1 00:00:34,001 --> 00:00:36,003 (一太郎)ハァッ…。 2 00:00:38,839 --> 00:00:41,675 喉元が斬られている。 3 00:00:41,675 --> 00:00:44,344 (鈴彦姫)若だんな 早く行きましょう。 4 00:00:44,344 --> 00:00:47,180 さっきの野盗に 見つかったら大変です。 5 00:00:47,180 --> 00:00:50,183 ああ うん…。 6 00:00:50,183 --> 00:00:52,185 若だんな! あっ。 7 00:02:41,995 --> 00:02:43,997 (火打ち石を打つ音) 8 00:02:45,999 --> 00:02:49,169 本当に人を呼ばなくて よかったんだろうか? 9 00:02:49,169 --> 00:02:51,505 あの人は もう死んでいました。 10 00:02:51,505 --> 00:02:54,341 若だんなだって 確かめたじゃあないですか。 11 00:02:54,341 --> 00:02:58,178 なら 明日の朝 誰か別の人に見つけられたって➨ 12 00:02:58,178 --> 00:03:00,680 全然 不都合はありませんよ。 13 00:03:00,680 --> 00:03:05,519 でも あの男の家の者が 心配しているよ きっと。 14 00:03:05,519 --> 00:03:10,857 若だんな 賭けてもいいですけどね 犬神さんも白沢さんも➨ 15 00:03:10,857 --> 00:03:14,361 今頃 若だんなのこと 血相変えて捜してますよ。 16 00:03:14,361 --> 00:03:18,532 これ以上 帰りが遅くなるのは まずいんじゃないですか? 17 00:03:18,532 --> 00:03:23,036 職人みたいだったね 死んでた男の格好。 18 00:03:23,036 --> 00:03:25,839 もう忘れましょ! さぁ 急ぎましょ! 19 00:03:35,482 --> 00:03:37,484 あっ。 あっ。 20 00:03:40,987 --> 00:03:42,989 (2人)あっ! 21 00:03:44,991 --> 00:03:48,328 あ… の… いたのか。 22 00:03:48,328 --> 00:03:51,164 (佐助/仁吉)ふん…。 23 00:03:51,164 --> 00:03:54,668 犬神さん白沢さん お久しぶりでございます。 24 00:03:54,668 --> 00:03:56,670 (佐助)その名を呼ぶな! 25 00:03:56,670 --> 00:03:58,839 誰が聞いているやも しれないだろうに! 26 00:03:58,839 --> 00:04:00,841 申し訳ありません。 27 00:04:00,841 --> 00:04:04,010 佐助 仁吉 迎えに来てくれたのか。 28 00:04:04,010 --> 00:04:06,813 こんな夜に どこに行っていたんです? 29 00:04:10,684 --> 00:04:12,686 (仁吉)若だんな 佐助が➨ 30 00:04:12,686 --> 00:04:15,355 他出の理由を 聞いているでしょう? 31 00:04:15,355 --> 00:04:19,526 おや 言いたくないのですか? それはどういう了見…。 32 00:04:19,526 --> 00:04:21,528 血の臭いがする! 33 00:04:21,528 --> 00:04:23,530 一太郎ぼっちゃん ケガをしたんですか!? 34 00:04:23,530 --> 00:04:26,199 もう! ぼっちゃんはよせと 言っているのに! 35 00:04:26,199 --> 00:04:28,368 いつまでも 子どもじゃあないんだから。 36 00:04:28,368 --> 00:04:30,871 うわぁ! ケガなぞないわっ! 37 00:04:30,871 --> 00:04:35,142 あ あの… 若だんなは ケガなぞ負ってはいませんよ。 38 00:04:35,142 --> 00:04:37,978 道の途中で 人殺しと行き合ったものだから➨ 39 00:04:37,978 --> 00:04:40,814 臭いが移ったのでしょう。 お前 それは…。 40 00:04:40,814 --> 00:04:43,116 人殺し? あっ! 41 00:04:45,819 --> 00:04:48,822 鈴彦姫 ご苦労だった。 もう帰れ。 42 00:04:48,822 --> 00:04:50,824 はい。 43 00:04:57,330 --> 00:04:59,666 鈴彦姫。 44 00:04:59,666 --> 00:05:02,502 今日はお前がいて助かったよ。 45 00:05:02,502 --> 00:05:05,105 あっ…! フフッ。 46 00:05:14,848 --> 00:05:18,018 ハァ… なんで ひと言もないのさ。 47 00:05:18,018 --> 00:05:20,520 お説教が待っていると 思ったのだけど。 48 00:05:20,520 --> 00:05:23,690 小言が欲しいんですか? そうじゃあないよ。 49 00:05:23,690 --> 00:05:27,694 妙に黙っているからさ かえって居心地が悪いよ。 50 00:05:27,694 --> 00:05:29,696 こんな街なかで若だんなを➨ 51 00:05:29,696 --> 00:05:32,799 どやしつけるわけには いかないでしょうが。 52 00:05:32,799 --> 00:05:36,503 《どうして この2人に バレたのやら…》 53 00:05:38,471 --> 00:05:40,473 あっ!? 54 00:05:40,473 --> 00:05:42,475 (鳴家たち)きゅわきゅわ…。 55 00:05:42,475 --> 00:05:45,812 (屏風のぞき)若だんな…。 屏風のぞき…。 56 00:05:45,812 --> 00:05:47,981 お前 見つかっていたのか。 57 00:05:47,981 --> 00:05:49,983 うぅ…。 58 00:05:49,983 --> 00:05:54,321 若だんなが常々 コイツと成り代わっていたこと➨ 59 00:05:54,321 --> 00:05:58,158 アタシらが気付いていないとでも 思っていたんですか? 60 00:05:58,158 --> 00:06:00,160 ハァ…。 61 00:06:00,160 --> 00:06:04,331 ねぇ 出してやってくれないか。 私が頼んだことなのに➨ 62 00:06:04,331 --> 00:06:07,167 このままじゃあ 胸が痛んでいけないよ。 63 00:06:07,167 --> 00:06:11,338 頼まれたからって 若だんなを 夜歩きに出すなんて論外ですよ。 64 00:06:11,338 --> 00:06:14,174 コヤツは勝手を楽しむ癖がある。 65 00:06:14,174 --> 00:06:17,677 なまはんかなことじゃあ 悔い改めたりしませんからね。 66 00:06:17,677 --> 00:06:19,679 いっそ この格好のまま➨ 67 00:06:19,679 --> 00:06:21,681 井戸にでも つるしておきましょうか。 68 00:06:21,681 --> 00:06:23,683 んっ! 一晩もすりゃあ➨ 69 00:06:23,683 --> 00:06:25,852 少しは後悔もしようってもので。 んん~っ! 70 00:06:25,852 --> 00:06:29,356 やめておくれよ もともとが紙なんだもの➨ 71 00:06:29,356 --> 00:06:32,626 水に落ちたら ほどけて溶けてしまうよ。 72 00:06:32,626 --> 00:06:36,463 フゥ… 勝手に出かけて悪かったよ。 73 00:06:36,463 --> 00:06:39,299 屏風のぞきを 代わりに立てたことも➨ 74 00:06:39,299 --> 00:06:42,302 気がとがめているよ。 だからさ…。 75 00:06:42,302 --> 00:06:47,307 他出の理由は あとできっちり聞くとして…。 76 00:06:47,307 --> 00:06:51,645 若だんな 人殺しに行き合ったんですって? 77 00:06:51,645 --> 00:06:53,647 んっ! きゅわっ! 78 00:06:53,647 --> 00:06:57,484 うん 話すからさ 屏風のぞきを許してやってよ。 79 00:06:57,484 --> 00:06:59,786 しようがないですね。 80 00:07:01,988 --> 00:07:05,659 んっ んっ…。 きゅわきゅわきゅわ。 81 00:07:05,659 --> 00:07:07,661 んっ…。 82 00:07:07,661 --> 00:07:09,663 けっ! ごめんよ。 83 00:07:09,663 --> 00:07:11,665 ぎゅわわ!? 84 00:07:11,665 --> 00:07:13,667 ホントによぉ…。 85 00:07:13,667 --> 00:07:18,371 では若だんな 子細を 話していただきましょうか。 86 00:07:21,174 --> 00:07:25,512 迫ってきた その人殺しは 間違いなく男だったんですね。 87 00:07:25,512 --> 00:07:29,015 そうだよ がっしりした体つきに見えたね。 88 00:07:29,015 --> 00:07:31,017 町人だと思うよ。 89 00:07:31,017 --> 00:07:34,454 暗くて周りが見えなかったと 言っていたのに➨ 90 00:07:34,454 --> 00:07:36,456 よくそこまでわかりましたね。 91 00:07:36,456 --> 00:07:41,461 そりゃあ必死だったもの。 アイツ しつこく追って来たからね。 92 00:07:41,461 --> 00:07:46,299 若だんなの前に立ったときはもう 人を殺したあとだったんですね? 93 00:07:46,299 --> 00:07:50,971 そうさね その前から 血の臭いがしていたし➨ 94 00:07:50,971 --> 00:07:52,973 鈴彦姫が気付いたんだよ。 95 00:07:52,973 --> 00:07:57,143 まずいですね… 顔を見られたかもしれません。 96 00:07:57,143 --> 00:08:01,314 えっ! あのね 本当に暗かったんだよ。 97 00:08:01,314 --> 00:08:04,985 提灯を持っていても いくらも先が見えなかった。 98 00:08:04,985 --> 00:08:07,988 私だって ソイツの顔まで 見ちゃいないよ。 99 00:08:07,988 --> 00:08:12,993 その男は自分の提灯は 持っていなかった。 そうですね? 100 00:08:12,993 --> 00:08:17,163 では 明かりは若だんなの 手元にあった提灯ひとつだ。 101 00:08:17,163 --> 00:08:20,333 若だんなの姿が いちばん明るく見えたはずです。 102 00:08:20,333 --> 00:08:23,670 提灯には 「長崎屋」と 屋号もあった。 103 00:08:23,670 --> 00:08:26,172 すぐに吹き消したんだけど…。 104 00:08:26,172 --> 00:08:31,010 アタシがその人殺しなら 若だんなを放っちゃおきません。 105 00:08:31,010 --> 00:08:34,114 えっ! となりゃ ソイツが捕まるまで➨ 106 00:08:34,114 --> 00:08:36,783 何があっても 家から出ないでくださいましよ。 107 00:08:36,783 --> 00:08:38,952 捕まらなかったら どうするんだい? 108 00:08:38,952 --> 00:08:41,454 とりあえず こっちで調べますんで。 109 00:08:41,454 --> 00:08:44,958 しばらくは 本当に気をつけてくださいよ。 110 00:08:44,958 --> 00:08:50,797 うん わかっているよ。 大丈夫 おとなしくしているから。 111 00:08:50,797 --> 00:08:53,800 では 人殺しのことは ここまでで…。 112 00:09:02,308 --> 00:09:05,011 それじゃあ おやすみ。 113 00:09:08,314 --> 00:09:11,651 あっ? 若だんな。 114 00:09:11,651 --> 00:09:13,653 寝る前にもう一つ➨ 115 00:09:13,653 --> 00:09:15,655 言うことがあるんじゃあ ないですか? 116 00:09:15,655 --> 00:09:17,824 えっ…。 どうして夜に➨ 117 00:09:17,824 --> 00:09:21,828 外出なんかしたんです? 息抜きがしたかったんだよ。 118 00:09:21,828 --> 00:09:24,998 だって 先に喉を腫らして以来➨ 119 00:09:24,998 --> 00:09:27,500 まだ寒いって 出してくれないんだもの。 120 00:09:27,500 --> 00:09:32,105 それで三春屋の栄吉さんの所に わらび餅を食べに行ったとか➨ 121 00:09:32,105 --> 00:09:34,774 若だんなも17なんだから➨ 122 00:09:34,774 --> 00:09:38,111 栄吉さんに吉原に連れて行ってと 頼んだとかね。 123 00:09:38,111 --> 00:09:41,614 そうだったら こう聞きはしないんですがね。 124 00:09:41,614 --> 00:09:44,951 だから 違うことがしたかったんだよ。 125 00:09:44,951 --> 00:09:47,287 夜歩きなんか したことないからさ。 126 00:09:47,287 --> 00:09:51,624 それで人っ子一人いないような 聖堂脇にわざわざ? 127 00:09:51,624 --> 00:09:54,627 初めてだもの どっちへ行ったらいいかなんて➨ 128 00:09:54,627 --> 00:09:56,796 わかりゃあしなかったんだよ! んっ! 129 00:09:56,796 --> 00:09:59,799 あっ…。 きゅわきゅわ…。 130 00:09:59,799 --> 00:10:03,603 (足音) 131 00:10:05,638 --> 00:10:08,308 (3人)あっ! (藤兵衛)まだ起きていたのかい? 132 00:10:08,308 --> 00:10:10,643 早く寝ないと 体に障るよ。 133 00:10:10,643 --> 00:10:14,647 驚いた おとっつぁんこそ もう寝ているとばかり…。 134 00:10:14,647 --> 00:10:18,651 厠に行ったら 離れから 明かりが漏れていたからね。 135 00:10:18,651 --> 00:10:20,653 佐助 仁吉➨ 136 00:10:20,653 --> 00:10:23,323 一太郎を早く寝かさなきゃ ダメじゃないか。 137 00:10:23,323 --> 00:10:25,492 (2人)申し訳ございません。 138 00:10:25,492 --> 00:10:29,662 お前 前の冬に 長患いをしたばかりじゃないか。 139 00:10:29,662 --> 00:10:32,999 お願いだから 体を大事にしておくれ。 140 00:10:32,999 --> 00:10:37,003 おとっつぁん それ もう三月も前の話だよ。 141 00:10:37,003 --> 00:10:40,673 心配ないってば。 そんなこと言って➨ 142 00:10:40,673 --> 00:10:42,675 この前の夏みたいに➨ 143 00:10:42,675 --> 00:10:45,178 生きるか死ぬかの 大病をしたらどうするんだい? 144 00:10:45,178 --> 00:10:49,349 はしかには 二度はかからないよ… ハァ…。 145 00:10:49,349 --> 00:10:51,351 あっ… あぁ…。 146 00:10:54,354 --> 00:10:57,524 《おとっつぁんのおかげで 助かったな…》 147 00:10:57,524 --> 00:11:01,528 (野寺坊)ふらり火に 助けてもらったらしいよ。 148 00:11:01,528 --> 00:11:03,696 (守狐)ああ… あれが都合よく➨ 149 00:11:03,696 --> 00:11:06,866 お助けできる所にいて よかったこと。 150 00:11:06,866 --> 00:11:11,371 (獺)けど 妖がみんな 若だんなの 味方とはかぎらないのに。 151 00:11:11,371 --> 00:11:15,208 (野寺坊)いやいや 人よりましさね。 152 00:11:15,208 --> 00:11:17,544 怖いのは奴だよ。 153 00:11:17,544 --> 00:11:22,382 (守狐)いや いちばん怖いのは やっぱり犬神だよ 白沢だよ。 154 00:11:22,382 --> 00:11:25,885 (野寺坊/獺)違いない 違いない。 フッ…。 155 00:11:30,056 --> 00:11:32,559 フゥ… ハァ…。 156 00:11:47,340 --> 00:11:51,010 (おたえ)朝 店を開けて 程ない頃にね➨ 157 00:11:51,010 --> 00:11:55,014 日限の親分が日本橋のほうへ 急いでいたんだそうな。 158 00:11:55,014 --> 00:11:58,017 聞いたかい? いいえ まだ…。 159 00:11:58,017 --> 00:12:00,687 人があやめられていたんだそうな。 160 00:12:00,687 --> 00:12:04,357 アタシは思わず仁吉を捕まえて お前がちゃ~んと➨ 161 00:12:04,357 --> 00:12:06,859 部屋で寝ているかどうか 聞いてしまったよ。 162 00:12:06,859 --> 00:12:08,861 えっ? だってお前➨ 163 00:12:08,861 --> 00:12:12,532 ゆうべ外に出ていたろう? 知っていなさったの!? 164 00:12:12,532 --> 00:12:15,535 《仁吉たちが話すはずもない。 165 00:12:15,535 --> 00:12:19,706 昔から おっかさんは こうやって見透かすことがある》 166 00:12:19,706 --> 00:12:22,709 あんなに遅くに どこへ行ってたんだい? 167 00:12:22,709 --> 00:12:25,378 お前は体のたちが弱いんだから➨ 168 00:12:25,378 --> 00:12:30,216 殊に気をつけておくれでないと 心配でならないよ。 169 00:12:30,216 --> 00:12:34,821 悪かったから… おっかさん そんな顔しないでくださいよ。 170 00:12:34,821 --> 00:12:36,990 私は殺されてませんから。 171 00:12:36,990 --> 00:12:39,993 当たり前だよ そんなことになったら➨ 172 00:12:39,993 --> 00:12:43,997 おっかさん 生きてはいけないから。 173 00:12:43,997 --> 00:12:46,666 《おとっつぁんも おっかさんも➨ 174 00:12:46,666 --> 00:12:50,003 毎日 毎日 私の心配のしどおしで…。 175 00:12:50,003 --> 00:12:54,173 いっそ この子が すっぱり死んでしまったら…。 176 00:12:54,173 --> 00:12:56,676 なんて考えたことは ないのかしら》 177 00:12:59,846 --> 00:13:02,348 (忠七)おはようございます 若だんな。 178 00:13:02,348 --> 00:13:05,518 おはよう 番頭さん。 何か御用で? 179 00:13:05,518 --> 00:13:07,520 いや…。 180 00:13:07,520 --> 00:13:10,189 《用と言われても➨ 181 00:13:10,189 --> 00:13:13,526 任されている仕事なんて ありはしないじゃないか。 182 00:13:13,526 --> 00:13:16,029 私なぞ ここにいなくたって➨ 183 00:13:16,029 --> 00:13:19,365 店はこうして 回っているんだからね…。 184 00:13:19,365 --> 00:13:23,369 だからこそ… 私の代わりに…》 185 00:13:25,371 --> 00:13:27,573 三春屋の栄吉の所へ行ってくるよ。 186 00:13:31,377 --> 00:13:33,680 若だんな どうぞ。 187 00:13:40,319 --> 00:13:45,491 ここには一人で来られるよ。 もう子どもじゃないんだから。 188 00:13:45,491 --> 00:13:50,163 (栄吉)おや 一太郎 いらっしゃい。 やあ 栄吉。 189 00:13:50,163 --> 00:13:52,165 じゃあ栄吉さん➨ 190 00:13:52,165 --> 00:13:57,170 帰りは若だんなのこと よろしくお願いしますね。 はいよ。 191 00:13:57,170 --> 00:13:59,839 戻られたら 昨夜の他出の件➨ 192 00:13:59,839 --> 00:14:02,508 きっちり お話ししていただきますよ。 193 00:14:02,508 --> 00:14:05,311 まだ覚えてたんだ…。 194 00:14:09,015 --> 00:14:14,020 《大きさがまちまち… 餅の厚さもそろってない…。 195 00:14:14,020 --> 00:14:17,190 これは栄吉が作ったものだねぇ》 196 00:14:17,190 --> 00:14:19,692 大福餅をもらおうかな。 197 00:14:19,692 --> 00:14:24,697 あいよ! お目が高いね それは俺が作った自信作なんだ。 198 00:14:24,697 --> 00:14:27,200 (お春)あら 一太郎さん。 199 00:14:27,200 --> 00:14:31,204 今 お茶をいれますから 奥へ上がっていってください。 200 00:14:31,204 --> 00:14:33,473 ありがとう お春ちゃん。 フフッ。 201 00:14:33,473 --> 00:14:36,476 昨日着いた荷なんだけど➨ 202 00:14:36,476 --> 00:14:39,145 いい物だから 一回 三春屋さんにって。 203 00:14:39,145 --> 00:14:41,347 そいつぁ すまないねぇ。 204 00:14:45,818 --> 00:14:49,989 へぇ これで ようかんでも作るか。 やめときなよ。 205 00:14:49,989 --> 00:14:53,326 これは讃岐の 上物の白砂糖なんだよ。 206 00:14:53,326 --> 00:14:55,828 だから 作ってみたいんじゃあないか。 207 00:14:55,828 --> 00:14:59,499 だってさ 先に栄吉が作ったようかん➨ 208 00:14:59,499 --> 00:15:03,336 楊枝を刺したら端から崩れて 食べられなかったじゃないか。 209 00:15:03,336 --> 00:15:05,338 んんっ…。 それじゃあ もったいないよ。 210 00:15:05,338 --> 00:15:07,340 今度はうまくいくよ! 211 00:15:10,176 --> 00:15:13,679 兄さん ほら 一太郎さんの顔をご覧よ。 212 00:15:13,679 --> 00:15:16,682 なんだよ ちゃんと出来てるだろう? 213 00:15:16,682 --> 00:15:20,686 お春ちゃんの言うとおりだね。 ほらね。 214 00:15:20,686 --> 00:15:22,688 なんだよ 一太郎まで。 215 00:15:22,688 --> 00:15:26,859 お春 もういいから店へ行ってろ。 はいはい。 216 00:15:26,859 --> 00:15:30,563 一太郎さん ごゆっくり。 うん。 217 00:15:36,302 --> 00:15:39,105 これ。 すまないねぇ 栄吉。 218 00:15:48,981 --> 00:15:52,652 実はね 昨日の夜 東屋に行ったんだよ。 219 00:15:52,652 --> 00:15:56,322 えっ? 一太郎 お前一人で あんな所まで? 220 00:15:56,322 --> 00:15:58,825 松之助さんに 会いに行ったのかい? 221 00:15:58,825 --> 00:16:01,494 うん けど会えなかった。 222 00:16:01,494 --> 00:16:05,832 それに夜 他出したことが 仁吉と佐助にバレてしまってね。 223 00:16:05,832 --> 00:16:09,669 そりゃ大目玉食らったろう? うん…。 224 00:16:09,669 --> 00:16:12,839 で いつまで続けるんだい? 225 00:16:12,839 --> 00:16:16,175 仁吉さんや佐助さんにも ないしょにしたままで。 226 00:16:16,175 --> 00:16:18,678 2人とも勘がいいからね。 227 00:16:18,678 --> 00:16:21,681 もう何か隠していると 気付いているよ。 228 00:16:21,681 --> 00:16:23,850 そりゃ心配するだろうよ。 229 00:16:23,850 --> 00:16:26,686 俺もひとつき お前さんの顔見ないと➨ 230 00:16:26,686 --> 00:16:30,022 またぞろ死にかけているのかと 思うくらいだもの。 231 00:16:30,022 --> 00:16:33,292 きついことを。 生きていると➨ 232 00:16:33,292 --> 00:16:35,628 自分の思いどおりに ならないことが➨ 233 00:16:35,628 --> 00:16:38,297 いっぱいあるのさ。 どうしたのさ? 234 00:16:38,297 --> 00:16:42,802 今日は妙に 悟った口調じゃあないか。 ハァ…。 235 00:16:42,802 --> 00:16:46,639 昨日な 餡をひと鍋 ダメにした。 236 00:16:46,639 --> 00:16:49,475 自分だけで作ってみたんだ。 237 00:16:49,475 --> 00:16:52,645 親父に最初 煮方が足りないと言われて➨ 238 00:16:52,645 --> 00:16:55,648 次は水の足しようが 悪いと言われ…。 239 00:16:55,648 --> 00:16:58,818 なんとしても うまく出来なかった。 240 00:16:58,818 --> 00:17:02,655 最後には鍋底を焦がしてしまって。 241 00:17:02,655 --> 00:17:07,326 オイラァ 一太郎が羨ましいよ。 この死に損ないが? 242 00:17:07,326 --> 00:17:09,662 羨ましくて たまんないんだよ! 243 00:17:09,662 --> 00:17:12,164 長崎屋くらいの大店になれば➨ 244 00:17:12,164 --> 00:17:15,001 若だんなが 体が弱くたって困らない。 245 00:17:15,001 --> 00:17:18,671 店を切り回すのは 番頭や手代の仕事だ。 246 00:17:18,671 --> 00:17:21,674 現におじさんは 仕事をしないからって➨ 247 00:17:21,674 --> 00:17:25,678 お前を叱ることはないんだろう? それは…。 248 00:17:25,678 --> 00:17:28,848 昔は悩んでなかったよ。 249 00:17:28,848 --> 00:17:31,851 小さいながら 店の跡取りに生まれて➨ 250 00:17:31,851 --> 00:17:34,287 奉公に行かなくてもいいし…。 251 00:17:34,287 --> 00:17:37,623 けど 餡ひとつ 満足に作れないんじゃ➨ 252 00:17:37,623 --> 00:17:39,625 菓子屋はやっていけないよ。 253 00:17:39,625 --> 00:17:42,628 他にできることが あるわけじゃなし。 254 00:17:42,628 --> 00:17:44,830 俺はどうすればいいんだろう。 255 00:17:46,966 --> 00:17:49,135 あっ。 大丈夫さね➨ 256 00:17:49,135 --> 00:17:51,304 おじさんだって まだ若いんだし➨ 257 00:17:51,304 --> 00:17:54,307 ゆっくり修行をしていけば いいのさ。 258 00:17:54,307 --> 00:17:57,143 《確かに物事➨ 259 00:17:57,143 --> 00:18:00,813 なかなか 思うとおりにはいかないね…》 260 00:18:00,813 --> 00:18:04,517 じゃあね 栄吉。 ああ。 261 00:18:06,485 --> 00:18:09,088 おかえりなさいまし。 ハッ。 262 00:18:11,157 --> 00:18:13,326 若だんな 昨日のこと… あっ? 263 00:18:13,326 --> 00:18:17,330 (日限の親分)やあ 若だんな。 日限の親分さん。 264 00:18:17,330 --> 00:18:20,833 親分さん 今朝方 怖いことがあったそうで。 265 00:18:20,833 --> 00:18:23,502 耳が早いな。 ハァ…。 266 00:18:23,502 --> 00:18:27,106 そんな話は店先では なんですんで。 267 00:18:29,342 --> 00:18:32,545 それで 事件のあらましは? 268 00:18:34,613 --> 00:18:39,285 血生臭い話だよ。 んっ…。 269 00:18:39,285 --> 00:18:44,457 仏さんを見つけたのは 近所に住まうご隠居でね。 270 00:18:44,457 --> 00:18:49,128 毎朝 聖堂の周りを 掃き清めるのが日課だそうな。 271 00:18:49,128 --> 00:18:53,632 信心深いというのに とんだものと出会っちまった。 272 00:18:56,135 --> 00:18:58,971 殺されたのは 大工の徳兵衛という者だ。 273 00:18:58,971 --> 00:19:01,307 印半纏を着ていたんでね➨ 274 00:19:01,307 --> 00:19:05,144 早くに どこの者か わかったってことさ。 275 00:19:05,144 --> 00:19:07,146 ヤツは棟りょうとして➨ 276 00:19:07,146 --> 00:19:09,482 6人ばかりも 人を使っていたそうだ。 277 00:19:09,482 --> 00:19:12,651 腕の立つ大工だったらしいが…。 278 00:19:12,651 --> 00:19:14,987 なんで殺されたのやら➨ 279 00:19:14,987 --> 00:19:17,657 今のところ 見当もついちゃあいない。 280 00:19:17,657 --> 00:19:21,827 賭け事が好きだったとか 借金があったとか…。 281 00:19:21,827 --> 00:19:26,499 駆けつけた女房 弟子に聞いたが そんな話はなかったな。 282 00:19:26,499 --> 00:19:29,001 女のことで もめていたんじゃ? 283 00:19:29,001 --> 00:19:33,939 色っぽい事柄に縁があるとは 思えなかったがね。 284 00:19:33,939 --> 00:19:37,276 俺よりも年上で しかも屋根に上っていたら➨ 285 00:19:37,276 --> 00:19:40,112 鬼瓦と間違えられそうな ご面相だ。 286 00:19:40,112 --> 00:19:43,115 首が落とされていて…。 えっ!? 287 00:19:43,115 --> 00:19:45,951 いつもとは違うことを 差し引いても➨ 288 00:19:45,951 --> 00:19:48,621 男前とは程遠いヤツだったぜ。 289 00:19:48,621 --> 00:19:51,791 《首が落とされていた? 290 00:19:51,791 --> 00:19:55,961 いや 確かに首はあったはず…。 291 00:19:55,961 --> 00:20:00,633 なら… あのあと… 誰かが 斬り落とした?》 292 00:20:00,633 --> 00:20:03,135 どっ どうしたんでい 若だんな? 293 00:20:03,135 --> 00:20:05,137 あっ! いえ…。 294 00:20:05,137 --> 00:20:08,974 親分さん 首を落とすって どうして➨ 295 00:20:08,974 --> 00:20:11,644 誰がそんなことを したんだと思います? 296 00:20:11,644 --> 00:20:14,647 定廻り同心の旦那の話じゃあ➨ 297 00:20:14,647 --> 00:20:17,650 お武家の 試し斬りじゃないかってことだ。 298 00:20:17,650 --> 00:20:21,153 はぁ…。 それにしても…。 299 00:20:21,153 --> 00:20:23,489 大工の棟りょうが仕事のあとに➨ 300 00:20:23,489 --> 00:20:26,826 なんで聖堂前の あんな場所に行ったのかね? 301 00:20:26,826 --> 00:20:29,662 誰ぞに会いに行っての帰りとか…。 302 00:20:29,662 --> 00:20:32,665 棟りょうにせよ おかみさんにせよ➨ 303 00:20:32,665 --> 00:20:36,335 昌平橋を渡った先とは 縁がないそうだ。 304 00:20:36,335 --> 00:20:38,337 失礼しますよ。 んっ。 305 00:20:40,339 --> 00:20:42,341 日限の親分➨ 306 00:20:42,341 --> 00:20:45,678 下っぴきの正吾さんが 親分を捜しに来ていますよ。 307 00:20:45,678 --> 00:20:49,582 これはいけねえ あぁ… 長っ尻になったかの。 308 00:20:54,687 --> 00:20:58,357 これは おかみさんに。 いつもすまないな。 309 00:20:58,357 --> 00:21:02,862 じゃあ若だんな またな。 また いらしてくださいね。 310 00:21:06,031 --> 00:21:08,033 どうやらまだ➨ 311 00:21:08,033 --> 00:21:10,870 下手人の目星も ついていないようですね。 312 00:21:10,870 --> 00:21:14,540 けっ まったく役に立たない 親分さんで。 313 00:21:14,540 --> 00:21:18,711 まんじゅう平らげたり 袖の下取るしか能がないなら➨ 314 00:21:18,711 --> 00:21:20,713 いないほうがましってもんで。 315 00:21:20,713 --> 00:21:23,549 よそでは そんなこと言うんじゃないよ。 316 00:21:23,549 --> 00:21:28,053 心得ていますから 心配は無用ですよ。 317 00:21:28,053 --> 00:21:31,056 アタシはできる手代ですからね。 318 00:21:31,056 --> 00:21:34,160 その優秀な手代が なんの用だい? 319 00:21:34,160 --> 00:21:36,996 佐助がこっちの店に 顔を出すなんて➨ 320 00:21:36,996 --> 00:21:38,998 珍しいじゃないか。 321 00:21:38,998 --> 00:21:41,667 先ほど 知らせが来ましてね。 322 00:21:41,667 --> 00:21:45,671 品川沖に うちの常磐丸が着いたそうで。 323 00:21:45,671 --> 00:21:49,008 あの船には 例の荷を積んでますんで…。 324 00:21:49,008 --> 00:21:52,011 ああ 長崎からの。 325 00:21:52,011 --> 00:21:54,813 で いつ こっちに来るの? 326 00:22:02,354 --> 00:22:11,664 ♬~