1 00:00:06,039 --> 00:00:09,042 (半鐘の音) 2 00:00:09,042 --> 00:00:12,045 (客)火元は どこだい? (客)不忍池辺りか。 3 00:00:12,045 --> 00:00:14,047 いや 加州の屋敷らしいぞ。 4 00:00:14,047 --> 00:00:17,017 えっ… まさか…。 5 00:00:20,053 --> 00:00:23,056 (藤兵衛)用心は続けておくれ。 6 00:00:23,056 --> 00:00:25,726 このまま起きて 仕事にかかるか。 7 00:00:25,726 --> 00:00:27,694 あっ。 8 00:00:29,730 --> 00:00:33,066 (仁吉)若だんな。 松之助さんのことは➡ 9 00:00:33,066 --> 00:00:35,068 妖たちに捜させますので。 10 00:00:35,068 --> 00:00:40,040 まだ 寝足りないでしょう。 寝間に戻っても大丈夫ですよ。 11 00:00:42,075 --> 00:00:52,052 ♬~ 12 00:02:28,048 --> 00:02:30,984 ⚟(佐助)何をしておいでです? 13 00:02:30,984 --> 00:02:33,987 寝ないんですか? 14 00:02:33,987 --> 00:02:37,991 (一太郎) 2人とも ちょっといいかい? 15 00:02:37,991 --> 00:02:41,995 あのね 私は この火事が不安なんだよ。 16 00:02:41,995 --> 00:02:43,997 不安… とは? 17 00:02:43,997 --> 00:02:48,001 今 通町は 護符で封じられている。 18 00:02:48,001 --> 00:02:51,004 そして 昨日の夜 この店から➡ 19 00:02:51,004 --> 00:02:54,007 強い返魂香の香りが したはずだよ。 20 00:02:54,007 --> 00:02:57,010 百里四方に届くといわれた 霊香だ。 21 00:02:57,010 --> 00:02:59,012 なりそこないの鼻にも 届いただろう。 22 00:02:59,012 --> 00:03:02,015 そうかもしれませんが…。 23 00:03:02,015 --> 00:03:04,017 あいつは どうしても 香を手に入れたいと➡ 24 00:03:04,017 --> 00:03:06,019 思っているはずだ。 25 00:03:06,019 --> 00:03:10,023 でも この店の近くにも 来られなかった。 26 00:03:10,023 --> 00:03:13,026 そこで いったいどうしたと思う? 27 00:03:13,026 --> 00:03:15,028 若だんなは なりそこないが➡ 28 00:03:15,028 --> 00:03:19,032 この火事に関係していると 思っておいでなんですか? 29 00:03:19,032 --> 00:03:21,034 うん。 30 00:03:21,034 --> 00:03:24,037 覚えているだろう? 栄吉が襲われたとき➡ 31 00:03:24,037 --> 00:03:27,040 私が書いた書き付けを 盗まれているんだ。 32 00:03:27,040 --> 00:03:31,978 松之助兄さんの名と奉公先の店が 書いてあった。 33 00:03:31,978 --> 00:03:34,981 弟の私よりと 添え書きをしたよ。 34 00:03:34,981 --> 00:03:36,983 この店に近寄れないので➡ 35 00:03:36,983 --> 00:03:41,988 おけ屋の近くで火を出して 松之助さんを襲ったと? 36 00:03:41,988 --> 00:03:45,992 なりそこないに 火をおこす力が あるとは思えませんが。 37 00:03:45,992 --> 00:03:47,994 あいつは 人に取りつけるだろう。 38 00:03:47,994 --> 00:03:50,997 ついたやつに 付け火させればいい話だ。 39 00:03:50,997 --> 00:03:54,000 どうして おけ屋に行ったと思うんです? 40 00:03:54,000 --> 00:03:56,002 そっちに香はないでしょうが。 41 00:03:56,002 --> 00:03:59,005 おそらく 香を持っているはずの私を➡ 42 00:03:59,005 --> 00:04:03,009 店から離して 北へ引き寄せる腹積もりだろう。 43 00:04:03,009 --> 00:04:06,012 兄を心配して 結界から出てくる…。 44 00:04:06,012 --> 00:04:08,014 と 踏んでいるのかもしれない。 45 00:04:08,014 --> 00:04:10,016 冗談ではありませんよ。 46 00:04:10,016 --> 00:04:12,018 わざわざ 火事のさなかに行くなんて➡ 47 00:04:12,018 --> 00:04:14,020 死にに出掛けるようなもんです! 48 00:04:14,020 --> 00:04:17,023 絶対に許しませんからね! 49 00:04:17,023 --> 00:04:21,027 じゃあ 火事も こちらには来ないようだし➡ 50 00:04:21,027 --> 00:04:23,029 離れで おとなしくしていようか。 51 00:04:23,029 --> 00:04:25,031 やけに素直ですね。 52 00:04:25,031 --> 00:04:29,035 私が北に行かなければ なりそこないは怒って➡ 53 00:04:29,035 --> 00:04:31,972 いっそう 火を広げるかもしれない。 54 00:04:31,972 --> 00:04:34,975 大勢 人が死ぬだろうね。 55 00:04:34,975 --> 00:04:38,979 その間 私は ここで ぬくぬくと過ごすことにする。 56 00:04:38,979 --> 00:04:41,982 そうしたら どうなる? 57 00:04:41,982 --> 00:04:44,985 見越の入道さまは 私を さっさと➡ 58 00:04:44,985 --> 00:04:47,954 おばあさまの所に 連れていくと思うね。 59 00:04:49,990 --> 00:04:53,994 私を 人の世に残しておくと 人が死ぬ。 60 00:04:53,994 --> 00:04:55,996 放っておけるわけがなかろう? 61 00:04:55,996 --> 00:04:57,998 それは…。 62 00:04:57,998 --> 00:05:02,002 己だけ安全でいることは できないんだよ。 63 00:05:02,002 --> 00:05:07,007 腹を決めて なりそこないを葬るしかないのさ。 64 00:05:07,007 --> 00:05:13,013 お前たちには どうしても 一緒に来てもらう必要があるんだ。 65 00:05:13,013 --> 00:05:17,017 昨日も夜が遅かったし 若だんなは お疲れでしょうに。 66 00:05:17,017 --> 00:05:19,019 大丈夫だよ。 67 00:05:19,019 --> 00:05:23,023 上野に仕掛けておいた護符は 無駄になりますね。 68 00:05:23,023 --> 00:05:25,025 護符の所に追い込んで➡ 69 00:05:25,025 --> 00:05:27,027 あたしと仁吉で 退治するという案は➡ 70 00:05:27,027 --> 00:05:30,030 もう使えない。 おびき出すつもりが➡ 71 00:05:30,030 --> 00:05:33,967 誘い出されているのだから 参ったよね。 72 00:05:33,967 --> 00:05:35,969 まだ 護符は残っている。 73 00:05:35,969 --> 00:05:39,973 これで動きを止めて 守り刀で仕留めるしかない。 74 00:05:39,973 --> 00:05:42,976 (2人)うん。 75 00:05:42,976 --> 00:05:45,979 ただ 一つ気掛かりなことが あるんだよ。 76 00:05:45,979 --> 00:05:47,981 何です? 77 00:05:47,981 --> 00:05:51,985 ついてる人間から なりそこないを 引き剥がす方法が分からない。 78 00:05:51,985 --> 00:05:56,990 そんなことですか。 何 こう言っちゃなんですが➡ 79 00:05:56,990 --> 00:05:58,992 火事場でなら 死人も目立ちませんよ。 80 00:05:58,992 --> 00:06:00,994 冗談じゃない! えぇ…。 81 00:06:00,994 --> 00:06:03,997 何とか 殺さずに済ましておくれ。 82 00:06:03,997 --> 00:06:05,999 分かりました。➡ 83 00:06:05,999 --> 00:06:11,004 行くと決まったなら 暗いうちに店を出ましょう。 84 00:06:11,004 --> 00:06:15,008 (かごかきたち)えっほ えっほ…。 85 00:06:15,008 --> 00:06:17,010 ハァ ハァ ハァ…。 86 00:06:17,010 --> 00:06:20,013 (松之助) 《東屋はどうなったろうか…》➡ 87 00:06:20,013 --> 00:06:23,016 《まずい… 風が強い…》 88 00:06:23,016 --> 00:06:29,022 (半鐘の音) 89 00:06:29,022 --> 00:06:31,958 ここで 火を食い止めるぞ! 90 00:06:31,958 --> 00:06:36,529 (半鐘の音) 91 00:06:39,966 --> 00:06:45,972 (人々の話し声) 92 00:06:45,972 --> 00:06:49,976 これは… この先 かごは無理だね。 93 00:06:49,976 --> 00:06:51,978 歩くしかないでしょう。 94 00:06:51,978 --> 00:06:55,982 本当に 昌平橋の向こうに 行きなさるんで? 95 00:06:55,982 --> 00:06:57,984 危のうございますよ。 96 00:06:57,984 --> 00:06:59,953 ありがとう。 気を付けるよ。 97 00:07:07,994 --> 00:07:09,963 行こう。 98 00:07:14,000 --> 00:07:16,002 ハァ ハァ ハァ…。 99 00:07:16,002 --> 00:07:19,005 ハッ…。 100 00:07:19,005 --> 00:07:21,007 与吉! (おみち)兄さん! 101 00:07:21,007 --> 00:07:23,009 (お染)与吉! (半右衛門)与吉! 102 00:07:23,009 --> 00:07:25,011 与吉! ゴホッ ゴホッ ゴホッ…。 103 00:07:25,011 --> 00:07:27,013 女将さん! (お染)松之助…。 104 00:07:27,013 --> 00:07:29,015 (おみち) 勝手に出ていったくせに! 105 00:07:29,015 --> 00:07:32,952 いまさら 何しに戻ってきたんだい! 106 00:07:32,952 --> 00:07:36,957 いいところに来てくれた。 与吉を捜しておくれな。 107 00:07:36,957 --> 00:07:39,959 こんな朝早くだっていうのに 姿が見えないんだよ。 108 00:07:39,959 --> 00:07:41,962 与吉さんが? 109 00:07:41,962 --> 00:07:45,966 逃げ遅れたのかもしれない。 早く捜しておくれ。 110 00:07:45,966 --> 00:07:48,935 ハッ… 行って! 屋根が落ちます! 111 00:07:56,976 --> 00:07:58,645 (松之助)《与吉さん どこへ行きなすった…》➡ 112 00:07:58,645 --> 00:08:02,983 《それとも 一人 先に逃げたか…》 113 00:08:02,983 --> 00:08:05,986 (松之助)番頭さん! (徳次郎)松之助じゃないか。 114 00:08:05,986 --> 00:08:07,988 来ていたのかい。 115 00:08:07,988 --> 00:08:09,990 (松之助)何をしているんです! 早く逃げないと! 116 00:08:09,990 --> 00:08:12,993 算用帳とか注文帳とか 焼いちゃならないものが➡ 117 00:08:12,993 --> 00:08:15,995 店に たんとあるんだ! (松之助)店は丸焼けで➡ 118 00:08:15,995 --> 00:08:19,100 帳面どころじゃないですよ! とにかく 風上へ逃げましょう! 119 00:08:19,100 --> 00:08:23,002 放せ! 大事なものが焼けてしまう! 120 00:08:23,002 --> 00:08:27,007 番頭さんさえ無事なら 店は きっとやり直せます! 121 00:08:27,007 --> 00:08:29,009 (松之助・徳次郎)ゲホッ ゲホッ…。 122 00:08:29,009 --> 00:08:31,010 (徳次郎)ゲホッ ゲホッ…。 123 00:08:31,010 --> 00:08:34,981 危ないところだった…。 ケガはありませんか? 124 00:08:37,016 --> 00:08:40,019 番頭さん! 行っては駄目だ!➡ 125 00:08:40,019 --> 00:08:42,021 もう 火が回っている! 126 00:08:42,021 --> 00:08:46,025 荷物が部屋にあるんだ! あたしの全財産が…。 127 00:08:46,025 --> 00:08:48,028 命の方が大事ですよ! 128 00:08:48,028 --> 00:08:52,999 今 何もかもなくしたら 命を失うのと変わりゃしない! 129 00:09:00,039 --> 00:09:02,008 与吉さん…。 130 00:09:06,045 --> 00:09:14,053 (泣き声) 131 00:09:14,053 --> 00:09:17,023 若だんな 大丈夫ですか? 132 00:09:25,064 --> 00:09:31,004 《この人らは もう 死んでいるのかもしれない》 133 00:09:31,004 --> 00:09:32,972 あれが 加州様だろうか。 134 00:09:36,009 --> 00:09:39,012 (佐助)見事に焼け落ちていますね。 135 00:09:39,012 --> 00:09:42,982 たぶん この辺りに おけ屋があったはずなんだけど…。 136 00:09:46,019 --> 00:09:48,021 何の目印もなしか…。 137 00:09:48,021 --> 00:09:49,989 (佐助)ぼっちゃん! 138 00:09:52,025 --> 00:09:56,029 あっ…。 ありがとうよ 佐助。 139 00:09:56,029 --> 00:09:59,032 これは 残り火のせいじゃありません。➡ 140 00:09:59,032 --> 00:10:02,035 群れ鼬の仕業ですよ! 141 00:10:02,035 --> 00:10:05,038 ハッ…。 (群れ鼬の鳴き声) 142 00:10:05,038 --> 00:10:08,041 (仁吉)お気を付けになって! 143 00:10:08,041 --> 00:10:12,011 こいつら なりそこないの手の者なのかね。 144 00:10:14,047 --> 00:10:16,049 ⚟こんな所で…。 145 00:10:16,049 --> 00:10:20,019 (3人)あっ!? (与吉)何をしていなさるんで? 146 00:10:46,045 --> 00:10:48,047 どなたですか? 147 00:10:48,047 --> 00:10:53,052 東屋の跡取り 与吉と申します。 148 00:10:53,052 --> 00:10:57,056 《この人が 松之助兄さんのところの…》 149 00:10:57,056 --> 00:11:00,059 群れ鼬は 火事場が好きなんです。 150 00:11:00,059 --> 00:11:04,063 特に大きな火が好きだ。➡ 151 00:11:04,063 --> 00:11:08,067 こいつらはね 焼け死んだ人間の魂を食らって➡ 152 00:11:08,067 --> 00:11:14,073 さらに強くなる妖だそうです。 面白いでしょう? 153 00:11:14,073 --> 00:11:18,077 お前さん 墨壺だね。 154 00:11:18,077 --> 00:11:20,079 (与吉)よく分かったな。 155 00:11:20,079 --> 00:11:23,082 こんな場所で 落ち着いて話しているからには➡ 156 00:11:23,082 --> 00:11:25,084 考えられることは一つだよ。 157 00:11:25,084 --> 00:11:28,087 (与吉)やっぱり来たか。 158 00:11:28,087 --> 00:11:30,089 松之助兄さんは どこ? 159 00:11:30,089 --> 00:11:33,026 さあ 覚えていないね。 160 00:11:33,026 --> 00:11:37,030 殺した場所など いちいち思い出せないたちなんで。 161 00:11:37,030 --> 00:11:41,034 ハッ… 殺したの? なぜ? 162 00:11:41,034 --> 00:11:44,037 俺に薬を渡さないからだよ。 163 00:11:44,037 --> 00:11:49,042 思い知らせてやらないと いけないからなぁ。 164 00:11:49,042 --> 00:11:52,011 この… なりそこないが…。 165 00:11:54,047 --> 00:11:58,051 俺は 墨壺と呼ばれるのが 好きなんだ。 166 00:11:58,051 --> 00:12:02,055 職人が凝りに凝って作った 美しい道具なんだ。➡ 167 00:12:02,055 --> 00:12:05,058 そんな名前で呼ぶんじゃない。 168 00:12:05,058 --> 00:12:09,062 おや なりそこないは そう呼ばれるのが嫌いなのか。 169 00:12:09,062 --> 00:12:14,033 俺は なりそこないなぞではない。 すぐ 付喪神になるのだ。 170 00:12:16,069 --> 00:12:19,072 薬をよこせ! (佐助)お前さん➡ 171 00:12:19,072 --> 00:12:22,075 本当に ただの なりそこないなんだねぇ。 172 00:12:22,075 --> 00:12:24,077 そんなもので われらに何をする気かえ? 173 00:12:24,077 --> 00:12:26,045 黙…。 174 00:12:28,081 --> 00:12:33,052 フン… こんなもので どうにかできると思ったか。 175 00:12:36,022 --> 00:12:40,026 ただじゃ済まさないよ。➡ 176 00:12:40,026 --> 00:12:45,031 若だんなに迷惑を掛けて ろくでもないやつだからね。 177 00:12:45,031 --> 00:12:46,100 佐助! 178 00:12:51,037 --> 00:13:07,053 ♬~ 179 00:13:07,053 --> 00:13:09,055 ううっ! ほうら こっちだ! 180 00:13:09,055 --> 00:13:12,058 チッ。 181 00:13:12,058 --> 00:13:14,060 《何をする気だい?》 182 00:13:14,060 --> 00:13:18,064 《佐助には 手も足も 出なさそうに見えるけど》 183 00:13:18,064 --> 00:13:20,066 捕まえてみろ。 184 00:13:20,066 --> 00:13:23,036 仁吉。 向こう側に回り込んで。 185 00:13:32,011 --> 00:13:36,015 さあ 与吉さんから 出てくるんだよ。 186 00:13:36,015 --> 00:13:39,018 もう逃げられやしないんだから。 187 00:13:39,018 --> 00:13:41,020 若だんなさんよ➡ 188 00:13:41,020 --> 00:13:44,023 これで俺に勝ったと 思ってるんだろうな。 189 00:13:44,023 --> 00:13:49,028 だが 俺は火事が好きなんだ。 気に入ったんだよ。➡ 190 00:13:49,028 --> 00:13:53,032 もっと おこそうかと 思ってるくらいだ。 191 00:13:53,032 --> 00:13:57,036 いや きっと大火事をおこす! 192 00:13:57,036 --> 00:13:59,038 こいつらを燃やしてしまいな! (群れ鼬の鳴き声) 193 00:13:59,038 --> 00:14:04,043 (与吉)礼に また 大火事をおこしてやるよ! 194 00:14:04,043 --> 00:14:07,046 まずい! 195 00:14:07,046 --> 00:14:09,048 (佐助・仁吉)若だんな! ハッ! 196 00:14:09,048 --> 00:14:13,019 (鳴き声) 197 00:14:15,054 --> 00:14:20,059 (佐助)あっ… ぐっ… くっ…。 198 00:14:20,059 --> 00:14:22,028 (仁吉)危ない! 199 00:14:27,066 --> 00:14:29,035 ハッ…。 200 00:14:33,005 --> 00:14:36,008 仁吉~!! 201 00:14:36,008 --> 00:14:39,011 佐助~!! 202 00:14:39,011 --> 00:14:41,013 (与吉)ヒャハハハ…! 203 00:14:41,013 --> 00:14:43,015 ざまあみろ! 204 00:14:43,015 --> 00:14:46,018 われこそは本物の妖と 威張り腐るからさ!➡ 205 00:14:46,018 --> 00:14:49,021 この炎の中では 生きていられまい! 206 00:14:49,021 --> 00:14:51,991 いい気味だ! 207 00:14:54,026 --> 00:14:57,029 (与吉)さあ 若だんな。 薬をよこしな。➡ 208 00:14:57,029 --> 00:15:03,002 あるんだろう? 香りがする。 分かるんだよ。 209 00:15:06,038 --> 00:15:10,042 お前 自分の欲しいものの名も 知らないのかい? 210 00:15:10,042 --> 00:15:12,044 何? 211 00:15:12,044 --> 00:15:15,047 この香りは返魂香っていうのさ。 212 00:15:15,047 --> 00:15:19,051 飲むんじゃない。 火を付けて その煙を嗅ぐんだ。 213 00:15:19,051 --> 00:15:21,020 (与吉)香か。 214 00:15:25,057 --> 00:15:27,026 出せ。 215 00:15:34,066 --> 00:15:37,069 (群れ鼬の鳴き声) 216 00:15:37,069 --> 00:15:40,072 何をする! 217 00:15:40,072 --> 00:15:42,074 くっ…。 218 00:15:42,074 --> 00:15:46,078 おとなしくしているかと思えば なめたことをして! 219 00:15:46,078 --> 00:15:51,083 無駄だ! あいつらは もう 燃えてしまっているさ!➡ 220 00:15:51,083 --> 00:15:53,085 香をよこせ! 221 00:15:53,085 --> 00:15:55,087 ギャアアア…! 222 00:15:55,087 --> 00:15:59,091 ハッ!? この上 何を持ってるんだ! 223 00:15:59,091 --> 00:16:03,095 効くねぇ 25両…。 224 00:16:03,095 --> 00:16:05,097 コホッ コホッ…。 225 00:16:05,097 --> 00:16:11,103 ねえ 火を付けて たくさんの命を奪ってまで➡ 226 00:16:11,103 --> 00:16:14,106 どうして こんな香が欲しいと 思ったのさ。 227 00:16:14,106 --> 00:16:17,109 そんなに付喪神になることが 大事かい? 228 00:16:17,109 --> 00:16:19,111 人に 何が分かる!➡ 229 00:16:19,111 --> 00:16:23,115 俺は もう ほとんど 付喪神になりかかっていたんだ!➡ 230 00:16:23,115 --> 00:16:25,117 つくられて100年近くがたち➡ 231 00:16:25,117 --> 00:16:28,120 力が集まってきているのが 分かった。➡ 232 00:16:28,120 --> 00:16:34,060 俺は意思を持ち 他の妖と 話をするようになっていた。 233 00:16:34,060 --> 00:16:36,062 それは まるで 笑いながら➡ 234 00:16:36,062 --> 00:16:39,065 宙に浮いているような 気持ちだったよ。➡ 235 00:16:39,065 --> 00:16:43,069 それなのに 一人のぼてふりの くだらぬ意趣返しによって➡ 236 00:16:43,069 --> 00:16:45,071 壊されてしまった。➡ 237 00:16:45,071 --> 00:16:49,075 手に入るはずだった力が 逃げていくのが分かる。➡ 238 00:16:49,075 --> 00:16:54,080 しゃべり 考える己の存在が 日々消えていくのが分かる。 239 00:16:54,080 --> 00:16:58,084 このままでは ただの大工道具に 戻ることすらできずに➡ 240 00:16:58,084 --> 00:17:00,086 捨てられる運命だ! 241 00:17:00,086 --> 00:17:04,090 それでも なぜ 人を切ったと問いたいよ。 242 00:17:04,090 --> 00:17:08,094 お前さん 長年 大工に 大事にされてきたんだろう? 243 00:17:08,094 --> 00:17:11,097 フッ… その揚げ句が このざまだ。 244 00:17:11,097 --> 00:17:14,100 いっそう たまらない味わいだ。 245 00:17:14,100 --> 00:17:19,105 自分の欲で人を刺したとき 後悔はなかったのかい? 246 00:17:19,105 --> 00:17:23,109 長い年月 人と共に 暮らしてきたんじゃないか。 247 00:17:23,109 --> 00:17:25,111 お前に言っても分からない。 248 00:17:25,111 --> 00:17:29,115 俺が どれほど 付喪神になることを夢見ていたか。 249 00:17:29,115 --> 00:17:33,052 どんなに この世から 消えたくないと願ってきたか! 250 00:17:33,052 --> 00:17:36,055 少しは分かるよ。 251 00:17:36,055 --> 00:17:42,061 私も ある意味では なりそこないだから。 252 00:17:42,061 --> 00:17:45,064 子供の頃から 自分は 大人になる前に➡ 253 00:17:45,064 --> 00:17:48,067 死ぬだろうと思ってきた。 254 00:17:48,067 --> 00:17:52,071 長崎屋も 私以外の誰かが継げばいい。 255 00:17:52,071 --> 00:17:57,076 自分などいない方が 親孝行だと思ったこともある。 256 00:17:57,076 --> 00:18:03,749 けれど 見越の入道さまと会って 自分にも欲があることに気付いた。 257 00:18:03,749 --> 00:18:09,088 結局は お前と同じように 生にしがみついている。 258 00:18:09,088 --> 00:18:14,093 ここへ来たことも この世にとどまりたいという欲だ。 259 00:18:14,093 --> 00:18:17,096 だけど それだけではない。 260 00:18:17,096 --> 00:18:20,099 自分のことが原因で 人が切られた。 261 00:18:20,099 --> 00:18:23,102 己だけが逃げることはできない。 262 00:18:23,102 --> 00:18:29,108 逃げたら 体だけでなく 心まで使い物にならないと➡ 263 00:18:29,108 --> 00:18:33,045 自分で認めなくてはならない。 264 00:18:33,045 --> 00:18:37,049 強くなりたいんだ。 265 00:18:37,049 --> 00:18:42,054 母は 自分を授けてほしいと お百度を踏んだ。 266 00:18:42,054 --> 00:18:47,059 祖母は その身と引き換えに 私をこの世に送ってくれた。 267 00:18:47,059 --> 00:18:49,061 育ちにくい子供を➡ 268 00:18:49,061 --> 00:18:55,067 祖父が 父が 友が 手代たちが支えてくれた。 269 00:18:55,067 --> 00:18:59,071 だから 生まれて今まで 生きてこられた。 270 00:18:59,071 --> 00:19:02,074 それなのに 自分のせいで➡ 271 00:19:02,074 --> 00:19:05,077 人を巻き込む事件が 起きてしまった。 272 00:19:05,077 --> 00:19:08,080 不運だなどと 逃げていいはずがない。 273 00:19:08,080 --> 00:19:11,083 強くなりたい。 274 00:19:11,083 --> 00:19:13,085 たとえ 心地よくないことでも➡ 275 00:19:13,085 --> 00:19:16,088 受け止めるだけの強さを 身に付けたい。 276 00:19:16,088 --> 00:19:18,090 俺は お前たちよりも はるかに強い! 277 00:19:18,090 --> 00:19:21,093 なのに なぜ 消えなくてはならないんだ! 278 00:19:21,093 --> 00:19:24,096 このまま消えたくない! 消えはしない! 279 00:19:24,096 --> 00:19:27,066 くっ…。 さあ 香をよこせ! 280 00:19:30,102 --> 00:19:32,038 香りがする! これだ!➡ 281 00:19:32,038 --> 00:19:36,042 返魂香… これを嗅げば 魂が戻る。➡ 282 00:19:36,042 --> 00:19:40,012 今度こそ 完璧な付喪神になれる! 283 00:19:42,048 --> 00:19:45,051 火を付けて 香りを嗅げば…。 284 00:19:45,051 --> 00:19:47,053 (嗅ぐ音) 285 00:19:47,053 --> 00:19:50,056 ああ 心地よい…。 286 00:19:50,056 --> 00:19:53,059 これで 俺は…。➡ 287 00:19:53,059 --> 00:19:56,062 ゴホッ ゴホッ… ああ…。 288 00:19:56,062 --> 00:19:58,064 何だ… これは…。 289 00:19:58,064 --> 00:20:02,068 そいつが本物の返魂香なら よかったのだろうけど➡ 290 00:20:02,068 --> 00:20:05,071 あいにく もう この世にはないんだ。 291 00:20:05,071 --> 00:20:08,074 嘘だ! これは本物だ。 292 00:20:08,074 --> 00:20:12,078 俺は 香りを知っている。 間違いない! 293 00:20:12,078 --> 00:20:15,081 包み紙だけが本物だったのさ。 294 00:20:15,081 --> 00:20:18,050 香は 私が勝手に作ったものだ。 295 00:20:21,087 --> 00:20:24,090 だから さっき わざと渡したんだよ。 296 00:20:24,090 --> 00:20:28,094 香の中に 妖封じの護符を入れといた。 297 00:20:28,094 --> 00:20:32,031 よく効いたようだね。 298 00:20:32,031 --> 00:20:35,034 (与吉) おのれ… また だましたな…。 299 00:20:35,034 --> 00:20:39,038 ハァ ハァ…。 300 00:20:39,038 --> 00:20:49,048 ♬~ 301 00:20:49,048 --> 00:20:52,051 (与吉)このままで済むと… 思うなよ…。 302 00:20:52,051 --> 00:20:56,055 があっ… あっ あっ… ああ…。 303 00:20:56,055 --> 00:20:59,058 (与吉のうめき声) 304 00:20:59,058 --> 00:21:04,063 かわいそうだが これ以上 人を襲わせることはできない。 305 00:21:04,063 --> 00:21:06,065 火事をおこさせるわけには いかない。 306 00:21:06,065 --> 00:21:09,068 さあ 与吉さんから 出てくるんだよ。 307 00:21:09,068 --> 00:21:12,071 今 ここで すっぱりと消してあげる。 308 00:21:12,071 --> 00:21:18,043 (うめき声) 309 00:21:20,079 --> 00:21:24,049 これで 最後だ! 310 00:21:32,024 --> 00:21:51,010 (墨壺の断末魔) 311 00:21:55,047 --> 00:22:05,024 ♬~