1 00:00:10,086 --> 00:00:12,121 タッ(携帯操作音) 2 00:00:12,121 --> 00:00:14,273 (有楽亭八雲・イヤホンからの音声) 「おっ母ぁ 羽織 出しとくれ」。 3 00:00:14,273 --> 00:00:16,292 (小雪)兄ぃ。 (イヤホンからの音声)「うるさいね・ 4 00:00:16,292 --> 00:00:19,228 この人は」。 (小雪)ねえ!・ 5 00:00:19,228 --> 00:00:23,165 信之助! むぅ~! 6 00:00:23,165 --> 00:00:26,235 わあ~~! (信之助)うわっ!・ 7 00:00:26,235 --> 00:00:28,271 なんだ 小雪か。 8 00:00:28,271 --> 00:00:32,391 何してんの? こんなとこで また一人になって。 9 00:00:32,391 --> 00:00:35,361 (信之助) 母ちゃんと先生 話 長ぇから・ 10 00:00:35,361 --> 00:00:37,930 明日のこけら落としのネタ さらってんです。 11 00:00:37,930 --> 00:00:39,966 (小雪)へえ~ 何 掛けんの? 12 00:00:39,966 --> 00:00:43,002 (信之助)「初天神」。 (小雪)簡単じゃん そんなの。 13 00:00:43,002 --> 00:00:46,622 (信之助)お前が聴いている 「初天神」とは 訳が違うんですよ。 14 00:00:46,622 --> 00:00:50,109 (小雪)つか 何? このプレイリスト。 八雲ばっかじゃん。 15 00:00:50,109 --> 00:00:52,511 (信之助) 八雲に間に合ってないなんて・ 16 00:00:52,511 --> 00:00:54,530 お前 ほんと かわいそうですね。 17 00:00:54,530 --> 00:00:56,832 (小雪) 兄ちゃんだって ガキの頃だべ。 18 00:00:56,832 --> 00:00:59,886 ねえ 「出来心」やんなよ 父ちゃんの型で。・ 19 00:00:59,886 --> 00:01:02,186 そっちのが 面白いじゃん。 20 00:01:03,522 --> 00:01:06,592 10人抜きで 二つ目になった天才とか言われて・ 21 00:01:06,592 --> 00:01:09,128 図に乗ってんじゃない? 乗ってません。 22 00:01:09,128 --> 00:01:11,898 てか 小雪。 なんです その格好? 23 00:01:11,898 --> 00:01:15,968 (小雪)今日 高校の入学式だったんだよ~ん。 24 00:01:15,968 --> 00:01:18,487 かわいいべ? 25 00:01:18,487 --> 00:01:20,523 世界一かわいい。 26 00:01:20,523 --> 00:01:23,823 (小雪) やった~! 兄ぃ ありがとう。・ 27 00:01:25,194 --> 00:01:28,698 お礼に すごいこと教ぇたげようか。 (信之助)なんです? 28 00:01:28,698 --> 00:01:32,551 母ちゃん めっちゃ怒ってたよ。 (信之助)やべっ…。 29 00:01:32,551 --> 00:01:35,087 チリン チリン… 30 00:01:35,087 --> 00:01:37,123 ども…。 31 00:01:37,123 --> 00:01:39,692 (小夏)どこ ほっつき歩いてんだ このバカ息子!・ 32 00:01:39,692 --> 00:01:42,292 レコード会社の方 帰っちまったよ。 33 00:01:43,713 --> 00:01:45,965 さ~せん。 (小夏)こういうことで・ 34 00:01:45,965 --> 00:01:48,801 顔覚えてもらうんだろ! (小雪)お兄ちゃん・ 35 00:01:48,801 --> 00:01:51,237 明日のこけら落としのネタ さらってたんだよ。 36 00:01:51,237 --> 00:01:54,540 (信之助)いいって そういうの…。 (小夏)言い訳は聞きたかないよ。 37 00:01:54,540 --> 00:01:56,759 あんた 何 掛けるんだい? 38 00:01:56,759 --> 00:01:59,612 「初天神」っす。 そんなの なんで今更・ 39 00:01:59,612 --> 00:02:01,964 さらってんだい! はい さ~せん。 40 00:02:01,964 --> 00:02:04,467 (樋口) ははははっ! 41 00:02:04,467 --> 00:02:07,803 小夏さんの啖呵は いつ聞いても 気持ちいいね。 42 00:02:07,803 --> 00:02:10,973 次は そういう新作でも作りますかな。 43 00:02:10,973 --> 00:02:13,426 おお~ 嫌だ。 やめて センセ。・ 44 00:02:13,426 --> 00:02:17,446 今ある新作こなすんで 精いっぱいだよ。 45 00:02:17,446 --> 00:02:20,499 寄席が また出来るから 先生のおかげで・ 46 00:02:20,499 --> 00:02:23,853 あたしも ようやく 高座に上がれる日が来ますわ。 47 00:02:23,853 --> 00:02:27,139 いえいえ 頑張ったのは 小夏さんですよ。 48 00:02:27,139 --> 00:02:29,375 史上初の女性落語家。 49 00:02:29,375 --> 00:02:32,061 あなたがいなきゃ 成り立たなかった。 50 00:02:32,061 --> 00:02:36,761 八雲師匠がいなくなって 落語界は 随分変わっちまった。・ 51 00:02:38,668 --> 00:02:43,122 人が1人いなくなるだけで こんなに変わるのね。・ 52 00:02:43,122 --> 00:02:46,759 男の人が作った落語の和を 壊したくない…・ 53 00:02:46,759 --> 00:02:51,113 ずっと そう思ってたけど これだけ時代が変わって・ 54 00:02:51,113 --> 00:02:54,734 先生とお父さんが 背中を押してくれて・ 55 00:02:54,734 --> 00:02:58,971 あたしも いつの間にか 和に入っちゃってた。 56 00:02:58,971 --> 00:03:01,957 八雲師匠って そんなにすごかったの?・ 57 00:03:01,957 --> 00:03:05,444 難しくて 何言ってるか 分かんないんだよな。・ 58 00:03:05,444 --> 00:03:09,265 何回聴いても 父ちゃんの落語が世界一好き。・ 59 00:03:09,265 --> 00:03:12,134 あたし 絶対 噺家になんか ならないんだ~。・ 60 00:03:12,134 --> 00:03:14,534 だって 聴いてる方が楽しいもん。 61 00:03:15,905 --> 00:03:20,226 八代目の影響が 年々薄くなるのは さみしいものです。 62 00:03:20,226 --> 00:03:23,312 今年で もう十七回忌ですか。・ 63 00:03:23,312 --> 00:03:27,400 いつか 信之助君にも 僕の新作に挑戦してほしいな。 64 00:03:27,400 --> 00:03:29,400 えっ…。 65 00:03:32,405 --> 00:03:36,459 (信之助) 先生の新作は とても好きです。・ 66 00:03:36,459 --> 00:03:39,095 けど 私には まだ早いです。・ 67 00:03:39,095 --> 00:03:42,231 二つ目ですから。 (樋口)ご謙遜を。・ 68 00:03:42,231 --> 00:03:46,769 二つ目若手の会も 大変にぎわってると聞きました。・ 69 00:03:46,769 --> 00:03:49,955 イケメン落語家。 異例の10人抜き。・ 70 00:03:49,955 --> 00:03:52,224 そして 助六の孫。・ 71 00:03:52,224 --> 00:03:55,127 売れっ子要素 満載ですな。 72 00:03:55,127 --> 00:03:58,097 看板は大きいほど 芸を磨かないと・ 73 00:03:58,097 --> 00:04:00,983 お客様は また いらしてくださいませんから。 74 00:04:00,983 --> 00:04:04,403 私の落語は 真打ちになれてからです。 75 00:04:04,403 --> 00:04:09,725 ははははっ! ご機嫌を損ねてしまいましたな。 76 00:04:09,725 --> 00:04:13,425 さ~せん。 そろそろ おいとましますね。 77 00:04:14,897 --> 00:04:16,966 チリン チリン… 78 00:04:16,966 --> 00:04:19,001 そいじゃ 失礼します。 79 00:04:19,001 --> 00:04:21,554 夜にまた 挨拶回り 行くからね! 80 00:04:21,554 --> 00:04:24,273 (信之助)はい。 チリン チリン… 81 00:04:24,273 --> 00:04:28,711 信之助君は 八雲師の落語に だいぶ ご執心だそうで。 82 00:04:28,711 --> 00:04:30,729 なんだか オーラというか・ 83 00:04:30,729 --> 00:04:33,532 たたずまいまで 八雲師に似てきましたね。 84 00:04:33,532 --> 00:04:37,970 子供の頃に言われたことも よく覚えてて 崇拝してるみたい。 85 00:04:37,970 --> 00:04:40,706 立派な八雲バカに育ちましたわ。 86 00:04:40,706 --> 00:04:43,492 十七回忌と こけら落とし。 87 00:04:43,492 --> 00:04:47,096 この大事な節目に 私の研究の集大成である・ 88 00:04:47,096 --> 00:04:50,449 DVD「八雲全集」も いよいよ完成です。・ 89 00:04:50,449 --> 00:04:54,086 それに合わせた八雲師の評伝も 佳境に入っている。 90 00:04:54,086 --> 00:04:56,355 その総仕上げに 一つ・ 91 00:04:56,355 --> 00:04:58,641 あなたに 聞きたいことがあるんです。・ 92 00:04:58,641 --> 00:05:00,676 評伝のためというより・ 93 00:05:00,676 --> 00:05:04,276 僕が どう~しても知りたい というだけなんですがね。・ 94 00:05:05,998 --> 00:05:09,498 信之助君の本当の父親の話です。・ 95 00:05:11,153 --> 00:05:14,206 与太さんは 親分さんだって決めつけている。・ 96 00:05:14,206 --> 00:05:17,793 けど 僕は どうも そうは思えないんです。 97 00:05:17,793 --> 00:05:20,963 性分なもんで いろいろ調べたんですよ。 98 00:05:20,963 --> 00:05:23,766 養父と養女って 関係を破談にしても・ 99 00:05:23,766 --> 00:05:26,836 法律では 婚姻を結べないんですって?・ 100 00:05:26,836 --> 00:05:30,005 けど まあ 血のつながりはないわけですし・ 101 00:05:30,005 --> 00:05:33,592 長年 連れ添ううちに そんな感情が…。・ 102 00:05:33,592 --> 00:05:37,613 それなら 誰にも言えないのも 合点がいきます。・ 103 00:05:37,613 --> 00:05:40,249 この仮定が もし本当なら 彼は・ 104 00:05:40,249 --> 00:05:44,103 助六と八雲 両方の血を引く子供です。・ 105 00:05:44,103 --> 00:05:47,189 興奮して身震いしますよ。・ 106 00:05:47,189 --> 00:05:51,243 しかし これも 全く根拠のない 落語好きの妄言です。・ 107 00:05:51,243 --> 00:05:55,431 言おうかどうか ずっと迷ってたんですが…。 108 00:05:55,431 --> 00:05:57,631 ねえ 小夏さん。 109 00:06:04,223 --> 00:06:08,894 あたくしは ぜ~ったいに 口を割りませんでしてよ。 110 00:06:08,894 --> 00:06:11,297 ああ~ ダメかぁ。 111 00:06:11,297 --> 00:06:14,200 親分さんも 女将さんも 八雲さんも逝っちゃって・ 112 00:06:14,200 --> 00:06:18,971 あとは 私だけだもの。 地獄の果てまで持ってくわ。・ 113 00:06:18,971 --> 00:06:22,892 私が信之助を産んだのは 助六のため。・ 114 00:06:22,892 --> 00:06:26,228 そして 八雲のためです。 あの人に・ 115 00:06:26,228 --> 00:06:29,899 落語をやり続けてよかったと 思ってもらうため。・ 116 00:06:29,899 --> 00:06:32,167 それは間違いないわ。 117 00:06:32,167 --> 00:06:36,739 そして 私は 後悔なんて 一つもありません。・ 118 00:06:36,739 --> 00:06:39,909 若い頃はね 八雲師に対しては・ 119 00:06:39,909 --> 00:06:43,062 いろいろな感情が ねじくれてました。・ 120 00:06:43,062 --> 00:06:46,662 憎しみも 執着も 嫉妬も 羨望も。・ 121 00:06:48,100 --> 00:06:52,821 若い私には抱えきれないほど たくさんね。・ 122 00:06:52,821 --> 00:06:58,394 けど それって 簡単にまとめたら 恋って感情だったんじゃない? 123 00:06:58,394 --> 00:07:03,766 そんな気持ち とうの昔に ドブに捨ててやったけどね。 124 00:07:03,766 --> 00:07:08,454 苦しくて つらくて… 若いって面倒ね。・ 125 00:07:08,454 --> 00:07:11,123 一生 戻りたくないわ。 126 00:07:11,123 --> 00:07:13,909 あっ 嫌だ しゃべり過ぎね。 127 00:07:13,909 --> 00:07:16,445 この先は もう言わないわ。 128 00:07:16,445 --> 00:07:19,999 今は お父さんっていう 大事な相棒がいますから。 129 00:07:19,999 --> 00:07:22,635 このことは 与太さんや信之助君は? 130 00:07:22,635 --> 00:07:24,903 お父さんが 毎日のように・ 131 00:07:24,903 --> 00:07:28,207 お前は自慢の息子だって言って 育ててるからね。 132 00:07:28,207 --> 00:07:30,643 ほんとに仲がいいの。 133 00:07:30,643 --> 00:07:33,512 水をさすなんてできないわ。 134 00:07:33,512 --> 00:07:36,732 そうですね。 当人しだいだ。 135 00:07:36,732 --> 00:07:38,767 (一同) わっしょい! わっしょい!・ 136 00:07:38,767 --> 00:07:40,803 わっしょい! わっしょい!・ 137 00:07:40,803 --> 00:07:42,821 わっしょい! わっしょい!・ 138 00:07:42,821 --> 00:07:45,524 わっしょい! わっしょい! わっしょい! わっしょい! 139 00:07:45,524 --> 00:07:49,395 わっしょい! わっしょい! わっしょい! わっしょい! 140 00:07:49,395 --> 00:07:52,998 助六~! ・おめでとう~! 141 00:07:52,998 --> 00:07:56,969 (与太郎)ありがとよ~! けどな・ 142 00:07:56,969 --> 00:07:59,305 もう助六じゃねぇんだよ。 143 00:07:59,305 --> 00:08:02,608 ・よっ 九代目! ・八雲師匠! 144 00:08:02,608 --> 00:08:06,662 (小夏) お父さん 小雪! こっち見て! 145 00:08:06,662 --> 00:08:09,465 (萬月)あかんわ。 呼ばれたはんの見てたら・ 146 00:08:09,465 --> 00:08:13,252 また腹立ってきた。 あない陽気で けったいなんは・ 147 00:08:13,252 --> 00:08:15,654 八雲やおへん。 (樋口)萬月師匠・ 148 00:08:15,654 --> 00:08:18,123 いいかげん諦めなさい。 149 00:08:18,123 --> 00:08:21,260 (萬月)見てみぃ。 みんな 与太郎はんしか見たはらへん。・ 150 00:08:21,260 --> 00:08:23,696 せやさかい 開席と いっぺんに済ますなんて・ 151 00:08:23,696 --> 00:08:27,399 反対したんや。 (樋口)今日は 特別なんですよ。・ 152 00:08:27,399 --> 00:08:30,969 なんたって お客様 皆様 たっての希望ですから。 153 00:08:30,969 --> 00:08:34,239 (萬月)今 あそこにおられるんは彼だけ。・ 154 00:08:34,239 --> 00:08:36,239 それは確かやな。 155 00:08:38,694 --> 00:08:41,394 ・ああ~ 八雲師匠。 ん? 156 00:08:43,632 --> 00:08:47,186 おっ 松田さん! (小夏)松田さん? 157 00:08:47,186 --> 00:08:51,890 (松田)やあ うれしいな。 皆さん おそろいで。 158 00:08:51,890 --> 00:08:55,761 (小夏)お元気そうで。 おいくつになったの? 159 00:08:55,761 --> 00:09:01,100 (松田)95になっちまいました。 こんなうれしい日はありません。・ 160 00:09:01,100 --> 00:09:05,300 みんな み~んな 師匠が つないでくれたおかげだ。 161 00:09:06,939 --> 00:09:11,026 八雲師匠 また こんな日に立ち会わせてくれて・ 162 00:09:11,026 --> 00:09:15,064 ありがとうございます。 何言ってるんですか。 163 00:09:15,064 --> 00:09:18,650 松田さんがいなきゃ あたしゃ ここへ立っていられません。 164 00:09:18,650 --> 00:09:21,470 (松田)ああ~ 坊ちゃんは いねぇんですかい?・ 165 00:09:21,470 --> 00:09:25,057 あたしゃ あの人のことが 心配で心配で。 166 00:09:25,057 --> 00:09:27,509 (小夏)楽屋こもって震えてんのよ。 167 00:09:27,509 --> 00:09:29,509 あんにゃろう…。 168 00:09:30,896 --> 00:09:33,082 (信之助) 「あら お父つぁん どうしたの?」。 169 00:09:33,082 --> 00:09:35,951 ・坊! (信之助)はっ! あっ 助六師匠。・ 170 00:09:35,951 --> 00:09:39,671 じゃなくて… 八雲師匠。・ 171 00:09:39,671 --> 00:09:42,841 勝手に ネタさらってました。 さ~せん。 172 00:09:42,841 --> 00:09:45,941 ここだきゃあ いつもどおりでいいよ 坊。 173 00:09:49,264 --> 00:09:52,564 父ちゃん…。 うっ うぅ…。 174 00:09:53,919 --> 00:09:56,355 こけら落としの初席の・ 175 00:09:56,355 --> 00:09:59,158 口上すぐあと…。 176 00:09:59,158 --> 00:10:01,810 大役すぎて めまいがしてきました。 177 00:10:01,810 --> 00:10:03,846 ったく お前さんは・ 178 00:10:03,846 --> 00:10:07,649 腕はいいのに いつまでたっても ビビリだなぁ。 179 00:10:07,649 --> 00:10:11,437 おじぎをして 顔を上げたら みんなの顔 見回してみろ。 180 00:10:11,437 --> 00:10:14,256 ものすごくいい顔が見られるよ。 181 00:10:14,256 --> 00:10:16,508 待ちに待った 晴れの日の高座ってのぁ・ 182 00:10:16,508 --> 00:10:18,508 そういうもんさ。 183 00:10:19,895 --> 00:10:21,914 はい。 184 00:10:21,914 --> 00:10:24,550 あたしの 九代目 八雲襲名もね・ 185 00:10:24,550 --> 00:10:28,871 この芸風じゃ反対も多いし 師匠からは 襲名に関しちゃあ・ 186 00:10:28,871 --> 00:10:32,191 好きにしろとしか 言われちゃいねぇ。 187 00:10:32,191 --> 00:10:36,328 大名跡は 誰も継ぎたがらねぇのが噺家の常。 188 00:10:36,328 --> 00:10:40,065 けどな それじゃ お客様が 寂しいんだとよ。 189 00:10:40,065 --> 00:10:42,065 そう言われちゃあな。 190 00:10:43,469 --> 00:10:46,421 お前も あたしの弟子である以上・ 191 00:10:46,421 --> 00:10:49,958 将来は そういうことに 巻き込まれるかもしれない。 192 00:10:49,958 --> 00:10:54,396 迷ったら 常に お客様のためを 何より考えなさい。 193 00:10:54,396 --> 00:10:57,683 それが 落語の将来にもつながるんだ。 194 00:10:57,683 --> 00:11:00,903 はい。 それに・ 195 00:11:00,903 --> 00:11:03,589 助六が八雲を継ぐ…・ 196 00:11:03,589 --> 00:11:06,892 それが お二人ともの 何よりの供養だ。 197 00:11:06,892 --> 00:11:10,792 なあ 坊 あたしは 今日で 助六は廃業だ。 198 00:11:13,315 --> 00:11:17,653 こいつを お前さんにやろう。 なんですか? 199 00:11:17,653 --> 00:11:20,038 あたしも いつの間に頂いたのか・ 200 00:11:20,038 --> 00:11:22,357 よく覚えちゃいねぇんだ。 201 00:11:22,357 --> 00:11:25,711 もう ボロボロで 高座で使える代物じゃねぇ。 202 00:11:25,711 --> 00:11:30,032 ただ 大師匠が 大事になさってたこたぁ間違いない。 203 00:11:30,032 --> 00:11:33,268 お前が持つのが きっと ふさわしい。 204 00:11:33,268 --> 00:11:35,621 なんか 臭い…。 205 00:11:35,621 --> 00:11:37,621 オイラの臭いじゃねぇぞ。 206 00:11:40,859 --> 00:11:42,895 いい字だろ。 207 00:11:42,895 --> 00:11:45,295 風情のある いい扇子だ。 208 00:11:46,932 --> 00:11:48,932 (信之助)はい。 209 00:13:51,973 --> 00:13:53,992 (拍手) 210 00:13:53,992 --> 00:13:58,430 ・カン!(拍子木の音) ・とざい とうざい~! 211 00:13:58,430 --> 00:14:02,367 (拍手) 212 00:14:02,367 --> 00:14:04,403 本日は ご多忙のなか・ 213 00:14:04,403 --> 00:14:06,672 ようこそ お越しくださいました。 214 00:14:06,672 --> 00:14:09,825 厚く御礼申し上げます。 215 00:14:09,825 --> 00:14:13,495 本日 皆様が そして 我々が待ち望んだ定席・ 216 00:14:13,495 --> 00:14:17,182 雨竹亭が 再び開席いたします。 217 00:14:17,182 --> 00:14:20,502 ・皆様のご協力 温かいご寄付・ 218 00:14:20,502 --> 00:14:24,089 たくさんの方の思いで 先代にも引けを取らない・ 219 00:14:24,089 --> 00:14:26,892 ・美しく立派な寄席が 完成しました。 220 00:14:26,892 --> 00:14:29,761 上方の萬月師匠にも ご尽力いただきまして・ 221 00:14:29,761 --> 00:14:31,847 とにかく ネタを掘り起こし・ 222 00:14:31,847 --> 00:14:35,967 更には 落語家は 東西合わせて150人を超え・ 223 00:14:35,967 --> 00:14:38,570 また 有望な若手も たくさん育ち…。 224 00:14:38,570 --> 00:14:42,240 寄席というのは 若手の研鑽場でございますから・ 225 00:14:42,240 --> 00:14:46,862 彼らが 何より この寄席の復活を 喜んでくれております。 226 00:14:46,862 --> 00:14:49,514 また 史上初の女流落語家・ 227 00:14:49,514 --> 00:14:53,318 こちらに おわします奥方です。 さっきから ずっと・ 228 00:14:53,318 --> 00:14:56,071 監視されてる気がして なりませんが…。 229 00:14:56,071 --> 00:14:59,725 先代の二番弟子として 有楽亭小助六を・ 230 00:14:59,725 --> 00:15:03,361 来年には 襲名させていただく 運びとなっております。 231 00:15:03,361 --> 00:15:05,914 これも また 新しい挑戦です。 232 00:15:05,914 --> 00:15:09,217 この寄席に あたくしのような年寄りも・ 233 00:15:09,217 --> 00:15:13,572 若手も 男も 女も・ 234 00:15:13,572 --> 00:15:16,742 東西も 垣根なく・ 235 00:15:16,742 --> 00:15:20,529 ゼロからスタートさせていただく 所存でございます。 236 00:15:20,529 --> 00:15:23,265 お客様の弥栄と この雨竹亭が・ 237 00:15:23,265 --> 00:15:26,701 雨後の筍のごとく すくすくと育ちますよう・ 238 00:15:26,701 --> 00:15:31,256 祈願を込めまして お手を拝借。 いよぉ~! 239 00:15:31,256 --> 00:15:34,760 パパパン パパパン パパパン パン よっ! 240 00:15:34,760 --> 00:15:37,429 パパパン パパパン パパパン パン 241 00:15:37,429 --> 00:15:40,966 はっ! パパパン パパパン パパパン パン 242 00:15:40,966 --> 00:15:44,402 (拍手) 243 00:15:44,402 --> 00:15:51,059 ・~(出囃子) 244 00:15:51,059 --> 00:15:53,094 (小雪)ふふっ。 245 00:15:53,094 --> 00:15:56,994 (拍手) 246 00:15:59,734 --> 00:16:04,089 開席初日 初めのお席を 務めさせていただきます。 247 00:16:04,089 --> 00:16:08,393 五代目 有楽亭菊比古に ございます。・ 248 00:16:08,393 --> 00:16:10,428 ・「おっ母ぁ 羽織 出しとくれ。・ 249 00:16:10,428 --> 00:16:12,831 ・これから 初天神に お参りに行くんだよ」。・ 250 00:16:12,831 --> 00:16:16,301 「あら そう。 じゃあ あの~ 金坊を連れてっとくれよ」。 251 00:16:16,301 --> 00:16:18,887 「嫌だ。 俺 あいつと行きたかねぇ」。 252 00:16:18,887 --> 00:16:21,056 「嫌だって 自分の子だろ!」。 253 00:16:21,056 --> 00:16:24,860 「あら お父つぁん どうしたの? 羽織なんて着ちゃってさ~。・ 254 00:16:24,860 --> 00:16:27,662 あっ 分かった! 初天神 行くんだろ。・ 255 00:16:27,662 --> 00:16:30,966 ねえ お願い。 あたいも連れてっておくれよ。・ 256 00:16:30,966 --> 00:16:34,636 ねえ お願~い」。 「ダメだ!・ 257 00:16:34,636 --> 00:16:36,655 お前は いっつも 外へ行くってぇと・ 258 00:16:36,655 --> 00:16:39,724 あれ買っつくれ これ買っつくれって うるせぇんだから。・ 259 00:16:39,724 --> 00:16:43,161 連れていかねぇ!」。 「連れてっておくれよ。・ 260 00:16:43,161 --> 00:16:46,481 ねえ お父つぁん」。 「んっ…」。・ 261 00:16:46,481 --> 00:16:50,435 「連れてって! あれ買っつくれ これ買っつくれって言わねぇから。・ 262 00:16:50,435 --> 00:16:55,223 ねっ お願~い!」。 「びぃ~びぃ~うるせぇな。・ 263 00:16:55,223 --> 00:16:58,860 分かったよ 連れてくよ」。 (観客たち)はははっ。 264 00:16:58,860 --> 00:17:02,664 「ああ~ ちくしょう。 まんまと 飴玉 買わされちまったよ。・ 265 00:17:02,664 --> 00:17:05,964 ほれ 口開けてみろ。 あ~ん」。 266 00:17:08,253 --> 00:17:10,288 (信之助)「おう うめぇか?」。 267 00:17:10,288 --> 00:17:12,591 「うん うん。 おいしい!」。 268 00:17:12,591 --> 00:17:15,877 バシン! 「うぇ~ん!」。 269 00:17:15,877 --> 00:17:20,532 「おい こら! たたかれたくれぇで 泣くんじゃねぇよ」。 270 00:17:20,532 --> 00:17:23,818 「いきなり たたくから 飴玉 落っこったよ」。 271 00:17:23,818 --> 00:17:26,087 「何・ どこへ落とした?」。 272 00:17:26,087 --> 00:17:28,490 「おなかん中へ 落っこったぃ」。 273 00:17:28,490 --> 00:17:31,393 (観客たち)ははははっ。 274 00:17:31,393 --> 00:17:35,847 (拍手) 275 00:17:35,847 --> 00:17:39,467 出番 替わりまして トリを務めさせていただきます・ 276 00:17:39,467 --> 00:17:42,804 九代目 有楽亭八雲でございます。 277 00:17:42,804 --> 00:17:45,457 へへへっ。 こりゃ 当分こなれねぇな。 278 00:17:45,457 --> 00:17:47,559 (一同)ははははっ。 279 00:17:47,559 --> 00:17:51,029 師匠が亡くなって 随分と たちましたな。 280 00:17:51,029 --> 00:17:54,199 どこへ参りましても いまだに 八雲の弟子として・ 281 00:17:54,199 --> 00:17:57,319 かわいがっていただける。 また あたくしも・ 282 00:17:57,319 --> 00:18:01,806 師匠の話をさせていただくのが 大変 楽しゅうございます。 283 00:18:01,806 --> 00:18:04,442 この寄席は 先代と 造りを全く同じに・ 284 00:18:04,442 --> 00:18:06,895 こしらえていただいたんです。 285 00:18:06,895 --> 00:18:09,531 はやり廃りてぇのも ございますが・ 286 00:18:09,531 --> 00:18:13,335 変わらねぇもんも 必要でございます。 287 00:18:13,335 --> 00:18:18,073 神様の世も それは変わらぬようでして。 288 00:18:18,073 --> 00:18:21,559 「死神」というお噺の一節ですな。 289 00:18:21,559 --> 00:18:24,996 こけら落としには 少々 薄気味悪うございますが・ 290 00:18:24,996 --> 00:18:29,396 師匠への手向けに 一席 おつきあいくださいますよう…。 291 00:18:33,622 --> 00:18:36,825 「いっ 一体 だ… 誰なんだ? あんた」。 292 00:18:36,825 --> 00:18:41,563 「あたしかい? あたしゃ死神だよ。・ 293 00:18:41,563 --> 00:18:44,563 あたしが いいこと教ぇてやろうか?」。 294 00:18:47,385 --> 00:18:49,804 「そいじゃあ 布団を回しちまったせいで・ 295 00:18:49,804 --> 00:18:51,840 旦那と あたしの寿命が・ 296 00:18:51,840 --> 00:18:53,858 い… 入れ替わっちまった ってことかい?・ 297 00:18:53,858 --> 00:18:56,361 ああ~ なんてこったぃ!・ 298 00:18:56,361 --> 00:18:59,397 金はいいよ あたしゃ いらねぇから。・ 299 00:18:59,397 --> 00:19:02,334 お前さんに み~んなあげる。 ねっ。・ 300 00:19:02,334 --> 00:19:04,986 だから 元の寿命に 取っ替えてくれよ」。 301 00:19:04,986 --> 00:19:07,105 「ダ~メ」。 302 00:19:07,105 --> 00:19:09,708 「そんな不人情なこと 言わねぇでくれよ。・ 303 00:19:09,708 --> 00:19:13,061 頼むよ なっ 死ぃちゃん もっぺんだけ。・ 304 00:19:13,061 --> 00:19:16,231 ねっ? お金は まるっと返すから」。 305 00:19:16,231 --> 00:19:18,867 「しょうのねぇ野郎だ。・ 306 00:19:18,867 --> 00:19:22,454 この燃えさしに ろうそくの火ぃ移してみろ。・ 307 00:19:22,454 --> 00:19:27,054 しくじったら そのまま死ぬ。 いいな?」。 308 00:19:29,627 --> 00:19:33,064 「ろうそくの火を…」。 ゴクッ 309 00:19:33,064 --> 00:19:35,200 「上手に…」。 310 00:19:35,200 --> 00:19:37,986 「へへへへっ。・ 311 00:19:37,986 --> 00:19:41,856 震えてるな。 震えると消ぇちまう。・ 312 00:19:41,856 --> 00:19:45,243 消ぇたら死んじまうな」。 313 00:19:45,243 --> 00:19:48,897 「よしとくれよ! 黙ってろぃ!」。 314 00:19:48,897 --> 00:19:52,934 「ほ~ら 消ぇるよ。・ 315 00:19:52,934 --> 00:19:56,634 消ぇるよ。 消ぇ…」。 316 00:19:58,106 --> 00:20:00,125 あっ…。 317 00:20:00,125 --> 00:20:07,165 ・~ 318 00:20:07,165 --> 00:20:11,386 お前さんにも 見ぇるようになっちまったのかぇ。 319 00:20:11,386 --> 00:20:13,386 哀れだね。 320 00:20:16,191 --> 00:20:18,343 消ぇる。 321 00:20:18,343 --> 00:20:20,378 消ぇるよ。 322 00:20:20,378 --> 00:20:22,430 ふふふっ…。 323 00:20:22,430 --> 00:20:26,584 ほ~ら 消ぇた。 324 00:20:26,584 --> 00:20:30,784 ・~ 325 00:20:43,184 --> 00:20:45,184 はっ! 326 00:20:47,989 --> 00:20:51,493 「なんだ… 夢か」。 327 00:20:51,493 --> 00:20:54,929 ははっ! (一同)ははははっ! 328 00:20:54,929 --> 00:20:59,934 (拍手) 329 00:20:59,934 --> 00:21:07,234 ・~(受け囃子) 330 00:21:11,296 --> 00:21:14,783 (松田)はぁ… いい季節ですな。・ 331 00:21:14,783 --> 00:21:18,369 師匠は いいご時分に逝きなすった。・ 332 00:21:18,369 --> 00:21:22,240 あたしゃ あのとき 彼岸まで お見送りしたんですよ。 333 00:21:22,240 --> 00:21:24,793 (樋口)はいはい もう行っちゃダメですよ。 334 00:21:24,793 --> 00:21:26,861 へへっ。 (松田)ここへは・ 335 00:21:26,861 --> 00:21:30,882 七代目とも よ~く花見に来たんですよ。 336 00:21:30,882 --> 00:21:34,002 まだ 戦争も始まる前だ。 337 00:21:34,002 --> 00:21:37,472 (樋口)昔の話 もう少し お聞かせください。 338 00:21:37,472 --> 00:21:40,859 (松田)実は あたしゃ 噺家になりたかったんです。 339 00:21:40,859 --> 00:21:43,361 (樋口) はあ~! そうだったんですか。 340 00:21:43,361 --> 00:21:46,364 (松田)14の時分に入門して。・ 341 00:21:46,364 --> 00:21:48,817 ところが この性格ですから・ 342 00:21:48,817 --> 00:21:51,886 一向に芽が出ませんでな。・ 343 00:21:51,886 --> 00:21:54,088 諦めて 廃業しようとしましたら・ 344 00:21:54,088 --> 00:21:57,188 七代目のお計らいで 使っていただいたんです。 345 00:21:59,911 --> 00:22:04,482 (松田)そのあと 家にやってきた 初太郎さんと坊ちゃんの面倒を・ 346 00:22:04,482 --> 00:22:07,402 見させていただくことに なりまして。・ 347 00:22:07,402 --> 00:22:10,538 お二人は 華も才もあって・ 348 00:22:10,538 --> 00:22:14,425 水と油のような 正反対のご性分でしたが・ 349 00:22:14,425 --> 00:22:18,096 お優しいからか 気は合ってらしてね。・ 350 00:22:18,096 --> 00:22:20,698 どんどん出世なさるのを 横で見ていて・ 351 00:22:20,698 --> 00:22:24,986 胸がすく思いでした。 あたしができなかったことを・ 352 00:22:24,986 --> 00:22:27,986 み~んな かなえてくださるんですから。 353 00:22:29,691 --> 00:22:34,662 まさか お二人とも 見送ることになるとは…。・ 354 00:22:34,662 --> 00:22:39,217 少し 長生きをし過ぎましたな。・ 355 00:22:39,217 --> 00:22:42,270 八代目は 小夏さんを お引き取りになってから・ 356 00:22:42,270 --> 00:22:44,305 ふさぎ込んじまってね。 357 00:22:44,305 --> 00:22:50,578 ・~ 358 00:22:50,578 --> 00:22:53,264 (松田)そういや あのこたぁ…。 359 00:22:53,264 --> 00:22:56,201 (樋口) ああ 四国で聞いた話ですか。 360 00:22:56,201 --> 00:22:58,736 言えるわけないじゃないですか。 361 00:22:58,736 --> 00:23:02,891 よかった。 ず~っと ないしょですよ。 362 00:23:02,891 --> 00:23:05,260 生きてりゃ どうしても言えねぇことなんざ・ 363 00:23:05,260 --> 00:23:09,460 いくらでも出てくらぁ。 しょうがねぇなぁ 人間てのは。 364 00:23:11,599 --> 00:23:16,070 みんな お優しいから あんなことになっちまった。・ 365 00:23:16,070 --> 00:23:20,041 けど あたしゃ 長生きした甲斐がありました。・ 366 00:23:20,041 --> 00:23:23,394 まさか こんな光景が見られるなんて…。 367 00:23:23,394 --> 00:23:32,921 ・~ 368 00:23:32,921 --> 00:23:44,165 ・~ 369 00:23:44,165 --> 00:23:46,200 (樋口)結局 八雲師は・ 370 00:23:46,200 --> 00:23:49,237 落語と心中は できませんでしたな。・ 371 00:23:49,237 --> 00:23:53,591 師匠が 気まぐれに あなたという未練を残した。・ 372 00:23:53,591 --> 00:23:58,429 たった一人で滅ぼせるなら たった一人でも復活しうる。 373 00:23:58,429 --> 00:24:02,900 戦争があろうと 時代が変わろうと その時々に 形を変えて・ 374 00:24:02,900 --> 00:24:06,000 雑草のように しぶとく息を吹き返す。 375 00:24:08,706 --> 00:24:10,725 ふ~ん。 (樋口)こらこら・ 376 00:24:10,725 --> 00:24:12,760 なんだね その顔。・ 377 00:24:12,760 --> 00:24:15,660 僕 今 すんごくいいことを 言ったんだが。 378 00:24:17,365 --> 00:24:21,002 先生 ず~っと そんなこと考えてたのかい? 379 00:24:21,002 --> 00:24:23,972 頭がいいってのは 大変だね どうも。 380 00:24:23,972 --> 00:24:28,526 オイラ 落語がなくなるなんざ いっぺんも考えたこたぁねぇんだ。 381 00:24:28,526 --> 00:24:31,396 だってよ…。 ん? 382 00:24:31,396 --> 00:24:34,699 こんないいもんが なくなるわけねぇべ。 383 00:24:34,699 --> 00:24:50,431 ・~ 384 00:24:50,431 --> 00:24:54,252 「へへっ うれしいな。 ついに お梅ちゃんと…。・ 385 00:24:54,252 --> 00:24:57,638 あっ? あっ どうも 大将」。 386 00:24:57,638 --> 00:25:00,425 「なんだ 一八 そんなに浮かれて」。 387 00:25:00,425 --> 00:25:02,543 「女が ツンツ~ンっと 合図してきたから・ 388 00:25:02,543 --> 00:25:04,595 こちとら もう とっときのでけぇ声で…・ 389 00:25:04,595 --> 00:25:08,166 音羽屋! 音羽屋! 音羽屋! 音羽屋!・ 390 00:25:08,166 --> 00:25:11,886 お~たおたおたおた… 音羽屋~~!」。 391 00:25:11,886 --> 00:25:13,921 (助六)「ネギなんですよ ええ ええ ええ。・ 392 00:25:13,921 --> 00:25:18,259 このネギくらい 体にいいものはないってんでね・ 393 00:25:18,259 --> 00:25:21,329 とにかくね ネギだけ食べてらぁ それでいいんですよ。 ネギ」。・ 394 00:25:21,329 --> 00:25:23,348 「ちょっと ああた ああた! さっきから・ 395 00:25:23,348 --> 00:25:28,069 ネギだ ネギだ言ってますけどね 間に 肉が挟まってますよ」。 396 00:25:28,069 --> 00:25:31,439 「ここは お女郎屋…。 ひぃ~!」。 397 00:25:31,439 --> 00:25:35,293 「坊ちゃん へへへっ。 ダメだよ 逃げちゃあ」。 398 00:25:35,293 --> 00:25:39,097 「おい 坊ちゃん いかにも ここは お女郎屋です」。 399 00:25:39,097 --> 00:25:42,250 「とんでもないこと…。 お稲荷様の お籠もりだってぇから・ 400 00:25:42,250 --> 00:25:46,220 来たんじゃありませんか。 人をだまして こんな処へ…。・ 401 00:25:46,220 --> 00:25:48,740 あたしゃ おいとまいたします」。 402 00:25:48,740 --> 00:25:51,275 「お前も 女郎屋で 飯 食おうってんなら・ 403 00:25:51,275 --> 00:25:53,311 俺の面ぁ覚えとけ。・ 404 00:25:53,311 --> 00:25:57,014 吉原でも千住でも どこでも 相手に仕手のねぇ・ 405 00:25:57,014 --> 00:26:00,234 居残り佐平次たぁ 俺のことよ。・ 406 00:26:00,234 --> 00:26:04,255 楼へ帰って 旦那によろしく言っとくれ。・ 407 00:26:04,255 --> 00:26:06,290 あばよ!」。 408 00:26:06,290 --> 00:26:14,890 ・~ 409 00:27:54,966 --> 00:27:59,966