1 00:00:36,136 --> 00:00:42,976 ♬~ 2 00:00:42,976 --> 00:00:44,978 あっ。 3 00:00:47,648 --> 00:00:49,650 (栄吉)うっ…。 4 00:00:49,650 --> 00:00:51,652 (臭いを嗅ぐ音) 5 00:00:55,155 --> 00:00:58,659 んんっ… うっ…。 6 00:01:00,661 --> 00:01:02,829 (仁吉)若だんな 大変だ。 7 00:01:02,829 --> 00:01:05,999 栄吉さんが刺されました! (一太郎)なんで…? 8 00:01:05,999 --> 00:01:08,168 今 知らせが来たんです。 9 00:01:08,168 --> 00:01:12,005 三春屋の跡取りが 昌平橋の辺りで襲われたと。 10 00:01:12,005 --> 00:01:14,007 容体は? わかりません。 11 00:01:14,007 --> 00:01:18,679 ただ 見ていた者の話では 大量に出血していたようです。 12 00:01:18,679 --> 00:01:23,350 大丈夫ですか 若だんな。 床を延べましょうか。 13 00:01:23,350 --> 00:01:27,187 店に行くよ。 栄吉さんの所へ 行くのはダメですよ。 14 00:01:27,187 --> 00:01:31,358 下手人は逃げているようです。 外へ出るのは危ない。 15 00:01:31,358 --> 00:01:34,962 行きゃしないよ。 手当ての邪魔になるだけだ。 16 00:01:36,964 --> 00:01:38,966 それでは…。 (藤兵衛)あっ。 17 00:01:38,966 --> 00:01:40,968 おとっつぁん 栄吉が。 18 00:01:40,968 --> 00:01:43,971 つい今 刺されたと聞いたところだよ。 19 00:01:43,971 --> 00:01:47,975 ここのところ 本当に物騒なことで。 20 00:01:47,975 --> 00:01:50,644 あっ! おとっつぁん お願いだよ。 21 00:01:50,644 --> 00:01:53,480 源信先生を呼んで 栄吉を診てもらってよ。 22 00:01:53,480 --> 00:01:56,984 しかし 栄吉にも親がいることだし。 23 00:01:56,984 --> 00:02:00,654 先生は謝礼が高いで有名だもの。 三春屋じゃ呼べないよ! 24 00:02:00,654 --> 00:02:03,991 おとっつぁん! たった一人の 幼なじみが死んだら➨ 25 00:02:03,991 --> 00:02:06,393 私は寝込んじまうからね! 26 00:03:51,465 --> 00:03:54,968 昨日 大坂から届いた 岩おこしだよ。 27 00:03:54,968 --> 00:03:57,971 見舞いの品にするには ちと硬すぎるかなとは➨ 28 00:03:57,971 --> 00:03:59,973 思ったんだけど。 へぇ。 29 00:03:59,973 --> 00:04:01,975 もしまだ無理なら➨ 30 00:04:01,975 --> 00:04:03,977 これはお春ちゃんたちに 食べてもらって。 31 00:04:03,977 --> 00:04:06,980 いや 食うのは全然平気なんだ。 32 00:04:08,982 --> 00:04:12,486 うまい。 さすが 名の通った菓子だけあるね。 33 00:04:12,486 --> 00:04:14,488 まったく➨ 34 00:04:14,488 --> 00:04:17,991 私が栄吉の見舞いに来る日が あるなんて思いもしなかったよ。 35 00:04:17,991 --> 00:04:21,161 医者のことといい 見舞いの品といい➨ 36 00:04:21,161 --> 00:04:23,163 本当によくしてもらって。 37 00:04:23,163 --> 00:04:25,832 だって 栄吉が襲われたのは➨ 38 00:04:25,832 --> 00:04:27,834 私のせいだもの。 (2人)あっ…。 39 00:04:27,834 --> 00:04:31,838 俺に斬りつけたのは 白髪頭のお武家だったけどねぇ。 40 00:04:31,838 --> 00:04:35,776 一太郎 お前さんいつから 二本差しになったんだい? 41 00:04:35,776 --> 00:04:38,779 私がお前さんに用を頼まなきゃ➨ 42 00:04:38,779 --> 00:04:41,448 昌平橋なぞには 近寄らなかったろう? 43 00:04:41,448 --> 00:04:44,284 (佐助)若だんな あれだけ叱られたのに➨ 44 00:04:44,284 --> 00:04:47,287 まだ松之助さんと 会おうとでもしていたんですか。 45 00:04:47,287 --> 00:04:50,290 金をいくらか届けてもらうよう 頼んだんだよ。 46 00:04:50,290 --> 00:04:54,461 松之助兄さん 奉公先を 追い出されるかもしれないんだ。 47 00:04:54,461 --> 00:04:57,130 だからといって なんで若だんなが➨ 48 00:04:57,130 --> 00:04:59,132 金を出さなきゃあ いけないんです? 49 00:04:59,132 --> 00:05:01,635 仁吉さん そう言わないでおくれなさいよ。 50 00:05:01,635 --> 00:05:05,305 実は 一太郎から預かった 金のおかげで➨ 51 00:05:05,305 --> 00:05:07,974 生き延びたんだ。 どういうこと? 52 00:05:07,974 --> 00:05:12,145 あの日 もうすぐ昌平橋が 見えるっていう辺りで➨ 53 00:05:12,145 --> 00:05:16,483 いきなり 小刀を抜いた お武家に刺されたんだ。 54 00:05:16,483 --> 00:05:19,319 腹の ど真ん中を 斬りつけられたんだけどね➨ 55 00:05:19,319 --> 00:05:22,155 懐に金の包みを入れていた。 56 00:05:22,155 --> 00:05:24,157 そいつで刃先が滑って➨ 57 00:05:24,157 --> 00:05:26,827 脇腹を斬られただけで 済んだんだよ。 58 00:05:26,827 --> 00:05:30,330 お前さんを襲ったヤツは どんなふうだった? 59 00:05:30,330 --> 00:05:33,266 ああ そういえば なんか変だったよ。 60 00:05:33,266 --> 00:05:37,604 第一 なんで大刀のほうを 抜かなかったんだろう。 61 00:05:37,604 --> 00:05:39,773 それはそうだね…。 62 00:05:39,773 --> 00:05:42,275 ソイツは いきなり近づいてきて➨ 63 00:05:42,275 --> 00:05:46,112 「香りがする お前 持っているだろう」➨ 64 00:05:46,112 --> 00:05:49,616 と言ってきたんだ。 訳がわからないだろう? 65 00:05:49,616 --> 00:05:53,453 金に困っているのかと思って 紙入れを出したのに➨ 66 00:05:53,453 --> 00:05:55,455 斬りつけてきたんだ。 67 00:05:55,455 --> 00:05:58,959 この話を聞いた日限の親分も…。 68 00:05:58,959 --> 00:06:01,127 頭を抱えていたよ。 69 00:06:01,127 --> 00:06:03,463 そうだろうね…。 70 00:06:03,463 --> 00:06:08,134 《間違いない。 栄吉を襲ったのは なりそこないだ。 71 00:06:08,134 --> 00:06:11,638 でも なぜ薬種屋でもない 栄吉を襲ったんだ? 72 00:06:11,638 --> 00:06:16,142 いったい何が なりそこないを 引きつけたんだろう》 73 00:06:16,142 --> 00:06:19,312 栄吉 斬りつけられた日のことだけど➨ 74 00:06:19,312 --> 00:06:23,149 印籠を持っていたかい? 印籠? いや。 75 00:06:23,149 --> 00:06:25,318 香りのする物は? 76 00:06:25,318 --> 00:06:29,322 そんな物 平素は持っていないよ。 そうか。 77 00:06:29,322 --> 00:06:32,926 あぁ いけない! 一つ忘れてた。 あっ? 78 00:06:32,926 --> 00:06:35,428 一太郎が書いた あの書きつけ➨ 79 00:06:35,428 --> 00:06:37,764 そのお武家に 取られてしまったんだ。 80 00:06:37,764 --> 00:06:39,933 ごめんよ。 書きつけ? 81 00:06:39,933 --> 00:06:43,103 なんです? ただの紙切れ一枚だよ。 82 00:06:43,103 --> 00:06:45,105 長崎屋の名と➨ 83 00:06:45,105 --> 00:06:47,941 東屋の松之助兄さんの名が 書かれていただけ。 84 00:06:47,941 --> 00:06:50,944 《なんだって そんな物を…》 85 00:06:50,944 --> 00:06:54,948 斬られたとき 金子と一緒に懐から落ちたんだ。 86 00:06:54,948 --> 00:06:58,952 侍は 金には目もくれずに その紙を拾うと➨ 87 00:06:58,952 --> 00:07:01,454 そのまま どこぞへ行ってしまった。 88 00:07:01,454 --> 00:07:03,790 ホッとするのが先だったから➨ 89 00:07:03,790 --> 00:07:07,794 今まで紙のことなぞ… んっ… 忘れていたよ。 90 00:07:07,794 --> 00:07:11,097 預かった金子 全部そろってるよ。 91 00:07:13,633 --> 00:07:16,636 これで 精のつく物でも 食べておくれ。 92 00:07:16,636 --> 00:07:19,973 いや でも…。 余計なことは考えず➨ 93 00:07:19,973 --> 00:07:24,477 しっかり養生して 早くよくなることだよ。 94 00:07:24,477 --> 00:07:28,315 本当に いつもと逆だな。 95 00:07:28,315 --> 00:07:31,117 なんだか妙な気分だよ。 96 00:07:33,086 --> 00:07:35,588 栄吉には感謝しているんだよ。 97 00:07:35,588 --> 00:07:37,924 いつも助けてもらって。 98 00:07:37,924 --> 00:07:40,627 フッ… お互いさまだ。 99 00:07:43,096 --> 00:07:47,600 若だんな。 あまり長居すると 栄吉さんの体に障るのでは。 100 00:07:47,600 --> 00:07:53,440 うん… 栄吉 また来るからね。 うん。 101 00:07:53,440 --> 00:08:00,647 ♬~ 102 00:08:07,954 --> 00:08:10,457 (火をつける音) 103 00:08:10,457 --> 00:08:13,860 寒かったでしょう。 すぐにお茶をいれます。 104 00:08:17,797 --> 00:08:22,102 なんですか 若だんな。 そんなに怖い顔をして。 105 00:08:25,805 --> 00:08:28,475 ねえ 仁吉 佐助。 106 00:08:28,475 --> 00:08:32,912 栄吉は 私と間違えられて 斬られたんじゃないかい? 107 00:08:32,912 --> 00:08:36,416 驚いた。 なんで突然そんなことを。 108 00:08:36,416 --> 00:08:39,586 仁吉と一緒に ぼてふりに襲われた日に➨ 109 00:08:39,586 --> 00:08:41,588 アイツは私の前で➨ 110 00:08:41,588 --> 00:08:45,425 「香りがする 間違いない」と 言っていたよ。 111 00:08:45,425 --> 00:08:49,596 栄吉のときは 私が渡した 書きつけを持っていた。 112 00:08:49,596 --> 00:08:52,599 おまけに侍は 書きつけを手に入れると➨ 113 00:08:52,599 --> 00:08:54,768 どこぞに消えてしまったという。 114 00:08:54,768 --> 00:08:59,272 栄吉さんが薬種屋と間違われて ケガをしたなら 気の毒なことです。 115 00:08:59,272 --> 00:09:02,275 そういうことじゃないだろう? 私の周りに➨ 116 00:09:02,275 --> 00:09:05,111 なりそこないが目当てにしている 香りがあるんだよ。 117 00:09:05,111 --> 00:09:09,115 でも私は 家では印籠なぞ持っていないし➨ 118 00:09:09,115 --> 00:09:12,285 第一 その中には 特別な物など入っていない。 119 00:09:12,285 --> 00:09:15,622 いったい なんの香りなんだい? 120 00:09:15,622 --> 00:09:17,791 どういうことだい? 121 00:09:17,791 --> 00:09:20,126 それをアタシらに聞くんですか。 122 00:09:20,126 --> 00:09:22,796 なりそこないが 何を考えているかは➨ 123 00:09:22,796 --> 00:09:25,632 わかりかねます。 私のことなら➨ 124 00:09:25,632 --> 00:09:28,635 2人のほうが私自身より よく知っているじゃあないか。 125 00:09:28,635 --> 00:09:30,970 じいさまに 連れられてきたときから➨ 126 00:09:30,970 --> 00:09:33,072 妙に心得ていたくせして。 127 00:09:33,072 --> 00:09:35,074 どう言われましょうと➨ 128 00:09:35,074 --> 00:09:37,277 知らぬことを 答えたりできませんよ。 129 00:09:41,748 --> 00:09:44,083 (屏風のぞき)若だんな ちょっといいですか。 130 00:09:44,083 --> 00:09:48,087 屏風のぞき お前の出てくる 場ではないよ。 黙ってな! 131 00:09:48,087 --> 00:09:52,425 犬神さん 白沢さん お客がお見えで。 132 00:09:52,425 --> 00:09:55,261 (2人)えっ? 133 00:09:55,261 --> 00:09:57,263 (3人)あっ…!? 134 00:10:22,622 --> 00:10:24,791 これは見越の入道様。 135 00:10:24,791 --> 00:10:28,294 わざわざのおいでとは 知りませんで。 こちらへどうぞ。 136 00:10:33,633 --> 00:10:36,836 (見越の入道)ちょっと おじゃましますよ 若だんな。 137 00:10:38,805 --> 00:10:43,143 んっ! おお 今日は具合もいいようだ。 138 00:10:43,143 --> 00:10:47,146 まずはよかった。 それはどうも。 んっ! 139 00:10:47,146 --> 00:10:50,149 ワハハハハ…! 140 00:10:50,149 --> 00:10:54,487 入道様 今日はどういったご用件で いらしたのですか。 141 00:10:54,487 --> 00:10:56,489 そのことだがな➨ 142 00:10:56,489 --> 00:11:00,493 聞きなれないことを 話すかもしれないが 若だんな➨ 143 00:11:00,493 --> 00:11:04,497 お前さんのことだ。 よく聞いておくれ。 144 00:11:04,497 --> 00:11:06,499 私の? 145 00:11:11,504 --> 00:11:16,509 ワシがここに来たのは 皮衣殿の頼みによる。 146 00:11:16,509 --> 00:11:18,511 犬神たちが➨ 147 00:11:18,511 --> 00:11:22,515 このところ派手に 妖らを動かしているからな。 148 00:11:22,515 --> 00:11:24,517 なんぞあったのかと➨ 149 00:11:24,517 --> 00:11:28,688 体の弱い若だんなのことが 心配になったんだろうて。 150 00:11:28,688 --> 00:11:32,192 その皮衣殿とは どなたなんですか。 151 00:11:32,192 --> 00:11:34,961 おぎんのことだよ。 えっ? 152 00:11:34,961 --> 00:11:37,797 長崎屋伊三郎の妻 おぎん。 153 00:11:37,797 --> 00:11:42,135 おたえの母 お前さんの祖母だわな。 154 00:11:42,135 --> 00:11:44,304 あっ… しかし祖母は➨ 155 00:11:44,304 --> 00:11:46,306 早くに亡くなったと聞いています。 156 00:11:46,306 --> 00:11:52,645 おぎんの本性は妖。 齢三千年の大妖さね。 157 00:11:52,645 --> 00:11:55,648 ワシとは昔からの知り合いでな。 158 00:11:55,648 --> 00:11:58,451 あや… かし? 159 00:12:00,820 --> 00:12:05,658 おやおや まったく信じられぬのか? 160 00:12:05,658 --> 00:12:09,495 では 若だんなに 妖がついているのは➨ 161 00:12:09,495 --> 00:12:11,497 なぜだと思うかな? ハッ。 162 00:12:11,497 --> 00:12:15,335 それにお前さん 妖がいたら そうとわかるだろう? 163 00:12:15,335 --> 00:12:20,173 たとえうまく 人の姿に化けていてもだ。 164 00:12:20,173 --> 00:12:24,844 じゃあ… 私も妖なんですか? 165 00:12:24,844 --> 00:12:28,348 んっ! ワッハッハッハ! 166 00:12:28,348 --> 00:12:33,620 古来 妖狐らと交わり 子をなした人は結構な数いてな。 167 00:12:33,620 --> 00:12:36,789 生まれた子らは 人として生を受ける。 168 00:12:36,789 --> 00:12:42,795 もっとも 尋常ならざる力が 多少は受け継がれるようだがの。 169 00:12:46,466 --> 00:12:48,968 あの もしわかっているのなら➨ 170 00:12:48,968 --> 00:12:51,304 教えていただきたいことが あるのですが。 171 00:12:51,304 --> 00:12:54,974 ワシが知ることならばな。 おっかさんは➨ 172 00:12:54,974 --> 00:12:58,311 祖母が妖だったことを 知っていなさるのですか? 173 00:12:58,311 --> 00:13:01,314 それは わかっているじゃろうて。 174 00:13:01,314 --> 00:13:05,318 お前と同じように おたえにも妖はわかる。 175 00:13:05,318 --> 00:13:08,821 おぎんは お前が生まれる前の年まで➨ 176 00:13:08,821 --> 00:13:11,491 ここで暮らしていたのだからな。 177 00:13:11,491 --> 00:13:13,826 じゃあ祖父は? 178 00:13:13,826 --> 00:13:18,831 あの2人は 思い思われの間柄でなぁ。 179 00:13:18,831 --> 00:13:21,834 伊三郎殿は おぎんと出会ったころ➨ 180 00:13:21,834 --> 00:13:26,005 武士で いいなずけまでおった。 それをすべて捨てて➨ 181 00:13:26,005 --> 00:13:29,342 妖とわかっている おぎんと添ったのだ。 182 00:13:29,342 --> 00:13:31,511 おぎんの同族からは➨ 183 00:13:31,511 --> 00:13:35,114 人ながら大したものと 思われたようだぞ。 184 00:13:35,114 --> 00:13:39,786 2人は西国から江戸へ 手に手を取って逃げた。 185 00:13:39,786 --> 00:13:42,622 互いだけが頼りであった2人を➨ 186 00:13:42,622 --> 00:13:46,626 おぎんの一門は 大いに助けたと聞いておる。 187 00:13:46,626 --> 00:13:50,463 でも… そんなふうに すべてを捨ててきたのに➨ 188 00:13:50,463 --> 00:13:53,466 祖母だけ早死にしてしまうなんて。 189 00:13:53,466 --> 00:13:55,468 ちょっと待ってください。 190 00:13:55,468 --> 00:13:58,137 祖母は私が生まれる前に 死んだんですよ? 191 00:13:58,137 --> 00:14:00,807 なぜ今の私を心配できるんです? 192 00:14:00,807 --> 00:14:06,145 おや 皮衣殿は亡くなったか。 それは知らなんだの。 193 00:14:06,145 --> 00:14:08,981 生きているんですね。 194 00:14:08,981 --> 00:14:12,318 ワシが先に会ったときは 元気であった。 195 00:14:12,318 --> 00:14:17,156 今 神なる荼枳尼天様に お仕え申し上げている。 196 00:14:17,156 --> 00:14:20,326 なんと! ハハッ 若だんな。 197 00:14:20,326 --> 00:14:25,498 何も目に見える世界だけが この世にあるのではないぞ。 198 00:14:25,498 --> 00:14:29,335 祖母は そうまでして 祖父と一緒になったのに➨ 199 00:14:29,335 --> 00:14:31,337 なぜ別れて家を出たんですか。 200 00:14:31,337 --> 00:14:34,107 入道様。 皮衣様は➨ 201 00:14:34,107 --> 00:14:36,442 すべてを若だんなに言えと おっしゃいましたか? 202 00:14:36,442 --> 00:14:38,778 ハハッ お前さんは➨ 203 00:14:38,778 --> 00:14:42,782 相変わらず一太郎殿を 子ども扱いしているようだの。 204 00:14:42,782 --> 00:14:46,119 まあ 妖の年からみれば➨ 205 00:14:46,119 --> 00:14:48,287 ほんの生まれたて というところだが➨ 206 00:14:48,287 --> 00:14:53,126 人の身なれば いつまでも 甘えてばかりではおられまいよ。 207 00:14:53,126 --> 00:14:57,964 人殺しが続いているそうだの。 はい。 208 00:14:57,964 --> 00:14:59,966 その騒ぎに➨ 209 00:14:59,966 --> 00:15:03,302 付喪神のなりそこないが 関わっていると聞くが。 210 00:15:03,302 --> 00:15:07,140 そこまではわかったのですが なりそこないが➨ 211 00:15:07,140 --> 00:15:10,143 何を求めているのかが わかりません。 ふむ。 212 00:15:10,143 --> 00:15:14,647 ただヤツは 欲しい物を 私が持っていると思っている。 213 00:15:14,647 --> 00:15:16,816 そういう気がするのです。 214 00:15:16,816 --> 00:15:21,988 ソヤツは よほどのこと 付喪神になりたかったのだろうよ。 215 00:15:21,988 --> 00:15:24,824 己が欲に とらわれ過ぎると➨ 216 00:15:24,824 --> 00:15:28,327 周りのことなど 見えなくなるものだ。 217 00:15:28,327 --> 00:15:33,433 少し前にもそんな者がいた。 まだ若い女だったが➨ 218 00:15:33,433 --> 00:15:36,102 子どもに恵まれなくての。 (2人)あっ…。 219 00:15:36,102 --> 00:15:40,606 1人生まれたのだが すぐに亡くなってしまったのだ。 220 00:15:40,606 --> 00:15:45,444 そのとき もう子どもは望めないと 医者に言われたそうだが➨ 221 00:15:45,444 --> 00:15:48,614 女はどうしても 子どもを欲しがった。 222 00:15:48,614 --> 00:15:50,783 何ものにも代え難く➨ 223 00:15:50,783 --> 00:15:55,121 それこそ狂ったのではないかと 思うほどに望んだのだ。 224 00:15:55,121 --> 00:16:00,960 女は 己が命に代えても 子どもが欲しいと神に祈った。 225 00:16:00,960 --> 00:16:05,298 そしてこの気持ちに 女の母が負けた。 226 00:16:05,298 --> 00:16:08,968 この先 自分が 従者となることと引き換えに➨ 227 00:16:08,968 --> 00:16:12,972 荼枳尼天様から 秘薬をいただいたのだ。 228 00:16:12,972 --> 00:16:17,977 死者の魂をよみがえらせる 神の薬でな。 229 00:16:17,977 --> 00:16:20,646 これを反魂香という。 230 00:16:20,646 --> 00:16:24,484 死者の… 魂? 231 00:16:24,484 --> 00:16:28,988 女は 母を引き換えにする つもりではなかったが➨ 232 00:16:28,988 --> 00:16:32,158 母はすでに 香を残して去ったあとで➨ 233 00:16:32,158 --> 00:16:34,594 どうしようもない。 それで➨ 234 00:16:34,594 --> 00:16:38,764 荼枳尼天様から授かった 香を使ったのだ。 235 00:16:38,764 --> 00:16:44,270 生まれたのですか? その香のおかげで。 236 00:16:44,270 --> 00:16:49,442 うむ 死んだ子の魂が この世に引き戻された。 237 00:16:49,442 --> 00:16:52,945 そう おたえは母になれたんだ。 238 00:16:52,945 --> 00:16:54,947 ハッ! 239 00:16:57,283 --> 00:17:02,121 《私は 死んだはずの子どもだった? 240 00:17:02,121 --> 00:17:05,625 いきなり言われても… でも➨ 241 00:17:05,625 --> 00:17:10,796 話のつじつまが… それで合う。 242 00:17:10,796 --> 00:17:14,467 つまり私は 神の薬を使って➨ 243 00:17:14,467 --> 00:17:17,470 この世に戻ってきた者 ということになる。 244 00:17:17,470 --> 00:17:20,473 人でも妖でもない➨ 245 00:17:20,473 --> 00:17:23,309 奇妙な生き物… ハッ! 246 00:17:23,309 --> 00:17:26,145 薬の香り…。 247 00:17:26,145 --> 00:17:31,651 もしかしたら それを使った私から 今でも薬は香るのだろうか。 248 00:17:31,651 --> 00:17:36,255 なりそこないは 欠けてしまった 己の魂を取り戻すために➨ 249 00:17:36,255 --> 00:17:39,759 その薬を求めているのだろうか》 250 00:17:39,759 --> 00:17:41,761 仁吉 佐助。 251 00:17:41,761 --> 00:17:44,764 なりそこないは その反魂香を求めていると➨ 252 00:17:44,764 --> 00:17:48,267 お前たちは察しをつけて いたのじゃあないのかい? 253 00:17:48,267 --> 00:17:50,770 まあ そう怒りなさんな。 254 00:17:50,770 --> 00:17:54,440 反魂香のことを もっと早くに突き止めたとて➨ 255 00:17:54,440 --> 00:17:59,111 どうこうできたわけではない。 それはそうですが…。 256 00:17:59,111 --> 00:18:03,783 神の庭山にある反魂樹より 作られる霊薬➨ 257 00:18:03,783 --> 00:18:06,285 めったなことでは手にできぬ。 258 00:18:06,285 --> 00:18:09,288 どうすればその薬を 手に入れられるのですか。 259 00:18:09,288 --> 00:18:12,458 もうこの世にはない。 はっ? 260 00:18:12,458 --> 00:18:16,629 手に入らない? うむ。 261 00:18:16,629 --> 00:18:20,967 それでは なりそこないに 香を渡してやって➨ 262 00:18:20,967 --> 00:18:23,469 事を収めるわけには いかないのですね? 263 00:18:23,469 --> 00:18:25,471 無理だろうな。 264 00:18:28,474 --> 00:18:30,476 そうとなれば➨ 265 00:18:30,476 --> 00:18:33,079 残された道は2つしかない。 (2人)あっ! 266 00:18:33,079 --> 00:18:36,415 なりそこないが 力を失って消えるまで待つか➨ 267 00:18:36,415 --> 00:18:40,252 あるいは対決の道か。 若だんな! 268 00:18:40,252 --> 00:18:44,090 霊薬がどこにもないことを話して 納得すればよし。 269 00:18:44,090 --> 00:18:48,594 言って得心しなければ 力ずくでさせるしかない。 270 00:18:48,594 --> 00:18:52,264 そういうことなら しばらくは おとなしく店にいてください! 271 00:18:52,264 --> 00:18:54,934 今までのなりそこないの 振る舞いを見ても➨ 272 00:18:54,934 --> 00:18:57,103 話し合いで済むとは思えません。 273 00:18:57,103 --> 00:19:00,439 そうしてください 若だんな! この店だけなら➨ 274 00:19:00,439 --> 00:19:02,942 何があっても 付喪神のなりそこないなんぞに➨ 275 00:19:02,942 --> 00:19:04,944 入り込ませたり するもんじゃありません。 276 00:19:04,944 --> 00:19:07,113 きっちりと守ってみせます! 277 00:19:07,113 --> 00:19:11,117 きっとそれが 一番の策なんだろうね。 278 00:19:11,117 --> 00:19:15,121 私だって 何もすき好んで 対じしたいわけじゃない。 279 00:19:15,121 --> 00:19:18,958 お前たちがいるのに のこのこ出かけていくことはない。 280 00:19:18,958 --> 00:19:21,127 そうですとも。 だけど…。 281 00:19:21,127 --> 00:19:23,963 このまま反魂香が 手に入らなければ➨ 282 00:19:23,963 --> 00:19:26,632 消える時間が迫った なりそこないは➨ 283 00:19:26,632 --> 00:19:29,635 死に物狂いで 香を手に入れようとするだろう。 284 00:19:32,304 --> 00:19:34,740 ここで逃げたら➨ 285 00:19:34,740 --> 00:19:37,743 生まれてこなければよかったと 思うことになる。 286 00:19:37,743 --> 00:19:39,745 (2人)うっ…。 287 00:19:39,745 --> 00:19:41,747 自分さえいなければ➨ 288 00:19:41,747 --> 00:19:44,583 たくさんの人が 死ななくて済んだんだよ。 289 00:19:44,583 --> 00:19:49,255 このままでは おっかさんが 反魂香を使ったことを➨ 290 00:19:49,255 --> 00:19:53,426 この身自身を 呪ってしまうかもしれない。 291 00:19:53,426 --> 00:19:57,930 そうなれば どのみち 生きていくことも難しい。 292 00:19:57,930 --> 00:20:01,100 ハァ…。 293 00:20:01,100 --> 00:20:03,102 なんてことだろう。 294 00:20:03,102 --> 00:20:05,604 私は そのなりそこないを➨ 295 00:20:05,604 --> 00:20:07,773 なんとかしなけりゃあ ならないらしい。 296 00:20:07,773 --> 00:20:10,943 何を言いだすんです! おやめください! 297 00:20:10,943 --> 00:20:14,113 ワッハッハッハ…! 298 00:20:14,113 --> 00:20:17,950 いや あっぱれだの。 寝込んでばかりで➨ 299 00:20:17,950 --> 00:20:20,953 しょっちゅう死にかけていると 聞いていたのに➨ 300 00:20:20,953 --> 00:20:24,790 中身はどうして剛の者のようだ。 301 00:20:24,790 --> 00:20:27,126 やらなくっちゃならないと 思うから➨ 302 00:20:27,126 --> 00:20:29,628 なりそこないを止めにかかります。 303 00:20:29,628 --> 00:20:33,132 でも どうしたらできるかという 案があるわけじゃない。 304 00:20:33,132 --> 00:20:36,802 それでもお前さんは やってみるという。 305 00:20:36,802 --> 00:20:40,973 いや 冥加なことだ。 うむ…。 306 00:20:40,973 --> 00:20:43,809 ガーッハッハッハ…。 307 00:20:43,809 --> 00:20:47,480 ガッハッハッハ… フン。 308 00:20:47,480 --> 00:20:49,982 あっ! (2人)ゴホッ…。 309 00:20:49,982 --> 00:20:51,984 んっ… ハッ! 310 00:20:51,984 --> 00:20:54,153 (見越の入道)皮衣殿がの➨ 311 00:20:54,153 --> 00:20:58,157 一太郎殿のことでこれ以上 人に迷惑がかかるなら➨ 312 00:20:58,157 --> 00:21:01,160 お前さんを 人の世から切り離して➨ 313 00:21:01,160 --> 00:21:03,829 自分の所へ連れてきてほしいと➨ 314 00:21:03,829 --> 00:21:06,165 こう言わしゃってな。 (3人)えっ!? 315 00:21:06,165 --> 00:21:11,003 ただ 私の身を心配して 来たわけではなかったのですね。 316 00:21:11,003 --> 00:21:15,508 皮衣殿は今 神に仕える身だからの。 317 00:21:15,508 --> 00:21:18,511 己が孫を この世に呼び戻したことで➨ 318 00:21:18,511 --> 00:21:22,681 禍をまき散らすことになっては いけないと思ったのだろう。 319 00:21:22,681 --> 00:21:28,354 いや 己でなんとかすると 言ってくれてよかったわ。 320 00:21:28,354 --> 00:21:31,023 つまり もし店に閉じこもって➨ 321 00:21:31,023 --> 00:21:33,125 災厄を やり過ごそうとしていたら➨ 322 00:21:33,125 --> 00:21:35,461 死ななくっちゃ ならなかったわけですか。 323 00:21:35,461 --> 00:21:39,799 まさか。 たった一人の孫を 殺すわけもなかろう。 324 00:21:39,799 --> 00:21:43,469 ただ 人の世を離れるだけだ。 325 00:21:43,469 --> 00:21:46,472 お前は皮衣殿の孫だから➨ 326 00:21:46,472 --> 00:21:51,477 荼枳尼天様のお庭の隅にでも 置いていただけるのだろうよ。 327 00:21:51,477 --> 00:21:55,314 それじゃあ あの世に行くのと変わりがない。 328 00:21:55,314 --> 00:21:58,484 ワッハッハッハ…! 329 00:21:58,484 --> 00:22:02,988 では お手並み拝見~。 330 00:22:02,988 --> 00:22:06,492 (3人)うぅ… うっ! 331 00:22:08,494 --> 00:22:10,896 ハァッ…。