1 00:00:06,055 --> 00:00:09,458 (助六)・ 粋な黒塀 見越しの松に 2 00:00:09,458 --> 00:00:13,062 (助六)・ 仇な姿の 洗い髪 3 00:00:13,062 --> 00:00:16,933 (助六) ・ 死んだはずだよ お富さん 4 00:00:16,933 --> 00:00:19,302 (助六)・ 生きていたとは 5 00:00:19,302 --> 00:00:23,422 (助六)あれ? こんにゃろう また休んでやがんな。 6 00:00:23,422 --> 00:00:26,559 (有楽亭八雲)お前さんとの 年の差を ちっとは考ぇなよ。 7 00:00:26,559 --> 00:00:28,561 こちとら じいさんなんだ。 8 00:00:28,561 --> 00:00:31,430 どこへ 行こうってんです? 9 00:00:31,430 --> 00:00:33,833 底が 全然見えやしねぇ。 10 00:00:33,833 --> 00:00:35,952 ここは 一体…。 11 00:00:35,952 --> 00:00:39,088 まあ いろいろ 腑に落ちねぇだろうけどな。 12 00:00:39,088 --> 00:00:43,059 手っとり早く言やぁ お前さんは死んだんだ。 13 00:00:43,059 --> 00:00:46,178 死んだ? まさか。 14 00:00:46,178 --> 00:00:49,548 あたしゃ てめぇん家の縁側で…。 15 00:00:49,548 --> 00:00:51,550 そうそう。 見てたよ。 16 00:00:51,550 --> 00:00:54,303 信之助も ひと節やってたな。 17 00:00:54,303 --> 00:00:57,323 あいつは ほんとにかわいいよなぁ。・ 18 00:00:57,323 --> 00:00:59,408 あのあと 急に容体が悪くなって・ 19 00:00:59,408 --> 00:01:02,411 大騒ぎだったんだ。 車に乗りたがらねぇから・ 20 00:01:02,411 --> 00:01:04,680 医者 呼んで そうこうする間に・ 21 00:01:04,680 --> 00:01:07,433 こん睡状態。 万策尽きて・ 22 00:01:07,433 --> 00:01:09,433 ぽっくりお陀仏さ。 23 00:01:10,903 --> 00:01:13,906 眠るみてぇな きれいな顔だったよ。 24 00:01:13,906 --> 00:01:18,527 みんなに見守られて お前さん 幸せ者だな。 25 00:01:18,527 --> 00:01:20,846 するってぇと お前さんは・ 26 00:01:20,846 --> 00:01:25,468 寄席で見た死神かい? 助六さんじゃねぇんだろ? 27 00:01:25,468 --> 00:01:30,339 あれはな 途中から 死神に操られてたんだ。 28 00:01:30,339 --> 00:01:33,426 寄席に火ぃつけるなんざ とんでもねぇ野郎だ。 29 00:01:33,426 --> 00:01:37,713 今度 会ったら ただじゃおかねぇ あのじじい。・ 30 00:01:37,713 --> 00:01:39,715 この世とあの世を 行き来できんのは・ 31 00:01:39,715 --> 00:01:44,203 あいつだけだ。 ちょいと頼んで 連れてってもらったらよ・ 32 00:01:44,203 --> 00:01:46,288 あいつ すっかり お前さんの落語の・ 33 00:01:46,288 --> 00:01:48,708 ファンになっちめぇやがった。・ 34 00:01:48,708 --> 00:01:51,343 死神ってのは 天寿を全うするヤツにゃ・ 35 00:01:51,343 --> 00:01:55,848 取り憑けねぇんだ。 だから 焦って あんなことしやがったんだろう。 36 00:01:55,848 --> 00:02:01,070 じゃあ お前さんは まだ成仏してないってぇのかい? 37 00:02:01,070 --> 00:02:04,590 (助六) ふん…。 懐の財布を見てみろ。 38 00:02:04,590 --> 00:02:07,193 財布? ジャラ… 39 00:02:07,193 --> 00:02:10,696 なっ? すげぇだろ? 天寿を全うすりゃあ・ 40 00:02:10,696 --> 00:02:13,365 死出の路銀を たっぷりもらえるんだ。 41 00:02:13,365 --> 00:02:16,185 金? そんなもんがいるのかい。 42 00:02:16,185 --> 00:02:20,072 あたぼうよ。 「地獄の沙汰も金次第」ってぇだろ。 43 00:02:20,072 --> 00:02:23,559 俺も成仏してぇけど 三途の川 渡ろうにも・ 44 00:02:23,559 --> 00:02:28,180 何しろ すっからぴんで。 あたしに たかろうってのかい。 45 00:02:28,180 --> 00:02:30,933 ご名答! 46 00:02:30,933 --> 00:02:33,035 ひっ…。 47 00:02:33,035 --> 00:02:35,921 あれ? 殴らねぇ。 48 00:02:35,921 --> 00:02:40,443 はぁ… そんな気力 もうないよ。 49 00:02:40,443 --> 00:02:44,430 足場がぐらぐらして もう 足が追っつかねぇ。 50 00:02:44,430 --> 00:02:47,666 片目じゃ見ぇなくて 歩きづれぇし…。 51 00:02:47,666 --> 00:02:50,169 ああ~ やだやだ。 (助六)じじいってのは・ 52 00:02:50,169 --> 00:02:52,421 めんどくせぇな。 53 00:02:52,421 --> 00:02:55,291 ちょいと 目ぇつぶってみな。 54 00:02:55,291 --> 00:02:57,426 ん? 55 00:02:57,426 --> 00:03:00,126 (助六)ひの ふの みっと。 56 00:03:01,931 --> 00:03:04,900 (助六)ほら 戻った。 57 00:03:04,900 --> 00:03:07,052 あっ…。 58 00:03:07,052 --> 00:03:09,421 (助六)こんなら 体は軽いだろ? 59 00:03:09,421 --> 00:03:13,175 了見一つで 好きな年になれるんだ ここは。・ 60 00:03:13,175 --> 00:03:15,427 早く 先 進もうぜ。 61 00:03:15,427 --> 00:03:17,813 お楽しみが たっぷり待ってるよ。 62 00:03:17,813 --> 00:03:20,449 パンッ! (助六)痛っ! 63 00:03:20,449 --> 00:03:23,402 一人で歩けらぁ。 64 00:03:23,402 --> 00:03:26,539 坊は そうこなくっちゃ。・ 65 00:03:26,539 --> 00:03:29,058 いざ行かん 死出の旅路へ。・ 66 00:03:29,058 --> 00:03:32,928 その道中の…。 (2人)陽気なことを~! 67 00:03:32,928 --> 00:03:39,034 ・ 嘘が浮世か 68 00:03:39,034 --> 00:03:43,556 ・ 浮世が実か 69 00:03:43,556 --> 00:03:51,780 ・ 夢ともなく 現ともなく 70 00:03:51,780 --> 00:03:55,284 ・ 空々寂々 71 00:03:55,284 --> 00:03:57,286 店が出てきた。 (助六)この辺は・ 72 00:03:57,286 --> 00:03:59,305 死んですぐだから 豪気になって・ 73 00:03:59,305 --> 00:04:01,991 散財するヤツが多いんだ。 へえ~。 74 00:04:01,991 --> 00:04:04,777 (助六)間違ぇて 来て 引き返すバカも多いから・ 75 00:04:04,777 --> 00:04:08,013 冥途の土産なんかも売ってるよ。 へえ~。 76 00:04:08,013 --> 00:04:11,650 (助六) あっ うまそうだなぁ。 なあ 坊…。 77 00:04:11,650 --> 00:04:15,771 あれ買ってくれ これ買ってくれって 言わねぇって約束したろ。 78 00:04:15,771 --> 00:04:17,771 (助六)まだ してねぇよ! 79 00:04:21,443 --> 00:04:25,764 ほんとに ここは あの世かい? みんな ばかに楽しそうだ。 80 00:04:25,764 --> 00:04:29,268 (助六)みんな この世の名残を 惜しんでるんだよ うん。・ 81 00:04:29,268 --> 00:04:32,768 ほら 見えたぜ。 あのとっつきだ。 82 00:04:34,123 --> 00:04:36,625 銭湯? こっから入って・ 83 00:04:36,625 --> 00:04:39,895 三途の川へ行く支度を整えるんだ。 84 00:04:39,895 --> 00:04:42,781 かかあとは ここでケンカしちまって…。 85 00:04:42,781 --> 00:04:46,018 この先で待ってるとは 思うんだけどよ。 86 00:04:46,018 --> 00:04:50,439 みよ吉さんかぇ? どうして 一緒じゃないかと思ってたんだよ。 87 00:04:50,439 --> 00:04:52,439 まあ まあ 入れ 入れ。 88 00:04:55,628 --> 00:04:58,130 (助六)広い風呂は オツでいいな。 89 00:04:58,130 --> 00:05:00,833 あれ? 子供じゃなくなってるよ。 90 00:05:00,833 --> 00:05:04,503 (助六)子供にゃ 風呂のよさが分かるめぇ。・ 91 00:05:04,503 --> 00:05:09,875 ああ~ 極楽 極楽。 まだ 極楽にゃ早ぇだろ。 92 00:05:09,875 --> 00:05:11,994 じきに行けらぁ。・ 93 00:05:11,994 --> 00:05:15,247 坊 見てみろ この腹の傷。 94 00:05:15,247 --> 00:05:20,119 かかあにやられたやつ お侍みてぇだろ。 はははっ。 95 00:05:20,119 --> 00:05:23,372 笑い事かい。 (助六)笑い事にしねぇと・ 96 00:05:23,372 --> 00:05:25,457 やってらんねぇだろ。・ 97 00:05:25,457 --> 00:05:28,110 あのかかあ しょっちゅうやってんだよ・ 98 00:05:28,110 --> 00:05:31,513 包丁 持ち出して 「死んでやる!」ってな。・ 99 00:05:31,513 --> 00:05:35,317 あの日にかぎって 変なとこで転びやがって・ 100 00:05:35,317 --> 00:05:38,053 まったく あのバカ。 101 00:05:38,053 --> 00:05:42,241 あいつは ほんとに弱ぇ女だよ。 102 00:05:42,241 --> 00:05:46,478 すまなかったよ。 あたしが悪かった。 103 00:05:46,478 --> 00:05:49,732 未練がましく迎えになんざ 行かなきゃよかった。 104 00:05:49,732 --> 00:05:52,835 誰が悪いなんて話は 野暮だろ。 105 00:05:52,835 --> 00:05:57,606 俺たちのことは 三方一両損で痛み分けだ。・ 106 00:05:57,606 --> 00:06:02,528 けどな 小夏のことを 何も考えてやれなかったな。・ 107 00:06:02,528 --> 00:06:05,228 そこは お前さんに 感謝するしかねぇな。 108 00:06:06,665 --> 00:06:10,302 あいつを引き受けてくれて ありがとな。 109 00:06:10,302 --> 00:06:12,838 無責任 極まりねぇな。 110 00:06:12,838 --> 00:06:15,624 立派な跳ねっ返りに 育っちまったよ。 111 00:06:15,624 --> 00:06:18,510 けど お前さん 俺が死んだとき・ 112 00:06:18,510 --> 00:06:21,814 「しめた~!」って思うことも いっぺぇあったろ?・ 113 00:06:21,814 --> 00:06:24,066 目の上のたんこぶが取れてよ・ 114 00:06:24,066 --> 00:06:27,886 落語うめぇヤツが 一人減ったし 八雲になれたし。 115 00:06:27,886 --> 00:06:31,657 そんなことで 人が死んでいい理由なんざ・ 116 00:06:31,657 --> 00:06:34,493 この世にあるかい。 117 00:06:34,493 --> 00:06:37,696 絶対に あんなふうに死んだらダメだ。 118 00:06:37,696 --> 00:06:42,968 悲しいばっかりで いいことなんざ 一っつもねぇよ。 119 00:06:42,968 --> 00:06:45,821 悪い 悪い。 そして 結局・ 120 00:06:45,821 --> 00:06:49,291 あたしゃ 一人には なりきれなかった。 121 00:06:49,291 --> 00:06:52,494 あんなに立派な家族まで 持っちまって・ 122 00:06:52,494 --> 00:06:55,898 挙句の果てにゃ 落語にゃ見放されて・ 123 00:06:55,898 --> 00:06:58,934 心中なんざ できなかったのさ。 124 00:06:58,934 --> 00:07:04,834 人間らしくて結構 結構。 ままならねぇのが人間だぁな 坊。 125 00:07:06,258 --> 00:07:10,112 そいで てめぇだけ 最後も幸せに死んだってぇんだ。 126 00:07:10,112 --> 00:07:12,147 みよ吉さんに あんなしどい仕打ちを・ 127 00:07:12,147 --> 00:07:14,166 したてぇのに。 128 00:07:14,166 --> 00:07:17,353 あの人には きちんと会って謝りたいよ。 129 00:07:17,353 --> 00:07:19,521 はあ~。・ 130 00:07:19,521 --> 00:07:23,158 みよ吉っつぁんなら すぐに会えると思うぜ。 131 00:07:23,158 --> 00:07:26,445 その前に 坊と行きてぇとこがあるんだ。 132 00:07:26,445 --> 00:07:28,445 ん? 133 00:07:30,265 --> 00:07:34,269 (助六)坊と ここへ来てねぇのが ずっと心に引っ掛かってよぉ。 134 00:07:34,269 --> 00:07:37,869 こりゃ驚ぇた。 こんなとこまであるんかぇ。 135 00:07:40,225 --> 00:07:42,525 この時代は風情があらぁな。 136 00:07:44,229 --> 00:07:47,666 (助六) さあ 坊 その財布 前に出しとけ。 137 00:07:47,666 --> 00:07:49,752 お大尽は すぐ見っかるぞ。 138 00:07:49,752 --> 00:07:55,124 ぬし 寄っていきなんし~。 ぬし 一服しなんし~。 139 00:07:55,124 --> 00:08:00,262 (助六) 大門くぐる助六に 煙管の雨がぁ・ 140 00:08:00,262 --> 00:08:03,715 降るようだぁ~っと。 141 00:08:03,715 --> 00:08:08,170 へっ 気安く触るなぃ。 いい気味だな 坊。 142 00:08:08,170 --> 00:08:11,240 見ろよ このモテっぷり。 あたしらじゃなくて・ 143 00:08:11,240 --> 00:08:13,492 財布がモテてんだよ。 144 00:08:13,492 --> 00:08:16,145 (助六)なあ あの奥のねえちゃん 花魁じゃねぇか?・ 145 00:08:16,145 --> 00:08:18,747 こっち見てんぞ おい! 「三浦屋」の高尾か?・ 146 00:08:18,747 --> 00:08:21,617 「朝日楼」の喜瀬川か? どの人だい? 147 00:08:21,617 --> 00:08:24,436 ほら あの右のヤツ。 (みよ吉)ちょいと・ 148 00:08:24,436 --> 00:08:27,206 やっぱりここかい! この放蕩亭主。 149 00:08:27,206 --> 00:08:30,759 こちとら 必死でお茶くみやって 路銀 稼いでんじゃないかい。 150 00:08:30,759 --> 00:08:32,961 このボンクラ! みよ吉さん。 151 00:08:32,961 --> 00:08:35,330 ああ・ 何よ? 152 00:08:35,330 --> 00:08:37,516 久しぶり。 153 00:08:37,516 --> 00:08:40,919 あっ…。 菊さん。 154 00:08:40,919 --> 00:08:42,919 やだ 来てたの? 155 00:08:44,573 --> 00:08:48,127 そこのモジャモジャさん 早く どっか行ってちょうだい。・ 156 00:08:48,127 --> 00:08:51,230 あたし 菊さんと二人で 話 したいの。 157 00:08:51,230 --> 00:08:53,348 いちばんいいとこで 邪魔しやがって・ 158 00:08:53,348 --> 00:08:55,801 クソばばあ。 (みよ吉)なんか言った?・ 159 00:08:55,801 --> 00:08:59,021 なけなしのお金あげてんだから 一杯 飲んできなよ。 160 00:08:59,021 --> 00:09:02,958 へえ へえ。 行ってきますよ。 161 00:09:02,958 --> 00:09:06,558 30分だけだぞ。 お直しも なしだからな。 162 00:09:09,131 --> 00:09:12,784 いいのかぇ? あの人 あたしに やいてんじゃないの? 163 00:09:12,784 --> 00:09:15,220 いいの いいの 旦那なんて。 164 00:09:15,220 --> 00:09:18,390 愛想を振っても 一文にもなりゃしないわ。 165 00:09:18,390 --> 00:09:22,678 あんたも死んじゃったのね。 ご愁傷さま。 166 00:09:22,678 --> 00:09:26,231 みよ吉さん あたし お前さんに謝りたいことが…。 167 00:09:26,231 --> 00:09:28,600 やだ やめて。 168 00:09:28,600 --> 00:09:31,904 謝ってる菊さんなんて 見たくないわ。・ 169 00:09:31,904 --> 00:09:35,691 死んじゃったら 惚れた腫れたも関係ないわ。・ 170 00:09:35,691 --> 00:09:39,491 私 もう 女をやらなくて済んで 清々してんの。 171 00:09:43,048 --> 00:09:45,868 (みよ吉) 私ね 菊さんに振ってもらえて・ 172 00:09:45,868 --> 00:09:47,953 よかったと思ってんの。 173 00:09:47,953 --> 00:09:51,023 所帯 持ってみたら ほんっとに大変。 174 00:09:51,023 --> 00:09:54,459 旦那なんて 嫌なとこばっかり目に付くし・ 175 00:09:54,459 --> 00:09:57,362 菊さんと そんなふうになりたくないわ。 176 00:09:57,362 --> 00:10:01,567 あたしね 菊さんのことは 顔だけ見てりゃ満足なの。 177 00:10:01,567 --> 00:10:03,969 ねっ 菊さん。 178 00:10:03,969 --> 00:10:07,039 あなた おじいちゃんになっても かっこいいのね。 179 00:10:07,039 --> 00:10:09,039 そうかぇ。 180 00:10:12,327 --> 00:10:14,630 (みよ吉)けどね こっち来ても・ 181 00:10:14,630 --> 00:10:17,849 小夏のことだけは 気にかかっちゃって。・ 182 00:10:17,849 --> 00:10:20,219 腹いせみたいに産んだ子だけど・ 183 00:10:20,219 --> 00:10:23,822 きっかけはどうあれ 自分の子だもの。・ 184 00:10:23,822 --> 00:10:26,808 どうしたって かわいいのよ。・ 185 00:10:26,808 --> 00:10:30,308 だけど あたし不器用だから 全然うまく愛せなかった。・ 186 00:10:31,730 --> 00:10:33,765 あんなふうに ず~っと あたしのこと・ 187 00:10:33,765 --> 00:10:36,184 恨ませちゃってたのが かわいそうで。 188 00:10:36,184 --> 00:10:39,338 ・~ 189 00:10:39,338 --> 00:10:44,192 (みよ吉)あたし もっと みんなに優しくすればよかった。 190 00:10:44,192 --> 00:10:48,213 人間なんて 1人で生きられっこないんだから。 191 00:10:48,213 --> 00:10:50,933 たった1人に すがるんじゃなくって・ 192 00:10:50,933 --> 00:10:54,233 みんなと上手に頼り合って 生きなくちゃいけなかったの。 193 00:10:56,888 --> 00:11:00,188 (みよ吉) あたしたち みんな間違ってたね。 194 00:11:02,160 --> 00:11:07,516 いや 正しい人間なんざ どこにもおりません。 195 00:11:07,516 --> 00:11:11,920 だからこそ 人は己を廃して 和を立てる。 196 00:11:11,920 --> 00:11:14,820 そういうのが美しいんです。 197 00:11:16,491 --> 00:11:20,529 えっ 菊さん おじいちゃんみたい。 198 00:11:20,529 --> 00:11:23,515 いや おじいちゃんですからね。 199 00:11:23,515 --> 00:11:26,535 ふふふっ。・ 200 00:11:26,535 --> 00:11:29,121 ねえ 見て あのモジャモジャ。・ 201 00:11:29,121 --> 00:11:32,557 30分 過ぎたのに ずっと待ってんだわ。 202 00:11:32,557 --> 00:11:35,857 あの人 優しいの バカが付くぐらい。 203 00:11:38,897 --> 00:11:40,916 (みよ吉)さあ! (助六)ん? 204 00:11:40,916 --> 00:11:45,516 (みよ吉)吉原なんてやめて 久々の再会をお祝いしましょ。 205 00:13:50,545 --> 00:13:53,365 (みよ吉)や~ね もう 雪がちらついてきたわ。・ 206 00:13:53,365 --> 00:13:55,684 さっきまで 蛍が舞ってたのに。 207 00:13:55,684 --> 00:13:59,304 (助六)こんな日ぁ 鍋でもやって くぅ~っと一杯・ 208 00:13:59,304 --> 00:14:01,623 内外から あったまりてぇな。 209 00:14:01,623 --> 00:14:04,626 けど 不思議だね。 この国の食べ物は・ 210 00:14:04,626 --> 00:14:07,662 味も そっけもないんだよ。 (助六)そらまあ・ 211 00:14:07,662 --> 00:14:12,484 さすがに みんな 死んでるからな。 なんだか 口ざみしいね。 212 00:14:12,484 --> 00:14:15,270 (助六)そんなときにゃあ ぴったりの場所があるぜ。 213 00:14:15,270 --> 00:14:19,391 ・~(寄席囃子) 214 00:14:19,391 --> 00:14:21,426 寄席だ。 215 00:14:21,426 --> 00:14:24,763 (助六)こないだ燃えちまったからな こっちぃ来たんだ。・ 216 00:14:24,763 --> 00:14:26,798 最近 圓朝師が 10日間・ 217 00:14:26,798 --> 00:14:29,751 「牡丹燈籠」を 続きでやって 大入りだ。・ 218 00:14:29,751 --> 00:14:31,803 こっちは名人ぞろいだぜ。・ 219 00:14:31,803 --> 00:14:34,723 看板を見てみろ。 みんな先代だぞ。 220 00:14:34,723 --> 00:14:36,758 末席に もう・ 221 00:14:36,758 --> 00:14:39,244 あたしの名前まで あるのかい。 222 00:14:39,244 --> 00:14:41,947 二人の落語 聴きたいわ。・ 223 00:14:41,947 --> 00:14:43,947 やって やって。 224 00:14:46,017 --> 00:14:49,788 ああ~ 懐かしい。 昔のまんまの造りだ。 225 00:14:49,788 --> 00:14:52,924 (助六)電気がねぇから 隙間っ風 ピュ~ピュ~吹いて・ 226 00:14:52,924 --> 00:14:55,710 冷えきってやがらぁ。 俺が行って・ 227 00:14:55,710 --> 00:14:58,597 この冷えきった寄席 あっためてやらぁ。・ 228 00:14:58,597 --> 00:15:02,033 坊 何が聴きてぇ? なんでも。 229 00:15:02,033 --> 00:15:05,470 (助六)なんだい そりゃあ。 張り合いがねぇな もう。 230 00:15:05,470 --> 00:15:07,989 なんでもいいってんじゃないよ。 231 00:15:07,989 --> 00:15:11,927 助六の落語なら なんでも うれしいってことだよ。 232 00:15:11,927 --> 00:15:15,730 惚れ込んでやがるな。 へっ 座って聴いてろぃ。 233 00:15:15,730 --> 00:15:20,330 ・~(寄席囃子) 234 00:15:22,354 --> 00:15:25,624 あれ? 小夏。 235 00:15:25,624 --> 00:15:27,676 (みよ吉)このお座布団にね・ 236 00:15:27,676 --> 00:15:31,062 生前 いちばん 落語を 聴かせてあげたかった人のこと・ 237 00:15:31,062 --> 00:15:33,198 1人だけ呼べるんだって。 238 00:15:33,198 --> 00:15:36,498 仏様って 粋なことなさるのね。 239 00:15:39,654 --> 00:15:41,854 なぁに? その顔。 240 00:15:45,293 --> 00:15:49,393 うん! ふふふっ。 241 00:15:52,334 --> 00:15:54,834 (みよ吉) 素直じゃないのよ この子。 242 00:15:56,555 --> 00:16:05,647 ・~(出囃子) 243 00:16:05,647 --> 00:16:08,550 パチパチパチ…(拍手) (観客)助六! 244 00:16:08,550 --> 00:16:12,254 (拍手) 245 00:16:12,254 --> 00:16:14,306 (観客)待ってました! 246 00:16:14,306 --> 00:16:17,525 ・~(出囃子) 247 00:16:17,525 --> 00:16:19,561 どうも どうも。 雪ん中・ 248 00:16:19,561 --> 00:16:23,081 よくぞ こんな しみったれた所へ お運びいただきまして。・ 249 00:16:23,081 --> 00:16:27,269 ここいらで ひとつ ぽっとあったまるお笑いを一席。・ 250 00:16:27,269 --> 00:16:29,921 近頃んなって 突然 ド~ンと建ちました・ 251 00:16:29,921 --> 00:16:33,041 この立派な寄席ですが ええ~ なんでも・ 252 00:16:33,041 --> 00:16:35,810 火事になって こちらへ やってきたそうでございます。 253 00:16:35,810 --> 00:16:37,829 そんなことなら あっちぃ行って・ 254 00:16:37,829 --> 00:16:39,864 立派なもんには もう どんどん どんどん・ 255 00:16:39,864 --> 00:16:41,900 火ぃつけて 回りてぇってなもんでございます。 256 00:16:41,900 --> 00:16:43,935 (一同)ははははっ。 257 00:16:43,935 --> 00:16:46,972 (助六) 「火事は江戸の華」の例えどおり・ 258 00:16:46,972 --> 00:16:50,358 江戸という街は 大変に 火事が多かったんだそうで。・ 259 00:16:50,358 --> 00:16:53,962 そのため 各町とも 1軒から1人ずつ 番小屋へ出て・ 260 00:16:53,962 --> 00:16:59,000 まあ いわゆる 旦那衆が 町内を見廻っていたそうですなぁ。 261 00:16:59,000 --> 00:17:01,202 「こんばんは どうも ご苦労さま」。 262 00:17:01,202 --> 00:17:03,221 「ああ~ ご苦労さまでございます。・ 263 00:17:03,221 --> 00:17:05,557 ええ~ 大変に 今夜は お寒ぅございますな」。 264 00:17:05,557 --> 00:17:08,093 「いや~ 寒ぅございますよ。・ 265 00:17:08,093 --> 00:17:12,797 ええ~ 尾張屋さんに 相模屋さん これで 人数がそろいましたな。・ 266 00:17:12,797 --> 00:17:14,966 どうです? こいだけ大勢いますからね・ 267 00:17:14,966 --> 00:17:17,852 ふた組に分けまして 半分が廻ってる間・ 268 00:17:17,852 --> 00:17:21,439 もう半分は ここで あったまって 最初の組が戻ったら 今度は・ 269 00:17:21,439 --> 00:17:23,992 もうひと組が出てくってのは いかがでしょう?」。・ 270 00:17:23,992 --> 00:17:28,713 「ほう~ なるほど。 それは 結構なお考えでございますなぁ」。・ 271 00:17:28,713 --> 00:17:31,566 「では 一の組 行ってまいります。・ 272 00:17:31,566 --> 00:17:35,553 おお… いや~ 寒ぅございますなぁ。・ 273 00:17:35,553 --> 00:17:38,106 ええ~ さあ 皆さん 袖ぇ 手ぇ入れてねぇで・ 274 00:17:38,106 --> 00:17:40,125 火の用心とか 火の廻りとか言って・ 275 00:17:40,125 --> 00:17:43,762 歩かなくちゃならねぇ。 とっつぁん いい声で ひとつ頼みますよ」。 276 00:17:43,762 --> 00:17:46,297 「へへへっ あたしですかい?・ 277 00:17:46,297 --> 00:17:49,784 昔 吉原で 火の廻りをしたことが ございましてね・ 278 00:17:49,784 --> 00:17:53,655 刺子の長半纏ってね 豆絞りの手拭いを 首に巻いて・ 279 00:17:53,655 --> 00:17:57,592 提灯に金棒を持ってね ええ こういった具合に・ 280 00:17:57,592 --> 00:18:00,545 チャリ~ンと 廻ってごらんなさいよ。・ 281 00:18:00,545 --> 00:18:02,714 もう あっちから こっちから・ 282 00:18:02,714 --> 00:18:06,618 あっ 煙管の雨がぁ あっ 降るようでぇ~!」。・ 283 00:18:06,618 --> 00:18:09,654 「いや 自慢話はいいんですよ。 早くやっとおくれよ」。 284 00:18:09,654 --> 00:18:14,225 「へい ようがす。 では… チャリ~ンと。・ 285 00:18:14,225 --> 00:18:19,164 火のよう~~じ~ん!・ 286 00:18:19,164 --> 00:18:22,617 あっ さっしゃりやしょ~」! 287 00:18:22,617 --> 00:18:24,736 (拍手) 288 00:18:24,736 --> 00:18:26,771 (小夏)名調子! 289 00:18:26,771 --> 00:18:29,090 (助六)「ただいま戻りました」。 「いや~ どうも・ 290 00:18:29,090 --> 00:18:31,292 一の組の皆さん ご苦労さまでございます」。・ 291 00:18:31,292 --> 00:18:34,129 「いや~ もう 外は 寒いの寒くないのってね」。・ 292 00:18:34,129 --> 00:18:36,331 「さあ こっちで あったまって。 ええ ええ」。・ 293 00:18:36,331 --> 00:18:40,068 「ええ~ では あたくしから? では ちょうだいいたします。・ 294 00:18:40,068 --> 00:18:42,137 どうも お先に へへっ。・ 295 00:18:42,137 --> 00:18:44,155 お~っとっとっと…。・ 296 00:18:44,155 --> 00:18:48,460 いや いい色ですなぁ。 そして いい香りだ。・ 297 00:18:48,460 --> 00:18:51,579 湯気でもって 酔っちまいそうですよ。・ 298 00:18:51,579 --> 00:18:54,549 ふぅ~ ふぅ~ ふっふっふっ。・ 299 00:18:54,549 --> 00:18:57,549 んんっ んんっ んんっ…・ 300 00:18:58,970 --> 00:19:03,858 はぁ~! うまい!」。 (一同)ははははっ。 301 00:19:03,858 --> 00:19:07,858 「どこのですか? いや ばかに たちのいい酒ですなぁ。・ 302 00:19:09,431 --> 00:19:12,484 えっ 何? だんだん 肉も煮えてきた?・ 303 00:19:12,484 --> 00:19:16,337 こらぁ オツなもんで」。 「じゃあ すみません あたくしから。・ 304 00:19:16,337 --> 00:19:20,024 ええ~ あたくし 猪なんてのは 初めてでございましてね。・ 305 00:19:20,024 --> 00:19:24,345 ええ… ああ~ こら どうも 誠に結構でございますな うん。・ 306 00:19:24,345 --> 00:19:28,716 へへへへっ。 大変 体にいいなんて伺いますが・ 307 00:19:28,716 --> 00:19:33,521 どれ ひとつ…。 ふぅ~ ふぅ~ ふぅ~。・ 308 00:19:33,521 --> 00:19:36,424 んんっ んんっ んんっ…・ 309 00:19:36,424 --> 00:19:41,246 うまい! 死んだら こんなもんは食えませんな」。・ 310 00:19:41,246 --> 00:19:44,282 「だいたい このネギというものはね うん・ 311 00:19:44,282 --> 00:19:46,868 結構でございますよ うん。 私なんざはね・ 312 00:19:46,868 --> 00:19:50,171 この… おかずがないときはね いつも ネギなんですよ・ 313 00:19:50,171 --> 00:19:55,560 ええ ええ ええ。 このネギくらい 体にいいものはないってんでね・ 314 00:19:55,560 --> 00:19:58,696 とにかくね ネギだけ食べてらぁ それでいいんですよ。 ネギ」。 315 00:19:58,696 --> 00:20:00,732 「ちょっと ああた ああた! さっきから・ 316 00:20:00,732 --> 00:20:04,786 ネギだ ネギだ言ってますけどね 間に 肉が挟まってますよ」。 317 00:20:04,786 --> 00:20:06,821 「あれ? 見っかっちゃった?」。 318 00:20:06,821 --> 00:20:10,358 (観客たち)ははははっ! 319 00:20:10,358 --> 00:20:12,777 (助六)「何? 一滴も残っておらんのか?・ 320 00:20:12,777 --> 00:20:16,397 分かった。 では 拙者 ひと廻りしてまいる。・ 321 00:20:16,397 --> 00:20:19,184 その間に 二番を煎じておけ」。 322 00:20:19,184 --> 00:20:22,287 (観客たち)ははははっ! 323 00:20:22,287 --> 00:20:26,658 ・~(受け囃子) 324 00:20:26,658 --> 00:20:33,258 (拍手) 325 00:20:34,716 --> 00:20:37,452 (助六) さあ 坊。 今度は お前さんの番。 326 00:20:37,452 --> 00:20:40,371 あたしゃ いいよ。 やりたくない。 327 00:20:40,371 --> 00:20:43,191 助六のあとに出たって 白けちまわぁ。 328 00:20:43,191 --> 00:20:46,191 (助六)若返って 度胸まで忘れちまったか? 329 00:20:49,797 --> 00:20:55,420 お前は立派に 八代目八雲を 務め上げたじゃねぇか。 330 00:20:55,420 --> 00:21:01,025 泣く子も黙る大名人になった。 俺の分までな。・ 331 00:21:01,025 --> 00:21:03,061 坊 目ぇつぶれ。 332 00:21:03,061 --> 00:21:07,232 ・~(出囃子) 333 00:21:07,232 --> 00:21:11,019 (助六)出囃子が鳴ってる。 出番だ。 334 00:21:11,019 --> 00:21:14,722 ひの ふの み。 335 00:21:14,722 --> 00:21:26,417 ・~(出囃子) 336 00:21:26,417 --> 00:21:28,636 (観客)八代目! (観客)待ってました! 337 00:21:28,636 --> 00:21:31,422 (観客)たっぷり! ん? 338 00:21:31,422 --> 00:21:36,922 ・~(出囃子) 339 00:21:38,796 --> 00:21:41,065 (信之助)ふふっ。 340 00:21:41,065 --> 00:21:43,101 ええ~ どうも。 341 00:21:43,101 --> 00:21:47,355 いっぱいのお運びで 誠に ありがとうございます。 342 00:21:47,355 --> 00:21:51,459 先刻 外で「本日来演!」の 札ぁ見まして・ 343 00:21:51,459 --> 00:21:53,928 てめぇの名前を見て 冗談も・ 344 00:21:53,928 --> 00:21:56,180 大概にしてほしいと 思いましたのは・ 345 00:21:56,180 --> 00:21:58,733 初めてのことでして。 346 00:21:58,733 --> 00:22:02,320 まあ あたくしの名も 八代目になりました。 347 00:22:02,320 --> 00:22:05,290 八代てぇたら 大変な名跡です。 348 00:22:05,290 --> 00:22:07,926 名前てぇのは 大事なもんでして・ 349 00:22:07,926 --> 00:22:10,828 どういう名前を ちょうだいするか・ 350 00:22:10,828 --> 00:22:14,766 それで 人生まで 変わっちまうことも あるようで。 351 00:22:14,766 --> 00:22:18,553 斯くばかり 偽り多き世の中に・ 352 00:22:18,553 --> 00:22:21,256 子のかわいさは真なりけり。 353 00:22:21,256 --> 00:22:23,858 「寿限無」という 子供のおうわさを一席。 354 00:22:23,858 --> 00:22:25,893 「寿限無」! やった~! 355 00:22:25,893 --> 00:22:29,393 「ねえ あんた 今日は産婆さんを呼んで・ 356 00:22:30,748 --> 00:22:32,784 お湯を使わしてもらって 赤ん坊の名を付けて・ 357 00:22:32,784 --> 00:22:34,953 お祝いするお七夜だよ。 お前さん 何か・ 358 00:22:34,953 --> 00:22:37,322 名前 考えてあるかい?」。 359 00:22:37,322 --> 00:22:40,708 「そうだなぁ 与太郎なんてどうだい」。 360 00:22:40,708 --> 00:22:43,328 「嫌だよ! そんな」…。 あっ 父ちゃん! 361 00:22:43,328 --> 00:22:45,747 ふふっ。 ん? 362 00:22:45,747 --> 00:22:48,249 「寿限無 寿限無 五劫の摺り切れ・ 363 00:22:48,249 --> 00:22:51,736 海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末・ 364 00:22:51,736 --> 00:22:55,323 食う寝るところに住むところ やぶらこうじのぶらこうじ・ 365 00:22:55,323 --> 00:22:57,392 パイポパイポパイポの シューリンガン・ 366 00:22:57,392 --> 00:22:59,427 シューリンガンの グーリンダイ」…。 367 00:22:59,427 --> 00:23:02,096 (八雲・小夏・信之助) 「グーリンダイの ポンポコピーのポンポコナーの・ 368 00:23:02,096 --> 00:23:04,399 長久命の長助」。 369 00:23:04,399 --> 00:23:06,417 「南無阿弥陀仏」。 370 00:23:06,417 --> 00:23:09,988 「おい そのナンマイダーは 余計だよ。 縁起でもねぇ」。 371 00:23:09,988 --> 00:23:14,688 (観客たち)ははははっ! 372 00:23:18,196 --> 00:23:22,200 (助六)船頭まで付いて 立派な舟だなぁ 坊。 373 00:23:22,200 --> 00:23:27,305 三途の川ってのぁ ひでぇヤツは 泳いで渡んなきゃならねぇんだ。 374 00:23:27,305 --> 00:23:30,558 徳が高ぇってのは いいこと尽くしだな。 375 00:23:30,558 --> 00:23:35,947 お前さん方は どうなんだい? どうして 一緒に来られないの? 376 00:23:35,947 --> 00:23:39,250 (助六) 路銀がたまったら すぐ行くよ。 377 00:23:39,250 --> 00:23:41,552 ほんとに大丈夫かぇ? 378 00:23:41,552 --> 00:23:46,657 大丈夫だって。 小夏と しん坊は ちゃ~んと あっちぃ帰ったよ。 379 00:23:46,657 --> 00:23:49,394 かかあは 泣き顔は見せたくねぇからって・ 380 00:23:49,394 --> 00:23:54,432 見送りは来ねぇとさ。 へっ! 女ってのぁ 薄情だな。 381 00:23:54,432 --> 00:23:57,869 そいで 一人で来てくれたのかぇ。 382 00:23:57,869 --> 00:24:01,656 信さんは優しいね。 383 00:24:01,656 --> 00:24:04,692 (助六)ちっ… なあ 坊・ 384 00:24:04,692 --> 00:24:08,813 お前さんは 落語が好きで 人を愛した。 385 00:24:08,813 --> 00:24:11,082 そして よく生き抜いた。 386 00:24:11,082 --> 00:24:13,384 おかげで 俺も成仏できらぁ。 387 00:24:13,384 --> 00:24:17,055 ・~ 388 00:24:17,055 --> 00:24:19,323 そんな顔するんじゃねぇ。 389 00:24:19,323 --> 00:24:21,926 いつか また会える。 390 00:24:21,926 --> 00:24:23,945 信さん。 391 00:24:23,945 --> 00:24:27,198 ・~ 392 00:24:27,198 --> 00:24:30,551 指切り。 (助六)うん。 393 00:24:30,551 --> 00:24:35,423 ・~ 394 00:24:35,423 --> 00:24:37,442 じゃあね。 395 00:24:37,442 --> 00:24:49,270 ・~ 396 00:24:49,270 --> 00:24:52,540 ・八雲師匠。 ん? 397 00:24:52,540 --> 00:24:55,593 (松田)ははっ。 ま… 松田さん! 398 00:24:55,593 --> 00:25:00,031 どうしたんだい? お前さんも 一緒に来ちまったのかぇ? 399 00:25:00,031 --> 00:25:03,317 (松田)それが あたしにも よく分からねぇんです。・ 400 00:25:03,317 --> 00:25:06,487 師匠のご病床のお世話をしてて・ 401 00:25:06,487 --> 00:25:10,024 うとうととしたとこまでは 覚えてんですけどね。 402 00:25:10,024 --> 00:25:13,294 どうなっちまうんでしょうか あたしゃ…。 403 00:25:13,294 --> 00:25:16,494 最後にお会いできて 幸いですけどね。・ 404 00:25:17,865 --> 00:25:22,453 師匠のお見送りは あたしの大事な仕事ですから・ 405 00:25:22,453 --> 00:25:26,324 仏様が お慈悲を かけてくだすったんでしょうかね。 406 00:25:26,324 --> 00:25:30,194 何がなんだか分からないよ こっちの世界は。 407 00:25:30,194 --> 00:25:33,498 師匠 楽しゅうございましたな。 408 00:25:33,498 --> 00:25:37,068 長い間 お世話になりました。 409 00:25:37,068 --> 00:25:39,068 はい。 410 00:25:40,922 --> 00:25:44,091 「四方の山々 雪 解けて・ 411 00:25:44,091 --> 00:25:46,994 水かさ増さる大川の・ 412 00:25:46,994 --> 00:25:49,697 上げ潮南で・ 413 00:25:49,697 --> 00:25:53,484 ザブ~リザブリと 水の音」。 414 00:25:53,484 --> 00:25:59,984 ・~ 415 00:27:34,385 --> 00:27:39,390 (松田)次回 「昭和元禄落語心中 -助六再び篇-」・ 416 00:27:39,390 --> 00:27:41,425 第12話。 417 00:27:41,425 --> 00:27:44,025 (与太郎) どうぞ ご贔屓 ご鞭撻のほどを。