 偽の返魂香が必要なんだが➡ 128 00:08:58,071 --> 00:09:02,075 香り自体が どんなものなのか 私には さっぱり…。 129 00:09:02,075 --> 00:09:05,044 ⚟その香りなら 何とかなりますよ。 130 00:09:07,080 --> 00:09:09,082 (仁吉)入れ。 131 00:09:09,082 --> 00:09:12,085 うっ! 132 00:09:12,085 --> 00:09:15,088 ああ… すまないねぇ。 133 00:09:15,088 --> 00:09:19,092 あんたたち よく 平気だな。 (佐助)格が違うからな。 134 00:09:19,092 --> 00:09:23,096 それで 返魂香の香りが 何とかなるというのは➡ 135 00:09:23,096 --> 00:09:26,099 どういうことなんだい? 136 00:09:26,099 --> 00:09:29,102 昔 おたえさまが たき上げて➡ 137 00:09:29,102 --> 00:09:32,038 煙をお吸いになった あの高貴な薬は➡ 138 00:09:32,038 --> 00:09:35,041 小さな薄桃色の紙で 包まれておりまして…。➡ 139 00:09:35,041 --> 00:09:37,377 おたえさまは 今度こそ➡ 140 00:09:37,377 --> 00:09:40,046 お子が 無事に生まれるように 強く願われて➡ 141 00:09:40,046 --> 00:09:43,049 返魂香を包んでいた薄紙を➡ 142 00:09:43,049 --> 00:09:48,054 他の供物と一緒に 稲荷神社に奉ったのです。 143 00:09:48,054 --> 00:09:52,058 あの紙ならば 香りが 強く残っているかもしれません。➡ 144 00:09:52,058 --> 00:09:55,061 わずかな香りのくずさえ ついていても おかしくない。 145 00:09:55,061 --> 00:09:59,065 それなら きっと使えるよ。 若だんな 早速 見てみましょう。 146 00:09:59,065 --> 00:10:01,034 ああ。 147 00:10:06,072 --> 00:10:10,076 何だか 泥棒にでも入りに行く気分だよ。 148 00:10:10,076 --> 00:10:15,081 人殺しと対決しているはずなのに いにしえの英雄豪傑とは➡ 149 00:10:15,081 --> 00:10:18,084 ずいぶん やっていることが 違う気がするんだけどね。 150 00:10:18,084 --> 00:10:20,086 (佐助・仁吉)フフフ…。 151 00:10:20,086 --> 00:10:22,088 仕方ありませんよ。 152 00:10:22,088 --> 00:10:25,091 あたしらは あきんど。 武士とは違います。 153 00:10:25,091 --> 00:10:26,759 仕事も日々のことも➡ 154 00:10:26,759 --> 00:10:29,095 放っておくわけには いかないですからね。 155 00:10:29,095 --> 00:10:35,034 船荷を仕分けて 薬を調合する間に 血にまみれた妖を倒すんですよ。 156 00:10:35,034 --> 00:10:39,005 気分が乗らない話だよ まったく。 157 00:10:46,045 --> 00:10:51,050 (仁吉)おたえさまが 毎日きちっと お供えをなさっているから…。➡ 158 00:10:51,050 --> 00:10:53,019 失礼いたします。 159 00:10:56,055 --> 00:10:58,057 あっ…。 160 00:10:58,057 --> 00:11:00,059 (嗅ぐ音) 161 00:11:00,059 --> 00:11:05,064 甘い香り…。 なるほど。 これが 返魂香の香りか。 162 00:11:05,064 --> 00:11:07,066 不思議だね。 163 00:11:07,066 --> 00:11:11,037 ほこりも かぶってないし 色も あせていないね。 164 00:11:16,075 --> 00:11:18,077 あぁ…。 165 00:11:18,077 --> 00:11:22,081 若だんな 大丈夫ですか? ああ…。 166 00:11:22,081 --> 00:11:26,085 私から こんな香りがしたことが あったのかね? 167 00:11:26,085 --> 00:11:29,088 いつも おそばにいますんで あらためて 言われても…。 168 00:11:29,088 --> 00:11:31,024 そうか。 169 00:11:31,024 --> 00:11:35,028 さあ これをお借りするお礼に ほこらを お清めして➡ 170 00:11:35,028 --> 00:11:39,032 今夜は もう お休みにならないと。 そうだね。 171 00:11:39,032 --> 00:11:51,044 ♬~ 172 00:11:51,044 --> 00:11:53,046 《おばあさま➡ 173 00:11:53,046 --> 00:11:56,049 何とぞ この一件を 乗り越えられますように➡ 174 00:11:56,049 --> 00:11:58,017 お見守りください》 175 00:12:27,013 --> 00:12:30,016 仁吉 店から 薬研と茶臼➡ 176 00:12:30,016 --> 00:12:31,951 それに はかりを 持ってきておくれでないか。 177 00:12:31,951 --> 00:12:34,954 若だんな もう 五つを過ぎていますよ。 178 00:12:34,954 --> 00:12:36,956 今日は 寝てくださいまし。 179 00:12:36,956 --> 00:12:38,958 精いっぱい やっておかないと➡ 180 00:12:38,958 --> 00:12:42,962 もし うまく いかなかったときに 諦めがつかない。 181 00:12:42,962 --> 00:12:44,964 もう少し見逃しておくれ。 182 00:12:44,964 --> 00:12:48,935 分かりました。 ちょっと待っていてください。 183 00:12:51,971 --> 00:12:54,974 佐助。 はい。 184 00:12:54,974 --> 00:12:57,977 何か 心にかかるものが あるのかい? 185 00:12:57,977 --> 00:13:00,980 話しておくれでないか。 186 00:13:00,980 --> 00:13:04,984 参りましたね。 若だんなには お見通しなんですね。 187 00:13:04,984 --> 00:13:07,987 いや 何となくだよ。 188 00:13:07,987 --> 00:13:09,989 (佐助)いえね➡ 189 00:13:09,989 --> 00:13:13,993 こうして 若だんなと あたしらが いよいよ なりそこないと➡ 190 00:13:13,993 --> 00:13:18,998 対決するということになりますと 私は心配で しかたがないんです。 191 00:13:18,998 --> 00:13:24,003 ちゃんと 若だんなを お守りできるだろうかって。 192 00:13:24,003 --> 00:13:28,007 私は 以前 大変なしくじりを しでかしてるんで。 193 00:13:28,007 --> 00:13:31,944 えっ? もう ずっと前のことです。 194 00:13:31,944 --> 00:13:36,949 そのとき 私は とある方のおそばにいたのですが。 195 00:13:36,949 --> 00:13:38,618 (佐助)私は その方を➡ 196 00:13:38,618 --> 00:13:41,954 お守りすることが できなかったんです。 197 00:13:41,954 --> 00:13:45,958 だから つい そのことを 思い出しちまうんです。 198 00:13:45,958 --> 00:13:48,961 もし また…。 199 00:13:48,961 --> 00:13:50,963 佐助。 200 00:13:50,963 --> 00:13:55,935 お前が そばにいてくれるだけで 私は ずいぶんと心強いんだよ。 201 00:13:58,971 --> 00:14:00,973 そうですね。 202 00:14:00,973 --> 00:14:04,977 昔の失敗事なぞ こんなときに 考えてちゃいけませんね。 203 00:14:04,977 --> 00:14:06,979 せっかく おぎんさまが➡ 204 00:14:06,979 --> 00:14:10,983 私に与えてくださった 居場所なんですから。 205 00:14:10,983 --> 00:14:12,985 何としても…。 206 00:14:12,985 --> 00:14:17,990 そういえば 佐助は どうやって おばあさまと 縁ができたんだい? 207 00:14:17,990 --> 00:14:22,995 初めてお会いしたのは 今から500年ほど前のことです。 208 00:14:22,995 --> 00:14:26,999 それまでの私は 住まう場所もなく 行く当てもなく➡ 209 00:14:26,999 --> 00:14:30,937 ただただ さまよい歩いておりました。➡ 210 00:14:30,937 --> 00:14:35,942 旅の途中 ケガをした仁吉を抱えて お困りのおぎんさまを➡ 211 00:14:35,942 --> 00:14:37,910 お助けしたのが 出会いです。 212 00:14:40,947 --> 00:14:42,949 そのとき お礼にと➡ 213 00:14:42,949 --> 00:14:45,952 私は おぎんさまから 「佐助」という名を頂き➡ 214 00:14:45,952 --> 00:14:47,954 ある約束を交わしたんです。 215 00:14:47,954 --> 00:14:49,956 約束? はい。 216 00:14:49,956 --> 00:14:53,960 いつか 私が 心の底から欲しいものを➡ 217 00:14:53,960 --> 00:14:56,963 おぎんさまが渡してくださると。 218 00:14:56,963 --> 00:15:00,967 それから 月日は流れ おそばにいた方を亡くして…。 219 00:15:00,967 --> 00:15:06,973 長い間 当てのない旅をしておりました。 220 00:15:06,973 --> 00:15:10,977 (佐助) 《おぎんさん… ですよね?》 221 00:15:10,977 --> 00:15:15,982 《あなたは 今も 佐助と名乗っているのね》 222 00:15:15,982 --> 00:15:18,985 《前に 私は あなたと約束をした》 223 00:15:18,985 --> 00:15:21,988 《ずいぶん 時間がかかってしまったけれど➡ 224 00:15:21,988 --> 00:15:25,992 ようよう それを果たす時がきたのよ》 225 00:15:25,992 --> 00:15:27,994 《それで 佐助さん➡ 226 00:15:27,994 --> 00:15:31,998 これから 私が渡すものが何か 分かってる?》 227 00:15:31,998 --> 00:15:37,003 《俺は 間違いなく 心から 今 喜んでいるよ》 228 00:15:37,003 --> 00:15:40,006 《だってさ 誰からも 名を呼ばれないまま➡ 229 00:15:40,006 --> 00:15:43,009 消えてしまうのかと 思っていたんだ》 230 00:15:43,009 --> 00:15:48,014 《こんなに長い間 俺のこと 忘れずにいてくれて 礼を言うよ》 231 00:15:48,014 --> 00:15:51,017 《あらまっ 外れだ》 232 00:15:51,017 --> 00:15:53,019 《はっ? 違うんですか?》 233 00:15:53,019 --> 00:15:56,022 《実は 間もなく 私に 孫ができるの》 234 00:15:56,022 --> 00:15:58,024 《それでね➡ 235 00:15:58,024 --> 00:16:03,029 その子を 一生 守ってくれる妖を 孫のそばに置くことにしたの》 236 00:16:03,029 --> 00:16:07,033 《その役目を あのとき あなたが救ってくれた➡ 237 00:16:07,033 --> 00:16:11,037 仁吉に頼むつもりなんだけど 一人では不安だと思うのよ》 238 00:16:11,037 --> 00:16:14,040 《はぁ…》 (おぎん)《だからね 佐助さん➡ 239 00:16:14,040 --> 00:16:17,043 あなたにも その役目を お願いできないかしら》 240 00:16:17,043 --> 00:16:19,045 《俺が 子守を?》 241 00:16:19,045 --> 00:16:22,048 《何で 一番 欲しいものが それになるんですか?》 242 00:16:22,048 --> 00:16:25,051 《だって 佐助さん 長崎屋に来れば➡ 243 00:16:25,051 --> 00:16:29,055 お前さんは あれこれ見つけられるんだもの》 244 00:16:29,055 --> 00:16:30,990 《居場所よ》 245 00:16:30,990 --> 00:16:35,995 《私の孫は きっと お前さんに すごく懐くわ》 246 00:16:35,995 --> 00:16:39,999 《そしたら とても大事な相手を 持てると思うの》 247 00:16:39,999 --> 00:16:41,667 《ですが…》 248 00:16:41,667 --> 00:16:44,003 《旅を続けていた佐助さんが➡ 249 00:16:44,003 --> 00:16:49,008 この長崎屋で 大勢の中で暮らせば きっと 煩わしいこともあるわ》 250 00:16:49,008 --> 00:16:55,014 《でも そういうものを含めて 並の暮らしも悪くないと思うの》 251 00:16:55,014 --> 00:16:57,016 (おぎん)《平凡ってものは➡ 252 00:16:57,016 --> 00:17:01,020 私にとって そう簡単に 得られるものじゃなかった》 253 00:17:01,020 --> 00:17:07,994 《だから こういう暮らし 佐助さんも喜んでくれると思って》 254 00:17:11,030 --> 00:17:14,033 《分かりました》➡ 255 00:17:14,033 --> 00:17:16,002 《よろしく お願いします》 256 00:17:18,037 --> 00:17:21,040 《フッ》 257 00:17:21,040 --> 00:17:23,042 (佐助)500年の果てに➡ 258 00:17:23,042 --> 00:17:27,046 この居場所を おぎんさまは 佐助に与えてくださったのです。 259 00:17:27,046 --> 00:17:30,049 ⚟そうだったの…。 260 00:17:30,049 --> 00:17:33,986 若だんな 持ってきましたよ。 261 00:17:33,986 --> 00:17:35,988 よく分かったよ。 262 00:17:35,988 --> 00:17:37,990 結局 佐助も仁吉も➡ 263 00:17:37,990 --> 00:17:40,993 おばあさまには 頭が上がらないってことがね。 264 00:17:40,993 --> 00:17:44,997 それは…。 (佐助)まあ そうですが…。 265 00:17:44,997 --> 00:17:46,999 確かに 私も仁吉も➡ 266 00:17:46,999 --> 00:17:52,004 当初は おぎんさまに命じられて ここに参りました。 267 00:17:52,004 --> 00:17:56,676 ですが 今は この居場所で 若だんなをお守りすることが➡ 268 00:17:56,676 --> 00:18:00,012 己の役目だと 自ら思っているのです。 269 00:18:00,012 --> 00:18:01,981 それは 私も同じです。 270 00:18:07,019 --> 00:18:09,021 分かっているよ。 271 00:18:09,021 --> 00:18:15,027 分かったから… 2人とも 顔を上げておくれ。 272 00:18:15,027 --> 00:18:34,981 ♬~ 273 00:18:34,981 --> 00:18:37,984 ♬~ 274 00:18:37,984 --> 00:18:41,988 (与吉)ですから もう 松之助は ここにはいやしないんですよ。 275 00:18:41,988 --> 00:18:44,991 おらぬと? (与吉)ええ。 276 00:18:44,991 --> 00:18:47,994 いとまをもらうと言ったきり 出ていっちまったんですよ。 277 00:18:47,994 --> 00:18:51,998 あの恩知らずに いったい 何のご用で? 278 00:18:51,998 --> 00:18:55,001 それは 誠か? 279 00:18:55,001 --> 00:18:57,336 嘘なんか言っても 仕方ないじゃあないです…。 280 00:18:57,336 --> 00:18:59,005 うっ! 281 00:18:59,005 --> 00:19:00,973 (与吉)何をするんだい!? 282 00:19:05,011 --> 00:19:08,014 (佐助)若だんな。 283 00:19:08,014 --> 00:19:11,017 寝る時間を削って 何を作ってるんです? 284 00:19:11,017 --> 00:19:13,019 薬だよ。 285 00:19:13,019 --> 00:19:17,023 実はね あの薄桃色の包みの中に➡ 286 00:19:17,023 --> 00:19:21,027 返魂香と見せかけた薬を 1つ 入れておこうと思って。 287 00:19:21,027 --> 00:19:24,030 その方が いかにも 本物があるみたいで➡ 288 00:19:24,030 --> 00:19:26,032 なりそこないを おびき出しやすいだろう。 289 00:19:26,032 --> 00:19:28,034 まさか その中に➡ 290 00:19:28,034 --> 00:19:30,970 毒を仕込もうなんて 考えてないですよね。 291 00:19:30,970 --> 00:19:33,973 そいつで 相手を倒そうなんて。 292 00:19:33,973 --> 00:19:36,976 やっぱり 効かないと思うかい? 293 00:19:36,976 --> 00:19:39,979 妖に効く毒がないとは 言いませんが➡ 294 00:19:39,979 --> 00:19:41,981 それぞれに違うんです。 295 00:19:41,981 --> 00:19:44,984 よく知りもしない妖を 毒で仕留めることは➡ 296 00:19:44,984 --> 00:19:46,986 ひどく難しい。 297 00:19:46,986 --> 00:19:48,988 ハァ…。 298 00:19:48,988 --> 00:19:53,959 けど まあ 偽返魂香の体裁は整えないとね。 299 00:19:59,999 --> 00:20:02,001 これでよし。 300 00:20:02,001 --> 00:20:04,003 (障子の開く音) (仁吉)まだ なさってたんですか? 301 00:20:04,003 --> 00:20:06,005 そろそろ 四つ近くになります。 302 00:20:06,005 --> 00:20:11,010 お願いですから お休みになっていただかないと。 303 00:20:11,010 --> 00:20:15,014 これじゃ 上野に行く前に 寝込んでしまう。 304 00:20:15,014 --> 00:20:17,016 格好悪いねぇ。 305 00:20:17,016 --> 00:20:21,020 鬼退治に行く武将は疲れたからって 寝込んだりしないものだよ。 306 00:20:21,020 --> 00:20:24,023 寝ようが休もうが 勝てばいいんですよ。 307 00:20:24,023 --> 00:20:26,025 勝負ですから。 308 00:20:26,025 --> 00:20:28,994 佐助は あきんどだねぇ。 309 00:20:30,963 --> 00:20:33,933 では…。 (2人)おやすみなさい。 310 00:20:36,969 --> 00:20:39,972 《護符を貼って回って 今日で 3日目》 311 00:20:39,972 --> 00:20:43,976 《通町は ほぼ封じることができたはず》 312 00:20:43,976 --> 00:20:47,947 《早くに終わらせないと それこそ 寝込みかねないな…》 313 00:20:50,983 --> 00:20:52,985 ⚟(走る足音) 314 00:20:52,985 --> 00:20:55,988 んっ…。 315 00:20:55,988 --> 00:20:58,991 佐助? 仁吉? 316 00:20:58,991 --> 00:21:02,995 (ざわめき) 317 00:21:02,995 --> 00:21:04,964 ⚟(佐助)若だんな。 318 00:21:06,999 --> 00:21:10,002 もう起きたんですか? 何があったの? 319 00:21:10,002 --> 00:21:12,004 ⚟(半鐘の音) 火事か。 320 00:21:12,004 --> 00:21:15,007 つき方が一つだから 近くはないね。 321 00:21:15,007 --> 00:21:17,009 どこいら辺か分かるかい? 322 00:21:17,009 --> 00:21:20,012 北の方角ですが はっきりとは まだ。 323 00:21:20,012 --> 00:21:21,680 北? 324 00:21:21,680 --> 00:21:24,016 (佐助)とにかく そのなりでは 風邪をひきます。➡ 325 00:21:24,016 --> 00:21:27,019 着替えてくださいまし。 326 00:21:27,019 --> 00:21:30,956 火元は かなり 北の方。 加州様の辺りのようです。 327 00:21:30,956 --> 00:21:34,960 風は東寄りですから 今のところ 火は お堀を越えて➡ 328 00:21:34,960 --> 00:21:37,963 こちらの方角に 来ることはないでしょう。 329 00:21:37,963 --> 00:21:40,966 加州様? 330 00:21:40,966 --> 00:21:43,969 どうなさったんです? 331 00:21:43,969 --> 00:21:48,974 松之助兄さんの奉公先が あの辺りだよ。 332 00:21:48,974 --> 00:21:51,977 (半鐘の音) 333 00:21:51,977 --> 00:21:54,980 (半鐘の音) (ざわめき) 334 00:21:54,980 --> 00:22:04,957 ♬~